【実施例1】
【0019】
図10は、本実施例に係る撮像装置の構成を例示した図である。
図11は、
図10に例示される本実施例に係る照明光学系に含まれるプリズム板の斜視図である。
図12は、
図10に例示される本実施例に係る照明光学系に含まれるプリズム板の平面図である。
【0020】
図10に例示される撮像装置10は、例えば、手のひら静脈認証装置やバーコードリーダなど、撮像対象物21からの情報読取を目的とする撮像装置である。撮像装置10は、撮像レンズ19とイメージセンサ20とを含む撮像光学系と、撮像光学系の周囲を取り囲むように配置された照明光学系と、を含んでいる。
【0021】
照明光学系は、イメージセンサ20の周囲に矩形環状に配列された複数のLED11と、矩形環状に形成されたプリズム板14とを含み、さらに、複数のLED11とプリズム板14の間に、撮像レンズ19の周囲を取り囲むように矩形筒状に形成された導光体12を含んでいる。プリズム板14は、導光体12側にプリズム面17を有し、撮像対象物21側にXY平面に平行な平面である出射面18を有している。
【0022】
プリズム面17には、
図11及び
図12に例示されるように、複数のプリズム列が形成されていて、複数のプリズム列は、矩形環状のプリズム板14の辺方向に並んでいる。なお、以降では、矩形環状に形成されたプリズム板14のプリズム列が整列している方向(
図11ではX方向)を整列方向と記し、プリズム列が伸びている方向を稜線方向(
図11ではY方向)と記す。
【0023】
プリズム面17は、
図11に例示されるように、複数のプリズム列の各々が形成する山の斜面に相当する整列方向に対して傾斜した傾斜部15と、それらの山の平頂部に相当する整列方向に平行な平坦部16と、を含んでいる。つまり、各プリズム列は、プリズム列の稜線方向に直交する断面で見たときには、台形形状を呈していて、平坦部16は、プリズム列毎に設けられている。
【0024】
図10に例示される照明光学系では、LED11から出射されて導光体12に入射した照明光は、全反射を繰り返しながら導光体12の内部を進行することによりその指向性が均一化され、出射面13からプリズム板14のプリズム面17へ向けて出射される。その後、プリズム面17からプリズム板14に入射した照明光は、プリズム板14により指向性が制御されて、プリズム板14の出射面18から出射される。これにより、指向性が制御された照明光が撮像対象物21に照射される。
【0025】
次に、本実施例に係る照明光学系により、照明光の指向性を任意に制御することができることについて説明する。
図13は、
図12に示される線CC´で断面における、
図10に例示されるプリズム板に入射する入射光と出射光の関係を示す図である。
図14は、
図10に例示されるプリズム板を上方から見たときの出射光の指向性を示す図である。
【0026】
図13に例示されるように、本実施例に係る照明光学系のプリズム板14では、プリズム面17の傾斜部15に入射した照明光がプリズム面17での屈折により整列方向(X方向)に偏向するのに対して、プリズム面17の平坦部16に入射した照明光は、プリズム面17での屈折により整列方向に偏向することなくプリズム板14を通過する。また、平坦部16に入射した照明光については、平坦部16と出射面18が平行であるため、平坦部16及び出射面18を通過しても、その整列方向(X方向)成分と稜線方向(Y方向)成分の比率も維持される。
【0027】
従って、本実施例に係る照明光学系によれば、照明光の指向性を任意に制御することができる。
より具体的には、
図14に例示される指向性分布で示されるように、本実施例に係る照明光学系によれば、稜線方向へも照明光を出射することができる。また、プリズム板14では、入射した照明光のすべてが整列方向に偏向する
図2に例示されるプリズム板200に比べて、整列方向に偏向する照明光の光量を抑制することができる。このため、本実施例に係る照明光学系によれば、従来技術に係る照明光学系に比べて、照明光の指向性の整列方向への偏りを抑えることができる。
【0028】
また、プリズム板14では、プリズム面17に占める平坦部16の面積の比率に応じて、整列方向に偏向する照明光の光量を任意に調整することが可能である。このため、本実施例に係る照明光学系によれば、稜線方向へ出射する照明光の光量に対する整列方向へ出射する照明光の光量の比率を任意に調整することができる。
