特許第5749711号(P5749711)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5749711放射線データ処理方法および放射線検出装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5749711
(24)【登録日】2015年5月22日
(45)【発行日】2015年7月15日
(54)【発明の名称】放射線データ処理方法および放射線検出装置
(51)【国際特許分類】
   G01T 1/24 20060101AFI20150625BHJP
【FI】
   G01T1/24
【請求項の数】11
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-511351(P2012-511351)
(86)(22)【出願日】2010年5月18日
(65)【公表番号】特表2012-527608(P2012-527608A)
(43)【公表日】2012年11月8日
(86)【国際出願番号】GB2010050806
(87)【国際公開番号】WO2010133871
(87)【国際公開日】20101125
【審査請求日】2013年3月19日
(31)【優先権主張番号】0908582.0
(32)【優先日】2009年5月19日
(33)【優先権主張国】GB
(31)【優先権主張番号】0909507.6
(32)【優先日】2009年6月3日
(33)【優先権主張国】GB
(31)【優先権主張番号】0921676.3
(32)【優先日】2009年12月11日
(33)【優先権主張国】GB
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】507282783
【氏名又は名称】クロメック リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】スコット ポール
(72)【発明者】
【氏名】ラドリー イアン
【審査官】 藤本 加代子
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2005/085905(WO,A1)
【文献】 特開2006−071463(JP,A)
【文献】 特開2006−058046(JP,A)
【文献】 特開2007−327902(JP,A)
【文献】 特開2001−194460(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01T 1/24
G01T 1/20
G01T 7/00
A61B 6/00
G03B 42/02
G01N 23/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体装置からの検出放射線データの処理の方法であって、
半導体装置で入射する放射線からの読み取りパルス・エネルギーを測定するステップと、
信号をフィルタリングして、フィルタ処理信号が予め定められた閾値エネルギーを上回る時間を決定するステップと、
前記決定された時間が、少なくとも所定の最大値を含む予め定められたパラメータの範囲内である場合、最初に読み取るパルス・エネルギーをパルス・エネルギー・データ・レジスタに格納するステップと、
前記決定された時間が所定の最大値を超えると、読み取りパルス・エネルギーを廃棄するとともにディスカード・データ・レジスタのカウントをインクリメントするステップと、
第1のデータ・レジスタにおいて所望のサイズの読み取りパルス・エネルギーのエネルギー・スペクトル・データセットを取得するために上記ステップを繰り返すステップであって、前記パルス・エネルギー・データ・レジスタは複数のエネルギー選択箱を含み、取得されたエネルギー・データは複数のエネルギー及び/又は複数のエネルギー・バンドにわたって、エネルギー選択的に分解され、各パルスは、パルスの波高に従って、複数のエネルギー選択箱のうちの1つに選択的に格納され、
上記の取得が完了された後、
廃棄されたカウントを数値的に補正し、前記エネルギー・スペクトル・データセット内に再加算することによって前記読み取りパルス・エネルギーのデータセットを補完するために、前記ディスカード・データ・レジスタを用いるステップと、
を含む方法。
【請求項2】
前記予め定められたパラメータは、所定の最小を含み、パルスが閾値パルス波高を上回る時間が前記最小未満の場合、パルスはエネルギー・スペクトル・データ・レジスタに保存されずに、ノイズとして完全に廃棄される、請求項1記載の方法。
【請求項3】
