(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5750066
(24)【登録日】2015年5月22日
(45)【発行日】2015年7月15日
(54)【発明の名称】ガイド波を用いた非破壊検査方法
(51)【国際特許分類】
G01N 29/11 20060101AFI20150625BHJP
G01N 29/44 20060101ALI20150625BHJP
【FI】
G01N29/11
G01N29/44
【請求項の数】4
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-28068(P2012-28068)
(22)【出願日】2012年2月13日
(65)【公開番号】特開2013-164361(P2013-164361A)
(43)【公開日】2013年8月22日
【審査請求日】2014年8月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】507250427
【氏名又は名称】日立GEニュークリア・エナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 正男
(72)【発明者】
【氏名】永島 良昭
(72)【発明者】
【氏名】三木 将裕
(72)【発明者】
【氏名】小池 正浩
【審査官】
森口 正治
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−036516(JP,A)
【文献】
特開2009−168707(JP,A)
【文献】
特開昭50−119483(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 29/00−29/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配管表面に複数個のガイド波超音波探触子を周方向に配列したガイド波センサを設置して、配管の軸方向の曲がり領域部へガイド波を電子スキャン方式で送信し、曲がり領域部の測定対象部位に集束させた部位からの反射信号を受信して、曲がり領域部の欠陥の検査を行うガイド波を用いた非破壊検査方法において、
配管の曲がり領域部を軸方向と周方向に分割し、前記分割数での軸方向と周方向の交点を測定対象部位として決定する手順と、
前記決定した複数の測定対象部位とガイド波を送信するセンサまでの距離とガイド波の伝播音速からガイド波を送信する時間のタイミングを算出する手順と、
前記算出した時間でガイド波センサから電子スキャン方式で前記複数の測定対象部位を順次変えて測定対象部位に集束させるガイド波を送信し、前記複数の測定対象部位からの反射波を受信して反射信号を検査情報データに生成する手順と、
予め求めておいた前記配管の曲がり領域部の同一形状と同一測定条件の検査情報データの比較データに基づいて測定した複数の測定対象部位の測定結果の検査情報データを補正する演算処理手順と、
前記演算処理によって生成した補正後の検査情報データの結果表示の信号データから欠陥の有無を判定する手順と
を備えることを特徴とするガイド波を用いた非破壊検査方法。
【請求項2】
請求項1に記載されたガイド波を用いた非破壊検査方法において、前記演算処理によって生成した補正後の検査情報データの結果表示の信号データから欠陥の有無を判定する手順は、測定結果の評価信号が所定の閾値を超える場合に欠陥有りと判断することを特徴とするガイド波を用いた非破壊検査方法。
【請求項3】
請求項2に記載されたガイド波を用いた非破壊検査方法において、測定結果の評価信号が所定の閾値を超える場合に欠陥有りと判断した場合に、異なる検査手段で欠陥を再測定する手順を有することを特徴とするガイド波を用いた非破壊検査方法。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載されたガイド波を用いた非破壊検査方法において、前記予め求めておいた前記配管の曲がり領域部の同一形状と同一測定条件の検査情報データの比較データに基づいて測定した複数の測定対象部位の測定結果の検査情報データを補正する演算処理手順における、検査情報データの比較データは、
