特許第5749958号(P5749958)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5749958
(24)【登録日】2015年5月22日
(45)【発行日】2015年7月15日
(54)【発明の名称】プロテクタ
(51)【国際特許分類】
   H02G 3/04 20060101AFI20150625BHJP
   B60R 16/02 20060101ALI20150625BHJP
   H05K 7/00 20060101ALI20150625BHJP
【FI】
   H02G3/04 J
   B60R16/02 623V
   H05K7/00 F
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2011-68350(P2011-68350)
(22)【出願日】2011年3月25日
(65)【公開番号】特開2012-205414(P2012-205414A)
(43)【公開日】2012年10月22日
【審査請求日】2014年2月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】特許業務法人栄光特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100105474
【弁理士】
【氏名又は名称】本多 弘徳
(74)【代理人】
【識別番号】100108589
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 利光
(72)【発明者】
【氏名】西山 寛
【審査官】 脇岡 剛
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−135941(JP,A)
【文献】 特開2003−235125(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0120661(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 3/04
B60R 16/02
H05K 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一部が開口するとともに、電線が内側に収容されるプロテクタ本体と、
前記プロテクタ本体の開口を覆うように該プロテクタ本体に組み付けられるプロテクタ蓋と、
を備え、
前記プロテクタ本体は、底壁と、底壁の両側から起立して設けれた側壁と、前記底壁から起立して設けられた少なくとも一つの仕切り壁と、を有し、該仕切り壁は、該側壁と該仕切り壁の間隔、または隣り合う該仕切り壁の間隔が異なるよう離間して前記底壁から起立して設けられ、
前記プロテクタ本体は、さらに、前記側壁と前記仕切り壁によって挟まれる空間、または隣り合う前記仕切り壁によって挟まれる空間に、前記プロテクタ蓋を該プロテクタ本体に組み付けた際の該プロテクタ蓋に向って前記底壁から突設されたリブを有し、
前記プロテクタ蓋は、該プロテクタ蓋を前記プロテクタ本体に組み付けた際、前記プロテクタ本体の前記底壁から、前記側壁と前記仕切り壁によって挟まれる空間、または隣り合う前記仕切り壁によって挟まれる空間に面する該プロテクタ蓋の内側までの高さ及び前記リブの高さが、前記側壁と前記仕切り壁の間隔、または隣り合う前記仕切り壁の間隔が狭い空間に面する箇所ほど低くなっている、
ことを特徴とするプロテクタ。
【請求項2】
前記リブは、前記側壁及び前記仕切り壁が向かい合う方向、または隣り合う前記仕切り壁が向かい合う方向に沿って、前記底壁から突設され、
前記リブの上端は、前記側壁と前記仕切り壁の間隔、または隣り合う前記仕切り壁の間隔が狭い空間ほど曲率が大きくなるように円弧状に窪んでいる、
ことを特徴とする請求項に記載のプロテクタ。
【請求項3】
前記リブは、前記側壁及び前記仕切り壁、または隣り合う前記仕切り壁に連設されている、
ことを特徴とする請求項またはに記載のプロテクタ。
【請求項4】
前記プロテクタ蓋は、係止部を有し、
前記プロテクタ本体の前記側壁は、前記プロテクタ蓋の係止部に係止する係止部を有し、
前記リブは、前記プロテクタ本体の前記側壁における前記係止部が設けられた近傍に形成されている、
ことを特徴とする請求項またはに記載のプロテクタ。
【請求項5】
