(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記先行技術の場合、搬器を格納棚側に保持するためのアクチュエータと、パレットロック解除のためのアクチュエータとを個別に要するため、装置のコストが高くなる。しかも、複数のアクチュエータを用いるため装置が複雑化するとともに、それらのアクチュエータの駆動制御も難しく、設計コスト及び製造コストが高くなる。
【0007】
その上、パレットの払出し/引込み動作が完了した後、搬器を少し上昇させてから搬器を保持している揺動部材の支持を解除してから昇降動作を開始しなければならないので、搬器を移動させる動作に時間を要する。
【0008】
また、搬器に設けられたパレット払出し/引込み機構全体のシフト動作で搬器を保持するようにする場合も、構造が複雑で、設計コスト及び製造コストが高くなる。
【0009】
その上、特に実車状態のパレットを搬器と格納棚との間で払出し/引込みすると、搬器の荷重変化によって吊下げているロープが伸縮し、搬器と格納棚との間で段差が生じてスムーズな払出し/引込みが損なわれる場合がある。
【0010】
そこで、本発明は、搬器を所定の格納棚位置に安定して保持することができる簡単な構造の搬器保持装置と、それを備えた機械式駐車設備を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明の搬器保持装置は、索状体で吊下げて昇降路を昇降させる搬器を、パレットを払出し/引込みする所望の格納棚の位置に保持する搬器保持装置であって、前記格納棚は、前記搬器の昇降路側に棚側受けブラケットを有し、前記搬器は、前記棚側受けブラケットと対向する位置に搬器保持機構を有し、前記搬器保持機構は、搬器を保持する保持部材を、前記棚側受けブラケットに載置する保持状態と、前記棚側受けブラケットと干渉しない通過状態とに切換え可能に構成されている。この構成によれば、搬器保持機構の保持部材を通過状態にして搬器を所望の格納棚の位置に移動し、搬器保持機構の保持部材を保持状態に切換えることで棚側受けブラケットで搬器を保持することができる。従って、搬器を所望の格納棚の位置で保持する装置を簡単な構成とし、設計及び製造コストの低減を図ることができる。
【0012】
また、前記格納棚は、該格納棚に格納した前記パレットを定位置に固定するパレットロック機構を有し、前記パレットロック機構は、前記パレットに係合して該パレットを定位置に固定するピンと、前記ピンとパレットとの係合を解除するロック解除機構とを有し、前記搬器は、前記保持部材を前記棚側受けブラケットに載置する動作で前記ロック解除機構によって前記パレットの固定を解除するように構成されていてもよい。このように構成すれば、格納棚のパレットに地震力などが作用した時でもパレットロック機構で安定して位置保持できるとともに、搬器を格納棚に保持する動作でロック解除機構によってパレットロック機構を解除することができるので、搬器を所望の格納棚の位置に保持する動作に続いてパレットの払出し/引込み動作を連続的に行うことができる。
【0013】
また、前記搬器保持機構は、前記搬器の対向する2辺に前記保持部材を両端部に設けた駆動軸を有し、前記駆動軸は、両端に設けた保持部材の前記棚側受けブラケットの当接面が、前記搬器の保持状態における平面視で互いに対角位置となるように構成されていてもよい。このように構成すれば、搬器の対向する2辺に設けられた駆動軸の両端部に設けられた保持部材によって棚側受けブラケットで搬器を支持することができる。しかも、棚側受けブラケットで駆動軸の対角位置で保持部材を支持するため、支持した保持部材から駆動軸に作用する回転モーメントを逆向きに作用させて相殺し、安定した支持ができる。
【0014】
また、前記駆動軸の両端部に設けられた保持部材は、前記棚側受けブラケットとの当接面が、一方は駆動軸中心に対して一方向にオフセットされ、他方はその反対方向にオフセットされていてもよい。このように構成すれば、保持部材を棚側受けブラケットで保持する保持状態と棚側受けブラケットに干渉しない通過状態との間の角度変更を小さくすることができ、保持部材を角度変更するために持上げる高さを小さくして搬器移動時における保持部材の動作時間を短くすることができる。
【0015】
