(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
時計の香箱の駆動要素(100)を製造する方法であって、前記駆動要素(100)は、所定のタイプの、螺旋状の小片からなる少なくとも1つのゼンマイ(10)と香箱真(1)を備え、前記ゼンマイ(10)は、所定の第1の幅(LI)及び第1の厚さ(EI)の第1の内側コイル(11)を備え、前記第1の内側コイル(11)は、内側端部(12)に、前記第1の内側コイル(11)を前記香箱真(1)に保持するための、所定の外形(14)を有する保持又はフック手段(13)を備えた構成になっており、上記方法は、 前記香箱真(1)を作製するために、第1の引き延ばし動作において、牽引方向に平行な軸の周りに、小さい半径(R1)と大きい半径(R2)との間の、巻貝形状の漸進的外形(30)を形成するために、バーを牽引することであって、前記漸進的外形(30)は前記大きな半径(R2)の点と前記小さな半径(R1)の点との間に段部(60)を有し、また、前記巻貝形状の漸進的外形(30)は前記内側コイル(11)のための支持セクタ(2)を備える、バーを牽引するステップと;
前記牽引方向に平行であるか又は前記牽引方向と一致している修正軸(DC)の周りでの、前記牽引したバーの第2の修正又は旋盤加工動作において、前記香箱真(1)を枢動ガイドする少なくとも1つの円筒形の肩部(5;6)を備える前記香箱真(1)の完全な外部輪郭を、機械加工又は旋盤加工することであって、前記段部(60)は、前記段部(60)を、牽引したそのままの状態で使用する場合には前記ゼンマイ(10)の前記保持若しくはフック手段(13)のための停止手段として使用され、又は、前記段部(60)を前記第2の修正又はバー旋盤加工動作中に再度機械加工する場合には、前記ゼンマイ(10)の前記保持若しくはフック手段(13)のための相補的な停止若しくはフック手段(3)として使用される、外部輪郭機械加工又は旋盤加工するステップと;
前記第2の修正動作において、前記牽引方向に平行な前記修正軸(DC)の周囲を巡る溝(44)を機械加工することにより、前記溝(44)の幅は、前記ゼンマイ(10)の前記内側コイル(11)を、前記修正軸(DC)の方向において、前記溝(44)の周囲の少なくとも1点で所定の位置に保持するために、前記修正軸(DC)の方向に沿って修正され、前記溝(44)は、前記最小半径(R1)の表面と前記最大半径(R2)の表面との間の前記段部(60)と交差しており、また、前記溝(44)は、前記溝(44)の周囲の、前記修正軸(DC)に関して前記段部(60)と実質的に直径方向に反対側の領域において、前記巻貝形状の漸進的外形(30)に実質的に接するように、機械加工するステップとから成ることを特徴とする、時計の香箱の駆動要素(100)を製造する方法。
前記段部(60)は、前記最小半径(R1)と前記最大半径(R2)との差によって作製され、前記差は、前記ゼンマイ(10)の前記厚さ(EI)より大きいか、又はこれと等しいことを特徴とする、請求項1に記載の時計の香箱の駆動要素(100)を製造する方法。
前記ゼンマイ(10)の前記保持又はフック手段(13)は、前記第1の内側コイル(11)の前記内側端部(12)におけるT字型外形を有して作製され、前記内側端部(12)は、削減された幅(LL)のコア(19)によって、前記ゼンマイ(10)の前記第1の幅(LI)を有する本体に取り付けられる横断方向バー(18)を備えること、及び、
前記溝(44)の前記幅は、前記コア(19)の前記削減された幅(LL)より大きいか又はこれに等しい幅となるように選択されること
を特徴とする、請求項2に記載の時計の香箱の駆動要素(100)を製造する方法。
前記ゼンマイ(10)の前記保持又はフック手段(13)は、あり継ぎされた外形を有して作製され、最大幅部分の幅は、前記溝(44)の前記幅より大きく、最小幅部分は、前記溝(44)の入口において前記段部(60)に当接して固定されるよう配設されていることを特徴とする、請求項2に記載の時計の香箱の駆動要素(100)を製造する方法。
前記溝(44)を機械加工した後、前記ゼンマイ(10)の前記保持又はフック手段(13)を、前記段部(60)に、又は前記段部(60)に機械加工された前記相補的停止若しくはフック手段(3)に、当接するよう配置するステップと、
前記香箱真(1)及び/又は前記ゼンマイ(10)を溶接及び/又は鑞接及び/又は槌打することにより、前記ゼンマイ(10)を前記溝(44)内に固定するステップとから成ることを特徴とする、請求項2に記載の時計の香箱の駆動要素(100)を製造する方法。
前記ゼンマイ(10)の前記保持又はフック手段(13)は、前記第1の内側コイル(11)上の少なくとも1つの突起部(15)を有して作製され、前記突起部(15)は、前記ゼンマイ(10)の恒久的な局所的変形によって達成されることを特徴とする、請求項1に記載の時計の香箱の駆動要素(100)を製造する方法。
前記ゼンマイ(10)の前記保持又はフック手段(13)は、前記ゼンマイ(10)を型抜きして作製した、前記第1の内側コイル(11)上の少なくとも1つの突出部(16A)を有して作製されることを特徴とする、請求項1に記載の時計の香箱の駆動要素(100)を製造する方法。
前記ゼンマイ(10)の前記保持又はフック手段(13)は、前記ゼンマイ(10)を、その前記内側端部(12)において、前記修正軸(DC)の方向へ折り畳む及び/又は圧延することにより、駆動停止機構(17)の形態で作製されることを特徴とする、請求項1に記載の時計の香箱の駆動要素(100)を製造する方法。
前記ゼンマイ(10)の前記支持セクタ(2)の少なくとも1つの部分は、12Raμm超の表面粗度を、引き延ばし方向において、前記引き延ばし動作中に作製される縦溝の形状で付与されていることを特徴とする、請求項1に記載の時計の香箱の駆動要素(100)を製造する方法。
前記ゼンマイ(10)の前記支持セクタ(2)の少なくとも1つの部分は、12Raμm超の表面粗度を、引き延ばし方向において、前記修正動作中に作製されるギザギザの形態で付与されていることを特徴とする、請求項1に記載の時計の香箱の駆動要素(100)を製造する方法。