前記プロテクタ蓋の一端及び前記プロテクタ本体の前記側壁の上端を連結し、前記プロテクタ蓋を回動自在に前記プロテクタ本体に固定するヒンジをさらに備え、
前記側壁と前記仕切り壁の間隔、または隣り合う前記仕切り壁の間隔は、これらの壁に挟まれる空間が前記ヒンジに近いほど狭くなっている、
ことを特徴とする請求項1からのいずれか一項に記載のプロテクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一つの電線束を複数の電線束に分岐するプロテクタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、一つの電線束を複数の電線束に分岐するプロテクタがある(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−8922号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、一つの電線束を複数の電線束に分岐するにあたって、径の異なる複数の電線束をプロテクタに配置する場合がある。このとき、それらの電線束を誤った位置に配置する虞がある。
【0005】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、径の異なる複数の電線束をプロテクタに配置する場合に、それらの電線束を誤った位置に配置したことを作業者に知らせることができるプロテクタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前述した目的を達成するために、本発明に係るプロテクタは、下記(1)〜()を特徴としている。
(1) 少なくとも一部が開口するとともに、電線が内側に収容されるプロテクタ本体と、
前記プロテクタ本体の開口を覆うように該プロテクタ本体に組み付けられるプロテクタ蓋と、
を備え、
前記プロテクタ本体は、底壁と、底壁の両側から起立して設けれた側壁と、前記底壁から起立して設けられた少なくとも一つの仕切り壁と、を有し、該仕切り壁は、該側壁と該仕切り壁の間隔、または隣り合う該仕切り壁の間隔が異なるよう離間して前記底壁から起立して設けられ、
前記プロテクタ本体は、さらに、前記側壁と前記仕切り壁によって挟まれる空間、または隣り合う前記仕切り壁によって挟まれる空間に、前記プロテクタ蓋を該プロテクタ本体に組み付けた際の該プロテクタ蓋に向って前記底壁から突設されたリブを有し、
前記プロテクタ蓋は、該プロテクタ蓋を前記プロテクタ本体に組み付けた際、前記プロテクタ本体の前記底壁から、前記側壁と前記仕切り壁によって挟まれる空間、または隣り合う前記仕切り壁によって挟まれる空間に面する該プロテクタ蓋の内側までの高さ及び前記リブの高さが、前記側壁と前記仕切り壁の間隔、または隣り合う前記仕切り壁の間隔が狭い空間に面する箇所ほど低くなっている、こと。
) 上記()の構成のプロテクタにおいて、前記リブは、前記側壁及び前記仕切り壁が向かい合う方向、または隣り合う前記仕切り壁が向かい合う方向に沿って、前記底壁から突設され、
前記リブの上端は、前記側壁と前記仕切り壁の間隔、または隣り合う前記仕切り壁の間隔が狭い空間ほど曲率が大きくなるように円弧状に窪んでいる、こと。
) 上記()または()の構成のプロテクタにおいて、前記リブは、前記側壁及び前記仕切り壁、または隣り合う前記仕切り壁に連設されている、こと。
) 上記()または()の構成のプロテクタにおいて、前記プロテクタ蓋は、係止部を有し、
前記プロテクタ本体の前記側壁は、前記プロテクタ蓋の係止部に係止する係止部を有し、
前記リブは、前記プロテクタ本体の前記側壁における前記係止部が設けられた近傍に形成されている、こと。
) 上記(1)から()のいずれかの構成のプロテクタにおいて、前記プロテクタ蓋の一端及び前記プロテクタ本体の前記側壁の上端を連結し、前記プロテクタ蓋を回動自在に前記プロテクタ本体に固定するヒンジをさらに備え、
前記側壁と前記仕切り壁の間隔、または隣り合う前記仕切り壁の間隔は、これらの壁に挟まれる空間が前記ヒンジに近いほど狭くなっている、こと。
【0007】
上記(1)の構成のプロテクタによれば、側壁と仕切り壁に挟まれる空間、または隣り合う仕切り壁に挟まれる空間に所定の径よりも大きな電線束が載置された状態でプロテクタ蓋をプロテクタ本体に組み付けようとすると、プロテクタ蓋をプロテクタ本体に組み付けることができない、或いは、その組み付け作業を行う作業者にプロテクタ蓋に作用する電線束からの反発力によって違和感を感じさせる。この結果、分岐した電線束を所定の配置とは異なる誤った配置でプロテクタ本体に載置したことを作業者に認識させることができ、誤配線を未然に防止することができる。
