【0005】
以下、本発明を詳細に説明する。
<トリメチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート単位を主たる繰り返し単位とする芳香族ポリエステル>
本発明の配向積層フィルムは、芳香族ポリエステルからなる層A(以下、単に層Aと略記することがある。)と、ポリ乳酸組成物からなる層B(以下、単に層Bと略記することがある。)が積層された配向フィルムであり、芳香族ポリエステルは主たる繰り返し単位がトリメチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート単位とする。本発明において、「主たる」とは、芳香族ポリエステルの全繰り返し単位を基準として、80モル%以上を占めることを意味する。このポリマーは先述したポリ乳酸とのガラス転移点温度差が20℃以下であり、且つ当該ポリマーの融点が230℃以下を満足することができる。融点が230℃を超えた場合、製膜温度も230℃を超える温度に設定する必要があり、その結果、同時に溶融押出されるポリ乳酸の分解を誘発し、積層フィルム上の異物欠点や工程汚染の原因となる。
なお、芳香族ポリエステルは、本発明の目的を損なわない範囲で公知の共重合成分を共重合しても良いが、共重合する場合は、芳香族ポリエステルを構成する全ジカルボン酸成分を基準として、20モル%未満に抑えておくことが、特性の変化を一定範囲内に抑えるという観点から好ましく、共重合成分が多すぎる場合には、融点が低下して結晶性が低下し、延伸時に高屈折率が発現しにくくなるという観点から、芳香族ポリエステルの全繰り返し単位を基準として、90モル%以上をトリメチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート単位が占めることが好ましい。
<ポリ乳酸組成物>
一方、本発明において、層Bはポリ乳酸組成物であることが好ましい。ポリ乳酸組成物は結晶性を示すことが好ましいが、ポリL−乳酸とポリD−乳酸との混合物から作られる非結晶性のポリ乳酸組成物でもよい。層Bを構成するポリ乳酸組成物は、融点が150℃〜230℃であるポリ乳酸組成物であることがさらに好ましい。融点が150℃未満であったり、230℃を超えたりすると、層Aとの積層状態が均質に保持することができない。融点は170℃〜220℃であることが更に好ましい。このような融点を示すポリ乳酸としては、光学純度が99%以上のポリL−乳酸、光学純度が99%以上のポリD−乳酸、ステレオコンプレックス結晶を形成しているステレオコンプレックスポリ乳酸などを好適に用いることができ、ポリ乳酸としては、L−乳酸及び/又はD−乳酸が、全繰り返し単位中の50%以上を占めているものを用いればよい。
なお、本発明におけるポリ乳酸組成物は、ステレオコンプレックス結晶を有するステレオコンプレックスポリ乳酸であることが好ましい。
ステレオコンプレックス結晶を有するポリ乳酸であることにより、ポリ乳酸からなる層を用いた積層フィルムよりも更に耐熱性を向上させることが可能となる。
本発明において、ステレオコンプレックスポリ乳酸とは、ポリD−乳酸成分及びポリL−乳酸成分とを含み、ステレオコンプレックス結晶を有するものであって、次式(i)で表されるステレオコンプレックス結晶化度(S)が90%以上であるポリ乳酸組成物であることが好ましい。{ステレオコンプレックス結晶化度(S)は示差走査熱量計(DSC)測定で、190℃未満に観測されるポリ乳酸ホモ結晶融解熱(△Hm
h)、190℃以上に観測されるポリ乳酸ステレオコンプレックス結晶融解熱(△Hm
sc)より次式(i)により求めた。
(S) = 〔△Hm
sc/(△Hm
h+△Hm
sc)〕 × 100 (i)}
ステレオコンプレックス結晶化度(S)が90%以上であれば、高い結晶性を有するステレオコンプレックスポリ乳酸を得ることができ、特に好ましくは93%から100%、より好ましくは95%から100%の範囲が選択される。特に好ましくはステレオコンプレックス結晶化度(S)が100%の時である。
さらに本発明においてステレオコンプレックスポリ乳酸組成物は、結晶性を有していることが好ましく、広角X線回折(XRD)測定による回折ピークの強度比によって、式(ii)で定義されるステレオコンプレックス結晶化率(Sc)が50%以上を有することがより好ましい。好ましくは50から100%、さらに好ましくは70から100%、とりわけ好ましくは90から100%の範囲が選択される。
Sc(%)=〔ΣI
SCi/(ΣI
SCi+I
HM)〕×100 (ii)
[ここで、ΣI
SCi=I
SC1+I
SC2+I
SC3、SCi(i=1から3)はそれぞれ2θ=12.0°,20.7°,24.0°付近の各回折ピークの積分強度、I
HMは2θ=16.5°付近に現れるホモ結晶に由来する回折ピークの積分強度I
HMを表す。]
さらに同様の観点より、本発明において、ポリ乳酸ホモ結晶の結晶化率、とりわけXRD測定によるポリ乳酸ホモ結晶の結晶化率は少なくとも5%、好ましくは5から60%、より好ましくは7から50%、さらに好ましくは10から45%の範囲が選択される。
さらにポリ乳酸ステレオコンプレックスポリ乳酸の融点は190から230℃、より好ましくは200から225℃の範囲が好適に選択され、DSC測定による結晶融解エンタルピーは、20J/g以上、好ましくは20から80J/g、より好ましくは30から80J/gの範囲が選択される。
ポリ乳酸ステレオコンプレックスポリ乳酸の融点が190℃未満であると、ステレオコンプレックス結晶形成の意義が小さなものとなってしまう。さらに230℃を超える場合、フィルムを製膜するとき、230℃を超える高温条件が必要となり、ステレオコンプレックスポリ乳酸組成物の熱分解を抑制することが困難となる場合があるからである。
さらに結晶融解エンタルピーの値についても同様の議論があてはまる。
かかるステレオコンプレックス結晶化度(S)、ステレオコンプレックス結晶化率(Sc)、さらに上述の各種結晶性のパラメーターを好適に満たすために、ポリ乳酸において、ポリD−乳酸成分とポリL−乳酸成分との重量比は90/10から10/90であることが好ましい。
より好ましくは80/20から20/80、さらに好ましくは30/70から70/30、とりわけ好ましくは40/60から60/40の範囲であり、理論的には1/1にできるだけ近い方が好ましく選択される。
また、ステレオコンプレックスポリ乳酸組成物におけるポリ乳酸成分は50重量%以上であることが必要であり、好ましくは75重量%以上、さらに好ましくは95重量%以上、最も好ましくは100重量%である。ポリ乳酸成分が90重量%未満では、本発明の趣旨であるポリ乳酸を用いた配向積層フィルムを提供するという趣旨からは外れたものとなる。ポリ乳酸以外の樹脂を含有させる場合には、フィルム成形性の観点から熱可塑性樹脂であることが好ましい。
ポリ乳酸以外の熱可塑性樹脂としては、例えばポリ乳酸樹脂以外のポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリエチレン樹脂およびポリプロピレン樹脂等のポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、塩素化ポリエチレン樹脂、塩素化ポリプロピレン樹脂、芳香族および脂肪族のポリケトン樹脂、フッソ樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、ポリイミド樹脂、熱可塑性澱粉樹脂、AS(アクリロニトリル・スチレン)樹脂、ABS(アクリロニトリル・スチレン・ブタジエン)樹脂、AES(アクリロニトリル・エチレン−プロピレン−ジエン・スチレン)樹脂、ACS(アクリロニトリル・塩素化ポリエチレン・スチレン)樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ビニルエステル系樹脂、MS(メタクリン・スチレン)樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、フェノキシ樹脂、ポリフェニレンオキサイド樹脂、ポリ−4−メチルペンテン−1、ポリエーテルイミド樹脂、ポリビニルアルコール樹脂等の熱可塑性樹脂を挙げることができるが、これらのうち、ポリメタクリル酸メチルはポリ乳酸との相溶性が良く、また屈折率が近いという観点から好ましい。
また、ポリ乳酸組成物には、耐湿熱性改善剤として特定官能基を有する化合物を含有させることが好ましい。耐湿熱性改善剤としては、カルボキシル末端基封鎖剤として主として機能するものが好ましく、カルボジイミド化合物、芳香族カルボジイミド化合物、エポキシ化合物、オキサゾリン化合物を例示することができるが、効果の点で好ましくはカルボジイミド化合物である。配合量はポリ乳酸組成物100重量部あたり、好ましくは0.001〜5重量部の範囲である。0.001重量部より少ないとカルボキシル基封止剤としてその機能を発揮することが不十分である。またこの範囲を超えて多量に適用すると剤の分解等の好ましくない副反応により樹脂色相の悪化あるいは可塑化がおこる懸念が大きくなり好ましくない。
カルボジイミド化合物はカルボジイミド官能基を分子内に少なくとも一個保有する化合物であり、例えば以下の化合物が例示される。特にカルボジイミド化合物は下記式(6)の機構で末端二重結合と、末端カルボキシル基とが発生しても、また、加水分解によって末端カルボキシル基が発生しても、末端カルボキシル基とカルボジイミド基とが反応することにより末端封鎖および高分子鎖延長が可能となり、脆化を防ぐことが可能である。
カルボジイミド化合物としては、ジシクロヘキシルカルボジイミド、ジイソプロピルカルボジイミド、ジイソブイチルカルボジイミド、ジオクチルカルボジイミド、オクチルデシルカルボジイミド、ジ−tert−ブチルカルボジイミド、ジベンジルカルボジイミド、N−オクタデシル−N’−フェニルカルボジイミド、N−ベンジル−N’−フェニルカルボジイミド、N−ベンジル−N’−トリルカルボジイミド、N−トリル−N’−シクロヘキシルカルボシイミド、p−フェニレンビス(シクロヘキシルカルボジイミド)、ヘキサメチレンビス(シクロヘキシルカルボジイミド)、エチレンビス(フェニルカルボジイミド)、エチレンビス(シクロヘキシルカルボジイミド)、などのモノカルボジイミド化合物またはポリカルボジイミド化合物が例示される。
