(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5749785
(24)【登録日】2015年5月22日
(45)【発行日】2015年7月15日
(54)【発明の名称】タイヤチェーン
(51)【国際特許分類】
B60C 27/06 20060101AFI20150625BHJP
【FI】
B60C27/06 E
B60C27/06 A
【請求項の数】4
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-242723(P2013-242723)
(22)【出願日】2013年11月25日
(65)【公開番号】特開2015-101188(P2015-101188A)
(43)【公開日】2015年6月4日
【審査請求日】2013年11月25日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】390024040
【氏名又は名称】株式会社エフ.イー.シーチェーン
(74)【代理人】
【識別番号】100085187
【弁理士】
【氏名又は名称】井島 藤治
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 雅紀
【審査官】
水野 治彦
(56)【参考文献】
【文献】
実開平02−099003(JP,U)
【文献】
実開昭61−067002(JP,U)
【文献】
実開昭60−074972(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 27/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤの外側のサイドウォールに沿って設けられ、ホイールと当接可能なサイドチェーン部、該サイドチェーン部に連設され、前記タイヤのトレッドと対向するクロスチェーン部を有するタイヤチェーン本体と、
前記サイドチェーン部と前記ホイールとの間に位置する部分を有し、前記サイドチェーン部が前記ホイールに当接することを阻止するように前記サイドチェーン部に設けられた保護部材と、
を有し、
前記保護部材は、
円環状であり、
更に、前記保護部材は、
複数の部材からなる多孔質プラスチック成形体と、
該多孔質プラスチック成形体を覆うカバーとでなることを特徴とするタイヤチェーン。
【請求項2】
前記保護部材は、
前記サイドチェーン部に対して着脱可能であることを特徴とする請求項1記載のタイヤチェーン。
【請求項3】
前記多孔質ブラスチック成形体は、
発泡スチロール、発泡ポリエチレンのうちのいずれかであることを特徴とする請求項1または2記載のタイヤチェーン。
【請求項4】
前記保護部材は、水を吸いにくい耐水性を有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか記載のタイヤチェーン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冬季条件下で、車両と路面の間の摩擦を増加するために車両用タイヤに取り付けられるタイヤチェーンに関し、更に詳しくは、ホイールが傷付かないタイヤチェーンに関する。
【背景技術】
【0002】
雪道や凍った路面を自動車で走行する際は、タイヤを通常のものに換えて、スパイクタイヤ、スタッドレスタイヤ等のタイヤ自体に滑り止め効果のあるものを用いる他、タイヤチェーンをタイヤに装着してスリップ防止を図るのが一般的である。
【0003】
冬季に常時路面上が氷雪で覆われている地域では上記の如くタイヤ自身を交換することが良く行われるが、上記氷雪地域以外の特に都会部では、通常のタイヤに対し必要時にのみタイヤチェーンを装着するのが一般的である。
【0004】
タイヤチェーンは、タイヤの外側のサイドウォールに沿って設けられるサイドチェーン部、該サイドチェーン部に連設され、前記タイヤのトレッドと対向するクロスチェーン部を有し、材質としては、としては金属チェーン,樹脂チェーン,繊維製チェーンがある。さらに、スプリング等の弾性部材により、サイドチェーン部は縮径される方向に付勢されている。
【0005】
金属チェーン等のように、硬度が高い材質からなるタイヤチェーンを用いた場合、走行時に、タイヤチェーンとホイールとがすれて、ホイールのリムが傷付く場合がある。
さらに、タイヤのビード部より外側に張り出すホイールキャップ(ホイールを覆うカバー)が傷付き、破損する場合もある。このため、タイヤチェーンを装着する場合には、工具を用いてホイールキャップを取り外すこととなる。
【0006】