また、前記パレットロック機構は、上昇位置に付勢された上下動するピンが棚側に設けられ、前記パレットは、前記ピンが係合するパレットロック係合穴が下面に設けられ、前記ピンは、前記保持部材の棚側受けブラケットへの載置動作によって押下げられてパレットとの係合が解除されるように構成されていてもよい。このように構成すれば、格納棚に格納したパレットはパレットロック機構のピンで確実に位置固定することができるとともに、搬器を格納棚の位置に保持することで保持部材がピンを押下げてパレットとの係合を解除することができ、パレットのロックとロック解除とを搬器の保持に連動させて行うことができる。
【0016】
一方、本発明の機械式駐車設備は、上記いずれかの搬器保持装置を備え、前記各格納棚は、前記棚側受けブラケットを有している。この構成によれば、格納棚に設ける構成及び搬器に設ける構成のコストを低減して搬器保持装置のコスト低減を図るとともに、設計コストの低減を図ることができる機械式駐車設備を提供することができる。
【0017】
また、前記機械式駐車設備は、前記搬器を昇降させる索状体の一端を支持する支持部を有し、前記支持部は、前記索状体に作用する荷重変化を検知する検知部を具備し、前記検知部は、前記搬器を前記搬器保持装置で保持した後に索状体に作用する荷重が所定量に減少したことで搬器の下降を停止するように構成されていてもよい。このように構成すれば、搬器を搬器保持装置で格納棚に保持した後の索状体に作用する荷重が所定量に減少すると搬器の下降を停止させるので、搬器保持状態における索状体のテンションを保って搬器の再移動時に安定した上昇動作を行うことができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、簡単な構造で搬器を所望の格納棚位置に安定して保持することができ、搬器保持装置の設計及び製造コストの低減を図ることが可能となる。
【0019】
また、請求項2に係る発明によれば、搬器の格納棚への保持と格納棚におけるパレットのロック解除とを同時に行うことができるので、所望の格納棚の位置に保持した搬器と格納棚との間でパレットの払出し/引込み動作を連続的に行うことが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態の一例を図面に基づいて説明する。以下の実施形態では、機械式駐車設備の一つである下部90°乗入れ方式のエレベータ式駐車設備1を例に説明する。この例のエレベータ式駐車設備1は下部駆動式であるが、駐車塔2の上部に機械室を設けた上部駆動方式としてもよい。また、この明細書及び特許請求の範囲の書類中における前後左右方向の概念は、
図1に示すエレベータ式駐車設備1に向かった状態における前後左右方向の概念と一致するものとする。
【0022】
図1に示すように、エレベータ式駐車設備1は、4隅の鉛直方向に設けられた主柱3(
図3)と、この主柱3を水平方向に連結する梁(図示略)等とによって鉄骨構造体が形成され、この鉄骨構造体の外面に外装板5が設けられて駐車塔2が形成されている。この駐車塔2は、地上1階が乗入れ部6となっており、乗入れ部6の乗入れ床7にはピット8が形成されている。また、乗入れ部6の左方向には入出庫口9が設けられている。
【0023】
このようなエレベータ式駐車設備1は、駐車塔2の中央部鉛直方向に平面視が矩形状の昇降路(エレベータシャフト)12が設けられている。昇降路12は、平面視で駐車塔2の前後方向が長寸で、左右方向が短寸の矩形状となっている(
図3)。また、この昇降路12を挟んで図の左右両側の鉛直方向に複数段の格納棚13が設けられている。各格納棚13には、図示する左右方向に延びる棚レール14が設けられている。棚レール14は、上記主柱3と、この主柱3と平行に鉛直方向に設けられた棚柱15とに固定されており、この棚レール14に沿ってパレット70が左右方向に払出し/引込みされる。
【0024】
また、上記昇降路12には、パレット70を搬送する搬器(エレベータ搬器)16が設けられている。搬器16には、パレット移載機構17が設けられており、このパレット移載機構17によってパレット70を搬器16と各格納棚13の棚レール14との間で払出し/引込みがなされる。さらに、ピット8内には、上記搬器16のパレット70を持上げて旋回させるパレット持上旋回装置18が備えられており、このパレット持上旋回装置18により、パレット70が乗入れ部6で入出庫口9の方向に旋回させられる。これらのパレット移載機構17及びパレット持上旋回装置18は、公知の手段が採用される。
【0025】
