特許第5749774号(P5749774)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5749774
(24)【登録日】2015年5月22日
(45)【発行日】2015年7月15日
(54)【発明の名称】シューズ
(51)【国際特許分類】
   A43C 1/06 20060101AFI20150625BHJP
   A43C 9/00 20060101ALI20150625BHJP
   A43C 11/14 20060101ALI20150625BHJP
【FI】
   A43C1/06
   A43C9/00
   A43C11/14
【請求項の数】9
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-204626(P2013-204626)
(22)【出願日】2013年9月30日
(65)【公開番号】特開2015-66280(P2015-66280A)
(43)【公開日】2015年4月13日
【審査請求日】2014年6月6日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000005935
【氏名又は名称】美津濃株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】特許業務法人池内・佐藤アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】井内 一憲
(72)【発明者】
【氏名】山本 哲夫
(72)【発明者】
【氏名】喜夛 輝昌
【審査官】 平田 慎二
(56)【参考文献】
【文献】 特表2012−512698(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/125473(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A43C 1/06
A43C 9/00
A43C 11/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ソールとアッパーを含むシューズであって、
前記アッパーは、ニット組織からなる生地により構成されており、
前記アッパーの所定の位置に繊維補強部を一体的に含み、
前記繊維補強部は、複数本の浮き編糸による浮き編みであることを特徴とするシューズ。
【請求項2】
前記繊維補強部は、第1中足骨から第5中足骨の少なくとも一部と対応する位置に設けられている請求項1に記載のシューズ。
【請求項3】
前記繊維補強部は、第1及び第5指中足部骨頭を覆う位置は避けて配置する請求項1又は2に記載のシューズ。
【請求項4】
前記繊維補強部は、楔状骨、立方骨及び舟状骨の少なくとも一部と対応する位置と、外踝下部、内踝下部及び踵骨上部の少なくとも一部と対応する位置とに設けられている請求項1〜3のいずれか1項に記載のシューズ。
【請求項5】
前記繊維補強部のうち、楔状骨、立方骨及び舟状骨の少なくとも一部と対応する位置の繊維補強部と、外踝下部、内踝下部及び踵骨上部の少なくとも一部と対応する位置の繊維補強部とは連続している請求項4に記載のシューズ。
【請求項6】
前記繊維補強部は、前記浮き編糸がシューズの内側に配置されることにより構成されている請求項1〜5のいずれか1項に記載のシューズ。
【請求項7】
前記浮き編部分の浮き編糸方向のひずみ比(伸長比)1(測定前の長さの2倍)のときの応力が、ベース編部分の同応力に比べて1.2倍以上である請求項1〜6のいずれか1項に記載のシューズ。
【請求項8】
前記アッパーは、ニット組織からなる生地により構成されたソックス形状を有しており、ソックス形状のまま前記アッパーの底部がソールに固定されている請求項1〜7のいずれか1項に記載のシューズ。
【請求項9】
前記シューズはスポーツ用である請求項1〜8のいずれか1項に記載のシューズ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はシューズに関し、さらに好ましくはソールとアッパーを含むシューズに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、網目状の材料からなり、網目状であることにより伸展性を有するマトリクス層からなるアッパーを備えるシューズが知られている(下記特許文献1)。