更なるステップにおいて、前記エネルギー・スペクトル・データセットは、概念的な無限厚さの検出器から見えるのと同等のスペクトルが与えられるように数値的に補正される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記半導体装置は、放射線検出器として作用することが可能な装置である、請求項1〜3いずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記半導体装置は、バルク単結晶として作られる材料を含む、請求項1〜いずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記半導体装置は、テルル化カドミウム、テルル化カドミウム亜鉛(CZT)、テルル化カドミウムマンガン(CMT)、及びそれらの合金から選択される材料を含む、請求項1〜いずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記半導体装置は、結晶構造のCd1−(a+b)MnZnTeを含み、ここでa+b<1であり、a及び/又はbはゼロであってもよい、請求項に記載の方法。
【請求項8】
前記放射線のソースは、複数の帯域幅又は単一のエネルギーが確認され得る、広域のスペクトル・ソースである、請求項1〜いずれかに記載の方法。
【請求項9】
放射線の検出の方法であって、
半導体検出器装置の表面に放射線を作用させるステップと、
請求項1〜いずれかに記載の方法で検出放射線を処理するステップと、
を含む方法。
【請求項10】
放射線の検出のための装置であって、
半導体放射線検出器と、
例えば前記検出器の反応をサンプリングすることによって前記検出器でエネルギーパルスを検出するための手段と、
前記エネルギーパルスのエネルギーを測定するパルス・エネルギー読取機と、
パルス・エネルギーが予め定められた閾値エネルギーを上回る時間を決定する時計手段と、
パルス・エネルギーが少なくとも所定の最大値を含む予め定められた閾値エネルギーを上回る時間に対する予め定められたパラメータを格納しているパルス時間パラメータ・データ・レジスタと、
複数のエネルギー選択箱を含むパルス・エネルギー・データ・レジスタと、
パルス・エネルギーが予め定められた閾値エネルギーを上回る時間が前記予め定められたパラメータの範囲内であるかどうか評価するための、および、
(a)取得されたエネルギー・データが複数のエネルギー及び/又は複数のエネルギー・バンドにわたって、エネルギー選択的に分解されるための、そして前記時間が前記予め定められたパラメータの範囲内であると、最初に読み取るパルス・エネルギーをパルス・エネルギー・データ・レジスタに、パルスの波高に応じて前記エネルギー選択箱の一つに選択的に格納するための、および
(b)前記決定された時間が予め定められた最大値を超えると、ディスカード・データ・レジスタが読み取りパルス・エネルギーを廃棄するとともにカウントをインクリメントするための、データ処理モジュールと、
前記ディスカード・データ・レジスタのアドレッシングにより廃棄されたカウントを数値的に補正し、前記エネルギー・スペクトル・データセット内に再加算することによって読み取りパルス・エネルギーのデータセットを補完するための、スペクトル補正モジュールと、
を含む装置。
【請求項11】
前記パルス時間パラメータ・データ・レジスタは、所定の最小を保存し、前記データ処理モジュールは、読み取りパルス・エネルギーをノイズとして完全に廃棄するため、前記パルス・エネルギーが所定の閾値エネルギーを上回る時間が前記最小未満であるかどうか評価するように構成されている、請求項10に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線の検出方法に関し、例えばX線及び/又はガンマ線、もしくは亜原子粒子放射線等の高エネルギー電磁放射線のための高エネルギー放射線用の検出器等、高エネルギー物理学アプリケーション用の半導体装置からの検出放射線データの処理の方法に関する。本発明はまた、その方法の原則を実施している検出器装置に関する。特に本発明は、例えば、バルク単結晶として形成される、テルル化カドミウム(CdTe)、テルル化カドミウム亜鉛(CZT)、テルル化カドミウムマンガン(CMT)又は同種のもの等のII−VI族半導体材料等、大きな直接バンド・ギャップ半導体材料を含む半導体検出器装置に関する。
【背景技術】
【0002】
テルル化カドミウム及び類似の半導体材料は、近年、例えば高エネルギー放射線検出等、様々な高エネルギー物理学アプリケーションの分野への有用性を発見した。特に、X線又はガンマ線のような高エネルギー電磁放射線を分光学的に分解するそれらの能力が利用された。これは特に材料がバルクスケール単結晶として製造される場合でもよく、それはEP−B−1019568において開示されているようなバルク蒸着技術(例えば多管式物理的気相輸送法)の開発の結果としてより実際的な提案(課題)になった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