さらに、このエレベータ式駐車設備1では、上記駐車塔2の乗入れ部6に昇降駆動装置20が設置されている。この昇降駆動装置20は、複数本のロープ(索状体)21が駆動シーブ23に掛けられ、これらのロープ21は、駐車塔2の最上部に設けられた転向プーリ24によって水平方向に転向させられている。このロープ21の一部は、昇降路12の上方に設けられた吊下げプーリ25で下方に曲げられて搬器16に向けて垂下し、搬器16の下部に設けられた動滑車11に掛けられた後、駐車塔2の上部まで延ばされて駐車塔2の支持部10に吊下げられている。また、他のロープ21は、格納棚13の後方部分に設けられた吊下げプーリ26で下方に曲げられ、昇降駆動装置20による巻上げ力を軽減するカウンタウェイト22を吊下げている。従って、昇降駆動装置20を駆動することにより、ロープ21で吊下げられた搬器16を昇降路12で昇降させることができる。
【0026】
図2に示すように、上記搬器16の吊下げは、搬器16の下部に設けた動滑車11に掛けたロープ21の一方を駐車塔2の支持部10に支持し、他方を昇降駆動装置20の駆動シーブ23に巻き掛けた後、動滑車掛けでカウンタウェイト22を吊持する動滑車方式となっている。
【0027】
この動滑車方式による搬器16の吊持は、昇降駆動装置20の駆動シーブ23に掛けられた複数本のロープ21が、両端部のいずれもが駆動シーブ23から上方に延び、駐車塔2の最上部に設けられた複数の転向プーリ24によって水平方向に転向させられる。その後、一方のロープ21は、吊下げプーリ25によって垂直方向に転向させられて、上記搬器16を吊持した後、駐車塔2の上部に支持されている。他方のロープ21は、吊下げプーリ26によって垂直方向に転向させられて、上記カウンタウェイト22を吊持した後、駐車塔2の上部に設けられた支持部10で支持されている。従って、昇降駆動装置20でロープ21を巻上げ/巻下げ駆動することにより、搬器16とカウンタウェイト22とはつるべ式に動作し、搬器16を上昇させれば、そのストローク分でカウンタウェイト22が下降するように駆動される。
【0028】
次に、
図3に基づいて、上記格納棚13と搬器16との平面視における配置について説明する。上記駐車塔2の中央部に設けられた昇降路12の左右両側部には、パレット70を格納する格納棚13が設けられている。駐車塔2の主柱3と棚柱15とから棚受材4が突設され、この棚受材4に格納棚13の棚レール14が固定されている。棚レール14には、パレット70を格納方向に案内するローラ19が所定間隔で設けられている。また、この実施形態では、図示する左右位置に設けられた形鋼の棚柱15が、搬器16を昇降案内する構成に対応するように異なる向きで設けられている。
【0029】
そして、図示する右側の棚柱15に棚側受けブラケット30が設けられ、左側の棚柱15に棚側受けブラケット31が設けられている。これらの棚側受けブラケット30,31は、後述するように2種類の形態となっている。右側の棚柱15に設けられた棚側受けブラケット30は、昇降路12の幅方向中心に向けて突設されており、左側の棚柱15に設けられた棚側受けブラケット31は、昇降路12の前後方向中心に向けて突設されている。これらの棚側受けブラケット30,31は、各格納棚13の位置にそれぞれ設けられている。
【0030】
また、各棚レール14の上記棚側受けブラケット30,31と対向する所定位置には、後述するパレットロック機構40が設けられている。
【0031】
そして、上記昇降路12を昇降する搬器16には、前後方向の対向する2辺に2組の搬器保持機構51を有する搬器保持装置50が設けられている。2組の搬器保持機構51は、搬器16の中心に対して対称に配置されている。この搬器保持装置50によって、後述するように搬器16が上記棚側受けブラケット30,31によって4点で保持される。なお、
図3に示す搬器保持機構51は、搬器16を昇降させる通過状態を示している。
【0032】
図4に示すように、上記パレットロック機構40は、棚レール14の幅方向中央部の上面から上方に突出させて後述するパレット70のパレットロック係合穴75に係合させるピン41と、このピン41を上昇位置に付勢するスプリング(付勢部材)42と、これらを棚レール14に固定する座板43とを有している。スプリング42の下端は、座板43に支持されている。この座板43を棚レール14に固定することで、パレットロック機構40が棚レール14に取付けられている。上記ピン41は、棚レール14の長手方向所定位置で上下動可能となっている。
【0033】
