(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
半導体装置には、入出力パッドに印加されるESD(electrostatic discharge)サージに対して内部回路を保護するために静電保護回路が搭載される。静電保護回路の公知の回路トポロジーの一つが、サイリスタやバイポーラトランジスタのような能動素子を使用する回路トポロジーである。能動素子を使用する静電保護回路は、サージが入力されたときに能動動作を行うため放電能力が高いという利点があり、広く使用されている(例えば、非特許文献1、2参照)。
【0003】
能動素子を用いた静電保護回路には、通常動作時のリーク電流が小さく、またESDサージ印加時のトリガ電圧が低いことが望まれる。このような要求を満たすための静電保護回路の構成が、非特許文献3及び特許文献1に開示されている。
【0004】
図1は、非特許文献3に開示された静電保護回路の構成を示す回路図である(なお、特許文献1にも同じ構成の静電保護回路が開示されている)。
図1の静電保護回路は、VDDパッド101と、信号パッド102と、VSSパッド103と、電源線104と、信号線105と、接地線106と、サイリスタ107と、ESD保護用のダイオードD1と、PMOSトランジスタP1とを備えている。
【0005】
図1の静電保護回路は、PMOSトランジスタP1がサイリスタ107にトリガ電流を供給するトリガ素子として機能する。
図1の静電保護回路は、VDDパッド101、信号パッド102、VSSパッド103に印加され得る様々なモードのESDサージに対応している。しかしながら、以下では、本発明の主題に関連する信号パッド102とVSSパッド103の間にVSSパッド103の電位に対する信号パッド102の電位が正であるようなESDサージが印加された場合の動作についてのみ説明する。
【0006】
信号パッド102とVSSパッド103の間にVSSパッド103の電位に対する信号パッド102の電位が正であるようなESDサージが印加される場合、電源線104はフローティングになる。電源線104と接地線106の間には、寄生的に又は意図的に設けられた電源容量Cxが存在するから、その電源容量Cxが充電されるまでの間、電源線104は、接地線106と実質的に同一電位に固定される。信号パッド102に正のESDサージが加わり、同一電位である信号線105の電位が上昇すると、PMOSトランジスタP1のソース電位がゲート電位(電源線104と同一電位であり、かつ接地線106とほぼ同一電位になっている)よりも高くなり、PMOSトランジスタP1のゲート−ソース間電圧が閾値電圧を超える。PMOSトランジスタP1のゲート−ソース間電圧が閾値電圧を超えると、PMOSトランジスタP1が動作してサイリスタ107にトリガ電流を供給し、これにより、サイリスタ107が動作してESDサージが放電される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
図1の静電保護回路の構成の一つの問題は、保護されるべき内部回路その他の付属回路/付属素子の構成によっては、PMOSトランジスタP1が低電圧動作しにくくなる点である。例えば、
図2Aに示されているように、信号線105に接続される内部回路として出力回路が使用され、当該出力回路のプルアップトランジスタとしてPMOSトランジスタP11が使用されている場合を考える。この場合、信号パッド102の電位が正であるようなESDサージが印加されると、PMOSトランジスタP11のドレインのP型拡散層とバックゲートのNウェルによって信号線105と電源線104の間に形成される寄生ダイオードD11が順方向にバイアスされる(
図2B参照)。このため、寄生ダイオードD11を通過する充電経路が形成され、電源線104が速やかに充電されてしまう。電源線104が充電されると、電源線104の電位が信号線105の電位に追随して上昇してしまい、PMOSトランジスタP1のゲート−ソース間電圧が増大しなくなってしまう。この結果、
図2Aの回路構成では、信号線105と電源線104の間の電圧が寄生ダイオードD11の順方向バイアス電圧Vf_D11の電圧、すなわち、0.6V〜1.1V程度の電圧と小さくなってしまう。
【0010】