測定対象物と同一形状試験体を準備する手順と、
前記同一形状試験体の測定条件を決定する手順と、
前記同一形状試験体を測定して基準データを収録し、比較データを生成する手順
により生成されることを特徴とするガイド波を用いた非破壊検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配管の曲がり領域部の外面及び内面に発生する減肉や欠陥などの部位を、ガイド波を用いてその状態を検査するのに好適なガイド波を用いた非破壊検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プラントで使用されている配管などの構造物は、使用している環境の影響を受けながら時間の経過とともに内外面から腐食または侵食に伴って劣化が進行し減肉する。腐食、浸食しやすい箇所では、劣化が進行していくと内容物の漏洩や破断にいたる事故の要因となるため、事業者は定期的に非破壊検査や目視検査をすることで、未然に防止し、構造物の健全性を確保している。
【0003】
従来から良く用いられている超音波を用いた非破壊検査は、超音波厚さ計が一般的であるが、幾つかの課題を抱えている。超音波厚さ計では、作業者がセンサと被検体との接触面の厚さを、一点一点測定する一点検査となるため検査範囲が狭く、表面積の大きいタンク検査や大口径の配管検査には長時間を費やし、結果として検査コストが増大する。また、高所部位やピット内に設置された被検体の低所部位及び狭隘部位の測定など、作業者が立ち入ることが困難な個所の測定では、何らかの対応策を施すため検査の準備に時間を費やすことになり、結果として検査コストが増大する。
【0004】
そこで、超音波の一種であるガイド波を用いた非破壊検査方法が、特許文献1で提案されている。ガイド波は、配管や板の境界面を有する物体中を伝播する超音波で、板の厚さや形状が変化する部位、即ち、厚さ方向の断面積が変化する部位で反射する特徴を利用して、配管や板状の内外面を長距離区間にわたり一括して検査する超音波検査方法で用いられる。
【0005】
ガイド波を伝播させて行う非破壊検査技術において、検査で用いる単一モードのガイド波は、被検体面を長距離区間伝播して形状が変化している部位で一部反射し、残り大部分は送信方向に単一モードのまま伝播していく。この伝播していく過程で反射するいろいろな反射信号を受信して解析することで、反射した位置や反射した大きさなどを推定することができる。
【0006】
特許文献1には、ガイド波を用いた非破壊検査方法として、ガイド波の透過法を用いて減肉部でガイド波の各伝播モード(S0モードおよびA0モード)の音速変化が生じることに基づいて、各伝播モードの伝播時間差を測定し、各伝播モードの特性曲線に照合して、伝播時間差を生じさせる板厚を求め、減肉深さを測定し、検査結果を画像表示して評価する方法が開示されている。
【0007】
特許文献2には、ガイド波を用いた非破壊検査装置及び非破壊検査方法として、ガイド波を配管に伝播させ、その反射波の信号を受信して受信情報を記憶するとともに、その一方で配管と同種、同形状で、欠陥が無い状態の配管を同じ検査条件で検査し記憶させた基準の受信情報とを比較して、欠陥を識別する方法が開示されている。
【0008】
さらに、特許文献3には、溶接部の探傷方法において、欠陥信号が得られた位置に対し、超音波を集中させ電子的に走査して探傷を行う方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第4094464号公報
【特許文献2】特開2009−36516号公報
【特許文献3】特開2001−324484号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ガイド波を用いた特許文献1〜3の非破壊検査方法には、課題も残されている。すなわち、ガイド波は、配管の曲がり領域部を有する部位の検査への適用が難しい点である。配管の曲がり領域部では直管の配管を機械で曲げるため、外側では引っ張り応力が発生し伸び、内側では圧縮応力が発生し縮むことにより肉厚変化が若干生じることや、配管の曲がり領域部の外側と内側部では配管の実効長さが異なっていることから、直管部を伝播するガイド波が曲がり領域部では歪み、散乱、漏洩、モード変化が生じるため、反射波による欠陥の正確な検出を難しくしている。