前記ゼンマイ(10)の前記第1の内側コイル(11)の前記厚さ(EI)は、前記ゼンマイ(10)の後続のコイルの厚さ(ES)より小さく、前記後続のコイルは、一定の断面又は前記第1の内側コイル(11)から離れてゆく漸進的な断面を有することを特徴とする、請求項1に記載の時計の香箱の駆動要素(100)を製造する方法。
前記ゼンマイ(10)の前記第1の内側コイル(11)の少なくとも前記内側端部(12)は、前記香箱真(1)の前記支持セクタ(2)に当接する内面において、12Raμm超の表面粗度を付与されていることを特徴とする、請求項1に記載の時計の香箱の駆動要素(100)を製造する方法。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、A〜Nの符号を付けた、時計の香箱を作製するための引き延ばしたバー部分の様々な変形例の、バーの方向に垂直な概略断面図である。
【
図2】2Aは、第1の引き延ばし動作によるフックを有する香箱真の作製を示す。2Bは、第2の修正動作による、フックを有する香箱真の作製を示す。
【
図3】3Aは、第1の引き延ばし動作による、香箱真に平行な接線溝を備える香箱真の作製を示す。3Bは、第2の修正動作による、香箱真に平行な接線溝を備える香箱真の作製を示す。
【
図4】4Aは、第1の引き延ばし動作による、香箱真の方向に平行な修正軸上にセンタリングされた円形溝を横切る、香箱真に平行な接線溝を備える香箱真の作製を示す。4Bは、第2の修正動作による、香箱真の方向に平行な修正軸上にセンタリングされた円形溝を横切る、香箱真に平行な接線溝を備える香箱真の作製を示す。
【
図5A】
図5Aは、特別なカレンダーを通過させて、初期破断無しに、離間した波状曲線の浮き上がった突起部を生成した、ゼンマイの端部断面を示す。
【
図5B】
図5Bは、
図1Jに示す、対応する香箱真を有する駆動要素の、香箱軸に沿った上面図であって、この対応する香箱真は、上記突起部を受容しゼンマイを保持するための母線に沿った接線周縁溝を含む。
【
図5C】
図5Cは、上記ゼンマイの縦長方向に沿った平行なスロットの間に、ゼンマイ表面の残りの部分に対して突出する突起部を形成する、少なくとも1つの褶曲した中央突出部を生成するために型抜きされた、ゼンマイの内側端部の側面図である。
【
図5D】
図5Dは、上記ゼンマイの縦長方向に沿った平行なスロットの間に、ゼンマイ表面の残りの部分に対して突出する突起部を形成する、少なくとも1つの褶曲した中央突出部を生成するために型抜きされた、ゼンマイの内側端部の上面図である。
【
図6】
図6は、
図1Hに示すような狭い長手方向スロット即ち貫通孔を備える香箱真を有する駆動要素の、香箱軸に垂直な断面図であり、ここでは、ゼンマイが備えるアイレット又は貫通孔又は孔に、ゼンマイの内側端部を保持するためにピンが挿入される。
【
図7A】
図7Aは、香箱真の嘴部又は
図6によるピンに引っ掛けるための隙間を画定するための、ゼンマイの内側端部の型抜きを示す。
【
図7B】
図7Bは、香箱真の嘴部又は
図6によるピンに引っ掛けるための隙間を画定するための、ゼンマイの内側端部の型抜きを示す。
【
図8A】
図8Aは、香箱真が、隙間を通って開口した、ゼンマイの内側端部を受容する前面溝を有する変形例を、
図2と同様の様式で示す。
【
図8B】
図8Bは、香箱軸を通過する平面内における、
図8Aと同一のアセンブリの断面図である。
【
図9A】
図9Aは、T字型のゼンマイの端部を有する実施形態であって、香箱軸に対して中心を外れて周囲を巡る溝と交差する母線に沿った溝を示す、香箱真の立面図である。
【
図9C】
図9Cは、T字型端部を備える関連するゼンマイの端部の立面図である。
【
図9D】
図9Dは、内面の面取りを示す、対応する上面図である。
【
図10A】
図10Aは、湾曲した半径を有する凹部を備える香箱真の概略斜視図である。
【
図10B】
図10Bは、ゼンマイを設けた
図10Aと同一の香箱真の、香箱真に垂直な断面図であり、このゼンマイの内側端部は、小さな半径に巻かれ、上記凹部内に格納されている。
【
図11A】
図11Aは、平坦部と、ゼンマイの内側コイルを格納するスロットとを、互いに実質的に平行な状態で備える香箱真の、概略斜視図である。
【
図11B】
図11Bは、
図11Aの香箱真の、香箱軸に垂直な断面図であり、上記香箱真はゼンマイを備え、ゼンマイの内側端部は平坦部に当接し、その後摺動してスロットに入る。
【
図12】
図12は、香箱真がゼンマイの内側端部を受容するめくらスロットを備える変形例を、
図2と同様の様式で示す。
【
図13】
図13は、香箱真が、ゼンマイの内側端部を受容する平坦部によって範囲を定められたチャンバを備える変形例を、
図2と同様の様式で示す。
【
図14】
図14は、ゼンマイの、香箱軸に垂直な概略断面図であり、ゼンマイの内側コイルの端部は90°近く褶曲しており、直径に対して横断方向のスロットを備える香箱軸に挿入されて、これによって上記ゼンマイを遊び無しに格納する。
【
図15】
図15は、ゼンマイの、香箱軸に垂直な概略断面図であり、ゼンマイの内側コイルは、それ以外のコイルに対して薄くなっており、円筒形の香箱真に部分的に巻き付けられる。
【
図16A】
図16Aは、直径方向に対向する2つの溶接点を有する香箱真に溶接されたゼンマイを有する実施形態を示す。
【
図16B】
図16Bは、香箱真の溝に設置及び嵌合された後、そこに留めるために所定の位置に槌打されたゼンマイを示す。
【
図16C】
図16Cは、ゼンマイの軸を通過する概略断面図であって、このゼンマイは円形溝内に突出するよう設置され、また、上側において、その縁部を変形させるサムホイールの作用を受けるよう設置され、その下側縁部は、ゼンマイ上のサムホイールの作用の結果である変形表面を有して図示されている。
【
図16D】
図16Dは、溝の壁にサムホイールを適用し、その溝にゼンマイをクランプ留めして、上記ゼンマイを変形領域の下部に閉じ込める、ゼンマイの硬度が香箱真の硬度より高い通常の場合に好ましい応用例を、同様の様式で示す。
【
図17A】
図17Aは、ここでは2つの肩部を備える、香箱真上に配設された対向する外形と恊働するよう、ゼンマイの内側端部をあり継ぎした特定の実施形態を示す。
【
図17B】
図17Bは、2つの凹部を備えるゼンマイの端部を有する、同様の変形例を示し、これら2つの凹部は停止部材として、対応するアーバに差し込まれる2つのピンと恊働する。
