特許第5749970号(P5749970)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5749970
(24)【登録日】2015年5月22日
(45)【発行日】2015年7月15日
(54)【発明の名称】空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 11/03 20060101AFI20150625BHJP
【FI】
   B60C11/03 300E
   B60C11/03 300A
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2011-104554(P2011-104554)
(22)【出願日】2011年5月9日
(65)【公開番号】特開2012-232722(P2012-232722A)
(43)【公開日】2012年11月29日
【審査請求日】2014年3月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【弁理士】
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(72)【発明者】
【氏名】小原 健太郎
【審査官】 柳楽 隆昌
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−063213(JP,A)
【文献】 特開2000−158915(JP,A)
【文献】 特開2000−309207(JP,A)
【文献】 特開平11−151912(JP,A)
【文献】 特開2004−196145(JP,A)
【文献】 実開平02−041802(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 11/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレッド部に、タイヤ周方向に連続してのびる主溝と、該主溝と交差する向きにのびる複数本の横溝とが設けられることにより、前記主溝と前記横溝とで区分されたブロックがタイヤ周方向に並ぶブロック列が形成された空気入りタイヤであって、
前記横溝は、タイヤ周方向に対する角度が80度以上であり、
前記ブロックは、前記横溝に面する軸方向壁面と、前記主溝に面する周方向壁面とを有し、
前記軸方向壁面には、ブロック踏面の法線方向に対して30度以下の角度で溝深さ方向にのびる半径方向リブが前記横溝の長さ方向に複数本隔設される一方、
前記周方向壁面には、ブロック踏面に対して10度以下の角度で前記主溝の長さ方向にのびる周方向リブが溝深さ方向に複数本隔設され
前記半径方向リブは、前記ブロックのタイヤ軸方向の両側部に設けられた外側半径方向リブと、これらの外側半径方向リブの間に設けられた中間半径方向リブとを含み、
該中間半径方向リブの突出幅は、前記外側半径方向リブの突出幅よりも大きいことを特徴とする空気入りタイヤ。
【請求項2】
前記中間半径方向リブの突出幅は、前記外側半径方向リブの突出幅の150%〜200%である請求項1記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
前記周方向リブは、前記主溝の溝底から該主溝の溝深さの10%離間した位置よりもタイヤ半径方向外側の踏面側領域に設けられる請求項1又は2記載の空気入りタイヤ。
【請求項4】
前記周方向リブは、前記主溝の溝底からトレッド踏面側に向かって、突出幅が漸増する請求項1乃至3のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
【請求項5】
前記周方向リブは、そのタイヤ周方向の両端が、前記周方向壁面のタイヤ周方向の両端に接することなく終端する請求項1乃至4のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、操縦安定性能の低下を抑制しつつノイズ性能を向上させた空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
トレッド部に、タイヤ周方向にのびる主溝と、該主溝と交差する向きにのびる横溝とで区分された複数のブロックがタイヤ周方向に並ぶブロックパターンの空気入りタイヤが知られている。
【0003】
