【実施例】
【0012】
実施例に係る流体管の穿孔
手段につき、
図1から
図8を参照して説明する。
図1に示すように、本実施例の流体管1は、断面視略円形状に形成された高密度ポリエチレン等の樹脂製管から成り、内部には流体としての上水が流れている。
図7及び
図8に示すように、この流体管1の所定箇所には、流体管1内の流体の流路を遮断するための制流体11を挿入するための挿入孔1bが穿設されるようになっている。流体管1は、この挿入孔1bを介して制流体11により流路を開閉することで、流体管1内の流体の流量を調整している。
【0013】
尚、流体管1の材質は高密度ポリエチレンに限らずその他ポリオレフィン樹脂或いは所定の樹脂から成る熱融着可能なものでもよい。更に尚、本実施例では流体管1内の流体は上水であるが、流体管1の内部を流れる流体は必ずしも上水に限らず、例えば工業用水や下水等であってもよいし、また気体や気液混合状態の流体が流れる流体管であっても構わない。
【0014】
本実施例における流体管1の穿設には、前述した本発明における筐体としての管継手2及び制流体11と、後述する穿孔装置50を用いる。このうち、流体管1の外周面1aに固定に取り付けられる管継手2は、いわゆる割T字管である。これら管継手2は、
図1及び
図2に示すように、流体管1に対して上方から配設され、流体管1の外周の上側を被覆する分岐部3と、流体管1に対して下方から配設され、流体管1の外周の下側を被覆するカバー体4と、から構成されている。これら分岐部3及びカバー体4は、高密度ポリエチレン等の熱融着可能な樹脂材により構成されている。
【0015】
分岐部3は、流体管1の上部における外周面1aに当接する当接部3aを備えている。流体管1の上部における外周面1aに当接する当接部3a内部には、電流が流れることで発熱する電熱線3bが、後述する流体管1に穿設される挿入孔1bの周囲を囲うように、当接部3a略全面に亘り連続して延設されている。電熱線3bの各端部は、外部電源と電気的に接続可能に分岐部3の外面に設けた接続部6に接続されている。
【0016】
また、分岐部3には、当接部3aに連続して流体管1の外径方向に向けてフランジ3c,3cが突出形成されている。これらフランジ3cの流体管1における管軸方向の幅寸法は、分岐部3の流体管1における管軸方向の幅寸法と略同一寸法に形成されている。これらフランジ3cの内部には、フランジ3c,3cの流体管1における管軸方向の略全長に亘って電熱線3dが延設されている。電熱線3dの各端部は、外部電源と電気的に接続可能にフランジ3c,3cの外面に設けた接続部7に接続されている。
【0017】
分岐部3の上部には、流体管1の管軸と略直交するように、流体管1における管軸方向に沿って上方に向けて分岐口3gが形成されている。分岐口3g内は、上下方向に向けて貫通形成されており、分岐口3gの上端部には、上フランジ3iが形成されている。
【0018】
一方、カバー体4は、
図1及び
図2に示すように、分岐部3と略同一の流体管1における管軸方向の幅寸法を有し、流体管1の下部における外周面1aに当接する当接部4aを備えている。流体管1の下部における外周面1aに当接する当接部4a内部には、電流が流れることで発熱する電熱線4bが、当接部4a略全面に亘り連続して延設されている。電熱線4bの各端部は、外部電源と電気的に接続可能にカバー体4の外面に設けた接続部8に接続されている。
【0019】
また、カバー体4には、当接部4aに連続して流体管1の外径方向に向けてフランジ4c,4cが突出形成されている。これらフランジ4cの流体管1における管軸方向の幅寸法は、カバー体4の流体管1における管軸方向の幅寸法と略同一寸法に形成されている。
【0020】
これらフランジ4cは、カバー体4が流体管1に対して下方から配設されることで、分岐部3に形成されたフランジ3cに対して対向配置される。このように構成された管継手2を流体管1に対して取り付けるには、先ず、
図1に示すように、分岐部3を流体管1に対して上方から配設するとともに、カバー体4を流体管1に対して下方から配設する。
【0021】
次に、両フランジ3c,4cを図示しないボルト・ナットにより緊締し、フランジ3cとフランジ4cとを密着させる。尚、本実施例における当接部3a,4aには、図示しない係止爪が設けられている。このため、図示しないボルト・ナットを緊締してフランジ3cとフランジ4cとを密着させることで、当接部3a,4aの流体管1に向けての弾性変形がなされ、前記係止爪が流体管1の外周面1aに食い込む。これら前記係止爪が流体管1の外周面1aに食い込むことで、管継手2が流体管1に対して移動不能に仮固定される。
