【実施例1】
【0024】
以下本発明の一実施例を図面により説明する。
【0025】
図1は本発明の蓄熱装置を使用したコジェネレーションシステムの概略図である。蓄熱装置1は熱を蓄える蓄熱ユニット2、蓄熱ユニット2を加熱する加熱経路3、蓄熱ユニット2から熱を奪い冷却する冷却経路4より構成されている。
【0026】
加熱経路3には循環ポンプ5が設けられていて、熱交換器21を介して熱源である発電ユニット20から発生する排熱と熱交換を行い、その熱により蓄熱ユニット2を加熱するようになっている。
【0027】
発電ユニット20は発電に伴い熱を発生するため、冷却しなければ発電に支障をきたしてしまうが、熱交換器21で加熱経路3と熱交換することにより冷却されるので、発電を継続して行うことができる。なお、この発電ユニット20としては、例えばエンジンやガスタービン、燃料電池など発電の際に熱を発生させるものであればよく、特にその種類を限定するものではない。
【0028】
また、冷却経路4の一端は冷却経路4内に水や空気など蓄熱ユニット2から熱を回収する流体を供給する流体供給口6となっており、流体供給口6と蓄熱ユニット2との間には流体を送出するための電気部品7が設けられている。電気部品7とは具体的には、流体が水の場合はポンプ、流体が空気の場合は送風機を設けることになる。そして、他端は蓄熱ユニット2を通過することで加熱された流体を排出する流体排出口8となっていて、湯や温風が排出される。
【0029】
図2は本発明の蓄熱装置を構成する蓄熱ユニットの平面−断面図であり、蓄熱ユニット2はその中心に顕熱蓄熱体を収容した顕熱蓄熱部9を備え、顕熱蓄熱部9の外周には潜熱蓄熱体を収容した潜熱蓄熱部10が配置されている。そして、顕熱蓄熱部9の内部に略U字型の加熱経路3と冷却経路4が互いに交わることなく配置されている。
【0030】
加熱経路3は筒状のパイプ部材に、放熱面積を広げるための多数の伝熱フィン11aが設けられた形状であり、その内部には不凍液が循環しており、この不凍液が発電ユニット20からの排熱と熱交換して昇温し、熱を放出する。
【0031】
顕熱蓄熱部9を構成する顕熱蓄熱体には、水または不凍液など熱伝導率が比較的高く、熱容量の低い液体が用いられていて、伝熱フィン11aを通じて加熱経路3から放出される熱を素早く吸収して昇温させることができる。
【0032】
一方、潜熱蓄熱部10を構成する潜熱蓄熱体には、例えば酢酸ナトリウム水和物などが用いられ、熱が加わることによって潜熱蓄熱体が融解されると、このときに加えられた熱量が潜熱として潜熱蓄熱部10に蓄熱される。潜熱蓄熱体は、顕熱蓄熱体に比べて熱伝導率は低いが熱容量が大きいため、蓄えた熱を長時間放出することができる。
【0033】
潜熱蓄熱部10の内部には伝熱部材12が設けられており、昇温した顕熱蓄熱部9が放出する熱をこの伝熱部材12を介して潜熱蓄熱体に伝達することで、潜熱蓄熱部10の加熱効率が向上する。
【0034】
また、顕熱蓄熱部9と潜熱蓄熱部10は熱が伝達する際に熱損失が発生しないよう互いに密接して設けられている。
【0035】
冷却経路4は、加熱経路3と同様に筒状のパイプ部材に多数の伝熱フィン11bが設けられた形状であり、電気部品7の動作により流体供給口6からパイプ部材の内部に流体を導入して、この流体により顕熱蓄熱部9の熱を奪い顕熱蓄熱部9を冷却するようになっている。また、顕熱蓄熱部9から熱を奪うことにより加熱された流体は流体排出口8から排出されるようになっている。
【0036】
そして、
図3は蓄熱装置の断面図であり、蓄熱ユニット2を囲うように断熱材からなるケース13が設けられ、この潜熱蓄熱部10とケース13の間には空気が通過する空気通路14が形成されている。また、ケース13の所定位置には空気通路14と蓄熱装置1の外部とを連通し空気が出入りする連通口15a、15bが設けられるとともに、この連通口15a、15bを開閉する開閉部材16が設置されており、この開閉部材16は潜熱蓄熱部10に蓄えられた熱量によって動作が制御される。
【0037】
潜熱蓄熱部10の外周には伝熱フィン11cが形成されており、連通口15aから流入した空気は空気通路14を通過する間に伝熱フィン11cと熱交換することで潜熱蓄熱部10から熱を奪い、もう一方の連通口15bから排出される。
【0038】
次に、前述した構成からなる蓄熱装置1の動作について説明する。なお、本発明の蓄熱装置1は、蓄熱ユニット2に熱を蓄える蓄熱動作、冷却経路を介して蓄熱ユニット2の熱を回収する冷却動作、蓄熱ユニット2の熱を強制的に放熱させる放熱動作の3つの動作を行うものであり、以下では冷却経路4を介して熱を回収する流体の例として水を用いた場合について説明する。
【0039】
