(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ポリマー層は、更に、一種以上の環構造を有する単官能又は多官能の重合性基を有するモノマーが重合することによって形成されたものであることを特徴とする請求項6〜11のいずれかに記載の液晶表示装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明者らの検討によれば、PSA層を用いたプレチルト角付与技術は、完成したLCD上に画像を表示させた際の表示むらに関連するいくつかの課題を有している。まず、モノマー重合時に電圧を印加して液晶分子の傾きを変化させる際に局所的に生じる液晶の配向異常に起因して、完成したLCDの画像表示で表示むらが生じてしまうという課題がある。この表示むらは、使用するモノマーにより度合いが異なり、液晶材料に溶解性があるすべてのモノマーがPSA層の形成に適しているわけではない。また、イルガキュア(IRGACURE)651(BASF社製)に代表されるような光重合開始剤を添加しなくとも、PSA層形成に用いられるモノマーを含む組成物をセルに注入し、電圧を印加しながら光照射を行い、長時間の紫外光照射によりモノマーを重合させることでPSA層に垂直配向特性を付与することが可能であることが報告されている。また、この場合、重合開始剤を使用した場合と比較して表示むらが改善され、より良好な表示品質が得られやすい。ただし一方で、処理時間(タクトタイム)の長時間化による生産性の低下が新たな課題となる。
【0010】
重合時間の短縮化のために重合開始剤を添加した場合、タクトタイムを短縮できるものの、表示むらを生じる等のディスプレイとしての性能を損なう報告があり、単純に重合開始剤を添加することでは、タクトタイムの短縮化と良好な表示品質の両立は困難である。そのため、高い表示品質とタクトタイムの短縮化の両立を目指した開発をするにあたり、従来の光重合開始剤を添加せずに光重合によりPSA層を形成する方法が注目されているものの、重合開始機構が明らかでなくタクトタイムの短縮化の課題が障壁となっている。
【0011】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、処理時間の短縮化と良好な表示品質を得ることとの両立を可能にする液晶層形成用組成物を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、液晶表示に焼き付きが生じる原因について種々検討したところ、これまでの報告例にあるイルガキュア651のように光照射によって自己開裂を起こす重合開始剤の場合、その自己開裂によって電荷を帯び易い不純物が液晶層中に残存するため、直流オフセット電圧がセル内部で発生することになり、電圧を印加しても液晶の配向状態が異なってしまい、その結果、焼き付きが発生することを見いだした。
【0013】
そして、良好な表示品質を保ちつつタクトタイムを短縮化するためには、新たな方法として、ベンゾフェノン、アセトフェノン等をPSA層の材料として液晶材料に添加し、光照射による水素引き抜き反応によってケチルラジカルを発生させる方法が効果的であることを見いだした。ベンゾフェノン及びアセトフェノンは、共存する化合物等から水素を引き抜くことでケチルラジカルを発生するため、自己開裂による重合開始剤で生じる重合開始剤に由来する不純物が液晶中で生成されることがなく、表示むら、焼き付き等の表示品質の劣化を抑えつつ、タクトタイムの短時間化が可能となる。また、ベンゾフェノン及びアセトフェノンは安価に様々な誘導体の入手ができ、また、合成が容易であるため、これらの化合物に重合基を付加した誘導体を作製することが容易である。このように、ケチルラジカルを発生する化合物を重合開始剤として作用させるとともにPSA層形成用の重合性化合物として用いることで、重合開始剤自体を液晶中から相分離させ、PSA層を形成することが実現できる。この方法によれば、従来の、重合開始剤を用いない方法と比較して大幅にタクトタイムを短縮することができ、同時に良好な表示品質の液晶表示パネルが得られることになる。こうして本発明者らは、上記課題をみごとに解決することができることに想到し、本発明に到達したものである。
【0014】
すなわち、本発明の一側面は、液晶材料とモノマーとを含有する液晶層形成用組成物であって、上記モノマーは、光照射による水素引き抜き反応によってケチルラジカルを生成する構造を有する化合物である液晶層形成用組成物である。
【0015】
ここで示すケチルラジカルとは、カルボニル化合物が光励起により水素原子供与体から水素を引き抜くことで発生するラジカルである。
【0016】
上記ケチルラジカルを生成する化合物の例としては、分子内に、ベンゾフェノン構造、フルオレノン構造、チオキサントン構造、ベンジル構造、又は、アセトフェノン構造をもつ化合物が挙げられる。
【0017】
短波長成分の紫外線照射によって液晶表示装置の構成部材(例えば、配向膜及び液晶層)が劣化することについては、上記特許文献6に示されているが、本発明者らは、上記ケチルラジカルを生成する化合物のうち、ベンゾフェノン構造については350nm以上の光、フルオレノン構造、チオキサントン構造及びベンジル構造については400nm以上の光に対しても吸収があり、長波長成分の光照射でも重合が可能なため、短波長成分の照射が必要とならず、劣化を防止することができることを見いだした。
【0018】
上記ケチルラジカルを生成する化合物のうちベンジル構造は、水素原子供給体が存在する条件下においては、光照射によりケチルラジカルを生成する水素引き抜き反応が優先的に進行するが、水素原子供与体が存在しない場合は、光開裂してラジカルを発生する性質をもつことが広く知られている(例えば、非特許文献1参照。)。
【0019】
上記水素原子供与体の例としては、アルキル基、アルケニル基又はアラルキル基を有する、エーテル、アミン、チオール又はアルコールが挙げられる。
【0020】
本発明の液晶層形成用組成物は、光が照射されることによってケチルラジカルを発生して重合反応を起こすモノマーを含んでいるので、新たに重合開始剤を追加する必要がなく短時間で重合反応が進行し、かつ重合開始剤に由来する不純物が発生しない。そのため、液晶層内の残留DC電圧の発生が少なく、焼き付きや表示むら等の表示品位の劣化が少ない液晶表示装置を作製することができる。また、短時間の光照射で済むので、長時間の光照射による構成部材の劣化を防ぐことができ、液晶表示装置の信頼性を高めることができる。
【0021】
本発明の液晶層形成用組成物の組成としては、このような構成要素を必須として形成されるものである限り、その他の構成要素により特に限定されるものではない。
【0022】
本発明の液晶層形成用組成物の好ましい形態としては、以下の形態が挙げられる。
【0023】
上記化合物は、下記化学式(1);
【0024】
【化1】
【0025】
(式中、
A
1及びA
2は、同一又は異なって、ベンゼン環、ビフェニル環、又は、炭素数1〜12の直鎖状若しくは分枝状のアルキル基若しくはアルケニル基を表す。
A
1及びA
2のいずれか一方は、ベンゼン環又はビフェニル環である。
A
1及びA
2の少なくとも一方は、−Sp
1−P
1基を含む。
A
1及びA
2が有する水素原子は、−Sp
1−P
1基、ハロゲン原子、−CN基、−NO
2基、−NCO基、−NCS基、−OCN基、−SCN基、−SF
5基、又は、炭素数1〜12の直鎖状若しくは分枝状のアルキル基、アルケニル基若しくはアラルキル基で置換されていてもよい。
A
1及びA
2が有する隣接する2つの水素原子は、炭素数1〜12の直鎖状又は分枝状のアルキレン基又はアルケニレン基で置換されて環状構造となっていてもよい。
A
1及びA
2のアルキル基、アルケニル基、アルキレン基、アルケニレン基又はアラルキル基が有する水素原子は、−Sp
1−P
1基で置換されていてもよい。
A
1及びA
2のアルキル基、アルケニル基、アルキレン基、アルケニレン基又はアラルキル基が有する−CH
2−基は、酸素原子、硫黄原子及び窒素原子が互いに隣接しない限り−O−基、−S−基、−NH−基、−CO−基、−COO−基、−OCO−基、−O−COO−基、−OCH
2−基、−CH
2O−基、−SCH
2−基、−CH
2S−基、−N(CH
3)−基、−N(C
2H
5)−基、−N(C
3H
7)−基、−N(C
4H
9)−基、−CF
2O−基、−OCF
2−基、−CF
2S−基、−SCF