また、リブ上に分岐した電線束を配置することになるため、その電線束の上端の位置を底上げすることができる。この結果、分岐した電線束を所定の配置とは異なる誤った配置でプロテクタ本体に載置したときに、プロテクタ蓋がより強く電線束に押し上げられることになり、作業者により強い違和感を感じさせることができる。また、一つの電線束から分岐した複数の電線束をプロテクタに固定するにあたって、例えば、結束バンドで複数の電線束とプロテクタ本体の側壁とを束ねる際、そのリブの高さを適宜調整しておけば、複数の電線束それぞれに結束バンドが密着するようにすることもでき、プロテクタ内で複数の電線束を良好に保持させることができる。ここで、誤った配線により一方の電線束の上端の位置が他方の電線束の上端の位置よりも低くなった場合、他方の電線束とプロテクタ本体の側壁のみが結束バンドに密着し、一方の電線束が結束バンドに接触せず、結束バンドによる保持が不十分となり長手方向へのずれが生じるおそれがある。しかし、本構成のプロテクタによれば、誤った配線を未然に防止することができるので、このような結束バンドによる保持不足も防止することができる。
上記()の構成のプロテクタによれば、リブを設けることにより、これらのリブに補強の役割を持たせることができ、よって、側壁及び仕切り壁を補強してプロテクタ本体の全体を強固にすることができる。
上記()の構成のプロテクタによれば、リブの上端は、それぞれが設けられた空間の幅が狭いほど曲率が大きくなるように円弧状に窪んでいるので、側壁と仕切り壁に挟まれる空間、または隣り合う仕切り壁に挟まれる空間に載置された電線束が所望の電線束の径よりも大きいほど、その載置された電線束は底壁からより離れて位置することになる。この結果、分岐した電線束を所定の配置とは異なる誤った配置でプロテクタ本体に載置したときに、その径の違いが大きいほどプロテクタ蓋がより強く電線束に押し上げられることになり、作業者により強い違和感を感じさせることができる。
上記()の構成のプロテクタによれば、プロテクタ本体の側壁の本体側の係止部が設けられた付近は、リブによって補強される。この結果、プロテクタ蓋の蓋側の係止部との係合をより強くすることができ、プロテクタ蓋をプロテクタ本体からより外れ難くすることができる。
上記()の構成のプロテクタによれば、電線束が収容される空間の幅は、ヒンジ部に近いほど狭くされているので、分岐した電線束を所定の配置とは異なる誤った配置でプロテクタ本体に載置したとき、径が大きな電線束ほどヒンジ部に近いところに位置することとなる。この状態でプロテクタ蓋をプロテクタ本体に組み付けようとしたとき、その径が大きな電線束から受ける反発力は大きくなる。この結果、分岐した電線束を所定の配置とは異なる誤った配置でプロテクタ本体に載置したときに、プロテクタ蓋がより強く電線束に押し上げられることになり、作業者により強い違和感を感じさせることができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、径の異なる複数の電線束をプロテクタに配置する場合に、それらの電線束を誤った位置に配置したことを作業者に知らせることができるプロテクタを提供できる。
【0009】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という。)を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態に係るプロテクタの斜視図である。
図2】実施形態に係るプロテクタ蓋を開いた状態プロテクタの斜視図である。
図3】実施形態に係るプロテクタ蓋を開いた状態のプロテクタを示す図であって、図3(a)は平面図、図3(b)は側面図である。
図4】実施形態に係るプロテクタを示す図であって、図4(a)はプロテクタ蓋を閉じた状態の断面図、図4(b)はプロテクタ蓋を開いた状態の断面図である。
図5】実施形態に係るプロテクタにワイヤハーネスを支持させた状態を示す図であって、図5(a)は複数の電線束収容空間それぞれに正しい径の電線束を配置した断面図、図5(b)は複数の電線束収容空間それぞれに誤った径の電線束を配置した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る実施形態の例を、図面を参照して説明する。
