(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1の端面と前記第2の端面との距離W3は、該センサヘッドの先端から該リードのU字状屈曲部の遠位端までの長さLよりも短い、ことを特徴とする請求項2又は請求項3のいずれか一項に記載のセンサ固定構造。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の固定構造は、設計時の想定よりもセンサヘッドのサイズが少しでも太いセンサを固定することができず、使用できるセンサのサイズが制限されていた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施形態に係るセンサ固定構造は、被測定物に形成された間隙内に収容されて、細長形状のセンサヘッドを間隙内に固定するセンサ固定構造である。センサヘッドは、基端からリードが延び、リードは基端近傍でU字状に屈曲され、センサヘッド側面に沿って、センサヘッドの先端方向へ折り返されたものである。センサ固定構造は、センサヘッドが収容される空間であるセンサ収容部の一端を規定する第1の端面と、センサ収容部を挟んで第1の端面と対向して、センサ収容部の他端を規定する第2の端面と、センサ収容部に面すると共に第1の端面と隣接し、第1の端面と所定の角度をなして、第1の端面と共に第1の隅部を規定する第3の端面と、を有し、リードに張力が加えられた状態において、センサヘッドの先端が隅部に当接し、リードのU字状に屈曲されたU字状屈曲部が、第2の端面の、センサ収容部を挟んで隅部と対向する部位に当接して、センサヘッドがセンサ収容部内に固定される。
【0007】
この構成により、3つの端面からなるシンプルな構成でありながら、十分な精度で被測定物に形成された間隙内の所定の位置にセンサヘッドを固定することが可能なセンサ固定構造が実現する。また、センサヘッドの先端を2つの面(第1及び第3の端面)から規定される隅部に当接させ、またリードのU字状屈曲部を第2の端面に当接させるのみで、リードに張力が加わらない状態ではセンサヘッドが拘束されない構成であるため、様々なサイズのセンサヘッドを固定することができる。
【0008】
第2の端面と第3の端面の間には、センサ収容部が外部と連絡する開口が形成され、第1の端面と第2の端面の間には、センサ収容部を挟んで開口と対向する第4の端面が形成され、第4の端面は、リードが押し込まれて、センサヘッドが基端側から開口を通ってセンサ収容部へ導入される際に、リードのU字状屈曲部と当接して、U字状屈曲部が移動可能な範囲を制限してもよい。
【0009】
この構成により、センサヘッドの可動範囲をセンサ収容部内に制限することができるため、センサヘッドの固定作業を効率的に行うことが可能になる。また、センサ固定構造の周囲からセンサヘッドを電気的に絶縁することができる。
【0010】
第1の端面は、センサヘッドの先端が第1の端面に当たった状態でリードが引っ張られたときに、センサヘッドの先端を第1の隅部に案内するガイド面であってもよい。
【0011】
この構成により、センサヘッドの先端を第1の隅部へ容易に位置決めすることができる。
【0012】
第1の端面と第2の端面との距離W3は、センサヘッドの先端からリードのU字状屈曲部の遠位端までの長さLよりも短くてもよい。
【0013】
この構成により、センサヘッドの先端を隅部に当接させた状態で、リードのU字状屈曲部を確実に第2の端面に当接させることができる。
【0014】
第4の端面は第2の端面と共に第2の隅部を規定し、第3の端面における、第1の隅部に対する遠位端であり、開口と境界をなす一端と、第2の隅部との距離Dは、センサヘッドの先端からリードのU字状屈曲部の遠位端までの長さLよりも長くてもよい。
【0015】
この構成により、センサヘッドを外部からセンサ収容部内に確実に収容することが可能になる。
【0016】
センサ固定構造は、間隙内に配置される第1の部材と、第1の部材と対向して間隙内に配置される第2の部材とを備え、第1の端面及び第3の端面は第1の部材に形成され、第2の端面は第2の部材に形成されていてもよい。
