(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5749797
(24)【登録日】2015年5月22日
(45)【発行日】2015年7月15日
(54)【発明の名称】(R)−7−クロロ−N−(キヌクリジン−3−イル)ベンゾ[B]チオフェン−2−カルボキサミド塩酸塩一水和物の結晶形
(51)【国際特許分類】
C07D 453/02 20060101AFI20150625BHJP
A61K 31/4535 20060101ALI20150625BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20150625BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20150625BHJP
A61P 25/16 20060101ALI20150625BHJP
A61P 25/18 20060101ALI20150625BHJP
A61K 9/48 20060101ALI20150625BHJP
【FI】
C07D453/02CSP
A61K31/4535
A61P43/00 111
A61P25/28
A61P25/16
A61P25/18
A61K9/48
【請求項の数】62
【全頁数】33
(21)【出願番号】特願2013-511300(P2013-511300)
(86)(22)【出願日】2011年5月17日
(65)【公表番号】特表2013-527186(P2013-527186A)
(43)【公表日】2013年6月27日
(86)【国際出願番号】US2011036844
(87)【国際公開番号】WO2011146511
(87)【国際公開日】20111124
【審査請求日】2013年1月16日
(31)【優先権主張番号】61/352,092
(32)【優先日】2010年6月7日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/345,363
(32)【優先日】2010年5月17日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】507184074
【氏名又は名称】フォルム ファーマシューティカルズ、インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100080791
【弁理士】
【氏名又は名称】高島 一
(74)【代理人】
【識別番号】100125070
【弁理士】
【氏名又は名称】土井 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100136629
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 光宜
(74)【代理人】
【識別番号】100121212
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 弥栄子
(74)【代理人】
【識別番号】100122688
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 健二
(74)【代理人】
【識別番号】100117743
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 美由紀
(74)【代理人】
【識別番号】100163658
【弁理士】
【氏名又は名称】小池 順造
(74)【代理人】
【識別番号】100174296
【弁理士】
【氏名又は名称】當麻 博文
(72)【発明者】
【氏名】オリヴァー−シェーファー、パトリシア
(72)【発明者】
【氏名】シャピロ、ギデオン
(72)【発明者】
【氏名】チェスワース、リチャード
(72)【発明者】
【氏名】岸田 宗己
(72)【発明者】
【氏名】石毛 孝征
【審査官】
小久保 敦規
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2005/0119325(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D 453/02
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部シリコン標準に対して測定するとき、2θとして表される17.48及び20.58 ± 0.20°の一方又は両方にピークを有するX線粉末回折パターンにより特徴付けられる、(R)-7-クロロ-N-(キヌクリジン-3-イル)ベンゾ[b]チオフェン-2-カルボキサミド塩酸塩一水和物の結晶形I。
【請求項2】
内部シリコン標準に対して測定するとき、2θとして表される4.50, 9.04, 14.60, 15.14, 15.80, 16.60, 18.16, 18.44, 19.48, 21.74及び25.46 ± 0.20°に少なくとも1つのピークをさらに有するX線粉末回折パターンにより特徴付けられる、請求項1記載の結晶形I。
【請求項3】
内部シリコン標準に対して測定するとき、2θとして表される4.50, 9.04, 14.60, 15.14, 15.80, 16.60, 18.16, 18.44, 19.48, 21.74及び25.46 ± 0.20°に少なくとも2つのピークをさらに有するX線粉末回折パターンにより特徴付けられる、請求項2記載の結晶形I。
【請求項4】
内部シリコン標準に対して測定するとき、2θとして表される4.50, 9.04, 14.60, 15.14, 15.80, 16.60, 18.16, 18.44, 19.48, 21.74及び25.46 ± 0.20°に少なくとも4つのピークをさらに有するX線粉末回折パターンにより特徴付けられる、請求項2記載の結晶形I。
【請求項5】
内部シリコン標準に対して測定するとき、2θとして表される4.50, 9.04, 14.60, 15.14, 15.80, 16.60, 18.16, 18.44, 19.48, 21.74及び25.46 ± 0.20°に少なくとも6つのピークをさらに有するX線粉末回折パターンにより特徴付けられる、請求項2記載の結晶形I。
【請求項6】
内部シリコン標準に対して測定するとき、2θとして表される4.50, 9.04, 14.60, 15.14, 15.80, 16.60, 18.16, 18.44, 19.48, 21.74及び25.46 ± 0.20°に少なくとも8つのピークをさらに有するX線粉末回折パターンにより特徴付けられる、請求項2記載の結晶形I。
【請求項7】
内部シリコン標準に対して測定するとき、2θとして表される4.50, 9.04, 14.60, 15.14, 15.80, 16.60, 18.16, 18.44, 19.48, 21.74及び25.46 ± 0.20°にピークをさらに有するX線粉末回折パターンにより特徴付けられる、請求項2記載の結晶形I。
【請求項8】
内部シリコン標準に対して測定するとき、2θとして表される21.16及び21.38 ± 0.20°の一方又は両方にピークを有するX線粉末回折パターンにより特徴付けられる、(R)-7-クロロ-N-(キヌクリジン-3-イル)ベンゾ[b]チオフェン-2-カルボキサミド塩酸塩一水和物の結晶形II。
【請求項9】
内部シリコン標準に対して測定するとき、2θとして表される4.48, 9.00, 13.58, 15.62, 16.48, 19.02, 19.44, 22.46及び25.00 ± 0.20°に少なくとも1つのピークをさらに有するX線粉末回折パターンにより特徴付けられる、請求項8記載の結晶形II。
【請求項10】
内部シリコン標準に対して測定するとき、2θとして表される4.48, 9.00, 13.58, 15.62, 16.48, 19.02, 19.44, 22.46及び25.00 ± 0.2°に少なくとも2つのピークをさらに有するX線粉末回折パターンにより特徴付けられる、請求項9記載の結晶形II。
【請求項11】
内部シリコン標準に対して測定するとき、2θとして表される4.48, 9.00, 13.58, 15.62, 16.48, 19.02, 19.44, 22.46及び25.00 ± 0.2°に少なくとも4つのピークをさらに有するX線粉末回折パターンにより特徴付けられる、請求項9記載の結晶形II。
【請求項12】
内部シリコン標準に対して測定するとき、2θとして表される4.48, 9.00, 13.58, 15.62, 16.48, 19.02, 19.44, 22.46及び25.00 ± 0.2°に少なくとも6つのピークをさらに有するX線粉末回折パターンにより特徴付けられる、請求項9記載の結晶形II。
【請求項13】
内部シリコン標準に対して測定するとき、2θとして表される4.48, 9.00, 13.58, 15.62, 16.48, 19.02, 19.44, 22.46及び25.00 ± 0.2°に少なくとも8つのピークをさらに有するX線粉末回折パターンにより特徴付けられる、請求項9記載の結晶形II。
【請求項14】
内部シリコン標準に対して測定するとき、2θとして表される4.48, 9.00, 13.58, 15.62, 16.48, 19.02, 19.44, 22.46及び25.00 ± 0.2°にピークをさらに有するX線粉末回折パターンにより特徴付けられる、請求項9記載の結晶形II。
【請求項15】
請求項1〜7のいずれかに記載の結晶形を含有する医薬組成物。
【請求項16】
請求項8〜14のいずれかに記載の結晶形を含有する医薬組成物。
【請求項17】
アルファ-7受容体活性化により治療又は予防され得る疾患の治療及び/又は予防のための請求項1〜7のいずれかに記載の結晶形。
【請求項18】
アルファ-7受容体活性化により治療又は予防され得る疾患の治療及び/又は予防のための請求項8〜14のいずれかに記載の結晶形。
【請求項19】
請求項1〜7のいずれかに記載の結晶形を含有する、アルツハイマー病に罹患している対象における認知障害を治療又は予防するための医薬組成物。
【請求項20】
請求項8〜14のいずれかに記載の結晶形を含有する、アルツハイマー病に罹患している対象における認知障害を治療又は予防するための医薬組成物。
【請求項21】
請求項1〜7のいずれかに記載の結晶形を含有する、統合失調症に罹患している対象における認知障害を治療又は予防するための医薬組成物。
【請求項22】
請求項8〜14のいずれかに記載の結晶形を含有する、統合失調症に罹患している対象における認知障害を治療又は予防するための医薬組成物。
【請求項23】
請求項1〜7のいずれかに記載の結晶形を含有する、アルツハイマー病に罹患している対象における認知機能を改善するための医薬組成物。
【請求項24】
請求項8〜14のいずれかに記載の結晶形を含有する、アルツハイマー病に罹患している対象における認知機能を改善するための医薬組成物。
【請求項25】
請求項1〜7のいずれかに記載の結晶形を含有する、統合失調症に罹患している対象における認知機能を改善するための医薬組成物。
【請求項26】
請求項8〜14のいずれかに記載の結晶形を含有する、統合失調症に罹患している対象における認知機能を改善するための医薬組成物。
【請求項27】
請求項1〜7のいずれかに記載の結晶形を賦形剤又は医薬的に許容される担体と組み合わせることを含む、医薬組成物の製造方法。
【請求項28】
請求項1〜7のいずれかに記載の結晶形を液体と組み合わせることを含む、請求項27記載の方法。
【請求項29】
請求項1〜7のいずれかに記載の結晶形を含有する組成物をカプセルに充填することを含む、医薬組成物の製造方法。
【請求項30】
請求項8〜14のいずれかに記載の結晶形を賦形剤又は医薬的に許容される担体と組み合わせることを含む、医薬組成物の製造方法。
