【実施例】
【0024】
本発明の好適な一実施例である沸騰水型原子炉を、
図1、
図3及び
図4を用いて説明する。
【0025】
本実施例の沸騰水型原子炉1は、原子炉圧力容器2、炉心4、炉心シュラウド6、気水分離器14及び蒸気乾燥器15を備えている。上蓋3が原子炉圧力容器2の上端に取り外し可能に取り付けられている。炉心4、炉心シュラウド6、気水分離器14及び蒸気乾燥器15は、原子炉圧力容器2内に配置される。主蒸気配管29及び給水配管30が原子炉圧力容器2に接続される。炉心シュラウド6は、複数の燃料集合体5が装荷された炉心4を取り囲んでいる。炉心シュラウド6に取り付けられた炉心支持板7が、炉心4の下端部に配置される。炉心4の上端部に配置されて炉心シュラウド6に取り付けられた上部格子板8が、それぞれの燃料集合体5の上端部を支持する。複数の制御棒駆動機構ハウジング13が、原子炉圧力容器2の底部に設けられる。燃料集合体5の相互間に出し入れされる複数の制御棒11が、各制御棒駆動機構ハウジング13内に設置された制御棒駆動機構(図示せず)にそれぞれ連結される。複数の制御棒案内管12が、炉心4の下方で原子炉圧力容器2内に設置される。炉心4から引き抜かれた制御棒11が、制御棒案内管12内に収納される。
【0026】
複数のジェットポンプ9が、原子炉圧力容器2と炉心シュラウド6の間に形成される環状領域であるダウンカマ内に配置される。シュラウドヘッド10が炉心シュラウド6の上端に取り付けられ、シュラウドヘッド10の上方に配置された気水分離器14がシュラウドヘッド10に取り付けられる。蒸気乾燥器15が気水分離器14の上方に配置されている。
【0027】
蒸気乾燥器14は、並列に配置された複数の蒸気乾燥器ユニット16、サポートリング19及び円筒状のスカート部20を有する。各蒸気乾燥器ユニット16は、フードプレート17及び波板部18を含んでいる。フードプレート17は、波板部18の上流側に配置され、波板部18の前面を覆っている。波板部18には、湿分を除去する複数の波板が並列に配置されている。サポートリング19は、各蒸気乾燥器ユニット16に取り付けられ、蒸気乾燥器ユニット16の下方に配置される。スカート部20は、上端がサポートリング19に取り付けられ、サポートリング19から下方に向かって伸びている。
【0028】
複数の耐震ブロック21が、サポートリング19の周方向に所定の間隔で配置され、溶接部24でサポートリング19の外面に接合される(
図2参照)。各耐震ブロック21は、逆U字状をしており、下方に向かって開放された切欠き部22を形成している。周方向における切欠き部22の幅と同じ幅を有する切欠き溝23が、サポートリング19の下端部に形成されている。切欠き溝23も、切欠き部22と同様に、下方に向かって開放されている。切欠き部22及び切欠き溝23は、サポートリング19の半径方向において一直線に配置され、これらは互いにつながっている。切欠き部22及び切欠き溝23のそれぞれの上端面は、同じ高さに存在する。切欠き部22の高さは、切欠き溝23の高さだけ従来の耐震ブロック21Aに形成された切欠き部22Aの高さよりも高くなっている。
【0029】
耐震ブロック21と同じ個数の支持ブラケット26が原子炉圧力容器2の内面に取り付けられる。各支持ブラケット26が、対応する耐震ブロック21の切欠き部22及び切欠き溝23内に嵌め込まれる。切欠き部22及び切欠き溝23のそれぞれの上端面が、支持ブラケット26の上面26Aに接触し、サポートリング19が支持ブラケット26によって支持される(
図1参照)。この状態で、切欠き部22及び切欠き溝23のそれぞれの2つの側面が支持ブラケット26の2つの側面にそれぞれ接触している。本実施例では、切欠き溝23の形成により、サポートリング19側の部材(本実施例では、サポートリング19及び耐震ブロック21)と支持ブラケット26の側面との接触面25(
図1参照)の面積が、