【0012】
図1は実施形態に係るプロテクタの斜視図、図2は実施形態に係るプロテクタ蓋を開いた状態プロテクタの斜視図、図3は実施形態に係るプロテクタ蓋を開いた状態のプロテクタを示す図であって、図3(a)は平面図、図3(b)は側面図、図4は実施形態に係るプロテクタを示す図であって、図4(a)はプロテクタ蓋を閉じた状態の断面図、図4(b)はプロテクタ蓋を開いた状態の断面図である。図5は実施形態に係るプロテクタにワイヤハーネスを支持させた状態を示す図であって、図5(a)は複数の電線束収容空間それぞれに正しい径の電線束を配置した断面図、図5(b)は複数の電線束収容空間それぞれに誤った径の電線束を配置した断面図である。
【0013】
図1から図4(b)に示すように、本実施形態に係るプロテクタ11は、車両等のフレーム(被配索材)にワイヤハーネス(電線)Wを支持させるもので、プロテクタ本体12と、このプロテクタ本体12の上部に組み付けられたプロテクタ蓋13とを有している。これらのプロテクタ本体12及びプロテクタ蓋13から構成されたプロテクタ11は、合成樹脂によって形成されている。
【0014】
このプロテクタ11は、一端側が屈曲された平面形状に形成されており、これにより、ワイヤハーネスWは、プロテクタ11内で屈曲されて配線される。このプロテクタ11に保持されるワイヤハーネスWは、1束の電線束Bを、半径が異なる2束の電線束B1,B2に分岐したもので、電線束B1,B2は、電線束B1の方が電線束B2よりも大径とされている。
【0015】
プロテクタ本体12は、底壁21と、この底壁21の両側部に起立して設けられた側壁22,23とを有する上方側が開放された断面視凹状に形成されている。そして、このプロテクタ本体12の底壁21と側壁22,23とから形成された凹状部分が、ワイヤハーネスWの収容部Sとされている。
【0016】
プロテクタ蓋13は、プロテクタ本体12の収容部Sの開口部分を覆う蓋本体24を備えており、この蓋本体24は、プロテクタ本体12の他方側の側壁23に対して連結されている。そして、このプロテクタ蓋13は、蓋本体24と側壁23との連結箇所からなるヒンジ部(ヒンジ)25で回動可能とされている。
【0017】
プロテクタ本体12の一方側の側壁22とプロテクタ蓋13の蓋本体24のヒンジ部25側と反対側の端部との間には、複数の係止機構31が設けられている。また、プロテクタ本体12の他方側の側壁23とプロテクタ蓋13の蓋本体24のヒンジ部25側の端部との間にも、一つの係止機構31が設けられている。
【0018】
これらの係止機構31は、プロテクタ本体12の側壁22,23に形成された本体側係止部(係止部)32と、プロテクタ蓋13の蓋本体24に形成された蓋側係止部(係止部)33とを有している。本体側係止部32は、上下に沿って形成された挿通孔34を有している。また、挿通孔34を形成する外壁部35には、窓部35aが形成されている。
【0019】
蓋側係止部33は、プロテクタ本体12側へ突出する係止片41を有しており、この係止片41には、その外面側に、係止爪42が形成されている。そして、この蓋側係止部33の係止片41を本体側係止部32の挿通孔34へ挿し込むと、係止片41の係止爪42が、本体側係止部32の窓部35aの縁部に係止し、よって、プロテクタ本体12とプロテクタ蓋13とが係止機構31で係止される。
【0020】
また、プロテクタ本体12には、その一端側に、係止蓋51が設けられている。この係止蓋51も、その一側部が、他方側の側壁23に連結されており、この側壁23との連結箇所からなるヒンジ部52で回動可能とされている。また、係止蓋51のヒンジ部52と反対側の端部と一方側の側壁22との間には、係止機構31が設けられ、係止蓋51と側壁22とが係止可能とされている。
【0021】
プロテクタ本体12は、収容部S内において、底壁21から起立して設けられた仕切り壁61,62を有している。これらの仕切り壁61,62は、一方側の側壁22側から間隔をあけて二列に配列されており、二列目の仕切り壁62は、複数に分割されている。
【0022】
そして、これらの仕切り壁61,62によって、プロテクタ本体12の収容部Sは、幅方向に複数に分割され、複数の電線束収容空間(空間)S1,S2,S3とされている。
【0023】
