特許第5749757号(P5749757)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5749757ポリクロロプレンラテックス組成物及び接着剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5749757
(24)【登録日】2015年5月22日
(45)【発行日】2015年7月15日
(54)【発明の名称】ポリクロロプレンラテックス組成物及び接着剤
(51)【国際特許分類】
   C08L 11/02 20060101AFI20150625BHJP
   C08K 5/13 20060101ALI20150625BHJP
   C09J 111/02 20060101ALI20150625BHJP
   C09K 15/08 20060101ALI20150625BHJP
【FI】
   C08L11/02
   C08K5/13
   C09J111/02
   C09K15/08
【請求項の数】2
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-50340(P2013-50340)
(22)【出願日】2013年3月13日
(65)【公開番号】特開2014-177503(P2014-177503A)
(43)【公開日】2014年9月25日
【審査請求日】2013年12月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003296
【氏名又は名称】電気化学工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】島野 紘一
(72)【発明者】
【氏名】望月 健二
(72)【発明者】
【氏名】金田 邦夫
【審査官】 上前 明梨
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−077038(JP,A)
【文献】 特開2006−199933(JP,A)
【文献】 特開昭54−131647(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00−101/14
C08K 3/00−13/08
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリクロロプレンラテックス固形分換算100質量部と、2,2’−メチレンビス(6−ノニル−p−クレゾール)であるビスフェノール化合物0.1〜20質量部を含有するポリクロロプレンラテックス組成物。
【請求項2】
請求項1に記載のポリクロロプレンラテックス組成物100質量部と、粘着付与樹脂10〜100質量部を含有する接着剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリクロロプレンラテックス組成物及びこれを用いた接着剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリクロロプレンラテックス組成物の耐光変色性を向上させる方法としては、特許文献1や2に記載された手段が知られている。
ポリクロロプレンラテックス組成物の耐熱変色性や耐光変色性を向上させる方法としては、特許文献3に記載された手段が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−86821号公報
【特許文献2】特開平11−209523号公報
【特許文献3】特開平9−157334号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、耐光変色性と耐熱変色性に優れるポリクロロプレンラテックス組成物及びこれを用いた接着剤を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、ポリクロロプレンラテックス固形分換算100質量部と、2,2’−メチレンビス(6−ノニル−p−クレゾール)であるビスフェノール化合物(以下、化合物Aという)0.1〜20質量部を含有するポリクロロプレンラテックス組成物である。
【0006】
「ポリクロロプレンラテックス固形分換算100質量部」とは、ポリクロロプレンラテックスに含まれる固形分の質量をいう。つまり、ポリクロロプレンラテックスの質量とその固形分濃度を乗算した値が100(質量部)となる量を示す。
【0007】
化合物Aは、2,2’−メチレンビス(6−ノニル−p−クレゾール)である
ポリクロロプレンラテックス組成物は、化合物Aを除くフェノール系酸化防止剤0.25〜7.5質量部や、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤0.15〜3.0質量部を含有するものであることが好ましい。