また、芳香族カルボジイミド化合物としては、例えば、ジフェニルカルボジイミド、ジ−o−トルイルカルボジイミド、ジ−p−トルイルカルボジイミド、ビス(p−アミノフェニル)カルボジイミド、ビス(p−クロロフェニル)カルボジイミド、ビス(o−クロロフェニル)カルボジイミド、ビス(o−エチルフェニル)カルボジイミド、ビス(p−エチルフェニル)カルボジイミドビス(o−イソプロピルフェニル)カルボジイミド、ビス(p−イソプロピルフェニル)カルボジイミド、ビス(o−イソブチルフェニル)カルボジイミド、ビス(p−イソブチルフェニル)カルボジイミド、ビス(2,5−ジクロロフェニル)カルボジイミド、ビス(2,6−ジメチルフェニル)カルボジイミド、ビス(2,6−ジエチルフェニル)カルボジイミド、ビス(2−エチル−6−イソプロピルフェニル)カルボジイミド、ビス(2−ブチル−6−イソプロピルフェニル)カルボジイミド、ビス(2,6−ジイソプロピルフェニル)カルボジイミド、ビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)カルボジイミド、ビス(2,4,6−トリメチルフェニル)カルボジイミド、ビス(2,4,6−トリイソプロピルフェニル)カルボジイミド、ビス(2,4,6−トリブチルフェニル)カルボジイミド、ジβナフチルカルボシイミド、N−トリル−N’−フェニルカルボシイミド、p−フェニレンビス(o−トルイルカルボジイミド)、p−フェニレンンビス(p−クロロフェニルカルボジイミド)、2,6,2’,6’−テトライソプロピルジフェニルカルボジイミドなどのモノカルボジイミド化合物またはポリカルボジイミド化合物が例示される。
またこれらのうち工業的に入手可能なジシクロヘキシルカルボジイミド、ビス(2,6−ジイソプロピルフェニル)カルボジイミドも好適に使用できる。市販のポリカルボジイミド化合物は、合成する必要もなく利用できる利点を有する。かかる市販のポリカルボジイミド化合物として、例えば日清紡ケミカル(株)より「カルボジライト」(登録商標)の商品名で販売されている「カルボジライト」(登録商標)LA−1、あるいはHMV−8CA、水性タイプ「カルボジライト」(登録商標)V−02,同V−02−L2、同V−04,同E−01,同E−02,同E−03A、同E−04、ラインケミージャパン(株)より「スタバクゾール」(登録商標)の商品名で販売されている、「スタバクゾール」(登録商標)I、「スタバクゾール」(登録商標)P、「スタバクゾール」(登録商標)P−100などが好適に例示される。
カルボジイミド化合物として、特に好ましくは、国際公開WO2010/071213号パンフレットにて提案される、環状構造を有するカルボジイミドであり、樹脂の溶融時等にイソシアネート等の有害ガスを放出しないので好適に用いられる。さらに、環状カルボジイミドは鎖状カルボジイミドに比べて、以下の点で有利である。すわなち、環状カルボジイミドとポリ乳酸のカルボキシル末端基とが反応した場合に、高分子鎖末端に取り込まれた上に、その末端がイソシアネート基となって、低分子のイソシアネート化合物が遊離せず、さらにこのイソシアネート基により高分子鎖の延長が可能となるからである。
この環状構造は、カルボジイミド基(−N=C=N−)を1個有しその第一窒素と第二窒素とが結合基により結合されている。一つの環状構造中には、1個のカルボジイミド基のみを有するが、例えば、スピロ環など、分子中に複数の環状構造を有する場合にはスピロ原子に結合するそれぞれの環状構造中に1個のカルボジイミド基を有していれば、化合物として複数のカルボジイミド基を有していてよいことはいうまでもない。
環状構造中の原子数は、好ましくは8〜50、より好ましくは10〜30、さらに好ましくは10〜20である。
ここで、環状構造中の原子数とは、環構造を直接構成する原子の数を意味し、例えば、8員環であれば8、50員環であれば50である。環状構造中の原子数が8より小さいと、環状カルボジイミド化合物の安定性が低下して、保管、使用が困難となる場合があるためである。また反応性の観点よりは環員数の上限値に関しては特別の制限はないが、50を超える原子数の環状カルボジイミド化合物は合成上困難となり、コストが大きく上昇する場合が発生するためである。かかる観点より環状構造中の原子数は好ましくは、10〜30、より好ましくは10〜20の範囲が選択される。
環状構造は、下記式(10)で表される構造であることが好ましい。
式中、Qは、それぞれヘテロ原子ならびに置換基を含んでいてもよい、脂肪族基、脂環族基、芳香族基またはこれらの組み合わせである2〜4価の結合基である。ヘテロ原子とはこの場合、O、N、S、Pを指す。この結合基の価のうち2つの価は環状構造を形成するために使用される。Qが3価あるいは4価の結合基である場合、単結合、二重結合、原子、原子団を介して、ポリマーあるいは他の環状構造と結合している。
結合基は、それぞれヘテロ原子ならびに置換基を含んでいてもよい、2〜4価の炭素数1〜20の脂肪族基、2〜4価の炭素数3〜20の脂環族基、2〜4価の炭素数5〜15の芳香族基またはこれらの組み合わせであり、上記で規定される環状構造を形成するための必要炭素数を有する結合基が選択される。組み合わせの例としては、アルキレン基とアリーレン基が結合した、アルキレン−アリーレン基のような構造などが挙げられる。
結合基(Q)は、下記式(10−1)、(10−2)または(10−3)で表される2〜4価の結合基であることが好ましい。
式中、Ar
1およびAr
2は各々独立に、それぞれヘテロ原子ならびに置換基を含んでいてもよい、2〜4価の炭素数5〜15の芳香族基である。
芳香族基として、それぞれヘテロ原子を含んで複素環構造を持っていてもよい、炭素数5〜15のアリーレン基、炭素数5〜15のアレーントリイル基、炭素数5〜15のアレーンテトライル基が挙げられる。アリーレン基(2価)として、フェニレン基、ナフタレンジイル基などが挙げられる。アレーントリイル基(3価)として、ベンゼントリイル基、ナフタレントリイル基などが挙げられる。アレーンテトライル基(4価)として、ベンゼンテトライル基、ナフタレンテトライル基などが挙げられる。これらの芳香族基は置換されていても良い。置換基として、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜15のアリール基、ハロゲン原子、ニトロ基、アミド基、ヒドロキシル基、エステル基、エーテル基、アルデヒド基などが挙げられる。
R
1およびR
2は各々独立に、それぞれヘテロ原子ならびに置換基を含んでいてもよい、2〜4価の炭素数1〜20の脂肪族基、2〜4価の炭素数3〜20の脂環族基、およびこれらの組み合わせ、またはこれら脂肪族基、脂環族基と2〜4価の炭素数5〜15の芳香族基の組み合わせである。
脂肪族基として、炭素数1〜20のアルキレン基、炭素数1〜20のアルカントリイル基、炭素数1〜20のアルカンテトライル基などが挙げられる。アルキレン基として、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、ヘプチレン基、オクチレン基、ノニレン基、デシレン基、ドデシレン基、ヘキサデシレン基などが挙げられる。アルカントリイル基として、メタントリイル基、エタントリイル基、プロパントリイル基、ブタントリイル基、ペンタントリイル基、ヘキサントリイル基、ヘプタントリイル基、オクタントリイル基、ノナントリイル基、デカントリイル基、ドデカントリイル基、ヘキサデカントリイル基などが挙げられる。アルカンテトライル基として、メタンテトライル基、エタンテトライル基、プロパンテトライル基、ブタンテトライル基、ペンタンテトライル基、ヘキサンテトライル基、ヘプタンテトライル基、オクタンテトライル基、ノナンテトライル基、デカンテトライル基、ドデカンテトライル基、ヘキサデカンテトライル基などが挙げられる。これらの脂肪族基は置換されていても良い。置換基として、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜15のアリール基、ハロゲン原子、ニトロ基、アミド基、ヒドロキシル基、エステル基、エーテル基、アルデヒド基などが挙げられる。
脂環族基として、炭素数3〜20のシクロアルキレン基、炭素数3〜20のシクロアルカントリイル基、炭素数3〜20のシクロアルカンテトライル基が挙げられる。シクロアルキレン基として、シクロプロピレン基、シクロブチレン基、シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基、シクロヘプチレン基、シクロオクチレン基、シクロノニレン基、シクロデシレン基、シクロドデシレン基、シクロヘキサデシレン基などが挙げられる。シクロアルカントリイル基として、シクロプロパントリイル基、シクロブタントリイル基、シクロペンタントリイル基、シクロヘキサントリイル基、シクロヘプタントリイル基、シクロオクタントリイル基、シクロノナントリイル基、シクロデカントリイル基、シクロドデカントリイル基、シクロヘキサデカントリイル基などが挙げられる。シクロアルカンテトライル基として、シクロプロパンテトライル基、シクロブタンテトライル基、シクロペンタンテトライル基、シクロヘキサンテトライル基、シクロヘプタンテトライル基、シクロオクタンテトライル基、シクロノナンテトライル基、シクロデカンテトライル基、シクロドデカンテトライル基、シクロヘキサデカンテトライル基などが挙げられる。これらの脂環族基は置換されていても良い。置換基として、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜15のアリール基、ハロゲン原子、ニトロ基、アミド基、ヒドロキシル基、エステル基、エーテル基、アルデヒド基などが挙げられる。
芳香族基として、それぞれヘテロ原子を含んで複素環構造を持っていてもよい、炭素数5〜15のアリーレン基、炭素数5〜15のアレーントリイル基、炭素数5〜15のアレーンテトライル基が挙げられる。アリーレン基として、フェニレン基、ナフタレンジイル基などが挙げられる。アレーントリイル基(3価)として、ベンゼントリイル基、ナフタレントリイル基などが挙げられる。アレーンテトライル基(4価)として、ベンゼンテトライル基、ナフタレンテトライル基などが挙げられる。これら芳香族基は置換されていても良い。置換基として、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜15のアリール基、ハロゲン原子、ニトロ基、アミド基、ヒドロキシル基、エステル基、エーテル基、アルデヒド基などが挙げられる。
X
1およびX
2は各々独立に、それぞれヘテロ原子ならびに置換基を含んでいてもよい、2〜4価の炭素数1〜20の脂肪族基、2〜4価の炭素数3〜20の脂環族基、2〜4価の炭素数5〜15の芳香族基、またはこれらの組み合わせである。
脂肪族基として、炭素数1〜20のアルキレン基、炭素数1〜20のアルカントリイル基、炭素数1〜20のアルカンテトライル基などが挙げられる。アルキレン基として、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、ヘプチレン基、オクチレン基、ノニレン基、デシレン基、ドデシレン基、ヘキサデシレン基などが挙げられる。アルカントリイル基として、メタントリイル基、エタントリイル基、プロパントリイル基、ブタントリイル基、ペンタントリイル基、ヘキサントリイル基、ヘプタントリイル基、オクタントリイル基、ノナントリイル基、デカントリイル基、ドデカントリイル基、ヘキサデカントリイル基などが挙げられる。アルカンテトライル基として、メタンテトライル基、エタンテトライル基、プロパンテトライル基、ブタンテトライル基、ペンタンテトライル基、ヘキサンテトライル基、ヘプタンテトライル基、オクタンテトライル基、ノナンテトライル基、デカンテトライル基、ドデカンテトライル基、ヘキサデカンテトライル基などが挙げられる。これらの脂肪族基は置換されていても良い。置換基として、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜15のアリール基、ハロゲン原子、ニトロ基、アミド基、ヒドロキシル基、エステル基、エーテル基、アルデヒド基などが挙げられる。