2−基、−N(CF
3)−基、−CH
2CH
2−基、−CF
2CH
2−基、−CH
2CF
2−基、−CF
2CF
2−基、−CH=CH−基、−CF=CF−基、−C≡C−基、−CH=CH−COO−基、又は、−OCO−CH=CH−基で置換されていてもよい。
P
1は、重合性基を表す。
Sp
1は、炭素数1〜6の直鎖状、分枝状若しくは環状のアルキレン基若しくはアルキレンオキシ基、又は、直接結合を表す。
mは、1又は2である。
A
1とYとをつなぐ点線部分、及び、A
2とYとをつなぐ点線部分は、A
1とA
2との間にYを介した結合が存在していてもよいことを表す。
Yは、−CH
2−基、−CH
2CH
2−基、−CH=CH−基、−O−基、−S−基、−NH−基、−N(CH
3)−基、−N(C
2H
5)−基、−N(C
3H
7)−基、−N(C
4H
9)−基、−OCH
2−基、−CH
2O−基、−SCH
2−基、−CH
2S−基、又は、直接結合を表す。)
で表される化合物である形態が挙げられる。
【0026】
上記化学式(1)で表される化合物におけるmが1であるときの例としては、以下の化合物が挙げられる。
【0027】
すなわち、上記化合物は、下記化学式(2−1)〜(2−6);
【0028】
【化2】
【0029】
、並びに、下記化学式(2−7)及び(2−8);
【化3】
【0030】
(式中、
R
1及びR
2は、同一又は異なって、−Sp
1−P
1基、水素原子、ハロゲン原子、−CN基、−NO
2基、−NCO基、−NCS基、−OCN基、−SCN基、−SF
5基、又は、炭素数1〜12の直鎖状若しくは分枝状のアルキル基、アラルキル基若しくはフェニル基を表す。
R
1及びR
2の少なくとも一方は、−Sp
1−P
1基を含む。
P
1は、重合性基を表す。
Sp
1は、炭素数1〜6の直鎖状、分枝状若しくは環状のアルキレン基若しくはアルキレンオキシ基、又は、直接結合を表す。
R
1及びR
2の少なくとも一方が、炭素数1〜12の直鎖状又は分枝状のアルキル基、アラルキル基又はフェニル基であるとき、上記R
1及びR
2の少なくとも一方が有する水素原子は、フッ素原子、塩素原子又は−Sp
1−P
1基に置換されていてもよい。
R
1及びR
2が有する−CH
2−基は、酸素原子、硫黄原子及び窒素原子が互いに隣接しない限り−O−基、−S−基、−NH−基、−CO−基、−COO−基、−OCO−基、−O−COO−基、−OCH
2−基、−CH
2O−基、−SCH
2−基、−CH
2S−基、−N(CH
3)−基、−N(C
2H
5)−基、−N(C
3H
7)−基、−N(C
4H
9)−基、−CF
2O−基、−OCF
2−基、−CF
2S−基、−SCF
2−基、−N(CF
3)−基、−CH
2CH
2−基、−CF
2CH
2−基、−CH
2CF
2−基、−CF
2CF
2−基、−CH=CH−基、−CF=CF−基、−C≡C−基、−CH=CH−COO−基、又は、−OCO−CH=CH−基で置換されていてもよい。)
で表されるいずれかの化合物である形態が挙げられる。
【0031】
上記P
1としては、アクリロイルオキシ基、メタアクリロイルオキシ基、ビニル基、ビニルオキシ基、アクリロイルアミノ基、又は、メタアクリロイルアミノ基が挙げられる。
【0032】
上記液晶層形成用組成物は、更に、一種以上の環構造を有する単官能又は多官能の重合性基を有するモノマーを含有する形態が挙げられる。また、上記一種以上の環構造を有する単官能又は多官能の重合性基を有するモノマーとしては、下記化学式(3);
【0033】
【化4】
【0034】
(式中、
R
3は、−R
4−Sp
2−P
2基、水素原子、ハロゲン原子、−CN基、−NO
2基、−NCO基、−NCS基、−OCN基、−SCN基、−SF
5基、又は、炭素数1〜12の直鎖状若しくは分枝状のアルキル基である。
P
2は、重合性基を表す。
Sp
2は、炭素数1〜6の直鎖状、分枝状若しくは環状のアルキレン基若しくはアルキレンオキシ基、又は、直接結合を表す。
R
3が有する水素原子は、フッ素原子又は塩素原子に置換されていてもよい。
R
3が有する−CH
2−基は、酸素原子及び硫黄原子が互いに隣接しない限り−O−基、−S−基、−NH−基、−CO−基、−COO−基、−OCO−基、−O−COO−基、−OCH
2−基、−CH
2O−基、−SCH
2−基、−CH
2S−基、−N(CH
3)−基、−N(C
2H
5)−基、−N(C
3H
7)−基、−N(C
4H
9)−基、−CF
2O−基、−OCF
2−基、−CF
2S−基、−SCF
2−基、−N(CF
3)−基、−CH
2CH
2−基、−CF
2CH
2−基、−CH
2CF
2−基、−CF
2CF
2−基、−CH=CH−基、−CF=CF−基、−C≡C−基、−CH=CH−COO−基、又は、−OCO−CH=CH−基で置換されていてもよい。
R
4は、−O−基、−S−基、−NH−基、−CO−基、−COO−基、−OCO−基、−O−COO−基、−OCH
2−基、−CH
2O−基、−SCH
2−基、−CH
2S−基、−N(CH
3)−基、−N(C
2H
5)−基、−N(C
3H
7)−基、−N(C
4H
9)−基、−CF
2O−基、−OCF
2−基、−CF
2S−基、−SCF
2−基、−N(CF
3)−基、−CH
2CH
2−基、−CF
2CH
2−基、−CH
2CF
2−基、−CF
2CF
2−基、−CH=CH−基、−CF=CF−基、−C≡C−基、−CH=CH−COO−基、−OCO−CH=CH−基、又は、直接結合を表す。
A
3及びA
4は、同一又は異なって、1,2−フェニレン基、1,3−フェニレン基、1,4−フェニレン基、ナフタレン−1,4−ジイル基、ナフタレン−1,5−ジイル基、ナフタレン−2,6−ジイル基、1,4−シクロヘキシレン基、1,4−シクロヘキセニレン基、1,4−ビシクロ[2.2.2]オクチレン基、ピペリジン−1,4−ジイル基、ナフタレン−2,6−ジイル基、デカヒドロナフタレン−2,6−ジイル基、1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル基、インダン−1,3−ジイル基、インダン−1,5−ジイル基、インダン−2,5−ジイル基、フェナントレン−1,6−ジイル基、フェナントレン−1,8−ジイル基、フェナントレン−2,7−ジイル基、フェナントレン−3,6−ジイル基、アントラセン−1,5−ジイル基、アントラセン−1,8−ジイル基、アントラセン−2,6−ジイル基、又は、アントラセン−2,7−ジイル基を表す。
A
3及びA
4が有する−CH
2−基は、互いに隣接しない限り−O−基又は−S−基で置換されていてもよい。
A
3及びA
4が有する水素原子は、フッ素原子、塩素原子、−CN基、又は、炭素数1〜6のアルキル基、アルコキシ基、アルキルカルボニル基、アルコキシカルボニル基若しくはアルキルカルボニルオキシ基で置換されていてもよい。
Zは、−O−基、−S−基、−NH−基、−CO−基、−COO−基、−OCO−基、−O−COO−基、−OCH
2−基、−CH
2O−基、−SCH
2−基、−CH
2S−基、−N(CH
3)−基、−N(C
2H
5)−基、−N(C
3H
7)−基、−N(C
4H
9)−基、−CF
2O−基、−OCF
2−基、−CF
2S−基、−SCF
2−基、−N(CF
3)−基、−CH
2CH
2−基、−CF
2CH
2−基、−CH
2CF
2−基、−CF
2CF
2−基、−CH=CH−基、−CF=CF−基、−C≡C−基、−CH=CH−COO−基、−OCO−CH=CH−基、又は、直接結合を表す。
nは0、1又は2である。)
で表される化合物が挙げられる。
【0035】
上記P
2としては、アクリロイルオキシ基、メタアクリロイルオキシ基、ビニル基、ビニルオキシ基、アクリロイルアミノ基、又は、メタアクリロイルアミノ基が挙げられる。
【0036】
上記液晶層形成用組成物は、更に、一種以上の水素引き抜き反応を促進する化合物を含有する形態が挙げられる。上記水素引き抜き反応を促進する化合物としては、炭素数1〜12のアルキル基、アルケニル基、又は、アリール基を有する、エーテル、アミン、チオール、又は、アルコールが挙げられる。
【0037】
また、本発明は、上記液晶層形成用組成物を用いて好適に作製される液晶表示装置でもある。
【0038】