また、ピン41の下端は座板43から下方に突出しており、この突出部分にピン41をスプリング42の付勢力に抗して下方へ押下げるための作動板45が設けられている。この作動板45は、棚レール14の下方から側方に突出するとともに、棚レール14に沿って一部が延びている。作動板45の棚レール14から側方に突出した部分には、後述するように保持部材52,53が当接する受材46が上向きに突設されている。さらに、棚レール14に沿って延びた部分には、ピン41と平行にガイド棒47が設けられ、上記座板43のガイド穴44に挿入されている。このガイド棒47により、作動板45が押下げられたときにピン41が回転することなく真っ直ぐ下がるようにしている。なお、ピン41を多角形断面として、ガイド棒47を無くすような構成としてもよい。
【0034】
一方、
図5(a),(b) に示すように、上記搬器保持装置50の各搬器保持機構51には、両端部に保持部材52,53が設けられている。この保持部材52,53は、搬器16に設けられた軸受55に支持された回動自在な駆動軸54の両端部に設けられている。この駆動軸54は、搬器16に設けられた駆動モータ(駆動源)56によって、チェーン57を介して回動させられるようになっている。駆動軸54の回動は、駆動モータ56によって約90°の範囲で可能となっている。
【0035】
また、この実施形態では、駆動軸54の両端部に異なる形態の保持部材52,53が設けられている。図示する右側の保持部材52は、平板材52aの上部に補強材52bが一体的に設けられて略L字状に形成されたものであり、駆動軸54の端部に固定されている。この保持部材52は、駆動軸54の軸心に当接面52cの中央部が位置するように配設されている(
図5(b) )。
【0036】
一方、図示する左側の保持部材53は、駆動軸54の軸心から一方に突出する略逆L字状に形成されている。この保持部材53は、駆動軸54の軸心に対して当接面が一方向にのみ突出するように配設されている(
図5(b) )。
【0037】
このような保持部材52,53によれば、当接面52c,53aが鉛直方向を向くように駆動軸54を回動させれば、格納棚13と棚側受けブラケット30,31とに干渉させることなく搬器16を昇降させることができる。また、
図5(b) に示すように、当接面52c,53aが水平方向を向くように駆動軸54を回動させれば、各格納棚13の位置に設けられた棚側受けブラケット30,31に搬器16を保持することができる。つまり、上記搬器保持機構51によって、搬器16を保持する保持部材52,53を、棚側受けブラケット30,31に載置する保持状態と、この棚側受けブラケット30,31と干渉しない通過状態とに切換え可能になっている。
【0038】
また、
図5(a) に示すように、保持部材52,53は、形態を異ならせるとともに当接面52c,53aが駆動軸54の回転中心に対して上下方向にオフセットされている。この実施形態では、保持部材52の当接面52cが駆動軸54の軸心に対して下方に所定量オフセットされ、保持部材53の当接面53aが駆動軸54の軸心に対して上方に所定量オフセットされている。
【0039】
さらに、
図5(b) に示すように、上記保持部材52,53による搬器16の保持は、駆動軸54の両端部に設けられた保持部材52,53の当接面52c,53aが平面視で互いに対角位置で棚側受けブラケット30,31に載置されて保持されるようになっている。このように駆動軸54の対角位置で搬器16を保持することにより、搬器保持状態において駆動軸54に作用する回転モーメントが互いに逆方向に作用するようにしている。
【0040】
図6,7は、上記保持部材52,53が棚側受けブラケット30,31に載置された保持状態を実線で示している。なお、
図6,7に二点鎖線で示す保持部材52,53は、保持部材52,53を棚側受けブラケット30,31と干渉しない通過状態に角度変更して切換えた状態を示している。
【0041】
図6に示すように、上記保持部材52は、上記棚側受けブラケット30による保持と同時に、棚レール14に設けられたパレットロック機構40の作動板45を押下げるようになっている。この保持部材52による作動板45の押下げは、棚側受けブラケット30に載置する部分と異なる当接面52cの一部分によって受材46を下方へ押すことによって行われる。作動板45を押下げることにより、ピン41がスプリング42の付勢力に抗して作動板45と一体的に下降し、棚レール14のほぼ上面まで下げられる。これにより、ピン41によるレール材74、すなわちパレット70のロックが解除される。この作動板45でピン41を押下げる機構がロック解除機構48である。
【0042】
また、