脂環族基として、炭素数3〜20のシクロアルキレン基、炭素数3〜20のシクロアルカントリイル基、炭素数3〜20のシクロアルカンテトライル基が挙げられる。シクロアルキレン基として、シクロプロピレン基、シクロブチレン基、シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基、シクロヘプチレン基、シクロオクチレン基、シクロノニレン基、シクロデシレン基、シクロドデシレン基、シクロヘキサデシレン基などが挙げられる。アルカントリイル基として、シクロプロパントリイル基、シクロブタントリイル基、シクロペンタントリイル基、シクロヘキサントリイル基、シクロヘプタントリイル基、シクロオクタントリイル基、シクロノナントリイル基、シクロデカントリイル基、シクロドデカントリイル基、シクロヘキサデカントリイル基などが挙げられる。アルカンテトライル基として、シクロプロパンテトライル基、シクロブタンテトライル基、シクロペンタンテトライル基、シクロヘキサンテトライル基、シクロヘプタンテトライル基、シクロオクタンテトライル基、シクロノナンテトライル基、シクロデカンテトライル基、シクロドデカンテトライル基、シクロヘキサデカンテトライル基などが挙げられる。これらの脂環族基は置換されていても良い。置換基として、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜15のアリール基、ハロゲン原子、ニトロ基、アミド基、ヒドロキシル基、エステル基、エーテル基、アルデヒド基などが挙げられる。
芳香族基として、それぞれヘテロ原子を含んで複素環構造を持っていてもよい、炭素数5〜15のアリーレン基、炭素数5〜15のアレーントリイル基、炭素数5〜15のアレーンテトライル基が挙げられる。アリーレン基として、フェニレン基、ナフタレンジイル基などが挙げられる。アレーントリイル基(3価)として、ベンゼントリイル基、ナフタレントリイル基などが挙げられる。アレーンテトライル基(4価)として、ベンゼンテトライル基、ナフタレンテトライル基などが挙げられる。これらの芳香族基は置換されていても良い。置換基として、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜15のアリール基、ハロゲン原子、ニトロ基、アミド基、ヒドロキシル基、エステル基、エーテル基、アルデヒド基などが挙げられる。
式(10−1)、(10−2)においてs、kは0〜10の整数、好ましくは0〜3の整数、より好ましくは0〜1の整数である。sおよびkが10を超えると、環状カルボジイミド化合物は合成上困難となり、コストが大きく上昇する場合が発生するためである。かかる観点より整数は好ましくは0〜3の範囲が選択される。なお、sまたはkが2以上であるとき、繰り返し単位としてのX
1、あるいはX
2が、他のX
1、あるいはX
2と異なっていてもよい。
X
3は、それぞれヘテロ原子ならびに置換基を含んでいてもよい、2〜4価の炭素数1〜20の脂肪族基、2〜4価の炭素数3〜20の脂環族基、2〜4価の炭素数5〜15の芳香族基、またはこれらの組み合わせである。
脂肪族基として、炭素数1〜20のアルキレン基、炭素数1〜20のアルカントリイル基、炭素数1〜20のアルカンテトライル基などが挙げられる。アルキレン基として、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、ヘプチレン基、オクチレン基、ノニレン基、デシレン基、ドデシレン基、ヘキサデシレン基などが挙げられる。アルカントリイル基として、メタントリイル基、エタントリイル基、プロパントリイル基、ブタントリイル基、ペンタントリイル基、ヘキサントリイル基、ヘプタントリイル基、オクタントリイル基、ノナントリイル基、デカントリイル基、ドデカントリイル基、ヘキサデカントリイル基などが挙げられる。アルカンテトライル基として、メタンテトライル基、エタンテトライル基、プロパンテトライル基、ブタンテトライル基、ペンタンテトライル基、ヘキサンテトライル基、ヘプタンテトライル基、オクタンテトライル基、ノナンテトライル基、デカンテトライル基、ドデカンテトライル基、ヘキサデカンテトライル基などが挙げられる。これら脂肪族基は置換基を含んでいてもよく、置換基として、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜15のアリール基、ハロゲン原子、ニトロ基、アミド基、ヒドロキシル基、エステル基、エーテル基、アルデヒド基などが挙げられる。
脂環族基として、炭素数3〜20のシクロアルキレン基、炭素数3〜20のシクロアルカントリイル基、炭素数3〜20のシクロアルカンテトライル基が挙げられる。シクロアルキレン基として、シクロプロピレン基、シクロブチレン基、シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基、シクロヘプチレン基、シクロオクチレン基、シクロノニレン基、シクロデシレン基、シクロドデシレン基、シクロヘキサデシレン基などが挙げられる。アルカントリイル基として、シクロプロパントリイル基、シクロブタントリイル基、シクロペンタントリイル基、シクロヘキサントリイル基、シクロヘプタントリイル基、シクロオクタントリイル基、シクロノナントリイル基、シクロデカントリイル基、シクロドデカントリイル基、シクロヘキサデカントリイル基などが挙げられる。アルカンテトライル基として、シクロプロパンテトライル基、シクロブタンテトライル基、シクロペンタンテトライル基、シクロヘキサンテトライル基、シクロヘプタンテトライル基、シクロオクタンテトライル基、シクロノナンテトライル基、シクロデカンテトライル基、シクロドデカンテトライル基、シクロヘキサデカンテトライル基などが挙げられる。これら脂環族基は置換基を含んでいてもよく、置換基として、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜15のアリーレン基、ハロゲン原子、ニトロ基、アミド基、ヒドロキシル基、エステル基、エーテル基、アルデヒド基などが挙げられる。
芳香族基として、それぞれヘテロ原子を含んで複素環構造を持っていてもよい、炭素数5〜15のアリーレン基、炭素数5〜15のアレーントリイル基、炭素数5〜15のアレーンテトライル基が挙げられる。アリーレン基として、フェニレン基、ナフタレンジイル基などが挙げられる。アレーントリイル基(3価)として、ベンゼントリイル基、ナフタレントリイル基などが挙げられる。アレーンテトライル基(4価)として、ベンゼンテトライル基、ナフタレンテトライル基などが挙げられる。これらの芳香族基は置換されていても良い。置換基として、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜15のアリール基、ハロゲン原子、ニトロ基、アミド基、ヒドロキシル基、エステル基、エーテル基、アルデヒド基などが挙げられる。
また、Ar
1、Ar
2、R
1、R
2、X
1、X
2およびX
3はヘテロ原子を含有していてもよい、また、Qが2価の結合基であるときは、Ar
1、Ar
2、R
1、R
2、X
1、X
2およびX
3は全て2価の基である。Qが3価の結合基であるときは、Ar
1、Ar
2、R
1、R
2、X
1、X
2およびX
3の内の一つが3価の基である。Qが4価の結合基であるときは、Ar
1、Ar
2、R
1、R
2、X
1、X
2およびX
3の内の一つが4価の基であるか、二つが3価の基である。
本発明で用いる環状カルボジイミドとして、下記式(14)で表される化合物がより好ましい。
式中、Q
cは、脂肪族基、脂環族基、芳香族基またはこれらの組み合わせである4価の結合基であり、ヘテロ原子を保有していてもよい。Z
1およびZ
2は、環状構造を担持する担体である。Z
1およびZ
2は、互いに結合して環状構造を形成していてもよい。
脂肪族基、脂環族基、芳香族基は、式(10)で説明したものと同じである。但し、式(14)の化合物において、Q
cは4価である。従って、これらの基の内の一つが4価の基であるか、二つが3価の基である。Q
cは、下記式(14−1)、(14−2)または(14−3)で表される4価の結合基であることが好ましい。
Ar
c1、Ar
c2、R
c1、R
c2、X
c1、X
c2、X
c3、sおよびkは、各々式(10−1)〜(10−3)の、Ar
1、Ar
2、R
1、R
2、X
1、X
2、X
3、sおよびkと同じである。但し、Ar
c1、Ar
c2、R
c1、R
c2、X
c1、X
c2およびX
c3は、これらの内の一つが4価の基であるか、二つが3価の基である。
Z
1およびZ
2は各々独立に、単結合、二重結合、原子、原子団またはポリマーであることが好ましい。Z
1およびZ
2は結合部であり、複数の環状構造がZ
1およびZ
2を介して結合し、式(14)で表される構造を形成している。かかる環状カルボジイミド化合物(14)としては、下記化合物を挙げることができる。
これら環状カルボジイミド化合物は、国際公開WO2010/071213号パンフレットの製造例を参照することで容易に製造できる。
エポキシ化合物としては、グリシジルエーテル化合物、グリシジルエステル化合物、グリジジルアミン化合物、グリシジルイミド化合物、グリシジルアミド化合物、脂環式エポキシ化合物を好ましく使用することができる。
グリシジルエーテル化合物の例としては、ステアリルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、エチレンオキシドラウリルアルコールグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングルコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリテトラメチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセロールトリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル、その他ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタンなどのビスフェノール類とエピクロルヒドリンとの縮合反応で得られるビスフェノールAジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂などを挙げることができ、なかでもビスフェノールAジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂が好ましい。グリシジルエステル化合物の例としては例えば安息香酸グリシジルエステル、ステアリン酸グリシジルエステル、バーサティック酸グリシジルエステル、テレフタル酸ジグリシジルエステル、フタル酸ジグリシジルエステル、シクロヘキサンジカルボン酸ジグリシジルエステル、アジピン酸ジグリシジルエステル、コハク酸ジグリシジルエステル、ドデカンジオン酸ジグリシジルエステル、ピロメリット酸テトラグリシジルエステルなどが挙げられ、なかでも安息香酸グリシジルエステル、バーサティック酸グリシジルエステルが好ましい。
