(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5749913
(24)【登録日】2015年5月22日
(45)【発行日】2015年7月15日
(54)【発明の名称】ディスペンサ
(51)【国際特許分類】
B67D 7/58 20100101AFI20150625BHJP
B67D 7/02 20100101ALI20150625BHJP
【FI】
B67D7/58
B67D7/02 Z
【請求項の数】11
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2010-234891(P2010-234891)
(22)【出願日】2010年10月19日
(65)【公開番号】特開2011-88674(P2011-88674A)
(43)【公開日】2011年5月6日
【審査請求日】2013年9月17日
(31)【優先権主張番号】10 2009 045 891.3
(32)【優先日】2009年10月21日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】591010170
【氏名又は名称】ヒルティ アクチエンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100134005
【弁理士】
【氏名又は名称】澤田 達也
(74)【代理人】
【識別番号】100156867
【弁理士】
【氏名又は名称】上村 欣浩
(72)【発明者】
【氏名】ライネル ストロベル シュミッド
(72)【発明者】
【氏名】クリスチアン ヘフェレ
(72)【発明者】
【氏名】ペーター オステルマイヤー
(72)【発明者】
【氏名】ハンス ペーター レダーレ
【審査官】
加藤 一彦
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭61−197068(JP,A)
【文献】
特開2009−012004(JP,A)
【文献】
特開2007−007641(JP,A)
【文献】
特開平11−009690(JP,A)
【文献】
特開平08−206568(JP,A)
【文献】
特開平11−235546(JP,A)
【文献】
特開昭61−025664(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2004/0045982(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B67D 7/58
B67D 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吐出すべき材料を収めた容器(6)のためのディスペンサを制御するための制御方法であって、
前記容器(6)のための収容スペース(12)と、
該収容スペース(12)に対してスライド可能な少なくとも1本のラック(13)と、
前記ラック(13)を移動させるためのモータ(21)と、
操作時に制御信号を生成するための操作素子(26)と、
前記モータ(21)を制御するための制御ユニット(31)と
を有し、
前記制御ユニット(31)が、前記モータ(21)を給電部(19)に接続するための出力アセンブリ(32)と、前記操作素子(26)と電気接続された別個の信号入力部(33)とを有し、
前記出力アセンブリ(32)が、前記信号入力部(33)における制御信号に対応して前記モータ(21)を前記給電部(19)に接続することを特徴とするディスペンサにおいて、
(a)制御ユニット(31)によって操作素子(26)の操作時間を検出するステップと、
(b)あらかじめ規定された操作時間を超過した場合に、あらかじめ規定された戻し距離(S1)だけラック(13)を戻すために制御ユニット(31)によってモータ(21)を自動制御するステップと
を含み、
前記ラック(13)の位置を前進移動の終了後に検出し、戻し距離(S1)を、最大限に提供された距離があらかじめ規定された戻し距離(S1)よりも小さい場合には最大限に提供された距離に対応して調整する制御方法。
【請求項2】
吐出すべき材料を収めた容器(6)のためのディスペンサを制御するための制御方法であって、
前記容器(6)のための収容スペース(12)と、
該収容スペース(12)に対してスライド可能な少なくとも1本のラック(13)と、
前記ラック(13)を移動させるためのモータ(21)と、
操作時に制御信号を生成するための操作素子(26)と、
前記モータ(21)を制御するための制御ユニット(31)と