【
図18】
図18は、牽引によって作製した接線溝及び正方形の形状のラチェット駆動手段を有する香箱真の斜視図である。
【
図19】
図19は、香箱を含むムーブメントを備えた時計のブロック図であり、この香箱は、香箱真とゼンマイとを備える本発明による駆動要素を含む。
【
図20】
図20は、ゼンマイを担持する、巻貝形状の漸進的な外形を有する香箱駆動要素の概略端面図である。
【
図22】
図22は、ゼンマイ停止表面と恊働するようになっている香箱真支持表面を、コイルの内側端部を受容する凹部から見て示した、香箱真の詳細な斜視図であり、上記支持表面は、ゼンマイの巻き全体を通してその厚みが徐々に薄くなっている部分にわたって、ゼンマイを受容するために配設された周縁溝の両側に延在する。
【
図23】
図23は、停止表面が巻き上げ又は褶曲形状である、ゼンマイに嵌合する香箱真の
図22と同じ領域を、
図22と同じ様式で示す。
【
図24】
図24は、停止表面がT字型切り抜き形状である、ゼンマイに嵌合する香箱真の
図22と同じ領域を、
図22と同じ様式で示す。
【
図25】
図25は、停止表面があり継ぎ型切り抜き形状である、ゼンマイに嵌合する香箱真の
図22と同じ領域を、
図22と同じ様式で示す。
【
図26】
図26は、停止表面が舌部を形成する型抜きアイレットである、ゼンマイに嵌合する香箱真の
図22と同じ領域を、
図22と同じ様式で示す。
【
図27】
図27は、直径が極めて小さい香箱真に適した外形を有する実施形態を、ゼンマイを担持する巻貝形状の漸進的な外形を有する香箱駆動要素の概略端面図で示す。
【
図28】
図28は、直径が極めて小さい香箱真に最適な外形を有する実施形態を、
図27の駆動要素の、香箱真が備えるフックを通過する平面における横断方向断面図で示す。
【
図29】
図29は、直径が極めて小さい香箱真に最適な外形を有する実施形態を、アセンブリの香箱真のみを示す端面図で示す。
【
図30】
図30は、直径が極めて小さい香箱真に最適な外形を有する実施形態を、同一の香箱真の
図29の方向Aにおける側面図で示す。
【
図31】
図31は、香箱真の外形の変形例の、ゼンマイの内側端部を受容する領域における部分図である。
【
図32】
図32は、香箱真の外形の別の変形例の、ゼンマイの内側端部を受容する領域における部分図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明は、時計の香箱の駆動要素100の製造方法に関し、この駆動要素は、少なくとも所定のタイプの、螺旋状の小片からなるゼンマイ10を備え、このゼンマイ10は、所定の第1の幅LI及び第1の厚さEIの第1の内側コイル11を備える。この第1の内側コイル11は、内側端部12に、第1のコイル11を香箱真1に保持するための、所定の外形14の保持又はフック手段13を備える。この外形14は、特に、型抜き又は機械加工されたアイレット、折り曲げによって作製された褶曲、圧延によって作製された縁部、突起部、切り欠き部、突出要素、若しくは切り抜き部分、又は単に、香箱真1上の所定の点におけるゼンマイ10の適切な局所的支持のための、同一の曲率半径の円筒形外形様々な形状をとってよく、これによって上記ゼンマイと香箱真を、レーザ溶接、溶接、鑞接、接着等によって互いに固定することができる。駆動要素10は更に、香箱真1を含む。
【0018】
本発明によると、この香箱真1を製造するために、第1の引き延ばし動作において、バーを引き延ばして、引き延ばし方向に平行な軸の周りに外形30を作製し、この外形30の、引き延ばし方向に垂直な断面は、小さい半径R1と大きい半径R2の間で、大きい半径R2の突出点61と小さい半径R1のくぼみ点62との間の段部60によって変化する、巻貝形状をしている。小さい半径R1の領域63と共に、この段部60はくぼみ点62の周りで凹部64の範囲を画定する。この凹部64は、以下に説明するように、ゼンマイ10の固定方法に従って様々な方法で使用される。この巻貝形状の漸進的外形30は、その周の少なくとも一部において、ゼンマイ10の内側コイル11のための支持セクタ2を有する。
【0019】
牽引方向に平行な修正軸DCの周りで、引き延ばされたバーの修正又はバー旋盤加工を行う第2の動作において、香箱真1の完全な外部輪郭を機械加工又は旋盤加工する。この完全な輪郭は、香箱真1を枢動ガイドするための少なくとも1つの円筒形の肩部5、6を含む。段部60を、牽引したそのままの状態で使用する場合には、段部60は、ゼンマイ10の保持又はフック手段13のための停止手段として使用される。又は、上記段部60を上記第2の修正又はバー旋盤加工動作中に再度機械加工する場合には、段部60は、ゼンマイ10の保持又はフック手段13のための相補的な停止又はフック手段3として使用される。
【0020】
本発明の第1の変形実装形態では、ゼンマイ10の保持又はフック手段13は、所定の曲率の少なくとも1つの支持表面65へと制限される。ゼンマイ10の内側端部12は、凹部64内に、段部60に当接して又は段部60の近傍に位置決めされる。内側コイル11は、段部60から離れる方向に延在し、香箱真1の、常に増加している半径に当接する。よってゼンマイ10は、段部60に対して、凹部64の側面の香箱真1に巻きつけられる。ゼンマイ10は、特にレーザ溶接、溶接、鑞接、接着等によって、ゼンマイ10の内側支持表面65と、小さい半径R1の領域63との間で、アーバ1に非可逆的に固定される。この非可逆的な固定は、一点において、又は点のネットワークにおいて、又は母線に沿って等で達成してよい。特定の実施形態では、固定方法は、香箱真の別の領域、例えば、小さい半径R1の領域63に対して実質的に直径方向に反対側の領域において繰り返される。この第1の変形例では、最小半径R1と最大半径R2の差は、ゼンマイ10の厚さEIに実質的に等しいか、又は、第1の内側コイル11の端部におけるゼンマイ10の厚さに少なくとも等しい。よって、第2のコイルは、ゼンマイ10の耐疲労性にとって不利益となる張り出し又は段差を有することなく、第1のコイルの上に重なる。この第1の変形例は、段部60を、牽引したそのままの状態で使用し、これにより、段部60がゼンマイ10の保持又はフック手段13のための停止部材として作用する場合に関するものである。
