(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ハウジング(2)のシリンダ孔(6)内に挿入したクランプロッド(7)がリリース上昇位置で旋回された後にロック下降位置へ直進駆動されるように構成したクランプ装置であって、
上記シリンダ孔(6)と上記クランプロッド(7)との間に軸心方向へ移動可能かつ軸心回りに回転可能で保密状に挿入された環状ピストン(13)と、
上記の環状ピストン(13)の外周部と上記シリンダ孔(6)の内周壁との一方に設けられたガイド溝(18)であって、上向きに連ねて設けた旋回溝(23)と直進溝(24)とを有するガイド溝(18)と、
上記の環状ピストン(13)の外周部と上記シリンダ孔(6)の内周壁との他方に設けられて上記ガイド溝(18)に嵌合する係合具(19)と、
上記クランプロッド(7)と上記の環状ピストン(13)との両者間に設けられて、これら両者が軸心回りに相対回転するのを防止すると共に軸心方向へ相対移動するのを許容する伝動機構(26)と、
上記の環状ピストン(13)の上側に形成されて圧力流体が給排されるロック作動室(40)と、を備え、
上記ハウジング(2)の上端壁(3a)に封止された部分における上記クランプロッド(7)の直径(D1)を上記の環状ピストン(13)に封止された部分における上記クランプロッド(7)の直径(D2)よりも大きい値に設定し、
上記クランプロッド(7)を上記リリース上昇位置から上記ロック下降位置へ移動させるときには、上記ロック作動室(40)に圧力流体を供給することにより、そのロック作動室(40)の圧力流体から上記クランプロッド(7)に作用する上下方向の差力によって当該クランプロッド(7)を前記リリース上昇位置に押上げた状態で上記の環状ピストン(13)が上記の旋回溝(23)及び係合具(19)を介して旋回しながら下降して、当該環状ピストン(13)が上記の伝動機構(26)を介して上記クランプロッド(7)を上記リリース上昇位置で旋回させ、その後、上記の環状ピストン(13)が、上記クランプロッド(7)に設けた被駆動部(33)を介して当該クランプロッド(7)を直進下降させるように構成し、
上記クランプロッド(7)が上記の旋回中に下降するのを阻止すると共に当該クランプロッド(7)が上記の直進下降時に下降するのを許容する誤動作防止機構(M)を、上記クランプロッド(7)の下部と上記ハウジング(2)の下端壁(5)とに設け、
前記の誤動作防止機構(M)は、前記ハウジング(2)の前記の下端壁(5)に設けられた嵌合穴(52)と、前記クランプロッド(7)の前記の下部に設けられた嵌合部(54)であって前記リリース上昇位置での旋回中には上記の嵌合穴(52)の周壁(52a)によって下降が阻止されると共に前記の直進下降時には上記の嵌合穴(52)に嵌入されるように構成した嵌合部(54)と、を備え、
前記クランプロッド(7)が前記リリース上昇位置に押し上げられた状態では、前記の嵌合穴(52)の周壁(52a)の上面と前記の嵌合部(54)の下面との間に所定の隙間(G)が形成される、ことを特徴とするクランプ装置。
【背景技術】
【0002】
この種の水平旋回式のクランプ装置には、従来では、特許文献1(日本国・実公昭60−18267号公報)に記載されたものがある。その従来技術は、次のように構成されている。
シリンダチューブのシリンダ孔とピストンロッドとの間に環状のフリーピストンを挿入する。そのフリーピストンの周壁に設けた直進用ガイド溝に、フリーピストン回転防止用ピンの内端部を嵌合させると共に、その回転防止用ピンの外端部を上記シリンダチューブに固定する。また、上記ピストンロッドを挟んで上記の直進用ガイド溝と向い合うように、上記フリーピストンの周壁に回転用ガイド溝を形成する。その回転用ガイド溝に回転用ピンの外端部を嵌合させると共に、その回転用ピンの内端部を上記ピストンロッドに固定する。さらに、上記ピストンロッドの下端にピストン下降規制用ピンを固定する。そのピストン下降規制用ピンを、シリンダチューブの下部に固定したヘッドカバーの締付けストローク用カイド溝に対面可能に構成する。