を有し、
前記制御ユニット(31)が、前記モータ(21)を給電部(19)に接続するための出力アセンブリ(32)と、前記操作素子(26)と電気接続された別個の信号入力部(33)とを有し、
前記出力アセンブリ(32)が、前記信号入力部(33)における制御信号に対応して前記モータ(21)を前記給電部(19)に接続することを特徴とするディスペンサにおいて、
(a)制御ユニット(31)によって操作素子(26)の操作時間を検出するステップと、
(b)あらかじめ規定された操作時間を超過した場合に、あらかじめ規定された戻し距離(S1)だけラック(13)を戻すために制御ユニット(31)によってモータ(21)を自動制御するステップと
を含み、
前記ラック(13)の前進停止を検出した場合に、完全なストロークの終了前に、あらかじめ規定された戻し距離だけ前記ラック(13)を戻すために前記モータ(21)を自動的に切り換え、
完全なストロークの終了前に前記ラック(13)が停止した場合の戻し距離を、前記操作素子(26)の操作時間があらかじめ規定された時間を超過した場合よりも大きくする制御方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のディスペンサを制御するための制御方法において、
前記操作素子(26)が、付加的に速度制御器であるディスペンサを制御するための制御方法。
【請求項4】
請求項1から3までのいずれか一項に記載のディスペンサを制御するための制御方法において、
完全なストローク毎に吐出される材料の量を設定するための用量調節ユニット(41)が設けられており、該用量調節ユニット(41)が、前記制御ユニット(31)の第2信号入力部(34)を介して制御ユニット(31)に電気接続されているディスペンサを制御するための制御方法。
【請求項5】
請求項1から4までのいずれか一項に記載のディスペンサを制御するための制御方法において、
前記ラック(13)の位置を検出するための位置検出ユニット(46)が設けられており、該位置検出ユニット(46)が、前記制御ユニット(31)の第3信号入力部(35)を介して前記制御ユニット(31)に接続されているディスペンサを制御するための制御方法。
【請求項6】
請求項1から5までのいずれか一項に記載のディスペンサを制御するための制御方法において、
表示ユニット(51)が設けられており、該表示ユニット(51)が、前記制御ユニット(31)に電気接続されており、完全なストロークが実施された後に使用者により知覚可能な信号を生成するディスペンサを制御するための制御方法。
【請求項7】
請求項6に記載のディスペンサを制御するための制御方法において、
前記表示ユニット(51)が音響信号を生成するディスペンサを制御するための制御方法。
【請求項8】
請求項1から7までのいずれか一項に記載のディスペンサを制御するための制御方法において、
前記制御ユニット(31)の前に、少なくとも1つの電圧制御器(56)が設置されているディスペンサを制御するための制御方法。
【請求項9】
請求項1から8までのいずれか一項に記載の制御方法において、
用量調節ユニット(41)によって、完全なストローク毎の材料吐出量を調整し、前記操作素子(26)の新たな操作時に、あらかじめ設定された距離(W1)および先行して得られた戻し距離(S1)との総和だけ前記ラック(13)を前進させる制御方法。
【請求項10】
請求項9に記載の制御方法において、
前記操作素子(26)の解放後、ストロークが完全に実施される前に、操作素子(26)の新たな操作時に、最大で、残された距離と、場合によって得られた戻し距離との総和だけ、前記ラック(13)を前進させる制御方法。
【請求項11】
請求項1から10までのいずれか一項に記載の制御方法において、
前記操作素子(26)の操作時に、あらかじめ規定された閾値を超過した場合にはじめて、前記制御ユニット(31)の前記出力アセンブリ(32)が前記モータ(21)を前記給電部(19)に接続する制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吐出すべき材料を収めた容器のための収容スペースと、収容スペースに対してスライド可能な少なくとも1本のラックと、ラックを移動させるためのモータと、操作時に制御信号を生成するための操作素子と、モータを制御するための制御ユニットとを有するディスペンサに関するものであり、さらには、このようなディスペンサの制御方法に関するものでもある。
【背景技術】
【0002】