図15は、
図10に例示されるプリズム板に比べてプリズム面に占める平坦部の面積の比率を増加させたプリズム板に入射する入射光と出射光の関係を示す図である。
図16は、
図15に例示されるプリズム板を上方から見たときの出射光の指向性を示す図である。
図15に例示されるように、プリズム板14aのプリズム面17aに占める平坦部16aの面積の比率を増加させて傾斜部15aに入射する照明光の光量を減少させることで、整列方向に偏向する照明光の光量を減少させることができる。このため、
図16に例示されるように、より円形に近い指向性分布を実現することができる。
【0029】
また、プリズム板14の平坦部16は、基本的には整列方向に平行であるが、稜線方向に対しては必ずしも平行である必要はない。平坦部16を稜線方向に対して傾斜して構成することで、稜線方向へプラス向き(Y+)に出射する光量とマイナス向き(Y−)に出射する光量のバランスを調整することができる。このため、本実施例に係る照明光学系によれば、稜線方向のプラス向きへ出射する照明光の光量と稜線方向のマイナス向きへ出射する照明光の光量とのバランスも任意に調整することができる。このような調整は、例えば、出射面18から撮像対象物21までの距離に応じて行っても良い。また、出射面18も、平坦部16と同様に、基本的には整列方向に平行であるが、稜線方向に対しては必ずしも平行である必要はない。出射面18を稜線方向に対して傾斜して構成することによっても、平坦部16を稜線方向に対して傾斜して構成する場合と同様の効果を得ることができる。
【0030】
なお、以上では、導光体12から射出される照明光の指向性が均一化されている場合を例に説明したが、導光体12から射出される照明光の指向性は、必ずしも均一化されている必要はない。プリズム板14は入射光の指向性に対する射出光の指向性を任意に制御することができる。このため、導光体12から射出される照明光の指向性に応じてプリズム板14を設計することで、本実施例に係る照明光学系は、照明光の指向性を任意に制御することができる。
【0031】
また、平坦部16及び出射面18は、整列方向に平行であることが望ましいが、必ずしも完全に平行である必要はない。傾斜部15に比べて傾斜角が小さく、稜線方向への光量の分配機能が得られる範囲内であれば、整列方向に対して傾斜していてもよい。
【0032】
さらに、本実施例に係る照明光学系によれば、所望の指向性を低コストで容易に実現することができる。
ブラスト面の性能は一般に定量化が難しく、ブラスト面の設計は、ブラスト強度の指定に拠らざるを得ないのが通常である。ブラスト強度の設計値は、実際のプリズム板と同様の材料、例えば、プラスティックなどに異なるブラスト強度でブラスト処理を施したものを比較するという試作実験により決定する方法が考えられる。しかしながら、このような方法により決定したブラスト強度でプリズム板の金型にブラスト処理を施したのでは、その金型から成形されるプリズム板に、試作実験で得られたものと同様の性能は望めない。これは、試作実験で使用した材料と金型の材料では硬さなどの条件が全く異なるからである。このため、所望の性能を実現するブラスト強度を決定するためには、金型自体に異なるブラスト強度の処理を施して比較する必要があり、時間的にもコスト的にも非常に負担が大きい。これに対して、プリズム板14は、
図5に例示される従来技術に係るプリズム板300と異なりブラスト面を含まない。このため、プリズム板14を含む本実施例に係る照明光学系によれば、低コストで容易に所望の指向性を実現することができる。また、ブラスト強度のような間接的な指標に頼ることなく、傾斜部15や平坦部16の幅や角度などによりプリズム板14の形状を指定してプリズム板を設計することができる。このため、設計を図面上に表現することが可能となり、その結果、設計した性能を高い再現性をもって実現することができる。
【0033】
さらに、本実施例に係る照明光学系によれば、撮像装置全体を小型化することができる。
従来技術に係る照明光学系では、稜線方向に照明光を出射することができないため、撮像光学系を取り囲むように照明光学系を環状に構成すると、光源から出射された照明光の光量を有効に活用することができない。これに対して、本実施例に係る照明光学系は、稜線方向に照明光を出射することが可能であり、任意に照明光の指向性を制御することができる。このため、