ここで、図4(a)に示すように、側壁22と仕切り壁61の間隔及び隣り合う仕切り壁61,62同士の間隔は、互い異なるように離間されている。具体的には、側壁22と仕切り壁61の間隔よりも隣り合う仕切り壁61,62同士の間隔の方が小さくされている。これにより、電線束収容空間S1,S2は、その幅寸法W1,W2の関係が、W1>W2とされている。
【0024】
また、プロテクタ蓋13の蓋本体24は、幅方向の略中央に段差を有している。これにより、収容部Sに面する蓋本体24の下面は、ヒンジ部25から離間する側の下面24Aに対して、ヒンジ部25側の下面24Bが収容部S側へ下げられている。
【0025】
そして、プロテクタ蓋13は、プロテクタ蓋13をプロテクタ本体12に組み付けた際、プロテクタ本体12の底壁21から側壁22と仕切り壁61によって挟まれる電線束収容空間S1に面するプロテクタ蓋13の内側までの高さH1よりも、プロテクタ本体12の底壁21から仕切り壁61,62によって挟まれる電線束収容空間S2に面するプロテクタ蓋13の内側までの高さH2が低く(H1>H2)されている。つまり、電線束収容空間S1,S2では、幅寸法が狭い方ほど高さ寸法が低くされている。
【0026】
プロテクタ本体12は、側壁22と仕切り壁61によって挟まれる電線束収容空間S1に、プロテクタ蓋13をプロテクタ本体12に組み付けた際のプロテクタ蓋13に向って底壁21から突設されたリブ71を有している。
【0027】
また、プロテクタ本体12は、隣り合う仕切り壁61,62によって挟まれる電線束収容空間S2にも、プロテクタ蓋13をプロテクタ本体12に組み付けた際のプロテクタ蓋13に向って底壁21から突設されたリブ72を有している。
【0028】
リブ71は、間隔をあけて複数設けられており、それぞれ側壁22及び仕切り壁61が向かい合う方向に沿って底壁21から突設され、側壁22及び仕切り壁61に連接されている。同様に、リブ72は、間隔をあけて複数設けられており、それぞれ隣り合う仕切り壁61,62が向かい合う方向に沿って底壁21から突設され、隣り合う仕切り壁61,62に連設されている。
【0029】
リブ71,72は、それぞれ上端部分が円弧状に窪んだ形状に形成されており、この円弧状端部71a,72aの上方側に電線束B1,B2が配置される。リブ71の円弧状端部71aとリブ72の円弧状端部72aとは、それぞれ異なる曲率とされている。具体的には、電線束収容空間S1側のリブ71の円弧状端部71aの曲率C1よりも電線束収容空間S2側のリブ72の円弧状端部72aの曲率C2が大きく(C1<C2)されている。つまり、電線束収容空間S1,S2では、幅寸法が狭い方ほど曲率が大きくされている。このような円弧状端部71a,72aは、該円弧状端部71a,72aに配置される電線束B1,B2の径の曲率と略一致するように曲率が設計されている。
【0030】
また、電線束収容空間S1側に設けられたリブ71は、プロテクタ本体12の側壁22における本体側係止部32が設けられた近傍に形成されている。これにより、側壁22は、本体側係止部32の形成箇所及びその周辺がリブ71によって補強され、外力等による変形が大幅に抑えられるようになっている。
【0031】
また、プロテクタ本体12には、側壁22の上端に、溝部22aが形成され、また、側壁23側には、プロテクタ蓋13と連結するヒンジ部25に、孔部25aが形成されている。これらの溝部22a及び孔部25aには、結束バンド75が挿通可能とされている。そして、これらの溝部22a及び孔部25aへ通した結束バンド75は、プロテクタ本体12の下方側へ通され、電線束収容空間S1,S2に電線束B1,B2を収容した状態でプロテクタ本体12に結束されるようになっている。これにより、電線束B1,B2は、結束バンド75によってプロテクタ本体12に保持される。
【0032】
上記構造のプロテクタ11は、プロテクタ本体12の下面側に、二つのクランプ80を有している。
【0033】
クランプ80は、支柱部81と、この支柱部81の両側に形成された一対の係止羽根82とを有している。係止羽根82は、支柱部81の先端近傍で連結され、支柱部81の根元側へ向かって次第に支柱部81から離間されている。このように、クランプ80は、一対の係止羽根82を備えた両羽根クランプである。
【0034】
また、プロテクタ本体12の下面には、クランプ80のそれぞれの係止羽根82に対向する位置に、凸部83が形成されている。これらの凸部83は、クランプ80を挟んで互いに平行に形成された凸条形状とされている。
【0035】