上述した構成のディスペンサは、容器内に充填した材料、例えばモルタルまたはシール材を塗布場所で吐出するための役割を果たす。容器は、例えば押出材料の1つまたは複数成分のための、1つまたは複数の収容スペースを有するカートリッジを備える。押出材料は、直接に収容スペースに充填されているか、または例えば薄膜からなる袋に充填された状態でカートリッジの収容スペースに挿入される。「容器」という概念は、とりわけ押出材料の1つ以上の成分を充填した薄膜からなるバッグを含む。これらのバッグは別個に、またはディスペンサに配置された収容体に挿入される。
【0003】
特許文献1(米国特許第5,921,437号明細書)により、材料を含む容器のためのディスペンサが既知である。このディスペンサは、容器のための収容スペース、収容スペースに対してスライド可能なラック、ラックを移動させるためのモータ、操作時に制御信号を生成するための操作素子、およびモータを制御するための制御ユニットを備える。ディスペンサの操作時に、例えばラックに配置され、容器に作用する押圧部材によって、容器内の材料に圧力が加えられ、材料は容器の吐出開口を通して吐出される。押出工程の終了後に材料が流出することを防止するために、ラックは押出工程の終了時に、制御ユニットによって規定された戻し距離だけ意図的に戻される。このために、使用者は、特に容器の種類および周辺条件に合わせて選択すべき2つの調節値を調節する必要がある。
【0004】
既知の解決手段では、使用者は、押出工程の間に両手で行う2つの調節を行う必要がある。手間のかかる処理の他に、既知のディスペンサでは材料の押出時に一定の調量が得られないことが欠点である。さらに操作素子は、モータ出力を切り換えることができるように、電源とモータとの間の接続部に配置するために十分な大きさに構成されている必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第5,921,437号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、材料を収めた容器のためのディスペンサとして、簡単に構成されており、取り扱いやすく、容器の押出工程全般にわたって押出材料の押出量を確実に再現できるディスペンサを提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この課題は、制御ユニットが、モータを給電部に接続するための出力アセンブリと、操作素子と電気接続された別個の信号入力部とを有し、出力アセンブリが、信号入力部における制御信号に対応してモータを給電部に接続することにより解決される。
【0008】
本発明によれば、制御ユニットは、モータを給電部に接続するための出力アセンブリと、操作手段と電気接続された別個の信号入力部とを有し、出力アセンブリは、第1信号入力部における制御信号に対応してモータを給電部に接続する。
【0009】
操作素子は制御ユニットに直接に接続されており、したがって電源とモータとの間の接続部の外側に配置されているので、補助電圧のみを供給すればよい。制御ユニットは制御アセンブリを備え、操作素子および固有ロジックによって、モータを給電部に接続する出力アセンブリに作用する。操作素子は、対応して小型に、簡素に構成することができる。操作素子は、押出装置のハウジング内に小さい構成スペースのみを必要とし、安価に作製可能である。電流が小さいので、操作素子と制御ユニットとの間の電気接続のためには横断面の小さいケーブルを使用することができる。このようなケーブルはディスペンサのハウジング内にわずかな構成スペースのみを必要とし、安価である。
【0010】
操作素子は、例えば電気機械的に構成されたスイッチ、有利にはボタンである。電源は、例えば電気回路に接続された電力ケーブル、または有利には再充電可能なバッテリーである。このバッテリーは、さらに有利にはディスペンサのハウジングに交換可能に配置することができる。モータは、例えばブラシモータまたはブラシレスモータであり、これらは電流の種類、場合によっては電流の変換に関連した直流モータまたは交流モータである。
【0011】
好ましくは、操作素子は付加的に速度制御器であり、操作素子の操作時に前進した距離に関連してモータの回転数が調整される。これにより、使用者は必要に応じて高速で大量の押出材料を吐出するか、または、例えば低速で正確に使用するために意図的に少量の押出材料を吐出することが可能である。このために操作素子は、有利には電位差計を備える電気機械式のボタンである。
【0012】