【0017】
この構成により、例えばコイル装置用ボビン等の2つ割り構造の部材にも、センサ固定構造を形成することができる。
【0018】
第4の端面は、第1の部材から第2の部材に跨って形成され、第4の端面が形成される箇所における第1の部材と第2の部材の間隔W2は、リードがセンサヘッドに沿って折り返された部分における、センサヘッドとリードの外側側面間の幅Fよりも狭くてもよい。
【0019】
この構成により、センサヘッドの可動範囲をセンサ収容部内に確実に制限することができる。
【0020】
第1の部材と第2の部材は同一形状であってもよい。
【0021】
この構成により、例えば各部材を成形するための金型を共通化することができ、部材の設計や製造に関するコストが大幅に削減され、また部材の在庫も減らすことができる。
【0022】
本発明の実施形態によれば、2つの平行に配置された直線コイル部を有するコイルと、コイルが巻回されるボビンと、を備え、ボビンは、2つの直線コイル間の隙間に配置される平板部を有し、平板部に上記のセンサ固定構造が形成されたコイル装置が提供される。
【発明の効果】
【0023】
様々な寸法のセンサヘッドを、工具を使用せずに、隙間内に正確に位置決めして固定することができる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態に係るリアクトル1について、図面を参照しながら説明する。
図1、
図2及び
図3は、それぞれリアクトル1の斜視図、分解図及び平面図である。また、
図4及び
図5は、それぞれ
図3のA−A断面図及びB−B断面図である。なお、以下の説明において、
図1における左下側から右上側に向かう方向を幅方向(X軸方向)、右下側から左上側に向かう方向を奥行方向(Y軸方向)、下側から上側に向かう方向を高さ方向(Z軸方向)と定義する。また、Z軸正方向を上側、Z軸負方向を下側と呼ぶ。なお、リアクトル1を使用する際には、リアクトル1をどのような方向に向けて配置してもよい。
【0026】
図1及び
図2に示されるように、リアクトル1は、コイル10とコア20から構成されるリアクトル本体1a、放熱ケース50、リアクトル本体1a(直接的にはコア20)を放熱ケース50に固定する一対のコア固定具30、サーミスタ40、及び端子台60を備えている。本実施形態のリアクトル1には、リアクトル本体1aが放熱ケース50と直接接触しない状態で放熱ケース50内に取り付けられる、フローティング構造が採用されている。すなわち、リアクトル1のX軸方向両端に取り付けられたコア固定具30は、放熱ケース50と直接接触せずに浮いた状態で放熱ケース50内に収容されたリアクトル1を支持する。なお、コア固定具30は、ステンレス鋼板から形成された金具であり、リアクトル本体1aが発生する振動(特に騒音の原因となる高周波成分の振動)を緩和し、ケースに伝わり難くする形状に成形されている。従って、この支持構造により、リアクトル本体1aで発生した振動は、減衰されずに直接放熱ケース50に伝わることはなく、コア固定具30により緩和されるため、リアクトル1から外部へ伝わる騒音や振動は大幅に軽減される。また、外部から放熱ケース50が受ける衝撃もコア固定具30により緩和されるため、リアクトル1は優れた耐衝撃性を備えている。また、放熱ケース50にリアクトル本体1aが固定された後、放熱ケース50内の隙間には比較的に柔らかく熱伝導性の良好な樹脂である充填材(付図示)が充填される。これにより、リアクトル本体1aから放熱ケース50への振動伝搬を防ぎつつ、必要な放熱性能が確保される。また、作動中のリアクトル本体1aの温度はサーミスタ40によって検出される。
【0027】
図6は、リアクトル本体1aの分解図である。コア20は、2つのU型コアユニット220と4つのI型コアユニット240とを、ギャップ部材20gを介して貼り合わせて略O字形に形成したリングコアである。
図7はU型コアユニット220の正面図であり、