例えば装置は、適切な高エネルギー源から直接、あるいは、例えば透過、散乱、後方散乱、吸収その他を含んで被検物体との相互作用の後、検出器での放射線の検出用に組み立てられる。CdTe及びCZT及びCMTの高い量子効率は、高エネルギー分光学アプリケーション用にこれらの材料を最適にする。しかしながら、正孔(ホール)移動度が低いため、ホール信号からの不完全な読み出しは、スペクトル分解能を制限する可能性がある。これは、特に信号のシェイピングタイムが短い高計数率アプリケーションで観察可能である。また、高エネルギー・アプリケーションにおいて、装置の厚さは、電極間の距離を大きくしてしまう大きいものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
第1の態様の本発明による放射線の検出の方法は、
例えば放射線ソースから直接に、又は、例えば透過、散乱、後方散乱、吸収などを含む物体との相互作用の後に、半導体検出器装置の表面に放射線を作用させるステップと、
前記検出器でエネルギーパルスを検出するステップと、
読み取りパルス・エネルギーを測定するステップと、
信号をフィルタリングして、フィルタ処理信号が予め定められた閾値エネルギーを上回る時間を決定するステップと、
前記決定された時間が、少なくとも所定の最大値、及び好ましくは所定の最小値をも含む予め定められたパラメータの範囲内である場合、最初に読み取るパルス・エネルギーをパルス・エネルギー・データ・レジスタに格納するステップと、
前記決定された時間が所定の最大値を超えると、読み取りパルス・エネルギーをディスカード(破棄)するとともにディスカード・データ・レジスタのカウントをインクリメントするステップと、
第1のデータ・レジスタにおいて所望のサイズの読み取りパルス・エネルギーのエネルギー・スペクトル・データセットを取得するために上記ステップを繰り返すステップと、
そして、このような取得完了後、ディスカードされたカウントを数値的に補正し、前記エネルギー・スペクトル・データセット内に再加算することによって前記読み取りパルス・エネルギーのデータセットを補完するために、前記ディスカード・データ・レジスタを用いるステップと、
を含む。
【0005】
更なる態様の本発明によれば、半導体装置からの検出放射線データの処理の方法は、
半導体装置で入射する放射線からの読み取りパルス・エネルギーを測定すること、
パルスが予め定められた閾値エネルギーを上回る時間を決定すること、
前記決定された時間が、所定の最大値、及び好ましくは所定の最小値をも含む予め定められたパラメータの範囲内である場合、最初に読み取るパルス・エネルギーをパルス・エネルギー・データ・レジスタに格納すること、
前記決定された時間が所定の最大値を超えると、読み取りパルス・エネルギーをディスカードするとともにディスカード・データ・レジスタのカウントをインクリメントすること、
第1のデータ・レジスタにおいて所望のサイズの読み取りパルス・エネルギーのデータセットを取得するために上記ステップを繰り返すこと、
ディスカードされたカウントを数値的に補正し、前記エネルギー・スペクトル・データセット内に再加算することによって前記読み取りパルス・エネルギーのデータセットを補完するために、前記ディスカード・データ・レジスタを用いること、
を含む。
更なる態様の本発明によれば、放射線の検出のための装置は、方法の原則に動作可能に記載されている。
【0006】
そこで、装置は、
半導体放射線検出器と、
例えば前記検出器の反応をサンプリングすることによって前記検出器でエネルギーパルスを検出するための手段と、
前記エネルギーパルスのエネルギーを測定するパルス・エネルギー読取機と、
パルス・エネルギーが予め定められた閾値エネルギーを上回る時間を決定する時計手段と、
パルス・エネルギーが少なくとも所定の最大値、及び好ましくは所定の最小値をも含む予め定められた閾値エネルギーを上回る時間に対する予め定められたパラメータを格納しているパルス時間パラメータ・データ・レジスタと、
パルス・エネルギーが予め定められた閾値エネルギーを上回る時間が前記予め定められたパラメータの範囲内であるかどうか評価するための、かつ、前記時間が前記予め定められたパラメータの範囲内であると、最初に読み取るパルス・エネルギーをパルス・エネルギー・データ・レジスタが格納するための、かつ、前記決定された時間が予め定められた最大値を超えると、ディスカード・データ・レジスタが読み取りパルス・エネルギーをディスカードするとともにカウントをインクリメントするための、データ処理モジュールと、