【0003】
上記の従来技術によれば、上記ピストンロッド(及びクランパ)はリリース上昇位置からロック下降位置へ次の手順で切換えられる。
まず、上記ピストンロッドの下部に固定した上記ピストン下降規制用ピンの両端が上記ヘッドカバーの上部に受け止められた状態で、上記フリーピストンが前記の直進用ガイド溝に沿って真っ直ぐに下降する。これにより、そのフリーピストンに設けた前記の回転用ガイド溝が前記の回転用ピンを介して上記ピストンロッド(及びクランパ)を上記リリース上昇位置で水平旋回させる。次いで、上記ピストン下降規制用ピンの両端が前記の締付けストローク用ガイド溝に対面して位相が合致したときに、上記ピストンロッド(及びクランパ)が上記の締付けストローク用ガイド溝に沿ってロック下降位置へ直進駆動される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の従来技術は次の問題がある。
上記ピストンロッド(及びクランパ)が旋回するときには、上記フリーピストンからピストンロッドに作用する下降力により、前記ピストン下降規制用ピンの両端が上記ヘッドカバーの上部に常に受け止められている。このため、そのヘッドカバーの上部から上記ピストン下降規制用ピンの両端に大きな摩擦抵抗が作用して、上記ピストンロッドの旋回抵抗が大きい。
また、上記ピストンロッドの旋回の終期において、ピストン下降規制用ピンの両端と締付けストローク用ガイド溝との両者の位相が合致する直前では、そのピストン下降規制用ピンの両端が締付けストローク用ガイド溝の縁部に旋回しながら接近するので、その縁部の支圧面積が漸減していく。このため、上記の締付けストローク用ガイド溝の縁部は、面圧が極めて高くなって、塑性変形で崩壊するおそれがある。その結果、上記両者の位相が合致する前に上記ピストン下降規制用ピンが締付けストローク用ガイド溝に嵌合して、上記ピストンロッド(及びクランパ)が所定の旋回角度を旋回する前にロック駆動するおそれがある。
本発明の目的は、所定の旋回角度で円滑に水平旋回できるクランプ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するため、本発明は、例えば、
図1から
図5に示すように、クランプ装置を次のように構成した。
即ち、ハウジング2のシリンダ孔6内に挿入したクランプロッド7がリリース上昇位置で旋回された後にロック下降位置へ直進駆動されるように構成する。
上記シリンダ孔6と上記クランプロッド7との間に、環状ピストン13を、軸心方向へ移動可能かつ軸心回りに回転可能で保密状に挿入する。上記の環状ピストン13の外周部と上記シリンダ孔6の内周壁との一方に、上向きに連ねて設けた旋回溝23と直進溝24とを有するガイド溝18を設ける。また、上記の環状ピストン13の外周部と上記シリンダ孔6の内周壁との他方に、上記ガイド溝18に嵌合する係合具19を設ける。上記クランプロッド7と上記の環状ピストン13との両者間に、これら両者が軸心回りに相対回転するのを防止すると共に軸心方向へ相対移動するのを許容する伝動機構26を設ける。上記の環状ピストン13の上側に圧力流体が給排されるロック作動室40を形成する。上記ハウジング2の上端壁3aに封止された部分における上記クランプロッド7の直径D1を上記の環状ピストン13に封止された部分における上記クランプロッド7の直径D2よりも大きい値に設定する。上記クランプロッド7を上記リリース上昇位置から上記ロック下降位置へ移動させるときには、上記ロック作動室40に圧力流体を供給することにより、そのロック作動室40の圧力流体から上記クランプロッド7に作用する上下方向の差力によって当該クランプロッド7を前記リリース上昇位置に押上げた状態で上記の環状ピストン13が上記の旋回溝23及び係合具19を介して旋回しながら下降して、当該環状ピストン13が上記の伝動機構26を介して上記クランプロッド7を上記リリース上昇位置で旋回させ、その後、上記の環状ピストン13が、上記クランプロッド7に設けた被駆動部33を介して当該クランプロッド7を直進下降させるように構成する。そして、上記クランプロッド7が上記の旋回中に下降するのを阻止すると共に当該クランプロッド7が上記の直進下降時に下降するのを許容する誤動作防止機構Mを、上記クランプロッド7の下部と上記ハウジング2の下端壁5とに設ける。