【0021】
本発明の第2の変形実装形態では、第1のコイルの内側端部12が凹部64内に位置決めされ、ゼンマイ10が、段部60に関して凹部63と反対側で香箱真1上に巻き付けられるよう、突出点62の周りの領域をまたぐように、ゼンマイ10をアーバ1に適用する。この第2の変形例は、段部60を第2の修正又はバー旋盤加工動作中に再度機械加工して、ゼンマイ10の保持又はフック手段13のための相補的な停止又はフック手段3を形成する場合に関するものである。この修正は、ゼンマイ10の可能な限り良好な支持を保証し、ゼンマイ10にかかる剪断応力を制限した状態で、ゼンマイ10が段部60を超えることができるようにするためにも必要である。
【0022】
好ましくは、この第2の変形例では、第2の修正動作において、牽引方向に平行な修正軸の周囲を巡る溝44を機械加工し、この溝44は、ゼンマイ10の内側コイル11を、上記修正軸DCの方向において、溝44の周囲の少なくとも1点で所定の位置に保持するために、上記修正軸DCの方向に沿って修正された幅を有する。この溝44は、ゼンマイ10の小さい半径R1の表面と大きい半径R2の表面との間の段部60と交差しており、また、好ましくは、溝44は、溝44の周囲の、修正軸DCに関して上記段部60と実質的に直径方向に反対側の接触領域ZTにおいて、巻貝形状の漸進的外形30に実質的に接している。
【0023】
よって、第1の引き延ばし動作では、バー50を引き延ばして少なくとも1つの連続外形30を形成し、この外形30は、支持セクタ2に対して突出又はくぼんでおり、支持セクタ2は、バー50の軸に平行であるか又はバー50の軸と一致している軸の周りにおける円形又は巻貝形状外形を有する。牽引方向と垂直な平面におけるこの連続外形30の断面は、香箱真1上に作製された相補的フック手段3の突出と適合しており、相補的フック手段3は、対応する香箱真1が引っ掛けるようになっている所定のタイプのゼンマイ10のための保持又はフック手段13に対して相補的な外形を有する。特にくぼみ角度部分において応力の相当な集中をもたらし、香箱真を疲労させる、小さい半径を有するツールを用いる機械加工技術と比較して、引き延ばしによる製造は、外面により良好な耐疲労性を与え、突出部分又は浮き上がったくぼみ部分での応力のより良好な分散をもたらす。引き延ばしの結果として得られる加工硬化は、全周縁表面及び特にフック領域に影響を与え、従って、これらは高いレベルの外面硬度及び良好な耐摩耗性を維持する。
【0024】
平坦な閉形状外形に基づいて上昇する同一の湾曲に平行な母線に沿って構成された立体を、ここでは、幾何学的説明の意味において、「プリズム」と呼ぶ。好ましくは、本説明の場合、プリズムは、その母線が修正軸DCに平行、かつ特定の外形、特に円形又は巻貝形状外形に垂直な、真っ直ぐなプリズムである。第1の変形例では、外形として巻貝形状を選択した場合、外形は、香箱真1が恊働するようになっているゼンマイ10の第1の内側コイル11の厚さに応じて作製され、その周全体にわたる巻貝形状の増大は、上記第1のコイル11の厚さEIに近く、ゼンマイの第1のコイル11をアーバ1に巻き付ける際、第1のコイル11は常に、又は少なくとも可能な限り、巻貝形状の断面を有するプリズムの側面によって形成される支持セクタ2を圧迫するよう計算される。よって、ゼンマイ10が第1の内側コイル11の内側端部12を覆う際、ゼンマイ10は、上記支持表面2と端部12との間における支持の不連続によって変形することはない。
【0025】
修正軸DCの周りでの再機械加工又はバー旋盤加工による第2の修正動作では、アーバ1の完全な外部輪郭を機械加工又は旋盤加工する。第2の機械加工動作はバー旋盤加工又は旋盤加工動作であると、最も経済的であるため好ましい。
【0026】
図1A〜1Nは、香箱真の作製に適した、引き延ばし後の様々な非制限的な断面外形を示す。好ましくは、連続外形30は真っ直ぐであり、即ち、バー50の軸に平行な母線によって範囲を定められている。ねじれた実施形態も可能であるが、これにはより高いコストが伴うので、本説明では真っ直ぐな連続外形30に限定して説明を行う。
【0027】
本発明の特定の好ましい実装形態では、香箱真1の製造は、所定のタイプの、又は香箱真との境界面に関して共通の特徴を有する一群のバネに属する、螺旋状の小片からなるゼンマイ10を有するこの香箱真1の所期の使用と結びついている。この境界面は特に、自由な内側端部12を有する第1の内側コイル11に関わるものである。この第1のコイルは、所定の幅LI及び所定の厚さEIを有する。これは、内側端部12を、以下の説明に示すような様々な外形及び/又は様々な幅及び/又は様々な厚さで作製することができないことを意味するものではない。
【0028】
第2の変形例による実施形態では、場合に応じて、内側自由端部12はアイレット16を含んでも含まなくてもよく、このアイレット16は
図7A及び
図7Bに示すように、例えば型抜きされているか、又は3/4だけ型抜きされた突出部を折り曲げた結果としてできる。自由端部12は、以下に説明するように、また例えば
図9C、17A、17Bに示すように、特定の形状の切り抜きを含んでもよい。
【0029】
図1Cの場合、連続外形30の断面として、上記第1の内側コイル11の所定の厚さEIと同一の幅を有するスロット31を選択する。この実施形態は、特に
図12に示すような、停止領域17を形成する端部の褶曲を備えるバネ10に適している。
【0030】
図1Gの場合、連続外形30の断面として、第1の内側コイル11の所定の幅LIより大きな幅LGの溝32を選択する。
図9Cに示すように、これに基づいて作製された香箱真1を、T字型端部12を備えるゼンマイ10と組み合わせる場合、幅LGは、T路型の横断方向長さLTより大きいかまたはこれに等しく、好ましくはこれに等しい。
【0031】
図1Hの場合、連続外形30の断面として、第1の内側コイル11の所定の幅LIよりかなり小さい幅LFを有する狭いスロット38を選択する。香箱真1の相補的フック手段3を形成するピン39又は金属ホイル製鍵部の挿入のためにこの狭いスロット38を設け、この相補的フック手段3は、