すなわち、本発明の他の一側面は、一対の基板と、上記一対の基板間に挟持された液晶層とを備える液晶表示装置であって、上記液晶層は、液晶材料を含有し、上記一対の基板の少なくとも一方は、近接する液晶分子を配向制御する配向膜、及び、上記配向膜上に形成され、近接する液晶分子を配向制御するポリマー層を有し、上記ポリマー層は、液晶層中に添加されたモノマーが重合することによって形成されたものであり、上記モノマーは、光照射による水素引き抜き反応によってケチルラジカルを生成する構造を有する化合物である液晶表示装置である。
【0039】
本発明の液晶表示装置が備える一対の基板は、例えば、一方をアレイ基板、他方をカラーフィルタ基板として用いられる。アレイ基板は、複数の画素電極を備え、これにより画素単位で液晶の配向が制御される。カラーフィルタ基板は、複数色のカラーフィルタが、アレイ基板の画素電極とそれぞれ重畳する位置に配置され、画素単位で表示色が制御される。
【0040】
本発明の液晶表示装置が備える一対の基板の少なくとも一方は、近接する液晶分子を配向制御する配向膜を有する。本発明において配向膜は、配向処理がなされていないもの、及び、配向処理がなされたもののいずれであってもよい。
【0041】
本発明の液晶表示装置が備える一対の基板の少なくとも一方は、上記配向膜上に形成され、近接する液晶分子を配向制御するポリマー層を有し、上記ポリマー層は、液晶層中に添加されたモノマーが重合することによって形成されたものである。上記ポリマー層を形成することにより、上記配向膜に対して配向処理を施さなかったとしても、配向膜及びポリマー層に近接する液晶分子の初期傾斜を一定の方向に傾かせることができる。例えば、液晶分子がプレチルト配向している状態でモノマーを重合させ、ポリマー層を形成した場合には、上記配向膜が配向処理されているか否かに関わらず、ポリマー層は液晶分子に対してプレチルト配向させる構造を有する形で形成されることになる。
【0042】
上記モノマーは、光照射による水素引き抜き反応によってケチルラジカルを生成する構造を有する化合物である。このようなモノマーによって形成されるポリマー層は、新たに重合開始剤を追加する必要がなく短時間の重合反応によって形成されたものであり、かつ重合開始剤に由来する不純物も発生していないので、液晶層内の残留DC電圧の発生が少なく、焼き付きや表示むら等の表示品位の劣化が少ない。また、長時間の光照射による構成部材の劣化が防止されているので、電圧保持率(VHR)の安定化等、信頼性の高い液晶表示装置となる。
【0043】
本発明の液晶表示装置の構成としては、このような構成要素を必須として形成されるものである限り、その他の構成要素により特に限定されるものではない。
【0044】
本発明の液晶表示装置の好ましい形態としては、上記本発明の液晶層形成用組成物の好ましい形態として説明した内容と同様の形態が挙げられる。すなわち、(a)上記化合物は、上記化学式(1)で表される化合物である形態、(b)上記化学式(1)で表される化合物のmが1である形態、(c)上記化合物は、上記化学式(2−1)〜(2−6)で表されるいずれかの化合物である形態、(d)上記化合物は、上記化学式(2−7)及び(2−8)で表されるいずれかの化合物である形態、(e)上記P
1は、アクリロイルオキシ基、メタアクリロイルオキシ基、ビニル基、ビニルオキシ基、アクリロイルアミノ基、又は、メタアクリロイルアミノ基である形態、(f)上記ポリマー層は、更に、一種以上の環構造を有する単官能又は多官能の重合性基を有するモノマーが重合することによって形成されたものである形態、(g)上記一種以上の環構造を有する単官能又は多官能の重合性基を有するモノマーは、上記化学式(3)で表される化合物である形態、(h)上記P
2は、アクリロイルオキシ基、メタアクリロイルオキシ基、ビニル基、ビニルオキシ基、アクリロイルアミノ基、又は、メタアクリロイルアミノ基である形態が挙げられる。
【0045】
上記一種以上の環構造を有する単官能又は多官能の重合性基を有するモノマーは、下記化学式(4−1)〜(4−5);
【0046】
【化5】
【0047】
(式中、P
2は、同一又は異なって、重合性基を表す。)で表されるいずれかの化合物である形態が挙げられる。上記P
2としては、アクリロイルオキシ基、メタアクリロイルオキシ基、ビニル基、ビニルオキシ基、アクリロイルアミノ基、又は、メタアクリロイルアミノ基が挙げられる。
【0048】
また、本発明は、上記液晶層形成用組成物を用いて好適に作製される液晶表示装置の製造方法でもある。
【0049】
すなわち、本発明の他の一側面は、一対の基板と、上記一対の基板に挟持された液晶層とを備える液晶表示装置の製造方法であって、上記製造方法は、上記一対の基板の少なくとも一方の基板に、近接する液晶分子を配向制御する配向膜を形成する工程と、上記配向膜上に、近接する液晶分子を配向制御するポリマー層を形成する工程とを有し、上記ポリマー層を形成する工程は、液晶層中に添加されたモノマーを重合させる工程を含み、上記モノマーは、光照射による水素引き抜き反応によってケチルラジカルを生成する構造を有する化合物である液晶表示装置の製造方法である。
【0050】
本発明の製造方法によって製造される液晶表示装置の特徴は、上述の本発明の液晶表示装置で説明した特徴と同様である。
【0051】
上記モノマーは、光照射による水素引き抜き反応によってケチルラジカルを生成する構造を有する化合物である。このようなモノマーによって形成されるポリマー層は、新たに重合開始剤を追加する必要がなく短時間で重合反応が進行し、かつ重合開始剤に由来する不純物が発生しないので、液晶層内の残留DC電圧の発生が少なく、焼き付きや表示むら等の表示品位の劣化が少ない液晶表示装置を作製することができる。また、短時間の光照射で済むので、長時間の光照射による構成部材の劣化を防ぐことができ、液晶表示装置の信頼性を高めることができる。
【0052】
本発明の液晶表示装置の製造方法としては、このような工程を必須とするものである限り、その他の工程により特に限定されるものではない。
【0053】
本発明の液晶表示装置の製造方法の好ましい形態としては、本発明の液晶層形成用組成物又は液晶表示装置の好ましい形態として説明した内容と同様の形態が挙げられる。すなわち、(a)上記化合物は、上記化学式(1)で表される化合物である形態、(b)上記化学式(1)で表される化合物のmが1である形態、(c)上記化合物は、上記化学式(2−1)〜(2−6)で表されるいずれかの化合物である形態、(d)上記化合物は、上記化学式(2−7)及び(2−8)で表されるいずれかの化合物である形態(e)上記P
1は、アクリロイルオキシ基、メタアクリロイルオキシ基、ビニル基、ビニルオキシ基、アクリロイルアミノ基、又は、メタアクリロイルアミノ基である形態、(f)上記ポリマーを形成する工程は、更に、一種以上の環構造を有する単官能又は多官能の重合性基を有するモノマーが重合することによって形成されたものである形態、(g)上記一種以上の環構造を有する単官能又は多官能の重合性基を有するモノマーは、上記化学式(3)で表される化合物である形態、(h)上記P
2は、アクリロイルオキシ基、メタアクリロイルオキシ基、ビニル基、ビニルオキシ基、アクリロイルアミノ基、又は、メタアクリロイルアミノ基である形態、(i)上記一種以上の環構造を有する単官能又は多官能の重合性基を有するモノマーは、上記化学式(4−1)〜(4−5)で表されるいずれかの化合物である形態が挙げられる。以下、他の好ましい形態について説明する。
【0054】
上記ポリマー層を形成する工程としては、液晶層に対して閾値以上の電圧を印加した状態で行われる形態が挙げられる。PSA重合工程を行う際に、液晶層に対し閾値以上の電圧を印加した状態で光照射を行うことで、閾値以上の電圧印加状態で配向した液晶分子にならった形で重合体が形成されるので、形成されるPSA層が、後に電圧無印加状態となっても液晶分子に対し初期プレチルト角を規定する配向膜として機能するような構造をもつことになる。
【0055】
上記ポリマー層を形成する工程としては、液晶層に対して閾値以上の電圧を印加しない状態で行われる形態が挙げられる。閾値以上の電圧を印加しない状態であっても、配向膜の配向規制力を長時間維持することは可能であり、焼き付きや表示むらの低減の効果を得ることができる。
【発明の効果】
【0056】
本発明によれば、液晶層内の残留DC電圧の発生が少なく、焼き付きや表示むら等の表示品位の劣化が少ない液晶表示装置を得ることができる。また、構成部材の劣化が少なく、信頼性の高い液晶表示装置を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0058】