図5に示す、蒸気乾燥器の従来の支持構造におけるサポートリング19A側の部材(サポートリング19A及び耐震ブロック21A)と支持ブラケット26の側面との接触面27(
図5参照)の面積よりも大きくなっている。
【0030】
運転を経験した原子炉の原子炉圧力容器2内に設置されている蒸気乾燥器15のサポートリングへの切欠き溝23の形成及び切欠き部22Aよりも高さが高い切欠き部22の形成について説明する。
【0031】
或るサイクルの運転サイクルに対する原子炉の運転が停止され、原子炉に対する定期検査を実施する際に、切欠き溝23等の加工が行われる。原子炉の運転が停止された後、上蓋3が取り外され、原子炉圧力容器2内に設置された蒸気乾燥器15が取り外さる。この蒸気乾燥器15が天井クレーンを用いて水が張ってある機器仮置きプール内に搬送され、蒸気乾燥器15のスカート部20の下端が機器仮置きプールの底に置かれる。機器仮置きプール内において、蒸気乾燥器15は、放射線を遮へいするために水中に置かれる。
【0032】
機器仮置きプール内に搬送された蒸気乾燥器15は、
図5に示す複数の耐震ブロック21Aを取り付けたサポートリング19Aを有する。機器仮置きプールの水中において、フライスを用いてサポートリング19Aの下端部にサポートリング19Aの半径方向に伸びる切欠き溝23を加工する。このような加工によって、切欠き溝23が、サポートリング19Aの周方向において複数個所でサポートリング19Aに形成され、複数の切欠き溝23を有するサポートリング19が製作される。フライスを用いて切欠き溝23を加工する際に、サポートリング19Aに取り付けられた耐震ブロック21Aの、切欠き部22Aの上端面よりも上方の部分がそのフライスにより加工され、切欠き部22Aよりも高さが高い切欠き部22を有する耐震ブロック21が製作される。
【0033】
定期検査期間において、原子炉圧力容器2内の保守点検及び燃料集合体5の交換が終了した後、気水分離器14が取り付けられたシュラウドヘッド10が、原子炉圧力容器2内に搬入され、炉心シュラウド6に取り付けられる。さらに、切欠き溝23が形成されたサポートリング19及び切欠き部22が形成された耐震ブロック21を有する蒸気乾燥器15が、原子炉圧力容器2内に搬入され、支持ブラケット26がサポートリング19の切欠き溝23及び耐震ブロック21の切欠き部22内に嵌め込まれて支持ブラケット26で支持される。その後、上蓋3が原子炉圧力容器2の上端に取り付けられる。
【0034】
原子炉の定期検査が終了した後、原子炉が再起動される。沸騰水型原子炉1の運転時において、ダウンカマ内の冷却水がジェットポンプ9により炉心4の各燃料集合体5内に供給される。これらの燃料集合体5内に供給された冷却水が、それぞれの燃料集合体5に含まれる核燃料物質の核分裂で発生した熱によって加熱され、加熱された冷却水の一部が蒸気になる。冷却水及び蒸気を含む気液二相流が、各燃料集合体5から排出され、気水分離器14内に導かれる。気水分離器14において冷却水が分離され、冷却水から分離された蒸気が気水分離器14から排出され、蒸気乾燥器15内に導かれる。この蒸気は、蒸気乾燥器14のフードプレート17内に流入し、さらに、波板部18内に導かれる。蒸気は波板部18内において波板相互間を流れ、蒸気に含まれる湿分が波板によって除去される。
【0035】
水分が除去されて蒸気乾燥器15から排出された蒸気は、原子炉圧力容器2から主蒸気配管29に排出され、主蒸気配管29を通してタービン(図示せず)に供給される。タービンは、蒸気によって回転され、タービンに連結された発電機(図示せず)を回転させる。発電機の回転により電力が発生する。タービンから排気された蒸気は、復水器(図示せず)で凝縮され、水になる。この水は、給水として、給水配管30を通って原子炉圧力容器2内に供給される。
【0036】