【0011】
即ち、直管部に単一のモードで伝播していたガイド波は、配管の曲がり領域部では曲がりの路程の差で歪みが生じ、曲がり領域部の外側(背側)にエネルギが集中するように伝播して乱れた波動で伝播する。一方、曲がり領域部の内側(腹側)に伝播する波は、エネルギが外側に集中する分だけ少なくなる。このため、曲がり領域部のガイド波の振幅は、内外部での位置によってガイド波の感度に大きな差が生じてしまう。このことから、ガイド波を用いて曲がり領域部の欠陥を検出する場合、欠陥の位置によって反射波の受信信号の大小が大きく変動し、小さな信号を見落としてしまう可能性があり、信頼性のある欠陥検出が難しくなる。
【0012】
図7は配管曲がり領域部への電子スキャン方法を示す模式図である。ガイド波センサ5は、曲がり配管試験体1の曲がり領域部分2を検査するため、ガイド波探触子3、4を曲がり配管試験体1の直管部に設ける。18aはガイド波センサ5から電子スキャン方式による集束させて測定する直管部の背側部の測定対象部位、18bはガイド波センサ5から電子スキャン方式による集束させて測定する直管部の腹側部の測定対象部位である。また、19aはガイド波センサ5から電子スキャン方式による集束させて測定する曲がり領域部の背側部の測定対象部位、19bはガイド波センサ5から電子スキャン方式による集束させて測定する曲がり領域部の腹側部の測定対象部位である。また、2a、2bは配管の直管部と曲がり領域部の境界を示す。
【0013】
図8A〜8Dに配管曲がり領域部の測定対象部位への電子スキャン方式による集束部位とガイド波センサの位置関係及び測定対象部位の位置による信号の違いを模式的に示す。
図8Aと
図8Bは、配管の曲がり領域部の手前の直管部で周方向が背側部18aと腹側部18bを測定対象部位とし電子スキャン方式で集束するようにガイド波を送信し、どちらも同じ条件で模擬反射源を設置した場合の受信信号を示す。周方向の位置が異なっていても反射信号の強度の変化は認められない。
【0014】
これに対し、
図8Cと
図8Dは、曲がり領域部で周方向が背側部19aと腹側部19bを測定対象部位とし電子スキャン方式で集束するようにガイド波を送信した場合の受信信号を示す。
図8Cの周方向の位置が背側部19aの反射信号強度が、
図8Dに示す腹側部19bの反射信号強度より大きく、このため信号の感度差を補正する必要がある。
【0015】
この点に関し、特許文献1および特許文献2では、特に対策は施されていない。また、特許文献3にもこの問題は言及されていない。
【0016】
本発明の目的は、このような問題に鑑みてなされたものであり、配管の曲がり領域部の欠陥検出を位置による感度補正を考慮することで、また、配管の曲がり領域部の位置による信号の大小を規格化することで、検査結果から欠陥を見落とすことなく検査できるガイド波を用いた非破壊検査方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、配管表面に複数個のガイド波超音波探触子を周方向に配列したガイド波センサを設置して、配管の軸方向の曲がり領域部へガイド波を電子スキャン方式で送信し、曲がり領域部の測定対象部位に集束させた部位からの反射信号を受信して、曲がり領域部の欠陥の検査を行うガイド波を用いた非破壊検査方法において、配管の曲がり領域部を軸方向と周方向に分割し、分割数での軸方向と周方向の交点を測定対象部位として決定する手順と、決定した複数の測定対象部位とガイド波を送信するセンサまでの距離とガイド波の伝播音速からガイド波を送信する時間のタイミングを算出する手順と、算出した時間でガイド波センサから電子スキャン方式で複数の測定対象部位を順次変えて測定対象部位に集束させるガイド波を送信し、複数の測定対象部位からの反射波を受信して反射信号を検査情報データに生成する手順と、予め求めておいた配管の曲がり領域部の同一形状と同一測定条件の検査情報データの比較データに基づいて測定した複数の測定対象部位の測定結果の検査情報データを補正する演算処理手順と、演算処理によって生成した補正後の検査情報データの結果表示の信号データから欠陥の有無を判定する手順とを備えることを特徴とする。