【0022】
そして、図示しない外部電源に接続されている電源ケーブルを分岐部3に形成された各接続部6,7及びカバー体4に形成された接続部8に接続し、前記外部電源から所定時間電源を供給する。電源供給された電熱線3b,3d,4bが高温に発熱することで、樹脂からなる当接部3a、4a及び当接部3a、4aに接触している流体管1の外周面1aと、フランジ3c,4c間と、を加熱し次第に溶融する。
【0023】
溶融された当接部3a、4a及び流体管1の外周面1aと、フランジ3c,4c間とは、互いに混ぜ合わされ、電熱線3b,3d,4bによる発熱を停止し常温に下がることで一体化して凝固する。このようにして、管継手2は、熱融着によって流体管1に対して水密に取り付けられる。
【0024】
これらの管継手2と流体管1とを熱融着によって水密に取り付けることができ、また、流体管1を遮断する制流体11(後述)として汎用の遮断弁を使用してシール性能を向上させることができるので、不断流状態を維持するための管継手2の構造を簡素にでき、且つその製造も容易にすることができる。
【0025】
次に、このように流体管1に対して取り付けられた管継手2に対しての制流体11の取り付けについて説明する。先ず、
図4及び
図5に示すように、分岐口3gの上フランジ3iに、内部に作業弁36及び本発明における穿孔手段としての穿孔装置50を配設した上部ケース35を水密に接続する。穿孔装置50は、図示しない駆動手段に接続され分岐口3g内を流体管1に向け軸方向に伸出する軸部材51と、軸部材51の先端に固設され流体管1の上部に分岐口3gを介して非円形状の挿入孔1b(
図6参照)を穿設する本発明における穿孔手段としてのカッタ部材52と、から主として構成されている。更に、カッタ部材52は、鋭利な本発明における刃部としての穿孔刃52aを備えている。
【0026】
図3(a)及び
図3(b)に示すように、カッタ部材52は、後述する制流体11の形状に沿うように流体管1の周方向に向けて長寸に形成されており、穿孔刃52aは、カッタ部材52の先端の全周にかけて無端状に形成されている。
【0027】
また、カッタ部材52の内部は、カッタ部材52の形状に沿って下方に開口した本発明における収容部としての開口部52dが形成されている。この開口部52d内には、カッタ部材52内を軸部材51の軸方向に移動可能な、本発明におけるガイド部としてのガイド板53が配置されている。このガイド板53は、底面視で開口部52dと略同一形状に形成されているとともに、カッタ部材52の側方を向く外周面は、カッタ部材52の内周面と摺接する垂直面53aに形成されている。
【0028】
更に、ガイド板53の下端部は、流体管1の外周面1aに当接する水平面に形成されており、穿孔刃52aよりも流体管1に向けて僅かに突出して配置されている。ガイド板53の上端部には、カッタ部材52の上方まで貫通するガイド棒53bが立設されており、このガイド棒53bの周囲には、ガイド板53を流体管1に向けて付勢するコイルバネ53cが配置されている。
【0029】
このため、ガイド板53が開口部52d内を軸部材51の軸方向に移動することによって、カッタ部材52は、開口部52dの内周面をガイド板53の垂直面53aにガイドされながらガイド板53に対して軸部材51の軸方向に相対移動するようになっている。
【0030】
次に、これらカッタ部材52が構成された穿孔装置50による流体管1の穿孔について説明する。まず、
図4及び
図5に示すように、カッタ部材52は、軸部材51の軸方向に伸出されることで、流体管1の上端部における外周面1aにガイド板53の下端部を当接させる。
【0031】
そして、継続してカッタ部材52が軸部材51の軸方向に伸出されることで、カッタ部材52は、ガイド板53によって流体管1の外周面に対して継続して押圧させることで、ガイド板53の下端部と流体管1の外周面1aとの間で生じている摩擦力により、カッタ部材52が流体管1に対して挿入孔1bを穿設する位置固定を行う。
【0032】
以降、ガイド板53は、更にカッタ部材52が軸部材51の軸方向に伸出されることで、ガイド棒53bに沿って圧縮されるコイルバネ53cから付勢力を受けながら流体管1の外周面1aに当接した位置で留まる。この間、カッタ部材52は、ガイド板53の垂直面53aに沿って流体管1の外周面1aに向けて進行しつつ、流体管1の上端部における外周面1aに押圧され、流体管1の管壁に挿入孔1bを穿設する。
【0033】
