(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
クリヤ塗料であって、シリル基及びシラノール基の少なくとも一方を含有するアクリル樹脂と、マイカの表面に酸化スズ、酸化チタン、酸化ケイ素から選ばれる1種類以上の金属酸化物を被覆してなる金属酸化物被覆マイカとを含有し、前記金属酸化物被覆マイカをPVC(顔料容積濃度)において0.4%〜1.5%含有してなることを特徴とする赤外線反射塗料から得られる太陽電池モジュール用赤外線反射膜。
乾燥膜厚15μm〜60μmのクリヤ塗膜であって、780nm〜2500nmにおける平均赤外線反射率が7.5%以上、かつ、380nm〜780nmにおける平均可視光線透過率が60%以上であり、塗膜表面の水接触角が60°以下であることを特徴とする請求項1に記載の太陽電池モジュール用赤外線反射膜。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記特許文献1に開示された組成物を含め、従来の赤外線反射機能を有する組成物はいわゆるエナメル塗料であり、赤外線については反射するが、可視光線も透過しないため、太陽電池モジュールに塗装することは不可である。太陽電池表面に塗装するためには、発電に必要な可視光線については可能な限り透過であることが望ましく、その上で選択的に赤外線を反射する組成物による塗膜を形成する必要がある。また、前記性能を有しながら、表面に埃が溜まった場合においても、水を接触させることで埃を除去できる自己洗浄能力に優れた塗膜が求められている。
したがって、本発明の目的は、可視光線の透過率が高く、かつ赤外線を反射し、自己洗浄能力が高い赤外線反射膜、及び該赤外線反射膜を形成するための赤外線反射塗料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで本発明者は鋭意研究の結果、特定膜厚のクリヤ塗膜であって、赤外線領域における赤外線反射率が平均7.5%以上、かつ可視光線領域における透過率が60%以上であり、塗膜表面の水接触角が60°以下である赤外線反射膜と、特定樹脂、特定マイカを含有する赤外線反射塗料、この塗料が塗布された赤外線反射体を発明したものである。
しかして、本発明の要旨は以下に存する。
<1>
クリヤ塗料であって、シリル基及びシラノール基の少なくとも一方を含有するアクリル樹脂と、マイカの表面に酸化スズ、酸化チタン、酸化ケイ素から選ばれる1種類以上の金属酸化物を被覆してなる金属酸化物被覆マイカとを含有し、前記金属酸化物被覆マイカをPVC(顔料容積濃度)において0.4%〜1.5%含有してなることを特徴とする赤外線反射塗料から得られる太陽電池モジュール用赤外線反射膜。
<2>
乾燥膜厚15μm〜60μmのクリヤ塗膜であって、780nm〜2500nmにおける平均赤外線反射率が7.5%以上、かつ、380nm〜780nmにおける平均可視光線透過率が60%以上であり、塗膜表面の水接触角が60°以下であることを特徴とする<1>に記載の太陽電池モジュール用赤外線反射膜。
<3>
太陽電池モジュールと、該太陽電池モジュール表面に<1>又は<2>に記載の太陽電池モジュール用赤外線反射膜とを有する赤外線反射体。
なお、本発明は上記<1>〜<3>に関するものであるが、参考のためその他の事項(例えば下記[1]〜[8]に記載の事項など)についても記載した。
【0008】
[1]
クリヤ塗料であって、シリル基及びシラノール基の少なくとも一方を含有するアクリル樹脂と、マイカの表面に酸化スズ、酸化チタン、酸化ケイ素から選ばれる1種類以上の金属酸化物を被覆してなる金属酸化物被覆マイカとを含有し、前記金属酸化物被覆マイカをPVC(顔料容積濃度)において0.4%〜1.5%含有してなることを特徴とする赤外線反射塗料。
[2]
[1]に記載の赤外線反射塗料から得られる赤外線反射膜。
[3]
乾燥膜厚15μm〜60μmのクリヤ塗膜であって、780nm〜2500nmにおける平均赤外線反射率が7.5%以上、かつ、380nm〜780nmにおける平均可視光線透過率が60%以上であり、塗膜表面の水接触角が60°以下であることを特徴とする[2]に記載の赤外線反射膜。