【0018】
また、ガイド波を用いた非破壊検査方法において、演算処理によって生成した補正後の検査情報データの結果表示の信号データから欠陥の有無を判定する手順は、測定結果の評価信号が所定の閾値を超える場合に欠陥有りと判断することを特徴とする。
【0019】
また、ガイド波を用いた非破壊検査方法において、測定結果の評価信号が所定の閾値を超える場合に欠陥有りと判断した場合に、異なる検査手段で欠陥を再測定する手順を有することを特徴とする。
【0020】
また、ガイド波を用いた非破壊検査方法において、予め求めておいた配管の曲がり領域部の同一形状と同一測定条件の検査情報データの比較データに基づいて測定した複数の測定対象部位の測定結果の検査情報データを補正する演算処理手順における、検査情報データの比較データは、測定対象物と同一形状試験体を準備する手順と、同一形状試験体の測定条件を決定する手順と、同一形状試験体を測定して基準データを収録し、比較データを生成する手順により生成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
以上のように、本発明によれば、曲がり領域部の欠陥の検査を行うガイド波を用いた非破壊検査方法において、配管の曲がり領域部を軸方向と周方向に分割し、分割数での軸方向と周方向の交点を測定対象部位として決定する手順と、決定した複数の測定対象部位とガイド波を送信するセンサまでの距離とガイド波の伝播音速からガイド波を送信する時間のタイミングを算出する手順と、算出した時間でガイド波センサから電子スキャン方式で複数の測定対象部位を順次変えて測定対象部位に集束させるガイド波を送信し、複数の測定対象部位からの反射波を受信して反射信号を検査情報データに生成する手順と、予め求めておいた配管の曲がり領域部の同一形状と同一測定条件の検査情報データの比較データに基づいて測定した複数の測定対象部位の測定結果の検査情報データを補正する演算処理手順と、演算処理によって生成した補正後の検査情報データの結果表示の信号データから欠陥の有無を判定する手順とを備えることにより、曲がり領域部の欠陥信号が位置による反射波の感度の影響を無くすことができるので、検査結果からの欠陥の見落としが確実に防止でき、検査の信頼性が大幅に向上する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の実施形態によるガイド波センサを有するガイド波非破壊検査装置のブロック図。
【
図2】本発明の実施形態に係るガイド波を用いた非破壊検査方法のフローチャート。
【
図3A】本発明の実施形態に係る配管曲がり領域部の測定対象部位を示す模式図。
【
図3B】本発明の実施形態に係る配管曲がり領域部の他の測定対象部位を示す模式図。
【
図3C】本発明の実施形態に係る配管曲がり領域部の他の測定対象部位を示す模式図。
【
図4A】本発明の実施形態に係る測定結果を示す展開図。
【
図4B】本発明の実施形態に係る測定結果を示す展開図。
【
図5】本発明の実施形態に係る配管曲がり領域部の基準データの取得方法のフローチャート。
【
図6】本発明の実施形態に係る測定対象部位での模擬欠陥信号の結果を示す分布図。
【
図7】従来例の配管曲がり領域部の測定対象部位への電子スキャン方式を示す模式図。
【
図8A】従来例の測定対象部位の位置による信号の違いを示すグラフ。
【
図8B】従来例の測定対象部位の位置による信号の違いを示すグラフ。
【
図8C】従来例の測定対象部位の位置による信号の違いを示すグラフ。
【
図8D】従来例の測定対象部位の位置による信号の違いを示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の実施形態におけるガイド波を用いた非破壊検査方法の概要を、図を用いて説明する。
【0024】