図10に例示されるように、照明光学系を矩形環状に構成してその内部に撮像光学系を配置することができるため、本実施例に係る照明光学系によれば、照明光の利用効率を維持しながら、撮像装置全体を小型化することができる。
【0034】
以下、本実施例に照明光学系に含まれるプリズム板のさまざまな変形例について説明する。
図17は、
図10に例示される照明光学系に含まれるプリズム板の変形例の斜視図である。
図18は、
図17に例示されるプリズム板に入射光と出射光の関係を示す図である。
図19は、
図17に例示されるプリズム板に比べてプリズム面に占める平坦部の面積の比率を増加させたプリズム板に入射する入射光と出射光の関係を示す図である。
図20は、
図10に例示される照明光学系に含まれるプリズム板の他の変形例に入射する入射光と出射光の関係を示す図である。
図21は、
図10に例示される照明光学系に含まれるプリズム板のさらに他の変形例に入射する入射光と出射光の関係を示す図である。
【0035】
図17に例示されるプリズム板22は、導光体側に形成されたプリズム面25が、複数のプリズム列の各々が形成する山の斜面に相当する整列方向に対して傾斜した傾斜部23と、複数のプリズム列の間に形成される谷に相当する整列方向に平行な平坦部24とを含んでいる点が、プリズム板14と異なっている。つまり、プリズム板22では、各プリズム列は、プリズム列の稜線方向に直交する断面で見たときには、三角形形状を呈していて、平坦部24は、複数のプリズム列の間に設けられている。なお、撮像対象物側にXY平面に平行な平面である出射面(出射面26)を有している点は、プリズム板14と同様である。
【0036】
図18に例示されるように、プリズム板22では、傾斜部23に入射した照明光がプリズム面25での屈折により整列方向(X方向)に偏向するのに対して、平坦部24に入射した照明光は、プリズム面25での屈折により整列方向に偏向することなくプリズム板22を通過する。このため、プリズム板22によっても、プリズム板14と同様の効果を得ることができる。
【0037】
また、プリズム板22は、プリズム面25に占める平坦部24の面積の比率に応じて、整列方向に偏向する照明光の光量を任意に調整することができる点も、プリズム板14と同様である。例えば、
図19に例示されるプリズム板22aのように、プリズム面25aに占める平坦部24aの面積の比率を増加させて傾斜部23aに入射する照明光の光量を減少させることで、整列方向に偏向する照明光の光量を減少させることができる。
【0038】
図20に例示されるプリズム板27は、撮像対象物側に微小な凹凸が形成されたブラスト面(拡散面)である出射面31を有している点が、プリズム板14と異なっている。なお、導光体側に形成されたプリズム面(プリズム面30)が、整列方向に対して傾斜した傾斜部(傾斜部28)と、整列方向に平行な平坦部(平坦部29)とを含んでいる点は、プリズム板14と同様である。
【0039】
図20に例示されるように、プリズム板27によれば、プリズム面30で照明光の指向性が調整された照明光が出射面31で拡散される。このため、プリズム板14に比べて指向性を和らげることができる。つまり、プリズム板14よりも、指向性分布を円形に近づけることができる。なお、このようなプリズム板27は、例えば、
図10に例示される導光体12から射出される照明光の指向性の偏りが大きい場合などに、より有効である。
【0040】
また、
図21に例示されるプリズム板32のような、導光体側に形成されたプリズム面35が、整列方向に対して傾斜した傾斜部33と、谷に相当する整列方向に平行な平坦部34とを含むプリズム板でも、撮像対象物側に微小な凹凸が形成されたブラスト面を含むことで、プリズム板27と同様の効果を得ることができる。
【実施例2】
【0041】
図22は、本実施例に係る照明光学系に含まれるプリズム板の斜視図である。
図23は、
図22に例示されるプリズム板に入射する入射光と出射光の関係を示す図である。
図24は、
図23に示される線DD´での断面における、
図22に例示されるプリズム板に入射する入射光と出射光の関係を示す図である。
図25は、