図8はI型コアユニット240の正面図(背面図を兼ねる)である。なお、U型コアユニット220及びI型コアユニット240は、後述するように、それぞれ磁性体で形成された分割コア断片を絶縁樹脂により被覆したものである。また、各コアユニットの被覆には、コイルを位置決めして支持するための各種構造が形成されている。すなわち、各コアユニットの被覆はボビンの機能を有しており、コア20は磁性体から形成されるコア本体と絶縁樹脂製のボビンが一体成形されたものである。
【0028】
ギャップ部材20gは、所定の厚さを有する非磁性体の板である。本実施形態のギャップ部材20gは、アルミナから形成されているが、他の種類のセラミックスや樹脂から形成されてもよい。
【0029】
U型コアユニット220は、1つのU字状に形成された圧粉磁心であるU型コア断片20uを、射出成形(インサート成形)により樹脂で被覆したものである。なお、U型コア断片20uは、磁路が通過しない側面のみが樹脂で被覆され、ギャップ部材20gと対向するギャップ面20a、20bは樹脂で被覆されずに露出している。なお、本実施形態では、U型コアユニット220の被覆樹脂として、耐熱性に優れたポリフェニレンサルファイド(PPS)が使用されているが、絶縁性を有する他の種類の樹脂を使用してもよい。また、U型コア断片20uには、ケイ素鋼板やフェライトを使用してもよい。
【0030】
U型コアユニット220のU字の各端部には、I型コアユニット240と接合するための接合構造が、露出したギャップ面20a、20bを囲む被覆樹脂部に形成されている。また、ギャップ面20aの周辺と、ギャップ面20bの周辺では、接合構造は異なる形状に形成されている。
図7において右側に配置されたギャップ面20aを囲む被覆の外周部には、X軸方向に突出した板状の突出部224a、b、c、dが形成されている。また、
図7におけるギャップ面20aの左端上部と突出部224dの間には、X軸方向へ突出したギャップ部材支持部226が形成されている。また、ギャップ面20aの右端下部と突出部224bの間にも、X軸方向に突出したギャップ部材支持部226が形成されている。更に、ギャップ面20aの右上端部及び左下端部の付近には、それぞれ略L字状のギャップ部材支持部227が、X軸方向に突出している。ギャップ部材支持部226及び227のX軸方向の寸法(ギャップ面20aから突出する高さ)は、ギャップ部材20gの厚さよりも若干薄く設定されている。ギャップ部材20gは、ギャップ部材支持部226及び227によって囲まれる空間に配置され、ギャップ部材支持部226及び227によって側面から挟持され、位置決めされる。なお、以下の説明において、このようにギャップ面を囲む被覆樹脂に突出部224a、b、c、d及びギャップ部材支持部226、227が形成されたコアユニットの端面形状を「凸型コア端面形状」と呼ぶ。
【0031】
一方、
図7において左側に配置されたギャップ面20bを囲む被覆の外周部には、突出部224a、b、c、dにそれぞれ対応した形状を有する凹部225a、b、c、dが形成されている。また、ギャップ面20bの左端上部と凹部225bの間にはX軸方向に突出したギャップ部材支持部226が形成され、右端下部と凹部225dの間にもX軸方向に突出したギャップ部材支持部226が形成されている。更に、ギャップ面20bの右上端部及び左下端部の付近には、それぞれ略L字状のギャップ部材支持部227が、X軸方向に突出している。なお、以下の説明において、このようにギャップ面20bを囲む被覆樹脂に凹部225a、b、c、d及びギャップ部材支持部226、227が形成されたコアユニットの端面形状を「凹型コア端面形状」と呼ぶ。突出部224a、b、c、d、凹部225a、b、c、d及びギャップ部材支持部226、227の詳細な機能については後述する。
【0032】
図2に示されるように、U型コアユニット220のX軸方向外側面220m(接合構造を有しない側面)には、コア固定具30を取り付けるための雌ねじを有する1対のブラケット221が形成されている。また、
図6及び