図1は、本発明の実施形態によるガイド波センサを有するガイド波非破壊検査装置のブロック図を示す。ガイド波非破壊検査装置6は、複数個の送受信用ガイド波探触子3、4が配置されたガイド波センサ5と、ガイド波センサ5に電気信号を送るガイド波信号発生器8、パワーアンプ9と、ガイド波センサ5から信号を受信する受信信号切替部10、レシーバアンプ11と、アナログ信号をデジタル信号に変換する複数の高速A/D変換部12と、信号の送受信を制御する制御部7から構成されている。
【0025】
また、パーソナルコンピュータ13は、内蔵されたガイド波非破壊検査装置6の制御ソフトウェア14と、受信波形処理用の演算/データ記憶部15と、送信時間差設定部16と、入力/出力表示部17から構成され、ガイド波非破壊検査装置6の制御部7に接続され通信でガイド波非破壊検査装置6全体の制御が行われている。
【0026】
ガイド波センサ5は、配管1の外周に複数個の送受信用ガイド波探触子3、4を均等に周方向に一列に配列されて構成され、配管1の曲がり領域部2を測定する。2aは直管から曲がり領域部2の開始位置、2bは曲がり領域部2の終了位置である。
【0027】
超音波は電子スキャン方式のフェーズドアレイ法により送信するが、周方向に配置したガイド波探触子3とガイド波探触子4を細かく分割して電子的に制御するため、同じ個数のガイド波探触子が並列に接続され、一対一に対応するよう並行に配列した同一構成である必要がある。
【0028】
次に、
図2のフローチャートにより本発明のガイド波を用いた非破壊検査において、ガイド波非破壊検査装置を検査対象の曲がり配管に設置して実際の検査を行う場合の一連の手順について説明する。
【0029】
はじめに、ステップS101では、測定対象物の選定と形状把握を行う。ここでは、曲がり配管1を検査対象として説明する。まず、曲がり配管の材質、口径、肉厚、曲がり領域部の曲率半径を設計図面または現場で実測して確認する。また、直管から曲がり領域部2の開始位置2aや曲がり領域部2の終了位置2bも確認する。検査の測定条件としては、測定周波数、送信する波形の種類、送信モードをパラメータから決定する。これらは、パーソナルコンピュータ13の制御ソフトウェアに含まれるガイド波測定プログラムを起動して後、入力/出力表示部17から測定条件を入力・選択することができる。
【0030】
ステップ102では、ガイド波センサ5を配管1に取付ける。配管1の曲がり領域部2を測定するため、ガイド波送受信時の信号の不感帯領域部を考慮して曲がり領域部2の開始位置2aから離れた直管部に設置する。
【0031】
ステップS103では、曲がり領域部2の測定対象部位pを決定する。
図3A、3B、3Cに曲がり領域部2を分割した例を示す。
【0032】
図3A〜3Cは本発明の実施形態に係る配管曲がり領域部を分割した測定対象部位pを示す模式図である。
図3Aは、配管の周方向を12等分に分割し、曲がり領域部の軸方向を3等分に分割した場合について示す。分割した周方向と軸方向の交点位置を検査の測定対象部位pとする。測定対象部位pは、電子スキャン方式によるフェーズドアレイ法によりビーム(ここではガイド波)を集束させるポイントとした。
図3Aの測定対象部位は40ポイントである。
【0033】
図3Bは、配管の周方向を12等分に分割し、曲がり領域部の軸方向を3等分に分割した場合について示す。分割した周方向と軸方向の交点位置を検査の測定対象部位pとする。
図3Bの測定対象部位は48ポイントである。
【0034】
図3Cは、配管の周方向を16等分に分割し、曲がり領域部の軸方向を4等分に分割した場合について示す。分割した周方向と軸方向の交点位置を検査の測定対象部位pとする。
図3Cの測定対象部位は80ポイントである。分割の間隔としては、配管の口径、肉厚、曲率半径、周波数などで決定する。
【0035】
ステップS104では、ガイド波送信遅延時間を算出するである。曲がり領域部2の測定対象部位へ電子スキャン方式により集束させるガイド波は、ステップS103で決定した測定対象部位pの位置とガイド波センサ5のガイド波探触子3、ガイド波探触子4との位置から距離が定まる。その距離と配管に伝播するガイド波の音速から測定対象部位に到達する時間を算出する。ステップS103で決定した各々の測定対象部位に対して到達時間を算出する。送信ガイド波は、ガイド波センサ5のガイド波探触子3、ガイド波探触子4に時間差を与えて、算出した遅延時間を送信することで測定対象部位の位置に集束させることができる。