この特許文献1によるシューズのアッパーは、運動を行った際などに、その伸展性により、足の動きが制限されないようになっており、その結果、着用者に快適な感触(フィット感)を提供している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−42270号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、一般的に、使用者が足の動きを止めるなど、ソールが地面についた状態で足の力の方向を急激に変更する場合に、アッパーが足を保持することにより、シューズと足とのズレを抑制すると考えられる。しかしながら、上記特許文献1のシューズでは、足の動きが制限されないように、伸展性を有するマトリクス層からなるアッパーを設けているため、ソールが地面についた状態で足の力の方向を急激に変更する場合に、シューズと足とのズレを十分に抑制することができないと考えられる。その結果、足とシューズとがずれて足を十分にホールドできないという問題点があると考えられる。
【0005】
本発明は、前記従来の問題を解決するため、フィット性を維持しながら適度なホールド性を有するシューズを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のシューズは、ソールとアッパーを含むシューズであって、アッパーは、ニット組織からなる生地により構成されており、アッパーの所定の位置に繊維補強部を一体的に含み、繊維補強部は、複数本の浮き編糸による浮き編みであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明のシューズのアッパーをニット組織からなる生地により構成することによって、ニット組織のアッパーが適度に伸展するので、使用者の足に適度なフィット感を付与することができる。また、アッパーの所定の位置に繊維補強部を一体的に設けることによって、ソールが地面についた状態で足の力の方向を急激に変更する場合にも、繊維補強部により、ホールドしたい足の所定の位置を十分にホールドすることができる。さらに、繊維補強部を複数本の浮き編糸による浮き編みにすることによって、ニット組織からなる生地が適度に伸展したところで浮き編みの浮き編糸のテンションが高くなり、その結果、足をしっかりとホールドすることができる。このように浮き編みからなる繊維補強部を設けることにより、繊維補強部を樹脂やゴムなどの素材で設ける場合とは異なり、アッパーに適度なホールド性を持たせることができる。以上より、フィット性を維持しながら適度なホールド性を有するシューズを提供できる。加えて、アッパーをニット組織とし、繊維補強部として浮き編みを設けたことにより、コストも安価にできる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1A図1Aはランニング時の足の皮膚の伸び分布を示す正面図と裏面図である。
図1B図1Bは同、足の皮膚の伸び分布を示す右側面図と左側面図である。
図2A図2Aはランニング時の足の皮膚の縮み分布を示す正面図と裏面図である。
図2B図2Bは同、足の皮膚の縮み分布を示す右側面図と左側面図である。
図3図3Aは人体の足の骨格斜視図及び本発明の一実施形態の繊維補強部を示す模式的斜視図、図3Bは同平面図である。
図4図4は本発明の一実施形態の繊維補強部に使用する浮き編組織の模式的編み立て図である。
図5図5は本発明の一実施形態の繊維補強部に使用する浮き編組織の組織図である。
図6図6は本発明の一実施形態で使用するソックス形状のアッパーの外観斜視図である。
図7図7は同、底から見た底面図である。
図8図8は本発明の一実施形態のシューズの外観斜視図である。
図9図9は本発明の別の一実施形態のシューズの外観斜視図である。
図10図10は本発明の一実施形態のソックスの繊維補強部とベース編部の応力−ひずみ(伸び)グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明者らは、ニット組織からなるアッパーにソールを貼り付けてシューズにすることを考え付いた。しかし、ニット組織からなるアッパーは、フィット性はあるもののホールド性が乏しく、そのままではこのようなシューズを用いてスポーツを行うことは困難である。そこで、ニット組織からなるアッパーの所定位置(特定位置)に繊維補強部を一体的に設けることを着想した。本発明はこのような着想から検討を重ねて完成したものであり、特に、スポーツに好適なシューズを実現したものである。
【0010】
本発明は、ソールとアッパーを含むシューズである。ソールはシューズに使用するものであればどのようなものでも使用できる。好ましくはスポーツ用シューズのソールであり、クッション性、反発力などを有するソールが好ましい。アッパー内にはインナーソールを入れてもよい。
【0011】