前記の誤動作防止機構Mは、前記ハウジング2の前記の下端壁5に設けられた嵌合穴52と、前記クランプロッド7の前記の下部に設けられた嵌合部54であって前記リリース上昇位置での旋回中には上記の嵌合穴52の周壁52aによって下降が阻止されると共に前記の直進下降時には上記の嵌合穴52に嵌入されるように構成した嵌合部54と、を備える。
前記クランプロッド7が前記リリース上昇位置に押し上げられた状態では、前記の嵌合穴52の周壁52aの上面と前記の嵌合部54の下面との間に所定の隙間Gが形成される。
【0007】
本発明は、例えば、次の作用効果を奏する。
上記クランプロッド(及びクランプアーム)をリリース上昇位置で旋回させるときに、前記の旋回溝と係合具を介して回転される環状ピストンが当該クランプロッドを旋回させるので、そのクランプロッドには下降力がほとんど作用しない。このため、本発明は、前記の従来技術とは異なり、上記クランプロッドの下部をハウジングに下端壁に受け止める必要がなくなる。その結果、上記ハウジングの下端壁からクランプロッドの下部に大きな摩擦抵抗が作用することがなくなり、上記クランプロッドの旋回抵抗が小さくなって、当該クランプロッドロッドが円滑に旋回する。
【0008】
また、環状ピストンの上側にロック作動室を設け、ハウジングの上端壁に封止された部分における上記クランプロッドの直径を上記の環状ピストンに封止された部分におけるクランプロッドの直径よりも大きい値に設定したので、上記ロック作動室の圧力流体から上記クランプロッドに作用する上下方向の差力によって当該クランプロッドを前記リリース上昇位置に押上げることが可能になる。これにより、上記の上下方向の差力によって上記クランプロッドをリリース上昇位置に確実に保持できるので、そのクランプロッドを水平旋回させる高さの位置精度が向上する。
【0009】
しかも、本発明は、上記ロック作動室の圧力流体によってクランプロッドをリリース上昇位置に保持できるので、前述の従来技術とは異なり、ピストン下降規制用ピンをヘッドカバーの上部によって常に受け止める必要がなくなり、そのヘッドカバーに設けた締付けストローク用ガイド溝の縁部が塑性変形によって崩壊する弊害を解消できる。このため、上記クランプロッド(及びクランプアーム)は、所定の旋回角度を確実に旋回し、その後でロック下降されることになる。その結果、ワーク等の被固定物のクランプミスを確実に防止できる。
【0010】
さらに、本発明によれば、環状ピストンが軸心回りに回転することによって上記クランプロッドを旋回させる。このため、フリーピストンの直進移動をピストンロッドの旋回に変換する前記の従来技術とは異なり、クランプ装置の長期間の使用によって構成部品が経年変化した場合でも、上記クランプロッド(及びクランプアーム)を確実に旋回させることができる。その結果、クランプ装置の旋回動作とロック動作とを確実に区分けすることが可能である。
【0011】
また、前記のリリース上昇位置からロック下降位置への切り換えの開始時において、例えば、上記の環状ピストンの内周面と上記クランプロッドの外周面との嵌合部に異物が噛みこんだ場合のように、何らかの原因によって上記の環状ピストンとクランプロッドとが一体になってしまうと、環状ピストンの旋回下降に同行して上記クランプロッドも旋回しながら下降するおそれがある。この場合、そのクランプロッドの上部に固定したクランプアームも旋回しながら下降してしまい、そのクランプアームが他物と干渉するという弊害が発生する。しかしながら、本発明によれば、上記クランプロッドの旋回中に、誤動作防止機構を構成するクランプロッドの下部とハウジングの下端壁とが協働することにより、そのクランプロッドの下部が所定量以上に下降することをハウジングの下端壁によって阻止できるので、上記弊害の発生を防止できる。
また、本発明によれば、誤動作防止機構を簡素に構成できる。