地震が発生したときには、水平方向に揺れ、蒸気乾燥器15に水平方向の加速度が作用する。この地震によって、蒸気乾燥器15の荷重は、サポートリング19から、サポートリング19と耐震ブロック21の溶接部24を通して耐震ブロック21に伝達され、さらに、耐震ブロック21の切欠き部22の側面からこの側面と接触する支持ブラケット26に伝えられる。また、その地震時における蒸気乾燥器15の荷重は、サポートリング19の切欠き溝23の側面からこの側面と接触する支持ブラケット26に伝えられる。このように、地震時に水平方向の加速度が蒸気乾燥器15に作用した場合には、蒸気乾燥器15の荷重は、耐震ブロック21に形成された切欠き部22の両側面だけでなく、サポートリング19に形成された切欠き溝23の両側面からも支持ブラケット26に伝えられ、原子炉圧力容器2で支持される。
【0037】
本実施例では、サポートリング19に形成された切欠き溝23及び耐震ブロック21に形成された高さが高い切欠き部22に支持ブラケット26が嵌め込まれているので、支持ブラケット26の側面と接触する、切欠き部22及び切欠き溝23の接触面25の面積が、
図5に示す、蒸気乾燥器の従来の支持構造において、支持ブラケット26の側面と接触する、切欠き部22Aの接触面27の面積よりも大きくなる。このため、本実施例で用いられる、蒸気乾燥器15の支持構造の耐震性を向上させることができる。特に、地震時において水平方向の加速度が作用したとき、蒸気乾燥器15の荷重を切欠き溝23の側面を介してサポートリング19で受けることができ、その耐震性の向上を図ることができる。本実施例における蒸気乾燥器15の支持構造は、切欠き溝23を形成したサポートリング19、このサポートリング19に取り付けられた、切欠き部22を形成した耐震ブロック21、及び原子炉圧力容器2の半径方向においてつながっている切欠き部22及び切欠き溝23に嵌め込まれた支持ブラケット26によって構成される。
【0038】
本実施例では、地震時において水平方向の加速度が作用したときにおいて、蒸気乾燥器15の荷重を、切欠き部22の側面及び切欠き溝23の側面を介して支持ブラケット26に伝えることができるので、サポートリング19に形成される切欠き溝23の高さを、耐震ブロックをサポートリングに取り付けない状態で、切欠き溝をサポートリングに形成した場合よりも低くすることができる。このため、切欠き溝23の加工に要する時間を短縮することができる。
【0039】
また、耐震ブロックをサポートリングに取り付けない状態で切欠き溝をサポートリングに形成する場合には、この切欠き溝に挿入された支持ブラケットの側面とサポートリングの接触面積を
図1に示す接触面25の面積と同程度に確保しようとすれば、サポートリングに形成する切欠き溝の高さを
図1に示す切欠き溝23の高さよりも高くする必要がある。このため、サポートリングの強度が損なわれる可能性がある。本実施例では、前述したように、耐震ブロック21をサポートリング19に取り付けた状態で、サポートリング19に切欠き溝23を形成しているので、切欠き溝23の高さを低く押さえることができる。したがって、本実施例では、サポートリング19の必要な強度が損なわれることを防止できる。
【0040】
本実施例では、切欠き溝23の形成により、支持ブラケット26の側面とサポートリング19及び耐震ブロック21との接触面25の面積の増大を図っている。このような接触面25の面積の増大は、従来例におけるサポートリング19Aと耐震ブロック21Aの溶接部の強化に比べて横断面積28を効率的に増加することができ、蒸気乾燥器15の支持構造物(切欠き部22を形成した耐震ブロック21、切欠き溝23を形成したサポートリング19及び支持ブラケット26を含む)の耐震性を効果的に向上させることができる。
【0041】
本実施例では、サポートリング19に切欠き溝23を加工するために工数が増大するが、この工数の増大は、耐震ブロック21Aを前述した耐震性が優れた大きな耐震ブロックに交換する場合における工数の増大よりも非常に少なくなる。本実施例に用いる上記の蒸気乾燥器15の支持構造における耐震性向上に要する作業の工数を低減することができる。