図7に示されるように、U型コアユニット220の下面及びY軸方向と垂直な両側面からは、それぞれ板状のフランジ部222及び223が略垂直に突出して形成されている。フランジ部222の下端には、各ギャップ面20a、20bの中心の略直下より、X軸方向内側(コイル10が配置される側)へ突出する2つのコイル支持部222aがそれぞれ形成されている。また、U型コアユニット220のX軸方向内側面220nのY軸方向中央部からは、ZX平面と平行に広がる平板状のセンサ支持部228が略垂直に突出して形成されている。更に、U型コアユニット220の上面からは、後述するサーミスタ40のリード44を巻き付けるためのセンサリード巻き付け部229が突出して形成されている。センサリード巻き付け部229の上部には、リード44を差し込むためのY軸方向に延びるスリット229sが形成されている。またスリット229sの入り口には、リード44をスリット229sから外れ難くする狭窄部229nが形成されている。フランジ部222、コイル支持部222a及びセンサリード巻き付け部229の詳細な機能については後述する。
【0033】
I型コアユニット240は、1つの直方体状に形成された圧粉磁心であるI型コア断片20iを、インサート成形により樹脂で被覆したものである。I型コア断片20iも、磁路が通過しない周面のみが樹脂で被覆され、ギャップ部材20gと面するギャップ面20c、20dは樹脂で被覆されずに露出している。I型コアユニット240の被覆部は、U型コアユニット220の被覆部と同じ樹脂で形成されている。
【0034】
ギャップ面20c及び20dは、それぞれI型コアユニット240のX軸方向の各端面に形成されている。
図6及び
図8に示されるように、I型コアユニット240の一方のギャップ面20cの周囲の被覆は、上述したU型コアユニット220のギャップ面20aの周囲と同じ凸型コア端面形状に形成されている。具体的には、ギャップ面20cを囲む被覆の外周部は、X軸方向に突出して、板状の突出部244a、b、c、dを形成している。また、
図8におけるギャップ面20cの左端上部と突出部244dの間には、X軸方向に突出したギャップ部材支持部246が形成されている。また、ギャップ面20cの右端下部と突出部244bの間にも、X軸方向に突出したギャップ部材支持部246が形成されている。更に、ギャップ面20cの右上端部及び左下端部の付近には、それぞれ略L字状のギャップ部材支持部247が、X軸方向に突出している。
【0035】
また、I型コアユニット240の上面には、Y軸方向中央に、コイル10の自重による撓みを防ぐため2つのコイル支持突起248が形成されている。
【0036】
一方、I型コアユニット240の他方のギャップ面20d周辺の樹脂被覆は、上述したU型コアユニット220のギャップ面20bの周囲と同じ凹型コア端面形状に形成されている。具体的には、ギャップ面20dを囲む被覆の外周面には、突出部244a、b、c、dにそれぞれ対応した形状を有する凹部245a、b、c、dが形成されている。また、ギャップ面20dの左端上部と凹部245bの間にはX軸方向に突出したギャップ部材支持部226が形成され、右端下部と凹部245dの間にはX軸方向に突出したギャップ部材支持部226が形成されている。更に、ギャップ面20dの右上端部及び左下端部の付近には、それぞれ略L字状のギャップ部材支持部227が、X軸方向に突出している。
【0037】
なお、本実施形態においては、I型コアユニット240の突出部244a〜dの形状及びギャップ面20cに対する配置は、U型コアユニット220の突出部224a〜dの形状及びギャップ面20aに対する配置と同じである。同様に、I型コアユニット240の凹部245a〜dの形状及びギャップ面20dに対する配置は、U型コアユニット220の凹部225a〜dの形状及びギャップ面20b対する配置と同じである。また、ギャップ部材支持部226及び227の形状及びギャップ面に対する配置は、U型コアユニット220のギャップ面20a、20b及びI型コアユニット240のギャップ面20c、20dにおいて共通である。
【0038】
