特許第5749924号(P5749924)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5749924
(24)【登録日】2015年5月22日
(45)【発行日】2015年7月15日
(54)【発明の名称】保持器付き針状ころ軸受
(51)【国際特許分類】
   F16C 33/58 20060101AFI20150625BHJP
   F16C 19/46 20060101ALI20150625BHJP
   F16C 33/46 20060101ALI20150625BHJP
   F16C 33/64 20060101ALI20150625BHJP
   F16C 33/34 20060101ALI20150625BHJP
【FI】
   F16C33/58
   F16C19/46
   F16C33/46
   F16C33/64
   F16C33/34
【請求項の数】5
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2010-272146(P2010-272146)
(22)【出願日】2010年12月7日
(65)【公開番号】特開2012-122513(P2012-122513A)
(43)【公開日】2012年6月28日
【審査請求日】2013年8月20日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000102692
【氏名又は名称】NTN株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087538
【弁理士】
【氏名又は名称】鳥居 和久
(72)【発明者】
【氏名】梶川 修一
【審査官】 中村 則夫
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−278643(JP,A)
【文献】 特開2004−084707(JP,A)
【文献】 特開2010−014179(JP,A)
【文献】 特開2005−180636(JP,A)
【文献】 特開2006−138376(JP,A)
【文献】 特開2005−214391(JP,A)
【文献】 特開2009−030468(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 33/00
F16C 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
針状ころを保持器に分離しないように組み付けた保持器付きの針状ころ軸受において、内周面に前記針状ころの軌道面を有すると共に、両端部に一対の内向きフランジを有するシェル部材を、前記保持器付きの針状ころ軸受を取付ける相手部材の内径面に装着し、このシェル部材の内径側に前記針状ころを組込み、シェル部材の内径側に針状ころを組込んだ状態で、シェル部材の両端外側面が、保持器の両端外側面よりも幅方向に突出せず、かつ、一対のフランジが、保持器の幅面に達しない長さに設定され、針状ころの端面を、前記シェル部材の一対のフランジに接触しないようにし、保持器が、転動体によって案内されることを特徴とする針状ころ軸受。
【請求項2】
シェル部材が鋼板のプレス成形品からなる請求項1記載の針状ころ軸受。
【請求項3】
シェル部材が削り加工品からなる請求項1又は2に記載の針状ころ軸受。
【請求項4】
保持器の針状ころを収容するポケットの対向面に、ピッチ円径PCDよりも小径位置に内径側抜け止め部、ピッチ円径PCDよりも大径位置に外径側抜け止め部をそれぞれ設け、内径側抜け止め部と外径側抜け止め部との間に、針状ころを収容した状態で、針状ころを内径側に移動可能にする遊隙を設けている請求項1〜3のいずれかに記載の針状ころ軸受。
【請求項5】
前記保持器付きの針状ころ軸受を取付ける相手部材が遊星歯車である請求項1〜のいずれかに記載の針状ころ軸受。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、保持器付き針状ころ軸受に関するものである。
【背景技術】
【0002】
保持器付き針状ころ軸受は、図6に示すように、針状ころ1を保持器2に分離しないように組み付けたものであり、内輪外径と外輪内径との差が小さいスペースにも収めることができるので、遊星歯車機構の遊星歯車を回転自在に支持する際に使用することができる。
【0003】
このような用途に使用される保持器付き針状ころ軸受は、遊星歯車のギア3の内径面が直接、針状ころ1の軌道面3aになっている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−214391号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、近年は、保持器付き針状ころ軸受を使用するユーザーの中には、原価低減のために、針状ころ1の軌道面3aとなるギア3の内径面を超硬旋削によって仕上げるだけで、研磨仕上げを行っていない場合も多い。
【0006】
このような場合、針状ころ1の軌道面3aとなるギア3の内径面の面粗さが大きく、保持器付き針状ころ軸受の寿命が短寿命化するという問題が生じる。
【0007】
そこで、この発明は、保持器付き針状ころ軸受を取付けるギアの内径面等の相手部材の内径面の面粗さによって寿命が左右されることなく、しかも相手部材の内径面に簡単に取り付けることができる、保持器付き針状ころ軸受を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の課題を解決するために、この発明は、針状ころを保持器に分離しないように組み付けた保持器付きの針状ころ軸受において、内周面に前記針状ころの軌道面を有すると共に、両端部に一対の内向きフランジを有するシェル部材を、前記保持器付きの針状ころ軸受を取付ける相手部材の内径面に装着し、このシェル部材の内径側に前記針状ころを組込み、シェル部材の内径側に針状ころを組込んだ状態で、シェル部材の両端外側面が、保持器の両端外側面よりも幅方向に突出せず、かつ、一対のフランジが、保持器の幅面に達しない長さに設定され、針状ころの端面を、前記シェル部材の一対のフランジに接触しないようにしたものである。