【請求項31】
請求項8〜14のいずれかに記載の結晶形を液体と組み合わせることを含む、請求項30記載の方法。
【請求項32】
請求項8〜14のいずれかに記載の結晶形を含有する組成物をカプセルに充填することを含む、医薬組成物の製造方法。
【請求項33】
次の工程を含む、請求項1〜7のいずれかに記載の結晶形Iの製造方法:
(1)(R)-7-クロロ-N-(キヌクリジン-3-イル)ベンゾ[b]チオフェン-2-カルボキサミド塩酸塩を、含水有機溶媒中で、温度−水分活性範囲I内で、必要であれば、その温度及び/又は水分活性を低下させながら、攪拌し、実質的に純粋な結晶形Iを形成させ、及び
(2)生成した結晶形Iを単離する
(ここで、温度−水分活性範囲Iは、下記の含水有機溶媒の温度と水分活性の関係により定義される。
含水有機溶媒の水分活性(x)が0.16乃至0.73であり;
含水有機溶媒の温度(t)が(183x - 64.2)より高く、含水有機溶媒の沸騰温度より低い)。
【請求項34】
工程(1)において、含水有機溶媒中の(R)-7-クロロ-N-(キヌクリジン-3-イル)ベンゾ[b]チオフェン-2-カルボキサミド塩酸塩の初期状態が溶液であり、当該溶液が、温度−水分活性範囲I内で、その温度及び/又は水分活性を低下させながら、攪拌される、請求項33記載の方法。
【請求項35】
工程(1)において、含水有機溶媒中の(R)-7-クロロ-N-(キヌクリジン-3-イル)ベンゾ[b]チオフェン-2-カルボキサミド塩酸塩の初期状態が懸濁液であり、当該懸濁液が、温度−水分活性範囲I内で、必要であれば、その温度及び/又は水分活性を低下させながら、攪拌される、請求項33記載の方法。
【請求項36】
工程(1)において、(R)-7-クロロ-N-(キヌクリジン-3-イル)ベンゾ[b]チオフェン-2-カルボキサミド塩酸塩の種晶が溶液に添加される、請求項34記載の方法。
【請求項37】
種晶が(R)-7-クロロ-N-(キヌクリジン-3-イル)ベンゾ[b]チオフェン-2-カルボキサミド塩酸塩一水和物の結晶形Iである、請求項36記載の方法。
【請求項38】
水分活性が0.29乃至0.59である、請求項33〜37のいずれかに記載の方法。
【請求項39】
温度が-10℃から60℃の温度であり、次に記載するTより高い:
T = 183x - 57.6
(ここで、xは含水有機溶媒の水分活性であり、Tは温度(℃)である)、請求項33記載の方法。
【請求項40】
工程(1)における終点温度が0℃から35℃の温度である、請求項39記載の方法。
【請求項41】
含水有機溶媒が、水及び水と混和し得る、アルコール類、ケトン類、ニトリル類及びエーテル類から選択される一又は二以上の有機溶媒の混合物である、請求項33記載の方法。
【請求項42】
含水有機溶媒が、水及び水と混和し得る、プロパノール、ブタノール、ブタノン及びアセトニトリルから選択される一又は二以上の有機溶媒の混合物である、請求項33記載の方法。
【請求項43】
次の工程を含む、請求項8〜14のいずれかに記載の結晶形IIの製造方法:
(1)(R)-7-クロロ-N-(キヌクリジン-3-イル)ベンゾ[b]チオフェン-2-カルボキサミド塩酸塩を、含水有機溶媒中で、温度−水分活性範囲II内で、必要であれば、その温度及び/又は水分活性を低下させながら、攪拌し、実質的に純粋な結晶形IIを形成させ、及び
(2)生成した結晶形IIを単離する
(ここで、温度−水分活性範囲IIは、以下に記載する含水有機溶媒の温度と水分活性の関係により定義される。
含水有機溶媒の水分活性(x)が0.16乃至0.73であり;
含水有機溶媒の温度(t)が(183x - 64.2)より低く、含水有機溶媒の凝固点温度より高い)。
【請求項44】
工程(1)において、含水有機溶媒中の(R)-7-クロロ-N-(キヌクリジン-3-イル)ベンゾ[b]チオフェン-2-カルボキサミド塩酸塩の初期状態が溶液であり、当該溶液が、温度−水分活性範囲II内で、その温度及び/又は水分活性を低下させながら、攪拌される、請求項43記載の方法。
【請求項45】
工程(1)において、含水有機溶媒中の(R)-7-クロロ-N-(キヌクリジン-3-イル)ベンゾ[b]チオフェン-2-カルボキサミド塩酸塩の初期状態が懸濁液であり、当該懸濁液が、温度−水分活性範囲II内で、任意にその温度及び/又は水分活性を低下させながら、攪拌される、請求項43記載の方法。
【請求項46】
工程(1)において、(R)-7-クロロ-N-(キヌクリジン-3-イル)ベンゾ[b]チオフェン-2-カルボキサミド塩酸塩の種晶が溶液に添加される、請求項44記載の方法。
【請求項47】
種晶が(R)-7-クロロ-N-(キヌクリジン-3-イル)ベンゾ[b]チオフェン-2-カルボキサミド塩酸塩一水和物の結晶形IIである、請求項46記載の方法。
【請求項48】
水分活性が0.29乃至0.59である、請求項43〜47のいずれかに記載の方法。
【請求項49】
温度が-10℃から60℃の温度であり、次に記載するTより低い:
T = 183x - 70.8
(ここで、xは含水有機溶媒の水分活性であり、Tは温度(℃)である)、請求項43記載の方法。
【請求項50】
工程(1)における終点温度が0℃から35℃の温度である、請求項49記載の方法。
【請求項51】
含水有機溶媒が、水及び水と混和し得る、アルコール類、ケトン類、ニトリル類及びエーテル類から選択される一又は二以上の有機溶媒の混合物である、請求項43記載の方法。
【請求項52】
含水有機溶媒が、水及び水と混和し得る、プロパノール、ブタノール、ブタノン及びアセトニトリルから選択される一又は二以上の有機溶媒の混合物である、請求項43記載の方法。
【請求項53】
(a)アセトニトリル又は含水アセトニトリル中の10-30重量%の(R)-7-クロロ-N-(キヌクリジン-3-イル)ベンゾ[b]チオフェン-2-カルボキサミド塩酸塩を、60℃から溶液の沸騰温度までの温度まで加熱し;
(b)任意に混合物に水を添加して、(R)-7-クロロ-N-(キヌクリジン-3-イル)ベンゾ[b]チオフェン-2-カルボキサミド塩酸塩を完全に溶解し;
(c)結晶が見えるようになるまで溶液を冷却し;
(d)結晶が見えるようになったとき、水分含量が3%v/vを超える場合、混合物にアセトニトリルを添加して、水分含量が3%v/v未満となるようにし;
(e)生成した混合物を15℃未満に冷却し;及び
(f)結晶の(R)-7-クロロ-N-(キヌクリジン-3-イル)ベンゾ[b]チオフェン-2-カルボキサミド塩酸塩一水和物を単離することを含む、
請求項1記載の結晶形Iの製造方法。
【請求項54】
工程(a)において添加される水が、混合物の水分含量を30%v/vを超える水分含量にしない、請求項53記載の方法。
【請求項55】
工程(a)において、(R)-7-クロロ-N-(キヌクリジン-3-イル)ベンゾ[b]チオフェン-2-カルボキサミド塩酸塩が15-25重量%で存在する、請求項53記載の方法。
【請求項56】
工程(a)において、(R)-7-クロロ-N-(キヌクリジン-3-イル)ベンゾ[b]チオフェン-2-カルボキサミド塩酸塩が16-20重量%で存在する、請求項53記載の方法。
【請求項57】
工程(a)において、(R)-7-クロロ-N-(キヌクリジン-3-イル)ベンゾ[b]チオフェン-2-カルボキサミド塩酸塩が17-19重量%で存在する、請求項53記載の方法。
【請求項58】
結晶が見えるようになった後、結晶形Iの(R)-7-クロロ-N-(キヌクリジン-3-イル)ベンゾ[b]チオフェン-2-カルボキサミド塩酸塩一水和物を混合物に添加することをさらに含む、請求項53記載の方法を含む。
【請求項59】
工程(c)が、溶液を55℃未満に冷却することを含む、請求項53記載の方法。
【請求項60】
工程(c)が、溶液を50℃未満に冷却することを含む、請求項53記載の方法。
【請求項61】
(a)2-ブタノール又は含水2-ブタノール中の5-15重量%の(R)-7-クロロ-N-(キヌクリジン-3-イル)ベンゾ[b]チオフェン-2-カルボキサミド塩酸塩を、60℃から溶液の沸騰温度までの温度まで加熱し;
(b)水分含量が5%v/v未満の場合、混合物に水を添加して、水分含量が5%v/v以上となるようにし;
(c)溶液を10℃未満に冷却し;
(d)生成した混合物を10℃未満に維持し;及び
(e)結晶の(R)-7-クロロ-N-(キヌクリジン-3-イル)ベンゾ[b]チオフェン-2-カルボキサミド塩酸塩一水和物を単離することを含む、
請求項8記載の結晶形IIの製造方法。
【請求項62】
(a)(R)-7-クロロ-N-(キヌクリジン-3-イル)ベンゾ[b]チオフェン-2-カルボキサミド塩酸塩を、(i)アセトニトリル又は(ii)含水アセトニトリルに添加して、(R)-7-クロロ-N-(キヌクリジン-3-イル)ベンゾ[b]チオフェン-2-カルボキサミド塩酸塩10-20重量%の組成物を作成し;
(b)任意に組成物に水を添加して、水分含量を6-10%にし;
(c)任意に溶液を10℃未満に冷却し;
(d)結晶を形成させ;及び
(e)結晶の(R)-7-クロロ-N-(キヌクリジン-3-イル)ベンゾ[b]チオフェン-2-カルボキサミド塩酸塩一水和物を単離することを含む、
請求項8記載の結晶形IIの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本出願は、2010年6月7日に出願された米国仮出願第61/352,092号及び2010年5月17日に出願された米国仮出願第61/345,363号に基づく優先権を主張し、その全体が参照により本明細書に明示的に含まれる。
【0002】
本開示は、(R)-7-クロロ-N-(キヌクリジン-3-イル)ベンゾ[b]チオフェン-2-カルボキサミド塩酸塩一水和物の結晶形並びにその組成物、製造方法及び医薬用途に関する。
【0003】
(発明の背景)
内因性神経伝達物質アセチルコリン(acetylcholine, Ach)は、末梢及び中枢神経系(central nervous systems, CNS)において、アセチルコリン受容体(acetylcholine receptors, AChRs)のムスカリン性及びニコチン性サブクラスを介して種々の生理学的機能を媒介する。ニコチン性アセチルコリン受容体(nicotinic acetylcholine receptors, nAChRs)は、天然物ニコチンにより選択的に活性化されるリガンド開口型細胞表面イオンチャネルである。ニコチン性アセチルコリン受容体の種々の分子サブタイプ又は変異型は、受容体の五量体構造に基づく。nAChRサブタイプは、9個の分子的に異なるアルファサブユニット及び4個の分子的に異なるベータサブユニットの種々の五量体の組合せから形成される。特に興味深い治療介入(therapeutic intervention)の分子ターゲットは、5個のアルファ-7単量体サブユニットからなるアルファ-7ニコチン性受容体サブタイプである。したがって、アルファ-7受容体に選択的なアゴニストは、様々な疾患を治療する可能性を有する。アルファ-7アゴニストは認知障害に伴うCNS障害の治療に特に有用であると期待される。この期待は、アルファ-7受容体活性化の認知、学習及び記憶に対する有益な効果に基づく。同時に、選択的アルファ-7アゴニストは、例えば、非選択的アゴニストニコチンによるような特定の他のニコチン性受容体サブタイプの活性化により媒介される望ましくない副作用(例えば、吐き気、嘔吐、頻脈)をより少なく、又はより重篤ではないものにすると期待される。
このように、認知障害に伴うCNS障害の治療のための更なる選択的アルファ7-アゴニストが必要とされている。
【発明の概要】
【0004】
したがって、本発明は、認知障害に伴うCNS障害の治療に使用される新規な結晶化合物に関する。特に、本発明は、下記式を有する(R)-7-クロロ-N-(キヌクリジン-3-イル)ベンゾ[b]チオフェン-2-カルボキサミド塩酸塩一水和物の結晶形、即ち、結晶形I及び結晶形IIを提供する。