さらに、本発明によれば、クランプロッドの旋回中に上記の周壁の上面と上記の嵌合部の下面とが摺動しないので、誤動作防止機構の寿命が長くなる。
【0012】
本発明においては、前記ガイド溝18を前記の環状ピストン13の前記の外周部に設けると共に、前記の係合具19を前記シリンダ孔6の前記の内周壁に設けることが好ましい。
この場合、上記ガイド溝を容易かつ精度良く加工できるので、高性能のクランプ装置を安価に製造できる。
【0013】
また、
本発明において、上記の嵌合穴52と上記の嵌合部54とを平面視で長円形状に形成することにより、上記の誤動作防止機構をさらに簡素に構成できる。
【0014】
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態を
図1から
図5によって説明する。まず、
図1Aから
図3によって本発明のクランプ装置の構造を説明する。
【0018】
ハウジング2は、複数のボルト(図示せず)によってベース1に固定されるハウジング本体3と、そのハウジング本体3の下部に設けた下端壁5とを備える。
上記ハウジング2のシリンダ孔6内にクランプロッド7が挿入される。そのクランプロッド7の上端部にクランプアーム8が着脱可能に固定される。また、上記クランプロッド7の上寄り部が上記ハウジング本体3の上端壁3aに封止具9を介して保密状かつ緊密に嵌合される。さらに、上記クランプロッド7の途中高さ部に設けたフランジ10が上記の上端壁3aの下面に回転自在に受け止め可能になっている。
【0019】
上記シリンダ孔6は、上半部の小径孔6aと下半部の大径孔6bとを備える。そのシリンダ孔6と上記クランプロッド7との間の環状空間に、環状ピストン13が、外封止具14及び内封止具15を介して、軸心方向(ここでは上下方向)へ移動可能かつ軸心回りに回転可能で保密状に挿入される。
【0020】
上記の環状ピストン13の外周部には、3つのガイド溝18が周方向へほぼ等間隔に形成される。また、上記の各ガイド溝13に嵌合する係合ボール(係合具)19が前記シリンダ孔6の小径孔6aの内周壁に設けられる。各係合ボール19は、上記の小径孔6aの内周壁に形成した凹穴20に支持されている。
上記ガイド溝18は、主として
図3の展開図に示すように、下部溝22と旋回溝23と直進溝24とを上向きに連ねて形成されている。上記の旋回溝23の傾斜角度は、10度から30度の範囲内であることが好ましく、ここでは約20度に設定してある。
【0021】
上記クランプロッド7と上記の環状ピストン13との間に伝動機構26が設けられる。その伝動機構26は、上記クランプロッド7と環状ピストン13とが軸心回りに相対回転するのを防止すると共に軸心方向へ相対移動するのを許容するために配置されており、この実施形態では次のように構成されている。
上記クランプロッド7の下寄り部の外周部に、上下方向へ延びる3つの伝動溝27が周方向へほぼ等間隔に形成される。各伝動溝27に嵌合される伝動ボール28が前記の環状ピストン13に設けられる。上記の伝動ボール28は支持プレート29と止め輪30を介して上記の環状ピストン13の凹部31に支持されている。
また、上記クランプロッド7の下寄り部には、左右二つに分割された被駆動部33が止め輪34によって嵌着される。
【0022】
前記ハウジング本体3の上端壁3aと上記の環状ピストン13との間にロック作動室40が形成され、そのロック作動室40に圧油給排路41を介してロックポート42が連通される。また、前記の下端壁5と上記の環状ピストン13との間にリリース作動室43が形成され、そのリリース作動室43に別の圧油給排路44を介してリリースポート45が連通される。
【0023】
そして、上記クランプロッド7において、前記の封止具9によって前記の上端壁3aに封止された部分の直径D1を、前記の内封止具15によって上記の環状ピストン13に封止された部分の直径D2よりも大きい値に設定している。これにより、上記クランプロッド7の上寄り部の受圧断面積が下寄り部の受圧断面積よりも大きい値になり、上記のロック作動室40の圧油から作用する差力によって上記クランプロッド7が