図6に示すように、ゼンマイ10の第1のコイル11の端部12のアイレット16と恊働する。この狭いスロットを有する実施形態は、約数十ミリメートル、1ミリメートルに近い極めて小さい直径の香箱真に対する複雑な作業となるピンホール穿孔の、有利な代替例である。
【0032】
図1F、1J、1K、1Lの場合、連続外形30の断面は、バー50の母線に沿った接線溝33として選択され、その外形は、対応するゼンマイの第1の内側コイル11が備える突起部15の外形に適合するか、又は、その外形は単に、ゼンマイ10の局所的な隆起部分(褶曲、巻き、フック、突出部、カラー等)の停止表面を形成するために十分なサイズである。
【0033】
好ましくは、この溝33の外形は円弧等であり、弧の中心は外形の外側に向いており、また、この弧は、それ自体と対向する2つの半径の凹面によって、支持セクタ2の断面の円形又は巻貝形状の輪郭に接続される。対応するゼンマイ10の突起部15の断面もまた円弧等であり、それ自体と対向する2つの半径の凹面によって、ゼンマイのストランドに接続される。
【0034】
図1J、1K、1Lの特定の場合、連続外形30は、複数の接線溝33の外形であり、溝33はそれぞれ突起部15の外形と適合する外形を有し、円筒の周り、又は、牽引方向において支持セクタ2を備える、香箱真1の枢軸に平行な巻貝形状の断面を有するプリズムの周りで、角度的に等距離である。
図1Jの実施形態を再び
図3A及び3Bに示し、これは、
図15Bによる駆動要素100を形成する香箱真1を製造するためのものであり、他の構成部品として、
図5Aの特別なゼンマイ10があり、この図は、特別なカレンダーを通過させて、初期ひび割れ無しに、離間した波状曲線の浮き上がった突起部15を生成した、このタイプのゼンマイ10の端部断面12を示す。好ましくは丸みを帯びた外形を有し、ある半径で湾曲した端部を有する溝33は、母線に沿った周縁接線溝を形成し、これによって、ゼンマイ10の第1のコイル11と円筒形のセクタ2との間の良好な支持接触を保証しつつ、これらの突起部15を受容してゼンマイ10を完璧に保持する。
【0035】
図1Mは、突出したりくぼんだりしている連続外形30と、その内接部分と、バー50の包絡線内の円筒形肩部2を有する表面とを有する、いずれのタイプのフックを有する浮き上がり部分の場合を示す。
【0036】
図1Nは、実質的に直径方向に対向している2つの平坦部36及び37を備える連続外形30の場合を示し、これら平坦部は、好ましくは支持セクタ2の牽引方向に関して直径方向に対向している。この実施形態は、
図16Aに示す変形例に適しており、ここではゼンマイ10の第1の内側コイル11が、直径方向に対向する、好ましくはこのタイプの平坦部36又は37上にある2つの点に溶接されている。
【0037】
図2〜4は、ゼンマイの適切な保持を保証する引き延ばされた外形に基づく有利な実施形態を示す。
【0038】
図2は、フック34を有する香箱真1の実施形態を示しており、
図2Aによる第1の引き延ばし動作によって、この実施形態は
図1A又は
図1Bによる連続外形30を有し、
図1Bの変形例では、連続外形30は、次のコイルによる第1の内側コイル11のより良好な被覆をもたらすハウジング35に連接されたフック34の外形である。上記ハウジング35に連接されたフック34の外形は、所定のタイプの螺旋状の小片からなるゼンマイ10の第1の内側コイル11の内側端部12が備えるアイレット16の外形と適合する。特にバー旋盤加工による、
図2Bによる修正動作中、フック34の範囲を定める上面34A及び底面34Bを旋盤加工してアイレット16と恊働するようにし、上側肩部5及び下側肩部6を回転させて、香箱真1を枢動ガイドするようにする。このような、フックを有する香箱真の従来の構成は、引き延ばし及びその直後の旋盤加工仕上げの結果として、ロバストかつ経済的な様式で達成される。
【0039】
図3は、香箱真に平行な接線溝33を備える香箱真1の実施形態を示しており、
図3Aによる第1の引き延ばし動作によって、この実施形態は、例えば
図1F、1J、1K、1Lに示すような連続外形30を有し、また、香箱真1並びにその上側肩部5及び下側肩部6の仕上げを行うために、ここでもまた好ましくはバー旋盤加工である
図3Bによる修正動作を行う。上で説明し、また
図5A及び5Bに示すように、この香箱真1は、特定の様式で配設された、褶曲領域又は極めて小さい半径の領域を有さないうねりのない外形の結果として初期ひび割れのない、ゼンマイ10と関連しており、第1のコイル11の前領域にわたって、ゼンマイ10の極めて良好な周縁保持をもたらす。
図5C及び5Dは、ゼンマイ10の有利な変形例を示し、ゼンマイ10は、ゼンマイの縦長方向に沿った平行なスロットの間に、ゼンマイ10の表面の残りの部分に対して突出する突起部を形成する、少なくとも1つの褶曲した中央突出部を生成するために、型抜きされている。この構成は、ゼンマイの振動を補正するという利点を有している。この構成を、少なくとも1つの突起部15が香箱真1の溝33と恊働することが有利である特定の場合だけでなく、香箱軸(又は、時計のゼンマイを受容するようになっているテンプ軸若しくはいずれの軸)の方向において、このタイプの螺旋形のゼンマイを正確に位置決めすることが望ましいような、また、特に香箱をドラムに対して及びいずれのカバーに対して位置決めすることが望ましいような一般的な場合にも、使用することができる。
【0040】
図4は、香箱真DBに平行な接線溝32を備える香箱真1の実施形態を示し、この溝32は、香箱真の軸に平行な修正軸上にセンタリングされた、従って香箱軸に対して中心がずれた円形溝44と交差しており、この実施形態は、
図1Gによる連続外形30を有する接線溝32が作製される
図4Aによる第1の引き延ばし動作と、円形溝43並びに香箱真1の範囲を画定する上面44A及び底面44B並びに香箱真1の上側肩部5及び下側肩部6が作製される
図4Bによる修正動作とによるものである。
【0041】
好ましくは、上述のように、接線溝32は、第1の内側コイル11の所定の幅LIより大きい幅LGを有する。