【0036】
ステップS105では、本測定を開始する。測定は、ガイド波非破壊検査装置6およびパーソナルコンピュータ13に内蔵したガイド波測定プログラムを立ち上げて、測定条件パラメータを入力/出力表示部17から入力、選択する。また、基本的な条件は、前もって記憶しておき手動または自動的に設定するようにし、後で変更できる機能を備えておく。測定条件として、測定周波数、測定ゲイン、送信波形、送信モード、印加電圧、ノイズカットフィルタなどがある。その他にも送信波形の生成、トリガ信号のタイミングなどがあるが、詳細は割愛する。
【0037】
配管1内に欠陥などの不連続部がある場合は反射波が発生し、その反射波が反射信号としてガイド波センサ5で受信される。その受信信号は、レシーバアンプ11で信号が増幅され、高速A/D変換部12に送られデジタル信号化されて、制御部7、パーソナルコンピュータ13に送られ、各ガイド波探触子3、4からの受信信号の重ね合わせ演算処理をして生成し受信波形として検査情報データとする。測定対象部位位置での信号の振幅値を求め、測定対象部位と振幅値をデータベースとして記憶部15に記憶する。
【0038】
ステップS106では、測定対象部位の測定が完了するまで繰返し測定を行う。
【0039】
ステップS107では、測定結果の表示は、検査情報データから記憶した測定対象部位と振幅値のデータベースから、例えば、
図4A、4Bに示すような曲がり配管を分割した展開図に表し、例えば得られた振幅値の大小で色の濃淡でマッピングして表示する。横軸は、周方向の角度、縦軸は配管の曲がり領域部始めからの距離である。ここで得られた振幅値は、配管の曲がり領域部でのガイド波特有の伝播挙動による感度の差の影響を考慮していない補正前のデータである。
【0040】
ステップS108では、予め測定対象配管と同一形状の配管を同一条件で実測し、比較データとしてデータベースに記憶しておく。S105で得られた測定対象部位と振幅値のデータを、データベースから選定された対応する比較データと比較する。S105で得られたデータは、
図4A、
図4Bで示した感度補正分布データと一対一に対応している。
【0041】
比較データの感度補正値によって実測したデータを補正することで、配管の曲がり領域部でのガイド波特有の伝播挙動による感度の差の影響を相殺し補正することができる。
【0042】
ステップS109では、配管の曲がり領域部での感度差を補正した結果を、
図4A、4Bと同様な表示をする。また、配管曲がり形状で分割した領域に色の濃淡で分布図として表示しても良い。
【0043】
ステップS110では、ステップS109で求めた感度補正後の振幅値データから閾値を設定し、閾値以上のデータが得られた部分を欠陥と判定する。欠陥があると判定された測定対象部位については、ステップS111で他の検査で再測定をして確認する。閾値は欠陥の大きさにより振幅値が異なるため、予め、許容できる欠陥の大きさの下限値を設定しておく。
【0044】
図5は、予め測定して記憶する曲がり配管の基準データを収録する方法のフローチャートを示す。概ね、
図2の本測定と手順は同様である。
【0045】
ステップ201、ステップ202において、検査する対象配管の形状を調査した後、配管の材質、口径、肉厚、そして曲がり領域部の曲率半径など同一形状の配管試験体を準備する。測定条件は、周波数、送信する波形の種類、送信モードなど、本測定を考慮して本測定条件を含んだ値より少し広範囲に設定しても良い。
【0046】
ステップS203において、ガイド波センサ5を配管1に取付ける。配管1の曲がり領域部2を測定するため、ガイド波送受信時の信号の不感帯領域部を考慮して、曲がり領域部の始め部2aから離れた直管部とし、本測定と同一距離とすることが望ましい。
【0047】