一方で、PMOSトランジスタP1が動作するためには、PMOSトランジスタP1のソース−ゲート電圧が閾値電圧Vt_P1を超えなければならない。PMOSトランジスタP1のソース−ゲート電圧Vgsは、サイリスタ107に内蔵されるPNPトランジスタQ1のベース−エミッタ間電圧Vbeを用いて:
Vgs=Vf_D11−Vbe, ・・・(1)
と表すことができるから、PMOSトランジスタP1を動作させるためには、下記の条件が成立する必要がある:
Vf_D11−Vbe>Vt_P1. ・・・(2)
ここで、Vf_D11、Vbeは、いずれも、PN接合の順方向バイアス電圧であるから、ともに0.6V程度になる。即ち、動作条件によっては、式(2)の条件が成立しなくなり、サイリスタ107が放電動作を行わないという事態が発生しうる。仮に寄生ダイオードD11に大きな電流が流れて、式(2)の条件を満足したとしても、PMOSトランジスタP1のソース−ゲート電圧Vgsと閾値電圧Vt_P1の差が小さくなり、PMOSトランジスタP1を流れる電流、即ちトリガ電流が小さくなる場合がある。サイリスタ107に供給されるトリガ電流が小さくなると、サイリスタ107が動作せずに破壊されたり、また、内部回路108に電圧ストレスが印加されて破壊されたりする恐れがある。
【0011】
また、
図3に示されているように、信号線105と電源線104の間に静電保護ダイオードD12が設けられている場合も同様である。この場合も、信号パッド102の電位が正であるようなESDサージが印加されると、静電保護ダイオードD12が順方向にバイアスされる。このため、静電保護ダイオードD12を通過する充電経路が形成され、電源線104が速やかに充電されてしまう。電源線104が充電されると、電源線104の電位が信号線105の電位に追随して上昇してしまい、PMOSトランジスタP1のゲート−ソース間電圧が増大しなくなってしまう。これは、PMOSトランジスタP1が動作しなかったり、又はトリガ電流が減少したりするため好ましくない。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一実施形態では、半導体装置が、電源線と、接地線と、信号を伝送する信号線と、前記信号線に接続された信号パッドと、前記信号線と前記接地線との間に設けられた保護素子と、前記保護素子にトリガ電流を流すためのトリガ回路とを具備する。前記トリガ回路は、ゲート及びバックゲートが前記電源線に接続され、ソースが前記保護素子に接続されたPMOSトランジスタと、前記PMOSトランジスタを流れる第1電流に応答して前記第1電流が増幅された第2電流を生成する増幅回路部とを備えている。前記トリガ電流が、前記第2電流を含んでいる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、信号線から電源線に放電電流の一部が流入する場合にも低電圧で動作可能な静電保護回路が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(第1の実施形態)
図4は、本発明の第1の実施形態の半導体装置の構成、特に、当該半導体装置に集積化された静電保護回路の構成を示す回路図である。本実施形態では、半導体装置が、VDDパッド1と、信号パッド2と、VSSパッド3と、電源線4と、信号線5と、接地線6と、サイリスタ7と、トリガ回路8とを備えている。VDDパッド1、VSSパッド3は、それぞれ、電源線4、接地線6に接続されており、信号パッド2は、信号線5に接続されている。信号線5は、信号を伝送する線であり、信号パッド2は、その信号を入力及び/又は出力する為の外部接続パッドである。信号線5には、内部回路が接続される。
図4には、その内部回路の出力回路9のPMOSトランジスタP10が図示されている。PMOSトランジスタP10は、ゲートに供給された信号に応答して信号線5をプルアップするプルアップトランジスタであり、ドレインが信号線5に、ソース及びバックゲートが電源線4に接続されている。
【0016】
本実施形態では、静電保護回路がサイリスタ7とトリガ回路8とを備えて構成されている。サイリスタ7は、信号パッド2に正極性のESDサージが印加されたときに電荷を放電する保護素子として機能する。サイリスタ7は、アノードが信号線5に接続され、カソードが接地線6に接続されている。
図4では、サイリスタ7が、PNPトランジスタQ1とNPNトランジスタQ2と、Pウェル抵抗R
PW、Nウェル抵抗R
