特許第5749923号(P5749923)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5749923
(24)【登録日】2015年5月22日
(45)【発行日】2015年7月15日
(54)【発明の名称】真空吸引成形型の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 33/40 20060101AFI20150625BHJP
   A47C 27/14 20060101ALI20150625BHJP
   B29C 51/40 20060101ALI20150625BHJP
   B29C 51/36 20060101ALI20150625BHJP
   B29K 63/00 20060101ALN20150625BHJP
   B29K 105/04 20060101ALN20150625BHJP
【FI】
   B29C33/40
   A47C27/14 A
   B29C51/40
   B29C51/36
   B29K63:00
   B29K105:04
【請求項の数】5
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2010-265867(P2010-265867)
(22)【出願日】2010年11月30日
(65)【公開番号】特開2012-116020(P2012-116020A)
(43)【公開日】2012年6月21日
【審査請求日】2013年10月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000133098
【氏名又は名称】株式会社タチエス
(74)【代理人】
【識別番号】100141221
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 和明
(72)【発明者】
【氏名】田畑 毅
【審査官】 鏡 宣宏
(56)【参考文献】
【文献】 特公昭50−8737(JP,B1)
【文献】 特開昭60−141888(JP,A)
【文献】 特開昭55−82607(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 33/00−33/76
B29C 51/00−51/46
A47C 27/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
間にキャビティを形成するように所定の間隔を置いて配置された上下の成形型と、
前記上下の成形型に整列して形成した貫通穴と、
前記上下の成形型間のキャビティ内でその上下の成形型の貫通穴間に架設された無数の線材とから成り、
樹脂材料が、そのキャビティ内に注入され、硬化されてそのキャビティの形状に応じた成形品に成形され、そして、その無数の線材が、その成形後にその成形品から引き抜かれ、その成形品に無数の微小な通気穴を貫通させて真空吸引可能とするところの真空吸引成形型の製造方法
【請求項2】
その樹脂材料が、エポキシ樹脂である請求項1に記載の真空吸引成形型の製造方法
【請求項3】
その上下の成形型が、そのキャビティ内で互いに整列する無数の貫通穴を明け、そして、1本のポリアミド樹脂糸が、その線材としてその上下の成形型の整列するその貫通穴間に連続して通される請求項2に記載の真空吸引成形型の製造方法
【請求項4】
無数の鋼線が、その線材としてそのキャビティ内でその上下の成形型の何れかに突き出されてその上下の成形型間に架設される請求項2に記載の真空吸引成形型の製造方法
【請求項5】
その無数の鋼線が、根元から先端に細くされたテーパ状に形成され、上下の成形型のいずれか一方から、上下の成形型のいずれか他方に、鋼線の先端を貫通させる請求項4に記載の真空吸引成形型の製造方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、真空吸引成形型の製造方法に関し、詳細には、優れた外観品質を呈する表皮付き一体発泡成形体の製造に用いるところの真空吸引成形型の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、自動車シートでは、表皮付きクッション体を一体発泡で成形する際は、下型の型内壁に無数の通気小穴を適宜の間隔で穴明けし、表皮材をその下型に配置し、その型内壁と型外壁で密閉された空間内を真空にすることによってその表皮材をその下型の型内面に密着させ、その表皮材をその下型のその型内面の形状に沿わせて予め、その表皮材を所定の形状に成形させた後に上型でその下型の開口を閉じ、そして、その後に発泡ウレタン原液を型内に注入して発泡させ、所定のクッション体形状を得るところの表皮付き一体発泡成形体の製造方法は知られている。
【0003】