ポリクロロプレンラテックス組成物は、そのまま接着剤として用いることができる。また、ポリクロロプレンラテックス組成物100質量部あたり、粘着付与樹脂10〜100質量部を含有させた接着剤としても良い。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、耐光変色性と耐熱変色性に優れるポリクロロプレンラテックス組成物及びこれを用いた接着剤が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明のポリクロロプレンラテックス組成物は、(1)ポリクロロプレンラテックスと(2)化合物Aを含有するものである。
【0010】
(1)ポリクロロプレンラテックス
ポリクロロプレンラテックスは、2−クロロ−1,3−ブタジエン(以下クロロプレンという)の単独重合体を主成分とするラテックス又はクロロプレン及びこれと共重合可能な単量体との共重合体を主成分とするラテックスである。
クロロプレンと共重合可能な単量体としては、2,3−ジクロロ−1,3−ブタジエン、1−クロロ−1,3−ブタジエン、ブタジエン、イソプレン、スチレン、アクリロニトリル、カルボキシル基含有ビニル単量体及びそのエステル類がある。これらの単量体は2種類以上用いることもできる。これらの単量体の中でも、カルボキシル基含有ビニル単量体を用いると、重合反応の制御が容易になるため好ましい。
【0011】
カルボキシル基含有ビニル単量体としては、、メタクリル酸、アクリル酸、クロトン酸、フマル酸、マレイン酸、シトラコン酸などある。これらのカルボキシル基含有ビニル単量体は2種類以上用いることもできる。これらの単量体の中でも、メタクリル酸(2−メチルプロペン酸又はα−メチルアクリル酸ともいう)を用いると、乳化共重合の制御が容易であるため好ましい。これらの単量体を共重合させることによって、ポリクロロプレンのポリマー鎖中にカルボキシル基を導入させたポリクロロプレンラテックスを得ることができる。得られたポリクロロプレンラテックスを接着剤に使用した場合、各種架橋剤との組み合わせによって常態接着力や耐水接着力や耐熱接着力を向上させることができる。
【0012】
クロロプレンと共重合可能な単量体としてカルボキシル基含有ビニル単量体を用いる場合、その重合時の仕込み量は、重合させる全単量体100質量部のうち、カルボキシル基含有ビニル単量体が0.01〜10質量部となるように調整することが好ましい。カルボキシル基含有ビニル単量体が0.01質量部より少ないと、各種架橋剤との架橋反応性は期待しにくく、カルボキシル基含有ビニル単量体が10質量部よりも多くなると、架橋剤を添加した時のポットライフが短くなる場合がある。
【0013】
ポリクロロプレンラテックスを得るには、これらの単量体を、水及び一般的にクロロプレンの重合で用いられる乳化剤、重合触媒、連鎖移動剤、その他添加剤の存在下で乳化重合させた後、重合停止剤を加えて重合を停止させ、未反応の単量体を除去すれば良い。
【0014】
単量体の重合条件は、特に限定されるものではなく、重合温度、重合触媒、連鎖移動剤、重合停止剤、最終重合率、脱モノマーや濃縮条件等を適切に選定、制御することで、固形分濃度、トルエン可溶部の分子量、トルエン不溶分(ゲル含有量)等を調整することが可能である。
【0015】
ポリクロロプレンラテックスは、減圧濃縮などによって濃縮したり水等を添加して希釈することで、固形分濃度を調整することができる。
ポリクロロプレンラテックスの固形分濃度は特に限定するものではないが、接着剤の乾燥速度及び貯蔵安定性を考慮すると、40〜65質量%の範囲に調整することが好ましい。
【0016】
ポリクロロプレンラテックスは、トルエン不溶分(ゲル含有量)を5〜70質量%に調整することにより、これを用いた接着剤の初期接着力と常態接着力のバランスを向上させることができる。トルエン不溶分が5質量%より低い場合には得られる接着剤の常態接着力が不十分であり、逆に70質量%を越える場合には初期接着力が不十分となる場合がある。
【0017】
(2)化合物A
化合物Aは、得られるポリクロロプレンラテックス組成物の耐光変色性と耐熱変色性を向
上させるために添加するものである。化合物Aは、2,2’−メチレンビス(6−ノニル−p−クレゾール)である
【0018】
アルキリデンビスフェノール類化合物としては、4,4’−ブチリデンビス(2−t−ブチル−5−メチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(2−t−ブチル−5−エチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(2−t−ブチル−5−プロピルフェノール)、4,4’−プロピリデンビス(2−t−ブチル−5−メチルフェノール)がある。
【0019】
アルキレンビスクレゾール類化合物としては、2,2’−メチレンビス(6−ノニル−p−クレゾール)、2,2’−メチレンビス(6−ヘキシル−p−クレゾール)、2,2’−エチレンビス(6−ヘキシル−p−クレゾール)、2,2’−エチレンビス(6−ノニル−p−クレゾール)がある。
【0020】
チオビスフェノール類化合物としては、4,4’−チオビス−(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス−(3−エチル−6−t−ブチルフェノール)がある。