【0006】
本発明は、さらに、(a)当該結晶形の一つを含有する医薬組成物、(b)当該結晶形の一つを使用する、α7ニコチン性受容体アゴニストの投与が治療に有用と期待され得る状態の治療及び/又は予防方法、並びに(c)当該結晶形の一つの製造方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、結晶形I及び結晶形IIの状態図である。
【
図2】
図2は、結晶形XのX線粉末回折(XRPD)スペクトルを表す。
【
図3】
図3は、種々の温度におけるアセトニトリル/水系中の水分活性と水の体積分率の関係を表すグラフである。
【
図4】
図4は、水分活性の値に対する温度のプロットを使用する結晶形I及び結晶形IIのダイアグラムである。
【
図5】
図5は、結晶形IのX線粉末回折(XRPD)スペクトルを表す。
【
図6】
図6は、結晶形IIのX線粉末回折(XRPD)スペクトルを表す。
【0008】
(発明の詳細な説明)
結晶形、方法、及び医薬組成物を含む本発明は、便宜的に以下の定義を参照して記載される。特に断りのない限り、本明細書で使用される下記の用語は以下の通り定義される。
【0009】
I.定義
本明細書で使用するとき、特に断りのない限り、「結晶形(crystal forms, crystalline forms)」という用語、及び本明細書中の関連する用語は、結晶である固体形態(solid forms)をいう。結晶形は単一成分結晶形(single-component crystal forms)及び多成分結晶形(multiple-component crystal forms)を含み、かつ多形、溶媒和物、水和物、及び/又は他の分子複合体(molecular complexes)を含むが、これらに限定されない。一つの実施態様において、本発明の結晶形は水和物である。ある実施態様において、結晶形は実質的に純粋な、単離された、又は濃縮された(enriched)一つの結晶形であり、及び/又は実質的に非晶形(amorphous forms)及び/又は他の結晶形を含有しない。
【0010】
本明細書で使用するとき、特に断りのない限り、「結晶(性)の(crystalline)」という用語、及び本明細書中の関連する用語は、化合物、物質(substance)、変形(modification)、材料(material)、成分(component)又は生成物(product)を記載するために使用されるとき、特に断りのない限り、当該化合物、物質、変形、材料、成分又は生成物が実質的に結晶である(X線回折で決定される)ことを意味する。例えば、Remington: The Science and Practice of Pharmacy, 21st edition, Lippincott, Williams and Wilkins, ボルチモア、メリーランド州 (2005); 第23改正米国薬局方(The United States Pharmacopeia, 23rd ed.), 1843-1844 (1995)参照。
【0011】
さらに、結晶形及び非晶形を特徴付けるためのより詳細な特徴付けの手法は、熱重量分析(thermal gravimetric analysis, TGA)、示差走査熱量測定(differential scanning calorimetry, DSC)、X線粉末回折法(X-ray powder diffractometry, XRPD)、単結晶X線回折法(single-crystal X-ray diffractometry)、振動分光法(vibrational spectroscopy)、例えば、赤外線(infrared, IR)及びラマン分光法、固体状態及び溶液核磁気共鳴(solid-state and solution nuclear magnetic resonance,NMR)、光学顕微鏡法、高温光学顕微鏡法(hot stage optical microscopy)、走査電子顕微鏡法(scanning electron microscopy, SEM)、電子線結晶学(electron crystallography)及び定量分析、粒度分析(particle size analysis,PSA)、表面積分析(surface area analysis)、溶解度測定(solubility measurements)、溶出測定(dissolution measurements)、元素分析及びカールフィッシャー分析を含み得るが、これらに限定されない。特徴的な単位格子パラメーター(unit cell parameters)は、X線回折及び中性子回折(単結晶回折及び粉末回折を含む)のような一又は二以上の手法を用いて決定され得るが、これらに限定されない。粉末回折データを分析するために有用な手法には、リートベルトリファインメント(Rietveld refinement)のようなプロファイルリファインメント(profile refinement)が含まれ、これは、例えば、二以上の固相を含有するサンプル中の単一相に伴う回折ピークを分析するために使用し得る。粉末回折データを分析するために有用な他の方法には、単位格子インデクシング(unit cell indexing)が含まれ、これは、当業者が結晶粉末を含有するサンプルから単位格子パラメーターを決定するのを可能にする。さらに、結晶の同定は、これらの手法の一つ、例えば、X線粉末回折法を用いることにより行うことができ、追加の記載した特徴付けの手法を用いて確認できることが当業者には理解できるであろう。
【0012】
本明細書で使用するとき、特に断りのない限り、「実質的に純粋な(substantially pure)」特定の結晶形又は非晶形を含有するサンプルは、約75%を超える、例えば80%、例えば85%、例えば90%、例えば91%、例えば92%、例えば93%、例えば94%、例えば95%、例えば96%、例えば97%、例えば98%、例えば99%、例えば99.25%、例えば99.50%、例えば99.75%、例えば99.9%を超える化学的及び/又は物理的純度の、例えば100%物理的及び/又は化学的に純粋な特定の結晶形又は非晶形を含有する。ある実施態様において、特定の結晶形又は非晶形は、約90%を超える、例えば91%、例えば92%、例えば93%、例えば94%、例えば95%、例えば96%、例えば97%、例えば98%、例えば99%、例えば99.25%、例えば99.50%、例えば99.75%、例えば99.9%を超える、例えば100%物理的及び/又は化学的に純粋である。特定の実施態様において、特定の結晶形又は非晶形は、約95%を超える、例えば96%、例えば97%、例えば98%、例えば99%、例えば99.25%、例えば99.50%、例えば99.75%、例えば99.9%を超える、例えば100%物理的及び/又は化学的に純粋である。特定の実施態様において、特定の結晶形又は非晶形は、約99%を超える、例えば99.25%、例えば99.50%、例えば99.75%、例えば99.9%を超える、例えば100%物理的及び/又は化学的に純粋である。
【0013】
本明細書で使用するとき、特に断りのない限り、一又は二以上の他の固体形態及び/又は他の化学物質を「実質的に含まない(substantially free)」サンプル又は組成物とは、特定の実施態様において、約25%未満、例えば20%、例えば15%、例えば10%、例えば9%、例えば8%、例えば7%、例えば6%、例えば5%、例えば4%、例えば3%、例えば2%、例えば1%、例えば0.75%、例えば0.5%、例えば0.25%、例えば、又は0.1%未満の重量パーセントの一又は二以上の非晶形及び/又は他の結晶形を含有する組成物を意味する。ある実施態様において、当該組成物は、10%未満、例えば9%、例えば8%、例えば7%、例えば6%、例えば5%、例えば4%、例えば3%、例えば2%、例えば1%、例えば0.75%、例えば0.5%、例えば0.25%、例えば、又は0.1%未満の重量パーセントの一又は二以上の非晶形及び/又は他の結晶形を含有する。特定の実施態様において、当該組成物は、5%未満、例えば4%、例えば3%、例えば2%、例えば1%、例えば0.75%、例えば0.5%、例えば0.25%、例えば、又は0.1%未満の重量パーセントの一又は二以上の非晶形及び/又は他の結晶形を含有する。特定の実施態様において、当該組成物は、1%未満、例えば0.75%、例えば0.5%、例えば0.25%、例えば、又は0.1%未満の重量パーセントの一又は二以上の非晶形及び/又は他の結晶形を含有する。ある実施態様において、物質の結晶形は物理的及び/又は化学的に純粋である。
【0014】
本明細書で使用するとき、特に断りのない限り、「多形(polymorphs, polymorphic forms)」という用語、及び本明細書中の関連する用語は、同一の分子、複数の分子及び/又はイオンから実質的になる二以上の結晶形をいう。異なる多形は、結晶格子中の分子及び/又はイオンの配置(arrangement)又はコンフォメーション(conformation)の結果、異なる物理的性質、例えば、融点、融解熱、溶解度、溶出性及び/又は振動スペクトルを有し得る。物理的性質の相違は、保存安定性、圧縮性(compressibility)及び密度(製剤及び製品の製造において重要)、並びに溶出速度(バイオアベイラビリティに重要なファクター)のような医薬パラメーターに影響を与え得る。安定性の相違は、化学反応性の変化(例えば、ある多形からなるとき、他の多形からなるときと比べて、投与形態がより速く変色するような酸化の違い)又は機械的変化(例えば、動態学的に好ましい多形が熱力学的により安定な多形に変換されるため、保存中に錠剤が砕ける)またはその両方(例えば、ある多形の錠剤が高湿度においてより分解しやすい)を生じ得る。溶解度/溶出性の相違の結果、極端な場合、ある固体状態転移が薬効の欠如又は、他の極端な場合、毒性を生じ得る。また、物理学的性質は、加工において重要となり得る(例えば、ある多形が、溶媒和物を形成する可能性がより高いかもしれないし、又は不純物を含まないよう濾過及び洗浄するのがより困難であるかもしれないし、粒子形及び粒度分布が多形間で異なるかもしれない)。
【0015】
「水和物」及び「水和(hydrated)」という用語は、溶媒が水を含有する溶媒和物をいう。「溶媒和物の多形」とは、特定の溶媒和物組成物について二以上の結晶形が存在することをいう。同様に、「水和物の多形」とは、特定の水和物組成物について二以上の結晶形が存在することをいう。
【0016】
本明細書で使用するとき、特に断りのない限り、「非晶質(amorphous)」、「非晶形(amorphous form)」という用語、及び本明細書中の関連する用語は、問題となる物質、成分又は生成物が実質的に結晶でない(X線回折により決定される)ことをいう。特に、「非晶形(amorphous form)」という用語は、無秩序な固体形態(disordered solid form)、即ち、長距離結晶秩序(long range crystalline order)を有しない固体形態をいう。ある実施態様において、物質の非晶形は、他の非晶形及び/又は結晶形を実質的に含まない。他の実施態様において、物質の非晶形は、約1%、2%、3%、4%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%又は50%未満の一又は二以上の他の非晶形及び/又は結晶形を重量ベースで含有し得る。ある実施態様において、物質の非晶形は、物理的及び/又は化学的に純粋であってよい。ある実施態様において、物質の非晶形は、約99%、98%、97%、96%、95%、94%、93%、92%、91%又は90%物理的及び/又は化学的に純粋である。
【0017】