グリシジルアミン化合物の例としては例えば、テトラグリシジルアミンジフェニルメタン、トリグリシジル−p−アミノフェノール、ジグリシジルアニリン、ジグリシジルトルイジン、テトラグリシジルメタキシレンジアミン、トリグリシジルイソシアヌレート、などが挙げられる。
グリシジルイミド、グリシジルアミド化合物の例としては例えば、N−グリシジルフタルイミド、N−グリシジル−4,5−ジメチルフタルイミド、N−グリシジル−3,6−ジメチルフタルイミド、N−グリシジルサクシンイミド、N−グリシジル−1,2,3,4−テトラヒドロフタルイミド、N−グリシジルマレインイミド、N−グリシジルベンズアミド、N−グリシジルステアリルアミドなどが挙げられ、なかでもN−グリシジルフタルイミドが好ましい。
脂環式エポキシ化合物の例としては、3,4−エポキシシクロヘキシル−3,4−シクロヘキシルカルボキシレート、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、ビニルシクロヘキセンジエポキシド、N−メチル−4,5−エポキシシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸イミド、N−フェニル−4,5−エポキシシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸イミドなどが挙げられる。さらに上記化合物をモノマー単位として含むポリエポキシ化合物とりわけエポキシ基をペンダント基として側鎖に保有するポリエポキシ化合物なども好適な剤として挙げられる。
その他のエポキシ化合物としてエポキシ化大豆油、エポキシ化アマニ油、エポキシ化鯨油などのエポキシ変性脂肪酸グリセリド、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂などを用いることができる。
オキサゾリン化合物としては、2−メトキシ−2−オキサゾリン、2−ブトキシ−2−オキサゾリン、2−ステアリルオキシ−2−オキサゾリン、2−シクロヘキシルオキシ−2−オキサゾリン、2−アリルオキシ−2−オキサゾリン、2−ベンジルオキシ−2−オキサゾリン、2−p−フェニルフェノキシ−2−オキサゾリン、2−メチル−2−オキサゾリン、2−シクロヘキシル−2−オキサゾリン、2−メタアリル−2−オキサゾリン、2−クロチル−2−オキサゾリン、2−フェニル−2−オキサゾリン、2−o−エチルフェニル−2−オキサゾリン、2−o−プロピルフェニル−2−オキサゾリン、2−p−フェニルフェニル−2−オキサゾリン、2,2’−ビス(2−オキサゾリン)、2,2’−ビス(4−メチル−2−オキサゾリン)2,2’−ビス(4−ブチル−2−オキサゾリン)、2,2’−m−フェニレンビス(2−オキサゾリン)、2,2’−p−フェニレンビス(4−メチル−2−オキサゾリン)、2,2’−p−フェニレンビス(4,4’−メチル−2−オキサゾリン)、2,2’−エチレンビス(2−オキサゾリン)、2,2’−テトラメチレンビス(2−オキサゾリン)、2,2’−ヘキサメチレンビス(2−オキサゾリン)、2,2’−エチレンビス(4−メチル−2−オキサゾリン)、2,2’−テトラメチレンビス(4,4’−ジメチル−2−オキサゾリン)、2,2’−シクロヘキシレンビス(2−オキサゾリン)、2,2’−ジフェニレンビス(4−メチル−2−オキサゾリン)などが挙げられる。
本発明においてポリD−乳酸成分は、D−乳酸単位よりなり、好ましくは90から100モル%のD−乳酸単位および0から10モル%のD−乳酸以外の共重合単位からなる。さらにポリL−乳酸成分は、L−乳酸単位よりなり、好ましくは90から100モル%のL−乳酸単位および0から10モル%のL−乳酸以外の共重合単位からなる。
上記において、D−乳酸単位、L−乳酸単位は、より好ましくは95から100モル%、さらに好ましくは98から100モル%の範囲が選択される。
L−乳酸単位、D−乳酸単位以外の共重合単位は好ましくは0から10モル%、より好ましくは0から5モル%、さらに好ましくは0から2モル%の範囲が選択される。
共重合単位は、2個以上のエステル結合形成可能な官能基を持つジカルボン酸、多価アルコール、ヒドロキシカルボン酸、ラクトン等由来の単位およびこれら種々の構成成分からなる各種ポリエステル、各種ポリエーテル、各種ポリカーボネート等由来の単位が例示される。
ジカルボン酸としては、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、テレフタル酸、イソフタル酸等が挙げられる。多価アルコールとしてはエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、グリセリン、ソルビタン、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等の脂肪族多価アルコール類あるいはビスフェノールにエチレンオキシドが付加させたものなどの芳香族多価アルコール等が挙げられる。ヒドロキシカルボン酸として、グリコール酸、ヒドロキシ酪酸等が挙げられる。ラクトンとしては、グリコリド、ε−カプロラクトン、β−プロピオラクトン、δ−ブチロラクトン、β−またはγ−ブチロラクトン、ピバロラクトン、δ−バレロラクトン等が挙げられる。
ポリL−乳酸およびポリD−乳酸は、従来公知の方法で製造することができる。
例えば、L−ラクチドまたはD−ラクチドを金属含有触媒の存在下、開環重合することにより製造することができる。また金属含有触媒を含有する低分子量のポリ乳酸を、所望により結晶化させた後、あるいは結晶化させることなく、減圧下または常圧から加圧化、不活性ガス気流の存在下、あるいは非存在下、固相重合させ製造することもできる。さらに有機溶媒の存在または非存在下、乳酸を脱水縮合させる直接重合法により製造することができる。
重合反応は、従来公知の反応容器で実施可能であり、例えば開環重合あるいは直接重合法においてはヘリカルリボン翼等、高粘度用攪拌翼を備えた縦型反応器あるいは横型反応器を単独、または並列して使用することができる。また、回分式あるいは連続式あるいは半回分式のいずれでも良いし、これらを組み合わせてもよい。
重合開始剤としてアルコールを用いてもよい。かかるアルコールとしては、ポリ乳酸の重合を阻害せず不揮発性であることが好ましく、例えばデカノール、ドデカノール、テトラデカノール、ヘキサデカノール、オクタデカノール、エチレングリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスルトールなどを好適に用いることができる。
固相重合法で使用する低分子量のポリ乳酸(プレポリマー)は、予め結晶化させることが、樹脂ペレット融着防止の面から好ましい実施形態と言える。プレポリマーは固定された縦型或いは横型反応容器、またはタンブラーやキルンの様に容器自身が回転する反応容器(ロータリーキルン等)中、プレポリマーのガラス転移温度から融点未満の温度範囲で固体状態にて重合される。
金属含有触媒としては、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類、遷移金属類、アルミニウム、ゲルマニウム、スズ、アンチモン、チタン等の脂肪酸塩、炭酸塩、硫酸塩、リン酸塩、酸化物、水酸化物、ハロゲン化物、アルコラート等が例示される。なかでもスズ、アルミニウム、亜鉛、カルシウム、チタン、ゲルマニウム、マンガン、マグネシウムおよび稀土類元素より選択される少なくとも一種の金属を含有する脂肪酸塩、炭酸塩、硫酸塩、リン酸塩、酸化物、水酸化物、ハロゲン化物、アルコラートが好ましい。
触媒活性、副反応の少なさからスズ化合物、具体的には塩化第一スズ、臭化第一スズ、ヨウ化第一スズ、硫酸第一スズ、酸化第二スズ、ミリスチン酸スズ、オクチル酸スズ、ステアリン酸スズ、テトラフェニルスズ等のスズ含有化合物が好ましい触媒として例示される。
なかでも、スズ(II)化合物、具体的にはジエトキシスズ、ジノニルオキシスズ、ミリスチン酸スズ(II)、オクチル酸スズ(II)、ステアリン酸スズ(II)、塩化スズ(II)などが好適に例示される。
触媒の使用量は、ラクチド1Kg当たり0.42×10
−4から100×10
−4(モル)でありさらに反応性、得られるポリラクチド類の色調、安定性を考慮すると1.68×10
−4から42.1×10
−4(モル)、特に好ましくは2.53×10
−4から16.8×10
−4(モル)使用される。
ポリ乳酸重合に使用された金属含有触媒は、ポリ乳酸使用に先立ち、従来公知の失活剤で不活性化しておくのが好ましい。
かかる失活剤としては例えばイミノ基を有し且つ重合金属触媒に配位し得るキレート配位子の群からなる有機リガンド及びジヒドリドオキソリン(I)酸、ジヒドリドテトラオキソ二リン(II,II)酸、ヒドリドトリオキソリン(III)酸、ジヒドリドペンタオキソ二リン(III)酸、ヒドリドペンタオキソ二(II,IV)酸、ドデカオキソ六リン(III)酸、ヒドリドオクタオキソ三リン(III,IV,IV)酸、オクタオキソ三リン(IV,III,IV)酸、ヒドリドヘキサオキソ二リン(III,V)酸、ヘキサオキソ二リン(IV)酸、デカオキソ四リン(IV)酸、ヘンデカオキソ四リン(IV)酸、エネアオキソ三リン(V,IV,IV)酸等の酸価数5以下の低酸化数リン酸、式xH
2O・yP
2O
5で表され、x/y=3のオルトリン酸、2>x/y>1であり、縮合度より二リン酸、三リン酸、四リン酸、五リン酸等と称せられるポリリン酸及びこれらの混合物、x/y=1で表されるメタリン酸、なかでもトリメタリン酸、テトラメタリン酸、1>x/y>0で表され、五酸化リン構造の一部を残した網目構造を有するウルトラリン酸(これらを総称してメタリン酸系化合物と呼ぶことがある。)、及びこれらの酸の酸性塩、一価、多価のアルコール類、あるいはポリアルキレングリコール類の部分エステル、完全エスエテル、ホスホノ置換低級脂肪族カルボン酸誘導体などが例示される。
触媒失活能から、式xH
2O・yP
2O