【0021】
アルキレンビスフェノール類化合物としては、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−エチレンビス(4−プロピル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−プロピレンビス(4−プロピル−6−t−ブチルフェノール)がある。
これらのビスフェノール化合物は2種類以上用いることもできる。
【0022】
これらの化合物の中でも、アルキレンビスクレゾール類化合物である2,2’−メチレンビス(6−ノニル−p−クレゾール)を用いると、得られるポリクロロプレンラテックスの耐光変色性及び耐熱変色性の向上効果が大きいため好ましい。
【0023】
化合物Aの添加量は、ポリクロロプレンラテックス固形分換算100質量部に0.1〜20質量部である。化合物Aの添加量が0.1質量部に満たない場合は、得られるポリクロロプレンラテックス組成物の耐光変色性及び耐熱変色性を向上させることができない。化合物Aの添加量が20質量部を超える場合は、得られるポリクロロプレンラテックス組成物及び接着剤の接着強度が低下する。
【0024】
化合物Aのポリクロロプレンラテックスへの添加方法は特に限定されない。化合物Aが固体の場合は、化合物Aを微粒子に粉砕して添加したり、化合物Aを水性エマルジョンとしてから添加すれば良い。これらの方法のうち、水性エマルジョンとしてから添加する方法を用いると、得られるポリクロロプレンラテックス組成物の貯蔵安定性を向上させる効果があるため好ましい。
化合物Aを水性エマルジョンとしてからポリクロロプレンラテックスに添加するには、以下の手順で行えば良い。化合物Aをトルエン等の有機溶剤に溶解させ、更に乳化剤と水を添加して化合物Aの水性エマルジョンを得る。得られた化合物Aの水性エマルジョンをポリクロロプレンラテックスに添加した後、減圧しながら加熱して有機溶剤を取り除く。
【0025】
ポリクロロプレンラテックスには、(3)化合物Aを除くフェノール系酸化防止剤や、(4)ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤を添加することで、耐光変色性及び耐熱変色性を更に向上させることができる。
【0026】
(3)化合物Aを除くフェノール系酸化防止剤
化合物Aを除くフェノール系酸化防止剤としては、アルキルフェノール類化合物、ベンジルフェノール類化合物、アルキルフェニルアクリレート類化合物、アルキルプロピオネート類化合物、アルキルヒドロキシホスホネートジエステル類化合物、アルキルハイドロキノン類化合物がある。
【0027】
アルキルフェノール類化合物としては、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノールがある。
【0028】
ベンジルフェノール類化合物としては、モノ(又はジ又はトリ)(α−メチル−ベンジル)フェノールがある。
【0029】
ベンジルフェニルアクリレート類化合物としては、2−t−ブチル−6−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート、2−[1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ペンチルフェニル)エチル]−4,6−ジ−t−ペンチルフェニルアクリレートがある。
【0030】
アルキルプロピオネート類化合物としては、n−オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、テトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、n−オクタデシル−3−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルフェニ)プロピオネートがある。
【0031】
アルキルヒドロキシホスホネートジエステル類化合物としては、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ベンジルホスホネート−ジエチルエステル、イソオクチル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートがある。
【0032】
アルキルハイドロキノン類化合物としては、2,5−ジ−t−ブチルハイドロキノン、2,5−ジ−t−アミルハイドロキノンがある。
これらの化合物Aを除くフェノール系酸化防止剤は2種類以上用いることもできる。
【0033】
化合物Aを除くフェノール系酸化防止剤の添加量は、ポリクロロプレンラテックス固形分換算100質量部に0.25〜7.5質量部が好ましく、更に好ましくは1.0〜6.5質量部である。この範囲に調整することによって、耐光変色性及び耐熱変色性を向上させる効果が大きい。
【0034】
(4)ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、アルキルヒドロキシフェニルベンゾトリアゾール類化合物、アルキルクロロベンゾトリアゾール類化合物、アルキルヒドロキシクロロベンゾトリアゾール類化合物、ジアミルベンゾトリアゾール類化合物がある。