しかしながら、上述のブロックパターンを有する空気入りタイヤでは、接地時に路面から大きな衝撃を受けてブロックが振動するため、ノイズ性能に難があった。また、図5に示されるように、トラクションT等のタイヤ周方向の大きな力により、ブロックbのタイヤ周方向の端部b1が路面rから浮き上がり、ひいては、接地面積sが減少して操縦安定性能等に難があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−158915号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、以上のような問題点に鑑み案出なされたもので、ブロックの軸方向壁面に半径方向リブを、また周方向壁面に周方向リブを夫々形成するとともに、これらの角度等を規定することを基本として、操縦安定性能の低下を抑制しつつノイズ性能を向上させた空気入りタイヤを提供することを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のうち請求項1記載の発明は、トレッド部に、タイヤ周方向に連続してのびる主溝と、該主溝と交差する向きにのびる複数本の横溝とが設けられることにより、前記主溝と前記横溝とで区分されたブロックがタイヤ周方向に並ぶブロック列が形成された空気入りタイヤであって、前記横溝は、タイヤ周方向に対する角度が80度以上であり、前記ブロックは、前記横溝に面する軸方向壁面と、前記主溝に面する周方向壁面とを有し、前記軸方向壁面には、ブロック踏面の法線方向に対して30度以下の角度で溝深さ方向にのびる半径方向リブが前記横溝の長さ方向に複数本隔設される一方、前記周方向壁面には、ブロック踏面に対して10度以下の角度で前記主溝の長さ方向にのびる周方向リブが溝深さ方向に複数本隔設され、前記半径方向リブは、前記ブロックのタイヤ軸方向の両側部に設けられた外側半径方向リブと、これらの外側半径方向リブの間に設けられた中間半径方向リブとを含み、該中間半径方向リブの突出幅は、前記外側半径方向リブの突出幅よりも大きいことを特徴とする。
【0007】
また請求項2記載の発明は、前記中間半径方向リブの突出幅は、前記外側半径方向リブの突出幅の150%〜200%である請求項1記載の空気入りタイヤである。
【0008】
また請求項3記載の発明は、前記周方向リブは、前記主溝の溝底から該主溝の溝深さの10%離間した位置よりもタイヤ半径方向外側の踏面側領域に設けられる請求項1又は2記載の空気入りタイヤである。また請求項4記載の発明は、前記周方向リブは、前記主溝の溝底からトレッド踏面側に向かって、突出幅が漸増する請求項1乃至3のいずれかに記載の空気入りタイヤである。また請求項5記載の発明は、前記周方向リブは、そのタイヤ周方向の両端が、前記周方向壁面のタイヤ周方向の両端に接することなく終端する請求項1乃至4のいずれかに記載の空気入りタイヤである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の空気入りタイヤでは、タイヤ周方向に連続してのびる主溝と、該主溝と交差する向きにのびる複数本の横溝とが設けられることにより、前記主溝と前記横溝とで区分されたブロックがタイヤ周方向に並ぶブロック列が形成される。そして、横溝は、タイヤ周方向に対する角度が80度以上で形成される。このようなブロックは、横剛性が大きくなるとともに、タイヤ軸方向のエッジ効果を大きく発揮する。従って、本発明の空気入りタイヤは、操縦安定性能やトラクションが向上する。
【0010】
また、前記ブロックは、横溝に面する軸方向壁面と、主溝に面する周方向壁面とを有し、前記軸方向壁面には、ブロック踏面の法線方向に対して30度以下の角度で溝深さ方向にのびる半径方向リブが前記横溝の長さ方向に複数本隔設される。このような半径方向リブは、横溝内を通過する空気の振動を攪乱して小さくするため、ノイズ性能を向上させる。
【0011】
また、前記周方向壁面には、ブロック踏面に対して10度以下の角度で前記主溝の長さ方向にのびる周方向リブが溝深さ方向に複数本隔設されてなる。このような周方向リブは、前記半径方向リブと協同してブロックを補強して剛性を高めるため、トラクション等による曲げ変形に対抗して、ブロックの浮き上がりを抑制する。従って、本発明の空気入りタイヤは、接地面積を確保して、さらに操縦安定性能が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】(a)は、本発明の一実施形態の空気入りタイヤのトレッド部の展開図、(b)は、(a)本実施形態のリブの長手方向に対して直角方向に切断した断面図である。
図2】本実施形態のブロックの斜視図である。
図3】(a)乃至(c)は、リブの他の実施例を示す図である。