本発明のシューズは、例えばランニング時の皮膚の伸びと縮みを分析することにより、どのような位置に繊維補強部を配置するかを検討することから始めた。図1A及び図1Bはランニング時の足の皮膚の伸び分布を示す正面図、裏面図及び両側面図であり、ドットの色が濃いほど伸びが大きいことを示している。図2A及び図2Bはランニング時の足の皮膚の縮み分布を示す正面図、裏面図及び両側面図であり、ドットの色が濃いほど縮みが大きいことを示している。これらの分析から、アッパーにおける繊維補強部の位置は、一例として下記のA〜Cの位置を含むことが好ましいことがわかった。
A 楔状骨、立方骨及び舟状骨を抑える位置
B 外踝下部、内踝下部及び踵骨上部を抑える位置
C 第1中足骨から第5中足骨の少なくとも一部を押さえる位置
【0012】
前記A〜Cの位置を図面で示すと図3A−Bのようになり、繊維補強部(A)1と繊維補強部(B)2と繊維補強部(C)3のようになる。繊維補強部(A)1は内側楔状骨10、中間楔状骨11、外側楔状骨12、立方骨13及び舟状骨14を抑える位置に配置される。繊維補強部(B)2は外踝下部、内踝下部及び踵骨17上部を抑える位置に配置される。繊維補強部(C)3は第1中足骨5、第2中足骨6、第3中足骨7、第4中足骨8及び第5中足骨9の少なくとも一部を押さえる位置に配置される。15は距骨、16は腓骨である。繊維補強部(C)3は、第1指中足部骨頭4a及び第5指中足部骨頭4cを覆う位置は避けて配置することが好ましい。第1及び第5指中足部骨頭を押さえると痛みを感ずる人もあるからである。また、前記繊維補強部(A)と(B)は一部つなげても良い。
【0013】
本発明のシューズのアッパーは、ニット組織からなる生地により構成されており、好ましくはアッパーの所定の位置に繊維補強部1〜3を一体的に含み、繊維補強部1〜3は、複数本の浮き編糸による浮き編み(ウェルト(welt)編みともいう)である。この編み組織は、例えば丸編みの場合、浮き編み組織により実現できる。繊維補強部1〜3は、浮き編糸をシューズの内側に配置するのが好ましい。浮き編みはニット組織からなる生地のベース編地と一体的に編成でき、形態安定性、耐久性が良い。ベース編地は、たとえば、タック編、裏タック編または天竺編のいずれか、または、これらが組み合わされた編地により構成されている。浮き編糸をシューズの内側に配置するのは、デザイン上の見栄えを良くし、安全上の配慮もある。浮き編みの一例を図4に示す。図4において表糸18と裏糸19は通常のニットと同様1ループごとに編み目を形成しているが、浮き編み糸20は1〜10ループ飛ばして(浮かせて)編成されている。
【0014】
図5は本発明の一実施形態の繊維補強部に使用する浮き編組織の組織図である。この編み物は1〜4コースは平編み41と2回裏糸タック編み42で地組織の編み物が編成され、5〜10コースは平編み41と2回裏糸タック編み42をそれぞれ2ループ浮かせた浮き編み糸20で浮き編み物が編成されている。
【0015】
浮き編部分の浮き編糸方向のひずみ比(伸長比)1(測定前の長さの2倍に伸長)のときの応力は、ベース編部分の同応力に比べて1.2倍以上であるのが好ましい。さらに好ましい倍率は1.5倍以上である。前記の範囲であれば、浮き編部分の補強効果は十分なものとなる。すなわち、足に様々な方向の力が掛かってもシューズの変形は防止でき、足の安全性を確保できる。
【0016】
ニット組織からなる生地に使用する繊維は、弾性糸を含む繊維糸が好ましい。弾性糸は、ポリウレタン系弾性糸及びポリエステル系弾性糸から選ばれる少なくとも一つであることが好ましい。ストレッチ性が高く、アッパーを足にフィットさせることに適しているからである。弾性糸は、ベアヤーン(裸糸)として、非弾性糸(リジッド糸)と引きそろえて使用しても良いし、又は表面にポリエステル繊維、ナイロン繊維、アクリル繊維、ウール、木綿などが被覆されたカバードヤーンとして使用しても良い。
【0017】
このニット組織からなる生地は、例えばロナティー社製の丸編機を使用して編成できる。この編機のうち、本発明に特に好適なのは、編機の径が3.75インチであり、針本数が132もしくは144本の編機である。
【0018】
図8に示すように、本発明の一実施形態のシューズは、そのアッパーがニット組織からなる生地により構成された略ソックス形状を有しており、ソックス形状のままアッパーの底部をソールに固定することにより作成できる。このようにするとアッパーがソックス形状のシューズが作成でき、フィット性とホールド性のある簡素なデザインのシューズとすることができる。
【0019】
図9に示すように、本発明の別の実施形態のシューズは、そのアッパーがニット組織からなる生地により構成された略ソックス形状を有しており、アッパーの底部をソールに固定し、足首前部を一部カットし、側部に補強シートを配置して靴紐通し部を備えたシューズである。このタイプのシューズは、側部補強部と紐により、より強固に足に固定できる。