クランプ80を有するプロテクタ本体12は、車両等のフレーム(図示略)に固定される。このフレームは、二つの係止孔を有しており、これらの係止孔に、クランプ80が係止される。具体的には、クランプ80をフレームの係止孔へ挿し込む。すると、クランプ80の係止羽根82が係止孔によって一旦窄められ、その後、フレームの裏面側で係止羽根82が開くこととなる。これにより、フレームの裏面側にそれぞれの係止羽根82が係止することとなり、よって、クランプ80が係止孔に係止し、フレームにプロテクタ本体12が固定される。このとき、フレームは、クランプ80の係止羽根82とプロテクタ本体12の下面の凸部83とによって挟持され、よって、プロテクタ11は、フレームに対してがたつきなく固定される。
【0036】
上記のプロテクタ11にワイヤハーネスWを保持させる場合について説明する。
【0037】
まず、プロテクタ蓋13及び係止蓋51を開いた状態で、プロテクタ本体12の収容部SにワイヤハーネスWを収容する。
【0038】
ここで、ワイヤハーネスWは、1束の電線束Bから径の異なる2束の電線束B1,B2に分岐されており、電線束B1は、電線束B2よりも大径とされている。
【0039】
したがって、このワイヤハーネスWをプロテクタ本体12の収容部Sに収容させるには、まず、電線束Bをプロテクタ本体12の収容部Sにおける一端側のハーネス導入部12aへ配置させる。そして、図5(a)に示すように、電線束B1を電線束収容空間S1へ載置させ、この電線束B1よりも小径の電線束B2を電線束収容空間S2へ載置させる。
【0040】
ワイヤハーネスWをプロテクタ本体12の収容部Sに収容したら、プロテクタ本体12の上部を覆うように係止蓋51を回動させ、係止蓋51をプロテクタ本体12に係止機構31で係止させる。このようにすると、ワイヤハーネスWの電線束Bが係止蓋51によって押え付けられてプロテクタ11に確実に保持される。
この状態で、溝部22a及び孔部25aへ結束バンド75を通してプロテクタ本体12の下方側へまわして結束する。すると、プロテクタ本体12の電線束収容空間S1,S2へ載置された電線束B1,B2がプロテクタ本体12に縛り付けられて保持される。
【0041】
その後、プロテクタ本体12の上部を覆うようにプロテクタ蓋13を回動させ、プロテクタ蓋13をプロテクタ本体12に係止機構31で係止させる。このようにすると、ワイヤハーネスWの電線束B1,B2がプロテクタ蓋13によって押え付けられてプロテクタ11に確実に保持される。
【0042】
このように、上記のプロテクタ11を用いれば、断面円形の1束の電線束Bを、半径が異なる断面円形の2束の電線束B1,B2に分岐し、それらの2束の電線束B1,B2を横並びに並べることができる。これにより、電線束の厚みが変えられ、よって、ワイヤハーネスWの断面が円形から矩形へと近づけられる。つまり、狭い空間に電線束を這わさなければならないときに、電線束の厚みを変えて円滑に配線することができる。
【0043】
ところで、上記の組み付け作業において、図5(b)に示すように、小径の電線束B2を収容する電線束収容空間S2に、誤って大径の電線束B1が載置されると、電線束B1は、電線束収容空間S2に入りきらずにプロテクタ本体12の上方へはみ出そうとしてしまう。したがって、この状態で作業者がプロテクタ蓋13をプロテクタ本体12に組み付けようとしても、電線束B1がプロテクタ本体12の上方へはみ出そうとしているので、プロテクタ蓋13をプロテクタ本体12に組み付けることができない。また、その際、作業者はプロテクタ蓋13が円滑に閉まらないことから違和感を感じることとなる。あるいは、プロテクタ蓋13をプロテクタ本体12に組み付けることができたとしても、その組み付け過程においてプロテクタ蓋13に反発力が作用し、作業者は違和感を感じることとなる。
【0044】
このように、上記実施形態に係るプロテクタによれば、側壁22と仕切り壁61に挟まれる電線束収容空間S1、または隣り合う仕切り壁61,62に挟まれる電線束収容空間S2に所定の径よりも大きな電線束が載置された状態でプロテクタ蓋13をプロテクタ本体12に組み付けようとすると、プロテクタ蓋13をプロテクタ本体12に組み付けることができない、或いは、その組み付け作業を行う作業者に違和感を感じさせる。この結果、分岐した電線束B1,B2を所定の配置とは異なる誤った配置でプロテクタ本体12に載置したことを作業者に認識させることができ、誤配線を未然に防止することができる。
【0045】