好ましくは、完全なストローク毎の材料吐出量を調節するための用量調節ユニットが設けられており、用量調節ユニットは、別個の信号入力部を介して制御ユニットに電気接続されている。用量調節ユニットは制御ユニットに直接に接続されており、したがって、電源とモータとの間の接続部の外側に配置されているので、補助電流のみを供給すればよい。用量調節ユニットは、対応して小型に、簡素に構成することができる。用量調節ユニットは、有利には操作素子の作動時にモータが給電部に接続されない「ゼロ」位置と、操作素子の操作時に操作素子が解放されるまで持続的に材料が吐出される「無限」位置とを有している。用量調節ユニットに、両方の位置間の中間位置を設け、操作素子の操作時に対応して所定量の押出材料がディスペンサによって吐出されるようにしてもよい。
【0013】
有利には、少なくとも1本のラックの位置を検出するための位置検出ユニットが設けられており、位置検出ユニットは、別個の信号入力部を介して制御ユニットに電気接続されている。位置検出ユニットは制御ユニットに直接に接続されており、したがって、電源とモータとの間の接続部の外側に配置されているので、補助電流のみを供給すればよい。位置検出ユニットは、対応して小型に、簡素に構成することができる。有利には、位置検出ユニットは電位差計を有している。位置検出ユニットを用いて、押出工程のあらゆる時点でラックの位置を突き止めることができる。
【0014】
好ましくは表示ユニットが設けられている。表示ユニットは制御ユニットに電気接続されており、完全なストロークの実施後に使用者により知覚可能な信号を生成する。これにより、使用者は、どのくらいの押出材料が既に吐出されたか、またはどのくらいの押出材料が、さらなる押出工程のためにまだ使用できるかを確認することができる。有利には、表示ユニットは、制御ユニットにおける別個の信号部を介して制御ユニットに電気接続されている。代替的に、表示ユニットは、ディスペンサの電気構成素子、例えば位置検出ユニットを介して間接的に制御ユニットに電気接続されている。
【0015】
有利には、表示ユニットは使用者が容易に知覚可能な音響信号を生成する。これに対して代替的または補足的に、表示ユニットは、充填状態を表示する役割を果たす視認可能な表示を備える。
【0016】
好ましくは、制御ユニットには少なくとも1つの電圧制御器が前置されており、電圧制御器は、電源の電流を、例えば交流電流から直流電流に変換するか、または電源からの電圧をディスペンサの構成部材の電圧に適合させる。電圧制御器は、有利には制御ユニットについて電源からの電圧を制限する。さらに、対応した構成部材に前置された電圧制御器は、後続の構成部材の最大電圧を制限し、同様に電圧制御器として作用するパルス幅変調にエラーが生じた場合に付加的に安全性を確保する。有利には、ディスペンサ内の最大電圧を監視する安全装置、有利には電子式の安全装置がさらに設けられている。ディスペンサがバッテリにより作動する場合、前置した電圧制御器により、ディスペンサの構成部材の電圧よりも大きい電圧を有するバッテリを使用することができる。これにより、バッテリ作動型のディスペンサはより長い作動時間を得られ、例えば接続されたモータの出力低下または特性変化につながるバッテリのバッテリ電圧の損失を防止することができる。
【0017】
少なくとも請求項1に記載の特徴を備えるディスペンサを制御するための本発明による制御方法は、次のステップ:すなわち、制御ユニットにより操作素子の操作時間を検出するステップと、操作時間があらかじめ規定された時間を超過した場合にあらかじめ規定された戻し距離だけラックを戻すために、制御ユニットによってモータを自動的に制御するステップとを含む。
【0018】
したがって、ラックの前進移動または押出が容器内に過圧が生成されるまでかかった場合にはラックは自動的に戻される。ラックも戻すことにより、加圧下の材料には容器における押出開口に向いた側に空間が提供されており、これにより、加圧下の材料は、この側に向けて広がることができ、容器内の過圧はすぐに所器される。これにより、押出工程の終了後に押出材料が流れ出ることが確実に防止される。
【0019】
あらかじめ規定された戻し距離は、特に容器の幾何学的な比率および押出材料の押出特性に関係している。
【0020】
あらかじめ規定された時間は、押出材料の押出特性に従って決定される。あらかじめ規定された時間は、有利には、押出工程の終了後に押出材料の流出につながりかねない圧力が押出工程において容器内に形成される時間に対応している。粘性のモルタル材では、あらかじめ規定された時間は、有利には0.8〜2秒の範囲である。
【0021】