U型コアユニット220のギャップ面20a及びI型コアユニット240のギャップ面20cの周囲に形成された凸型コア端面形状と、U型コアユニット220のギャップ面20b及びI型コアユニット240のギャップ面20dの周囲に形成された凹型コア端面形状は、ギャップ面同士及び介在するギャップ部材20gのYZ面方向の位置決めをしつつ、各ギャップ面の間でギャップ部材20gが隙間に挟み込まれるように構成されている。例えば、ギャップ部材20gを介してU型コアユニット220のギャップ面20aとI型コアユニット240のギャップ面20dとを突き合わせると、ギャップ面20aの周囲に形成された突出部224a、b、c、dは、ギャップ面20dの周囲に形成された凹部245a、b、c、dにそれぞれ収容される。これにより、ギャップ面20aとギャップ面20dとのY方向及びZ方向の位置決めがなされる。
【0039】
また、ギャップ部材支持部226と246、227と247は、それぞれ同じ形状を有し、各接合面における配置も同じである。また、各接合面における各ギャップ部材支持部の配置は、
図7及び
図8において左右非対称になっている。例えば、
図7の右側の接合面において、対称面C
1(互いに面対称の関係にある突出部224bと224dの対称面)に対する各ギャップ部材支持部226、227の対称な位置226’、227’には、ギャップ部材支持部は形成されていない。この構成により、凸型コア端面形状と凹型コア端面形状とを突き合わせたときに、各端面形状のギャップ部材支持部間の干渉が生じることがない。すなわち、U型コアユニット220のギャップ面20aにI型コアユニット240のギャップ面20dを突き合わせたときに、ギャップ面20dの周囲に形成されたギャップ部材支持部226、227は、ギャップ面20aの周囲のギャップ部材支持部226、227が配置されていない空間に収容され、ギャップ面20a及びギャップ面20dの周囲のギャップ部材支持部226、227は互いに重ならない。このため、各ギャップ部材支持部226、227を、ギャップ部材20gと同程度まで厚く形成することができる。コア20の組み立て時に、例えばU型コアユニット220(又はI型コアユニット240)のギャップ部材支持部226と227の間にギャップ部材20gを挟持させるため、ギャップ部材支持部226、227を厚く形成した方がギャップ部材20gの挟持が確実になり、組み立て作業が容易になる。また、ギャップ部材支持部226、227はギャップ部材20gよりも若干薄く形成されているため、ギャップ部材20gのギャップ面20a及び20dとの密着を阻害することがない。更に、ギャップ部材20gの周縁部は、各ギャップ部材支持部226及び227によりY軸方向及びZ軸方向の両側から挟持されるため、ギャップ部材20gはギャップ面20a及び20dに対してY軸方向及びZ軸方向の位置決めがなされる。
【0040】
また、
図7に示されるように、ギャップ面20aの周囲には、一対のギャップ部材支持部226及び227が、ギャップ面20aの中心点C
0に対して点対称の位置にそれぞれ形成されている。この配置により、ギャップ部材20gは、ギャップ部材支持部226及び227により、重心を挟んで両側から安定に保持される。更に、ギャップ面20aの周囲に形成されたギャップ部材支持部226及び227は、
図7に示される対称面C
2(互いに面対称の関係にある突出部224aと224cの対称面)に対しても非対称に配置されている。この構成により、中心点C
0に対して点対称の位置に一対のギャップ部材支持部を配置しても、凸型コア端面形状と凹型コア端面形状とを突き合わせたときに、各端面形状のギャップ部材支持部間の干渉が生じることがない。
【0041】
コイル10は、平角エナメル線から形成された2つの直線コイル部10a、10bを平行に配置して、巻き始め(
図6における左下端)同士を連結させた構造を有している。各直線コイル部10a、10bの中空部には、2個のI型コアユニット240が連結して形成されるコア20の2つの直線部のそれぞれが収容される。
【0042】