以下に実施形態を掲げ、本発明について図面を参照して更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施形態のみに限定されるものではない。
【0059】
実施形態1
図1及び
図2は、実施形態1に係る液晶表示装置の断面模式図である。
図1はPSA重合工程前を示し、
図2はPSA重合工程後を示す。
図1及び
図2に示すように実施形態1に係る液晶表示装置は、アレイ基板1と、カラーフィルタ基板2と、アレイ基板1及びカラーフィルタ基板2からなる一対の基板間に狭持された液晶層3とを備える。アレイ基板1は、ガラス等を材料とする絶縁性の透明基板と、透明基板上に形成された各種配線、画素電極、TFT(Thin Film Transistor:薄膜トランジスタ)等とを備える支持基板11を有する。カラーフィルタ基板2は、ガラス等を材料とする絶縁性の透明基板と、透明基板上に形成されたカラーフィルタ、ブラックマトリクス、共通電極等とを備える支持基板21を有する。
【0060】
また、アレイ基板1は、支持基板11上に配向膜12を備え、カラーフィルタ基板2は、支持基板21上に配向膜22を備える。配向膜12、22は、イミド構造を含む主鎖をもつ高分子材料(ポリイミド)で構成されている。例えば、配向膜12、22として垂直配向膜を用いることにより、配向処理が施されなくとも、液晶分子に対し略90°のプレチルト角を付与することができる。また、垂直配向膜の表面に対し、配向処理が施されることで、液晶分子のプレチルト角を略90°から一定角度傾斜させる(初期傾斜させる)ことができる。垂直配向膜材料には、一般的なポリマーよりも長い側鎖を有する化合物が用いられる。
【0061】
図1に示すように、PSA重合工程前において液晶層3中には、1種又は2種以上のモノマー4が存在している。そして、PSA重合工程によってモノマー4は重合を開始し、
図2に示すように、配向膜12、22上にPSA層13、23が形成される。
【0062】
具体的にはPSA層13、23は、1種又は2種以上のモノマー4と、負の誘電率異方性を有する液晶材料とを含む液晶層形成用組成物をアレイ基板1とカラーフィルタ基板2との間に注入して液晶層を形成し、一定量の光を液晶層3に照射してモノマー4を光重合させることによって、形成することができる。なお、
図2においてPSA層は、配向膜一面に形成された図を示しているが、実際には、点状に複数形成されていてもよく、膜厚にバラツキがあってもよい。
【0063】
実施形態1で用いるモノマー4は、モノマー4単独で光吸収を行い、ラジカルを発生して連鎖重合を開始するので、重合開始剤を投与する必要がない。
【0064】
実施形態1においては、例えば、PSA重合工程を行う際に、液晶層3に対し閾値以上の電圧を印加した状態で光照射を行うことで、閾値以上の電圧印加状態で配向した液晶分子にならった形で重合体が形成されるので、形成されるPSA層が、後に電圧無印加状態となっても液晶分子に対し初期プレチルト角を規定する配向膜として機能するような構造をもつことになる。
【0065】
実施形態1においては、配向膜12、22に対し配向処理が施されている場合等には、液晶層3に対し閾値以上の電圧が印加された状態で光照射が行われなくてもよい。配向膜12、22自体が液晶分子に対しプレチルト配向を付与する特性を有する場合、配向膜12、22上に形成されるPSA層13、23は、配向膜のもつ配向安定性をより高める膜として機能する。これにより配向規制力が長時間維持されることで、液晶分子はより均一に配向制御され、配向の時間的な変化が少なくなる上、表示に焼き付きが生じにくくなる。なお、実施形態1においては、配向膜12、22に対し配向処理がなされた上で、更に液晶層3に対し閾値以上の電圧を印加した状態で光照射が行われてPSA層13、23が形成されてもよく、これにより、より配向安定性の高い配向膜を得ることができる。
【0066】
実施形態1は、液晶分子の配向が、例えば、支持基板11が有する画素電極内、又は、支持基板21が有する共通電極内に設けられた線状のスリットによって規定される形態であってもよい。画素電極内及び/又は共通電極内に細い線状のスリットを形成した場合、液晶分子は電圧印加時において線状のスリットに向かって一律に並んだ配向性を有するので、液晶層3に対し閾値以上の電圧が印加された状態でモノマーを重合させることで、液晶分子に対しプレチルト角を付与するPSA層を形成することができる。
【0067】
実施形態1において用いるモノマー4のうち一種以上は、光照射による水素引き抜き反応によってケチルラジカルを発生するモノマーであり、上記化学式(1)で表される化合物を用いることができ、上記化学式(2−1)〜(2−8)で表される化合物が好適に用いられる。
【0068】
上記化学式(1)及び上記化学式(2−1)〜(2−8)で表されるモノマーは、液晶材料と混合させるときに他の重合開始剤を添加する必要がなく、光照射を行うだけで重合反応を開始することができる。また、重合開始剤に由来すると推定される電荷を帯びやすい不純物が発生しないので、他のモノマー材料を用いてPSA層を形成した場合よりも焼き付きを生じさせにくくすることができる。なお、実施形態1においては、液晶層形成用組成物中に上記化学式(3)で表される化合物を加えてもよく、上記化学式(4−1)〜(4−5)で表される化合物が好適に用いられる。これにより、焼き付き低減の効果を同様に得ることができる。
【0069】
実施形態1に係る液晶表示装置の他の構成要素について詳述する。
【0070】
実施形態1に係る液晶表示装置においては、アレイ基板1、液晶層3及びカラーフィルタ基板2が、液晶表示装置の背面側から観察面側に向かってこの順に積層されている。アレイ基板1が有する支持基板11の背面側には、偏光板が備え付けられている。また、カラーフィルタ基板2が有する支持基板21の観察面側にも、偏光板が備え付けられている。これらの偏光板に対しては、更に位相差板が配置されていてもよく、上記偏光板は、円偏光板であってもよい。
【0071】
実施形態1に係る液晶表示装置は、透過型、反射型及び反射透過両用型のいずれであってもよい。透過型又は反射透過両用型であれば、実施形態1の液晶表示装置は、更に、バックライトを備えている。バックライトは、アレイ基板1の更に背面側に配置され、アレイ基板1、液晶層3及びカラーフィルタ基板2の順に光が透過するように配置される。反射型又は反射透過両用型であれば、アレイ基板1は、外光を反射するための反射板を備える。また、少なくとも反射光を表示として用いる領域においては、カラーフィルタ基板2の偏光板は、いわゆるλ/4位相差板を備える円偏光板である必要がある。
【0072】
実施形態1に係る液晶表示装置は、カラーフィルタをアレイ基板1に備えるカラーフィルタオンアレイ(Color Filter On Array)の形態であってもよい。また、実施形態1に係る液晶表示装置はモノクロディスプレイであってもよく、その場合、カラーフィルタは配置される必要はない。
【0073】
液晶層3には、一定電圧が印加されることで特定の方向に配向する特性をもつ液晶材料が充填されている。液晶層3内の液晶分子は、閾値以上の電圧の印加によってその配向性が制御される。
【0074】
実施形態1に係る液晶表示装置は、液晶表示装置(例えば、液晶TV(テレビジョン)、DID(デジタルインフォメーションディスプレイ))を分解し、核磁気共鳴分析法(NMR:Nuclear Magnetic Resonance)、フーリエ変換赤外分光法(FT−IR:Fourier Transform Infrared Spectroscopy)、質量分析法(MS:Mass Spectrometry)等を用いた化学分析を行うことにより、配向膜の成分の解析、PSA層中に存在するPSA層形成用モノマーの成分の解析、液晶層中に含まれるPSA層形成用モノマーの混入量、PSA層中のPSA層形成用モノマーの存在比等を確認することができる。
【0075】
実施例1
以下に、実施形態1に係る液晶表示装置が備える液晶セルを実際に作製した実施例1を示す。まず、一対の支持基板を用意し、垂直配向膜用の材料であるポリアミック酸溶液を一対の支持基板の表面にそれぞれ塗布し、80℃の条件下で5分間プリベークを行い、続いて200℃の条件下で60分間ポストベークを行い、ポリイミドとした。
【0076】
次に、ポストベーク後の配向膜に対して配向処理を行った。次に、片側基板にシールを塗布し、該片側基板上に、負の誘電率異方性を有する液晶材料と、PSA層形成用のモノマーとを含む液晶層形成用組成物を滴下後、他方の基板と貼り合わせを行った。