前記ディスカード・データ・レジスタのアドレッシングによりディスカードされたカウントを数値的に補正し、前記エネルギー・スペクトル・データセット内に再加算することによって読み取りパルス・エネルギーのデータセットを補完するための、スペクトル補正モジュールと、
を含む。
【0007】
このように、本発明の原則によれば、データは、普通の方法の適切なサンプリング・アルゴリズムを経て、例えば検出器で取得される。パルスは、読み取りパルス・エネルギーがいつ規定の閾値を超えるか決定することにより検出される。ピーク値は、決定され得る。一旦パルスが規定の閾値以下に戻ると、パルス・エネルギーがその閾値を越えた時には算出される。
【0008】
各パルスは、予め定められた閾値パラメータに対して分析される。少なくとも、所定の最大の時間がセットされる。好ましくは、所定の最小の時間がセットされる。パルスが所定の最大値を超える閾値パルス波高を上回る時には、パルスはエネルギー・スペクトル・データ・レジスタに保存されないが、ディスカード・カウントはディスカード・レジスタに加えられる。所定の最小の時間がセットされ、パルスが閾値パルス波高を上回る時間が最小の時間未満の場合、パルスはエネルギー・スペクトル・データ・レジスタに保存されずに、仮定ノイズとして完全にディスカードされる。パルスが閾値パルス波高を上回る時間が予め定められたパラメータの範囲内である場合、パルスはパルス・エネルギー・データ・レジスタに保存される。
【0009】
好ましくは、取得したエネルギー・データは、複数のエネルギー及び/又は複数のエネルギー・バンドにわたって、エネルギー選択的に分解される。好ましくは、パルス・エネルギー・データ・レジスタは、複数のエネルギー選択箱を含み、各パルスはパルスの高さに従ってこの種の箱のうちの1つに選択的に保存される。
【0010】
特に、エネルギー・スペクトル・データセットとしてスペクトル的に分解された方法で代表的なかなりの複数のパルスがパルス・エネルギー・データ・レジスタで得られるまで、パルスを収集するか又はディスカードする過程は繰り返される。これで最初の取得段階を完了する。特に後続の追加データ補正ステージにおいてデータセットがディスカード・カウントに基づき補正によって追加されるという点で、本発明は区別される。ディスカードは、部分的に読み出すホール信号を伴う実在するパルスの検出を示すとみなされる。一旦取得が完了すると、ディスカードされたカウントはエネルギー補正され、このためより望ましい総カウント率を保存し、スペクトル分解能を維持するエネルギー・データ・レジスタ内に再加算される。
【0011】
好適な更なるステージにおいて、エネルギー・スペクトル・データセットは、概念的な無限厚みの検出器に数値的に補正され得る。検出器が有限厚みであるとき、高エネルギー光子に対して感受性が低い。従って、生成されたスペクトルの比率のカウントの単純な再加算は、結果として低エネルギー光子を支持して優先して歪曲されているスペクトルをもたらす。検出器の減衰係数及び実際の厚さが公知である場合、これは補正され得、それによって、無限厚さの検出器から見えるのと同等のスペクトルを与え、したがって入射光量子束をより代表する。
【0012】
結果として生じる補正エネルギー・スペクトル・データセットは、更なる処理のための他の装置に格納され得るか又は出力され得る。
【0013】
装置を含む半導体材料は、例えば高エネルギー放射線のための検出器として作用することが可能な材料など、好ましくは高エネルギー物理学アプリケーションのために、そして、例えばX線又はガンマ線又は亜原子粒子放射線など、例えば高エネルギー電磁放射線のために適応する材料である。結果として生じる装置は、この種の材料の少なくとも一つの層を含み、このように高エネルギー物理学アプリケーションに適している装置、及び例えばX線又はガンマ線又は亜原子粒子放射線などの例えば高エネルギー放射線のための検出器である。
【0014】
半導体装置は、好ましくは使用中に少なくとも放射線スペクトルの実質的な部分にわたって分光学的に多様な反応を示すように構成されている検出器装置である。特に、半導体材料は、直接材料特性、直接の可変的な電気、及び使用中に例えば放射線スペクトルの異なる部分への光電応答として本質的に示す。
【0015】
好ましい実施例において、半導体材料は、バルク結晶として、そして、例えばバルク単結晶として形成される(この文脈におけるバルク結晶は少なくとも500fEmの、そして、望ましくは少なくとも1mmの厚さを示す)。