図22に例示されるプリズム板を上方から見たときの出射光の指向性を示す図である。なお、本実施例に係る照明光学系は、プリズム板14の代わりに
図22に例示されるプリズム板40を含む点を除き、
図10に例示される実施例1に係る照明光学系と同様である。
【0042】
図22に例示されるプリズム板40は、導光体側に複数のプリズム列が形成されたプリズム面43と、撮像対象物にXY平面に平行な平面である出射面44を有している。プリズム面43は、複数のプリズム列の各々が形成する山の斜面である傾斜部41と、それらの山の稜線42と、を含んでいて、各プリズム列は、プリズム列の稜線方向に直交する断面で見たときには、三角形形状を呈している。なお、傾斜部41は、微小な凹凸が形成されたブラスト面(拡散面)として形成されている。
【0043】
図23及び
図24に例示されるように、本実施例に係る照明光学系のプリズム板40では、照明光が整列方向に対して傾斜した傾斜部41に入射すると、屈折と拡散が同時に生じることになる。つまり、プリズム板40では、傾斜部41を通過した照明光は、稜線方向を含むさまざまな方向へ出射され、且つ、その光量分布の中心(以降、光軸と記す。)が、整列方向に偏向する。このため、出射面44から出射される照明光の指向性分布は、
図25に例示されるように、楕円形状となり、稜線方向へも照明光が出射される。また、プリズム板40では、傾斜部41をブラスト面として形成する際のブラスト強度を調整することで、稜線方向へ出射される照明光の光量を調整することができる。
【0044】
従って、本実施例に係る照明光学系によれば、照明光の指向性を任意に制御することができる。なお、プリズム板40では、拡散が偏向後ではなく偏向と同時に行われるため、
図5に例示されるプリズム板300に比べて、ブラスト面による拡散をより効率良く行うことができる。これにより、本実施例に係る照明光学系は、プリズム板300を含む照明光学系に比べて、指向性の制御範囲を広げることが可能であり、より円形に近い指向性分布を実現することができる。
【0045】
以下、本実施例に照明光学系に含まれるプリズム板の変形例について説明する。
図26は、本実施例に係る照明光学系に含まれるプリズム板の変形例に入射する入射光と出射光の関係を示す図である。
図27は、
図26に示される線EE´での断面における、
図26に例示されるプリズム板に入射する入射光と出射光の関係を示す図である。
図28は、
図26に例示されるプリズム板を上方から見たときの出射光の指向性を示す図である。
【0046】
図26及び
図27に例示されるプリズム板45は、撮像対象物側に微小な凹凸が形成されたブラスト面(拡散面)である出射面46を有している点が、プリズム板40と異なっている。なお、プリズム面43がブラスト面として形成された傾斜部41を導光体側に含む点は、プリズム板40と同様である。
【0047】
図26及び
図27に例示されるように、プリズム板45では、入射面であるプリズム面43の傾斜部41だけではなく出射面46もブラスト面として形成されているため、屈折と拡散が傾斜部41と出射面46のそれぞれで生じることになる。このため、プリズム板45を含む照明光学系は、プリズム板40を含む照明光学系に比べて、指向性の制御範囲を大幅に広げることが可能となり、
図28に例示されるような、さらに円形に近い指向性分布を実現することができる。
【実施例3】
【0048】
図29は、本実施例に係る撮像装置の構成を例示した図である。
図30は、
図29に例示される照明光学系に含まれるプリズム板の斜視図である。
図31は、
図30に例示されるプリズム板の平面図である。
図32は、
図31に例示されるプリズム板の破線部分の平面拡大図である。
【0049】
図29に例示される撮像装置50は、例えば、手のひら静脈認証装置やバーコードリーダなど、撮像対象物61からの情報読取を目的とする撮像装置である。撮像装置50は、撮像レンズ59とイメージセンサ60とを含む撮像光学系と、撮像光学系の周囲を取り囲むように配置された撮像装置用の照明光学系と、を含んでいる。
【0050】