放熱ケース50には、コア固定具30を取り付けるためのねじ穴52fを有する台座52と、端子台60を取り付けるためのねじ穴54が形成されている。また、放熱ケース50の内側底面には、内側底面側に突出したコイル支持部222aとの接触を防止するために、コイル支持部222aと対向する位置に凹部56が形成されている。
【0043】
次に、リアクトル本体1aの組み立ての手順を説明する。まず、一方のU型コアユニット220のギャップ面20a及び20bに接着剤を塗布して、それぞれにギャップ部材20gを載せる。具体的には、各ギャップ部材支持部226及び227で囲まれた空間に各ギャップ部材20gを差し込む。次に、ギャップ面20aに載せたギャップ部材20gの露出面に接着剤を塗布し、これに1つ目のI型コアユニット240のギャップ面20dを重ねる。また、ギャップ面20bに載せたギャップ部材20gの露出面にも接着剤を塗布し、これに2つ目のI型コアユニット240のギャップ面20cを重ねる。
【0044】
次に、1つ目のI型コアユニット240のギャップ面20c及び2つ目のI型コアユニット240のギャップ面20dに接着剤を塗布して、それぞれにギャップ部材20gを載せる。そして、ギャップ面20cに載せたギャップ部材20gの露出面に接着剤を塗布し、これに3つ目のI型コアユニット240のギャップ面20dを重ねる。また、ギャップ面20dに載せたギャップ部材20gの露出面に接着剤を塗布し、これに4つ目のI型コアユニット240のギャップ面20cを重ねる。更に、3つ目のI型コアユニット240のギャップ面20c及び4つ目のI型コアユニット240のギャップ面20dに接着剤を塗布して、それぞれにギャップ部材20gを載せる。
【0045】
この段階で、コア20は、U型コアユニット220のギャップ面20a及び20bの上に2つずつI型コアユニット240を積み重ねて形成された2つの平行な直線部を有する、X軸方向に細長いU字形に形成されている。次に、コア20の2つの直線部を、コイル10の2つの直線コイル部10a、10bの中空部に差し込む。そして、3つ目のI型コアユニット240のギャップ面20c及び4つ目のI型コアユニット240のギャップ面20dにそれぞれ載せたギャップ部材20gの露出面に接着剤を塗布し、これらに2番目のU型コアユニット220のギャップ面20b及び20aをそれぞれ重ね、組み立てられたコア20にX軸方向両側から所定の圧縮荷重(接着荷重)を加えた状態で接着剤を硬化させる。接着荷重は、接着層厚が所定範囲内となるように適宜設定される。
【0046】
このようにして組み立てられたリアクトル本体1aにおいて、コイル10はX軸方向両端で2つのU型コアユニット220のフランジ部222及び223により挟まれ、コア20に対してX軸方向で位置決めされる(
図2)。
【0047】
また、コイル10の各直線コイル部10a、10bの下端は、X軸方向両端の下面において、フランジ部222の下端から延びるコイル支持部222aにより下方から支持され、コイル支持部222aと当接する下面において、コア20に対して(延いてはコア20が固定される放熱ケース50の内側底面に対して)Z軸方向に位置決めされている。この構成により、リアクトル1の放熱性能が飛躍的に向上している。この効果について、次に詳細に説明する。
【0048】
図5に示されるように、本発明の実施形態に係るリアクトル1は、リアクトル本体1aが放熱ケース50と接触しないように支持されたフローティング構造を有している。作動時にコア20で発生した熱の大部分は、コイル10と放熱ケース50との隙間に充填される充填剤を介して放熱ケース50に伝達され、外部へ放熱される。充填剤には比較的に熱伝導性の良い樹脂が使用されているが、充填剤で充填された隙間は放熱経路の中では最も熱の伝達速度が遅い箇所であり、充填剤層の厚さがリアクトル1の放熱性能を決定付ける。従って、リアクトル1の放熱性能を向上させるためには、コイル10と放熱ケース50との隙間の寸法を出来るだけ小さく設定する必要がある。コイル10と放熱ケース50との隙間Gの設定値は、リアクトル1を構成する各部材の寸法精度、組み立て精度、充填剤の流動性、及び作動中の振動や外部から受ける衝撃によるコア20の変位量等のパラメータによって決定される。これらのパラメータのうち、加工精度の低い曲げ加工によって形成されるコイル10の寸法精度が、コイル10と放熱ケース50との隙間Gの設定値を大きくする主要因となる。