【0035】
アルキルヒドロキシフェニルベンゾトリアゾール類化合物としては、2−(5−メチル−2−ヒドロキシフェニルベンゾトリアゾール、2−[2−ヒドロキシ−3,5−ビス(α,αジメチルベンジル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−t−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾールがある。
【0036】
アルキルクロロベンゾトリアゾール類化合物としては、2(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾールがある。
【0037】
アルキルヒドロキシクロロベンゾトリアゾール類化合物としては、2−(3−t−ブチル−5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−t−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾールがある。
【0038】
ジアミルベンゾトリアゾール類化合物としては、2−(3,5−ジ−t−アミル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾールがある。
これらのベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤は、2種類以上を併用しても良い。
【0039】
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤の添加量は、ポリクロロプレンラテックス固形分換算100質量部に0.15〜3.0質量部が好ましく、更に好ましくは0.2〜2.0質量部である。この範囲に調整することによって、耐光変色性及び耐熱変色性を向上させる効果が大きい。
【0040】
化合物Aを除くフェノール系酸化防止剤及びベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤のポリクロロプレンラテックスへの添加方法は特に限定されない。これらの化合物が固体の場合は、化合物Aの場合と同じように、これら化合物を微粒子に粉砕して添加したり、これら化合物を水性エマルジョンとしてから添加すれば良い。これらの方法のうち、水性エマルジョンとしてから添加する方法を用いると、得られるポリクロロプレンラテックス組成物の貯蔵安定性を向上させる効果があるため好ましい。これらの化合物を水性エマルジョンとするには、化合物Aを水性エマルジョンとする方法と同一の方法で行えば良い。
【0041】
ポリクロロプレンラテックス組成物は、本発明の効果を阻害しない範囲で、増粘剤、充填剤、造膜助剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、可塑剤、加硫剤、加硫促進剤、消泡剤、抗菌剤、防黴剤、受酸剤等を添加することができる。
【0042】
本発明の接着剤は、上述のポリクロロプレンラテックス組成物を含有するものである。ポリクロロプレンラテックス組成物はそのままでも接着剤として使用できる。また、ポリクロロプレンラテックス組成物に粘着付与樹脂を添加して接着剤としても良い。
【0043】
ポリクロロプレンラテックス組成物に粘着付与樹脂を添加して接着剤とする場合、粘着付与樹脂の添加量は、ポリクロロプレンラテックス固形分換算100質量部に10〜100質量部が好ましい。この範囲に調整することにより、十分な常態接着力を維持することができる。ここでいう粘着付与樹脂とは、ロジン樹脂、重合ロジン樹脂、α−ピネン樹脂、β−ピネン樹脂、テルペンフェノール樹脂、C留分系石油樹脂、C留分系石油樹脂、C/C留分系石油樹脂、DCPD系石油樹脂、アルキルフェノール樹脂、キシレン樹脂、クマロン樹脂、クマロンインデン樹脂などがある。
【0044】
ポリクロロプレンラテックス組成物に粘着付与樹脂を添加する場合、単に粘着付与樹脂を微粒子に粉砕して添加する方法と、粘着付与樹脂を水性エマルジョンとしてから添加する方法がある。接着剤中に粘着付与樹脂を均一に分散させるためには、水性エマルジョンとしてから添加することが好ましい。粘着付与樹脂を水性エマルジョンとするには、化合物Aを水性エマルジョンとする方法と同一の方法で行えば良い。
【0045】
接着剤は、本発明の効果を阻害しない範囲で、増粘剤、充填剤、加硫促進剤、架橋剤、造膜助剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、可塑剤、消泡剤、抗菌剤、防黴剤等を添加することができる。
【0046】
増粘剤は、得られる接着剤の粘度を調節するために添加するものである。増粘剤としては、ポリアクリル酸ナトリウム、水溶性ポリウレタン、会合型ポリウレタン系エマルジョン、アルカリ膨潤型アクリル系エマルジョン、カルボキシメチルセルロース(CMC)、メチルセルロース(MC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、合成スメクタイトがある。