これらの傷付きや破損を防止するために、ホイールと接触する部分がプラスチックの射出成形品でなるディスクとし、このディスクの外縁に金属のチェーンが接続されているタイヤチェーンが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第3526827号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、特許文献1に記載されたタイヤチェーンでは、ディスクにタイヤのトレッドを覆うチェーンが接続されている。よって、ディスクはサイドチェーン部を構成する部材であるので、縮径する方向の付勢力が作用する。よって、ディスクには強度が求められ、製造コストが高くなる問題点がある。
【0009】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたもので、その課題は、ホイールに傷が付かず、低コストなタイヤチェーンを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題のうち少なくとも一つを実現するために、本発明の一面を反映したタイヤチェーンは、タイヤの外側のサイドウォールに沿って設けられ、ホイールと当接可能なサイドチェーン部、該サイドチェーン部に連設され、前記タイヤのトレッドと対向するクロスチェーン部を有するタイヤチェーン本体と、前記サイドチェーン部と前記ホイールとの間に位置する部分を有し、前記サイドチェーン部が前記ホイールに当接することを阻止するように前記サイドチェーン部に設けられた保護部材と、を有し、前記保護部材は、円環状であ
り、更に、前記保護部材は、複数の部材からなる多孔質プラスチック成形体と、該多孔質プラスチック成形体を覆うカバーとでなることを特徴とする。
【0011】
本発明の他の特徴は、以下に述べる発明を実施するための形態並びに添付の図面から一層明らかになるであろう。
【発明の効果】
【0012】
本願発明によれば、
前記サイドチェーン部と前記ホイールとの間に位置する部分を有し、前記サイドチェーン部が前記ホイールに当接することを阻止するように前記サイドチェーン部に設けられた保護部材有することで、ホイールに傷が付かない。更に、保護部材は、チェーン本体とは別部品であるので、保護部材には強度が求められない.よって、低コストで製造することができる。
【0013】
本発明の他の効果は、以下に述べる発明を実施するための形態並びに添付の図面から一層明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】実施形態のタイヤチェーンを装着したタイヤの斜視図である。
【
図2】
図1において保護部材を取り除いた状態の斜視図である。
【
図4】
図3の切断線IV-IVでの切断面を示す図である。
【
図5】
図3の切断線V-Vでの切断面を示す図である。
【
図6】
図3の切断線VI-VIでの切断面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図面を用いて説明する。
図1は実施形態のタイヤチェーンを装着したタイヤの斜視図、
図2は
図1において保護部材を取り除いた状態の斜視図、
図3は
図1の保護部材の斜視図、
図3は
図1の保護部材の平面図、
図4は
図3の切断線IV-IVでの切断面を示す図、
図5は
図3の切断線V-Vでの切断面を示す図、
図6は
図3の切断線VI-VIでの切断面を示す図である。
【0016】
図1に示すように、本実施形態のタイヤチェーン2は、タイヤチェーン本体1と、保護部材51とからなっている。
ここで、タイヤチェーン本体を
図2を用いて説明する。図において、金属製のタイヤチェーン本体1は、タイヤ3の外側,内側のサイドウォール5,5′に沿って設けられる金属製のサイドチェーン部7,7′と、サイドチェーン部7,7′(サイドチェーン7′は図示せず)間に設けられ、タイヤ3のトレッド9と対向する金属製のクロスチェーン部11とからなっている。
【0017】
図1に戻って、タイヤ3の外側のサイドチェーン部7には、サイドチェーン部7を縮径する方向に付勢し、サイドチェーン部7,7′、クロスチェーン部11をタイヤ3にフィットさせる付勢手段19が設けられている。
【0018】
この付勢手段は、サイドチェーン部7に所定の間隔で設けられた複数の樹脂製のフック13と、フック13に係止され、サイドチェーン部7が縮径する方向に付勢する弾性ゴムバンド15とからなっている。
【0019】
そして、サイドチェーン部7とホイール41との間に位置する部分を有し、サイドチェーン部7がホイール41に当接することを阻止するようにサイドチェーン部に保護部材51が設けられている。
【0020】
ここで、
図3-
図6を用いて保護部材51の説明を行う。
本実施形態の保護部材51は、4つの多孔質プラスチック成形体53と、多孔質プラスチック成形体53を覆うカバー55とでなっている。
【0021】
プラスチック成形体53は、円環を90°ピッチで分割した形状で、材質は、弾性を有する発泡ポリエチレンとした。そして、略円環状を形成するように4つのプラスチック成形体53は配置されている。
【0022】