【0077】
実施例1では、下記化学式(5)及び(6)で表されるモノマーを組み合わせて用いている。下記化学式(5)で表される化合物は、ビフェニル系の二官能メタクリレートモノマーであり、下記化学式(6)で表される化合物は、ベンゾフェノン系の二官能メタクリレートモノマーである。
【0080】
実施例1の液晶セル作成のため、PSA層形成用モノマーとして用いる上記化学式(5)及び(6)で表される化合物の合成を行った。上記化合物は以下に示す方法に従って合成を行ったが、方法はこれに限られるものではない。
【0081】
合成例1(4,4’−ジメタアクリロイルオキシベンゾフェノン(上記化学式(6))の合成)
4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン4.0gをTHF24gに溶解し、トリエチルアミン4.7gを添加後、メタアクリル酸クロライド4.8gを30分間滴下し、1時間攪拌する。その後、攪拌溶液に対し、1%HClaq170gを添加した後、塩化メチレン120gで抽出して、水で分液洗浄を行った。その後、塩化メチレンを留去した。続いてシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/ヘキサン=1:5)により精製を行い、目的物の4,4’−ジメタアクリロイルオキシベンゾフェノンを4.5g得た。反応経路としては、下記化学反応式(7)で表される。
【0083】
実施例1において調製したサンプルは、以下のサンプルA〜Eである。サンプルAは、液晶層形成用組成物中に、上記化学式(5)で表される二官能ビフェニル系モノマーを0.3wt%含む。サンプルBは、液晶層形成用組成物中に、上記化学式(5)で表される二官能ビフェニル系モノマーを0.3wt%、上記化学式(6)で表される二官能ベンゾフェノン系モノマーを0.03wt%含む。サンプルCは、液晶層形成用組成物中に、上記化学式(5)で表される二官能ビフェニル系モノマーを0.3wt%、上記化学式(6)で表される二官能ベンゾフェノン系モノマーを0.1wt%含む。サンプルDは、液晶層形成用組成物中に、上記化学式(5)で表される二官能ビフェニル系モノマーを0.3wt%、上記化学式(6)で表される二官能ベンゾフェノン系モノマーを0.15wt%含む。サンプルEは、液晶層形成用組成物中にモノマーを含まない。
【0084】
次に、一対の基板によって挟持された液晶層に対し、電圧無印加の状態でブラックライト(300〜370nmにピーク波長がある紫外光)を照射し、重合反応を行うことで、PSA層が垂直配向膜上に形成された液晶セルをそれぞれ完成させた。紫外線の照射時間は30分間とした。紫外光光源としては、東芝ライテック社製のFHF−32BLBを用いた。なお、FHF−32BLBは、310nmに小さな発光強度を有し、330nm以上で大きな発光強度を持つ紫外光光源である。
【0085】
続いて、完成した各液晶セルに対して、それぞれ残留DC電圧(mV)の測定を行った。以下に、各サンプルについて残留DC電圧の測定を行ったときの結果を示す。表1は、上記各サンプルを用いた残留DC電圧(mV)の測定結果を示す表である。実施例1において残留DC電圧の値は、DCオフセット電圧2Vを10時間印加した後、フリッカ消去法を用いることで決定している。
【0086】
また、完成した各液晶セルに対して、それぞれ電圧保持率(VHR)の測定を行った。VHRは、1Vのパルス電圧を印加後、16.61ms間の電荷保持を確認することで決定した。また、VHRの測定は、初期段階と、冷陰極管(CCFL:Cold Cathode Fluorescent Lamp)バックライトで光を照射しながら通電後1000時間が経過してからの段階との計2回行った。
【0087】
表1は、上記各サンプルを用いた残留DC電圧(mV)及びVHR(%)の測定結果を示す表である。
【0089】
上記化学式(5)で表される二官能ビフェニル系モノマーを0.3wt%含む組成物では、紫外光の長時間照射(例えば、4時間以上)が必要であり、30分の照射では安定なPSA層が形成されておらず、残留DC電圧は160mVとなった。これによりモノマーとしてビフェニル系モノマーを単独で用いたのみでは、焼き付き残像は改善されないことが示された。
【0090】
上記化学式(5)で表される二官能ビフェニル系モノマーを0.3wt%含み、上記化学式(6)で表される二官能ベンゾフェノン系モノマーを0.03wt%含む組成物を用いることにより、残留DC電圧は−20mVと小さくなり、残留DC電圧の改善効果が得られた。これにより、二官能ビフェニル系モノマーを用いた場合であっても、水素引き抜き型の開始剤となる二官能ベンゾフェノン系モノマーをあわせて用いることで、重合開始剤が液晶層中に残存することなく重合が進行するので、表示むら及び焼き付き残像の改善効果が得られることが示された。更に、重合基が開始剤に付加されており、未反応開始剤もモノマーとして反応させることができるので、液晶層中にモノマーが残存することなく重合が進行するので、表示むら及び焼き付き残像の改善効果が得られることが示された。
【0091】
また、上記化学式(5)で表される二官能ビフェニル系モノマーを0.3wt%含み、上記化学式(6)で表される二官能ベンゾフェノン系モノマーを0.1wt%含む組成物を用いることにより、残留DC電圧は−20mVと小さくなり、サンプルBと同様に残留DC電圧の改善効果が得られた。また、サンプルB及びサンプルCの結果からわかるように、二官能ベンゾフェノン系モノマーを少量添加するのみで、残留DC電圧の改善効果が得られることが示された。
【0092】
更に、上記化学式(5)で表される二官能ビフェニル系モノマーを0.3wt%含み、上記化学式(6)で表される二官能ベンゾフェノン系モノマーを0.15wt%含む組成物を用いることにより、残留DC電圧は+20mVと小さくなり、サンプルB及びサンプルCと同様に残留DC電圧の改善効果が得られた。
【0093】
モノマーを添加せずPSA層を形成しない場合、残留DC電圧は250mVと高い値だった。この理由としては、液晶層と配向膜のポリイミド側鎖で構成される界面に電荷が貯まり易いことが要因として考えられる。
【0094】
サンプルA〜Dのいずれのサンプルも99%以上となり、電圧保持率(VHR)の低下は顕著に見られず、高い信頼性が得られた。これは、紫外線の照射時間が30分間と短いためと考えられる。一方で、PSA層を形成しなかったサンプルEは、VHRの値が98%台まで落ち、信頼性の低下が見られた。このことから、PSA層を形成しないとVHRの低下を生じてしまうことがわかった。
【0095】
以上のことから、上記化学式(6)で表される二官能ベンゾフェノン系モノマーを液晶材料に添加し、その混合物を用いてPSA層を形成することにより、残留DC電圧が少ない液晶表示装置を設計することができることがわかった。
【0096】
また、上記化学式(6)で表される二官能ベンゾフェノン系モノマーは、波長330〜370nm付近に吸収を示し、紫外光照射による重合時間の短縮が可能なモノマーであることがわかった。
【0097】
実施例2
以下に、実施形態1に係る液晶表示装置が備える液晶セルを実際に作製した実施例2を示す。実施例2で用いた液晶セルは、配向膜に配向処理を施さなかったこと、及び、PSA層の形成の際に、閾値以上の電圧を印加した状態で光の照射を行ったこと以外は、実施例1と同様の方法を用いて各サンプルを作製している。
【0098】
実施例2において調製したサンプルは、以下のサンプルF〜Jである。サンプルFは、液晶層形成用組成物中に、上記化学式(5)で表される二官能ビフェニル系モノマーを0.3wt%含む。サンプルGは、液晶層形成用組成物中に、上記化学式(5)で表される二官能ビフェニル系モノマーを0.3wt%、上記化学式(6)で表される二官能ベンゾフェノン系モノマーを0.03wt%含む。サンプルHは、液晶層形成用組成物中に、上記化学式(5)で表される二官能ビフェニル系モノマーを0.3wt%、上記化学式(6)で表される二官能ベンゾフェノン系モノマーを0.1wt%含む。サンプルIは、液晶層形成用組成物中に、上記化学式(5)で表される二官能ビフェニル系モノマーを0.3wt%、上記化学式(6)で表される二官能ベンゾフェノン系モノマーを0.15wt%含む。サンプルJは、液晶層形成用組成物中にモノマーを含まない。
【0099】