本明細書で使用するとき、特に断りのない限り、「約(about)」及び「およそ(approximately)」という用語は、特定の固体形態を特徴付けるために提供される数値又は値の範囲、例えば、特定の温度又は温度範囲、例えば、DSC又はTGA熱イベント(thermal event)(例えば、融解、脱水、脱溶媒和又はガラス転移イベントを含む)を記載するような温度又は温度範囲;質量変化、例えば、温度又は湿度の関数としての質量変化;溶媒又は水分含量、例えば、質量又はパーセンテージに関して;或いはピーク位置、例えば、IR若しくはラマン分光法又はXRPDによる分析に関して使用されるとき、当該数値又は値の範囲が、特定の固体形態を説明しているが、当業者が合理的と考える程度まで逸脱していてもよいことを示す。例えば、特定の実施態様において、「約(about)」及び「およそ(approximately)」という用語は、本明細書で使用するとき、特に断りのない限り、数値又は値の範囲が、記載された数値又は値の範囲の25%、20%、15%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1.5%、1%、0.5%、又は0.25%以内で変化してもよいことをいう。
【0018】
本明細書で使用するとき、特に断りのない限り、「治療する(treat, treating)」及び「治療(treatment)」という用語は、疾患(disease)又は障害(disorder)、或いは疾患又は障害に伴う一又は二以上の症状の根絶(eradication)又は軽減(amelioration)をいう。ある実施態様において、この用語は、本発明の化合物を疾患又は障害を有する患者に投与した結果、かかる疾患又は障害の進行(advancement)又は悪化(worsening)を最小限にすることをいう。ある実施態様において、この用語は、特定の疾患の症状の発症後に、他の追加の活性薬剤と共に又は他の追加の活性薬剤なしで、本明細書に記載の化合物を投与することをいう。「治療する(treating)」、「治療(treatment)」などの用語は、本明細書で使用するとき、対象(例えば、哺乳動物)における疾患状態の治療(treatment)を包含し、(i)疾患状態を阻害すること、即ち、その進展を部分的又は完全に阻止すること;(ii)疾患状態を緩和すること、即ち、疾患状態の症状を退行(regression)させること、又は疾患の症状を軽減すること;及び(iv)疾患状態の反転(reversal)又は退行、好ましくは、疾患を除去(eliminating)又は治癒(curing)することのうち、少なくとも一つを含む。特定の実施態様において、「治療する(treating)」、「治療(treatment)」などの用語は、哺乳動物(例えば、霊長類、例えば、ヒト)における疾患症状の治療(treatment)を包含し、前記(
i)、(
ii)及び(iv)の少なくとも一つを含む。当分野で知られているように、全身的対局所的送達(systemic versus localized delivery)、年齢、体重、全身の健康状態、性別、食事療法、投与時間、薬物相互作用及び症状の重篤度の調整が必要なことがあり、当業者によるルーチン実験により確認することができる。
【0019】
本明細書で使用するとき、特に断りのない限り、「予防する(prevent, preventing)」及び「予防(prevention)」という用語は、疾患又は障害、或いはその一又は二以上の症状の発症(onset)、再発(recurrence)又は蔓延(spread)を予防することをいう。ある実施態様において、この用語は、症状の発症前に、他の追加の活性薬剤と共に又は他の追加の活性薬剤なしで、本明細書に記載の化合物を対象に投与すること、特に、本明細書に記載の疾患又は障害のリスクのある患者に投与することをいう。この用語は、特定の疾患の症状の阻害又は軽減を包含する。特定の疾患の家族病歴を有する対象は、ある実施態様において、予防療法の候補者である。また、再発症状の病歴を有する対象も予防の潜在的な候補者である。これに関し、「予防(prevention)」という用語は、「予防的処置(prophylactic treatment)」という用語と互換的に使用され得る。ある実施態様において、予防は、本発明の化合物の予防有効量(prophylactically effective amount)の投与により達成される。
【0020】
本明細書で使用するとき、特に断りのない限り、化合物の「治療有効量(therapeutically effective amount)」は、疾患又は障害の治療(treatment)又は管理(management)において治療的利益(therapeutic benefit)を与える、或いは疾患又は障害に伴う一又は二以上の症状を遅らせる又は最小限にするのに十分な量をいう。化合物の治療有効量は、単独又は他の療法と組み合わせて、疾患又は障害の治療又は管理において治療的利益を与える治療薬剤の量を意味する。「治療有効量」という用語は、全体的な療法を改善する、症状又は疾患若しくは障害の原因を軽減(reduce)又は回避(avoid)する、或いは他の治療薬剤の治療薬効を高めることを包含し得る。
【0021】
本明細書で使用するとき、特に断りのない限り、「管理する(manage, managing)」及び「管理(management)」という用語は、疾患又は障害、或いはその一又は二以上の症状の進行(progression)、蔓延(spread)又は悪化(worsening)を予防する又は遅らせる(slowing)ことをいう。しばしば、予防及び/又は治療薬剤に由来する対象の有益な効果が障害又は疾患の治癒をもたらさない。これに関し、「管理する(managing)」という用語は、特定の疾患に罹患したことのある対象を、疾患の再発を予防又は最小限にするために処置することを包含する。
【0022】
本明細書で使用するとき、特に断りのない限り、化合物の「予防有効量(prophylactically effective amount)」は、疾患又は障害を予防する、或いはその再発を予防するのに十分な量である。化合物の予防有効量は、単独又は他の薬剤と組み合わせて、疾患の予防において予防的利益を与える治療薬剤の量を意味する。「予防有効量」という用語は、全体的な予防を改善する、又は他の予防薬剤の予防薬効を高める量を包含し得る。
【0023】
「組成物」という用語は、本明細書で使用するとき、特定の成分を(及び表示されている場合は、特定の量で)含有する生成物、並びに、特定の成分の特定の量の組合せから、直接的又は間接的に、生じるいかなる生成物も包含することを意図する。「医薬組成物」という用語は、本発明の化合物、例えば、結晶形I又はII、及び医薬的に許容される担体を含有する組成物を包含する。「医薬的に許容される担体」は、製剤の他の成分と適合し得る、その受容者に対して有害でない希釈剤、賦形剤又は担体である。
【0024】
II.本発明の化合物
一つの実施態様において、本発明は、下記式を有する(R)-7-クロロ-N-(キヌクリジン-3-イル)ベンゾ[b]チオフェン-2-カルボキサミド塩酸塩一水和物の結晶形I及び結晶形IIを提供する。
【0025】
【化2】
【0026】
明確にするため、アルファ-7受容体アゴニスト化合物(R)-7-クロロ-N-(キヌクリジン-3-イル)ベンゾ[b]チオフェン-2-カルボキサミド塩酸塩は、米国特許出願公開第US 2005-0119325号に開示されている。しかしながら、本発明とは対照的に、かかる開示は、本発明の(R)-7-クロロ-N-(キヌクリジン-3-イル)ベンゾ[b]チオフェン-2-カルボキサミド塩酸塩一水和物を開示又は示唆するものではなく、また、(R)-7-クロロ-N-(キヌクリジン-3-イル)ベンゾ[b]チオフェン-2-カルボキサミド塩酸塩一水和物の結晶形は何ら開示されていない。
【0027】
一つの実施態様において、本発明は、内部シリコン標準に対して測定するとき、2θとして表される17.48及び20.58 ± 0.20°の一方又は両方にピークを有するX線粉末回折パターンにより特徴付けられる、(R)-7-クロロ-N-(キヌクリジン-3-イル)ベンゾ[b]チオフェン-2-カルボキサミド塩酸塩一水和物の結晶形Iを提供する。
【0028】
別の実施態様において、本発明は、前記で定義され、内部シリコン標準に対して測定するとき、2θとして表される4.50, 9.04, 14.60, 15.14, 15.80, 16.60, 18.16, 18.44, 19.48, 21.74及び25.46 ± 0.20°に少なくとも1つのピークをさらに有するX線粉末回折パターンにより特徴付けられる結晶形Iを提供する。
【0029】
別の実施態様において、本発明は、前記で定義され、内部シリコン標準に対して測定するとき、2θとして表される4.50, 9.04, 14.60, 15.14, 15.80, 16.60, 18.16, 18.44, 19.48, 21.74及び25.46 ± 0.20°に少なくとも2つのピークをさらに有するX線粉末回折パターンにより特徴付けられる結晶形Iを提供する。
【0030】
また別の実施態様において、本発明は、前記で定義され、内部シリコン標準に対して測定するとき、2θとして表される4.50, 9.04, 14.60, 15.14, 15.80, 16.60, 18.16, 18.44, 19.48, 21.74及び25.46 ± 0.20°に少なくとも4つのピークをさらに有するX線粉末回折パターンにより特徴付けられる結晶形Iを提供する。
【0031】
本発明は、さらに、前記で定義され、内部シリコン標準に対して測定するとき、2θとして表される4.50, 9.04, 14.60, 15.14, 15.80, 16.60, 18.16, 18.44, 19.48, 21.74及び25.46 ± 0.20°に少なくとも6つのピークをさらに有するX線粉末回折パターンにより特徴付けられる結晶形Iを提供する。
【0032】
本発明は、さらに、前記で定義され、内部シリコン標準に対して測定するとき、2θとして表される4.50, 9.04, 14.60, 15.14, 15.80, 16.60, 18.16, 18.44, 19.48, 21.74及び25.46 ± 0.20°に少なくとも8つのピークをさらに有するX線粉末回折パターンにより特徴付けられる結晶形Iを提供する。
【0033】
本発明は、さらに、前記で定義され、内部シリコン標準に対して測定するとき、2θとして表される4.50, 9.04, 14.60, 15.14, 15.80, 16.60, 18.16, 18.44, 19.48, 21.74及び25.46 ± 0.20°にピークをさらに有するX線粉末回折パターンにより特徴付けられる結晶形Iを提供する。
【0034】
別の実施態様において、本発明は、内部シリコン標準に対して測定するとき、2θとして表される21.16及び21.38 ± 0.20°の一方又は両方にピークを有するX線粉末回折パターンにより特徴付けられる、(R)-7-クロロ-N-(キヌクリジン-3-イル)ベンゾ[b]チオフェン-2-カルボキサミド塩酸塩一水和物の結晶形IIを提供する。
【0035】
別の実施態様において、本発明は、前記で定義され、内部シリコン標準に対して測定するとき、2θとして表される4.48, 9.00, 13.58, 15.62, 16.48, 19.02, 19.44, 22.46及び25.00 ± 0.20°に少なくとも1つのピークをさらに有するX線粉末回折パターンにより特徴付けられる結晶形IIを提供する。
【0036】
また別の実施態様において、本明細書では、前記で定義され、内部シリコン標準に対して測定するとき、2θとして表される4.48, 9.00, 13.58, 15.62, 16.48, 19.02, 19.44, 22.46及び25.00 ± 0.2°に少なくとも2つのピークをさらに有するX線粉末回折パターンにより特徴付けられる結晶形IIが提供される。