カバー55は、材質を高融点、高剛性、低吸水性のナイロン66とした。なお、本実施形態では、目開き(織物の隣接する経糸の間隔、または隣接する緯糸の間隔)を水が通過しない48μm以下とし、撥水性を有するようにした。
【0023】
カバー55は、
図4-
図6に示すように、円環状に配置された4つの多孔質プラスチック成形体53の一方の側を覆うように積層された円環状の第1カバー本体57と、円環状に配置された4つの多孔質プラスチック成形体53の他方の側を覆うように積層され、第1カバー本体57と協同して4つの多孔質プラスチック成形体53を包む円環状の第2カバー本体59とを有している。
【0024】
また、円環状の第1カバー57、第2カバー59の外縁部を覆うように、第1テープ61が設けられ、第1カバー57、第2カバー59の外縁部のほつれを防止している。円環状の第1カバー57、第2カバー59の内縁部を覆うように、第2テープ63が設けられ、第1カバー57、第2カバー59の内縁部のほつれを防止している。
【0025】
第1カバー57側には、保護部材51をタイヤ3のサイドチェーン部7に対して着脱可能とする係止部71が4つ設けられている。
本実施形態の係止部71は、面ファスナーを用いている。具体的には、
図3、
図4、
図6に示すように、カバー55の第1カバー部57の外面には、内部に配置された4つの多孔質プラスチック形成体53に対応するように、第1面ファスナー73が円環の半径方向に沿って外縁から内縁まで設けられている。第2面ファスナー75は、カバー55の外縁側の第1面ファスナー73の端部に連設され、自然状態では法線方向に延出するように設けられている。
【0026】
本実施形態では、第1面ファスナー73は、上面に小さなループがびっしり並んだル−プ面73aを有している。第2面ファスナー75は、
図4に示すように、第1面ファスナー73に積層されるようにU字状に折り返され、第1面ファスナー73のループ面73aに対向する面は、細かいカギ状になっているフック面75aとなっている。
【0027】
よって、第1ファスナー73のループ面73aと第2ファスナー75のフック面75aとを強く押し当てると、フック面75aのカギの部分がループ面73aのループに引っかかり、それだけで貼り付くようになっており、貼り付けたり剥がしたりすることが自在にできる。即ち、第1ファスナー73と第2ファスナー75とは、何回も結合/離脱可能となっている。
【0028】
図1に示すように、保護部材51は、サイドチェーン部7とホイール41との間に位置し、
図4に示すように、第2ファスナー75がサイドチェーン部7を第1ファスナー73と協同して挟むことにより、保護部材51はタイヤ3に取り付けられている。
【0029】
上記構成によれば、以下のような効果が得られる。
(1) サイドチェーン部7とホイール41との間に位置する部分を有する保護部材51を有することで、ホイール41に傷が付かない。
【0030】
(2) 保護部材51は、チェーン本体1とは別部品であるので、保護部材51には強度が求められない.よって、低コストで製造することができる。
(3) 保護部材51のプラスチック成形体53の材質は、弾性を有し、軽量の発泡ポリエチレンである。縮径する方向に付勢されたサイドチェーン部7により、プラスチック成形体53は弾性変形し、その弾性反発力により保護部材51はタイヤ3のサイドウォール5に押接し、保護部材51がタイヤ3、チェーン本体1に対してずれるのが防止される。
【0031】
(4) 保護部材51のカバー55(第1カバー57,第2カバー59)の材質を撥水性を有するように加工したナイロン66とした。よって、走行時に、保護部材51が水を含み、重量が増加して遠心力によりタイヤ3から離脱することがなくなる。
【0032】
(5) 保護部材51は、4つの多孔質プラスチック成形体53と、多孔質プラスチック成形体53を覆うカバー55とで構成したことで、4つ折りにでき、コンパクトに収納できる。
【0033】
他に、以下のような実施形態がある。
(1) プラスチック成形体53は円環状の一体物であってもよい。
(2) 着脱可能な係止部は、面ファスナーに限定するものではなく、他に例えば、スナップボタン等を用いてもよい。
【0034】
(3) 本実施形態では、カバー55の材質をナイロン66とし、撥水性を持たせるように、目開きを48μm以下としたが、ナイロンは、撥水コーティングが容易な材料であり、撥水コーティングを施しても、撥水性を確保することができる。
【0035】
(3) カバー55の材質もナイロン66に限定するものではなく、他に、ナイロン6でもよい。さらに、他に、撥水コーティングを施したポリエステル、ポリウレタンでもよい。
【0036】
(4) プラスチック成形体53の材質も、発泡ポリエチレンに限定するものではなく、他に発泡スチロールがある。
【符号の説明】
【0037】
1 タイヤチェーン本体
3 タイヤ
5、5’ サイドウォール
7,7’ サイドチェーン部
9 トレッド
11 クロスチェーン部
41 ホイール
51 保護部材