照明光学系は、イメージセンサ60の周囲に円環状に配列された複数のLED51と、円環状に形成されたプリズム板54とを含み、さらに、複数のLED51とプリズム板54の間に、撮像レンズ59の周囲を取り囲むように円筒状に形成された導光体52を含んでいる。プリズム板54は、導光体52側にプリズム面57を有し、撮像対象物61側に撮像光学系の光軸と直交する平面である出射面58を有している。なお、プリズム板54は、実施例1に係るプリズム板14を円環状に構成したものに相当する。
【0051】
プリズム面57には、
図30、
図31に例示されるように、複数のプリズム列が形成されている。複数のプリズム列は、円環状のプリズム板54の円周方向に円環状に並んでいて、各々が円環状のプリズム板54の半径方向に向かって伸びている。
【0052】
プリズム面57は、複数のプリズム列の各々が形成する山の斜面に相当し且つプリズム板54の接線方向に対して傾斜した傾斜部55と、それらの山の平頂部に相当し且つプリズム板54の接線方向に平行な平坦部56と、を含んでいる。つまり、各プリズム列は、プリズム板54の半径方向に直交する断面で見たときには、台形形状を呈していて、平坦部56は、プリズム列毎に設けられている。
【0053】
図30に例示されるように、プリズム板54では、円周方向に円環状に並べられたプリズム列の山の高さがプリズム板54全体で(つまり、外周から内周まで)一定に、具体的には、高さH1に、なるように形成されている。また、山と山の間隔も、一定に、具体的には、間隔Wに、なるように形成されている。また、
図32に例示されるように、円環状のプリズム板54の外周は当然内周よりも長くなるため、各プリズム列の幅は、内側面では幅Pであるが、プリズム板54の内周側から外周側に向かって長くなる。プリズム板54では、内周側から外周側に向かって長くなるプリズム列の幅の、幅Pからの増分が、平坦部56の幅となっている。なお、山と山の間隔Wとプリズム列の幅Pは、W=Pの関係にある。
【0054】
以上のように構成された照明光学系では、LED51から出射されて導光体52に入射した照明光は、全反射を繰り返しながら導光体52の内部を進行することによりその指向性が均一化され、出射面53からプリズム板54のプリズム面57へ向けて出射される。その後、プリズム面57からプリズム板54に入射した照明光は、プリズム板54により指向性が制御されて、プリズム板54の出射面58から出射される。これにより、指向性が制御された照明光が撮像対象物61に照射される。
【0055】
なお、プリズム板54では、プリズム面57の傾斜部55に入射した照明光がプリズム面57での屈折により接線方向に偏向するのに対して、プリズム面57の平坦部56に入射した照明光は、プリズム面57での屈折により接線方向に偏向することなくプリズム板54を通過する。また、平坦部56に入射した照明光については、平坦部56と出射面58が平行であるため、平坦部56及び出射面58を通過しても、その接線方向成分と半径方向成分の比率が維持される。
【0056】
従って、本実施例に係る照明光学系によれば、実施例1に係る照明光学系と同様に、照明光の指向性を任意に制御することができる。より具体的には、半径方向へも照明光を出射することが可能であり、照明光の指向性の接線方向への偏りを抑えることができる。
【0057】
また、本実施例に係る照明光学系は、プリズム面57に占める平坦部56の面積の比率に応じて、接線方向に偏向する照明光の光量を任意に調整することが可能である。このため、実施例1に係る照明光学系と同様に、半径方向へ出射する照明光の光量に対する接線方向へ出射する照明光の光量の比率を任意に調整することができる。
【0058】
図33Aは、
図30に例示されるプリズム板のプリズム面に平坦部がない場合の射出光の指向性を例示する図である。
図33Bは、
図30に例示されるプリズム板のプリズム面に占める平坦部の比率が小さい場合の射出光の指向性を例示する図である。
図33Cは、
図30に例示されるプリズム板のプリズム面に占める平坦部の比率が中程度の場合の射出光の指向性を例示する図である。
図33Dは、
図30に例示されるプリズム板のプリズム面に占める平坦部の比率が大きい場合の射出光の指向性を例示する図である。
【0059】
プリズム板54の代わりに、プリズム面に平坦部がないプリズム板54aを照明光学系に用いた場合には、プリズム板54aへの入射光がさまざまな方向から入射しても半径方向へ出射する照明光は生じないため、
図33Aに例示されるように、照明光学系から出射される照明光は、半径方向がくびれた8の字型に分布することになる。