次に、一対の基板によって挟持された液晶層に対し、5Vの電圧を印加しながらブラックライト(300〜370nmにピーク波長がある紫外光)を照射し、重合反応を行うことで、PSA層が垂直配向膜上に形成された液晶セルをそれぞれ完成させた。紫外線の照射時間は30分間とした。紫外光光源としては、東芝ライテック社製のFHF−32BLBを用いた。
【0100】
続いて、完成した各液晶セルに対して、それぞれ残留DC電圧(mV)の測定を行った。実施例2において残留DC電圧の値は、DCオフセット電圧2Vを10時間印加した後、フリッカ消去法を用いることで決定している。
【0101】
また、完成した各液晶セルに対して、それぞれ電圧保持率(VHR)の測定を行った。VHRは、1Vのパルス電圧を印加後、16.61ms間の電荷保持を確認することで決定した。また、VHRの測定は、初期段階と、冷陰極管(CCFL:Cold Cathode Fluorescent Lamp)バックライトで光を照射しながら通電後1000時間が経過してからの段階との計2回行った。
【0102】
表2は、上記各サンプルを用いた残留DC電圧(mV)及びVHR(%)の測定結果を示す表である。
【0104】
上記化学式(5)で表される二官能ビフェニル系モノマーを0.3wt%含む組成物では、紫外光の長時間照射(例えば、4時間以上)が必要であり、30分の照射では安定なPSA層が形成されておらず、残留DC電圧は170mVとなった。これによりモノマーとしてビフェニル系モノマーを単独で用いたのみでは、焼き付き残像は改善されないことが示された。
【0105】
上記化学式(5)で表される二官能ビフェニル系モノマーを0.3wt%含み、上記化学式(6)で表される二官能ベンゾフェノン系モノマーを0.03wt%含む組成物を用いることにより、残留DC電圧は−10mVと小さくなり、残留DC電圧の改善効果が得られた。これにより、二官能ビフェニル系モノマーを用いた場合であっても、水素引き抜き型の開始剤となる二官能ベンゾフェノン系モノマーとあわせて用いることで、重合開始剤が液晶層中に残存することなく重合が進行するので、表示むら及び焼き付き残像の改善効果が得られることが示された。更に、重合基が開始剤に付加されており、未反応開始剤もモノマーとして反応させることができるので、液晶層中にモノマーが残存することなく重合が進行するので、表示むら及び焼き付き残像の改善効果が示された。
【0106】
また、上記化学式(5)で表される二官能ビフェニル系モノマーを0.3wt%含み、上記化学式(6)で表される二官能ベンゾフェノン系モノマーを0.1wt%含む組成物を用いることにより、残留DC電圧は−10mVと小さくなり、サンプルGと同様に焼き付き残像の改善効果が得られた。また、サンプルG及びサンプルHの結果からわかるように、二官能ベンゾフェノン系モノマーを少量添加するのみで、残留DC電圧の改善効果が得られることが示された。
【0107】
更に、上記化学式(5)で表される二官能ビフェニル系モノマーを0.3wt%含み、上記化学式(6)で表される二官能ベンゾフェノン系モノマーを0.15wt%含む組成物を用いることにより、残留DC電圧は0mVと小さくなり、サンプルG及びサンプルHと同様に残留DC電圧の改善効果が得られた。
【0108】
実施例2においては配向膜に配向処理が施されておらず、モノマーを添加せずPSA層を形成しない場合、ポリマー層が形成されないため、プレチルト角が90°であり測定不可能であった。
【0109】
サンプルF〜Iのいずれのサンプルも99%以上となり、電圧保持率(VHR)の低下は顕著に見られず、高い信頼性が得られた。これは、紫外線の照射時間が30分間と短いためと考えられる。一方で、PSA層を形成しなかったサンプルJはVHRが98%台まで落ち、信頼性の低下が見られた。このことから、PSA層を形成しないと、信頼性の面でも課題が生じてしまうことがわかった。
【0110】
以上のことから、上記化学式(6)で表される二官能ベンゾフェノン系モノマーを液晶材料に添加し、その混合物を用いてPSA層を形成することにより、残留DC電圧が少ない液晶表示装置を設計することができることがわかった。
【0111】
また、上記化学式(6)で表される二官能ベンゾフェノン系モノマーは、波長330〜370nm付近に吸収を示し、紫外光照射による重合時間の短縮が可能なモノマーであることがわかった。
【0112】
更に、実施例1と実施例2とを比較するとわかるように、モノマーとして二官能ベンゾフェノン系を用いた場合は、電圧印加型のPSA工程と電圧無印加型のPSA工程とのいずれによっても、残留DC電圧の発生を抑え、表示むら及び焼き付きを低減することができることがわかった。
【0113】
実施例3
以下に、実施形態1に係る液晶表示装置が備える液晶セルを実際に作製した実施例3を示す。実施例3で用いた液晶セルは、液晶層形成用組成物に含まれる重合性モノマーの成分及び重量比が異なること、並びに、紫外線の照射時間を15分間にしたこと以外は、実施例1と同様の方法を用いてサンプルを作製している。
【0114】
実施例3では、下記化学式(8)及び上記化学式(6)で表されるモノマーを1種又は2種を組み合わせて用いている。下記化学式(8)で表される化合物は、フェナントレン系の二官能メタクリレートモノマーである。
【0116】
実施例3において調製したサンプルは、以下のサンプルK〜Oである。サンプルKは、液晶層形成用組成物中に、上記化学式(8)で表される二官能フェナントレン系モノマーを0.6wt%含む。サンプルLは、液晶層形成用組成物中に、上記化学式(8)で表される二官能フェナントレン系モノマーを0.6wt%、上記化学式(6)で表される二官能ベンゾフェノン系モノマーを0.03wt%含む。サンプルMは、液晶層形成用組成物中に、上記化学式(8)で表される二官能フェナントレン系モノマーを0.6wt%、上記化学式(6)で表される二官能ベンゾフェノン系モノマーを0.1wt%含む。サンプルNは、液晶層形成用組成物中に、上記化学式(8)で表される二官能フェナントレン系モノマーを0.6wt%、上記化学式(6)で表される二官能ベンゾフェノン系モノマーを0.15wt%含む。サンプルOは、液晶層形成用組成物中にモノマーを含まない。
【0117】
次に、一対の基板によって挟持された液晶層に対し、電圧無印加の状態でブラックライト(300〜370nmにピーク波長がある紫外光)を照射し、重合反応を行うことで、PSA層が垂直配向膜上に形成された液晶セルをそれぞれ完成させた。紫外線の照射時間は15分間とした。紫外光光源としては、東芝ライテック社製のFHF−32BLBを用いた。
【0118】
続いて、完成した各液晶セルに対して、それぞれ残留DC電圧(mV)の測定を行った。実施例3において残留DC電圧の値は、DCオフセット電圧2Vを10時間印加した後、フリッカ消去法を用いることで決定している。
【0119】
また、完成した各液晶セルに対して、それぞれ電圧保持率(VHR)の測定を行った。VHRは、1Vのパルス電圧を印加後、16.61ms間の電荷保持を確認することで決定した。また、VHRの測定は、初期段階と、冷陰極管(CCFL:Cold Cathode Fluorescent Lamp)バックライトで光を照射しながら通電後1000時間が経過してからの段階との計2回行った。
【0120】
表3は、上記各サンプルを用いた残留DC電圧(mV)及びVHR(%)の測定結果を示す表である。
【0122】
上記化学式(8)で表される二官能フェナントレン系モノマーを0.6wt%含む組成物では、残留DC電圧は0mVとなった。これによりモノマーとしてフェナントレン系モノマーを単独で用いた場合であっても、焼き付き残像が改善されることが示された。
【0123】
上記化学式(8)で表される二官能フェナントレン系モノマーを0.6wt%含み、上記化学式(6)で表される二官能ベンゾフェノン系モノマーを0.03wt%含む組成物を用いることにより、残留DC電圧は−20mVと、添加しない場合と比べて20mV小さくなり、残留DC電圧の改善効果が得られた。これにより水素引き抜き型の開始剤となる二官能ベンゾフェノン系モノマーとあわせて二官能ビフェニル系モノマーではなく二官能フェナントレン系モノマーを用いることで、より短時間で重合反応を進行させることができ、焼き付き残像の改善効果及び表示むらの抑制の効果が得られることが示された。
【0124】