有利には、少なくとも1本のラックの位置は、ラックの前進終了後に検出され、戻し距離は、あらかじめ規定された戻し距離よりも小さい最大限に提供された距離に応じて調整される。これにより、特に新しい容器の挿入後にラックが前進移動に関して後端位置に位置する場合にディスペンサが損傷されることが防止される。ディスペンサは後方壁部を有し、この壁部は収容スペースを制限し、ラックはこの壁部を通って案内されている。戻し距離を調整しなければ、ラックはこの壁部に挟まれ、壁部および/またはラックは損傷される。これにより、場合によってはディスペンサの機能が損なわれるか、もしくはディスペンサは完全に故障する。
【0022】
好ましくは、用量調節ユニットによって、完全なストローク毎に排出すべき材料の量が調節され、操作素子を新たに操作した場合には、ラックは、あらかじめ調整された距離と、先行して得られた戻り距離との総和だけ前進させられる。これにより、押出工程全般にわたる硬化可能材料の吐出量を確実に再現できる。
【0023】
有利には、操作素子の解放後、ストロークが完全に実施される前に操作素子を新たに操作した場合、最大で、残された距離と、場合によって生じる戻し距離との総和だけ、ラックは前進させられる。これにより、調量工程を任意の回数だけ中断することが可能であり、押出材料のあらかじめ規定された量が得られた後、押出工程は自動的に停止される。
【0024】
これに対して代替的に、完全なストロークの実施前に行う中断後に、調量工程が新たに開始され、場合によって生じる戻し距離が加算され、ラックが総和分の距離だけ前進させられる。
【0025】
有利には、ディスペンサの収容スペースに容器を挿入した後に、操作素子の操作時間は操作素子の少なくとも2回の操作後にはじめて検出される。押出工程の始めに、適用場所で吐出された材料の十分な質を保証するために、試出しとして「廃棄量」と呼んでもよい所定量の押出材料をまず吐出することができる。押出開口に混合素子が設けられている場合、この工程でまず混合素子は材料の効果的な吐出のために充填され、これにより、例えば複数成分からなる材料の十分な混合が保証される。
【0026】
好ましくは、少なくとも1本のラックの前進の停止状態を検出した場合に、完全なストロークの終了前に、所定の戻し距離だけラックを戻すためにモータが切り換えられ、これにより、モータおよび/または伝動機構ならびにラックの過負荷が防止される。例えば、モータに関連した電流の値が監視され、規定値の超過後には制御ユニットにより切換工程が実施される。代替的に、ラックの前進停止が位置検出ユニットによって検出され、位置検出ユニットは、前進停止の検出時には制御ユニットに制御信号を送信する。
【0027】
好ましくは、完全に実施されたストロークの終了前にラックが停止した場合の戻し距離は、操作素子の操作時間があらかじめ規定された時間を超過した場合よりも大きく、これにより、容器内における比較的大きい過圧が有利には取り除かれる。
【0028】
好ましくは、制御ユニットの出力アセンブリは、操作素子の操作時にあらかじめ規定された閾値を超過した場合にはじめてモータを給電部に接続し、これにより、ディスペンサの不用意な操作に対する安全性が得られる。例えば、操作素子の操作時に操作される距離が制御ユニットにより検出され、例えば、1mm〜4mmの操作後にはじめて出力アセンブリは、モータを給電部に接続するために切換られる。操作素子が、例えば速度制御のために電位差計を備えている場合には、制御ユニットによって検出された電気抵抗に対応して閾値を突き止めることができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、簡単に構成されており、取り扱いやすく、容器の押出工程全般にわたって押出材料の押出量を確実に再現できるディスペンサが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図2】簡略化して示すディスペンサのブロック線図である。
【
図4】押出工程を個々の部分ステップで示す概略的なグラフである。
【
図5】ラックが途中で停止した場合の押出工程を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