5で表され、x/y=3のオルトリン酸、2>x/y>1であり、縮合度より二リン酸、三リン酸、四リン酸、五リン酸等と称せられるポリリン酸及びこれらの混合物、x/y=1で表されるメタリン酸、なかでもトリメタリン酸、テトラメタリン酸、1>x/y>0で表され、五酸化リン構造の一部を残した網目構造を有するウルトラリン酸(これらを総称してメタリン酸系化合物と呼ぶことがある。)、及びこれらの酸の酸性塩、一価、多価のアルコール類、あるいはポリアルキレングリコール類の部分エステルリンオキソ酸あるいはこれらの酸性エステル類、ホスホノ置換低級脂肪族カルボン酸誘導体及び上記のメタリン酸系化合物が好適に使用される。
本発明で使用するメタリン酸系化合物は、3から200程度のリン酸単位が縮合した環状のメタリン酸あるいは立体網目状構造を有するウルトラ領域メタリン酸あるいはそれらの(アルカル金属塩、アルカリ土類金属塩、オニウム塩)を包含する。なかでも環状メタリン酸ナトリウムやウルトラ領域メタリン酸ナトリウム、ホスホノ置換低級脂肪族カルボン酸誘導体のジヘキシルホスホノエチルアセテート(以下、DHPAと略称することがある)などが好適に使用される。
本発明で使用するポリ乳酸は、含有ラクチド量が1から5000(wtppm)のものが好ましい。ポリ乳酸中に含有するラクチドは溶融加工時、樹脂を劣化させ、色調を悪化させ、場合によっては製品として使用不可能にする場合がある。
溶融開環重合された直後のポリL−乳酸および/またはポリD−乳酸は通常1から5重量%のラクチドを含有するが、ポリL−乳酸および/またはポリD−乳酸重合終了の時点からポリ乳酸成形までの間の任意の段階において、従来公知のラクチド減量法により、即ち一軸あるいは多軸押出機での真空脱揮法、あるいは重合装置内での高真空処理等を単独であるいは組み合わせて実施することにラクチドを好適な範囲に低減することができる。
ラクチド含有量は少ないほど、樹脂の溶融安定性、耐湿熱安定性は向上するが、樹脂溶融粘度を低下させる利点もあり、所望の目的に合致した含有量にするのが合理的、経済的である。すなわち、実用的な溶融安定性が達成される1から1000ppmに設定するのが合理的である。さらに好ましくは1から700ppm、より好ましくは2から500ppm、特に好ましくは5から100ppmの範囲が選択される。
ポリ乳酸成分がかかる範囲のラクチド含有量を有することにより、本発明におけるフィルムの溶融製膜時の樹脂の安定性を向上でき、フィルムの製造を効率よく実施できる利点及びフィルムの耐湿熱安定性、低ガス性を高めることが出来る。
本発明に使用されるポリ乳酸の重量平均分子量は、成形加工性と得られる成形品の機械的、熱的物性との関係を考察して選択される。即ち、組成物の強度、伸度、耐熱性等の機械的、熱的物性を発揮させるためには重量平均分子量は好ましくは8万以上、より好ましくは10万以上、さらに好ましくは13万以上である。しかし、重量平均分子量の上昇とともに、ポリ乳酸の溶融粘度は指数関数的に上昇し、溶融製膜を行うとき、樹脂粘度を製膜可能範囲にするため、製膜温度をポリ乳酸の耐熱温度以上に高く設定しなければならない場合が発生する。
具体的には、ポリ乳酸は、300℃を超える温度で製膜を行うと樹脂の熱分解のためフィルム品が着色し、商品としての価値が低いものとなってしまう可能性が高い。従ってポリ乳酸組成物の重量平均分子量は、好ましくは50万以下、より好ましくは40万以下、さらに好ましくは30万以下である。従ってポリ乳酸の重量平均分子量は、好ましくは8万から50万、より好ましくは10万から40万、さらに好ましくは13万から30万である。
重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比を分子量分散(Mw/Mn)という。分子量分散が大きいことは、平均分子量に比較し、大きな分子や小さな分子の割合が多いことを意味する。
即ち、例えば重量平均分子量が25万程度で、分子量分散3以上のポリ乳酸は、分子量が25万より大きい分子の割合が大きくなる場合があり、この場合、溶融粘度が大きくなり、上記の意味で成形上好ましくない。また8万程度の比較的小さい重量平均分子量で分子量分散の大きなポリ乳酸組成物では、分子量が8万より小さい分子の割合が大きくなる場合があり、この場合、フィルムの機械的物性の耐久性が小さくなり、使用上好ましくない。かかる観点より分子量分散の範囲は、好ましくは1.5から2.4、より好ましくは1.6から2.4、さらに好ましくは1.6から2.3の範囲である。
本発明のポリ乳酸組成物としてステレオコンプレックスポリ乳酸を用いる場合には前述したようにポリL−乳酸成分とポリD−乳酸成分とを重量比で10/90から90/10の範囲で接触させることにより、好ましくは溶融接触させることにより、より好ましくは溶融混練接触させることにより得ることができる。
このポリL−乳酸成分とポリD−乳酸成分との接触させる際の温度はポリ乳酸の溶融時の安定性及びステレオコンプレックス結晶化度の向上の観点より220℃から290℃、好ましくは220℃から280℃、さらに好ましくは225℃から275℃の範囲が選択される。
溶融混練方法は特に限定されるものではないが、従来公知のバッチ式或いは連続式の溶融混合装置が好適に使用される。例えば、溶融攪拌槽、一軸、二軸の押出し機、ニーダー、無軸籠型攪拌槽、住友重機械プロセス機器(株)製「バイボラック」(登録商標)、三菱重工業(株)製N−SCR、(株)日立プラントテクノロジー製めがね翼、格子翼あるいはケニックス式攪拌機、あるいはズルツァー式SMLXタイプスタチックミキサー具備管型重合装置などを使用できる。
本発明で用いるポリ乳酸には、本発明の主旨に反しない範囲において、ステレオコンプレックスポリ乳酸結晶の形成を安定的且つ高度に促進させるために特定の添加物を配合する手法が好ましく適用される。
すなわち、例えば、ステレオコンプレックス結晶化促進剤として下記式(22)または(23)で表されるリン酸金属塩を添加する手法(1)が挙げられる。
式(22)中、R
11は水素原子または炭素原子数1〜4のアルキル基を表し、R
12、R
13はそれぞれ独立に、水素原子、または炭素原子数1〜12のアルキル基を表し、M
1はアルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子、亜鉛原子またはアルミニウム原子を表し、pは1または2を表し、qはM
1がアルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子、亜鉛原子のときは0を、アルミニウム原子の時は1または2を表す。
式(23)中R
14、R
15およびR
16は各々独立に、水素原子または炭素原子数1〜12のアルキル基を表し、M
2はアルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子、亜鉛原子またはアルミニウム原子を表し、pは1または2を表し、qはM
2がアルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子、亜鉛原子のときは0を、アルミニウム原子の時は1または2を表す。
式(22)または(23)で表されるリン酸金属塩のM
1、M
2は、Na、K、Al、Mg、Ca、Liが好ましく、特に、K、Na、Al、LiなかでもLi、Alが最も好適に用いることができる。
これらのリン酸金属塩は、(株)ADEKA製の商品名、「アデカスタブ」(登録商標)NA−11、NA−71等が好適な剤として例示される。ポリ乳酸に対して、リン酸金属塩は0.001から2wt%、好ましくは0.005から1wt%、より好ましくは0.01から0.5wt%さらに好ましくは0.02から0.3wt%用いることが好ましい。少なすぎる場合には、ステレオコンプレックス結晶化度(S)を向上する効果が小さく、多すぎるとステレオコンプレックス結晶融点を低下させるので好ましくない。
さらに所望により、リン酸金属塩の作用を強化するため、以下記載する公知の結晶化核剤を併用することができる。なかでも珪酸カルシウム、タルク、カオリナイト、モンモリロナイトが好ましくは選択される。
結晶化核剤の使用量はポリ乳酸に対し0.05から5wt%、より好ましくは0.06から2wt%、さらに好ましくは0.06から1wt%の範囲が選択される。
また、ステレオコンプレックス結晶化助剤[(エポキシ基、オキサゾリン基、オキサジン基、イソシアネート基、ケテン基及びカルボジイミド基)(以下特定官能基と略称することがある)の群より選択される官能基を分子中に少なくとも1個有する化合物]を添加する手法(2)も採用することができる。
ここで、ステレオコンプレックス結晶化助剤とは、特定官能基がポリ乳酸の分子末端と反応して、部分的にポリL−乳酸ユニットとポリD−乳酸ユニットとを連結し、ステレオコンプレックス結晶形成を促進させているものと本発明者らが推察する剤である。
ステレオコンプレックス結晶化助剤としては以下に記載する従来ポリエステルのカルボキシル末端基封鎖剤として公知の剤を好適に適用することができる。なかでも、ステレオコンプレックス結晶形成促進効果よりカルボジイミド化合物が好適に選択される。
しかしながらステレオコンプレックス結晶化助剤とりわけ、窒素を含有するステレオコンプレックス結晶化助剤は、ステレオコンプレックス結晶形成時、剤の熱分解のため悪臭による作業環境悪化、ポリ乳酸の色調悪化を引き起こす危険性が大きいため、使用しないことが好ましく、使用する場合には、ステレオコンプレックス結晶の高度形成に重点を置く場合に限定し、可能な限り少量に抑制して使用することが好ましい。
ステレオコンプレックス結晶化助剤の使用量は上記と同じ基準において1wt%以下、好ましくは、0から0.5wt%、より好ましくは0から0.3wt%、さらに好ましくは0から0.1wt%の範囲が選択される。
すなわち上記(1)の手法は単独に適用することが好ましく、ステレオコンプレックス結晶形成により重点をおく場合に(2)の手法と組み合わせて適用することが好ましく選択される。
本発明においては、ポリ乳酸のカルボキシル末端基濃度は0.01から10(当量/10
6g)、{以下(当量/10
6g)を(当量/ton)と略称することがある。}が好ましい。より好ましくは0.02から2(当量/ton)、さらに好ましくは0.02から1(当量/ton)の範囲が好適に選択される。
カルボキシル末端基濃度がこの範囲内にある時には、溶融安定性、湿熱安定性を良好なものとすることができる。ポリ乳酸のカルボキシル末端基濃度を10(当量/ton)以下にするには、ポリエステル組成物で従来公知のカルボキシル末端基濃度の低減方法を好適に適用することができ、例えばアルコール、アミンによってエステルまたはアミド化することもできるし、前掲のようにカルボジイミド化合物を添加することもできる。
なお、ステレオコンプレックスポリ乳酸組成物のガラス転移温度(Tg1)とトリメチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート単位を主たる繰り返し単位とする芳香族ポリエステル(Tg2)のガラス転移温度との差は20℃以下である必要がある。ガラス転移温度の差が20℃を超えると延伸時に均質な配向を施すことができず、光学特性の均質性が損なわれる。