ところが、その下型の型内壁に明けた無数の通気小穴が、一体発泡されたクッション体の表面、すなわち、表皮の外観に不具合を引き起こす要因になるところがあった。
その無数の通気小穴は、ドリル加工により直径1mmないし3mm程度のスレート穴に穴明けされるので、高級タイプではその表皮材に毛足の長いファブリックを、廉価タイプではその表皮材に毛足が殆どない薄手の生地やビニール・レザーなどを用いると、その毛足の長いファブリックでは、その下型が吸気されると、長い毛がその小穴に吸い込まれて他側に伸び、発泡ウレタン原液を型内に注入して発泡させた後にその型から取り出すと、その表皮付きクッション体はその無数の通気小穴の箇所で毛足の長い部分とその無数の通気小穴無しの箇所で毛穴の短い部分ができて外観が不具合になり、一方、その薄手の生地やビニール・レザーでは、その下型が吸気されると、その小穴に部分的に吸い込まれてその生地やそのビニール・レザーの内側面にへこみを生じ、発泡ウレタン原液を型内に注入して発泡させて後にその型から取り出すと、その表皮付きクッション体はその吸気小穴の箇所で小突起が形成されて外観が不具合になった。
【0004】
そのような外観不具合を解消するには、その通気小穴の径を微小にすればよいが、ドリルの刃は直径1.0mm程度が限界であるに加えてその型の内壁の肉厚が5mm程度であるので、極細ドリルではドリル刃が製造困難で穴明け作業時にドリル刃が折れるなどにより穴明けが不可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
特開2008−142244公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この発明の課題は、ドリル加工では得られないような直径0.3mm程度の無数の微小な通気穴を下型の型内壁に穴明け可能にし、そして、表皮に毛足の長いファブリック、毛足の殆どない薄手の生地やビニール・レザーなどの表皮材が用いられる場合にも表皮付き一体発泡成形体の表面に無数の毛穴の長い部分ができることや無数の小突起ができることが未然に回避されてその表皮付き一体発泡成形体が優れた外観品質を呈するところの真空吸引成形型の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明の真空吸引成形型の製造方法は、間にキャビティを形成するように所定の間隔を置いて配置された上下の成形型と、
前記上下の成形型に整列して形成した貫通穴と、
前記上下の成形型間のキャビティ内でその上下の成形型の貫通穴間に架設された無数の線材とから成り、
樹脂材料が、そのキャビティ内に注入され、硬化されてそのキャビティの形状に応じた成形品に成形され、そして、その無数の線材が、その成形後にその成形品から引き抜かれ、その成形品に無数の微小な通気穴を貫通させて真空吸引可能とする。
【発明の効果】
【0008】
この発明の真空吸引成形型の製造方法では、ドリル加工で得られないような直径0.3mm程度の無数の微小な通気穴を下型の型内壁に成形可能になり、そして、表皮には毛足の長いファブリック、毛足の殆どない薄手の生地やビニール・レザーなどの表皮材が用いられる場合にも表皮付き一体発泡成形体の表面に無数の毛足の長い部分および毛足の短い部分ができることや無数の小突起ができることが未然に回避されてその表皮付き一体発泡成形体が優れた外観品質を呈し、そして、商品価値が高められる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】乗用車のフロント・シートのシート・クッションの表皮付き一体発泡シート・クッション体の製造方法に活用されるところのこの発明の真空吸引成形型の製造方法の具体例を示した断面図である。
図2図1に示された真空吸引成形型を部分的に拡大して示した部分斜視図である。
図3図1に示されたその真空吸引成形型を用いてその表皮付き一体発泡シート・クッション体の製造を示した断面図である。
図4】乗用車のフロント・シートのシート・クッションの表皮付き一体発泡シート・クッション体の製造に活用されるところのこの発明の真空吸引成形型の製造方法の別の具体例を示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
この発明の真空吸引成形型の製造方法は、上下の成形型が、間にキャビティを形成するように所定の間隔を置いて配置され、無数の線材が、そのキャビティ内でその上下の成形型間に適宜の間隔で架設され、樹脂材料が、そのキャビティ内に注入され、硬化されてそのキャビティの形状に応じた成形品に成形され、そして、その無数の線材が、その成形後にその成形品から引き抜かれ、その成形品に無数の微小な通気穴を貫通させて真空吸引可能にする。
【0011】
その樹脂材料が、エポキシ樹脂である。
【0012】