また、上記化学式(8)で表される二官能フェナントレン系モノマーを0.6wt%含み、上記化学式(6)で表される二官能ベンゾフェノン系モノマーを0.1wt%含む組成物を用いることにより、残留DC電圧は−20mVと、添加しない場合と比べて20mV小さくなり、サンプルLと同様に残留DC電圧の改善効果が得られた。また、サンプルL及びサンプルMの結果からわかるように、二官能ベンゾフェノン系モノマーを少量添加するのみで、焼き付き残像の改善効果及び表示むらの抑制の効果が得られることが示された。
【0125】
更に、上記化学式(8)で表される二官能フェナントレン系モノマーを0.6wt%含み、上記化学式(6)で表される二官能ベンゾフェノン系モノマーを0.15wt%含む組成物を用いることにより、残留DC電圧は−20mVと、添加しない場合と比べて20mV小さくなり、サンプルL及びサンプルMと同様に焼き付き残像の改善効果及び表示むらの抑制の効果が得られた。
【0126】
モノマーを添加せずPSA層を形成しない場合、残留DC電圧は250mVと高い値だった。この理由としては、液晶層と配向膜のポリイミド側鎖で構成される界面に電荷が貯まり易いことが要因として考えられる。
【0127】
サンプルK〜Nのいずれのサンプルも99%以上となり、電圧保持率(VHR)の低下は顕著に見られず、高い信頼性が得られた。これは、紫外線の照射時間が15分間と短いためと考えられる。一方で、PSA層を形成しなかったサンプルOは、VHRの値が98%台まで落ち、信頼性の低下が見られた。このことから、PSA層を形成しないとVHRの低下を生じてしまうことがわかった。
【0128】
以上のことから、上記化学式(6)で表される二官能ベンゾフェノン系モノマーに加えて上記化学式(8)で表される二官能フェナントレン系モノマーを液晶材料に添加し、その混合物を用いてPSA層を形成することにより、より短時間で残留DC電圧が少ない液晶表示装置を設計することができることがわかった。
【0129】
また、上記化学式(8)で表される二官能フェナントレン系モノマーは、波長330〜370nm付近に吸収を示し、紫外光照射による重合時間の短縮が可能なモノマーであることがわかった。
【0130】
実施例4
以下に、実施形態1に係る液晶表示装置が備える液晶セルを実際に作製した実施例4を示す。実施例4で用いた液晶セルは、配向膜に配向処理を施さなかったこと、及び、PSA層の形成の際に、閾値以上の電圧を印加した状態で光の照射を行ったこと以外は、実施例3と同様の方法を用いて各サンプルを作製している。
【0131】
実施例4では、上記化学式(8)及び上記化学式(6)で表されるモノマーを1種又は2種を組み合わせて用いている。上記化学式(8)で表される化合物は、フェナントレン系の二官能メタクリレートモノマーである。
【0132】
実施例4において調製したサンプルは、以下のサンプルP〜Tである。サンプルPは、液晶層形成用組成物中に、上記化学式(8)で表される二官能フェナントレン系モノマーを0.6wt%含む。サンプルQは、液晶層形成用組成物中に、上記化学式(8)で表される二官能フェナントレン系モノマーを0.6wt%、上記化学式(6)で表される二官能ベンゾフェノン系モノマーを0.03wt%含む。サンプルRは、液晶層形成用組成物中に、上記化学式(8)で表される二官能フェナントレン系モノマーを0.6wt%、上記化学式(6)で表される二官能ベンゾフェノン系モノマーを0.1wt%含む。サンプルSは、液晶層形成用組成物中に、上記化学式(8)で表される二官能フェナントレン系モノマーを0.6wt%、上記化学式(6)で表される二官能ベンゾフェノン系モノマーを0.15wt%含む。サンプルTは、液晶層形成用組成物中にモノマーを含まない。
【0133】
次に、一対の基板によって挟持された液晶層に対し、電圧無印加の状態でブラックライト(300〜370nmにピーク波長がある紫外光)を照射し、重合反応を行うことで、PSA層が垂直配向膜上に形成された液晶セルをそれぞれ完成させた。紫外線の照射時間は15分間とした。紫外光光源としては、東芝ライテック社製のFHF−32BLBを用いた。
【0134】
続いて、完成した各液晶セルに対して、それぞれ残留DC電圧(mV)の測定を行った。実施例4において残留DC電圧の値は、DCオフセット電圧2Vを10時間印加した後、フリッカ消去法を用いることで決定している。
【0135】
また、完成した各液晶セルに対して、それぞれ電圧保持率(VHR)の測定を行った。VHRは、1Vのパルス電圧を印加後、16.61ms間の電荷保持を確認することで決定した。また、VHRの測定は、初期段階と、冷陰極管(CCFL:Cold Cathode Fluorescent Lamp)バックライトで光を照射しながら通電後1000時間が経過してからの段階との計2回行った。
【0136】
表4は、上記各サンプルを用いた残留DC電圧(mV)及びVHR(%)の測定結果を示す表である。
【0138】
上記化学式(8)で表される二官能フェナントレン系モノマーを0.6wt%含む組成物では、残留DC電圧は0mVとなった。これによりモノマーとしてフェナントレン系モノマーを単独で用いた場合であっても、焼き付き残像が改善されることが示された。
【0139】
上記化学式(8)で表される二官能フェナントレン系モノマーを0.6wt%含み、上記化学式(6)で表される二官能ベンゾフェノン系モノマーを0.03wt%含む組成物を用いることにより、残留DC電圧は−20mVと、添加しない場合と比べて20mV小さくなり、残留DC電圧の改善効果が得られた。これにより水素引き抜き型の開始剤となる二官能ベンゾフェノン系モノマーとあわせて二官能ビフェニル系モノマーではなく二官能フェナントレン系モノマーを用いることで、より短時間で重合反応を進行させることができ、焼き付き残像の改善効果及び表示むらの抑制の効果が得られることが示された。
【0140】
また、上記化学式(8)で表される二官能フェナントレン系モノマーを0.6wt%含み、上記化学式(6)で表される二官能ベンゾフェノン系モノマーを0.1wt%含む組成物を用いることにより、残留DC電圧は−20mVと、添加しない場合と比べて20mV小さくなり、サンプルQと同様に焼き付き残像の改善効果が得られた。また、サンプルQ及びサンプルRの結果からわかるように、二官能ベンゾフェノン系モノマーを少量添加するのみで、表示むら及び焼き付き残像の改善効果が得られることが示された。
【0141】
更に、上記化学式(8)で表される二官能フェナントレン系モノマーを0.6wt%含み、上記化学式(6)で表される二官能ベンゾフェノン系モノマーを0.15wt%含む組成物を用いることにより、残留DC電圧は−20mVと、添加しない場合と比べて20mV小さくなり、サンプルQ及びサンプルRと同様に表示むら及び焼き付き残像の改善効果が得られた。
【0142】
実施例4においては配向膜に配向処理が施されておらず、モノマーを添加せずPSA層を形成しない場合、ポリマー層が形成されないため、チルト角が90°であり測定不可能であった。
【0143】
サンプルP〜Sのいずれのサンプルも99%以上となり、電圧保持率(VHR)の低下は顕著に見られず、高い信頼性が得られた。これは、紫外線の照射時間が15分間と短いためと考えられる。一方で、PSA層を形成しなかったサンプルTは、VHRの値が98%台まで落ち、信頼性の低下が見られた。このことから、PSA層を形成しないとVHRの低下を生じてしまうことがわかった。
【0144】
以上のことから、上記化学式(6)で表される二官能ベンゾフェノン系モノマーに加えて上記化学式(8)で表される二官能フェナントレン系モノマーを液晶材料に添加し、その混合物を用いてPSA層を形成することにより、より短時間で残留DC電圧が少ない液晶表示装置を設計することができることがわかった。
【0145】
また、上記化学式(8)で表される二官能フェナントレン系モノマーは、波長330〜370nm付近に吸収を示し、紫外光照射による重合時間の短縮が可能なモノマーであることがわかった。
【0146】
更に、実施例3と実施例4とを比較するとわかるように、モノマーとして二官能ベンゾフェノン系を用いた場合は、電圧印加型のPSA工程と電圧無印加型のPSA工程とのいずれによっても、残留DC電圧の発生を抑え、表示むら及び焼き付きを低減し、表示むらを抑制することができることがわかった。
【0147】
実施例5
以下に、実施形態1に係る液晶表示装置が備える液晶セルを実際に作製した実施例5を示す。実施例5で用いた液晶セルは、液晶層形成用組成物に含まれる重合性モノマーの成分及び重量比が異なること以外は、実施例1と同様の方法を用いて各サンプルを作製している。