【0020】
本発明のシューズは、マラソン、ランニング、ウォーキングなどのスポーツ用シューズのほか、タウンシューズなど一般的なシューズとしても好適である。
【0021】
以下図面を用いて説明する。以下の図面において同一符号は同一物を示す。図6は本発明の一実施形態で使用するソックス形状のアッパーの外観斜視図である。このソックス形状のアッパー21は、丸編機を使用して編成したもので、ベース編部22と踵部27と、爪先部28は通常のニット組織で構成されている。繊維補強部23と繊維補強部24と繊維補強部25は浮き編み組織で編成されている。
【0022】
繊維補強部23は、使用者が本実施形態のシューズを履いた際に、使用者の楔状骨、立方骨及び舟状骨のそれぞれの一部と対応する位置に設けられている。また、繊維補強部24は、外踝下部、内踝下部及び踵骨上部と対応する位置に設けられている。これら繊維補強部23および24に対応する使用者の足の部分は、使用者が運動などを行った際に、足の皮膚の伸縮が他の部分よりも小さい部分である。このため、繊維補強部23および24により足がホールドされた場合にも、皮膚の伸縮による摩擦や圧力の変化が小さいので、履き心地を損なうのを抑制することが可能である。また、繊維補強部25は、第1中足骨から第5中足骨のつま先側部分と対応する位置に設けられており、第1中足骨、第2中足骨、第3中足骨、第4中足骨および第5中足骨に渡る部分を覆うように設けられている。この繊維補強部25は、特に、足の力の方向を横方向(足幅方向)に急激に変更する場合にも、足のつま先側を十分にホールドすることができる。また、繊維補強部25は、第1指中足部骨頭26a及び第5指中足部骨頭26bを覆う位置を避けて配置されている。
【0023】
このソックス形状のアッパー21の履き口29は生地を内側に折り返すなどして補強されている。このアッパー21は、シューズにする際の大きさより40〜90%小さく形成しておき、シューズにする際には伸長して組み込むように形成されている。このようにシューズを形成することにより、アッパー21のフィット性を上げることが可能となる。すなわち、アッパー21の静置状態の長さを1としたとき、シューズにした後の長さは1.1〜2.5倍に伸長するのが好ましい。
【0024】
図7はアッパー21の底から見た底面図である。繊維補強部24と繊維補強部25は底の繊維補強部30で連続させている。この繊維補強部30は、足裏の踵骨と対応する部分から第2〜第4中足骨のつま先側と対応する部分にかけて延びるように形成されている。これにより、底の部分をソールと接着一体化したときに接着し易くし、かつクッション性も損なわないようにできる。
【0025】
図8は本発明の一実施形態のシューズ31の外観斜視図である。図7に示すソックス形状のアッパー21を約2倍に伸ばしてアッパー材33とし、ソール32に接着剤で一体化したものである。このシューズ31はフィット性とホールド性のある簡素なデザインとなる。なお、本発明の一実施形態のシューズ31には、略ソックス形状のアッパー21が適用された例を示したが、繊維補強部30に対応する部分が足幅方向で分断、または、足裏に対応する部分が開口された非ソックス形状であってもよい。
【0026】
図9は本発明の別の一実施形態のシューズ34の外観斜視図である。図8と異なる点は、ソックスの足首前部を一部カットし、側部に補強シート35を配置して靴紐通し部を備え、紐36を通した点である。このタイプのシューズ34は、補強シート35と紐36により、シューズ34をより強固に足にホールドさせることができる。
【実施例】
【0027】
以下、本発明の実施例について述べるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(実施例1)
【0028】
(1)使用糸
図6に示す補強部は表糸:a、裏糸:bとゴム糸、編み組織:裏タック編+浮き編
・補強無しの編地部分は表糸:a、裏糸:bとゴム糸、編み組織:裏タック編
a:ポリエステル(PET)111decitex(100d)-48/2×3本のマルチフィラメント糸
b:33decitex(30d)ポリウレタンにポリエステル(PET)83decitex(75d)シングルカバリング糸
ゴム糸:289decitex(260d)ポリウレタンにポリエステル(PET) 83decitex(75d)をダブルカバリング糸
【0029】
(2)編機
ロナティー社製の丸編機。径が3.75インチであり、針本数が132もしくは144本。
【0030】
(3)編成方法