図1Aに示すリリース上昇位置に押上げられる。
即ち、この実施形態では、上記クランプロッド7に作用する上向きの差力によって、そのクランプロッド7を先端方向のリリース上昇位置に保持する機構が構成されている。
【0024】
前記の環状ピストン13の環状の受圧断面積は、それに作用する下向き力が、上記クランプロッド7に作用する上向きの差力よりも大きくなるように設定されている。
そして、上記ロック作動室40とリリース作動室43と上記の環状ピストン13が、その環状ピストン13を昇降させる駆動機構Aを構成している。
【0025】
また、上記クランプロッド7の上記リリース上昇位置での旋回中に当該クランプロッド7が下降するのを阻止すると共に上記クランプロッド7が後述の直進下降時に下降するのを許容する誤動作防止機構Mが設けられる。この誤動作防止機構Mは次のように構成されている。
【0026】
前記ハウジング2の前記の下端壁5に平面視で円形の収容穴51と長円形状に形成した嵌合穴52とが上下に設けられる。前記クランプロッド7の下端部には、上記の嵌合穴52に対応して、平面視で長円形状に形成した嵌合部54が設けられる。そして、
図1Aのリリース状態では、上記の嵌合穴52の長軸に対して嵌合部54の長軸が直交するようになっている(
図1Bを参照)。また、その
図1Aのリリース状態では、上記の嵌合部54の下面と上記の嵌合穴52の周壁52aの上面との間には僅かな隙間Gが形成されている。
【0027】
そして、上記クランプロッド7が上記リリース上昇位置での旋回中に何らかの原因によって下降したときには、上記の嵌合部54の下面が上記の嵌合穴52の周壁52aによって受け止められ、上記クランプロッド7の下降が阻止される(
図1Bを参照)。これに対して、上記クランプロッド7の後述の直進下降時には、上記の嵌合部54が上記の嵌合穴52に嵌入されるようになっている(後述の
図5Aと
図5Bを参照)。
【0028】
上記構成のクランプ装置は次のように作動する。
図1のリリース状態では、ロック作動室40の圧油が排出されると共にリリース作動室43に圧油が供給されている。これにより、前記の環状ピストン13が上昇される。また、前記クランプロッド7は、前記の直径D2に相当する受圧断面積に作用する上向き力によって
図1Aのリリース上昇位置に保持されている。
【0029】
上記の
図1Aのリリース状態から
図5Aのロック状態に切り換えるときには、その
図1Aのリリース状態において、上記リリース作動室43の圧油が排出されると共に上記ロック作動室40に圧油が供給される。
【0030】
すると、
図4Aに示すように、上記ロック作動室40の圧力により、環状ピストン13が前記の旋回溝23に沿って平面視で時計回りの方向へ旋回しながら下降していく。これにより、上記リリース上昇位置に保持されたクランプロッド7(及びクランプアーム8)が前記伝動ボール28及び伝動溝27を介して平面視で時計回りの方向へ水平旋回される。
そして、上記の環状ピストン13が旋回用ストロークS1下降したときに、上記クランプロッド7(及びクランプアーム8)がほぼ90度旋回すると共に、上記の環状ピストン13の下部に固定された前記の支持プレート29が前記の被駆動部33に接当する。これと同時に、上記クランプロッド7の下端に設けた前記の嵌合部54と前記の嵌合穴52との位相が合致し(
図4(B)を参照)、その嵌合穴52に上記の嵌合部54が対面する。
【0031】
引き続いて、
図5Aに示すように、上記ロック作動室40の圧力により、環状ピストン13が前記の直進溝24に沿って真っ直ぐに下降すると共に、その環状ピストン13が上記被駆動部33を介して上記クランプロッド7を真っ直ぐに下降させていく。そして、上記クランプロッド7がロック用ストロークS2下降したときに、上記の環状ピストン13の下面が前記の下端壁5の上面に受け止められる。
なお、ここでは、上記クランプロッド7及びクランプアーム8が下方へフルストロークした状態で説明したが、上記クランプアーム8は、フルストロークするよりも前にワーク(図示せず)を固定するように構成される。