【0037】
別の実施態様において、本発明は、前記で定義され、内部シリコン標準に対して測定するとき、2θとして表される4.48, 9.00, 13.58, 15.62, 16.48, 19.02, 19.44, 22.46及び25.00 ± 0.2°に少なくとも4つのピークをさらに有するX線粉末回折パターンにより特徴付けられる結晶形IIを包含する。
【0038】
さらに、本明細書では、前記で定義され、内部シリコン標準に対して測定するとき、2θとして表される4.48, 9.00, 13.58, 15.62, 16.48, 19.02, 19.44, 22.46及び25.00 ± 0.2°に少なくとも6つのピークをさらに有するX線粉末回折パターンにより特徴付けられる結晶形IIが提供される。
【0039】
また、本明細書では、前記で定義され、内部シリコン標準に対して測定するとき、2θとして表される4.48, 9.00, 13.58, 15.62, 16.48, 19.02, 19.44, 22.46及び25.00 ± 0.2°に少なくとも8つのピークをさらに有するX線粉末回折パターンにより特徴付けられる結晶形IIが提供される。
【0040】
別の実施態様において、本明細書では、前記で定義され、内部シリコン標準に対して測定するとき、2θとして表される4.48, 9.00, 13.58, 15.62, 16.48, 19.02, 19.44, 22.46及び25.00 ± 0.2°にピークをさらに有するX線粉末回折パターンにより特徴付けられる結晶形IIが提供される。
【0041】
III.本発明の方法
A.使用方法
ある実施態様において、本発明は、アルファ-7受容体活性化により治療又は予防され得る疾患の治療及び/又は予防のための結晶形Iを提供する。別の実施態様において、本発明は、アルファ-7受容体活性化により治療又は予防され得る疾患の治療及び/又は予防のための結晶形IIを提供する。
【0042】
別の実施態様において、本発明は、結晶形Iを対象に投与することを含む、アルファ-7受容体活性化により治療又は予防され得る疾患の治療又は予防方法を提供する。別の実施態様において、結晶形IIを対象に投与することを含む、アルファ-7受容体活性化により治療又は予防され得る疾患の治療又は予防方法が提供される。
【0043】
別の実施態様において、本発明は、結晶形Iを対象に投与することを含む、対象における認知機能を改善する又は認知障害(cognitive loss)を治療する方法を提供する。別の実施態様において、本発明は、結晶形Iを注意欠陥障害、注意欠陥多動性障害、及びパーキンソン病から選択される障害に罹患している対象に投与することによる、認知機能を改善する又は認知障害を治療する方法を提供する。別の実施態様において、本発明は、結晶形Iをアルツハイマー病及び統合失調症から選択される障害に罹患している対象に投与することによる、認知機能を改善する又は認知障害を治療する方法を提供する。
【0044】
別の実施態様において、本発明は、結晶形Iを対象に投与することを含む、注意欠陥障害、注意欠陥多動性障害、パーキンソン病、アルツハイマー病及び統合失調症から選択される障害を治療する方法を提供する。別の実施態様において、本発明は、結晶形Iを対象に投与することを含む、アルツハイマー病、パーキンソン病及び統合失調症から選択される障害を発症するリスクのある対象を処置する方法を包含する。さらに別の実施態様において、本発明は、結晶形Iを対象に投与することを含む、60歳を超える対象を治療する方法を包含する。さらなる実施態様において、本発明は、結晶形Iを対象に投与することを含む、加齢性記憶障害(age-related memory loss)の治療方法を包含する。別の実施態様において、本発明は、結晶形Iを60歳を超えている対象に投与することを含む、加齢性記憶障害の治療方法を包含する。
【0045】
別の実施態様において、本発明は、結晶形IIを対象に投与することを含む、対象における認知機能を改善する又は認知障害を治療する方法を提供する。別の実施態様において、本発明は、結晶形IIを注意欠陥障害、注意欠陥多動性障害、及びパーキンソン病から選択される障害に罹患している対象に投与することによる、認知機能を改善する又は認知障害を治療する方法を提供する。別の実施態様において、本発明は、結晶形IIをアルツハイマー病及び統合失調症から選択される障害に罹患している対象に投与することによる、認知機能を改善する又は認知障害を治療する方法を提供する。
【0046】
別の実施態様において、本発明は、結晶形IIを対象に投与することを含む、注意欠陥障害、注意欠陥多動性障害、パーキンソン病、アルツハイマー病及び統合失調症から選択される障害を治療する方法を提供する。別の実施態様において、本発明は、結晶形IIを対象に投与することを含む、アルツハイマー病、パーキンソン病及び統合失調症から選択される障害を発症するリスクのある対象を処置する方法を包含する。さらに別の実施態様において、本発明は、結晶形IIを対象に投与することを含む、60歳を超える対象を治療する方法を包含する。さらなる実施態様において、本発明は、結晶形IIを対象に投与することを含む、加齢性記憶障害の治療方法を包含する。別の実施態様において、本発明は、結晶形IIを60歳を超えている対象に投与することを含む、加齢性記憶障害の治療方法を包含する。
【0047】
B.製造方法
(R)-7-クロロ-N-(キヌクリジン-3-イル)ベンゾ[b]チオフェン-2-カルボキサミド塩酸塩一水和物を安定な結晶形で提供することは有益である。鋭意研究の結果、2つのタイプの安定な結晶形:結晶形I及び結晶形IIが同定された。一方の結晶形は固体状態では他方の結晶形に容易に変換しない。なぜなら、2つの結晶形はそれぞ
れ安定だからである。他方では、一方の結晶形を含水溶媒に溶解し、溶液から結晶化を行ったとき、どの結晶形が優先的に製造されるかを予測することは困難であった。また、一方の結晶形は、特定の条件下の溶液中で、他方の結晶形又は2つの結晶形の混合物に極めて容易に変換され得た。したがって、結晶化のメカニズムは不明であり、各結晶形を高純度で製造する方法を設計することは困難であった。鋭意研究の結果、本発明者らは、それぞれの純粋な結晶形を選択的に製造する方法に至った。本方法は、様々な異なる溶媒を使用して行うことができる。
【0048】
化合物の結晶形は、通常、1)生成物の溶解度が高い高温で化合物を溶媒に溶解し、2)溶液の温度を下げて化合物を結晶化させ、3)生成した結晶を単離することにより得られる。
【0049】
しかしながら、固体状態の探索により、(R)-7-クロロ-N-(キヌクリジン-3-イル)ベンゾ[b]チオフェン-2-カルボキサミド塩酸塩一水和物の2つの互変性(enantiotropic)結晶形が存在することが明らかになり、本発明者らは、通常の結晶化操作では、化合物の2つの結晶形の混合物が製造される傾向があることを発見した。これは、より高温では、化合物の一方の結晶形が溶媒系においてもう少し安定であるのに対して、より低温では、化合物の他方の結晶形が同一の溶媒系においてもう少し安定であるからである。この効果は、実施例5、6、7及び8でみられる。さらにまた、一方の結晶形から他方の結晶形に転移する境界温度は、化合物が溶解される溶媒系に依存して変化することが見出された。
【0050】
本発明者らは、種々の温度及び種々の溶媒系で安定な結晶形を鋭意研究し、(R)-7-クロロ-N-(キヌクリジン-3-イル)ベンゾ[b]チオフェン-2-カルボキサミド塩酸塩一水和物の結晶形I及び結晶形IIが、特定の有機溶媒と関係なく、溶媒の温度と水分活性(water activity)の関係に基づいて別々に製造できることを見出した。この知見により、純粋な結晶形I及び結晶形IIを別々に製造する新規な方法の創製に至った。
【0051】
一つの実施態様において、本発明は、結晶形Iを賦形剤又は医薬的に許容される担体と組み合わせることを含む、医薬組成物の製造方法を提供する。一つの実施態様において、本方法は、結晶形Iを液体と組み合わせることをさらに含む。さらなる実施態様において、本方法は、結晶形Iを含有する組成物をカプセルに充填することを含む。
【0052】
別の実施態様において、本発明は、結晶形IIを賦形剤又は医薬的に許容される担体と組み合わせることを含む、医薬組成物の製造方法を提供する。一つの実施態様において、本方法は、結晶形IIを液体と組み合わせることをさらに含む。さらなる実施態様において、本方法は、結晶形IIを含有する組成物をカプセルに充填することを含む。
【0053】
結晶形Iの製造方法は、(1)(R)-7-クロロ-N-(キヌクリジン-3-イル)ベンゾ[b]チオフェン-2-カルボキサミド塩酸塩(以下、「(R)-7-クロロ-N-(キヌクリジン-3-イル)ベンゾ[b]チオフェン-2-カルボキサミド塩酸塩」は、無水物、水和物及び溶媒和物のいずれの形態も包含し、好ましくは無水物及び水和物を包含する)を、含水有機溶媒中で、温度−水分活性範囲I内で、必要であれば、その温度及び/又は水分活性を低下させながら、攪拌し、実質的に純粋な結晶形Iを形成させ;及び(2)生成した結晶形Iを単離する(ここで、温度−水分活性範囲Iは、下記の含水有機溶媒の温度と水分活性の関係により定義される。含水有機溶媒の水分活性(x)が0.16乃至0.73であり;含水有機溶媒の温度(T)が(183x - 64.2)より高く、含水有機溶媒の沸騰温度より低い)ことを含む。
【0054】
一つの実施態様において、結晶形Iの製造方法は、工程(1)において、含水有機溶媒中の(R)-7-クロロ-N-(キヌクリジン-3-イル)ベンゾ[b]チオフェン-2-カルボキサミド塩酸塩の初期状態が溶液であり、当該溶液が、温度−水分活性範囲I内で、その温度及び/又は水分活性を低下させながら、攪拌される方法を含む。別の実施態様において、結晶形Iの製造方法は、工程(1)において、含水有機溶媒中の(R)-7-クロロ-N-(キヌクリジン-3-イル)ベンゾ[b]チオフェン-2-カルボキサミド塩酸塩の初期状態が懸濁液であり、当該懸濁液が、温度−水分活性範囲I内で、必要であれば、その温度及び/又は水分活性を低下させながら、攪拌される方法を含む。さらなる実施態様において、結晶形Iの製造方法は、工程(1)において、(R)-7-クロロ-N-(キヌクリジン-3-イル)ベンゾ[b]チオフェン-2-カルボキサミド塩酸塩の種晶が溶液に添加される方法を含む。また、さらなる実施態様において、結晶形Iの製造方法は、種晶が(R)-7-クロロ-N-(キヌクリジン-3-イル)ベンゾ[b]チオフェン-2-カルボキサミド塩酸塩一水和物の結晶形Iである方法を含む。
【0055】
一つの実施態様において、結晶形Iの製造方法は、水分活性が0.29乃至0.59である方法を含む。別の実施態様において、結晶形Iの製造方法は、温度が-10℃から60℃の温度であり、次に記載するTより高い:T = 183x - 57.6(ここで、xは含水有機溶媒の水分活性であり、Tは温度(℃)である)方法を含む。さらに別の実施態様において、結晶形Iの製造方法は、工程(1)における終点温度が0℃から35℃の温度である方法を含む。
【0056】
一つの実施態様において、結晶形Iの製造方法は、含水有機溶媒が、水及び水と混和し得る、アルコール類、ケトン類、ニトリル類及びエーテル類から選択される一又は二以上の有機溶媒の混合物である方法を含む。別の実施態様において、結晶形Iの製造方法は、含水有機溶媒が、水及び水と混和し得る、プロパノール、ブタノール、ブタノン及びアセトニトリルから選択される一又は二以上の有機溶媒の混合物である方法を含む。
【0057】