図6に示すようなソックス形状のアッパーを編成した。踵部27および爪先部28はパイル編みにより編成されている。繊維補強部30は、浮き編み(フロート編み)であり、そのベースは天竺編みである。繊維補強部23、24および25は、それぞれ、裏タック編をベースとして、それに浮き編みを複合させた場合と裏タック編単独の場合の組み合わせとなる組織で編成されている。繊維補強部23、24および25の浮き編みは、27個のフロートにより構成され、繊維補強部30の浮き編みは、8個のフロートにより構成されている。ソックス重量は片方で25gであり、静置状態で足部の長さは19cmであった。つま先部の編み終わり部分と本体を縫製することで、指の形に合ったつま先部となった。履き口部分は編まれた組織を折り返し、本体と編機によって自動縫製して形成した。
【0031】
(4)シューズの作成
アッパー(本体),履き口部補強パーツ,ソールを準備した。
(a)前処理
ソールのアッパー・履き口部補強パーツ接着面側にプライマー塗布して乾燥した。プライマーは接着剤がソールに付きやすくするために塗布した。同様に、履き口部補強パーツのソール接着面側にもプライマー塗布して乾燥した。
(b)ソールと履き口部補強パーツの接着
ソールの履き口部補強パーツ接着面と履き口部補強パーツのソール接着面を水溶性接着剤塗布し、ソールと履き口部補強パーツを圧着した。
(c)ソールとアッパーの接着
アッパーにラストを差し込み、アッパーのソール接着面とソールのアッパー接着面に水溶性接着剤を塗布し、接着剤を加熱乾燥し、アッパーとソールを圧着し、常温で半日乾燥し、シューズからラストを取り除き、ひもをシューズに取り付けた。その後、シューズを清掃し、シューズが完成する。
【0032】
以上のようにして図9に示すシューズを作成した。このシューズと従来のランニングシューズ(ミズノ社製)とをフィット感に関する着用試験を実施した。被験者は5名、フィット感が良いか悪いかを7点満点で評価し、従来のランニングシューズのフィット感を4点として,発明品を"良い7点-悪い1点"の間で評価した。結果を表1に示す。
【0033】
【表1】
【0034】
着用試験の結果、本発明の実施例品はフィット感が優位であった。またホールド性については従来のランニングシューズと同等であった。
【0035】
図10は本発明の実施例1のソックス形状のアッパーの繊維補強部とベース編部の応力−ひずみ(伸び)グラフである。ソックス形状のアッパーは足より小さく作製されており、アッパーを引き伸ばして履く。シューズに足を入れた時、アッパーは引き伸ばされ締付の応力が働く。この時の図10のアッパーのひずみ量は0.5(元の長さの1.5倍)に相当し、浮き編み(フロート編み)がある部分の応力は 0.37N/mm、フロート編みがない部分の応力は 0.33N/mmであり、その差は小さい。運動時はアッパーが静止時よりさらに引き伸ばされる。運動時のアッパーのひずみ量が0.5を超える時、この応力の差がひずみの増加につれて大きくなることがグラフから読み取れる。例えば過度な運動時(ひずみ1(元の長さの2.0倍)に相当)、フロート編みがある部分の応力は 1.34 N/mm、ない部分の応力は0.80 N/mmとその差は大きくなっている。これよりフロート編の構造によりアッパー伸縮量が増加するほど引張強度が大きくなることがわかる。例えば踏付け部分のアッパーの長さ(ソール接着領域を除いた周囲長)は100mmの場合、足サイズが27cmの人が履いた際はアッパーが伸ばされ、アッパー長さは150mmになる。このとき、アッパー長さは初期長さ100mmから150mmに伸ばされ、ひずみは0.5になる。さらにこのシューズを履いて急激な方向転換など過度な運動をした場合、アッパーは過度に伸ばされる。過度な運動時としてアッパー長さが200mmまで伸びる状況を想定する。このとき、アッパーは初期長さ100mmから200mmに伸ばされ、ひずみは1.0になる。以上から本発明のソックスを使用する優位性がわかる。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明のシューズはマラソン、ランニング、ウォーキングなどのスポーツ用シューズのほか、タウンシューズなど一般的なシューズとしても好適である。
【符号の説明】
【0037】
1,23 繊維補強部
2,24 繊維補強部
3,25 繊維補強部
18 表糸
19 裏糸
20 浮き編み糸
21 アッパー
31,34 シューズ
32 ソール
33 アッパー材
35 補強シート
36 紐
41 平編み
42 2回裏糸タック編み
図1A
図1B
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10