NWとを含んでいるとして等価的に表現されている。
【0017】
トリガ回路8は、サイリスタ7をターンオンさせるためのトリガ電流を発生する回路である。本実施形態では、トリガ回路8は、PMOSトランジスタP1と、NMOSトランジスタN1と、抵抗素子R1とを備えている。PMOSトランジスタP1は、そのソースがサイリスタ7のゲートに接続され、ドレインがノードT1に接続され、ゲートとバックゲートが電源線4に接続されている。NMOSトランジスタN1は、そのドレインがサイリスタ7のゲートに接続され、ソースとバックゲートが接地線6に接続され、ゲートがノードT1に接続されている。抵抗素子R1は、ノードT1と接地線6の間に接続される。
【0018】
以下では、本実施形態の半導体装置の動作について説明する。上述のように、電源線4と信号線5の間にPMOSトランジスタP10が接続されていると、ESDサージが信号パッド2に印加された場合に寄生ダイオードD1によって電源線4の電位が信号線5の電位と共に上昇してしまう。本実施形態の半導体装置は、このような場合でもESDサージを放電する動作が正しく行われる。
【0019】
具体的には、本実施形態では、トリガ回路8がPMOSトランジスタP1を流れる電流I1を増幅した電流がNMOSトランジスタN1を流れるように構成されており、NMOSトランジスタN1を流れる電流がトリガ電流I
triggerとして使用される。これにより、PMOSトランジスタP1のソース−ゲート電圧が小さいために電流I1が小さくても大きなトリガ電流I
triggerを発生させ、サイリスタ7を動作させることができる。詳細には、本実施形態では、トリガ回路8がNMOSトランジスタN1と抵抗素子R1とで構成された増幅回路部を備えており、この増幅回路部によってPMOSトランジスタP1を流れる電流I1が増幅される。PMOSトランジスタP1を流れる電流I1の増幅は、NMOSトランジスタN1のゲート−ソース間に接続された抵抗素子R1に電流I1を流すことによって行われる。抵抗素子R1の抵抗値を適切に調節することにより、電流I1が流れた場合のNMOSトランジスタN1のソース−ゲート電圧を充分に大きくすることができる。
【0020】
ここで、本実施形態では、PMOSトランジスタP1とNMOSトランジスタN1とが通常のMOS動作によってトリガ電流I
triggerを生成しており、寄生バイポーラ動作がトリガ電流I
triggerの生成に関与していないことに留意されたい。これは、低電圧動作を実現する為に有効である。
【0021】
以下では、本実施形態の半導体装置の動作の例を詳細に説明する。
信号パッド2にESDサージが印加されると信号線5の電位が電源線4の電位よりも高くなり、PMOSトランジスタP1のソース電位がゲート電位よりも高くなる。これにより、PMOSトランジスタP1が動作を開始して、PMOSトランジスタP1に電流I1が流れる。ただし、PMOSトランジスタP10の寄生ダイオードD1を介して電源容量Cxが速やかに充電される為、PMOSトランジスタP1の電流I1は余り大きくならない。電流I1は、サイリスタ7のトリガ電流としては不充分である。
【0022】
ここで、PMOSトランジスタP1に発生する電流I1は抵抗素子R1に流れるので、ノードT1の電位、即ち、NMOSトランジスタN1のソース−ゲート間電圧が上昇する。ここで、NMOSトランジスタN1のソース−ゲート間電圧Vgs_N1は、
Vgs_N1=I1・R1, ・・・(3)
となる。
【0023】
電流I1が流れてノードT1の電位がNMOSトランジスタN1の閾値電圧よりも高くなると、NMOSトランジスタN1が動作してトリガ電圧I
triggerが流れる。ノードT1の電位は、I1・R1であるから、抵抗素子R1の抵抗値を適切に設定することにより、電流I1が発生したときのノードT1の電位をNMOSトランジスタN1の閾値電圧よりも高くすることができ、また、トリガ電圧I
triggerの電流量を調節することができる。例えば、PMOSトランジスタP1に発生する電流I1が1mAである場合、抵抗素子R1の抵抗値を1kΩに設定すれば、NMOSトランジスタN1のソース−ゲート間電圧Vgs_N1は1V(=1mA×1kΩ)になる。このソース−ゲート間電圧Vgs_N1は、閾値電圧(例えば、0.3〜0.6V)を超えていると共に、大きなトリガ電流I