【0047】
充填剤は、得られる接着剤の製品コストを下げるために添加するものである。充填剤としては、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、酸化チタン、硫酸バリウム、合成シリカ等がある。造膜助剤としては、プロピレングリコール、n−ブチルエーテル、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタジオールモノイソブチレート、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタジオールジイソブチレートがある。
【0048】
加硫促進剤は、得られる接着剤の常態接着強度を向上させるために添加するものである。加硫促進剤としては、ジチオカルバミン酸塩系、キサントゲン塩系、チウラム系、アルデヒドアンモニア系、チオウレア系、チアゾール系、スルフェンアミド系、グアニジン系のものがある。
【0049】
ジチオカルバミン酸塩系のものとしては、ペンタメチレンジチオカルバミン酸ピペリジン塩、ピペコリルジチオカルバミン酸ピペコリン塩、ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジブチルジチオカルバミン酸亜鉛、N−エチル−N−フェニルジチオカルバミン酸亜鉛、N−ペンタメチレンジチオカルバミン酸亜鉛、ジベンジルジチオカルバミン酸亜鉛、ジエチルジチオカルバミン酸ナトリウム、ジブチルジチオカルバミン酸ナトリウム、ジメチルジチオカルバミン酸銅、ジメチルジチオカルバミン酸第二鉄、ジエチルジチオカルバミン酸テルルがある。
【0050】
キサントゲン酸塩系のものとしては、ブチルキサントゲン酸亜鉛、イソプロピルキサントゲン酸亜鉛がある。
【0051】
チウラム系のものとしては、テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラブチルチウラムジスルフィド、テトラキス(2−エチルヘキシル)チウラムジスルフィド、テトラメチルチウラムモノスルフィド、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィドがある。
【0052】
アルデヒドアンモニア系のものとしては、ヘキサメチレンテトラミンがある。
チオウレア系のものとしては、N,N’−ジフェニルチオ尿素、トリメチルチオ尿素、N,N’−ジエチルチオ尿素がある。
【0053】
チアゾール系のものとしては、2−メルカプトベンゾチアゾール、ジベンゾチアジルスルフィド、2−メルカプトベンゾチアゾール亜鉛塩、2−メルカプトベンゾチアゾールのシクロヘキシルアミン塩、2−(N,N−ジエチルチオカルバモイルチオ)ベンゾチアゾール、2−(4’−モルホリノジチオ)ベンゾチアゾールがある。
【0054】
スルフェンアミド系のものとしては、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N−t−ブチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N−オキシジエチレン−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N,N−ジシクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミドがある。
【0055】
グアニジン系のものとしては、1,3−ジフェニルグアニジン、ジ−o−トリルグアニジン、1−o−トリルビグアニド、ジカテコールボレートのジ−o−トリルグアニジン塩がある。
【0056】
架橋剤は、得られる接着剤の常態接着強度を向上させるために添加するものである。架橋剤としては、メラミン樹脂等のメチロール基を有する化合物、エポキシ樹脂等のエポキシ基を有する化合物、ブロックイソシアネート化合物や水分散型イソシアネート化合物などのイソシアネート基を有する化合物(イソシアネート化合物)、オキサゾリン基を有する化合物、フェノール樹脂やグリコール類のような分子内に2個以上の水酸基を有する化合物、イミノ基を有する化合物(イミン化合物)がある。
【0057】
これら化合物の中でもイソシアネート化合物は、ポリクロロプレンラテックス中のクロロプレン重合体や乳化剤の水酸基やカルボキシル基と結合するだけでなく、水と反応してイソシアネート誘導体を生成するため、得られる接着剤の耐水接着力や耐熱接着力を大きく向上させることができる。水分散型イソシアネート化合物とは、脂肪族イソシアネートや脂環族イソシアネートから得られる、分子内にビュウレット、イソシアヌレート、ウレタン、ウレトジオン、アロファネート等の構造を有するポリイソシアネートポリマーに親水基を導入したものである。つまり、水中に添加・攪拌すると、水中で微粒子として分散することが可能な自己乳化型イソシアネート化合物である。
【0058】