【0049】
本実施形態のように、コイル10が放熱ケース50から浮いたフローティング構造において、コイル10に起因する隙間Gの誤差を最小化するためには、ケース50の内側底面に対するコイル10の下面の位置決め誤差を最小化することが必要になる。また、コイル10の幅寸法(
図5における高さ方向の寸法)には大きなバラツキがあるため、例えばコイル10を上部で支持する(すなわちコイル10の上部を基準にコイル10を位置決めする)よりも、コイル10を下部で支持する(すなわちコイル20の下部を基準に位置決めする)方が、放熱ケース50の内側底面に対してコイル10の下面を高い精度で位置決めすることができる。従って、本実施形態のようにコイル10の下面をコイル支持部222aにより下方から支持する構成により、コイル10は下面において放熱ケース50に対して位置決めされるため、放熱ケース50の内側底面に対するコイル10の下面の位置決め精度が高くなり、隙間Gの値を小さく設定することが可能になる。本実施形態の構成は、例えば、コア20の上面にコイル支持突起248のようなコイル10の上部内周面を下方から支持する座面を設け、この座面のみでコイル10を支持して位置決めする構成と比べて、放熱ケース50に対するコイル10の下面のZ軸方向における位置決め誤差(標準偏差)を約50%低減する。
【0050】
なお、本実施形態のコイル支持突起248は、コイル10の撓みによる位置決め精度の低下を防止するための補助的な構成であり、例えば衝撃等により大きな撓みがコイルに発生した場合に、コイル10の上部内周面を下方から支持して、コイルと放熱ケース50との接触を防止する。コイル10の撓みが大きくない場合は、コイル10はコイル支持突起248には支持されず、コイル支持部222aのみに支持される。
【0051】
次に、サーミスタ40の固定構造を説明する。
図9は、
図3におけるC−C断面図である。リアクトル1のY軸方向の略中央には、各U型コアユニット220からX軸方向内側に対向して突出するセンサ支持部228が配置されている。センサ支持部228は、ZX平面と平行に広がる平板状の樹脂部であり、コイル10の2つの直線コイル部10aと10bの隙間にそれぞれ配置される。センサ支持部228は、U型コアユニット220の本体部からX軸方向に突出した長方形状の支持板228aと、支持板228aのX軸方向先端における上下端部からそれぞれX軸方向へ更に突出する突出部228b及び壁部228cを有している。また、一対のセンサ支持部228は
図9において左右対称に形成されており、突出部228b及び壁部228cはX軸方向に対向して形成されている。一対の支持板228a、突出部228b及び壁部228cによって囲まれた配置空間S内にサーミスタ40のセンサヘッドが配置される。
【0052】
図9に示されるように、サーミスタ40は、サーミスタ素子(不図示)を金属管で収容したシース部(センサヘッド)42と、シース部42の一端(基端部42b)から延びる一対のリード44を備えている。リード44は、シース部42の重量を支持できる程度の剛性を有しており、根元(シース部42の基端部42b付近)でJ字状に折り返されている。サーミスタ40のシース部42は、2つのU型コアユニット220のセンサ支持部228で囲まれた配置空間S内に配置される。また、リード44は、突出部228b間を通って配置空間の外部へ引き出されて、U型コアユニット220の上面に形成されたセンサリード巻き付け部229に絡げられ、更にリアクトル1の外部へ引き出されて、図示しない温度計測器に接続される。
【0053】