[4]
太陽電池モジュールと、該太陽電池モジュール表面に[2]又は[3]に記載の赤外線反射膜とを有する赤外線反射体。
[5]
ガラスと、該ガラス表面に[2]又は[3]に記載の赤外線反射膜とを有することを特徴とする赤外線反射体。
[6]
サイディングボードと、該サイディングボード表面に[2]又は[3]に記載の赤外線反射膜とを有する赤外線反射体。
[7]
打ち放しコンクリートと、該打ち放しコンクリート表面に[2]又は[3]に記載の赤外線反射膜とを有する赤外線反射体。
[8]
乾燥膜厚15μm〜60μmのクリヤ塗膜であって、780nm〜2500nmにおける平均赤外線反射率が7.5%以上、かつ、380nm〜780nmにおける平均可視光線透過率が60%以上であり、塗膜表面の水接触角が60°以下であることを特徴とする赤外線反射膜。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、可視光線の透過率が高く、かつ赤外線を反射し、自己洗浄能力が高い赤外線反射膜、及び該赤外線反射膜を形成するための赤外線反射塗料を提供することができる。また、該赤外線反射塗料を種々の被塗物(例えば、太陽電池モジュール、ガラス、サイディングボード、打ち放しコンクリート等)にプライマーレスで塗布することができ、該赤外線反射膜を該被塗物の表面に設けることで、種々の用途に用いられる赤外線反射体を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明について詳細に説明する。
【0012】
[赤外線反射膜]
本発明の赤外線反射膜は、乾燥膜厚15μm〜60μmのクリヤ塗膜であって、780nm〜2500nmにおける平均赤外線反射率が7.5%以上、かつ、380nm〜780nmにおける平均可視光線透過率が60%以上であり、塗膜表面の水接触角が60°以下である。
本発明の赤外線反射膜は、乾燥膜厚において15μm〜60μmの膜厚を有する。
本発明の赤外線反射膜は、所謂赤外線とよばれる領域のうち、780nm〜2500nmにおける平均赤外線反射率が7.5%以上であることが必要である。より好ましくは平均赤外線反射率が10%以上であるのが適当である。平均赤外線反射率が7.5%未満であると、温度上昇を防止する効果が低い可能性が生じる。
前記平均赤外線反射率は、以下のようにして測定される。
(平均赤外線反射率の測定方法)
平均赤外線反射率は、積分球方式で求める。具体的には、測定用試料(ガラス板上に膜厚30μmの赤外線反射膜を有するサンプル)を用意し、紫外・可視・近赤外分光光度計(Solid Spec−3700:島津製作所製)を使用して、780nm〜2500nmの赤外線波長域の反射率を5nmごとに測定する(入射角8°)。780nm〜2500nmの範囲の平均値を求め、その数値を780nm〜2500nmの範囲における平均赤外線反射率とする。なお、ガラス板としては、JIS R 3202準拠品であるTP技研株式会社製のフロートガラス板(サイズ 200mm×100mm×2mm)を使用した。上記ガラス板の平均赤外線反射率は6.1%である。
【0013】
本発明の赤外線反射膜は、「クリヤ塗膜」である。本発明において、「クリヤ塗膜」とは、透明又は半透明な膜を含み、具体的には、可視光線と呼ばれる領域のうち、380nm〜780nmにおける平均可視光線透過率が60%以上であることが必要である。より好ましくは、平均可視光透過率が70%以上であり、特に好ましくは80%以上である。平均可視光線透過率が60%未満であると、該塗膜を太陽電池モジュール表面に形成した場合、太陽電池モジュールによる発電性能が低下してしまう虞れがある。
また、本発明の赤外線反射膜はクリヤ塗膜であるため、サイディングボード、打ち放しコンクリート等の基材に塗設することで、基材(下地)の風合いを残したまま、遮熱性や防汚性を付与することができる。
前記平均可視光線透過率は、以下のようにして測定される。
(平均可視光線透過率の測定方法)