図7に示すように、上記保持部材53も、上記棚側受けブラケット31による保持と同時に、棚レール14に設けられたパレットロック機構40の作動板45を押下げるようになっている。この保持部材53による作動板45の押下げは、棚側受けブラケット31に載置する当接面53aとは異なり、保持部材53の下端で受材46を下方へ押すことによって行われる。作動板45を押下げることにより、ピン41がスプリング42の付勢力に抗して作動板45と一体的に下降し、棚レール14のほぼ上面まで下げられる。これにより、ピン41によるレール材74、すなわちパレット70のロックが解除される。
【0043】
このような
図6,7に示す搬器16の保持とパレット70のロック解除は、搬器16の前後方向に対向する2辺の搬器保持機構51において同時に行われる。
【0044】
さらに、
図8(a),(b) に示すように、この実施形態では、保持部材52,53の当接面52c,53aを駆動軸54の回転中心に対して上下方向にオフセットしている(
図5(a) )。そのため、
図8(a) に示すように、保持部材52,53を棚側受けブラケット30,31と干渉しない移動量Xまで駆動軸54を回動させる角度θ1は小さくてよい。しかも、保持部材52,53を回動させるために持上げる高さZ1も小さくてよい。従って、保持部材52,53を保持状態及び通過状態に角度変更する時間が短い、迅速な搬器16の移動が可能となる。なお、
図8(b) は、駆動軸54の回転中心に保持部材を設けた場合を示しており、この場合には
図8(a) に比べて移動量Xとなるように回動させる角度θ2及び高さZ2が共に大きくなることがわかる。
【0045】
図9(a),(b) に示すように、上記パレット70は、両側端に設けられた立上がり側端部71と中央の中央隆起部72との間に凹状の車路73が形成されている。このパレット70の下面には、上記格納棚13の棚レール14上を移動するレール材74が設けられている。このレール材74は、断面が角パイプ状に形成されており、両端部は上向きに反り上がっている(
図10)。レール材74の両端部を反り上がらせることで、搬器16と棚レール14との間の移載がスムーズに行われるようにしている。
【0046】
そして、上記レール材74の下面の所定位置には、上記パレットロック機構40のピン41が挿入されるパレットロック係合穴75が設けられている。このパレットロック係合穴75は、昇降路12の左右両側方に設けられたいずれの格納棚13に格納されてもパレットロック機構40でロックされるように、両レール材74の所定位置にそれぞれ設けられている。
【0047】
図10に示すように、上記格納棚13に格納されるパレット70は、棚レール14に設けられたローラ19上をパレット70のレール材74が移動し、パレット70が所定位置に格納された状態で、パレットロック係合穴75にパレットロック機構40のピン41が挿入されて位置が固定される。
【0048】
上記棚レール14には、上記したようにピン41を下向きに移動させるロック解除機構48が設けられている。このロック解除機構48の作動板45が、棚レール14の下方から、棚柱15に設けられた棚側受けブラケット30(31)の方に突出している。作動板45によるロック解除機構48の動作は、上述したように、棚側受けブラケット30(31)による保持部材52(53)の保持と同時に行われる。
【0049】
一方、
図11(a),(b) に示すように、上記支持部10には、ロープ21に作用する荷重の変化を検知する検知部60が設けられている。支持部10は、搬器16を昇降させるロープ21の一端に支持板35が設けられ、この支持板35の上面に一体で設けられた支持軸36が駐車塔2の支持台37にスプリング38を介して支持されている。
【0050】
そして、上記支持板35と支持台37との間に、搬器16を棚側受けブラケット30,31で支持した後にロープ21に作用する荷重が減少したことを検知する検知部60が設けられている。この検知部60には、この実施形態では近接スイッチ61が設けられている。この近接スイッチ61は、支持板35に設けられた検知板62の貫通穴63と対向するように配置されている。
図11(a) に示すように、搬器16の重量又は搬器16と搭載された車両Vの重量がロープ21に作用している状態では、近接スイッチ61の前面は貫通穴63であるため、近接スイッチ61による検知は行われない。
【0051】
しかし、