蓄熱動作:熱源となる発電ユニット20が発電動作を行うと、これに伴って熱を排出するので、加熱経路3内を循環する不凍液はこの排熱と熱交換器21で熱交換を行うことにより昇温して、加熱経路3から熱が放出されるようになる。蓄熱ユニット2内では、加熱経路3に密接して顕熱蓄熱部9が配置されているので、加熱経路3から放出される熱は顕熱蓄熱部9に吸収される。顕熱蓄熱材は熱伝導率が高いため、熱を受けて素早く昇温する。
【0040】
一方、加熱経路3内を循環する不凍液は、顕熱蓄熱部9と熱交換することで熱を奪われ、蓄熱ユニット2を出る際には温度が低下した状態となっている。したがって、熱交換器21には温度の低い不凍液が流入することにより、発電ユニット20が冷却されて、発電を継続して行うことができる。
【0041】
顕熱蓄熱部9に蓄えられた熱は、さらにその外周の潜熱蓄熱部10に供給される。潜熱蓄熱部10は顕熱蓄熱部9に密接して配置されているので、顕熱蓄熱部9から放出される熱は全て潜熱蓄熱部10に吸収される。また潜熱蓄熱部10の内部に設けられた伝熱部材12が顕熱蓄熱部9が放出する熱を潜熱蓄熱部10の内部から伝達するので、潜熱蓄熱部10は顕熱蓄熱部9との境界面からだけでなく内部からも加熱されることとなり、加熱効率が向上する。
【0042】
そして、潜熱蓄熱体の温度が融解温度に達すると、潜熱蓄熱体が融解してこの潜熱が潜熱蓄熱部10に蓄熱される。
【0043】
このときケース13の開閉部材16は閉じられているので、潜熱蓄熱部10に蓄えられた熱は、空気通路14およびケース13によって外部への放出が抑えられるため、蓄熱ユニット2は高温を維持することが可能となる。
【0044】
冷却動作:蓄熱ユニット2に熱が蓄えられている状態で給湯の要求があると、電気部品であるポンプ7が作動し、流体供給口6から冷却経路4内に水が導入されるので、冷却経路4内に導入された水は、蓄熱ユニット2を通過する間に顕熱蓄熱部9から熱を奪うことで湯となり、流体排出口8から排出される。つまり、本蓄熱装置においては、給湯用に貯湯タンクを必要とせず、さらに蓄熱ユニット2内で熱交換が行われるので、構成が簡単となるため装置の小型化が可能となる。
【0045】
顕熱蓄熱部9は冷却経路4を通過する水により冷却されるので、温度が低下するが、外周に設けられた潜熱蓄熱部10が放出する熱により加熱されて顕熱蓄熱部9は一定温度を保つことができる。
【0046】
なお、冷却動作と同時に蓄熱動作も行われることもあるが、この場合は、顕熱蓄熱部9は冷却経路4にて冷却されると同時に加熱経路3により加熱される。
【0047】
また、蓄熱動作時と同様、冷却動作時においてもケース13の開閉部材16は閉じられているので、潜熱蓄熱部10に蓄えられた熱は、空気通路14およびケース13によって外部への放出が抑えられる。
【0048】
このように蓄熱動作を行うことで蓄熱ユニット2が加熱され、冷却動作を行うことで蓄熱ユニット2が冷却される。蓄熱動作と冷却動作のバランスが取れていると、冷却動作で蓄熱ユニット2が冷却された分、蓄熱動作で蓄熱ユニット2に熱を蓄えることができるので、加熱経路3を循環する不凍液は顕熱蓄熱部9に熱を奪われて蓄熱ユニット2通過後には温度が低下した状態となる。したがって、加熱経路3は熱交換器21を介して発電ユニット20を冷却することができる。
【0049】
しかし、通常は冷却動作で奪われる熱量と蓄熱動作で蓄える熱量とは一致するものではなく、蓄熱動作で蓄える熱量が多くなることが予想される。そして、潜熱蓄熱部10の蓄熱量が所定量に達すると、顕熱蓄熱部9は加熱経路3から熱を奪うことができなくなるため、蓄熱ユニット2を通過後の加熱経路3内の不凍液は高温を維持したままの状態となる。すると、不凍液は温度が高いまま熱交換器21に流れ込むので、発電ユニット20を冷却することができず、発電動作に支障をきたし、発電動作を規制しなければならなくなる。そこで、このような状態を回避するために、蓄熱量が所定の値に達すると、強制的に潜熱蓄熱部10を放熱させる放熱動作が行われる。
【0050】
放熱動作:潜熱蓄熱部10に蓄えられた熱量が所定量を超えたと判断された場合、ケース13の開閉部材16を開き、連通口15aから蓄熱装置内部に空気を流入させる。すると、連通口15aより流入した空気は、空気通路14を通過する間に潜熱蓄熱部10から放出される熱を受けて昇温し、もう一方の連通口15bより排出される。これにより、潜熱蓄熱部10は冷却されて温度が低下するので、顕熱蓄熱部9は加熱経路3から熱を奪うことができるようになる。
【0051】
そして、放熱動作を続けることで潜熱蓄熱部10に蓄えられた熱量が所定量以下になったと判断されると、開閉部材16を閉じて以降の放熱を遮断する。
【0052】
ケース13は、蓄熱動作および冷却動作時には潜熱蓄熱部10から外部への熱の放出を抑えて高温に維持する役割を果たすものであるが、放熱動作時においては開閉部材16を開くことで潜熱蓄熱部10を放熱させて冷却することができる。つまり、潜熱蓄熱部10を冷却するためにラジエーター等の冷却装置を別途設ける必要がないため、より装置を小型かつ安価に構成することが可能となる。