平均可視光線透過率は、積分球方式で測定する。具体的には、測定用試料(ガラス板上に膜厚30μmの赤外線反射膜を有するサンプル)を用意し、紫外・可視・近赤外分光光度計(Solid Spec−3700:島津製作所製)を使用して、380nm〜780nmの可視光線波長域の透過率を5nmごとに測定する(入射角0°)。380nm〜780nmの範囲の平均値を求め、その数値を380nm〜780nmの範囲における平均可視光線透過率とする。なお、ガラス板としては、JIS R 3202準拠品であるTP技研株式会社製のフロートガラス板(サイズ 200mm×100mm×2mm)を使用した。上記ガラス板の平均可視光線透過率は90.2%である。
【0014】
本発明の赤外線反射膜は、塗膜表面の水接触角が60°以下であることが必要である。より好ましくは塗膜表面の水接触角が40°以下であることが適当である。塗膜表面の水接触角が60°を超えてしまうと、塗膜表面に降雨等で水が接触した場合に、塗膜表面と水との濡れが悪くなり、自己洗浄能力が低下してしまう虞れがある。
なお、後述する本発明の赤外線反射塗料から得られる赤外線反射膜は、塗設直後では、赤外線反射塗料の成分であるシリル基及びシラノール基の少なくとも一方を含有するアクリル樹脂のシリル基及びシラノール基の加水分解が進まず、水接触角が60°より大きくなることがあるが、時間経過とともに加水分解が進み、水接触角が60°以下となれば、本発明の赤外線反射膜に含まれるものとする。すなわち、本発明の赤外線反射膜は、塗設直後から一定期間(例えば2ヶ月間)経過後に測定した塗膜表面の水接触角が60°以下である。
前記水滴接触角は、以下のようにして測定される。
(水滴接触角の測定方法)
測定用試料(ガラス板上に膜厚30μmの赤外線反射膜を有するサンプル)を用意し、接触角計(FACE CA−DT型:協和界面科学製)を使用して、水滴を測定用試料の塗膜表面に触れさせ、液滴法により接触角を求める。
【0015】
本発明の赤外線反射膜は、後述する本発明の赤外線反射塗料により得られる。
【0016】
[赤外線反射塗料]
本発明の赤外線反射塗料(「塗料」又は「クリヤ塗料」ともいう)は、クリヤ塗料であって、シリル基及びシラノール基の少なくとも一方を含有するアクリル樹脂と、マイカの表面に酸化スズ、酸化チタン、酸化ケイ素から選ばれる1種類以上の金属酸化物を被覆してなる金属酸化物被覆マイカとを含有し、前記金属酸化物被覆マイカをPVC(顔料容積濃度)において0.4%〜1.5%含有してなる。
本発明の赤外線反射塗料における金属酸化物被覆マイカは、赤外線反射機能を有する。
本発明の塗料は一般に言われるクリヤ塗料であり、着色顔料等の顔料は配合しないことが望ましい。赤外線の波長域を選択的に反射させるための配合物が赤外線反射機能を有するマイカである。元々、マイカの表面に酸化スズ、酸化チタン、酸化ケイ素から選ばれる1種類以上の金属酸化物を被覆してなる金属酸化物被覆マイカは、表面に被覆された金属酸化物と、内部のマイカとの光の屈折率の違いにより、入射した光が干渉効果を生じ、これが真珠色と呼ばれる美しい発色をもたらす。そのため、金属酸化物被覆マイカなどの光の干渉を利用した顔料は、パール顔料と呼ばれ、化粧分野、あるいは印刷分野などに適用されている。
【0017】
本発明者は、上記の金属酸化物被覆マイカの有する極めて特徴的な光学的性質に着目した。
金属酸化物被覆マイカを塗料中に特定量配合することで、可視光線については透過し、赤外線については反射するという塗膜を形成することが可能となる。
【0018】
クリヤ塗膜を形成するにあたり、金属酸化物被覆マイカを塗料中にPVC(顔料容積濃度)において0.4%〜1.5%含有させる必要がある。金属酸化物被覆マイカの含有率は、好ましくは塗料中にPVCにおいて0.5%〜1.0%であり、より好ましくは、0.7%〜1.0%である。
クリヤ塗料中、金属酸化物被覆マイカがPVC0.4%未満の含有率であると、赤外線波長域の反射が十分になされず、可視光線は十分に透過するものの、温度上昇を防止できない虞れが生じる。
一方、PVC1.5%を超える含有率の場合、可視光線の透過率が低下し、本発明のクリヤ塗料を太陽電池モジュール表面に塗布し、クリヤ塗膜を形成した場合には、発電性能が低下してしまう虞れが生じる。
PVCとは、Pigment Volume Concentrationの略であり、本発明においては、赤外線反射塗料の全固形分の体積中に占める金属酸化物被覆マイカの体積の割合(体積%)となる。