サーミスタ40は、リアクトル本体1aが組み立てられた後に、リアクトル本体1aに装着される。サーミスタ40は、予めリード44を根元でJ字状に折り曲げた状態にして装着される。装着作業は一定の剛性を有するリード44を操作することで行われる。まず、リード44を押し込み、シース部42を基端部42b側から突出部228b間を通して配置空間S内に導入する。次に、シース部42の先端を一方(
図9中左側)の支持板228aの端面に沿って上方へ移動させ、シース部42の先端部42aを突出部228bに当接させる。更に、張力を加えながらリード44を引っ張ると、シース部42の先端部42aを軸にシース部42が回転し、リード44のU字状屈曲部44aが他方(
図9中右側)の支持板228aの端面に当接する。U字状屈曲部44aが他方の支持板228aと当接することにより、シース部42の回転が阻止され、静止する。この状態でリード44を緩まないようにセンサリード巻き付け部229に巻き付けると、シース部42は
図9で示される配置空間S内の所定の位置に固定される。
【0054】
一対の突出部228bの先端間の間隔(開口幅W1)は、シース部42及びJ字状に折り返したリード44が通過できる広さを有している。具体的には、開口幅W1は、リード44がシース部42に沿って折り返された部分における、シース部42とリード44の外側側面間の幅Fよりも広く形成されている。これにより、シース部42及び折り返したリード44を、突出部228b間を通して配置空間S内に導入することを可能にしている。更に、開口幅W1は、シース部42の先端42aからリード44のU字状屈曲部44aまでの長さLよりも狭くなっている。これにより、一度配置空間S内に入ったシース部42は、配置空間Sから外へ容易に抜け出ることができない。
【0055】
また、一対の壁部228cは、それぞれX軸方向に長く延び、先端間の間隔(隙間幅W2)は、シース部42が通過できない程度に狭くなっている。具体的には、隙間幅W2は、シース部42と折り返したリード44との全体の幅Fよりも狭く形成されている。これにより、サーミスタ40が放熱ケース50と接触して導通することが防止される。
【0056】
また、配置空間Sにおける突出部228bの先端から対角までの距離(対角深さD)は、シース部42の先端42aからリード44のU字状屈曲部44aまでの長さLよりも長くなっている。これにより、シース部42及びリード44のシース部42に沿って折り返された部分を配置空間Sに収容することを可能にしている。
【0057】
また、一対の支持板228aの間隔(配置空間幅W3)は、シース部42の先端42aからリード44のU字状屈曲部44aまでの長さLよりも短くなっている。シース部42の先端42aが、共に隅部を構成する一方の支持板228a及び突出部228bの端面に、当接した状態でリード44が引っ張られると、シース部42の先端42aを軸として配置空間S内でシース部42が回転する。しかし、配置空間幅W3が長さLよりも短い場合は、他方の支持板228aにリード44のU字状屈曲部44aが当接し、更なる回転が阻止され、サーミスタ40は配置空間S内に固定される。
【0058】
以上が本発明の例示的な実施形態の説明である。本発明の実施の形態は、上記に説明したものに限定されず、特許請求の範囲の記載により表現された技術的思想の範囲内で任意に変更することができる。
【0059】
上記の実施形態では、インサート成形により磁性体のコア断片とボビン(被覆樹脂部)が一体に形成されたコアユニットにおける、被覆樹脂部の一部であるセンサ支持部228にセンサ固定構造が形成されているが、センサ固定構造が形成される装置、部材及び部位は上記の実施形態のものに限定されない。例えば、コアとボビンが別体に形成されたコイル装置のボビンにセンサ固定構造を形成したセンサ支持部を設けてもよい。また、センサ固定構造は、ボビンとは別の部材(例えば、センサ固定専用部材)に形成されてもよい。
【0060】
また、上記に説明した実施形態は、本発明をリアクトルに適用した例であるが、別の種類のコイル装置(例えばトランス)にも、更には電気機器全般を始めとする、温度センサを装着可能な全ての部材、装置、設備、その他の構造物にも、本発明を適用することができる。