triggerを発生するのに充分な大きさである。
【0024】
加えて、本実施形態では、通常動作時も信号線5から接地線6に流れるリーク電流が小さい。サイリスタ7のアノード−ゲート間のpn接合(PNPトランジスタQ1のエミッタ−ベース接合)の電圧降下により、通常動作時には、常に、PMOSトランジスタP1のソースがバックゲート及びゲートの電位よりも低い電位に維持される。ここで、通常動作時には、PMOSトランジスタP1のバックゲート及びゲートは電源電圧レベルVDDに維持されることに留意されたい。PMOSトランジスタP1のソースがバックゲート及びゲートの電位よりも低い電位に維持されるため、PMOSトランジスタP1はオフに維持される。すると、電流I1は流れない為、NMOSトランジスタN1のソース−ゲート間電圧がゼロになり、NMOSトランジスタN1もオフに維持される。従って、本実施形態の構成によれば、通常動作時も信号線5から接地線6に流れるリーク電流を小さくすることができる。
【0025】
以上に説明されているように、本実施形態の半導体装置では、信号線5から電源線4に電流が流れる経路が存在するために電源線4と信号線5との電位差が発生しにくい場合にも、大きなトリガ電流I
triggerを発生してサイリスタ7に流すことができる。また、この場合でも、低電圧動作が可能であり、更に、通常動作時において信号線5から接地線6に流れるリーク電流を小さくすることができる。
【0026】
(第2の実施形態)
図5は、本発明の第2の実施形態における半導体装置の構成を示す回路図である。本実施形態では、第1の実施形態と異なる構成のトリガ回路8Aが使用される。詳細には、第2の実施形態では、トリガ回路8Aに、NMOSトランジスタN2と抵抗素子R2が追加される。NMOSトランジスタN2は、そのドレインがノードT2に接続されており、ゲートがノードT1に接続されており、ソースが接地線6に接続されている。抵抗素子R2は、ノードT2と電源線4の間に接続されている。NMOSトランジスタN2は、ノードT1の電位に応答してノードT2から接地線6に電流が流れる経路を提供するスイッチ素子として機能する。
【0027】
NMOSトランジスタN2と抵抗素子R2が追加されたトリガ回路8Aは、第1の実施形態のトリガ回路8よりも、更に多くのトリガ電流I
triggerを供給することができる。以下、第2の実施形態のトリガ回路8Aの動作について詳細に説明する。
【0028】
信号パッド2にESDサージが印加されると信号線5の電位が電源線4の電位よりも高くなり、PMOSトランジスタP1のソース電位がゲート電位よりも高くなる。これにより、PMOSトランジスタP1が動作を開始して、PMOSトランジスタP1に電流I1が流れる。PMOSトランジスタP1に発生する電流I1は抵抗素子R1に流れるので、ノードT1の電位が上昇する。ノードT1の電位が上昇すると、NMOSトランジスタN1のソース−ゲート間電圧が上昇してNMOSトランジスタN1がオン状態になる。以上の動作は、第1の実施形態と同様である。
【0029】
加えて、ノードT1の電位が上昇すると、NMOSトランジスタN2のソース−ゲート間電圧が上昇する。すると、NMOSトランジスタN2がオン状態になり、信号パッド2に印加されたESDサージの放電電流の一部、即ち、電流I2が、PMOSトランジスタP10の寄生ダイオードD1、及び、NMOSトランジスタN2を介して接地線6に流れる。ここで、NMOSトランジスタN2も、通常のMOS動作を行い、寄生バイポーラ動作を行わないことに留意されたい。電流I2が流れると、抵抗素子R2の電圧降下によってPMOSトランジスタP1のソース−ゲート間電圧が増大する。このとき、PMOSトランジスタP1のソース−ゲート間電圧Vgs_P1は、
Vgs_P1=Vf_D11−Vbe+I2・R2, ・・・(4)
となる。したがって、電流I2が流れると、
Vgs_P1=Vf_D11−Vbe+I2・R2>Vt_P1, ・・・(5)
が成立しやすくなる。ここで、Vt_P1とは、PMOSトランジスタP1の閾値電圧である。このように、電流I2が流れることによってPMOSトランジスタP1のソース−ゲート間電圧Vgsと閾値電圧Vt_P1の差が大きくなり、PMOSトランジスタP1を流れる電流I1を増大させることができる。この効果により、NMOSトランジスタN1のソース−ゲート間電圧Vgs_N1が更に増大され、より多くのトリガ電流I