【0019】
金属酸化物被覆マイカの平均粒子径は5〜60μmであることが好ましい。
金属酸化物被覆マイカにおける金属酸化物(好ましくは酸化チタン)による被覆率は40〜50%であることが好ましい。
ここで、被覆率とは、マイカに対する金属酸化物の質量比率を表す。
【0020】
本発明の塗料は、クリヤ塗料である。本発明の塗料中に含有する樹脂として使用できるのは、被塗装物に対して親和性を発現させるために、シリル基及びシラノール基の少なくとも一方を含有するアクリル樹脂である。
シリル基及びシラノール基の少なくとも一方を含有するアクリル樹脂の数平均分子量としては、好ましくは10万〜100万である。
シリル基及びシラノール基の少なくとも一方を含有するアクリル樹脂において、シリル基及びシラノール基は、アクリル樹脂の全固形分に対して、好ましくは10〜60質量%含有し、より好ましくは20〜40質量%含有する。
【0021】
本発明の塗料が塗布される被塗物がガラス、コンクリートといった無機物である場合には、シリル基及びシラノール基の少なくとも一方を含むことにより、無機物表面と形成される塗膜との親和性が上がり、このため塗装する際にはプライマーが不要となる。またシリル基及びシラノール基が加水分解により水酸基に変わることで塗膜表面の水接触角が60°以下に低下し、降雨による自己洗浄能力が発現する。なお、前述のとおり、塗装直後ではシリル基及びシラノール基の加水分解が進まず、水接触角が60°より大きくなることがあるが、時間経過(例えば2ヶ月後)とともに加水分解が進み、水接触角が60°以下となれば降雨による自己洗浄能力が発現する。
塗装する際にプライマーを塗布しなくては密着しない塗料であると、プライマーに使用された樹脂の種類によって、黄変などの経時劣化が発生する可能性がある。また塗装工程の増加にも繋がる。
【0022】
本発明のクリヤ塗料には、硬化促進剤、触媒、消泡剤、造膜助剤、光安定剤、表面調整剤、水、溶剤等を適宜配合することができる。
【0023】
本発明のクリヤ塗料は、乾燥膜厚において15μm〜60μm、好ましくは25μm〜35μmの厚さの塗膜を形成することが望ましい。15μm未満の厚さであると、赤外線反射が不十分となる虞れがあり、60μmを超えた厚さであると、可視光線の透過率が低下して、太陽電池モジュールの発電性能が低下する虞れがある。
赤外線反射膜の膜厚によって、本発明のクリヤ塗料における金属酸化物被覆マイカの含有量を適宜調整することが好ましく、具体的には、厚膜の場合は、本発明のクリヤ塗料における金属酸化物被覆マイカの含有量を少なく調整し、薄膜の場合は、本発明のクリヤ塗料における金属酸化物被覆マイカの含有量を多く調整することが好ましい。
【0024】
形成された塗膜表面は、極めて耐候性に優れるので、長期間の塗膜性能の維持が可能である。
また、形成された塗膜表面は、親水性が高いため、表面に埃等が溜まった場合においても、雨水が均一に表面に広がって埃を流しやすく、自己洗浄性を持っている。これは、太陽電池モジュールの発電性能を維持させるために極めて有効に働く。
【0025】
本発明の塗料は、太陽電池モジュールの他、サイディングボード、打ち放しコンクリート、ガラスにもプライマーレスで塗装が可能である。
【0026】
本発明のクリヤ塗料を窓ガラスに塗布すると、窓ガラスの透明性を維持したまま、その赤外線反射性能により室内の温度上昇緩和に有効である。窓ガラスに塗る場合、室内側でも室外側でも施工が可能である。
市場に窓ガラスに塗布するクリヤ塗料があるが、これらは赤外線吸収顔料を含有するものであり、窓ガラスの熱割れ発生の問題があった。本発明のクリヤ塗料は赤外線反射機能を有するため、窓ガラスの熱割れがない。
なお、本発明のクリヤ塗料を窓ガラスに塗布する場合は、紫外線吸収剤を添加することで、室内の温度上昇緩和に加え、家具の日焼け防止や昆虫の寄り付き防止の機能を付加することができる。
本発明のクリヤ塗料をサイディングボードや打ち放しコンクリートに塗布すると、下地の外観・風合いを維持したまま、建物の保護と温度上昇防止が可能となる。また、高い耐候性、自己洗浄性=低汚染性を持つため、建築物の外装を長期間美麗に保持できる。