脂肪族イソシアネートや脂環族イソシアネートとしては、テトラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート(LDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、水添キシリレンジイソシアネート(水添XDI)、トリレンジイソシアネート(TDI)、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、重合MDI、キシリレンジイソシアネート(XDI)、ナフチレンジイソシアネート(NDI)、パラフェニレンジイソシアネート(PPDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(HMDI)、イソプロピリデンビス(4−シクロヘキシルイソシアネート)(IPC)、シクロヘキシルジイソシアネート(CHPI)、トリジンジイソシアネート(TODI)がある。これら化合物の中でも、HDI、MDI、IPDI、水添XDIは、工業的に入手し易いため好ましい。イソシアネート化合物の架橋剤としての効果は、原料化合物よりもむしろ、JIS K−7301で規定される方法によって算出したイソシアネート基含有率に依存する。良好な接着力を得るためには、使用する水分散型イソシアネート化合物のイソシアネート基含有率が17〜25質量%であることが好ましい。
【0059】
接着剤の使用条件は特に限定されない。被着体としては、木材、コンクリート、陶器、布類(ナイロン、ポリエステル、綿などの編織布、不織布)、天然皮革(牛皮、カンガルー皮など)、人工皮革(ポリウレタン、ポリ塩化ビニル樹脂など)、加硫ゴム(SBR、BR、CR)、樹脂(ポリウレタン、EVAなどの非発泡体又は発泡体)の同種又は異種の接着に用いることができる。
【0060】
接着剤を塗布する方法及び装置仕様は特に限定されない。具体的にはカーテンフローコーター法、バーコーター法、ロールコーター法があり、ロールコーター法には、グラビアロールコーター法、リバースグラビアロールコーター法がある。
【実施例】
【0061】
<ポリクロロプレンラテックスの製造>
内容積10リットルの反応器に、窒素雰囲気中で、水100質量部、ロジン酸のナトリウム塩4質量部、水酸化カリウム0.8質量部、ホルムアルデヒドナフタエンスルホン酸縮合物のナトリウム塩0.3質量部、亜硫酸ナトリウム0.3質量部を仕込み、これらを溶解させた後に、撹拌しながらクロロプレン単量体100質量部、n−ドデシルメルカプタン0.14質量部を加えた。過硫酸カリウム0.1質量部を重合開始剤として用い、窒素雰囲気下10℃で重合し、最終重合率が87%に達したところでフェノチアジンの乳濁液を加えて重合を停止した。減圧下で未反応単量体を除去した後、減圧加温により濃縮して、固形分濃度55質量%、ゲル含有量29質量%のポリクロロプレンラテックスを得た。ポリクロロプレンラテックスの固形分濃度及びゲル含有量は、以下に示す方法で測定した。
【0062】
固形分濃度
固形分濃度(%)は以下の式により求めた。式中、Aは空のアルミ皿の秤量値、Bは前記アルミ皿にポリクロロプレンラテックスを2ml入れた際の秤量値、Cはポリクロロプレンラテックスを入れたアルミ皿を110℃雰囲気下で2時間乾燥させた後の秤量値である。
固形分濃度(%)={(C−A)/(B−A)}×100
【0063】
ゲル含有量
ゲル含有量(%)は以下の式により求めた。式中、Aはポリクロロプレンラテックス20gを凍結乾燥して得られたポリクロロプレンゴムの秤量値、Bは前記ポリクロロプレンゴムを0.6wt%の濃度となるようにトルエンを用いて23℃で20時間溶解し、得られたポリクロロプレンゴムのトルエン溶液を、遠心分離機を使用してゲル分を沈殿させた後200メッシュの金網を用いて前記ゲル分を回収し、回収されたゲル分を2時間自然乾燥させた後更に110℃雰囲気下で1時間乾燥した後のゲル分(トルエンに不溶な成分)の秤量値である。
ゲル含有量(%)=(B/A)×100
【0064】
(実施例1)
<ポリクロロプレンラテックス組成物の製造>
上述の方法で得られたポリクロロプレンラテックス100質量部に、化合物Aとして2,2’−メチレンビス(6−ノニル−p−クレゾール)2質量部を添加して、スリーワンモータで600rpm、30分間撹拌して、ポリクロロプレンラテックス組成物とした。4,4’−ブチリデンビス(2−t−ブチル−5−メチルフェノール)は、ボールミル(粉砕機)を使用して微粒子に粉砕し、乳化剤及び水と混合して50質量%の水分散液としたものを用いた。
【0065】
<ポリクロロプレンラテックス組成物の評価>
上述の方法で得られたポリクロロプレンラテックス組成物について、次に示す方法で(1)耐光変色性と(2)耐熱変色性の評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0066】
(1)耐光変色性