【0032】
上記の
図5Aのロック状態から
図1Aのリリース状態へ切り換えるときには、その
図5Aのロック状態において、ロック作動室40の圧油を排出すると共にリリース作動室43に圧油を供給すればよい。これにより、前記の手順とは逆の手順でクランプ装置が作動する。
即ち、まず、
図4Aに示すように、上記の環状ピストン13及びクランプロッド7がリリース作動室43の油圧力によって真っ直ぐに上昇し、そのクランプロッド7の前記フランジ10が前記の上端壁3aに受け止められる。次いで、
図1Aに示すように、回転しながら上昇する上記の環状ピストン13がクランプロッド7を平面視で反時計回りの方向へ旋回させるのである。
【0033】
ところで、前記の
図1Aの状態から
図4Aの状態への切換え開始時において、上記の環状ピストン13の内周面と上記クランプロッド7の外周面との嵌合部に異物が噛みこんだ場合には、上記の環状ピストン13とクランプロッド7とが一体となってしまい、その環状ピストン13の旋回下降に同行して上記クランプロッド7も旋回しながら下降するおそれがある。この場合、そのクランプロッド7の上部に固定した前記クランプアーム8も旋回しながら下降してしまい、そのクランプアーム8が他物と干渉するという弊害が発生する。
しかしながら、本発明によれば、上記クランプロッド7の所定量以上の旋回下降は、前記の嵌合部54が前記の嵌合穴52の周壁52aで受け止められることによって阻止できるので(
図1(B)を参照)、上記弊害の発生を防止できる。
【0034】
上記の実施形態は次のように変更可能である。
前記クランプロッド7の旋回角度は、上記の実施形態では約90度で例示したが、前記ガイド溝18の旋回溝23の傾斜方向の長さを変更する等により、所望の旋回角度に設定可能である。
前記クランプロッド7(及びクランプアーム8)の旋回方向は、上記ガイド溝18が傾斜する方向を逆にすることにより、例示した旋回方向とは逆方向へ変更可能である。
【0035】
上記クランプロッド7(及びクランプアーム8)を周方向にほぼ均等に支持するうえで、前記ガイド溝18及び係合ボール(係合具)19は、3つ又は4つ設けることが好ましいが、1つ又は2つ若しくは5つ以上であってもよい。また同様に、前記の伝動機構26の伝動溝27及び伝動ボール28は、3つ又は4つ設けることが好ましいが、1つ又は2つ若しくは5つ以上であってもよい。
その伝動機構26の伝動具は、例示のボール28に代えてキーであってもよい。また、その伝動機構26の伝動溝27は、スプライン状に形成してもよい。
【0036】
上記ガイド溝18は、環状ピストン13の外周部に設けることに代えて、前記シリンダ孔6の内周壁に設けてもよい。この場合、前記ハウジング本体3の筒孔に、内周部にガイド溝18を形成したスリーブ(図示せず)を嵌合固定して、そのスリーブの内周によって前記シリンダ孔6の小径孔6aを構成することが好ましい。
上記の場合、前記の係合ボール(係合具)19は、上記シリンダ孔6の内周壁に設けることに代えて、環状ピストン13の外周部に設けられる。
【0037】
前記の嵌合穴52の周壁52aの上面と前記の嵌合部54の下面との間に前記の隙間Gを設けることに代えて、上記の周壁52aの上面に上記の嵌合部54を軽く接当させるようにしてもよい。
上記の嵌合穴52と嵌合部54との嵌合構造は、例示した構造に代えて、種々の変形例が考えられ、例えば、前述した従来技術(実公昭60−18267号公報)の第2a図及び第2c図に示された構造であってもよい。
【0038】
上記の環状ピストン13を駆動する前記の駆動機構Aは、その環状ピストン13の上下両側に作動室40,43を形成することに代えて、次のように構成してもよい。即ち、環状ピストン13の上側に前記ロック作動室40を形成すると共に、環状ピストン13の下側にバネ室を形成し、そのバネ室に装着した戻しバネによって上記の環状ピストン13を上方へ付勢する。
【0039】
クランプ装置の作動流体は、圧油等の液体に代えて圧縮空気等の気体であってもよい。
その他に、当業者が想定できる範囲で種々の変更を行えることは勿論である。