【0060】
プリズム板のプリズム面に占める平坦部の比率が小さいプリズム板54を照明光学系に用いた場合には、半径方向へ比較的少ない光量の照明光が出射される。このため、
図33Bに例示されるように、照明光学系から出射される照明光は、半径方向に比べて接線方向に強い指向性を示す楕円形状の指向性分布を有することになる。
【0061】
プリズム板54の代わりに、プリズム板のプリズム面に占める平坦部の比率が中程度のプリズム板54bを照明光学系に用いた場合には、半径方向へもある程度の光量の照明光が出射される。このため、
図33Cに例示されるように、照明光学系から出射される照明光は、半径方向に対して接線方向に強い指向性を示すが、比較的円形状に近い楕円形状の指向性分布を有することになる。
【0062】
プリズム板54の代わりに、プリズム板のプリズム面に占める平坦部の比率が大きいプリズム板54cを照明光学系に用いた場合には、半径方向へも十分な光量の照明光が出射される。このため、
図33Dに例示されるように、照明光学系から出射される照明光は、略円形状の指向性分布を有することになる。
【0063】
次に、
図33Aから
図33Dで例示される指向性分布を有する照明光を撮像対象物61に照射した場合の、撮像対象物上での照度分布について説明する。
図34は、照度の評価面と照明光学系の出射面との関係を示す図である。
図35Aは、照明光学系から出射される照明光が
図33Aに例示される指向性を示す場合における、評価面での照度分布を示す図である。
図35Bは、照明光学系から出射される照明光が
図33Bに例示される指向性を示す場合における、評価面での照度分布を示す図である。
図35Cは、照明光学系から出射される照明光が
図33Cに例示される指向性を示す場合における、評価面での照度分布を示す図である。
図35Dは、照明光学系から出射される照明光が
図33Dに例示される指向性を示す場合における、評価面での照度分布を示す図である。
図36は、照明光学系から出射される照明光の指向性の変化による評価面での照度分布の変化について説明するための図である。
【0064】
なお、
図34に例示されるように、撮像光学系の光軸方向をz軸方向と定義し、照明光学系の出射面58のz座標を0とし、撮像対象物61表面に相当する評価面のz座標をz1とする。また、撮像光学系の光軸方向と直交する半径方向をr方向と定義し、撮像光学系の光軸のr座標を0とする。
【0065】
図33Aに例示される指向性分布を有する照明光が評価面に入射すると、
図35Aに示されるように、評価面の中央部分の照度が0となる。このため、
図33Aに例示される指向性分布では、撮像対象物61の中心部分が全く照らされない。
【0066】
一方、
図33Bから
図33Dに例示されるような半径方向にも分布を有する照明光が評価面に入射すると、
図35Bから
図35Dに示されるように、評価面の中央部分にも照度が生じることになり、撮像対象物61全体を照明することができる。
【0067】
また、
図33Dに例示される略円形状の指向性分布を有する照明光が評価面に入射すると、
図35Dに示されるように、照度分布Dは平坦にはならず、評価面の中心部分が高い照度を示す。これは、照明光学系が円環状に構成されているためである。
図35Cに示されるように、
図33Cに例示される比較的円形状に近い半径方向を短軸とする楕円形状の指向性分布を有する照明光を評価面に入射した場合に、評価面で略平坦な照度分布Cが生じることになる。
【0068】
このように、本実施例に係る照明光学系によれば、プリズム面に占める平坦部の面積の比率を変更して半径方向へ出射される照明光の光量を変更することにより、照明光の指向性分布を制御することが可能で有り、その結果として、
図36に示されるように、評価面(撮像対象物)での照度分布を任意に制御することができる。
【0069】