本発明はまた、(1)(R)-7-クロロ-N-(キヌクリジン-3-イル)ベンゾ[b]チオフェン-2-カルボキサミド塩酸塩を、含水有機溶媒中で、温度−水分活性範囲II内で、必要であれば、その温度及び/又は水分活性を低下させながら、攪拌し、結晶形IIを形成させ;及び(2)生成した結晶形IIを単離する(ここで、温度−水分活性範囲IIは、下記の含水有機溶媒の温度と水分活性の関係により定義される。含水有機溶媒の水分活性(x)が0.16乃至0.73であり;含水有機溶媒の温度(T)が(183x - 64.2)より低く、含水有機溶媒の凝固点温度より高い)ことを含む、結晶形IIの製造方法を含む。
【0058】
一つの実施態様において、結晶形IIの製造方法は、工程(1)において、含水有機溶媒中の(R)-7-クロロ-N-(キヌクリジン-3-イル)ベンゾ[b]チオフェン-2-カルボキサミド塩酸塩の初期状態が溶液であり、当該溶液が、温度−水分活性範囲II内で、その温度及び/又は水分活性を低下させながら、攪拌される方法を含む。一つの実施態様において、結晶形IIの製造方法は、工程(1)において、含水有機溶媒中の(R)-7-クロロ-N-(キヌクリジン-3-イル)ベンゾ[b]チオフェン-2-カルボキサミド塩酸塩の初期状態が懸濁液であり、当該懸濁液が、温度−水分活性範囲II内で、任意にその温度及び/又は水分活性を低下させながら、攪拌される方法を含む。
【0059】
別の実施態様において、結晶形IIの製造方法は、工程(1)において、(R)-7-クロロ-N-(キヌクリジン-3-イル)ベンゾ[b]チオフェン-2-カルボキサミド塩酸塩の種晶が溶液に添加される方法を含む。また別の実施態様において、結晶形IIの製造方法は、種晶が(R)-7-クロロ-N-(キヌクリジン-3-イル)ベンゾ[b]チオフェン-2-カルボキサミド塩酸塩一水和物の結晶形IIである方法を含む。また別の実施態様において、結晶形IIの製造方法は、水分活性が0.29乃至0.59である方法を含む。さらなる実施態様において、結晶形IIの製造方法は、温度が-10℃から60℃の温度であり、次に記載するTより低い:T = 183x - 70.8(ここで、xは含水有機溶媒の水分活性であり、Tは温度(℃)である)方法を含む。別の実施態様において、結晶形IIの製造方法は、工程(1)における終点温度が0℃から35℃の温度である方法を含む。一つの実施態様において、結晶形I
Iの製造方法は、含水有機溶媒が、水及び水と混和し得る、アルコール類、ケトン類、ニトリル類及びエーテル類から選択される一又は二以上の有機溶媒の混合物である方法を含む。
【0060】
別の実施態様において、結晶形IIの製造方法は、含水有機溶媒が、水及び水と混和し得る、プロパノール、ブタノール、ブタノン及びアセトニトリルから選択される一又は二以上の有機溶媒の混合物である方法を含む。
【0061】
本発明はまた、(a)アセトニトリル又は含水アセトニトリル中の10-30重量%の(R)-7-クロロ-N-(キヌクリジン-3-イル)ベンゾ[b]チオフェン-2-カルボキサミド塩酸塩を、60℃から溶液の沸騰温度までの温度まで加熱し;(b)任意に混合物に水を添加して、(R)-7-クロロ-N-(キヌクリジン-3-イル)ベンゾ[b]チオフェン-2-カルボキサミド塩酸塩を完全に溶解し;(c)結晶が見えるようになるまで溶液を冷却し;(d)結晶が見えるようになったとき、水分含量が3%v/vを超える場合、混合物にアセトニトリルを添加して、水分含量が3%v/v未満となるようにし;(e)生成した混合物を15℃未満に冷却し;及び(f)結晶の(R)-7-クロロ-N-(キヌクリジン-3-イル)ベンゾ[b]チオフェン-2-カルボキサミド塩酸塩一水和物を単離することを含む、結晶形Iの別の製造方法を提供する。
【0062】
一つの実施態様において、結晶形Iの製造方法は、前記の工程(a)から(f)で定義される方法であって、工程(a)において添加される水が、混合物の水分含量を30%v/vを超える水分含量にしない方法を含む。別の実施態様において、結晶形Iの製造方法は、前記の工程(a)から(f)で定義される方法であって、工程(a)において、(R)-7-クロロ-N-(キヌクリジン-3-イル)ベンゾ[b]チオフェン-2-カルボキサミド塩酸塩が15-25重量%で存在する方法を含む。別の実施態様において、結晶形Iの製造方法は、前記の工程(a)から(f)で定義される方法であって、工程(a)において、(R)-7-クロロ-N-(キヌクリジン-3-イル)ベンゾ[b]チオフェン-2-カルボキサミド塩酸塩が16-20重量%で存在する方法を含む。別の実施態様において、結晶形Iの製造方法は、前記の工程(a)から(f)で定義される方法であって、工程(a)において、(R)-7-クロロ-N-(キヌクリジン-3-イル)ベンゾ[b]チオフェン-2-カルボキサミド塩酸塩が17-19重量%で存在する方法を含む。また別の実施態様において、結晶形Iの製造方法は、前記の工程(a)から(f)で定義される方法であって、結晶が見えるようになった後、結晶形Iの(R)-7-クロロ-N-(キヌクリジン-3-イル)ベンゾ[b]チオフェン-2-カルボキサミド塩酸塩一水和物を混合物に添加することをさらに含む方法を含む。
【0063】
また別の実施態様において、結晶形Iの製造方法は、前記の工程(a)から(f)で定義される方法であって、工程(c)が、溶液を55℃未満に冷却することを含む方法を含む。また別の実施態様において、結晶形Iの製造方法は、前記の工程(a)から(f)で定義される方法であって、工程(c)が、溶液を50℃未満に冷却することを含む方法を含む。
【0064】
また本発明に含まれる方法は、結晶形IIの製造方法であって、(a)2-ブタノール又は含水2-ブタノール中の5-15重量%の(R)-7-クロロ-N-(キヌクリジン-3-イル)ベンゾ[b]チオフェン-2-カルボキサミド塩酸塩を、60℃から溶液の沸騰温度までの温度まで加熱し;(b)水分含量が5%v/v未満の場合、混合物に水を添加して、水分含量が5%v/v以上となるようにし;(c)溶液を10℃未満に冷却し;(d)生成した混合物を10℃未満に維持し;及び(e)結晶の(R)-7-クロロ-N-(キヌクリジン-3-イル)ベンゾ[b]チオフェン-2-カルボキサミド塩酸塩一水和物を単離することを含む方法である。
【0065】
本発明はさらに、結晶形IIの製造方法であって、(a)(R)-7-クロロ-N-(キヌクリジン-3-イル)ベンゾ[b]チオフェン-2-カルボキサミド塩酸塩を、(i)アセトニトリル又は(ii)含水アセトニトリルに添加して、(R)-7-クロロ-N-(キヌクリジン-3-イル)ベンゾ[b]チオフェン-2-カルボキサミド塩酸塩10-20重量%の組成物を作成し;(b)任意に組成物に水を添加して、水分含量を6-10%にし;(c)任意に溶液を10℃未満に冷却し;(d)結晶を形成させ;及び(e)結晶の(R)-7-クロロ-N-(キヌクリジン-3-イル)ベンゾ[b]チオフェン-2-カルボキサミド塩酸塩一水和物を単離することを含む方法を含む。
【0066】
結晶形I及びIIは、多くの観点において非常に安定である。両方の結晶形は、保存条件下で安定である。40℃で11 %RH、40℃で75 %RH、60℃で11 %RH、及び60℃で75 %RH2週間後の保存条件下で、いずれの結晶形からも分解生成物は検出されず、25℃で1200万ルクス・時間の光(D65ランプ)に曝露する光保存条件下で、いずれの結晶形からも分解生成物は検出されなかった。両方の結晶形は物理的応力下でも安定である。両方の結晶形のXRDチャートは、平面杵(planar pestle) (1000 kgf/cm
2)を用いた圧縮実験後、変化しなかった。
【0067】
純粋な結晶形I及びIIは、本明細書に記載する特別な方法により製造することができる。
【0068】
純粋な結晶形Iは、
(1)(R)-7-クロロ-N-(キヌクリジン-3-イル)ベンゾ[b]チオフェン-2-カルボキサミド塩酸塩を、含水有機溶媒中で、温度−水分活性範囲I(
図4に表す)内で、必要であれば、その温度及び/又は水分活性を低下させながら、攪拌し、実質的に純粋な結晶形Iを形成させ、及び(2)生成した結晶形Iを単離することを含む方法により製造され得る。
【0069】
純粋な結晶形IIは、
(1)(R)-7-クロロ-N-(キヌクリジン-3-イル)ベンゾ[b]チオフェン-2-カルボキサミド塩酸塩を、含水有機溶媒中で、温度−水分活性範囲II(
図4に表す)内で、必要であれば、その温度及び/又は水分活性を低下させながら、攪拌し、結晶形IIを形成させ、及び(2)生成した結晶形IIを単離することを含む方法により製造され得る。
【0070】
水分活性は、系内の水のエネルギー状態を表すのに使用される熱物理係数(thermophysical coefficient)であり、サンプル上の水の蒸気圧を同温度での純水の蒸気圧で割った値として定義される。これは、静電容量型湿度計又は露点湿度計を用いて測定することができる。これはまた、COSMO-RS法(Fluid Phase Equililbria, 172 (2000) 43-72)によって予測することができる。
【0071】
(R)-7-クロロ-N-(キヌクリジン-3-イル)ベンゾ[b]チオフェン-2-カルボキサミド塩酸塩は、例えば、WO03/55878に記載の方法によって製造された。7-クロロ-ベンゾ[b]チオフェン-2-カルボン酸をカルボニルジイミダゾールと反応させ、7-クロロ-2-イミダゾリル-カルボニルベンゾ[b]チオフェンを得た後、(R)-3-アミノキヌクリジン二塩酸塩と反応させ、(R)-7-クロロ-N-(キヌクリジン-3-イル)ベンゾ[b]チオフェン-2-カルボキサミド塩酸塩を得た。
【0072】
前記の製造方法で使用される(R)-7-クロロ-N-(キヌクリジン-3-イル)ベンゾ[b]チオフェン-2-カルボキサミド塩酸塩は、例えば、結晶(例えば、結晶形I、II、及びその混合物)、非晶形生成物、オイル又は溶液であってよく、好ましくは溶液である。結晶化は、塩酸塩化後の同じ容器中で行うことができる。含水有機溶媒は、水及び一又は二以上の有機溶媒の混合物である。好ましい有機溶媒は、水と混和し得る有機溶媒であり、より好ましくは、例えば、アルコール類(例えば、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノールのようなC
1−6アルカノール、及びエチレングリコール、プロピレングリコールのようなC
2−6アルカンジオール)、ケトン類(例えば、アセトン、ブタノンのようなC
3−6アルカノン)、ニトリル類(例えば、アセトニトリル、プロパンニトリル)及びエーテル類(例えば、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン)である。好ましい溶媒は、アルコール類、ニトリル類及びケトン類であり、より好ましくは、プロパノール類、ブタノール類、ブタノン及びアセトニトリルである。
【0073】
本発明において、溶液は、結晶の形成前に過飽和(supersatured)にする。結晶形I及びIIの温度−水分活性範囲間の境界を、
図4において、結晶形I及びIIの領域を分ける線として示す。
【0074】
結晶形は、製造方法の間中、モニターし得る。結晶形を区別できる方法であれば、いかなる分析方法もモニタリングに使用することができ、XRDが最も好ましい方法の一つである。純粋な結晶形を製造するために、望ましくない結晶形が所望の結晶形に完全に変換されるまで、混合物の攪拌を続ける。
【0075】
結晶形Iの製造方法において、結晶形X(これは結晶形I及びIIのいずれとも相違する)が一時的に現れるかもしれないが、結晶形Xは結晶形Iに変換され得るので、混合物の攪拌を続ければ消失する。
【0076】
IV.本発明の医薬組成物
また本明細書において提供される本発明は、結晶形Iを含有する医薬組成物である。また本明細書において提供されるのは、結晶形IIを含有する医薬組成物である。
【0077】