また、リブ71,72上に分岐した電線束B1,B2を配置することになるため、その電線束B1,B2の上端の位置を底上げすることができる。この結果、分岐した電線束B1,B2を所定の配置とは異なる誤った配置でプロテクタ本体12に載置したときに、プロテクタ蓋13がより強く電線束に押し上げられることになり、作業者により強い違和感を感じさせることができる。また、一つの電線束Bから分岐した複数の電線束B1.B2をプロテクタ11に固定するにあたって、結束バンド75で複数の電線束B1,B2とプロテクタ本体12の側壁22,23とを束ねる際、そのリブ71,72の高さを適宜調整しておけば、複数の電線束B1,B2それぞれに結束バンド75が密着するようにすることもでき、プロテクタ11内で複数の電線束B1,B2を良好に保持させることができる。ここで、誤った配線により一方の電線束B2の上端の位置が他方の電線束B1の上端の位置よりも低くなった場合、他方の電線束B1とプロテクタ本体12の側壁22,23のみが結束バンド75に密着し、一方の電線束B2が結束バンド75に接触せず、結束バンド75による保持が不十分となり長手方向へのずれが生じるおそれがある。しかし、本実施形態では、誤った配線を未然に防止することができるので、このような結束バンド75による保持不足も防止することができる。
【0046】
また、リブ71,72を設けることにより、これらのリブ71,72に補強の役割を持たせることができ、よって、側壁22及び仕切り壁61,62を補強してプロテクタ本体12の全体を強固にすることができる。
【0047】
さらに、リブ71,72の上端からなる円弧状端部71a,72aは、それぞれが設けられた電線束収容空間S1,S2の幅が狭いほど曲率が大きくなるように円弧状に窪んでいるので、側壁22と仕切り壁61に挟まれる電線束収容空間S1、または隣り合う仕切り壁61,62に挟まれる電線束収容空間S2に載置された電線束が所望の電線束の径よりも大きいほど、その載置された電線束は底壁21からより離れて位置することになる。この結果、分岐した電線束B1,B2を所定の配置とは異なる誤った配置でプロテクタ本体12に載置したときに、その径の違いが大きいほどプロテクタ蓋13がより強く電線束に押し上げられることになり、作業者により強い違和感を感じさせことができる。
【0048】
また、プロテクタ本体12の側壁22の本体側係止部32が設けられた付近は、リブ71によって補強される。この結果、プロテクタ蓋13の蓋側係止部33との係合をより強くすることができ、プロテクタ蓋13をプロテクタ本体12からより外れ難くすることができる。
【0049】
また、電線束収容空間S1,S2の幅は、ヒンジ部25に近いほど狭くされているので、分岐した電線束B1,B2を所定の配置とは異なる誤った配置でプロテクタ本体12に載置したとき、径が大きな電線束B1ほどヒンジ部25に近いところに位置することとなる。この状態でプロテクタ蓋13をプロテクタ本体12に組み付けようとしたとき、その径が大きな電線束B1から受ける反発力は大きくなる。この結果、分岐した電線束B1,B2を所定の配置とは異なる誤った配置でプロテクタ本体12に載置したときに、プロテクタ蓋13がより強く電線束に押し上げられることになり、作業者により強い違和感を感じさせることができる。
【0050】
なお、上記の実施形態では、1束の電線束Bを2束の電線束B1,B2に分岐してプロテクタ11へ保持させる場合を例示したが、電線束の分割数は2束に限定されない。例えば、実施形態に係るプロテクタ11では、1束の電線束Bを3束の電線束B1,B2,B3に分割し、それぞれ電線束収容空間S1,S2,S3へ収容させる場合もある。
【0051】
また、上記実施形態では、電線収容空間S1,S2の高さH1,H2を調整するために、プロテクタ蓋13の蓋本体24の下面に段差を設けたが、電線収容空間S1,S2上における蓋本体24の下面にリブ等の突起を設けて高さH1,H2を調整しても良い。
【0052】
尚、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【符号の説明】
【0053】
11 プロテクタ
12 プロテクタ本体
13 プロテクタ蓋
21 底壁
22,23 側壁
25 ヒンジ部(ヒンジ)
32 本体側係止部(係止部)
33 蓋側係止部(係止部)
61,62 仕切り壁
71,72 リブ
B,B1,B2 電線束
S1,S2,S3 電線束収容空間(空間)
W ワイヤハーネス(電線)
図1
図2
図3
図4
図5