図4】(a)は、本発明の他の実施形態のブロックの斜視図、(b)は、本発明のさらに他の実施形態のブロックの斜視図である。
図5】走行時のブロックの浮き上がりを説明する側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき説明される。
図1(a)に示されるように、本実施形態の空気入りタイヤ(以下、単に「タイヤ」ということがある。)は、例えば乗用車用タイヤとして好適に利用され、そのトレッド部2には、タイヤ周方向に連続してのびる主溝3と、該主溝3と交差する向きにのびる複数本の横溝4とが設けられる。本実施形態において、前記主溝3は、タイヤ赤道Cの両側をタイヤ周方向に連続してのびる1対のセンター主溝3Aからなる。また、本実施形態の横溝4は、前記センター主溝3、3間を継ぐ複数本のセンター横溝4Aと、前記センター主溝3と接地端Teとの間を継ぐ複数本のショルダー横溝4Bとからなる。
【0014】
これにより、トレッド部2には、2本のセンター主溝3A及びセンター横溝4Aにより区分される複数個のセンターブロック5Aがタイヤ周方向に並ぶセンターブロック列5A1と、センター主溝3A及びショルダー横溝4Bにより区分される複数個のショルダーブロック5Bがタイヤ周方向に並ぶショルダーブロック列5B1が配される。なお、本発明のトレッド部2は、このような態様に限定されるものではなく、例えば、センターブロック列と、そのタイヤ軸方向両側にリブが配される態様や、タイヤ赤道上のリブと、そのタイヤ軸方向両側にショルダーブロック列が配される態様のもの等、種々の態様を採用し得る。
【0015】
ここで、前記「接地端」Teは、正規リムにリム組みしかつ正規内圧を充填した無負荷である正規状態のタイヤ1に、正規荷重を負荷してキャンバー角0度で平面に接地させたときの最もタイヤ軸方向外側の接地位置として定められる。そして、この接地端Te、Te間のタイヤ軸方向の距離が接地幅TWとして定められる。また、タイヤの各部の寸法等は、特に断りがない場合、前記正規状態での値とする。
【0016】
また前記「正規リム」とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ毎に定めるリムであり、例えばJATMAであれば "標準リム" 、TRAであれば "Design Rim" 、ETRTOであれば "Measuring Rim" とする。
【0017】
また、前記「正規内圧」とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている空気圧であり、JATMAであれば "最高空気圧" 、TRAであれば表 "TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "INFLATION PRESSURE" とするが、タイヤが乗用車用である場合には180kPaとする。
【0018】
さらに「正規荷重」とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている荷重であり、JATMAであれば "最大負荷能力" 、TRAであれば表 "TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "LOAD CAPACITY" であるが、タイヤが乗用車用の場合には前記荷重の88%に相当する荷重とする。
【0019】
前記主溝3は、タイヤ周方向に沿った直線状をなす。このような主溝3は、制動時の車両のふらつきや片流れなどの不安定な挙動を抑制するため、優れた直進安定性を発揮できる。なお、主溝3は、このような態様に限定されるものではなく、例えば波状やジグザグ状等種々の形状に変えることができる。
【0020】
また、前記横溝4は、タイヤ周方向に対する角度α1が80度以上で形成される必要がある。このような横溝4が形成されるブロック5は、横剛性が大きくなるとともに、タイヤ軸方向のエッジ効果を大きく発揮する。従って、本発明のタイヤは、トラクションが高められ操縦安定性能が向上する。
【0021】
前記角度α1が80度未満になると、ブロック5は、旋回時の大きな横力に対抗できず、操縦安定性能が悪化する。このため、前記角度α1は、より好ましくは85度以上が望ましい。本実施形態の横溝4は、前記角度α1が90度に形成されている。
【0022】