その上下の成形型が、そのキャビティ内で互いに整列する無数の貫通穴を明け、そして、一体のポリアミド樹脂糸が、その線材としてその上下の成形型の整列するその貫通穴間に連続して通される。
【0013】
また、この発明の真空吸引成形型の製造方法では、無数の鋼線が、その線材としてそのキャビティ内でその上下の成形型の何れかに突き出されてその上下の成形型間に架設される。
【0014】
その無数の鋼線が、また、根元から先端に細くされたテーパ状に形成されてもかまわない。
【実施例1】
【0015】
以下、特定されて図示された具体例に基づいて、この発明の真空吸引成形型の製造方法を説明する。図1ないし図3は、乗用車のフロント・シートのシート・クッションの表皮付き一体発泡シート・クッション体30の製造に活用されるところのこの発明の真空吸引成形型による成形品の製造方法の具体例10およびその真空吸引成形型10を用いてその表皮付き一体発泡シート・クッション体30の製造方法を示し、そして、この真空吸引成形型10は、下型11とその下型11の開口14を閉じる上型12で構成され、そして、その下型11は、キャビティ18を形成すると型内壁15とその型内壁15を囲む型外壁16で内部に密閉された空間17を形成する構造が採られ、そして、その型内壁15が無数の微小な通気穴19を貫通させて真空吸引可能にする成形品に成形されてその表皮付き一体発泡シート・クッション体30の製造に活用される。
【0016】
その型内壁15は、上下の成形型22、23が互いに整列されるように均一ピッチで加工し易い直径0.5mmないし1.0mm程度の無数の小穴24をドリル加工し、そして、間にスペーサー27、27を挟んで間にキャビティ26を形成するようにその無数の小穴24を整列させて上下方向に所定の間隔を置いて重ね合わせ、無数の線材28がそのキャビティ26内でその上下の成形型22、23のその無数の小穴24間に通されてその上下成形型22、23間に所定の間隔で架設され、その状態でその上下の成形型22、23が外枠21に組み込まれてその外枠21に支持され、樹脂材料、すなわち、エポキシ樹脂29がその上の成形型22の注入口25からそのキャビティ26内に注入されて、硬化されてそのキャビティ26の形状に応じた成形品に成形され、そして、無数の線材28がその成形後にその成形品から引き抜かれて無数の微小な通気穴19が貫通され、そして、真空吸引可能にされる。
【0017】
その無数の線材28は、1本の極細ポリアミド樹脂糸が用いられ、具体的には、釣り糸である。
釣り糸などはポリアミド樹脂を使用し、特に、釣り糸は直径0.128mm(6号)から販売されているので、この釣り糸は、適宜に選択できて簡単に入手可能で硬化した樹脂から引き出すにも滑りがよくて使用に適し、そして、非常に小さな穴、すなわち、微小な通気穴19が成形可能になることから、この場合、その無数の線材28は極細の釣り糸が用いられ、そして、その極細の釣り糸28は、図2に示されたようにその上下の成形型22、23のその無数の小穴24を整列させてその整列された無数の小穴24、すなわち、貫通穴24間に連続して通されてその無数の線材28として機能している。
【0018】
そして、この極細の釣り糸28は、そのエポキシ樹脂がそのキャビティ26内に注入されてそのキャビティ26の形状に応じた成形品に成形された後にその成形品から引き抜かれ、その成形品に無数の微小な通気穴19を貫通させてその成形品に真空吸引可能にする。その後、この成形品は、その上下の成形型22、23から外され、そして、その真空吸引成形型10のその下型11のその型内壁15に使用される。勿論、その下型11は、接着剤でその型内壁15とその型外壁16を一体的に結合させてその真空吸引成形型10に用いられる。
【0019】
次に、その真空吸引成形型10を用いてその表皮付き一体発泡シート・クッション体30を製造する一体発泡成形について述べるに、この真空吸引成形型10では、その下型11が予め、ホース(図示せず)でその外外壁16の複数の排気口20に真空ポンプ(図示せず)を接続しているので、先ず、その下型11のそのキャビティ18内に表皮材33を配置し、その真空ポンプを運転してその型内壁15とその型外壁16で密閉された空間17内の空気を排出して真空にすることによってその表皮材33をその下型11の型内面13に密着させ、その表皮材33をその下型11のその型内面13の形状に沿わせて予めその表皮材33を所定の形状に成形させた後に注入機(図示せず)で発泡ウレタン原液をその下型11に注入し、そして、その上型12でその下型11のその開口14を閉じ、その注入された発泡ウレタン原液を発泡させてその表皮付き一体発泡シート・クッション体30に一体発泡成形する。勿論、その発泡ウレタン原液は、その上型12でその下型11のその開口14を閉じた後に注入されてもかまわない。その場合、その上型12にはその注入機の注入口を差し込む注入穴が必要になる。
【0020】