尚、カッタ部材52が流体管1に挿入孔1bを穿設する過程において、流体管1のカッタ部材52によって押圧される箇所は、カッタ部材52の押圧により弾性変形するとともに、カッタ部材52が挿入孔1bを穿設することで流体管1から分断されて切片1eとなる。この切片1eは、開口部52d内にて弾性復元力がはたらくことで略全周に亘ってカッタ部材52の内周面に接触する。切片1eは、このカッタ部材52の内周面との間で生じる摩擦力によって、カッタ部材52内にガイド板53に当接した状態で収容保持されるようになっている。
【0034】
穿孔装置50による挿入孔1bの穿設後は、
図6に示すように、穿孔装置50を上方に引き上げて上部ケース35内に配置させた後、作業弁36を操作して分岐口3gの止水を行う。そして、穿孔装置50を上部ケース35の上端部から取り外すとともに、
図6に示すように、上部ケース35の上端部に外カバー70を水密に接続する。この外カバー70は、側方に向けて一対の開口71,71を備えており、これら開口71,71は、蓋体72,72及びボルト・ナット73によって水密に閉塞されている。
【0035】
外カバー70の図示しない上端部からは、図示しないアームが上下動可能に取り付けられている。尚、該アームの下端部には、予め挿入孔1bを介して流体管1の管路を遮断若しくは開放するための制流体11が内部に配設された弁蓋60が中間部材75を介して接続されており、前記アームを外カバー70の前記上端部に取り付ける際に弁蓋60が外カバー70内に配置される。尚、前記アームと外カバー70の前記上端部との間は、図示しないゴム体によって水密に保持されている。更に尚、中間部材75は筒状に形成されており、内部に後述する回転操作部63aが挿通配置されている(
図7参照)。尚、本実施例における制流体11は、流体管1の管軸方向の幅寸法が、流体管1の径方向の幅寸法よりも短寸に形成された略板状に形成されている。
【0036】
外カバー70を上部ケース35の上端部に水密に接続した後は、分岐口3gと外カバー70とを開閉弁を有する図示しないホースやバイパス管等の連通部材によって接続する。そして、外カバー70の上端部に設けられた図示しない空気弁を開放するとともに、作業弁36を操作して分岐口3gを開放することで、外カバー70内及び分岐口3g内を流体管1内を流れていた上水で満たす。
【0037】
外カバー70内及び分岐口3g内が上水で満たされた後は、前記空気弁を閉塞し、前記開閉弁を開放して分岐口3gと外カバー70とを連通させることで、外カバー70内の水圧と分岐口3g内の水圧とを常時一定に保つとともに、弁蓋60を外カバー70に予め取り付けた押圧手段(図示略)により不断水状態で押圧することで、分岐口3gの上フランジ3iに弁蓋60を密封状に組み付ける。
【0038】
このとき、分岐口3g内と外カバー70内とは、流体管1内を流れる上水で満たされて同一の水圧となるので、弁蓋60を上フランジ3iに組み付ける際に流体管1内を流れる上水から弁蓋60が受ける抗力を小さく抑えることができる。弁蓋60を上フランジ3iに組み付けた後は、蓋体72,72を取り外し、開口71,71を介して弁蓋60から中間部材75を分離する。
【0039】
図6及び
図7に示すように、弁蓋60は、略板状の制流体11の形状に沿うように開口した分岐口3g内に対して挿入可能な形状に形成されており、弁蓋60の下部の外周に沿って設けられたOリング61により、分岐口3gの内周面に沿って水密に嵌挿されている。また弁蓋60を定置させるように分岐口3gの外方から固定ボルト62を螺挿することで弁蓋60の位置固定を行う。固定ボルト62は、弁蓋60に対して螺挿されることで、弁蓋60を上下方向に規制している。
【0040】
図7及び
図8に示すように、回転ネジ63は、弁蓋60の頂部に穿設された挿通孔64に回転自在に貫通して、上端部を弁蓋60の外部に突出して取り付けられている。押え板65は、弁蓋60の上端面にボルト66で固定され、回転ネジ63の抜出しを阻止する。上記構成により、回転ネジ63は弁蓋60に対し正逆両方向に回転自在であるが上下動はしない。63bは、回転ネジ63の上端部を除いて略全長に亘ってその周面が螺設されたネジ部である。
【0041】
図6及び
図7に示すように、ネジこま67は、制流体11の上端部に形成されたガイド溝69に嵌合するとともに、ネジ部63bに螺合しており、回転ネジ63の上端部に形成された回転操作部63aの回転に応じネジ部63bが回転することで、ネジ部63bに沿って螺挿するネジこま67に追随して制流体11が上下動可能となる。
【0042】
図8に示すように、制流体11には、回転ネジ63のネジ部63bを挿入する挿入孔68が形成されている。また、
図6及び