図11(b) に示すように、搬器16を棚側受けブラケット30,31で保持した後は吊下げているロープ21が支持する荷重が減少するので、支持板35とともに検知板62がスプリング38のバネ力によって上方へ移動させられる。この検知板62の上昇により、検知板62が近接スイッチ61の前面を塞ぎ、近接スイッチ61によってロープ21に作用する荷重が減少したことが検知される。これにより、搬器16を下降させている昇降駆動装置20によるロープ21の巻下げが停止させられる。
【0052】
このように検知部60でロープ21に作用している荷重を検知することで、保持部材52,53を棚側受けブラケット30,31で保持して搬器16の下降が停止した後に繰り出されたロープ21が弛むのを防止するとともに、ロープ21に所定のテンションを保っている。これにより、棚側受けブラケット30,31で保持した搬器16を再び上昇させるときにスムーズに駆動できるようにしている。
【0053】
以上のような搬器保持装置50を備えたエレベータ式駐車設備1によれば、昇降駆動装置20によって搬器16を所望の格納棚13の位置に昇降させ、搬器16を保持する格納棚13の棚側受けブラケット30,31から所定量上方位置で停止させる。そして、駆動モータ56で駆動軸54を回動させて保持部材52,53を保持状態(水平状態)にする。その後、その状態で搬器16を微速で下降させる。これにより、搬器16に設けられた搬器保持装置50の保持部材52,53が棚側受けブラケット30,31によって支持され、搬器16が所定の格納棚13の位置に保持される。
【0054】
一方、上記したように搬器16が棚側受けブラケット30,31に支持されるときには、上記保持部材52,53によって格納棚13に設けられたパレットロック機構40のピン41がロック解除機構48によって下降させられ、パレット70のロックが解除された状態となる。つまり、搬器16の保持部材52,53が棚側受けブラケット30,31に載置されると同時に、この保持部材52,53の他の部分がロック解除機構48の作動板45を押下げるので、この作動板45と一体的にパレットロック機構40のピン41が下降してパレット70のパレットロック係合穴75から抜けてロックが解除される。
【0055】
そのため、格納棚13に格納されている状態のパレット70は、地震力などが作用した時でもパレットロック機構40によって格納棚13に安定して保持されているが、搬器16をその格納棚13の位置に保持すると同時にロック解除機構48によってパレットロック機構40によるパレット70のロックが解除されるので、その後のパレット70の払出し/引込み動作を連続的に迅速に行うことが可能となる。
【0056】
従って、上記搬器保持装置50によれば、搬器16の荷重を保持部材52,53で棚側受けブラケット30,31に保持して搬器16に荷重変化を生じても吊下げているロープが伸縮することなく所望の格納棚13の位置に保持できる構成を簡単にして、設計及び製造コストの削減を可能にすることができる。しかも、上記実施形態の構成によれば、搬器16の格納棚13への保持に連続してパレット70の払出し/引込み動作を迅速に行うことができるので、機械式駐車設備における車両の入出庫作業スピードを向上させることも可能となる。
【0057】
また、上記搬器保持装置50を備えたエレベータ式駐車設備(機械式駐車設備)1によっても、格納棚13に設ける構成及び搬器16に設ける構成のコストを低減して搬器保持装置50のコスト低減を図るとともに、設計コストの低減を図ることが可能となる。
【0058】
なお、上記実施形態では、下部乗入れ方式で下部駆動のエレベータ式駐車設備1を例に説明したが、機械式駐車設備としては索状体(ロープ21、チェーン等)で搬器16を昇降させる駐車設備であればよく、機械式駐車設備は上記実施形態に限定されるものではない。
【0059】
また、上記実施形態では、搬器16が動滑車方式の吊持方法となった例を説明したが、搬器16を昇降させる吊持方法は上記実施形態に限定されるものではなく、他の方式であってもよい。
【0060】
さらに、上記実施形態では、棚柱15の向き、棚側受けブラケット30,31の形態、及び保持部材52,53の形態を左右位置で異ならせているが、これら棚柱15,棚側受けブラケット30,31及び保持部材52,53は左右同一の形態であってもよく、搬器16の構成等に応じて適した形態にすればよい。
【0061】
さらに、上記実施形態は一例を示しており、本発明の要旨を損なわない範囲での種々の変更は可能であり、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。