<不活性粒子>
本発明の配向積層フィルムは、フィルムの巻取り性を向上させるために、少なくとも一方の最外層に平均粒径が0.01μm〜2μmの不活性粒子を、層の重量を基準として0.001重量%〜0.5重量%含有することが好ましい。不活性粒子の平均粒径が下限値よりも小さいか、含有量が下限値よりも少ないと、配向積層フィルムの巻取り性を向上させる効果が不十分になりやすく、他方、不活性粒子の含有量が上限値を超えるか、平均粒径が上限値を超えると、粒子による配向積層フィルムの光学特性の悪化が顕著になることがある。好ましい不活性粒子の平均粒径は、0.02μm〜1μm、特に好ましくは0.1μm〜0.3μmの範囲である。また、好ましい不活性粒子の含有量は、0.02重量%〜0.2重量%の範囲である。
配向積層フィルムに含有させる不活性粒子としては、例えばシリカ、アルミナ、炭酸カルシウム、燐酸カルシウム、カオリン、タルクのような無機不活性粒子、シリコーン、架橋ポリスチレン、スチレン−ジビニルベンゼン共重合体のような有機不活性粒子を挙げることができる。粒子形状は、凝集状、球状など一般的に用いられる形状であれば特に限定されない。
なお、不活性粒子は、本発明の目的を奏する限りにおいて、最外層以外に含有させてもよく、例えば、最外層と同じ樹脂で構成される内部の層中に含まれていてもよい。
<配向積層フィルム>
一般に、多層構造による光学干渉フィルムにおいて、層厚みが0.05〜0.5μmであり、異なる屈折率を持った層で構成される光学干渉フィルムは、一方の層を構成する層と他方の層を構成する層との屈折率差と膜厚および積層数により、特定の波長の光を反射する増反射といった現象がみられる。一般にその反射波長は、下記の式で示される。
λ=2(n
1×d
1+n
2×d
2)
(上式中、λは反射波長(nm)、n
1、n
2はそれぞれの層の屈折率、d
1、d
2はそれぞれの層の厚み(nm)を表わす。)
本発明の配向積層フィルムは、上述の層Aおよび層Bを交互に積層され、層Aと層Bとの屈折率差に基づく光学干渉によって反射を生じるが、例えば、積層数を11層以上とすることで配向積層フィルムの光反射率を向上させることができる。積層数は好ましくは51層以上、より好ましくは101層以上、特に好ましくは201層以上、最も好ましくは251層以上である。
積層数が多くなるに従って、多重干渉による選択反射が大きくなり、反射率を高めていくことができるが、積層数の上限値は、生産性およびフィルムのハンドリング性、得られる配向フィルムの反射特性などの観点から2001層までとすればよい。積層数の上限値は、得ようとする反射特性が得られれば生産性やハンドリング性の観点からさらに積層数を減らしてもよく、例えば1001層、801層であってもよい。
なお、積層フィルムの最外層には層Bを積層し、配向積層フィルムの保護層としても機能させることが好ましく、配向積層フィルムの合計積層数としては層Bの合計数が層Aの合計数よりも一層多いため奇数となる。
また、本発明の配向積層フィルムは、通常、屈折率、層数、層の厚みによって反射する波長が決まるが、積層された層Aおよび層Bのそれぞれが一定の厚みでは、特定の波長のみしか反射することができない。そのため、反射波長の広帯域化を図るために、層Aおよび層Bそれぞれの厚みを配向積層フィルム内部において、徐々に漸増させてもよい。
ここで、層A、層Bにおけるそれぞれの最大層厚みと最小層厚みとは、透過型電子顕微鏡を用いて撮影した写真をもとに求めることができる。
層Aおよび層Bは、配向積層フィルムの厚み方向で段階的に変化してもよく、連続的に変化してもよい。このように積層された層Aおよび層Bのそれぞれが変化することで、例えば可視光全域である400〜800nmにわたる広い波長域の光を反射することができる。
但し、各層の厚みは、0.05〜0.5μmの範囲にすることで、近紫外、可視光から近赤外線の反射を示す配向積層フィルムとすることができる。0.05μm未満では反射波長が紫外線領域となり、ポリマーの吸収によって反射性能を示さなくなり、0.5μmを超えると赤外領域において、ポリマーの赤外線によって反射性能を示さなくなる。
かかる層厚みが変化したフィルムを得る方法として、例えば、層A用樹脂と層B用樹脂とを交互に積層させるに際し、多層フィードブロック装置を使用し、フィードブロックの流路の厚みを連続的に変化させる方法が挙げられる。また、その他の方法として、多層フィードブロック装置により均一な厚みの層を積層しておき、その積層された流動体を例えば異なる幅となるように積層された面に垂直に複数に分岐したのち、再び同じ幅となるように積層することで変化させるといった方法もある。また、両者を組み合わせた方法も採用することができる。
なお、本発明の配向積層フィルムは、層A、層B以外にも、配向積層フィルムの表層や中間層に0.5μmを越える厚膜層が存在してもよい。かかる厚みの層を層Aと層Bとの交互積層構成の一部に有することにより、反射機能に影響を及ぼすことなく、層Aおよび層Bの層厚みを調整しやすくなる。かかる厚膜層は、層A、層Bのいずれかと同じ組成、またはこれらの組成を部分的に含む組成であってもよく、層厚みが厚いため、反射特性には寄与しない。一方、透過する偏光光には影響することがあるため、層中に粒子を含める場合は既述の粒子濃度の範囲内であることが好ましい。
本発明の配向積層フィルムのフィルム厚みは、取り扱い性等を考慮し、15μm以上150μm以下であることが好ましく、30μm以上100μm以下であることがさらに好ましい。
なお、本発明の配向積層フィルムにおいて、不活性粒子を含有させない場合もあるが、その場合、配向積層フィルムの加工工程において、易滑性塗布層を少なくとも片面に設けることが好ましい。塗布層を構成する組成物は、ポリエステル樹脂組成物やアクリル樹脂組成物に易滑性を付与させるために滑剤(フィラー、ワックス)を添加することが好ましい。滑剤を添加することで滑性、耐ブロッキング性を更に良化することができる。
水性塗液の配向積層フィルムへの塗布は、任意の段階で実施することができるが、配向積層フィルムの製造過程で実施するのが好ましく、さらには配向結晶化が完了する前のフィルムに塗布するのが好ましい。ここで、「結晶配向が完了する前のフィルム」とは、未延伸フィルム、未延伸フィルムを縦方向または横方向のいずれか一方に配向した一軸配向フィルム、さらには縦方向および横方向の二方向に低倍率延伸配向したもの(最終的に縦方向また横方向に再延伸して配向結晶化を完了させる前の二軸延伸フィルム)等を含むものである。なかでも、未延伸フィルムまたは一方向に配向させた一軸配向フィルムに、上記組成物の水性塗液を塗布し、そのまま縦延伸および/または横延伸と熱固定とを施すのが好ましい。
水性塗液をフィルムに塗布する際には、塗布性を向上させるための予備処理としてフィルム表面にコロナ表面処理、火炎処理、プラズマ処理等の物理処理を施すか、あるいは組成物と共にこれと化学的に不活性な界面活性剤を併用することが好ましい。かかる界面活性剤は、ポリエステルフィルムへの水性塗液の濡れを促進するものであり、例えば、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン−脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、脂肪酸金属石鹸、アルキル硫酸塩、アルキルスルホン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩等のアニオン型、ノニオン型界面活性剤を挙げることができる。界面活性剤は、塗膜を形成する組成物中に、1〜10重量%含まれていることが好ましい。
塗液の塗布量は、塗膜の厚さが0.02〜0.3μm、好ましくは0.07〜0.25μmの範囲となるような量であるのが好ましい。塗膜の厚さが薄過ぎると、接着力が不足し、逆に厚過ぎると、ブロッキングを起こしたり、ヘーズ値が高くなったりする可能性がある。
塗布方法としては、公知の任意の塗工法が適用できる。例えばロールコート法、グラビアコート法、ロールブラッシュ法、スプレーコート法、エアーナイフコート法、含浸法、カーテンコート法などを単独または組み合わせて用いることができる。なお、塗膜は、必要に応じ、フィルムの片面のみに形成してもよいし、両面に形成してもよい。
<配向積層フィルムの特性>
本発明の配向積層フィルムは、波長400〜1600nmの光に対する反射率曲線に、最大反射率が反射率のベースラインよりも20%以上高い反射ピークを有するものが好ましく、さらに好ましくは30%以上高い反射ピークを有するフィルム、特に好ましくは50%以上高い反射ピークを有するフィルムである。
第1図は、本発明の実施例2の操作で得た配向積層フィルムの反射率曲線を示したグラフ図である。図中符号1は最大反射率(最大ピーク)、符号2は反射率のベースライン(最小値)、符号3は最大反射率と反射率のベースラインとの差(最大ピーク高さ)を、それぞれ示す。
配向積層フィルムに、最大反射率が反射率のベースラインよりも20%以上高い反射ピークが存在すると、特定波長の光を選択的に反射または透過する光学干渉フィルムとして好適に使用でき、例えばミラーフィルムとして使用することができる。
また、本発明の配向積層フィルムは、層Aを構成する樹脂と層Bを構成する樹脂がともに結晶性を示すことから、延伸などの処理が不均一になりにくく、結果としてフィルムの厚み斑を小さくすることができる。この厚み斑の範囲は、光学的影響を及ぼすことが可能な面積を考慮した範囲内(400mm
2)におけるフィルム厚みの最大値と最小値の差が、5μm未満であることが好ましい。これはより好ましくは3μm未満であり、さらにより好ましくは1.5μm未満である。フィルム厚みの変動幅が5μm以上になると、反射する光の色が変化してしまい、色の斑となって現れる。
また、本発明の配向積層フィルムは、延伸処理された方向の破断強度は、それぞれ150MPa以上であることが好ましい。破断強度が150MPa未満であると、積層フィルムの加工時における取り扱い性が低下したり、製品にしたときの耐久性が低下したりするおそれがある。
なお、破断強度が150MPa以上であると、フィルムの腰が強くなり、巻取り性が向上するという利点もある。好ましい破断強度は、二軸配向積層フィルムの場合には、縦方向が200MPa以上、特に好ましくは250MPa以上、二軸配向積層フィルムの場合には、横方向が200MPa以上、特に好ましくは250MPa以上である。また、縦方向と横方向との破断強度の比は、3以下であることが耐引裂き性を十分に具備できることから好ましい。特に縦方向と横方向との破断強度比が2以下であると、さらに耐引裂き性を向上できることから好ましい。破断強度の上限は、特に限定はされないが、延伸工程の安定性を維持する観点から、高々500MPaであることが好ましい。