また、プリズム板54の平坦部56は、基本的には接線方向に平行であるが、半径方向に対しては必ずしも平行である必要はない。平坦部56を半径方向に対して傾斜して構成することで、半径方向へプラス向き(プリズム板54の内周側から外周側に進む向き)に出射する光量とマイナス向き(プリズム板54の外周側から内周側に進む向き)に出射する光量のバランスを調整することができる。このため、本実施例に係る照明光学系によれば、半径方向のプラス向きへ出射する照明光の光量と半径方向のマイナス向きへ出射する照明光の光量とのバランスも任意に調整することができる。このような調整は、例えば、出射面58から撮像対象物61までの距離に応じて行っても良い。また、出射面58も、平坦部56と同様に、基本的には接線方向に平行であるが、半径方向に対しては必ずしも平行である必要はない。出射面58を半径方向に対して傾斜して構成することによっても、平坦部56を接線方向に対して傾斜して構成する場合と同様の効果を得ることができる。
【0070】
なお、本実施例では、出射面58から射出される照明光の指向性が均一化されている場合を例に説明したが、導光体52から射出される照明光の指向性は、必ずしも均一化されている必要はない。プリズム板54は入射光の指向性に対する射出光の指向性を任意に制御することができる。このため、導光体52から射出される照明光の指向性に応じてプリズム板54を設計することで、本実施例に係る照明光学系は、照明光の指向性を任意に制御することができる。
【0071】
また、平坦部56及び出射面58は、接線方向に平行であることが望ましいが、必ずしも完全に平行である必要はない。傾斜部55に比べて傾斜角が小さく、半径方向への光量の分配機能が得られる範囲内であれば、接線方向に対して傾斜していてもよい。
【0072】
さらに、本実施例に係る照明光学系によれば、ブラスト面を含まないため、実施例1で上述した理由と同様の理由により、所望の指向性を低コストで容易に実現することができる。また、設計を図面上に表現することが可能となり、その結果、設計した性能を高い再現性をもって実現することができる。
【0073】
さらに、本実施例に係る照明光学系によれば、撮像装置全体を小型化することができる。従来技術に係る照明光学系では、稜線方向(本実施例の照明光学系では半径方向に相当)に照明光を出射することができないため、撮像光学系を取り囲むように照明光学系を環状に構成すると、光源から出射された照明光の光量を有効に活用することができない。これに対して、本実施例に係る照明光学系は、半径方向に照明光を出射することが可能であり、任意に照明光の指向性を制御することができる。このため、
図29に例示されるように、照明光学系を円環状に構成してその内部に撮像光学系を配置することができるため、本実施例に係る照明光学系によれば、照明光の利用効率を維持しながら、撮像装置全体を小型化することができる。
【0074】
また、矩形環状に構成された照明光学系の場合、例えば、矩形の各辺の中央部分から出射される照明光と端部分から出射される照明光は、撮像レンズ59までの距離やその照明光の光軸と撮像レンズ59との関係などがそれぞれ異なるため、撮像に異なる影響を及ぼすことになる。これに対して、円環状に構成された照明光学系の場合、円周方向の異なる位置から射出された照明光であっても撮像に及ぼす影響に違いはないため、照明光学系により照明光の指向性を制御することにより、最適な撮像条件を実現することが容易となる。従って、本実施例に係る照明光学系は、撮像光学系の照明光学系としてより好適である。
【0075】
以下、本実施例に照明光学系に含まれるプリズム板のさまざまな変形例について説明する。
図37は、
図29に例示される照明光学系に含まれるプリズム板の変形例の斜視図である。
図38は、
図37に例示されるプリズム板の平面図である。
図39は、
図29に例示される照明光学系に含まれるプリズム板の他の変形例の斜視図である。
図40は、
図39に例示されるプリズム板の平面図である。
【0076】
図37及び
図38に例示されるプリズム板62は、プリズム面57の代わりにプリズム面65を含む点が、
図30に例示されるプリズム板54と異なっている。プリズム面65は、複数のプリズム列の各々が形成する山の斜面に相当し且つプリズム板62の接線方向に対して傾斜した傾斜部63と、それらの山の平頂部に相当し且つプリズム板62の接線方向に平行な平坦部64と、を含む点は、
図30に例示されるプリズム面57と同様である。
【0077】
プリズム板62では、
図37に例示されるように、プリズム列の山の高さは、外周面から中間点Mまでは高さH2で一定であるが、中間点Mから内周面までは、内周面に向かって低くなっており、内周面では高さH3(<H2)になっている。なお、プリズム板62では、山と山の間隔Wとプリズム列の幅Pは、W>Pの関係にある。