図7に示すように、制流体11における上下流側の外面に、上下方向に沿った張出部11a,11aが、弁蓋60若しくは分岐口3gの内面に設けられた溝部60aに沿って摺接可能に設けられている。このように構成された張出部11a,11aが溝部60aに当接することで、回転ネジ63の回転に伴う制流体11の回転を規制されるため、制流体11に曲げや捻れが生じることを防止できるようになっている。
【0043】
このように制流体11が取り付けられた弁蓋60を、作業弁36が開放された後に前記外カバーに予め取り付けた前記押圧手段により分岐口3gに向けて不断水状態で押圧することで、流体管1内を流れる上水から弁蓋60が受ける抗力を小さく抑えながら弁蓋60を分岐口3gの上フランジ3iに密封状に組付け、固定ボルト62を弁蓋60に螺挿する。
【0044】
更に、前記連通部材の開閉弁を閉塞するとともに、上フランジ3i上から上部ケース35及び外カバー70を取り外す。最後に、リング状のフランジ56を弁蓋60に挿入し、ボルト・ナット57でフランジ56と分岐口3gとを締結する。
【0045】
以後、制流体11は、
図7及び
図8に示すように、図示しないハンドルによる回転操作部63aの回転によって下方に移動することで流体管1の内周面及び挿入孔1bの内周面の全周に亘って弾性変形しながら水密に当接して流体管1の管路を遮断するとともに、前記ハンドルによる回転操作部63aの回転によって上方に移動することで流体管1の管路を開放可能となる。
【0046】
以上、本実施例における流体管1の穿孔
手段にあっては、流体管1を密着状に被覆する管継手2を流体管1と一体に取り付けた後、管継手2内に配置したカッタ部材52を、流体管1の外周面1aに対し流体管1の径方向に向けて押圧することで、挿入孔1bを制流体11に沿う形状に穿設するので、カッタ部材52が、流体管1と一体化した密封状態の管継手2内で、制流体11に沿う必要最小限の形状に抑えて挿入孔1bを穿設することで、流体管1内からの流体の漏出を防止するとともに、樹脂材からなる流体管1が管継手2に保持された状態で穿設されるので、挿入孔1bを歪み無く穿設できる。
【0047】
また、管継手2と流体管1との当接部3a,4aを熱融着により一体に融着させることで、管継手2と流体管1との当接部3a、4aが融着することで流体管1と管継手2との間の密着性を向上させることができるとともに、流体管1の挿入孔1bを穿設する箇所の強度をカッタ部材52の押圧に抗して変形しないよう、強度を向上させることができる。
【0048】
また、カッタ部材52は、流体管1の径方向に進入し挿入孔1bを穿設する穿孔刃52aと、流体管1の外周面1aに当接し、挿入孔1bを穿設する穿孔刃52aをガイドするガイド板53と、を備えるので、穿孔刃52aが、流体管1の穿設位置での位置ぶれを流体管1の外周面1aに当接しているガイド板53にガイドされることで、流体管1の外周面1aにおける正確な位置に挿入孔1bを穿設することができる。
【0049】
また、穿孔刃52aは、挿入孔1bを穿設したことで生じる流体管1の切片1eを収容する開口部52dを有するので、挿入孔1bの穿設で生じる切片1eを開口部52dに収容することで、流体管1内から離脱して流体によって切片1eが流れてしまうことを防止することができる。
【0050】
以上、本発明の実施例を図面により説明してきたが、具体的な構成はこれら実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
【0051】
例えば、前記実施例では、分岐部3とカバー体4とを熱融着することで、管継手2の流体管1に対しての取り付けを行ったが、例えば、フランジ3c,4cを緊締したことで当接部3a,4aと流体管1の外周面1aに生じる摩擦力によって管継手2の流体管1に対しての取り付けを行うようにしてもよい。
【0052】
また、前記実施例では、管継手2を分岐部3とカバー体4とで構成したが、挿入孔1bの周囲を密封しつつ流体管1に対して固着可能であれば、管継手2を分岐部3のみで構成してもよい。
【0053】
また、前記実施例では、管継手2を構成する分岐部3及びカバー体4を高密度ポリエチレン等の熱融着可能な樹脂材により構成したが、例えば、これら分岐部若しくはカバー体の一部又は全部を金属で構成することで、管継手の強度を向上させるようにしてもよい。
【0054】
また、前記実施例では、制流体11を流体管1の管軸方向の幅寸法が、流体管1の径方向の幅寸法よりも短寸に形成された略板状に形成し、挿入孔1bをこの制流体11の形状に沿うように穿設したが、制流体の形状及び制流体の形状に沿うように穿設される挿入孔1bの形状は、流体管1の流路の遮断が可能であれば特に問わない。