図1には、材料を含んだ容器6のためのディスペンサ11が示されている。ディスペンサ11は、容器6のための収容スペース12、収容スペース12に対してスライド可能なラック13および電気式に作動される押出手段12を備える。ラック13における収容スペース12に向いた端部には、容器6もしくは容器6の内部の材料を加圧するための加圧ピストン14が設けられている。押出手段16の作動時に、ラック13は収容スペース12の内部で前進させられ、この場合に容器6の内部の材料に圧力が加えられる。容器6に含まれる材料は1つ以上の成分を含む。複数成分からなる材料の場合、有利には容器6の吐出口7に混合部材が設けられており、混合部材は、吐出口7からの吐出される成分の完全な混合を保証する。
【0032】
押出手段16はハウジング17の内部に配置されており、ハウジング17にはグリップ18が接続している。グリップ18の遊端には給電部19としてバッテリパックが解除可能に固定されている。押出手段16はモータ21を備え、モータ21は、ギア装置22を介してラック13の歯列と噛み合う駆動歯車23を始動する。
【0033】
さらにグリップ18には、操作時に制御信号を生成するための操作素子26としてボタンが設けられている。モータ21を制御するために、さらに制御ユニット31が設けられている。制御ユニット31は、モータ21を給電部19に接続するための出力アセンブリ32および複数の信号入力部33,34,35,36を有している。
【0034】
図2に概略的に示すように、操作素子26は第1信号入力部33を介して制御ユニット31に電気接続されている。操作素子26は電位差計を有しており、したがって、オン・オフスイッチであるとともに速度制御器である。
【0035】
さらに完全なストローク毎の材料吐出量を調節するための用量調節ユニット41が設けられている。用量調節ユニット41は、制御ユニット31の第2信号入力部34を介して制御ユニット31に電気接続されている。用量調節ユニット41は電位差計を備え、操作素子26の操作時にモータ21が給電部19に接続されない「ゼロ」位置と、操作素子26の操作継続時間に対応してモータ21が給電部19に接続される「無限」位置とを備え、適宜に所定量の押出材料を吐出するための複数の調節可能性を有している。
【0036】
さらに、ラック13の位置を検出するための位置検出ユニット46が設けられており、位置検出ユニット46は、ラック13に配置されたセンサ47を備え、制御ユニット31の第3信号入力部35を介して制御ユニット31に電気接続されている。
【0037】
さらに表示ユニット51が設けられており、表示ユニット51は、制御ユニット31の第4信号入力部36を介して制御ユニット31に電気接続されており、完全なストロークが実施された後に使用者により知覚可能な信号を生成する。表示ユニット51は、音響信号を生成するためのスピーカー52を備えている。
【0038】
制御ユニット31には電圧制御器56が前置されており、電圧制御器56は、給電部19の電圧を、モータ21に給電するための電圧に変換する。1つ以上の電圧制御器56に代替的または付加的に有利には電子式の電圧制限装置が設けられている。
【0039】
ディスペンサ11を制御するための制御方法を
図3、
図4および
図5に関して以下に説明する。横軸にはそれぞれ時間tが、縦軸には、それぞれラック13の前進距離sが示されている。
【0040】
新しい容器6または一部使用した容器6をディスペンサ11の収容スペース12に挿入した後、押出材料の実際の吐出前に適用箇所で所定量の押田材料が吐出される。押出材料における先行して吐出されるこの分量もしくは廃棄量は、特に吐出口7および吐出口7に位置する混合部材を充填するための役割を果たす。
【0041】
廃棄量を吐出するためには、用量調節ユニット41は有利には「無限」位置に設定され、操作素子26は、吐出される材料の質が所望の水準に達するまで操作される。一般に、ラック13を2、3回連続して前進させれば十分である。
【0042】
代替的に、まず所望の用量が用量調節ユニット41で設定され、2〜4回のストロークでディスペンサ11により廃棄量が吐出される。
【0043】
廃棄量が用量調節ユニット41の「無限」位置で吐出された場合、次いで用量調節ユニット41によって完全なストローク毎の材料吐出量が設定される。容器の寸法および押出材料の特性が既知なので、この前設定に対応して制御ユニット31により、ラック13を前進させる必要のある距離W1が決定される。操作素子26の操作時に、操作素子26は制御ユニット31に制御信号を送信し、これに続いて、出力アセンブリ32はモータ21を給電部19に接続する。モータ21の駆動軸は、ギア装置を介してラック13の歯列と噛み合う駆動歯車23を駆動し、次いでラック13は、距離W1だけ前進させられる(
図3参照)。制御ユニット31の出力アセンブリ32は、操作素子26の操作時にあらかじめ規定された閾値を超過した場合にはじめてモータ26を給電部19に接続する。