したがって、この真空吸引成形型10では、ドリル加工で得られないような直径0.3mm程度の無数の微小な通気穴19が極細の釣り糸28でその下型11のその型内壁15に成形され、そして、表皮32に毛足の長いファブリック、毛足の殆どない薄手の生地やビニール・レザーなどの表皮材33が用いられる場合にもその表皮付き一体発泡シート・クッション体30の表面に無数の毛足の長い部分および毛足の短い部分ができることや、無数の小突起ができることが未然に回避されてその表皮付き一体発泡シート・クッション体30が優れた外観品質を呈し、そして、商品価値が高められる。
【実施例2】
【0021】
図4は、乗用車のフロント・シートのシート・クッションの表皮付き一体発泡シート・クッション体30の製造に用いるところのこの発明の真空吸引成形型の製造方法の別の具体例を示し、そして、この真空吸引成形型の製造方法では、その前述の真空吸引成形型10の下型11に用いられたところのその型内壁15が別の上下の成形型40、41で成形される。
【0022】
その上下の成形型40、41では、無数の鋼線42が直径0.3mmの針状に成形され、そして、無数の線材としてその上下の成形型40、41間のキャビティ26内でその上の成形型40に剣山状に突き出され、それらの先端をその下の成形型41に貫通させてその上下の成形型40、41間に架設される構造を採る。
【0023】
その上下の成形型40、41は、間にスペーサー27、27を挟んで間にそのキャビティ26を形成するようにして外枠21に組み込まれてその外枠21に支持され、エポキシ樹脂がその上の成形型40の注入口25からそのキャビティ26内に注入され、硬化されてそのキャビティ26の形状に応じた成形品に成形され、そして、その成形後にその外枠21から取り出されてその上の成形型40もその成形品から外され、そして、無数の微小な通気穴貫通させてその無数の微小な通気穴で真空吸引を可能にする成形品にする。
【0024】
その無数の鋼線は、根元から先端に細くテーパ状に形成されてもかまわない。その場合、無数のテーパ状鋼線は、その上下の成形型40、41間のそのキャビティ26内でその上の成形型40から下の成形型41に剣山状に突き出され、それら鋼線の先端を下の成形型41に貫通させてその上下の成形型40、41間に架設される。この鋼線は、その上の成形型40側を根元とし、下の成形型41側を先端としている。鋼線は、上の成形型40側を先端とし、下の成形型41側を根元とし、上記とは逆にその上下の成形型40、41間に架設することもできる。
【0025】
先に図面を参照して説明されたところのこの発明の特定された具体例から明らかであるように、この発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者にとって、この発明の内容は、その発明の性質(nature)および本質(substance)に由来し、そして、それらを内在させると客観的に認められる別の態様に容易に具体化される。勿論、この発明の内容は、その発明の課題に相応し(be commensurate with)、そして、その発明の成立に必須である。
【産業上の利用可能性】
【0026】
上述から理解されるように、この発明の真空吸引成形型の製造方法は、上下の成形型が、間にキャビティを形成するように所定の間隔を置いて配置され、無数の線材が、そのキャビティ内でその上下の成形型間に適宜の間隔で架設され、樹脂材料が、そのキャビティ内に注入され、硬化されてそのキャブティの形状に応じた成形品に成形され、そして、その無数の線材が、その成形後にその成形品から引き抜かれ、その成形品に無数の微小な通気穴を貫通させて真空吸引可能にするので、この発明の真空吸引成形型の製造方法では、ドリル加工で得られないような直径0.3mm程度の無数の微小な通気穴を下型の型内壁に成形可能になり、そして、表皮に毛足の長いファブリック、毛足の殆どない薄手の生地やビニール・レザーなどの表皮材が用いられる場合にも表皮付き一体発泡成形体の表面に無数の毛足の長い部分および毛足の短い部分ができることや無数の小突起ができることが未然に回避されてその表皮付き一体発泡成形体が優れた外観品質を呈し、そして、商品価値が高められ、その結果、自動車シートの製造にとって非常に有用で実用的である。
【符号の説明】
【0027】
10真空吸引成形型
11下型
12上型
13型内面
14開口
15型内壁
16型外壁
17空間
18キャビティ
19微小な通気穴
20排気口
21外枠
22上の成形型
23下の成形型
24小穴/貫通穴
25注入口
26キャビティ
27スペーサー
28線材/極細ポリアミド樹脂糸/極細の釣り糸
29樹脂材料/エポキシ樹脂
30表皮付き一体発泡成形体/表皮付き一体発泡シート・クッション体
31シート・クッション体
32表皮
33表皮材
40上の成形型
41下の成形型
42鋼線
図1
図2
図3
図4