耐光変色性の試験は、得られたポリクロロプレンラテックス組成物を、刷毛を用いて吸取紙シム−1(コクヨ株式会社製)に200g/m塗布して23℃で3時間乾燥させた後、Q―SUN Xe−3キセノンアーク試験機(Q−Lab Corporation社製:Q―SUN XE−3−HS)を用いてキセノン(波長:340nm)を照射した際の色の変化を評価した。色の変化の評価は、多光源分光測色計Multi Spectro Colour Meter(スガ試験機株式会社製)を用いて、陶磁製標準白板(L*=92.62、a*=0.14、b*=2.95)との色差(ΔE)を測定した。8時間後の値が30以下かつ24時間後の値が56以下のものを合格とした。
(2)耐熱変色性
耐熱変色性の試験は、得られたポリクロロプレンラテックス組成物を、回転枠付恒温器ギヤーオーブン(エスペック株式会社製:GPHH−202)を用いて、100℃で熱処理した際の色の変化を測定した。測定は、上述の耐光変色性と同様の方法で行った。6日後の値が55以下のものを合格とした。
【0067】
<接着剤の製造>
上述の方法で得られたポリクロロプレンラテックス固形分換算100質量部に、粘着付与樹脂として荒川化学工業社製のタマノールE−100(登録商標)を50質量部と、酸化亜鉛として大崎工業社製のAZ−SWを1質量部添加し、スリーワンモータを用いて攪拌した。この溶液の粘度が25℃×30rpmの3000〜4000mPa・sとなるように増粘剤としてロームアンドハース社製のRM−8Wを添加して接着剤とした。
【0068】
<接着剤の評価サンプルの作製>
上述の方法で得られた接着剤を、25×150mmの帆布2枚にそれぞれ300g(固形分)/mとなるように刷毛で塗布した。前記接着剤を塗布した帆布を、80℃雰囲気下9分間乾燥し、更に室温で1分間放置し後、接着剤の塗布面同士を張り合わせてハンドローラーで圧着して接着剤の評価サンプルとした。
【0069】
<接着剤の評価>
上述の方法で得られた接着剤の評価サンプルについて、次に示す方法で(3)初期剥離強度と(4)常態剥離強度の評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0070】
(3)初期剥離強度
初期剥離強度の試験は、得られた接着剤の評価サンプルを室温で10分間放置した後、引張り試験機を用いて引張り速度200mm/minで180°剥離強度を測定した。値が4.2N/mm以上のものを合格とした。
(4)常態剥離強度
常態剥離強度の試験は、得られた接着剤の評価サンプルを室温にて7日間放置した後、引張り試験機を用いて引張り速度200mm/minで180°剥離強度を測定した。値が6.3N/mm以上のものを合格とした。
【0071】
【表1】

【0072】
実施例1、2、参考例1〜20、及び比較例1〜4におけるポリクロロプレンラテックス組成物及び接着剤
は、ポリクロロプレンラテックス組成物を作製する際の条件を以下に示すとおり変更して
実施例1と同様に作製し、実施例1と同様に評価したものである。
【0073】
参考例2、3)
参考例2及び3のポリクロロプレンラテックス組成物及び接着剤は、実施例1の化合物A
種類及び添加量を表1に示したように変更したものである。
【0074】
(実施例2、参考例4、5
実施例2、参考例4、5のポリクロロプレンラテックス組成物及び接着剤は、実施例1の化合物Aの種類及び添加量を表1に示したように変更したものである。
【0075】
参考
参考のポリクロロプレンラテックス組成物及び接着剤は、実施例1の化合物A
種類及び添加量を表1に示したように変更し、表1に示した「化合物Aを除くフェノール系酸化
防止剤」を添加したものである。
【0076】
【表2】

【0077】
参考例1〜1
参考例1〜1のポリクロロプレンラテックス組成物及び接着剤は、実施例1の化合物Aの種類及び添加量を表2に示したように変更し、表2に示した「化合物Aを除くフェノール系酸化防止剤」を添加したものである。
【0078】
参考例120
参考例120のポリクロロプレンラテックス組成物及び接着剤は、実施例1の化合物
Aの種類及び添加量を表2に示したように変更し、表2に示した「化合物Aを除くフェノール系酸
化防止剤」と「ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤」を添加したものである。
【0079】
【表3】
【0080】
(比較例1)
比較例1のポリクロロプレンラテックス組成物及び接着剤は、実施例1で用いた化合物Aを添加しなかったものである。
【0081】
(比較例2)
比較例2のポリクロロプレンラテックス組成物及び接着剤は、実施例1の化合物Aの種類及び添加量を表3に示した量に変更したものである。
【0082】
(比較例3、4)
比較例3及び4のポリクロロプレンラテックス組成物及び接着剤は、実施例1の化合物Aを本発明の範囲を外れるビスフェノール化合物に変更したものである。
【0083】
本発明で特定した化合物Aを用いた実施例1〜のポリクロロプレンラテックス組成物は、耐光変色性及び耐熱変色性に優れたものであった。また、これらのポリクロロプレンラテックス組成物を用いた接着剤もその接着特性に優れたものであった。
一方、化合物A添加量や種類が本発明の範囲を外れる参考例1〜20、比較例1〜4では、耐光変色性及び耐熱変色性に優れたポリクロロプレンラテックス組成物を得ることができなかったり、接着強度が劣るものであった。