【0016】
好ましい実施態様において半導体材料は、II−VI族半導体から選択され得、好ましくは、テルル化カドミウム、テルル化カドミウム亜鉛(CZT)、テルル化カドミウムマンガン(CMT)及びそれらの合金から選ばれ、例えば、結晶構造のCd1−(a+b)MnZnTeを含み、ここでa+b<1であり、a及び/又はbはゼロであってもよい。
【0017】
同様に、放射線ソースは、複数の帯域幅又は一つのエネルギーが識別され得る単一の広域スペクトル・ソースでもよい。あるいは又はさらにソースは、狭帯域幅を有するか、又はエネルギーの一部を本発明の方法に従う比較に提供するために一つ以上の別々のエネルギーで入射放射線を生成して設けられ得る。この場合、放射線ソースは、複数のエネルギー/エネルギー・バンドにわたる検出器によって分解能を許容するために広げられる必要な全体のスペクトルを出力する異なるエネルギーのソースの組合せを含む複数のソースである。例えば、複数のソースは、0から160keV又は別々の輝線(例えば14keV、122keV及び36keVで輝線を持つ57Co)を有する放射性同位元素まで例えば連続制動放射線スペクトルを有するX線ソースを含む。
【0018】
ソースは、好ましくは本発明の性能のために必要なスペクトル分解能を有効にするために、十分に広域の放射線のスペクトルを発生させることができる。好ましくは、ソースは、20keV〜1MeVの範囲の少なくとも1以上の部分にわたって、そして、より好ましくは、例えば20keV〜160keVの範囲の少なくとも一部及び大部分にわたって放射線を発生させる。例えば、ソースは、所与の範囲の中で少なくとも20keVの少なくとも一つのバンド幅にわたって広がっている放射線を発生させる。例えば、スペクトルは、少なくとも3つの10keVのバンドがその範囲の中で分解され得るようなものである。
【0019】
本発明の方法における数値的又は他のデータの処理ステップは、機械可読な命令又はコードの適切なセットによって行うことができることは、一般によく理解されている。これらの機械可読な命令は、特定のステップの実行手段を作り出すために、汎用コンピュータ、専用コンピュータ又は他のプログラム可能なデータ処理装置上にロードされ得る。例えば、検出器及び関連電子機器からの信号は、フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA)によって、エネルギー・スペクトルに変換され得る。
【0020】
これらの機械可読な命令はまた、コンピュータ可読媒体に保存される命令が本発明の方法における数値的ステップの一部又は全てを実行するための命令手段を含んでいる製品を生産するように、コンピュータ又は他のプログラム可能なデータ処理装置に特定の方法で機能するように指示することのできるコンピュータ可読媒体に保存され得る。コンピュータ・プログラム命令はまた、命令が本発明の方法におけるデータ処理ステップの一部又は全てを実行するためのステップを提供しているコンピュータ又は他のプログラム可能な装置上で実行されるように、コンピュータ実行済みの方法を実行可能とする機械を生産するためにコンピュータ又は他のプログラム可能な装置上にロードされ得る。専用のハードウェア及び/又はコンピュータ命令のあらゆる適切な組合せにより、ステップが実行され得、このようなステップを行う装置の手段が構成されることが理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0021】
本発明は、図1〜5を参照し、ほんの一例として説明される。
図1】本発明に従って用いられる検出器装置の一例である。
図2】本発明の方法の原則を具体化している実施例アルゴリズムである。
図3】60mVの低レベル弁別回路閾値を有する60mV〜1Vの様々な波高の32のパルスを示しているグラフである。閾値を上回る時間は、パルス波高の関数として増加する。はめ込まれたグラフは、発生する参照テーブルのプロットを示す。
図4】シェイパーが200MHzで出力したオシロスコープ・サンプリングから出る出力を示す。イメージの左上のパルスは、b−a>vmaxとしてアルゴリズムによってディスカードされる。
図5】実施の様々なステージのアルゴリズムの出力である。ここでは、平面CdTe検出器が、図1に示すように57Coソースを使用して照射を受けた。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の実施形態の例によれば、平面CdTe/CdZnTe検出器から、優れたスペクトル分解能が実現されることを可能にするアルゴリズムが記述された。これは、高いカウント率及び高エネルギー・アプリケーションに適用でき、ホール信号が部分的に読み出されるだけであるイベントを取り除くことによって働く。これらのイベントは、その後、アルゴリズムによって補正されて、分解能及びカウント率の両方が保存されることを可能にしているスペクトル内に再加算されるエネルギーである。