ステップS204において、配管曲がり領域部の測定対象部位の決定は、周方向と軸方向の分割する数を決定し、その交点位置を測定対象部位とする。例えば、周方向は角度で分割し、軸方向は曲がり領域部の曲率の角度で分割する方法がある。基礎データを取得する目的から極力細分化する方が良い。次に、模擬的反射源の測定部位への設置を行う。これは磁石等の模擬的反射源を、測定対象部位に一箇所宛設置して順番に測定を行う。
【0048】
また、ステップS205においてガイド波送信遅延時間の算出は、各測定対象部位とガイド波探触子の距離から伝播するガイド波の音速によって計算で求められる。
【0049】
ステップS206において、基準データの測定は、ステップS205で求めた遅延時間で、ステップS202で設定した測定条件で、電子スキャン方式のフェーズドアレイ法でガイド波を送信し、ステップS204で決定した測定対象部位にガイド波を集束させ、この集束させた測定対象部位に模擬反射源を設置したとき、模擬反射源の有無でその反射波を反射信号としてガイド波センサ5で受信し、ガイド波非破壊検査装置6、パーソナルコンピュータ13で演算処理をして受信波形として検査情報データとする。
【0050】
ステップS207の測定結果の保存において、上記受信信号や演算処理後の受信波形は、検査情報データとして記憶部に記憶する。また、模擬反射源が無い場合の測定結果と模擬反射源が有る場合の測定結果を差分演算処理することで正味の模擬反射源からの反射波の反射信号を得ることができる。
【0051】
図6に、曲がり領域部の測定対象部位に模擬反射源を設置して模擬反射源からの反射信号を振幅値で表した分布図を示す。ここで、横軸は配管の周方向位置を、縦軸は曲がり領域部の軸方向距離を示す。周方向の0゜位置が曲がり領域部の背側を表す。背側中央部が最も信号感度が高く、周方向の180゜位置の腹側中央部が最も信号感度が低い。更に、この模擬反射源からの反射信号の信号強度と測定対象部位の位置の関係から配管曲がり領域部の感度分布が得られるので、各タイプの曲がり配管について、これをデータベース化して基準データとして記憶し、S107の比較データとして用いる。
【0052】
ステップS208、ステップS209において、測定条件を変えて繰返し測定を行い、得られた基準データは、その都度、記憶部15に保管する。
【0053】
このように、本発明では配管の曲がり領域部分にガイド波を集束させ、曲がりによるガイド波伝播の歪みの影響を鑑みた感度補正分布を用いることで、全反射によりモード変換したノイズ信号が検出され、且つ、検出された領域に欠陥からの信号が重複していても、ノイズ信号と欠陥からの信号を識別することができるため、ガイド波センサの測定性能を維持する技術と検査結果の信頼性向上とを兼ね備えたものとすることができる。
【0054】
本発明の上記効果は、全反射によるモード変換した端部の擬似信号のノイズを識別でき、欠陥からの反射信号を抽出できるので、検査結果の見落としが防止でき、検査の信頼性向上が図れる。この具体方法は、2箇所以上の同一測定体系で測定したデータを検査情報データとして生成し、得られた複数のデータを演算処理、比較することである。
【0055】
以上、説明したように、本実施のガイド波を用いた非破壊検査方法によれば、配管の曲がり領域部の欠陥の大きさを感度補正分布により補正することにより、欠陥の見落としが防止でき、検査の信頼性向上が図れる。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明によれば、円筒形状構造物の非破壊検査ができるので、多くの分野に適用可能である。
【符号の説明】
【0057】
1:曲がり配管試験体
2:配管の曲がり領域部
3:ガイド波探触子
4:ガイド波探触子
5:ガイド波センサ
6:ガイド波非破壊検査装置
7:制御部
8:信号発生部
13:パーソナルコンピュータ
14:ガイド波制御ソフトウェア
15:演算/記憶部
16:送信時間差設定部
17:入力/表示部
Y1:直管部の背側部の模擬反射源の測定対象部位からの反射信号
Y2:直管部の腹側部の模擬反射源の測定対象部位からの反射信号
X1:曲がり領域部の背側部の模擬反射源の測定対象部位からの反射信号
X2:曲がり領域部の腹側部の模擬反射源の測定対象部位からの反射信号