図9C及び9Dは、関連するゼンマイ10の好ましい変形例を示し、ゼンマイ10はT字型端部12を備え、この端部12は、コア19によってゼンマイ10の残りの部分に接続される、長さLTの頭部18を有し、コア19は、ゼンマイの巻きの支持を改善するように、面取り19Aに隣接することが好ましい。幅LGは、横断方向バーのこの長さLTより大きいか又はこれに等しく、好ましくはこれに等しい。好ましくは、円形溝44の幅LLは、コア19の幅に等しく、溝44の底部は、上記コア19を支持するための円筒形支持表面2Aを画定し、支持セクタは、ゼンマイ断面の全幅LI、続いてコア19、反対側の頭部18を支持する役割を果たす。
【0042】
このT字型外形は、非限定的な、経済的な例である。
図17Aは、ここでは2つの肩部を備える香箱真上に配設された対向する外形と恊働するように、ゼンマイの内側端部があり継ぎされた特定の実施形態を示す。
図17Bは、ゼンマイの端部12が、対応する香箱真1に嵌合する2つのピンと停止手段して恊働する2つの凹部を備える、同様の変形例を示す。好ましくは、ゼンマイ10の端部12は円形溝44内に埋め込まれ、溝のフランク46に、少なくとも一方の側で、好ましくは両側で当接する。
【0043】
香箱真1を製造する方法は、内部若しくは外部ネジ切り、又は旋盤加工、又は摩砕ファセットによってラチェット駆動手段7を機械加工する動作を含み、
図18に示すように、上記駆動手段7は従来通りの正方形で形成される。好ましくは、修正を回避するために、この駆動手段7は、
図4A(内部ネジ切り)又は
図5B(外部ネジ切り)に示すように、引き延ばしの後の香箱真1の第2の修正動作中の旋盤加工によって達成することができる内部又は外部ネジ切りからなる。
【0044】
図8A及び8Bは、隙間42を通って開口した、ゼンマイ10の内側端部12を受容する前面溝41を有する香箱真1を示し、この前面溝41は、枢軸Dに平行な又は枢軸Dと一致した軸DGの周囲を巡る前面溝41を機械加工する動作を含む方法で作製され、前面溝41は、所定のタイプの螺旋状の小片からなるゼンマイ10の第1の内側コイル11の所定の幅LIに等しい幅LHを有する。この機械加工動作は、前面溝41の外壁43に少なくとも1つの隙間42を機械加工することを更に含み、隙間42は、所定のタイプの螺旋状の小片からなるゼンマイ10の第1の内側コイル11の所定の厚さEIより大きい幅を有し、これにより、上記第1のコイル11がこの隙間42を通過することができる。
【0045】
好ましくは、上述の方法のいずれかによる香箱真1の製造中に、12Raμm超の表面粗度を、支持セクタ2の少なくとも一部分に、引き延ばし方向において、上記引き延ばし動作中に作製される縦溝の形状又は第2の修正動作中に作製されるギザギザの形状で付与する。この粗度により、特に、香箱真1の軸に対面する面において、ゼンマイが第1の内側コイル11の同様の摩擦表面を有する場合、香箱真とゼンマイの間の摩擦保持が可能となる。当然、この機械的な実施形態の代替として、このタイプの摩擦表面は、表面処理、電気メッキタイプの突出部等によるものであってもよい。
【0046】
本発明は、時計の香箱の駆動要素100に関し、この駆動要素100は、所定のタイプの、螺旋状の小片からなる少なくとも1つのゼンマイ10を備え、このゼンマイ10は、所定の第1の幅LI及び第1の厚さEIの第1の内側コイル11を備え、この第1の内側コイル11は、内側端部12に、第1のコイル11を香箱真1に保持するための、所定の外形14の保持又はフック手段13を備える。この駆動要素100は、好ましくはバー50を引き延ばすことによる形成され上述の方法の1つによって作製される、香箱真1を更に含む。
【0047】
この香箱真1は、枢軸DPの周りにおける枢動ガイド手段5、6を含み、少なくとも1つのゼンマイ10の第1の内側コイル11を支持するための少なくとも1つの支持セクタ2を含み、香箱真1は、上記少なくとも1つのゼンマイ10との枢動恊働のために、保持及びフック手段13の外形14に対して相補的な外形314を有する相補的フック手段3を備える。
【0048】
ゼンマイ10の保持又はフック手段13が突出していか凹状であるかによって、香箱真1の相補的フック手段3はそれぞれ凹状であるか又は盛り上がっている。
【0049】
円筒に対して又は香箱真1の枢軸に平行な巻貝形状断面のプリズムに対して内部で離間し、支持セクタ2を備える、
図8A、8B、12、13又は14の駆動要素100の実施形態では、香箱真1は、保持若しくはフック手段13及び/又は第1の内側コイル11の少なくとも一部を受容するための少なくとも1つのキャビティ4を含む。
【0050】
図8A及び8Bの特定の場合、このキャビティ4は前面溝41を含み、前面溝41の幅LHは、最小の遊びでゼンマイ10を受容するよう設定されている。有利な実施形態では、前面溝41は、枢軸Dに平行又は枢軸Dと一致する軸DGの周囲を巡り、その幅LHは、上記ゼンマイ10の第1の内側コイル11の所定の幅LIに等しい。香箱真1は、前面溝41の外壁43に少なくとも1つの隙間42を含み、上記隙間42は、第1の内側コイル11の所定の厚さEIより大きな幅を有し、これにより、上記第1のコイル11がこの隙間42を通過することができる。好ましくは、この隙間12は、過度の応力なしに第1のコイル11を保持することができるよう十分に幅広く、その一方で、ゼンマイ10の端部12の適切な保持を保証するのに十分なほど小さい。好ましくは、上記隙間が内接する中心の角度は、120°〜180°の間に含まれる。
【0051】
円筒に対して又は香箱真1の枢軸に平行な巻貝形状断面のプリズムに対して内部で離間し、支持セクタ2を備える、
図5Bによる駆動要素100の特に有利な実施形態では、香箱真1は、保持若しくはフック手段13及び/又は第1の内側コイル11の少なくとも1つの部分を受容するための少なくとも1つのキャビティ4を含み、この少なくとも1つのキャビティは、枢軸Dに平行な複数の接線溝33を含み、溝33はそれぞれ、所定のタイプの螺旋状の小片からなるゼンマイ10の第1の内側コイル11が備える突起部15の外形と適合する外形を有し、また、溝33は好ましくは、円筒の周り、又は、牽引方向において支持セクタ2を備える、香箱真1の枢軸に平行な巻貝形状の断面を有するプリズムの周りで、角度的に等距離である。この等距離は必須ではないが、ゼンマイ10を、自由端部12に最も近い突起部15を介して、溝33のいずれか1つ内に当接して存在させ、そしてその他の突起部15をその他の溝33と当然同調させることができる、という利点を有する。そして、ゼンマイ10は、溝33の数より少ないかこれと等しい数の一連の突起部15を含み、突起部15は、溝33のような同一の曲線を有する間隔によって隔てられ、溝33に嵌合するよう配設される。