【0023】
アルゴリズムは、便宜上フィールド・プログラマブル・ゲートアレイ(FPGA)を用いて実行され、X線アプリケーションの典型の高い入力カウント率で、リアルタイム処理が可能である。平面CdTe検出器からの実験結果に加えてアルゴリズムの詳細が提示される。
【0024】
(検出器システム)
図1に示される検出器システムは、X線又はガンマ線(hv)によって照射を受ける平面CdTe検出器(11)を含む。検出器からの信号は、その後、プリアンプ(13)によって読み出され、シェイピング・アンプ(15)及び、フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA)によって、エネルギー・スペクトルに変換される。当然のことながら、各構成要素は、適切な検出器の固有の分解能が他の適切な構成要素によって個々に、又は、総合的に利用できるエネルギー・スペクトルに変換され得る適切な要素の一例にすぎない。
【0025】
(アルゴリズム)
図2は、本発明を実行している適切なアルゴリズムを示す。実施例のアルゴリズムは、200MHzのサンプルレートで、シェイピング・アンプからの出力のサンプルをとる。一旦それが『実際の』パルスを検出すると、それはピークを検出するために最も高い値のサンプルをとって、保持し続ける。一旦パルスが規定の閾値以下に戻ると、その後、パルスがその閾値を超えて費やした時間を算出する。
【0026】
パルスが参照テーブルによってセットされるパラメータの範囲内である場合、パルスはパルスの高さに応じて32の箱のうちの1つに加えられる。パルスが参照テーブルの基準に入らない場合、そのパルスは、(1)アルゴリズムによってノイズと考えられるので、完全にディスカードされるか、又は(2)ディスカード・カウンタが1つインクリメントされる。これは、部分的に読み出されたホール信号を有する実際のパルスが検出された点に注意する。
【0027】
一旦取得が完了されると、ディスカードされたカウントはこのように総カウント率を保存していて、スペクトル分解能を維持し、補正され、かつスペクトル内に再加算されるエネルギーである。
【0028】
(システム情報)
1. システムが5ナノ秒間隔で、又は、200MHzのサンプリング・レートで受信データのサンプルをとる。
2. 受信パルスは、1ボルト以下のピーク振幅を有すると見られている。このアプリケーションでは、160keVの光子によって発生するパルスに対応するよう1ボルトが規定されるが、これは、あらゆる必要なエネルギー範囲にも直ちに再調整され得る。
3. AからDは、8ビットの分解能に制限され、このように、入力電圧を256ステップに分けた。各ステップ(1つのLSB)は、およそ0.625keVに相当する。
4. 読み取りピーク電圧値は、32の箱にソートされるので、各箱は8ステップ又は5keVの間隔を表す。
5. 既存のシステムのため、ノイズは、大部分が11ビット以下に見え、おおよそ7keVに対応する。下部の2つの箱は、従って、大部分はノイズである。
6. 従ってノイズ区別フロアが15ビットで又はおおよそ60mVでセットされる。
【0029】
(パルス検出アルゴリズム)
1. 16ビットを下回るサンプル値は、区別レベル以下にあると判断され、ディスカードされる。
2. 16ビット以上(>60mV)のアナログ値のサンプルが検出されたとき、状態機械(ステート・マシン)は1にセットされる。この位置は、位置aとして定義される。
3. 次のサンプルが以前のサンプルよりも少なくとも1ビット(4mV)大きい場合、状態機械は2にセットされる。そうでない場合には、それは、ゼロにリセットされる。
4. 次のサンプルが以前のサンプルよりも少なくとも1ビット大きい場合、状態機械は3にセットされる。そうでない場合には、それは、ゼロにリセットされる。
5. 状態機械が3にセットされるとき、パルス検出は正確な状態にセットされ、パルスは有効であるとみなされる。パルス・サンプル・レジスタは、ゼロにセットされる。
6. 次のサンプルにおいて、パルスのアナログ値がパルス値レジスタに書き込まれ、パルス・サンプル・レジスタは1インクリメントされる。
7. 次のサンプルにおいて、パルスのアナログ値は格納された値と比較され、新しい値がより大きい場合、格納された値は更新される。新しい値が格納された値以下である場合は何も実行されない。パルス・サンプル・レジスタは、もう一度インクリメントされる。