【0009】
針状ころの端面は、前記シェル部材の一対のフランジに接触しないようにしている。したがって、前記保持器は、転動体案内となる。
【0010】
シェル部材は、鋼板のプレス成形品又は削り加工品によって形成することができる。
【0011】
保持器の針状ころを収容するポケットの対向面には、ピッチ円径PCDよりも小径位置に内径側抜け止め部、ピッチ円径PCDよりも大径位置に外径側抜け止め部をそれぞれ設け、内径側抜け止め部と外径側抜け止め部との間に、針状ころを収容した状態で、針状ころを内径側に移動可能にする遊隙を設けることが好ましい。
【0012】
この発明の保持器付きの針状ころ軸受は、遊星歯車の内径面に装着して使用される。
【発明の効果】
【0013】
この発明の保持器付きの針状ころ軸受は、針状ころがシェル部材の内径面の軌道面に案内されるため、針状ころ軸受を取付けるギアの内径面等の相手部材の内径面の面粗さによって寿命が左右されることがない。また、相手部材の内径面に嵌め入れることによって、簡単かつ安価に取り付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】この発明に係る保持器付きの針状ころ軸受の断面図である。
図2図1の保持器のポケットを側面から見た部分拡大図である。
図3】シェル部材の組み込み状態を示す断面図である。
図4】この発明に係る保持器付きの針状ころ軸受を遊星歯車のギア内径面に装着した状態を示す断面図である。
図5】比較例の保持器付きの針状ころ軸受の断面図である。
図6】従来の保持器付きの針状ころを軸受遊星歯車のギア内径面に装着した状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、この発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
この発明に係る保持器付き針状ころは、図1に示すように、保持器10と、針状ころ11と、針状ころ11の配列の外周面に一体化されるシェル部材12とからなる。
【0016】
保持器10には、針状ころ11を並列状態で収容するポケット13が等間隔で複数配置されている。
【0017】
ポケット13の円周方向の対向壁面には、図2に示すように、ポケット13に収容する針状ころ11のピッチ円径PCDよりも小径位置に内径側抜け止め部14、ピッチ円径PCDよりも大径位置に外径側抜け止め部15がそれぞれ設けられている。
【0018】
内径側抜け止め部14と外径側抜け止め部15との間には、針状ころ11を収容した状態で、図3に鎖線で示すように、針状ころ11を内径側に移動可能にする遊隙dが設けられている。
【0019】
シェル部材12は、鋼板のプレス成形品又は削り加工品からなり、内周面に前記針状ころ11の軌道面12aを有し、両端部に一対の内向きフランジ12bを有する。
【0020】
シェル部材12を針状ころ11の配列の外周面に組み付けて一体化するには、内径側抜け止め部14と外径側抜け止め部15との間の前記遊隙dを利用し、図3に示すように、針状ころ11を内径側に寄せて針状ころ11の配列をシェル部材12の内径側に簡単に挿入できるようにしている。
【0021】
前記シェル部材12は、幅方向の長さが保持器10の長さと同一に形成され、シェル部材12の両端外側面が、保持器10の両端外側面よりも幅方向に突出しないようにしている。また、シェル部材12の一対のフランジ12bは、シェル部材12の内径側に針状ころ11を組み込んだ状態で、保持器10の幅面に達しない長さに設定され、保持器10が転動体案内になっている。
【0022】
シェル部材12の一対のフランジ12bの長さを、比較例として示す図5に示すように、保持器10の幅面に達する長さに設定した場合、シェル部材12の一対のフランジ12bが、保持器10の幅面を覆うため、保持器10の幅寸法が小さくなる。それに伴って針状ころ11の長さも短くなり、その結果、比較例の負荷容量が低下し、高負荷容量が要求される用途には使用できない。
これに対し、この発明に係る保持器付き針状ころは、前記のように、シェル部材12の一対のフランジ12bは、シェル部材12の内径側に針状ころ11を組み込んだ状態で、保持器10の幅面に達しない長さに設定しているため、図4に示すように、例えば、遊星歯車のギア16の内径面に圧入して組み込んだ場合、保持器10は、ギア16の幅面のワッシャ17によって案内される。このため、機能上の問題がなく、針状ころ11は、シェル部材12の軌道面12aによって案内されるため、ギア16の内径面の面粗さが粗い場合でも、針状ころ11の寿命の低下を防止できる。
【0023】
前記保持器10の材質としては、金属又は樹脂によって形成することができる。
【0024】
樹脂製の保持器10は、射出成形等により製造することが可能であるため、大量生産が容易となり、安価に製造することができる。樹脂としては、例えば、ナイロン66やナイロン46、ポリフェニレンスルフィド(PPS)やポリエーテルエーテルケトン(PEEK)等が挙げられる。なお、必要に応じて、樹脂に炭素繊維やガラス繊維、カーボンブラック等を充填することにしてもよい。
【0025】
以上、図面を参照してこの発明の実施形態を説明したが、この発明は、図示した実施形態のものに限定されない。図示した実施形態に対して、この発明と同一の範囲内において、あるいは均等の範囲内において、種々の修正や変形を加えることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0026】
この発明に係る保持器付き針状ころは、高負荷容量であるため、建設機械、減速機の遊星歯車に有効に利用される。
【符号の説明】
【0027】
10 保持器
11 針状ころ
12 シェル部材
13 ポケット
14 内径側抜け止め部
15 外径側抜け止め部
16 ギア
17 ワッシャ
図1
図2
図3
図4
図5
図6