【0044】
操作素子26の押圧保持時間に相当する操作素子26の操作時間は、この実施例では廃棄量の吐出後にはじめて制御ユニット31によって検出される。この場合、操作素子26の操作時間が、あらかじめ規定された時間、例えば1秒を超過した場合、距離W1の到達後にラック13は、モータ21の自動的な切換により所定の戻し距離S1だけ戻される。この場合、押圧工程で容器6の内部に生成された過圧が減衰され、押出工程の終了後に押出材料が吐出口7から流出することが防止される。
【0045】
操作素子26の新たな操作時に、ラック13は、あらかじめ設定された距離W1と先行して得られた戻し距離S1との総和だけ前進さられ、これにより、ラック13を先行して戻したにもかかわらず、所定量の押圧材料が吐出される。
【0046】
上記ステップは、押出材料の所望の総量が吐出されるまで繰り返される。
【0047】
ラック13の位置は、それぞれの前進の終了後に位置検出ユニット46によって検出される。ラック13が、例えばディスペンサ11の収容スペース12に新しい容器6を挿入するために完全に引き戻され、操作素子26の操作時にラック13が短い距離しか前進させられなかった場合、戻し距離は、あらかじめ規定された戻し距離S1よりも小さい最大限に提供された距離に対応して、制御ユニット31により調整される。これにより、ラック13、および特に押圧部材14がハウジング17にひっかかるか、またはハウジング17により締め付けられることが防止される。
【0048】
図4に示すように、第1押出工程T1が実施され、次いで第2押圧工程T2が、ラック13が先行して得られた戻し距離S1とW2との総和だけ進んだ後、ストロークが完全に実施される前に、例えば使用者が操作素子26を解放することにより中断される。全体の押出工程T2の部分押出工程T21のみが実施される。
【0049】
部分押出工程T21では操作素子26はあらかじめ規定された時間より長く操作されるので、ラック13はあらかじめ規定された戻し距離S1だけ戻される。
【0050】
操作素子26の新たな操作時に、使用者が操作素子26を再び解放すると、ラック13は先行して得られた戻し距離S1およびW3の総和だけ前進させられる。全体の押出工程T2の部分押出工程T22のみが実施される。ここで操作素子26の操作時間はあらかじめ規定された時間を下回っているので、容器の放圧は不要であり、ラック13が自動的に戻されることはない。
【0051】
操作素子26をさらに操作した場合、ラック13はさらにW4だけ前進させられる。なぜなら、押出工程T2の間に、ラック13は、用量調節ユニット41の設定により規定された距離W1を完全に前進し、これにより、押出材料の所望の量が吐出されるからである。部分押出工程T23では操作素子26の操作時間はあらかじめ規定された時間を超過しているので、ラック13は、戻し距離S1の値だけ再び自動的に戻される。
【0052】
次いで操作素子26を新たに操作した場合にさらなる押出工程TXが開始される。この押出工程TXは、押出工程T1の場合のように一度に行うか、または押出工程T2の場合のように複数の部分ステップで行うこともできる。
【0053】
図5には制御方法が示されている。押出工程T2の間に、例えば位置検出装置46によって、完全なストロークの終了前に、第2押出工程T2の間にラック13の前進停止が検出される(平坦部P)。モータ26はあらかじめ規定された戻し距離S2だけラック13を戻すために自動的に切り換えられ、この戻し距離S2は、あらかじめ規定された戻し距離S1よりも大きい。戻し距離S1は、操作素子26のあらかじめ規定された操作時間の超過時に自動的に得られる。操作素子26の新たな操作時に、ラック13はさらに残された距離W5および戻し距離S2の総和だけ前進させられ、これにより、押出工程T2の終了後に所望の分量の押出材料が吐出される。
【0054】
グラフには、例えば第2押出工程T2に基づいて制御方法のそれぞれの変化態様が示されている。当然ながら、1つ以上の上記の状況が生じた場合に制御方法のこれらの変化形態が第1の押出工程または後続のいずれかの押出工程TXでも実施される。
【符号の説明】
【0055】
6 容器
12 収容スペース
13 ラック
19 給電部
21 モータ
26 操作素子
31 制御ユニット
32 出力アセンブリ
33 信号入力部
34 第2信号入力部
35 第3信号入力部
41 用量調節ユニット
46 位置検出ユニット
56 電圧制御器
51 表示ユニット
S1 戻し距離
W1 距離