結晶形I及びIIは、治療を必要とする哺乳動物における疾患又は状態を治療する医薬を製造するために使用することができ、ここで、哺乳動物は、結晶形I又はIIの治療有効量の投与により症状が緩和され得る。結晶形I及びIIは、所定の疾患に対する相加又は相乗治療効果のための他の医薬と組み合わせて投与することができる。疾患には、以下に記載する疾患が含まれるが、これらに限定されない。医薬は、所定の効能(例えば、アルツハイマー病のためのアセチルコリンエステラーゼ阻害剤)で承認されている薬物が含まれるが、これらに限定されない。
【0078】
結晶形Iは非常に安定であり、医薬品の製造に使用される前にかなりの長期間保存することができるため、たとえ製造工程、即ち、活性成分の製剤化が結晶形Iのいくつか又は全てを別の結晶形に転移するような場合でも、結晶形Iは医薬品の製造に有用である。
【0079】
結晶形I及びIIは、溶液又は懸濁液として、錠剤、カプセル剤(それぞれ持効性及び徐放性製剤を含む)、ピル、オイル、散剤、顆粒、エリキシル剤、チンキ剤、懸濁液、シロップ、エマルション、マイクロエマルションの形態で、又は賦形剤と共に製剤化することができる。同様に、結晶形I及びIIは、医薬分野で当業者によく知られている製剤を用いて、いかなる通常の投与経路、例えば、静脈内投与(ボラス投与及び点滴の両方)、腹腔内投与、眼内投与、皮下投与、筋肉内投与、経腸投与、好ましくは、経口投与(例えば、錠剤又はカプセル剤の形態で)、又は経鼻投与、バッカル投与(buccal)、舌下投与(sub-lingual)、経皮投与、又は坐剤の形態で投与してもよい。また、結晶形I及びIIは、リポソームなどの形態で投与することができる。崩壊薬は、小単一ラメラベシクル(small unilamellar vesicles)、大単一ラメラベシクル(large unilamellar vesicles)及びマルチラメラベシクル(multilamellar vesicles)のようなデリバリーシステムを含むが、これらに限定されない。リポソームは、コレステロール、ステアリルアミン又はフォスファチジルコリンのような種々のリン脂質から形成することができる。
【0080】
錠剤又はカプセル剤の形態での経口投与のために、結晶形I及びIIは、エタノール、グリセロール、水などのような経口の、非毒性の医薬的に許容される不活性担体と組み合わせることができる。さらにまた、所望により又は必要であれば、適当な結合剤、滑沢剤、崩壊剤及び着色剤も混合物に含めることができる。適当な結合剤は、デンプン;ゼラチン;グルコース又はベータ−ラクトースのような天然糖;コーン甘味料;アラビアゴム、トラガカントゴム又はアルギン酸ナトリウムのような天然及び合成ゴム;カルボキシメチルセルロース、ポリエチレングリコール、ワックスなどを含む。これらの投与形態で使用される適当な滑沢剤は、例えば、オレイン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウムなどを含む。適当な崩壊剤は、例えば、デンプン、カルボキシメチルスターチナトリウム、クロスカルメロースナトリウムなどである。適当な着色剤の例は、三二酸化鉄、黄色三二酸化鉄、アマランス、エリスロシン、タートラジン、サンセットイエローFCFなどである。
【0081】
結晶形I及びIIの投与計画(dosage regimen)は、患者のタイプ、種、年齢、体重、性別及び医学的状態;治療すべき症状の重篤度;投与経路;患者の腎及び肝機能を含む種々の因子にしたがって選択される。通常の知識を有する医師又は獣医は、症状の進行を予防、対抗又は阻止するのに必要な薬物の有効量を容易に決定及び処方することができる。
【0082】
一つの実施態様において、動物における満足な結果は、約0.1乃至約600 mgの一日投与量、又は約0.01乃至約5 mg/kg動物の体重で得られると示される。
【0083】
結晶形I及びIIの静脈内、皮下又は筋肉内で注射される投与量は、表示された効能に使用するとき、約0.001乃至1.0 mg/kgの範囲となるだろう。さらにまた、結晶形I及びIIは、適当な鼻腔内ビヒクルを用いる局所使用による鼻腔内投与形態で、又は当業者によく知られた経皮パッチの投与形態を用いる経皮ルートにより投与することができる。経皮デリバリーシステムの形態で投与するとき、投与量は、投与計画を通じて、間欠投与よりむしろ連続的にすることができる。経皮デリバリーは、当業者に知られたアプローチを使用して達成することもできる。
【0084】
結晶形I及びIIを使用して治療され得る疾患には、アルツハイマー病の認知状態(condition cognitive)及び注意欠陥症状(attention deficit symptoms)、アルツハイマー病のような疾患に伴う神経変性、初老期認知症(軽度認知機能障害)、老人性認知症、統合失調症、精神病注意欠陥障害、注意欠陥多動性障害、気分障害及び情動障害、筋萎縮性側索硬化症、境界型人格障害、外傷性脳損傷、脳腫瘍に伴う行動的及び認知的問題(behavioral and cognitive problems)、AIDS認知症症候群、ダウン症候群に伴う認知症、レヴィ小体に伴う認知症、ハンチントン病、うつ病、全般性不安障害、加齢黄斑変性、パーキンソン病、遅発性ジスキネジア、ピック病、心的外傷後ストレス障害、過食症及び神経性食欲不振を含む食物摂取の調節不全(dysregulation of food intake)、禁煙及び依存性薬物の禁止に伴う禁断症状、ジル・ド・ラ・トゥレット症候群、緑内障、緑内障に伴う神経変性又は痛みに伴う症状が含まれるが、これらに限定されず、或いは知覚、集中、学習及び/又は記憶の改善のための治療及び/又は予防である。
【0085】
実施例
本発明を以下の実施例により説明するが、これに限定されるものではない。
【0086】
実施例1
結晶形Iの製造
(R)-7-クロロ-N-(キヌクリジン-3-イル)ベンゾ[b]チオフェン-2-カルボキサミド塩酸塩は、US 2005-0119325に記載の方法により合成した。結晶形Iを製造するため、1.0 Kgの化合物をアセトニトリル(5 L)に溶解し、72-78℃に加熱した。この温度になったら、水(0.5 L)を添加した。結晶が見えるようになる50-60℃まで混合物を冷却し、結晶形Iの種晶を接種した。混合物を最短2時間保持し、内部温度を50-60℃に保ちながら、アセトニトリル(20 L)を添加した。材料を5-10℃に冷却した。結晶を真空濾過で単離し、アセトニトリル(2 L)で洗浄した。材料を真空乾燥器で湿度を調節しながら40℃で乾燥し、0.8 kgの結晶形Iを得た。
【0087】
実施例2
結晶形Iの製造
アセトニトリル(90 mL)及び水(10 mL)を室温で混合した。この溶液の1.0 mlを100.7 mgの(R)-7-クロロ-N-(キヌクリジン-3-イル)ベンゾ[b]チオフェン-2-カルボキサミド塩酸塩水和物の結晶形Iに添加した。この懸濁液を80℃で、固体成分が溶解するまで攪拌し、次いで温度を80分間で40℃まで下げた。冷却中、52℃付近で自発的な結晶化が観察された。この懸濁液に、2.40 mlのアセトニトリルをゆっくり滴下し、次いで温度を60分間で10℃まで下げた。この懸濁液を同温度で15時間攪拌し、次いで固体を濾過し、0.20 mlのアセトニトリルで洗浄した。真空乾燥後、81.1 mgの結晶形Iを回収した。
【0088】
実施例3
結晶形IIの製造
アセトニトリル(90 mL)及び水(10 mL)を室温で混合した。この溶液の1.0 mlを100.9 mgの(R)-7-クロロ-N-(キヌクリジン-3-イル)ベンゾ[b]チオフェン-2-カルボキサミド塩酸塩水和物の結晶形Iに添加した。この懸濁液を80℃で、固体成分が溶解するまで攪拌し、次いで温度を140分間で10℃まで下げた。冷却中、51℃付近で自発的な結晶化が観察された。この懸濁液を同温度で15時間攪拌し、次いで固体を濾過し、0.20 mlのアセトニトリルで洗浄した。真空乾燥後、48.7mgの結晶形IIを回収した。
【0089】
実施例4
結晶形IIの製造
(R)-7-クロロ-N-(キヌクリジン-3-イル)ベンゾ[b]チオフェン-2-カルボキサミド塩酸塩水和物(462 g)を、2308.5 mLのアセトニトリル及び230.85 mLの水の中で、周囲温度で4.75時間砕いた。生成物を濾過により分離し、乾燥して、314 gの単離された純粋な結晶形IIを得た。
【0090】
実施例5
含水アセトニトリル中の状態図
(1)結晶形I及びIIの溶解度の測定
結晶形I及びIIの溶解度は、含水アセトニトリル中(水分濃度はそれぞれ0乃至10 v/v%であった)で5℃から45℃の間の種々の温度で測定した。
溶解度は以下の方法にしたがって測定した。結晶形I又はIIの結晶及び含水アセトニトリルをガラス容器に加えた。混合物を、アルミニウムブロックでコントロールされた定められた温度で、テフロン(登録商標)コートされたマグネチックスターラーバーで攪拌した。液相を定期的にサンプリングし、化合物の濃度を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で測定した。固体材料も同時に採取し、XRPDを使用して結晶形を同定した。濃度の経時的な変化を分析し、平坦ゾーン(plateau zone)を平衡状態として同定し、これらの濃度の平均値を、その条件下での「溶解度」として定義した。測定した溶解度を表1にまとめる。
【0091】
【表1】
【0092】
(2)溶解度方程式は、JMP 6 (SAS Institute)を使用してモデル化した。応答曲面法により、測定した溶解度の値を方程式(1)に適用し、温度と水分濃度の関数として溶解度モデルを得た。W’及びT’は、方程式(2)及び(3)として、それぞれ定義した。ここで、C*
x、W及びTは、ある結晶形の溶解度、含水アセトニトリル中の水分濃度(v/v%)及び温度(℃)をそれぞれ意味する。a、b、c、d及びfからの定数値は、測定した溶解度の値を最小二乗法で、2乃至10 v/v%水分濃度の範囲内及び5乃至45℃の範囲内に当てはめることにより決定した。欠陥又は精度の観点から、測定した溶解度の値から、両方の結晶形の2% - 45℃の値、結晶形IIの3.5% - 37.5℃の値、及び結晶形Iの10% - 10.0℃の値を除外して、数式を構築した。
【0093】
【数1】
【0094】
フィッティング結果は、定数の決定が成功し、これらのモデルがわずかな偏差の範囲内で溶解度を説明し得ることを示した。得られた結晶形I及びIIの溶解度方程式をそれぞれ方程式(4)及び(5)に示す。
【0095】
【数2】
【0096】
(3)状態図の作成
多形結晶相間の熱力学的関係は溶解度と一致する。溶解度測定の結果に基づけば、結晶形I及びIIの間の熱力学的関係は互変性(enantiotropy)であることが明らかである。安定な結晶形の境界は、溶解度測定を行った範囲に存在するはずである。境界条件では、結晶形I及びIIの溶解度は同一のはずである。したがって、境界条件は方程式(4)及び(5)から誘導され、方程式(6)に記載するように単純化される。
【0097】
【数3】
【0098】
境界方程式(6)を解くことにより、境界条件を決定することができる。解いた値を表2に示す。結果をプロットすることにより、状態図を
図1に描いた。便宜上、方程式(6)から得たこの境界線は、水分濃度の四次方程式により近似された。この近似式及びそれを解いた値を方程式(7)及び表2にそれぞれ示す。
【0099】
【数4】
【0100】
【表2】
【0101】
実施例6
インターコンバージョン試験
得られた実施例5の状態図(
図1)の信頼性を確認するために、インターコンバージョン試験も行った。
溶媒をガラス容器に加え、アルミニウムブロックで温度をコントロールした。同一量の結晶形I及びIIの結晶を容器に加えた。溶液を、テフロンコートされたマグネチックスターラーバーで13乃至40時間攪拌した。固体成分をサンプリングし、XRPDで分析して、その結晶形を決定した。