【0052】
円筒に対して又は香箱真1の枢軸に平行な巻貝形状断面のプリズムに対して内部で離間し、支持セクタ2を備える、駆動要素の特定の実施形態では、香箱真1は、保持若しくはフック手段13及び/又は第1の内側コイル11の少なくとも1つの部分を受容するための少なくとも1つのキャビティ4を含む。支持セクタ2の引き延ばし方向は、枢軸Dに平行である又は枢軸Dと一致し、少なくとも1つのキャビティ4は、内側端部12又は第1の内側コイル11の少なくとも1つの部分をゼンマイ10の幅LIの方向に遊び無しに受容するようサイズ決めされる。
【0053】
円筒に対して又は香箱真1の枢軸に平行な巻貝形状断面のプリズムに対して内部で離間し、支持セクタ2を備える、
図4A、9A、16Bの駆動要素100では、香箱真1は、保持若しくはフック手段13及び/又は第1の内側コイル11の少なくとも1つの部分を受容するための少なくとも1つのキャビティ4を含み、キャビティ4は、支持セクタ2の牽引方向の周囲を巡る溝44を含み、この溝44は、ゼンマイ10の第1の内側コイル11の幅LIに等しい幅LRを有する。
【0054】
円筒に対して又は香箱真1の枢軸に平行な巻貝形状断面のプリズムに対して内部で離間し、支持セクタ2を備える、
図6の実施例では、香箱真1は、第1の内側コイル11の所定の幅LIより極めて小さい幅LFを有する狭いスロット38を含み、相補的フック手段3を形成するピン39又は金属ホイル製鍵部をこの狭いスロット38に挿入する。
【0055】
図10B、11B、12、13、14の変形例では、ゼンマイ10の第1の内側コイル11の内側端部12を、支持セクタ2の引き延ばし方向に向かって折り曲げるか又は圧延して、駆動停止手段17を形成する。
図10A及び10Bは、半月状に湾曲した凹部で形成されるキャビティ4を備える香箱真1を示す。対応するゼンマイ10は、小さな半径に巻かれ、上記凹部4内に格納される、内側端部12を有する。
図11A及び11Bは、平坦部47と、ゼンマイ10の内側コイル11を格納するためのスロット48とを、実質的に互いに平行な状態で備える香箱真1を示し、ゼンマイ10の内側端部12は平坦部47に当接し、コイル11は摺動してスロット48に入る。
【0056】
図15に示す有利な実施形態では、ゼンマイ10の第1の内側端部11の所定の厚さEIは、ゼンマイ10の後続のコイルの厚さESより小さい。上記後続のコイルは、互いに対して一定の断面を有しているか、又は第1の内側コイル11から離れるに従って細くなる断面を有している。
【0057】
この実施形態は、ここに記載する全ての香箱の変形例に適用可能であり、第1の内側コイル11を適切な様式で香箱真1上に、特に香箱真1が有する1つ又は複数の円筒セクタ上に押圧することができる。有利には、自由端部12は、面取り121又は湾曲部分を含み、これによって次のコイルを適切に巻くことができる。
【0058】
特定の実施形態では、ゼンマイ10の第1の内側コイル11の少なくとも1つの内側端部12は、香箱真1の支持セクタ2にと右折するようになっているその内面において、12Raμm超の粗度を有する。
【0059】
ゼンマイ10と香箱真1の間の相対的な保持は、フックとアイレット等の着脱可能な相補的手段によって達成してよい。代替として、このような保持を、溶接、鑞接、接着等の非可逆的固定方法による、ゼンマイと香箱真の間の恒久的な接続によって達成してよい。
図16Aに示す駆動要素100の特定の変形例では、少なくとも1つのゼンマイ10を、支持セクタ2の引き延ばし方向に関して直径方向に実質的に対向する2つの点51、52において、香箱真1上に溶接する。香箱真1が
図1Nによる外形を有する変形例では、これらの点51及び52を、支持セクタ2の引き延ばし方向に関して直径方向に実質的に対向する、香箱真1の平坦部36及び37に配置する。
【0060】
所定のタイプのバネ10用に特に考案された香箱真1のために提案された製造方法によって、対向する要素を、その一方を他方に遊び無しに組付けることができるようサイズ決めすることができる。特に、少なくとも1つのゼンマイ10を、支持セクタ2の周りの香箱真1の環状溝44内に、又は香箱真1の母線に沿った香箱真1の直線溝45内に、遊び無しに保持する。
【0061】
有利には、非可逆的な維持を所望する場合、内側端部12、又は第1のコイル11の少なくとも1つの部分を、溶接若しくは鑞接によって、又は、極めて経済的な様式として、ゼンマイ10及び/若しくは香箱真1の変形領域53における槌打若しくは局所破砕によって、溝44、45内に非可逆的に維持する。
図16B及び16Cは、香箱真1の円形溝44内に突出するよう嵌合及び設置され、並びに、特にギザギザ部分等の作用によって香箱真に対してゼンマイを固定する変形表面53を生成するために維持するべき位置に槌打された、ゼンマイ10を示す。
図16Dは、溝の壁にギザギザの加工を施し、その溝にゼンマイをクランプ留めして、ゼンマイを変形表面53の下部に閉じ込める、ゼンマイの硬度が香箱真の硬度より高い通常の場合に好ましい応用例を、同様の様式で示す。
【0062】
図20〜26は、第2の変形例の特定の実施例を示す。
【0063】
図20は、ゼンマイ10を担持する先細りの巻貝形状外形30を有する香箱真1を有する香箱のための駆動要素100を示す。
【0064】
図21及び22は、この変形例に属する構成を示し、これは、支持面60と周縁溝44の間の交差領域によって形成される支持表面3を有し、この周縁溝44は、その両側及び中央領域60Aの両側において、圧力がかかった場合に機能する2つの特にロバストな支持体60B及び60Cを画定し、ゼンマイ10を巻くことによって生じる応力を吸収するための停止手段を形成する。
【0065】
周縁溝44は、ゼンマイの巻き全体を通してその厚みが徐々に薄くなっている部分にわたって:即ち、軸に対するゼンマイの良好な維持のための、支持面60に嵌合し得るゼンマイの全厚さ又は上記全厚さの少なくとも大部分から、溝44が周縁支持表面2に接し、ゼンマイ10が完全に軸から自由になる、接触領域ZTまで、ゼンマイ10を受容するために配設される。