【0027】
本発明の塗料は、従来公知の混合、分散方法によって製造が可能である。ディゾルバー、アトライター等の混合機が使用できる。
【0028】
本発明の塗料は、エアスプレー、エアレススプレー、ローラー塗装、ロールコーター、カーテンフローコーター等の塗装機が使用できる。塗膜としてできるだけ均一な塗膜厚さにより仕上がることが必要となるため、エアスプレー、エアレススプレー等のスプレー塗装法が望ましい。工場内においてライン塗装される場合には、ロールコーター、カーテンフローコーター等の塗装法も適用できる。
【0029】
本発明の塗料は常温により乾燥し塗膜形成が可能であるが、本発明の塗料を被塗物に塗装後、60℃〜90℃の温度により20〜40分加熱乾燥を行なうこともできる。
【0030】
以下に、本発明の理解を助けるために具体的な実施例を説明する。言うまでもないが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0031】
[実施例1]
シリル基及びシラノール基を含有するアクリル樹脂エマルション73質量%、造膜助剤(ジプロピレングリコールモノブチルエーテル)6質量%、光安定剤(ヒンダードアミン系)0.3質量%、消泡剤(有機変性ポリシロキサン系)0.1質量%、酸化チタン被覆マイカPVC(顔料容積濃度)0.7%からなる塗料を、水により希釈して100質量%とし赤外線反射塗料1を得た。
【0032】
[実施例2]
シリル基及びシラノール基を含有するアクリル樹脂エマルション73質量%、造膜助剤(ジプロピレングリコールモノブチルエーテル)6質量%、光安定剤(ヒンダードアミン系)0.3質量%、消泡剤(有機変性ポリシロキサン系)0.1質量%、酸化チタン被覆マイカPVC(顔料容積濃度)1.0%からなる塗料を、水により希釈して100質量%とし赤外線反射塗料2を得た。
【0033】
[試験方法1]
本発明の赤外線反射塗料1を、結晶シリコン太陽電池モジュール表面(ガラス)にエアスプレー塗装機により塗布し、常温にて12時間乾燥することにより、平均乾燥膜厚30μmのクリヤ塗膜を得た。この太陽電池モジュールを太陽電池モジュールA(実施例1)とする。
対照試験として、太陽電池モジュールAに用いた結晶シリコン太陽電池モジュールと同一発電効率、同一面積を有し、表面には本発明の赤外線反射塗料の塗装を行わない太陽電池モジュールを用意し、この太陽電池モジュールを太陽電池モジュールB(比較例1)とする。
太陽電池モジュールA、及びBを、南側に障害物が無い暴露台に、各8枚ずつ、30°傾斜させて設置し、晴天の日の13時5分〜14時35分の1時間30分の間に、両太陽電池モジュールが発電した電力、及び両太陽電池モジュールの表面温度を測定した。
【0034】
[試験方法2]
本発明の赤外線反射塗料2をサイディングボードにエアスプレー塗装により塗布し、常温にて12時間乾燥することにより、平均乾燥膜厚30μmのクリヤ塗膜を得た。このサイディングボードをサイディングボードA(実施例2)とする。
対照試験として、同一面積で表面には塗装を行わないサイディングボードを用意し、このサイディングボードをサイディングボードB(比較例2)とする。
サイディングボードA、及びBをレフランプ下20cmに水平に設置し、室温25℃の条件下でサイディングボード表面より100Wのレフランプを照射し、両サイディングボードの裏面中央の温度を測定した。
また、サイディングボードA、及びBの外観を目視で観察し、下地の風合いを評価した。
【0035】
[結果1]
試験方法1による両太陽電池モジュールが発電した電力の結果を、
図1に示す。グラフの縦軸には太陽電池モジュールA及びBにより発電された電力(単位:kw)を、横軸には測定時刻を示した。
【0036】
図1によれば、本発明のクリヤ塗料によるクリヤ塗膜を形成したモジュールA(実施例1)からの発電出力は、塗膜を有さないモジュールB(比較例1)と比較して、測定時間帯のほぼ全域にわたって高い出力を実現しており、13時50分時点においては、太陽電池モジュール1枚あたり、10W(
図1のaで示した差において、(570W−490W)/8=10W)、14時12分時点においては16.5W(