【0078】
図39及び
図40に例示されるプリズム板66は、プリズム面57の代わりにプリズム面69を含む点が、
図30に例示されるプリズム板54と異なっている。また、プリズム面69は、複数のプリズム列の各々が形成する山の斜面に相当し且つプリズム板66の接線方向に対して傾斜した傾斜部67と、複数のプリズム列の間に形成される谷に相当し且つプリズム板66の接線方向に平行な平坦部68とを含んでいる点が、
図30に例示されるプリズム面57と異なっている。つまり、プリズム板66では、各プリズム列は、プリズム列の半径方向に直交する断面で見たときには、三角形形状を呈していて、平坦部68は、複数のプリズム列の間に設けられている。
【0079】
プリズム板66では、山の高さ(谷の深さ)は、外周面から中間点Mまでは高さH4で一定であるが、中間点Mから内周面までは、内周面に向かって低く(浅く)なっており、内周面では高さH5(<H4)になっている。なお、プリズム板66では、プリズム列の山の頂上部分の位置を一定に揃えている。また、プリズム板62では、山と山の間隔Wとプリズム列の幅Pは、W>Pの関係にある。
【0080】
プリズム板66では、傾斜部67に入射した照明光がプリズム面69での屈折により接線方向に偏向するのに対して、平坦部68に入射した照明光は、プリズム面69での屈折により接線方向に偏向することなくプリズム板66を通過する。このため、プリズム板66によっても、プリズム板54と同様に、照明光の指向性を任意に制御することができる。
【0081】
図37及び
図38に例示されるプリズム板62及び
図39及び
図40に例示されるプリズム板66は、山の高さが一定である外周面から中間点までの間は、プリズム板54と同様に、平坦部が形成されるが、中間点Mから内周面までは、平坦部が形成されない。このため、プリズム板54に比べて、平坦部の面積が減少するため、プリズム板62及びプリズム板66では、半径方向へ出射される照明光の光量を抑えることができる。
【0082】
なお、以上では、平坦部の面積の比率を減少させる例を示したが、変形例は特にこれに限られない。例えば、山と山の間隔Wとプリズム列の幅PがW<Pの関係となるプリズム面を形成することにより、平坦部の面積を増加させてもよい。このように、山と山の間隔W、プリズム列の幅P、山の高さHなどプリズム面のパラメータをさまざまに変更することで平坦部の面積の比率を任意に変更することが可能である。それによって、照明光の指向性を任意に制御することができる。
【0083】
その他、本実施例に係る照明光学系においても、実施例1と同様に、プリズム板の出射面を微小な凹凸が形成されたブラスト面(拡散面)として形成してもよい。これにより、指向性を和らげることができるため、指向性分布をさらに、円形に近づけることができる。
【0084】
図41は、
図29に例示される撮像装置に含まれる照明光学系の変形例の構成を例示した図である。
図42は、
図41に例示される照明光学系に含まれるプリズム板の斜視図である。
【0085】
図41に例示される照明光学系70は、不図示のイメージセンサの周囲に円環状に配列された複数のLED71と、円環状に形成されたプリズム板73と、複数の71とプリズム板73の間に、円筒状に形成された導光体72を含んでいる。また、プリズム板73は、導光体72側にプリズム面74を、撮像対象物側に出射面75を有している。
【0086】
照明光学系70は、
図41に例示されるように、導光体72の出射面が半径方向に傾斜している点、プリズム板73のプリズム面74及び出射面75が半径方向に傾斜している点が、
図29に例示される照明光学系と異なっている。このため、プリズム板73は、
図42に例示されるように、円錐台形状を呈している。
【0087】
本変形例に係る照明光学系70によっても、
図29に例示される照明光学系と同様に、照明光の指向性を任意に制御することができる。例えば、照明光学系70では、円錐台形状のプリズム板73により、半径方向のプラス向きへ出射する照明光の光量と半径方向のマイナス向きへ出射する照明光の光量とのバランスを任意に調整することができる。このような調整は、出射面75から撮像対象物までの距離に応じて行っても良い。