また、本発明の配向積層フィルムは、耐熱性の高いステレオコンプレックスポリ乳酸樹脂を用いることで、特に熱寸法安定性が高くすることができ、とりわけ加工プロセスにおいて、120℃以上の高温を必要とする場合にも十分に対応することができる。本フィルムの延伸処理された方向(製膜方向および幅方向)の120℃で30分間処理したときの熱収縮率が、それぞれ2.0%以下であること好ましい。より好ましくは、1.5%以下、更に好ましくは、1.0%以下である。
<配向積層フィルムの製造方法>
以下に、本発明の配向積層フィルムを製造する方法について説明する。
本発明の配向積層フィルムを得るには、トリメチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート単位を主たる繰り返し単位とする芳香族ポリエステル(層A用樹脂)と、ステレオコンプレックスポリ乳酸組成物(層B用樹脂)とを、溶融状態で重ね合わせた状態で押出し、積層未延伸フィルム(シート状物とする工程)とする。このとき、積層フィルムとして3層以上で構成する場合には各層の厚みが均質でもよいし、フィルムの厚み方向に段階的または連続的に変化するように積層してもよい。
このようにして得られた積層未延伸フィルムは、製膜方向、およびそれに直交する幅方向に延伸される。延伸温度は、ステレオコンプレックスポリ乳酸組成物のガラス転移温度の温度(Tg)〜Tg+50℃の範囲が好ましい。このときの延伸倍率は2〜6倍であることが好ましく、さらに好ましくは2.5〜5倍、さらに好ましくは3〜4倍である。延伸倍率が大きい程、層Aおよび層Bにおける個々の層の面方向バラツキが延伸による薄層化により小さくなり、配向積層フィルムの光干渉が面方向に均一になり、層Aと層Bとの延伸方向の屈折率差、および配向積層フィルムの厚み方向の屈折率差が大きくなるので好ましい。このときの延伸方法は、棒状ヒータによる加熱延伸、ロール加熱延伸、テンター延伸など公知の延伸方法を用いることができるが、ロールとの接触によるキズの低減や延伸速度などの観点から、テンター延伸が好ましい。また、延伸後にさらに熱固定処理を施すことが好ましい。
また、延伸方法としては、一軸延伸だけでもよく、この場合には一軸配向フィルムが得られる。一軸延伸の場合には、層Aの面内屈折率の最大方位の屈折率と層Bの面内屈折率の最大方位の屈折率との差が極めて大きくなり、一方、層Aの面内屈折率の最小方位の屈折率と層Bの面内屈折率の最小方位の屈折率との差は極めて小さくなる。その結果、層間での屈折率の一致、不一致がフィルムの面内方向で異なることとなり、入射偏光の振動方向によって反射率を制御することが可能となる。特にこのような偏光作用を求めない場合においては、フィルム強度に異方性が少なく、また、より高い強度が得られやすいという点において、二軸延伸で本発明のフィルムを作成することが好ましい。
【実施例】
【0006】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明はこれにより何等限定を受けるものではない。なお、本実施例における各値は以下の方法に従って求めた。
(1)熱可塑性樹脂およびフィルムの融点(Tm)およびガラス転移温度(Tg):
ポリマー試料またはフィルムサンプルを10mgサンプリングし、DSC(TAインスツルメンツ社製、商品名:DSC2920)を用い、20℃/minの昇温速度で、融点およびガラス転移温度(Tg)を測定した。
(2)熱可塑性樹脂の特定ならびに共重合成分および各成分量の特定:
フィルムサンプルの各層について、
1H−NMR測定より熱可塑性樹脂の成分ならびに共重合成分および各成分量を特定した。
(3)ポリマーの重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn):
ポリマーの重量平均分子量および数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定、標準ポリスチレンに換算した。GPC測定機器は、検出器;示差屈折計((株)島津製作所製)RID−6Aカラム;東ソ−(株)TSKgelG3000HXL、TSKgelG4000HXL,TSKgelG5000HXLとTSKguardcolumnHXL−Lを直列に接続したもの、あるいは東ソ−(株)TSKgelG2000HXL、TSKgelG3000HXLとTSKguardcolumnHXL−Lを直列に接続したものを使用した。
クロロホルムを溶離液とし温度40℃、流速1.0ml/minにて、濃度1mg/ml(1%ヘキサフルオロイソプロパノールを含むクロロホルム)の試料を10μl注入し測定した。
(4)ステレオコンプレックス結晶化度〔S(%)〕,結晶融解温度などのDSC測定:
DSC(TAインストルメント社製,商品名「Q10」)を用いて試料を、第一サイクルにおいて、窒素気流下、20℃/分で260℃まで昇温し、ガラス転移温度(Tg)、ステレオコンプレックス相ポリ乳酸結晶融点(Tm
sc)、ステレオコンプレックス相ポリ乳酸結晶化温度(Tc
sc)、ステレオコンプレックス相ポリ乳酸結晶融解エンタルピー(ΔHm
sc)、ホモ相ポリ乳酸結晶融解エンタルピー(ΔHm
h)および結晶化熱量(ΔH
c)を測定した。
ステレオコンプレックス結晶化度(S)は上記測定で得られたステレオコンプレックス相およびホモ相ポリ乳酸結晶融解エンタルピーより、下記式(I)により求めた値である。
S=[ΔHm
sc/(ΔHm
h+ΔHm
sc)]×100 (I)
(但し、ΔHm
scはステレオコンプレックス相結晶の融解エンタルピー、ΔHm
hはホモ相ポリ乳酸結晶の融解エンタルピー)
(5)各層の厚み:
フィルムサンプルをフィルム長手方向2mm、幅方向2cmに切り出し、包埋カプセルに固定後、エポキシ樹脂(リファインテック(株)製エポマウント)にて包埋した。包埋されたサンプルをミクロトーム(ライカマイクロシステムズ社製「ULTRACUT」(登録商標)UCT)でフィルム幅方向に垂直に切断し、5nm厚の薄膜切片にした。透過型電子顕微鏡((株)日立ハイテクノロジーズ製S−4300)を用いて加速電圧100kVにて観察撮影し、写真から各層の厚みを測定した。
また、得られた各層の厚みをもとに、層Aにおける最小層厚みに対する最大層厚みの比率、層Bにおける最小層厚みに対する最大層厚みの比率をそれぞれ求めた。
また、得られた各層の厚みをもとに、層Aの平均層厚み、層Bの平均層厚みをそれぞれ求め、層Aの平均層厚みに対する層Bの平均層厚みを算出した。
なお、最外層または交互積層中に0.5μmを超える厚みの調整層が存在する場合は、それらは層A、層Bから除外した。
(6)フィルム全体厚み:
フィルムサンプルをスピンドル検出器(アンリツ(株)製K107C)にはさみ、デジタル差動電子マイクロメーター(アンリツ(株)製K351)にて、異なる位置で厚みを10点測定し、平均値を求めフィルム厚みとした。
(7)積層フィルムの各方向の延伸前、延伸後の屈折率:
各層を構成する個々の樹脂について、それぞれ溶融させてダイより押出し、キャスティングドラム上にキャストしたフィルムをそれぞれ用意した。また、得られたフィルムを135℃にて一軸方向に5倍延伸した延伸フィルムを用意した。得られたキャストフィルムと延伸フィルムについて、それぞれ延伸方向(X方向)とその直交方向(Y方向)、厚み方向(Z方向)のそれぞれの屈折率(それぞれnMD、nTD、nZとする)を、メトリコン社製プリズムカプラを用いて波長633nmにおける屈折率を測定して求め、延伸前、延伸後の屈折率とした。各層の延伸前の平均屈折率については、延伸前の3方向の屈折率の平均値を平均屈折率とした。
(8)フィルムのDSCによる融点、結晶化ピークの測定:
サンプルフィルムを10mgサンプリングし、DSC装置(TAインスツルメンツ社製、商品名:DSC2920)にて、20℃/min.の昇温速度で、結晶化温度および融点を測定した。
(9)光学特性(ピーク波長、最大反射率、全光線透過率):
(株)島津製作所製分光光度計UV−3101PCを用い、JIS K7105:1981、測定法Aに従って全光線透過量、及び散乱光量を測定し、全光線透過率、拡散透過率、及びこれらの差として平行光線透過率を求めた。測定条件は、スキャン速度200nm/秒、スリット幅20nm、サンプリングピッチ2.0nmとし、標準白色板は硫酸バリウムを用いた。波長400nm〜1600nmの透過率を測定し、ブランクとなる透過率100%からの差分を反射率として求めた。この反射率の中で最大の点を最大反射率とし、反射波長は、最大反射率の半分となる短波長側および長波長側の反射波長を求め、その平均値をもって反射波長とした。
また、求めた反射率を、縦軸を反射率、横軸を波長とするグラフにプロットした反射曲線において、反射率が最小になる点に、グラフの横軸と平行となる直線を引き、ベースラインとした。
(10)機械特性(破断強度、破断伸度):
製膜方向の破断強度は、サンプルフィルムを試料幅(幅方向)10mm、長さ(製膜方向)150mmに切り出し、チャック間100mm、引っ張り速度100mm/minで、チャート速度500m/minの条件でインストロンタイプの万能引っ張り試験装置にてサンプルを引っ張った。そして得られた荷重−伸び曲線から破断強度を求めた。
また、幅方向の破断強度は、サンプルフィルムを試料幅(製膜方向)10mm、長さ(幅方向)150mmに切り出す以外は、製膜方向の破断強度の測定と同様に行って求めた。破断伸度についても同様に求めた。
(11)熱特性(90℃熱収縮率、120℃熱収縮率):
90℃および120℃に温度設定されたオーブンの中に無緊張状態で30分間フィルムを保持し、加熱処理前後での寸法変化を熱収縮率として、下記式により算出した。
熱収縮率(%) = ((L
0−L
1) / L
0)) × 100
但し、L
0は熱処理前の標点間距離を、L
1は熱処理後の標点間距離をそれぞれ示す。
(12)厚み変動幅:
製膜方向および幅方向にそれぞれ1m×1mとなるように切り出したフィルムサンプルを縦方向及び幅方向に沿ってそれぞれ2cm幅で25本に切り出し、各サンプルの厚みを電子マイクロメーター及びレコーダー(K−312A,K310B、アンリツ(株)製)を使用して連続的に測定した。さらに測定点を200mmごとに細分化し、その中での厚みの最大値と最小値を読み取り、その差を厚み変動幅とする。
(13)実用特性(色斑):
A4判サイズ(297mm×210mm)のサンプルフィルムを10枚用意し、それぞれのサンプルフィルムを白色の普通紙に重ね、30ルクスの照明の下、目視(肉眼)にてサンプルフィルム内の透過色の色相の斑を評価した。
また、A4判サイズのサンプルフィルムを10枚用意し、それぞれのサンプルフィルムの裏面を黒色のスプレーにて着色した後、30ルクスの照明の下、目視(肉眼)にてサンプルフィルム内の反射色の色相の斑を評価した。
そして、透過色および反射色の色相の斑を総合して、以下の評価基準で判断した。
○:サンプル内に視認できる色相の斑がない。
△:サンプル内に一部、色相の異なる部分が見られる。