また、このような主溝3や横溝4の溝幅(溝の長手方向と直角な溝幅で、以下、他の溝についても同様とする。)W1、W2及び溝深さD1(図2に示す)、D2(図示せず)については、慣例に従って種々定めることができる。しかしながら、前記溝幅W1、W2及び/又は溝深さD1、D2が大きすぎると各ブロック列の剛性が低下するおそれがあり、逆に小さすぎると排水性が低下するおそれがある。このため、主溝3の溝幅W1は、例えば、接地幅TWの6〜12%が望ましく、また、横溝4の溝幅W2は、例えば、接地幅TWの3〜6%が望ましい。また、主溝3の溝深さD1は6〜13mmが望ましく、横溝4の溝深さD2は3〜10mmが望ましい。本実施形態の主溝3と横溝4との溝深さは、等しい。
【0023】
また、図2に示されるように、前記ブロック5は、横溝4に面する軸方向壁面6と、前記主溝3に面する周方向壁面7と、これらの半径方向外縁に連なり接地面を構成するブロック踏面2Aとを有する。本実施形態のブロック5は、直線状をなす主溝3と横溝4とによって略直方体状に形成されるため、軸方向壁面6及び周方向壁面7は矩形状をなす。なお、軸方向壁面6及び周方向壁面7は、このような形状に限定されるものではなく、台形状や平行四辺形状等、種々の形状を採用し得る。
【0024】
そして、本発明では、軸方向壁面6に、横溝4の溝深さ方向にのびる半径方向リブ8が、横溝4の長さ方向に複数本隔設される。このような半径方向リブ8は、横溝4内を通過する空気の振動を攪乱して小さくするため、ノイズ性能を向上させる。また、半径方向リブ8の設けられた軸方向壁面6は、従来の平面で形成された壁面よりもタイヤ周方向の剛性が大きくなるため、トラクション等による曲げ変形に対抗して、ブロック5の接地面の浮き上がりを防止して、操縦安定性能を向上するのに役立つ。
【0025】
また、半径方向リブ8は、トレッド踏面2Aの法線n方向に対して30度以下の角度θ1で形成される必要がある。即ち、前記角度θ1が30度を超えると、前述の補強効果が低下して、ブロック5の接地面の浮き上がりを防止できない他、ブロック縁が路面をたたく際の衝撃力を分散できず、また、リブによる空気の振動の攪乱効果が小さくなる。このため、前記角度θ1は、より好ましくは25度以下、さらに好ましくは20度以下が望ましい。
【0026】
本実施形態の半径方向リブ8は、軸方向壁面6の全面に形成されているため、上述のノイズ性能と操縦安定性能とを効率良く向上させている。
【0027】
また、周方向壁面7には、主溝3の長さ方向にのびる周方向リブ9が、溝深さ方向に複数本隔設されている。このような周方向リブ9は、ブロック5のタイヤ周方向の剛性を高めるため、トラクション等による曲げ変形に対抗でき、ブロック5の浮き上がりを抑制するとともに、ブロック5のタイヤ半径方向の剛性を小さくして乗り心地性を高める他、前記曲げ変形に追随して接地面積を確保し得る。従って、本実施形態のタイヤは、操縦安定性能が向上する。
【0028】
また、周方向リブ9は、トレッド踏面2A(又はこれと平行な平面)に対して10度以下の角度γ1で形成される必要がある。即ち、前記角度γ1が10度を超えると、ブロック5のタイヤ周方向の剛性が低下して、ブロック5の浮き上がりを防止できない。このため、前記角度γ1は、より好ましくは7度以下、さらに好ましくは4度以下が望ましい。本実施形態の前記角度γ1は、0度である。
【0029】
このように、本発明のタイヤは、主溝3と横溝4とで区分されたブロック5の軸方向壁面6と周方向壁面7とに夫々配設角度を一定範囲内に規定した複数のリブ8、9を設けることにより、ブロック5のタイヤ周方向の剛性を高めつつ、タイヤ半径方向の剛性を小さくして曲げ変形に追随させて接地面積を確保する。また、リブを利用して空気の振動を攪乱することにより騒音を小さくする。これにより、操縦安定性能の低下が抑制されかつノイズ性能が向上する。
【0030】
また、周方向リブ9は、本実施形態のように、主溝3の溝底3sから該主溝3の溝深さD1の10%離間した位置よりもタイヤ半径方向外側の踏面側領域Tに設けられるのが望ましい。即ち、踏面側領域Tのタイヤ半径方向の内方端が、前記溝底3sよりも前記溝深さD1の10%未満の位置に形成されると、ブロック5のタイヤ半径方向の剛性が低下して、乗り心地性能が悪化するおそれがある。逆に、踏面側領域Tのタイヤ半径方向の内方端が、前記溝底3sよりも前記溝深さD1の70%以上の位置に形成されると、ブロック5の浮き上がりを抑制する効果が発揮されないおそれがある。
【0031】