図1のbで示した差において、(570W−440W)/8=16.5W)、14時26分時点においては21.3W(
図1のcで示した差において、(520W−350W)/8=21.3W)の出力アップしていることが明らかである。
【0037】
[結果2]
試験方法1による両太陽電池モジュールの表面温度の結果を、
図2に示す。グラフの縦軸には太陽電池モジュールA及びBの表面温度(単位:℃)を、横軸には測定時刻を示した。
【0038】
図2によれば、本発明のクリヤ塗料によるクリヤ塗膜を形成したモジュールA(実施例1)の表面温度は、塗膜を有さないモジュールB(比較例1)と比較して、測定温度帯のほぼ全域にわたって低い温度を示しており、13時50分時点においては6.4℃(
図2のdで示した差において、49.4℃−43.0℃=6.4℃)、14時12分時点においては6.1℃(
図2のeで示した差において、48.6℃−42.5℃=6.1℃)、14時26分時点においては5.4℃(
図2のfで示した差において、42.7℃−37.3℃=5.4℃)の温度低下が確認された。
[結果3]
試験方法2により、本発明のクリヤ塗料によるクリヤ塗膜を形成したサイディングボードA(実施例2)の裏面温度は、クリヤ塗膜を有さないサイディングボードB(比較例2)と比較して、5.3℃の低下を示した。
また、クリヤ塗膜を有さないサイディングボードB(比較例2)に対して、本発明のクリヤ塗料によるクリヤ塗膜を形成したサイディングボードA(実施例2)は、外観上の変化がほとんど見られず、下地の風合いが良好な状態で維持されていた。
【0039】
実施例1及び2、比較例1及び2の結果を下記表1にまとめて示す。実施例1及び2における塗膜の平均赤外線反射率、平均可視光線透過率、水滴接触角は後述する方法で評価したものである。
【0040】
【表1】
【0041】
[実施例3及び4、比較例3及び4]
実施例1の赤外線反射塗料1において、酸化チタン被覆マイカのPVCを下記表2に示したように変更した以外は同様にして、実施例3及び4、比較例3及び4の塗料をそれぞれ調製した。
【0042】
[塗膜の性能評価]
実施例1〜4、比較例3及び4の塗料から得られる塗膜について、以下のようにして平均赤外線反射率、平均可視光線透過率、水滴接触角を測定した。
【0043】
(平均赤外線反射率の測定方法)
ガラス板上に、乾燥膜厚30μmとなるように、各塗料を塗布して塗膜を形成し、測定用試料とした。紫外・可視・近赤外分光光度計(Solid Spec−3700:島津製作所製)を使用して、780nm〜2500nmの赤外線波長域の反射率を5nmごとに測定した(入射角8°)。780nm〜2500nmの範囲の平均値を求め、その数値を780nm〜2500nmの範囲における平均赤外線反射率とした。なお、ガラス板としては、JIS R 3202準拠品であるTP技研株式会社製のフロートガラス板(サイズ 200mm×100mm×2mm)を使用した。上記ガラス板の平均赤外線反射率は6.1%であった。
【0044】
(平均可視光線透過率の測定方法)
ガラス板上に、乾燥膜厚30μmとなるように、各塗料を塗布して塗膜を形成し、測定用試料とした。紫外・可視・近赤外分光光度計(Solid Spec−3700:島津製作所製)を使用して、380nm〜780nmの可視光線波長域の透過率を5nmごとに測定した(入射角0°)。380nm〜780nmの範囲の平均値を求め、その数値を380nm〜780nmの範囲における平均可視光線透過率とした。なお、ガラス板としては、JIS R 3202準拠品であるTP技研株式会社製のフロートガラス板(サイズ 200mm×100mm×2mm)を使用した。上記ガラス板の平均可視光線透過率は90.2%であった。
【0045】
(水滴接触角の測定方法)
ガラス板上に、乾燥膜厚30μmとなるように、各塗料を塗布して塗膜を形成し、23℃、相対湿度65%で2ヶ月間保存し、測定用試料とした。接触角計(FACE CA−DT型:協和界面科学製)を使用して、水滴を測定用試料の塗膜表面に触れさせ、液滴法により接触角を求めた。
【0046】
結果を下記表2に示す。
【0047】
【表2】