【0066】
図23〜26では、ゼンマイ10の停止表面13は様々な形状をとり、
図23では巻き上げ又は褶曲形状、
図24ではT字型切り抜き形状、
図25ではあり継ぎ型切り抜き形状、
図20又は
図26では舌部を形成する型抜きアイレットであり、後者は
図26Aにおいて端面図で示されている。
【0067】
図27〜30は、小さい寸法の香箱真1に適した外形の実施形態を示す。ゼンマイ10のアイレット16と恊働するフック34以外に、この香箱真1は巻貝形状の漸進的外形30を有する。
【0068】
ゼンマイ10の内側コイル11の端部12の支持体として作用する半径R0は、ここでは0.26mmという極めて小さい直径を有し、その一方で、フック34の径方向最大空間要件及びゼンマイの第2のコイルの支持体に等しい最大半径R2は、0.42mmである。従って、ゼンマイのために使用される径方向空間は、約0.08mmの厚さに等しい。ここでは香箱真1の半径R0であるコア半径とゼンマイ10の厚さとの比であるK係数は、約1.6であり、通常の時計用ゼンマイ(Nivaflex(登録商標)等)及び香箱真(鋼鉄又はステンレス製)の品質に関して、香箱真の破損を回避するためにはこの比は10超でなければならないと推定されるため、これは特に低い値である。
【0069】
最小コア半径R0は特に:
−香箱真1の枢動と、香箱真1の組立てのタイプに応じて、ブリッジ及び底部プレートとによる、又は香箱のカバー及びドラムとによる、ヘルツの接触応力。これはゼンマイのトルク、枢動直径及び高さ、並びに接触する材料に依存する;
−香箱真1にかかるねじれ及び屈曲応力。これもまた、ゼンマイのトルク及び香箱真のジオメトリに依存する;
−ゼンマイ10がコアの周りに巻かれる際に香箱真1のフック34にかかる剪断応力。これはゼンマイのトルクに依存するが、フックのジオメトリにも依存し、フックのジオメトリは、ゼンマイ1に作製され得る、これを通してフックがコア上でゼンマイ1を駆動するアイレット16の、最大サイズに依存する;
−中心にあるゼンマイ10の内側端部12がゼンマイの巻き付けを中断させないことを保証するために利用できる、香箱真1のコアと、コアに巻かれたゼンマイ10の第2のコイルとの間の空間。これはとりわけ、ゼンマイ10の厚さに依存する;
に左右される。
【0070】
図28及び29に示す特定の変形例に見られるように、香箱真1の周縁外形70は、以下のように分解される:
−フック34の領域において(
図30のBBにおける断面):
−最小半径R0を有し、軸DC上にセンタリングされた、印AとBの間の第1の円筒形セクタ71;
−印BとCの間の急速に増加する連接領域72であって、平坦であり、放射面と角度αを形成し、上記角度αは0°〜45°である、連接領域72;
−軸DCに対して中心がずれた軸D2上にセンタリングされた、印C、D及びEの間の第2の円筒形セクタ73であって、上記セクタ73は、R0/4とR0/3の間に偏心して含まれる、第2の円筒形セクタ73;
−第2のセクタ73に接する、印EとFの間の連接領域74であって、上記連接領域は有利には実質的に平坦であり;上記連接領域は、その一部において、最大直径拡張と共にフック34の背面を画定する連接領域74;
−軸DC上にセンタリングされた、印FとGの間の第3の円筒形セクタ75であって、フック34の端部及び第1のコイル11の上に重なるとき、ゼンマイ10の第2のコイルの支持領を形成する、第3の円筒形セクタ75;
−ゼンマイ10の停止表面16Aと当接して恊働するためのフック34の作用表面を形成する、アイレット16の面の1つから形成された印GとAの間の支持面76であって、;好ましくはこの支持面76は平坦であり、軸DCから始まる放射面に対して切り取られており、これにより、上記ゼンマイ10の厚さに関係なく、ゼンマイ10を支持面76上に確実に支持することができる、支持面76;
−フック34の外側の領域において(
図30のCCにおける断面):
−最小半径R0を有し、軸DC上にセンタリングされた、印HとBの間の第1の円筒形セクタ71であって、印Hは、曲線横座標HAがゼンマイ10のアイレット16の隙間の長さより短くなるような点にある、第1の円筒形セクタ71;
−印BとCの間の急速に増加する連接領域72であって、平坦であり、放射面と角度αを形成し、上記角度αは0°〜45°である、連接領域72;
−軸DCに対して中心がずれた軸D2上にセンタリングされた、印C、D、E及びHの間の第2の円筒形セクタ73であって、上記セクタ73は、R0/4とR0/3の間に偏心して含まれ、上記第2のセクタ73は、Hにおいて第1のセクタ71に実質的に接する、第2の円筒形セクタ73。
【0071】
図30の変形例は、一方では、表面76及び71Aを一緒に摩砕することができるよう、平坦な支持面76を有するAにおいて直角又は鈍角を形成する、印AとA’の間の平坦部71Aと、他方では、最小半径R0を有し、軸DC上にセンタリングされ、Bにおける接線が連接領域72と直角又は鈍角を形成する、印A’とBの間に延在する第1の円筒形セクタ71と、に分解される、第1の領域を示す。
【0072】
図31の変形例は、一方では、表面76及び71Aを一緒に摩砕することができるように、平坦な支持面76にAにおいて垂直な、印AとAの間の平坦部71Aと、他方では、表面71B及び72を一緒に摩砕することができるよう、平坦な連接領域72とBにおいて直角又は鈍角を形成する、印A’とBの間に延在する第2の平坦部71Bと、に分解される、第1の領域を示す。
【0073】
図31及び32の場合では、表面71A及び71Bから軸DCへの距離は、好ましくは0.8R0〜R0である。
【0074】
上に提示した全ての構成は、スポット溶接、レーザ溶接(軸に対して径方向又は平行)、鑞接、接着等によって、ゼンマイ10を香箱真1上に停止させるのに適している。
【0075】
本発明は又、少なくとも1つのこのタイプの駆動要素100を含む時計ムーブメント1000にも関する。この機構1000は、香箱200、又は少なくとも1つの香箱200を組み込んだムーブメント300、又は少なくとも1つの香箱200を組み込んだ少なくとも1つのムーブメント300を組み込んだ時計400である。