また、図1(b)に示されるように、本実施形態の半径方向リブ8及び周方向リブ9は、該半径方向リブ8及び周方向リブ9の長手方向に対して直角方向の断面視において、正弦波状に形成されている。このようなリブ8、9は、軸方向壁面6及び周方向壁面7に作用する応力集中を抑制するため、該壁面6、7の剛性を確保するのに役立つ。なお、図3(a)乃至(c)には、半径方向リブ8の他の実施形態が示される。このように半径方向リブ8は、製造コスト等の観点から、例えば、山形状、三角形状、四角形状で形成されてもよい。同様の観点より、周方向リブ9についても、図3(a)乃至(c)に示されるような形状が採用され得る。
【0032】
また、図1(b)に示されるように、前記リブ8、9は、該リブ8、9の凹側の内端5iと凸側の外端5eとのタイヤ周方向又は軸方向の距離である突出幅Hが0.5mm未満であると、ブロック5の剛性を向上させる効果が発揮されないおそれがあり、逆に前記突出幅Hが4.0mmを超えると、排水がスムーズに流れなくなるおそれがある。これにより、前記突出幅Hは、好ましくは1.0mm以上、より好ましくは1.5mm以上が望ましく、また好ましくは3.5mm以下、より好ましくは3.0mm以下が望ましい。同様の観点より、前記リブ8、9の配設本数は、好ましくは3本以上、より好ましくは4本以上が望ましく、また好ましくは13本以下、より好ましくは11本以下が望ましい。
【0033】
図4(a)には、本発明の他の実施形態が記載されている。この態様では、前記半径方向リブ8は、前記ブロック5のタイヤ軸方向の両側部5sに設けられた外側半径方向リブ8aと、これらの外側半径方向リブ8aの間に設けられた中間半径方向リブ8bとを含む。そして、中間半径方向リブ8bの突出幅H2は、前記外側半径方向リブ8aの突出幅H1よりも大きく形成される。このような半径方向リブ8は、外側半径方向リブ8aがタイヤ周方向の剛性を確保するとともに、中間半径方向リブ8bが横溝4内の空気の振動を効果的に攪乱する。従って、実施形態の半径方向リブ8は、操縦安定性能を確保しつつ、ノイズ性能を向上するのに役立つ。
【0034】
また、中間半径方向リブ8bは、ノイズ性能を高め得るのに役立つ一方、その突出幅H2が過度に大きくなると、ブロック5のタイヤ周方向の剛性を小さくする。このような観点より、前記突出幅H2は、好ましくは外側半径方向リブ8aの突出幅H1の120%以上、より好ましくは150%以上が望ましく、また好ましくは250%以下、より好ましくは200%以下が望ましい。
【0035】
図4(b)には、本発明のさらに他の実施形態が記載されている。この態様では、周方向リブ9が、溝底3sからトレッド踏面2A側に向かって、突出幅Hが漸増する。このような周方向リブ9は、トラクション等による曲げ応力が大きく作用するトレッド踏面2A側の剛性を大きくするのに役立つ。
【0036】
以上、本発明の特に好ましい実施形態について詳述したが、本発明は図示の実施形態に限定されることなく、種々の態様に変形して実施しうる。
【実施例】
【0037】
図1のパターンを有しかつ表1の仕様に基づいた空気入りタイヤ(サイズ:195/65R15)が製造され、それらの各性能についてテストがされた。なお、共通仕様は以下の通りである。
接地幅TW:148mm
<センター主溝>
溝幅W1/接地幅TW:4.0%
溝深さD1:8.7mm
<センター横溝>
溝幅W2a:5.0mm
溝深さ:8.7mm
<ショルダー横溝>
溝幅W2b:5.0mm
溝深さ:6.0mm
【0038】
<操縦安定性能>
各試供タイヤを、リム(15×7J)、内圧(200kPa)にて排気量2000ccの後輪駆動車の全輪に装着してアスファルト路面のテストコースをドライバー1名乗車で走行し、ハンドル応答性、剛性感、トラクション等に関する特性をドライバーの官能評価により評価した。結果は、最高点を10とする評点で表示している。数値が大きいほど良好である。
【0039】
<乗心地性能>
前記テストコースを走行した後の乗り心地性を、ドライバーの官能評価にて、最高点を10とする評点で表示した。数値の大きい方が良好である
【0040】
<ノイズ性能>
上記テスト車両にて、JASO/C/606に規定する実車惰行試験に準拠して、直線状のテストコース(アスファルト路面)を通過速度60km/hで50mの距離を惰行走行させるとともに、コースの中間点において走行中心線から側方に7.5m、かつ路面から1.2mの位置に設置した定置マイクロフォンにより通過騒音の最大レベルdB(A)を測定した。結果は、最も良い騒音レベルを10とした指数で示した。数値が大きいほど良好である。
テストの結果を表1に示す。
【0041】
【表1】
【符号の説明】
【0042】
2 トレッド部
3 主溝
4 横溝
5 ブロック
6 軸方向壁面
7 周方向壁面
8 半径方向リブ
9 周径方向リブ
図1
図2
図3
図4
図5