triggerを供給することができる。これは、サイリスタ7の低電圧・高速動作を可能にする。
【0030】
設計によっては、トリガ電流I
triggerを増大させるのではなく、抵抗素子R1の抵抗値を小さくすることも可能である。第2の実施形態では、PMOSトランジスタP1を流れる電流I1が増大するので、抵抗素子R1の抵抗値を小さくしても、同等のトリガ電流I
triggerを得ることができる。抵抗素子R1の抵抗値を小さくすることは、回路面積の縮小に有効である上、通常動作時に高速パルスによってノードT1の電位が持ち上がることによってサイリスタ7が誤動作することを防ぐことができる点で好ましい。
【0031】
以下では、第1及び第2の実施形態の半導体装置の動作のシミュレーション結果について説明する。
図6は、
図1に図示されている従来の静電保護回路と、
図4及び
図5に図示されている第1及び第2の実施形態の静電保護回路において発生されるトリガ電流の大きさをシミュレーションによって算出した結果を示すグラフである。ここで、記号“A”は、従来の静電保護回路におけるトリガ電流の波形を示しており、記号“B”、“C”は、それぞれ、第1及び第2の実施形態の静電保護回路におけるトリガ電流の波形を示している。
図6から理解されるように、第1及び第2の実施形態の静電保護回路では、従来の静電保護回路と較べてトリガ電流量が大幅に増える。PMOSトランジスタP1へのバイアスを強化した第2の実施形態の静電保護回路では、第1の実施形態の静電保護回路と較べて更にトリガ電流を増大することができる。
【0032】
図7は、第2の実施形態の静電保護回路の動作の例を示すグラフであり、具体的には、(1)PMOSトランジスタP1を流れる電流I1
(2)NMOSトランジスタN2を流れる電流I2
(3)トリガ電流I
trigger(NMOSトランジスタN1を流れる電流)
の波形を示している。
【0033】
図7に図示されているように、まず、PMOSトランジスタP1に電流I1が流れる。続いて、抵抗素子R1を電流I1が流れることによってNMOSトランジスタN1のゲート−ソース間電圧が閾値電圧以上になると、NMOSトランジスタN1が(寄生バイポーラ動作ではなく)MOS動作を開始し、大きなトリガ電流I
triggerが流れる。このとき、並行してNMOSトランジスタN2のゲート−ソース間電圧が増大して電流I2が流れと、PMOSトランジスタP1のゲート−ソース間電圧が増大して電流I1が増大し、これにより、トリガ電流I
triggerが増大される。
図7の動作においては、電流I1が20mAに達する一方、トリガ電流I
triggerは50mAを超過している。
【0034】
なお、以上には、本発明の様々な実施形態が説明されているが、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではない。例えば、上述の実施形態では、信号線5にプルアップトランジスタとして使用されるPMOSトランジスタP10が接続されている場合について説明をしたが、本発明は、ESDサージの印加時に信号線5から電源線4に放電電流の一部が流れ込むような構成、特に、信号線5と電源線4との間に寄生ダイオード又はダイオード素子が接続されている構成の回路一般に好適に使用される。例えば、
図2Aに示されているように、ESD保護用のダイオードが信号線5と電源線4との間に接続されている場合にも本発明の適用は好適である。
【0035】
また、上述の実施形態では、静電保護回路の保護素子としてサイリスタ7が使用されているが、サイリスタ7の代わりに他の保護素子、例えば、PNPトランジスタが使用されてもよい。
図8は、第1の実施形態の静電保護回路についてサイリスタ7をPNPトランジスタ7Aに置換した構成を示しており、
図9は、第2の実施形態の静電保護回路についてサイリスタ7をPNPトランジスタ7Aに置換した構成を示している。
図8、
図9では、PNPトランジスタ7Aのベース抵抗成分、コレクタ抵抗成分が、それぞれ、記号“R
B”、“R
C”と記載され、純粋にバイポーラトランジスタとして機能する素子が記号“Q1”によって等価的に表されている。
図8、
図9に図示されているように、PNPトランジスタ7Aは、そのエミッタが信号線5に接続され、コレクタが接地線6に接続され、ベースがトリガ回路8又は8Aに接続される。