結果を表3にまとめる。これらの結果は、実施例5の状態図と一致した。
【0102】
【表3】
【0103】
実施例7
含水アセトニトリル中の結晶化挙動
(1)結晶形X
溶解度研究において、結晶形Xは別の結晶形として同定された。結晶形Xの典型的なXRPDパターンを
図2に示す。
【0104】
(2)98 v/v%含水アセトニトリル中の結晶化挙動
結晶形Iの結晶を、ガラス容器中の98 v/v%含水アセトニトリルに添加した。次に、98 v/v%含水アセトニトリルを添加して、混合物を、結晶形Iの結晶に対して40v/w倍にした。混合物をテフロンコートされたマグネチックスターラーバーで攪拌し、アルミニウムブロックで80℃に加熱した。結晶を溶解させた後、混合物を1時間当たり30℃の速度で所定の温度まで冷却した。所定の保持時間の後、実験の目的にしたがって、結晶形Iの結晶を種晶として添加した。析出物を定期的にサンプリングし、XRPDにより分析した。
【0105】
98 v/v%含水アセトニトリル系中の最初の析出物は、結晶形Xと確認された。結晶形Xから結晶形Iへの自然な転移は16時間以内に観察されなかった。接種した実験の結果から、結晶形Iは、温度に関わらず結晶形Xより安定であることが推定された。結晶形Xは84.7%の収率で回収できた。
【0106】
【表4】
【0107】
(3)98 v/v%含水アセトニトリル中の転移挙動
結晶形Iの結晶及び40v/w倍の98 v/v%含水アセトニトリルをガラス容器に加えた。混合物をテフロンコートされたマグネチックスターラーバーで攪拌し、アルミニウムブロックで80℃に加熱した。溶解後、溶液を1時間当たり30℃の速度で5℃まで冷却した。この結晶形Xのスラリーに、10 w/w%の結晶形Iの結晶を5℃で種晶として添加し、次いで、所定の温度にコントロールした。固体材料のサンプルを定期的にXRPDで分析した。
【0108】
結晶形Xから結晶形Iへの転移は、周囲温度より上の温度で観察された。この転移の傾向は5℃でも観察された。低温では転移速度は非常に遅いが、98 v/v%含水アセトニトリル系中では、結晶形Iが、温度に関わらず結晶形Xより安定であると推定された。
【0109】
【表5】
【0110】
(4)97 v/v%含水アセトニトリル中の転移挙動
結晶形Xの結晶及び97 v/v%含水アセトニトリルをガラス容器に加えた。混合物をアルミニウムブロックでコントロールされた温度で、テフロンコートされたマグネチックスターラーバーで攪拌した。固体成分を定期的にサンプリングし、XRPDで分析して、結晶形を決定した。
【0111】
全ての実験において、結晶形Xから結晶形Iへの自然な転移が観察された。97 v/v%含水アセトニトリル中では、結晶形Iが、温度に関わらず結晶形Xより安定であると推定された。
【0112】
【表6】
【0113】
実施例8
種々の溶媒中でのインターコンバージョン試験
結晶形I及びIIの結晶(25mg/25mg)の混合物を、表7に示す各有機溶媒/水0.5 mL中で、それぞれ5、25、40及び60℃で3日間攪拌し、析出物を濾過し、次いで、結晶形をXRPDにより確認した。結果を表7に示した。
【0114】
【表7】
【0115】
実施例9
種々の温度での水分濃度と水分活性の値の関係
種々の温度(即ち、0, 5, 10, 15, 20, 25, 30, 35, 40, 45, 50, 55及び60℃)での種々の溶媒(即ち、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、アセトン、2-ブタノン、及びアセトニトリル)中の種々の水分濃度(即ち、0, 1, 2, 3, 4, 5, 6, 7, 8, 9, 10及び20 v/v%)の水分活性の値をそれぞれ、Cosmo-RS法に基づいてCOSMOTHERME version 2.1を使用して計算した。
【0116】
水分濃度(v/v%)の値を、種々の温度(即ち、0, 5, 10, 15, 20, 25, 30及び35℃)での結晶形Iと結晶形IIとの間の境界線(方程式(6))に基づいて計算し、種々の温度での水分濃度に対して水分活性の値をプロットするための三次方程式の回帰曲線を用いて水分活性の値に変換した(
図3)。表8は、状態図の境界線上の水分含量(v/v%)と水分活性の値の関係を示す。水分活性の値及び対応する温度は方程式(7)により、よい相関性をもって近似された(相関係数:0.997)。
【0117】
【数5】
【0118】
【表8】
【0119】
インターコンバージョン試験の結果をプロットし、
図4に示すように、結晶形I及び結晶形IIの状態図に方程式(7)による境界線を描いた。境界線は、実験した全ての溶媒系において結晶形I及び結晶形IIをほぼ分離した。
【0120】
実施例10
結晶形Iの結晶化
(1) 1-プロパノール
結晶形I(100.1 mg)を1 mLの1-プロパノール/水 (9:1(v/v))に70℃で溶解した。混合物を徐々に60
℃まで20分間で冷却し、1 mLの1-プロパノールをここに加えた。混合物を攪拌しながら、再度、徐々に5℃まで110分間で冷却した。次いで、3 mLの1-プロパノールをここに加え、混合物を5℃で終夜攪拌した。結晶を真空濾過により単離し、室温で風乾して、結晶形I(11.1 mg)を得た。
【0121】
(2) 2-プロパノール
結晶形I(100.1 mg)を1 mLの2-プロパノール/水 (9:1(v/v))に90℃で溶解した。混合物を徐々に25
℃まで130分間で冷却し、1 mLの2-プロパノールをここに加えた。混合物を再度、徐々に5℃まで冷却し、3 mLの2-プロパノールを加えた。混合物を5℃で4日間攪拌した。結晶を真空濾過により分離し、室温で風乾して、結晶形I(48.9 mg)を得た。
【0122】
(3) 1-ブタノール
結晶形I(100.0 mg)を1 mLの1-ブタノール/水 (9:1(v/v))に60℃で溶解し、1 mLの1-ブタノールをここに加えた。混合物を徐々に25℃まで70分間で冷却し、3 mLの1-ブタノールをここに加えた。混合物を再度、徐々に5℃まで冷却し、5℃で終夜攪拌した。結晶を真空濾過により分離し、室温で風乾して、結晶形I(29.0 mg)を得た。
【0123】
(4) 2-ブタノール
結晶形I(100.0 mg)を1 mLの2-ブタノール/水 (9:1(v/v))に90℃で溶解した。混合物を徐々に60
℃まで60分間で冷却し、1 mLの2-ブタノールをここに加えた。混合物を徐々に25℃まで70分間で冷却し、3 mLの2-ブタノールをここに加えた。混合物を再度、徐々に5℃まで冷却し、5℃で終夜攪拌した。結晶を真空濾過により分離し、室温で風乾して、結晶形I(52.1 mg)を得た。
【0124】
(5) アセトン
結晶形I(100.2 mg)を1.3 mLのアセトン/水(9:1(v/v))に還流下で溶解した。混合物を徐々に25℃まで70分間で冷却し、1.3 mLのアセトンをここに加えた。混合物を徐々に5℃まで冷却し、3.9 mLのアセトンをここに加えた。混合物を5℃で4日間攪拌した。結晶を真空濾過により分離し、室温で風乾して、結晶形I(74.5 mg)を得た。
【0125】
(6) 2-ブタノン
結晶形I(100.3 mg)を1 mLの2-ブタノン/水 (9:1(v/v))に60℃で溶解した。4 mLの2-ブタノンをここに加えた。混合物を徐々に25℃まで70分間で冷却し、混合物を室温で4日間攪拌した。結晶を真空濾過により分離し、室温で風乾して、結晶形I(70.0 mg)を得た。
【0126】
実施例11
結晶形IIの結晶化
(1) 1-プロパノール
結晶形I(100.0 mg)を1 mLの1-プロパノール/水 (9:1(v/v))に60℃で溶解した。混合物を徐々に5℃まで110分間で冷却し、5℃で4日間攪拌した。結晶を真空濾過により分離し、室温で風乾して、結晶形II(11.0 mg)を得た。
【0127】
(2) 2-プロパノール
結晶形I(100.3 mg)を1 mLの2-プロパノール/水 (9:1(v/v))に90℃で溶解した。混合物を徐々に5
℃まで170分間で冷却し、5℃で5日間攪拌した。結晶を真空濾過により分離し、室温で風乾して、結晶形II(40.2mg)を得た。
【0128】
(3) 1-ブタノール
結晶形I(100.1 mg)を1 mLの1-ブタノール/水 (9:1(v/v))に70℃で溶解した。混合物を徐々に5
℃まで130分間で冷却し、1 mLの1-ブタノールをここに加えた。混合物を5℃で4日間攪拌した。結晶を真空濾過により分離し、室温で風乾して、結晶形II(31.6 mg)を得た。
【0129】
(4) 2-ブタノール
結晶形I(100.2 mg)を1 mLの2-ブタノール/水 (9:1(v/v))に90℃で溶解した。混合物を徐々に5℃まで170分間で冷却し、1 mLの2-ブタノールをここに加えた。混合物を5℃で4日間攪拌した。結晶を真空濾過により分離し、室温で風乾して、結晶形II(54.7 mg)を得た。
【0130】
(5) アセトン
結晶形I(100.3 mg)を1.2 mLのアセトン/水(9:1(v/v))に還流下で溶解した。混合物を徐々に5℃まで110分間で冷却し、1 mLのアセトンをここに加えた。混合物を5℃で4日間攪拌した。結晶を真空濾過により分離し、室温で風乾して、結晶形II(36.4 mg)を得た。
【0131】
(6) 2-ブタノン
結晶形I(100.2 mg)を1 mLの2-ブタノン/水 (9:1(v/v))に60℃で溶解した。混合物を徐々に5℃まで110分間で冷却した。次に、4 mLの2-ブタノンをここに加えた。混合物を5℃で4日間攪拌した。結晶を真空濾過により分離し、室温で風乾して、結晶形II(76.7 mg)を得た。
【0132】
実施例12
結晶形I及びIIの
物理的(
physical)データ
(1)粉末X線回折(XRD)
回折パターンは、Cu Kα照射によりRigaku RINT-TTRIII回折計を使用して、室内の温度及び湿度で測定した。回折角2θは、2°/分の速度で0.02°のステップサイズで、3から40まで走査した。この分析の結果を
図5及び6に示し、これは内部シリコン標準に対して測定したものと同一であった。
【0133】
(2)溶解度
過剰量のサンプル、結晶形I及びIIを水に懸濁し、それぞれ25℃又は37℃で20分間振とうすることにより平衡化した。溶解した化合物の量は、Waters alliance HPLC system 2695を使用し、UV 210nmで検出して測定した。この分析の結果を表9に示す。
【0134】
【表9】
【0135】
(3)吸湿性
結晶形I及びIIの吸湿性は、Surface measurement systems社、DVS-1を使用して、25℃で10 %RHから90 %RHの間で調査した。結晶形Iは吸湿性がなかった。一方、結晶形IIは吸湿性があり、およそ4%の水分値(water value)が、約1 molのチャネル水(channel water)の吸収及び脱着により、10 %RHから90 %RHの間で増減した。
【0136】
参照による引用
本明細書で引用する全ての特許、公開特許出願及び他の参考文献は、その全体が参照により本明細書に明示的に含まれる。
【0137】
均等物
当業者は、本明細書に記載した特定の手順に対する多数の均等物を、ルーチン実験に過ぎないものを用いて認識する、又は確認することができるであろう。このような均等物は、本発明の範囲内であると考えられ、以下の特許請求の範囲に包含される。さらに、本明細書で与えられる数値又はアルファベットでの範囲はいずれも、それらの範囲の上限値及び下限値の双方を包含するものである。また、リスト又はグループ分けはいずれも、少なくとも一つの実施態様において、独立した実施態様のリストの略式の又は便宜的な方式を示すものである。したがって、リストの各メンバーは、別々の実施態様と考えるべきである。