8. パルスが60mV未満に戻るまで、システムは5nsの間隔でアナログ値をサンプルし続ける。この位置は位置bとして定義され、パルス値レジスタにパルス波高hとして定義される値が保持される。
9. 閾値wを上回るパルスの時間は、b−aとして定義される。
10. システムは、パルス波高hに基づいて、参照テーブルから閾値(それぞれwmax及びwmin)を超える最大及び最小の許容時間を探索する。
11. w>wmin及びw<wmaxの場合、パルスは、その高さに基づいて32の箱のうちの1つに保存される。
12. w<wminの場合、パルスは、ディスカードされる。
13. w>wmaxの場合、パルスはディスカードされ、ディスカードされたパルスカウンタは1つインクリメントされる。
【0030】
(参照テーブル)
不完全なホール・チャージ収集を伴うパルスは、理想的なパルスのそれより広いベース幅を呈する。参照テーブルは、使用中のシェイピング・アンプからの出力を代表するモデル化されたCR−RCネットワークを利用して生成される。その後、60mVから1Vの範囲内のhの関数としてwを含んでいる32項目参照テーブルが生成される。
【0031】
図3は、パルス波高の関数としてのwのプロットを示す。ここで、より大きいパルスは、拒否基準がまた、より大きい振幅パルスに、より広い受け入れウインドウを与えるパルス波高をも考慮しなければならないことを意味しているより広いベース幅を有することが分かる。その後、この参照テーブルからwmaxの値が定義され得る。これはwの各値と定数C(ここでC>1)を乗算することによって与えられる。これは、図3に示される理想的なケースと実際の検出器との間の差に相当する。定数の値は、スペクトル分解能を最適化するために変更され得る。1に近いCの値はアグレッシブ・フィルタリングを提供し、Cのより大きい値はより少ないアグレッシブ・フィルタリングを提供する。
【0032】
各パルスは、wを測定し、それを参照テーブルの関連したwmax値と比較することによって、遅いホール成分の証拠を検査される。wがwmaxより大きい場合、パルスは受け入れられず、そしてディスカード・カウンタは1つインクリメントされる。
【0033】
アルゴリズムは、MATLAB(登録商標)プログラムを利用してシミュレーションされた。データは、FPGAとして同一周波数でオシロスコープ・サンプリングを用いて得られた。その後、データはMATLAB(登録商標)アルゴリズムを利用して分析され、2つのイベントのための出力は図4に示される。
【0034】
上記の閾値ノイズ・スパイクは、散発的に起こり得る。その形態は、それらがフィルタ・アルゴリズムの第1ステージによる実際のパルスとして通過することができるようなものの中で、時々ある。これは、第2の条件をアルゴリズム、w>wminの拒否ステージに適用することによって回避される。これは、それらの振幅にかかわらず受け入れなくされる時間領域の狭いすべてのパルスを許容する。これらのパルスがノイズと見なされるとき、ディスカード・カウンタはこの場合インクリメントしない。
【0035】
(削除されたカウントの再加算)
取得が完了された後、ディスカードされたカウンタの総カウントはスペクトル内へと戻し、再配布される。これは、最初のスペクトルのカウントの配布に、そして、各所与のエネルギーで検出器の質量減衰係数に、チャネル(すなわちエネルギー)ごとの再加算カウントの数を重み付けることによって行われる。
【0036】
図5は、エネルギー補正アルゴリズムの実行の諸段階(ステージ)での平面検出器のスペクトル分解能の比較結果を示し、以下のとおりである。
【0037】
ステージ1.パルス波高検出アルゴリズム(ディスカードなし)
不十分なホール・チャージ収集の量に関係なくすべてのパルスがスペクトルに含まれる場合、取得されるスペクトルを示す。
【0038】
ステージ2.ディスカード・アルゴリズム
このステージは、不十分なホール・チャージ収集の証拠があるイベントをディスカードする効果を示す。ここで、チャネル24のピークの分解能が改善されることが分かる。
【0039】
ステージ3.ディスカードされたカウントの再加算
ここでは、ディスカードされたカウントは適用されるエネルギー補正を有するスペクトル内に再加算される。
【0040】
ステージ4.無限厚みの補正
検出器が有限厚みにあるとき、それは高エネルギー光子に対して感受性が低い。従って、スペクトルは、より低い箱のそれらと関連してより高い箱のカウントを減らしている低エネルギー光子を支持して優先して歪曲される。検出器の減衰係数が公知であるように、これは補正され得、それによって、無限厚さの検出器から見えるのと同等のスペクトルを与え、したがって入射光量子束をより代表する。
図1
図2
図3
図4
図5