×:明らかに斑や筋となって見える色相斑が確認できる。
[製造例1]
(1)ポリL−乳酸(PLLA1)の製造:
L−ラクチド((株)武蔵野化学研究所製、光学純度100%)100重量部に対し、オクチル酸スズを0.005重量部加え、窒素雰囲気下、撹拌翼のついた反応機にて180℃で2時間反応させ、オクチル酸スズに対し1.2倍当量のリン酸を添加しその後、13.3Paで残存するラクチドを減圧除去し、チップ化し、ポリL−乳酸(PLLA1)を得た。得られたポリL−乳酸(PLLA1)の重量平均分子量は15.2万、ガラス転移温度(Tg)は62℃、融点は175℃であった。
(2)ポリD−乳酸(PDLA1)の製造:
PLLA1の製造において、L−ラクチドをD−ラクチド((株)武蔵野化学研究所製、光学純度100%)に変更したこと以外は同じ条件で重合を行い、ポリD−乳酸(PDLA1)を得た。得られたポリD−乳酸(PDLA1)の重量平均分子量(Mw)は15.1万、ガラス転移温度(Tg)は62℃、融点は175℃であった。
(3)ステレオコンプレックスポリ乳酸(SCPLA1)の製造:
上記操作で得られたPLLA1とPDLA1とを各50重量部およびリン酸金属塩((株)ADEKA製「アデカスタブ」(登録商標)NA−71:0.1重量部)を、二軸混練装置の第一供給口より供給、シリンダー温度250℃で溶融混練し、ステレオコンプレックスポリ乳酸(SCPLA1)を得た。ガラス転移温度(Tg)は62℃、融点は216℃であり、ステレオコンプレックス結晶化度(S)は100%であった。
[実施例1]
層A用として融点205℃、固有粘度(オルトクロロフェノール、35℃で測定)0.52のポリトリメチレン−2,6−ナフタレートを用い、製造例1の操作で得たSCPLA1を層B用のステレオコンプレックスポリ乳酸組成物とし、各々を160℃で3時間(ポリトリメチレン−2,6−ナフタレート)、100℃で4時間(ステレオコンプレックスポリ乳酸組成物)保持して乾燥させた後、押出し機に供給し、240℃まで加熱して溶融状態とし、層A用ポリトリメチレン−2,6−ナフタレートを100層、層B用ステレオコンプレックスポリ乳酸組成物を101層に分岐させた後、層Aと層Bとが交互に積層するような多層フィードブロック装置を使用して、その積層状態を保持し、さらに第3の押出機よりステレオコンプレックスポリ乳酸組成物(SCPLA1)を供給して、総数201層の積層状態の溶融体の両側に保護層をさらに積層した。保護層は、全体の20%となるよう第3の押出機の供給量を調整した。その積層状態のままダイへと導き、キャスティングドラム上にキャストして各層の厚みが等しくなるように層Aと層Bとが交互に積層され総数201層(上記保護層は数えず)の未延伸積層フィルムを作成した。
このとき層Aと層Bとの押出し量が1:1になるように調整し、かつ、両端層が層Bになるように積層した。この多層未延伸フィルムを60℃の温度で製膜方向に3.0倍延伸し、更に65℃の温度で幅方向に3.0倍に延伸し、180℃で3秒間熱固定処理を行い、厚み33μmの二軸配向積層フィルムを得た。得られた二軸配向積層フィルムは積層の乱れなどによる筋や延伸による斑のない均質性に優れたフィルムが得られた。得られた二軸配向多層積層フィルムの物性を表3、表4に示す。
[実施例2]
層A用として融点205℃、固有粘度(オルトクロロフェノール、35℃で測定)0.52のポリトリメチレン−2,6−ナフタレートを用い、製造例1の操作で得たSCPLA1を層B用のステレオコンプレックスポリ乳酸組成物とし、各々を160℃で3時間(ポリトリメチレン−2,6−ナフタレート)、100℃で4時間(ステレオコンプレックスポリ乳酸組成物)保持して乾燥させた後、押出し機に供給し、240℃まで加熱して溶融状態とし、層A用ポリトリメチレン−2,6−ナフタレートを137層、層B用ステレオコンプレックスポリ乳酸組成物を138層に分岐させた後、第1層と第2層が交互に積層され、かつ第1層と第2層におけるそれぞれの最大層厚みと最小層厚みが最大/最小で2.2倍まで連続的に変化するような多層フィードブロック装置を使用して、第1層と第2層が交互に積層された総数275層の積層状態の溶融体とし、その積層状態を保持したまま、その両側に第3の押出機から層B用のステレオコンプレックスポリ乳酸組成物と同じステレオコンプレックスポリ乳酸組成物を3層ダイへと導き、総数275層の積層状態の溶融体の両側に保護層をさらに積層した。保護層は、全体の20%となるよう第3の押出機の供給量を調整した。その積層状態を保持したままダイへと導き、キャスティングドラム上にキャストして、第1層と第2層の平均層厚み比が1.0:2.6になるように調整し、総数275層(上記保護層は数えず))の未延伸多層積層フィルムを作成した。
この未延伸多層積層フィルムを60℃の温度で製膜方向に3.0倍延伸し、更に65℃の温度で幅方向に3.0倍に延伸し、180℃で3秒間熱固定処理を行い、厚み41μmの二軸配向積層フィルムを得た。得られた二軸配向積層フィルムは積層の乱れなどによる筋や延伸による斑のない均質性に優れたフィルムが得られた。得られた二軸配向多層積層フィルムの物性を表3、表4に示す。また、反射率曲線を第1図に示す。
[実施例3]
層A用として融点205℃、固有粘度(オルトクロロフェノール、35℃で測定)0.52のポリトリメチレン−2,6−ナフタレートを用い、製造例1の操作で得たPDLA1を層B用のステレオコンプレックスポリ乳酸組成物とし、熱固定処理温度を150℃に変更した以外は、実施例1と同様にして厚み33μmの二軸配向積層フィルムを得た。得られた二軸配向積層フィルムは積層の乱れなどによる筋や延伸による斑のない均質性に優れたフィルムが得られた。得られた二軸配向多層積層フィルムの物性を表3、表4に示す。
[実施例4]
実施例1において幅方向に延伸をしなかったこと以外は同様の操作を行って、一配向積層フィルムを作成した。得られた一軸配向積層フィルムは積層の乱れなどによる筋や延伸による斑のない均質性に優れたフィルムであった。また、このフィルムに偏光板を用いて直線偏光を垂直入射したところ、直線偏光の方位によって反射率が大きく変化することが分かった。
[比較例1]
層A用樹脂として、融点256℃、固有粘度(オルトクロロフェノール、35℃で測定)0.60のポリエチレンテレタレートを用い、層B用の樹脂を実施例1で用いたステレオコンプレックスポリ乳酸組成物とし、各々を170℃で3時間(ポリエチレンテレフタレート)、100℃で4時間(ステレオコンプレックスポリ乳酸組成物)保持して乾燥させた後、押出し機に供給し、280℃まで加熱して溶融状態とし、ポリエチレンテレタレートを100層、層B用ステレオコンプレックスポリ乳酸組成物を101層に分岐させた後、層Aと層Bとが交互に積層するような多層フィードブロック装置を使用して、その積層状態を保持し、さらに第3の押出機よりステレオコンプレックスポリ乳酸組成物(SCPLA1)を供給して、総数201層の積層状態の溶融体の両側に保護層をさらに積層した。保護層は、全体の20%となるよう第3の押出機の供給量を調整した。その積層状態のままダイへと導き、キャスティングドラム上にキャストして各層の厚みが等しくなるように層Aと層Bとが交互に積層され総数201層(上記保護層は数えず)の未延伸積層フィルムを作成した。
このとき層Aと層Bとの押出し量が1:1になるように調整し、且つ、両端層が層Bになるように積層した。この多層未延伸フィルムを90℃の温度で製膜方向に3.0倍延伸し、更に95℃の温度で幅方向に3.0倍に延伸したところ、異物欠点が多くて製膜困難であり、色相斑の少ない二軸延伸フィルムを確保できなかった。
[比較例2]
層A用樹脂として、融点267℃、固有粘度(オルトクロロフェノール、35℃で測定)0.62のポリエチレン−2,6−ナフタレートを用い、層B用の樹脂を実施例1で用いたステレオコンプレックスポリ乳酸組成物とし、各々を180℃で4時間(ポリエチレン−2,6−ナフタレート)、100℃で4時間(ステレオコンプレックスポリ乳酸組成物)保持して乾燥させた後、押出し機に供給し、300℃まで加熱して溶融状態とし、層A用ポリエチレン−2,6−ナフタレートを100層、層B用ステレオコンプレックスポリ乳酸組成物を101層に分岐させた後、層Aと層Bとが交互に積層するような多層フィードブロック装置を使用して、その積層状態を保持し、さらに第3の押出機よりステレオコンプレックスポリ乳酸組成物(SCPLA1)を供給して、総数201層の積層状態の溶融体の両側に保護層をさらに積層した。保護層は、全体の20%となるよう第3の押出機の供給量を調整した。その積層状態のままダイへと導き、キャスティングドラム上にキャストして各層の厚みが等しくなるように層Aと層Bとが交互に積層され総数201層(上記保護層は数えず)の未延伸積層フィルムを作成した。
このとき層Aと層Bとの押出し量が1:1になるように調整し、且つ、両端層が層Bになるように積層した。この多層未延伸フィルムを130℃の温度で製膜方向に3.0倍延伸し、更に135℃の温度で幅方向に3.0倍に延伸したところ、異物欠点が多くて製膜困難であり、延伸斑も大きく色相斑の少ない二軸延伸フィルムを確保できなかった。
[比較例3]
層A用樹脂として、融点220℃、固有粘度(オルトクロロフェノール、35℃で測定)0.85のポリブチレンテレタレートを用い、層B用の樹脂を実施例1で用いたステレオコンプレックスポリ乳酸組成物とし、各々を170℃で3時間(ポリエチレンテレフタレート)、100℃で4時間(ステレオコンプレックスポリ乳酸組成物)保持して乾燥させた後、押出機に供給し、280℃まで加熱して溶融状態とし、ポリエチレンテレタレートを100層、層B用ステレオコンプレックスポリ乳酸組成物を101層に分岐させた後、層Aと層Bとが交互に積層するような多層フィードブロック装置を使用して、その積層状態を保持し、さらに第3の押出機よりステレオコンプレックスポリ乳酸組成物(SCPLA1)を供給して、総数201層の積層状態の溶融体の両側に保護層をさらに積層した。保護層は、全体の20%となるよう第3の押出機の供給量を調整した。その積層状態のままダイへと導き、キャスティングドラム上にキャストして各層の厚みが等しくなるように層Aと層Bとが交互に積層され総数201層(上記保護層は数えず)の未延伸積層フィルムを作成した。このとき層Aと層Bとの押出し量が1:1になるように調整し、且つ、両端層が層Bになるように積層した。
この多層未延伸フィルムを70℃の温度で製膜方向に3.0倍延伸しようとしたところ、ポリブチレンテレタレートの層Aが結晶化しているため、破断し、色相斑の少ない二軸延伸フィルムを確保できなかった。
[比較例4]
比較例1において、層B用の樹脂としてステレオコンプレックスポリ乳酸組成物から変えてポリL−乳酸(PLLA1)を用いたこと以外は、同様に二軸配向積層フィルムを作成しようとした。しかし、異物欠点が多く、延伸斑も大きく、色相斑の少ない二軸延伸フィルムを確保できなかった。
【表1】
【表2】
【表3】
【表4】