【0148】
実施例5では、上記化学式(5)及び下記化学式(9)で表されるモノマーを組み合わせて用いている。上記化学式(5)で表される化合物は、ビフェニル系の二官能メタクリレートモノマーである。下記化学式(9)で表される化合物は、ベンジル系の二官能メタクリレートモノマーである。
【0150】
実施例5の液晶セル作成のため、PSA層形成用モノマーとして用いる上記化学式(9)で表される化合物の合成を行った。上記化合物は以下に示す方法に従って合成を行ったが、方法はこれに限られるものではない。
【0151】
合成例2(4,4’−ジヒドロキシベンジルの合成)
まず、市場より入手可能な4,4’−ジメトキシベンジル5.0gを酢酸95mlに溶解させた。続いて、この溶液を70℃とし、48%HBr水溶液31.2gを10分で滴下した。次に、滴下後の溶液を110℃で70時間攪拌した。その後、水150gを添加して結晶化させた。結晶化後の混合液をろ過し、結晶を水250gで洗浄してから乾燥することで目的物を4.0g得た。反応経路としては、下記化学反応式(10)で表される。
【0153】
合成例3(4,4’−ジメタアクリロイルオキシベンジル(上記化学式(9))の合成)
4,4’−ジヒドロキシベンジルを出発原料として、精製をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/ヘキサン=1:4)とする以外は、合成例1と同様の方法で、目的物の4,4’−ジメタアクリロイルオキシベンジルを5.6g得た。反応経路としては、下記化学反応式(11)で表される。
【0155】
実施例5において調製したサンプルは、以下のサンプルU〜Wである。サンプルUは、液晶層形成用組成物中に、上記化学式(5)で表される二官能ビフェニル系モノマーを0.3wt%、上記化学式(9)で表される二官能ベンジル系モノマーを0.03wt%含む。サンプルVは、液晶層形成用組成物中に、上記化学式(5)で表される二官能ビフェニル系モノマーを0.3wt%、上記化学式(9)で表される二官能ベンジル系モノマーを0.1wt%含む。サンプルWは、液晶層形成用組成物中に、上記化学式(5)で表される二官能ビフェニル系モノマーを0.3wt%、上記化学式(9)で表される二官能ベンジル系モノマーを0.15wt%含む。
【0156】
次に、一対の基板によって挟持された液晶層に対し、電圧無印加の状態でブラックライト(300〜370nmにピーク波長がある紫外光)を照射し、重合反応を行うことで、PSA層が垂直配向膜上に形成された液晶セルをそれぞれ完成させた。紫外線の照射時間は30分間とした。紫外光光源としては、東芝ライテック社製のFHF−32BLBを用いた。
【0157】
続いて、完成した各液晶セルに対して、それぞれ残留DC電圧(mV)の測定を行った。実施例5において残留DC電圧の値は、DCオフセット電圧2Vを10時間印加した後、フリッカ消去法を用いることで決定している。
【0158】
また、完成した各液晶セルに対して、それぞれ電圧保持率(VHR)の測定を行った。VHRは、1Vのパルス電圧を印加後、16.61ms間の電荷保持を確認することで決定した。また、VHRの測定は、初期段階と、冷陰極管(CCFL:Cold Cathode Fluorescent Lamp)バックライトで光を照射しながら通電後1000時間が経過してからの段階との計2回行った。
【0159】
表5は、上記各サンプルを用いた残留DC電圧(mV)及びVHR(%)の測定結果を示す表である。
【0161】
上記化学式(5)で表される二官能ビフェニル系モノマーを0.3wt%含み、上記化学式(9)で表される二官能ベンジル系モノマーを0.03wt%含む組成物を用いることにより、残留DC電圧は−20mVと小さくなり、残留DC電圧の改善効果が得られた。これにより、二官能ビフェニル系モノマーを用いた場合であっても、水素引き抜き型の開始剤となる二官能ベンジル系モノマーをあわせて用いることで、重合開始剤が液晶層中に残存することなく重合が進行するので、表示むら及び焼き付き残像の改善効果が得られることが示された。更に、重合基が開始剤に付加されており、未反応開始剤もモノマーとして反応させることができるので、液晶層中にモノマーが残存することなく重合が進行するので、表示むら及び焼き付き残像の改善効果が得られることが示された。
【0162】
また、上記化学式(5)で表される二官能ビフェニル系モノマーを0.3wt%含み、上記化学式(9)で表される二官能ベンジル系モノマーを0.1wt%含む組成物を用いることにより、残留DC電圧は−10mVと小さくなり、サンプルUと同様に残留DC電圧の改善効果が得られた。また、サンプルU及びサンプルVの結果からわかるように、二官能ベンジル系モノマーを少量添加するのみで、残留DC電圧の改善効果が得られることが示された。
【0163】
更に、上記化学式(5)で表される二官能ビフェニル系モノマーを0.3wt%含み、上記化学式(9)で表される二官能ベンジル系モノマーを0.15wt%含む組成物を用いることにより、残留DC電圧は+10mVと小さくなり、サンプルU及びサンプルVと同様に残留DC電圧の改善効果が得られた。
【0164】
サンプルU〜Wのいずれのサンプルも99%以上となり、電圧保持率(VHR)の低下は顕著に見られず、高い信頼性が得られた。これは、紫外線の照射時間が30分間と短いためと考えられる。
【0165】
以上のことから、上記化学式(9)で表される二官能ベンジル系モノマーを液晶材料に添加し、その混合物を用いてPSA層を形成することにより、残留DC電圧が少ない液晶表示装置を設計することができることがわかった。
【0166】
また、上記化学式(9)で表される二官能ベンジル系モノマーは、波長330〜420nm付近に吸収を示し、紫外光照射による重合時間の短縮が可能なモノマーであることがわかった。
【0167】
実施例6
以下に、実施形態1に係る液晶表示装置が備える液晶セルを実際に作製した実施例6を示す。実施例6で用いた液晶セルは、配向膜に配向処理を施さなかったこと、及び、PSA層の形成の際に、閾値以上の電圧を印加した状態で光の照射を行ったこと以外は、実施例5と同様の方法を用いて各サンプルを作製している。
【0168】
実施例6において調製したサンプルは、以下のサンプルX〜Zである。サンプルXは、液晶層形成用組成物中に、上記化学式(5)で表される二官能ビフェニル系モノマーを0.3wt%、上記化学式(9)で表される二官能ベンジル系モノマーを0.03wt%含む。サンプルYは、液晶層形成用組成物中に、上記化学式(5)で表される二官能ビフェニル系モノマーを0.3wt%、上記化学式(9)で表される二官能ベンジル系モノマーを0.1wt%含む。サンプルZは、液晶層形成用組成物中に、上記化学式(5)で表される二官能ビフェニル系モノマーを0.3wt%、上記化学式(9)で表される二官能ベンジル系モノマーを0.15wt%含む。
【0169】
次に、一対の基板によって挟持された液晶層に対し、5Vの電圧を印加しながらブラックライト(300〜370nmにピーク波長がある紫外光)を照射し、重合反応を行うことで、PSA層が垂直配向膜上に形成された液晶セルをそれぞれ完成させた。紫外線の照射時間は30分間とした。紫外光光源としては、東芝ライテック社製のFHF−32BLBを用いた。
【0170】
続いて、完成した各液晶セルに対して、それぞれ残留DC電圧(mV)の測定を行った。実施例6において残留DC電圧の値は、DCオフセット電圧2Vを10時間印加した後、フリッカ消去法を用いることで決定している。
【0171】
また、完成した各液晶セルに対して、それぞれ電圧保持率(VHR)の測定を行った。VHRは、1Vのパルス電圧を印加後、16.61ms間の電荷保持を確認することで決定した。また、VHRの測定は、初期段階と、冷陰極管(CCFL:Cold Cathode Fluorescent Lamp)バックライトで光を照射しながら通電後1000時間が経過してからの段階との計2回行った。
【0172】
表6は、上記各サンプルを用いた残留DC電圧(mV)及びVHR(%)の測定結果を示す表である。
【0174】
上記化学式(5)で表される二官能ビフェニル系モノマーを0.3wt%含み、上記化学式(9)で表される二官能ベンジル系モノマーを0.03wt%含む組成物を用いることにより、残留DC電圧は−10mVと小さくなり、残留DC電圧の改善効果が得られた。これにより、二官能ビフェニル系モノマーを用いた場合であっても、水素引き抜き型の開始剤となる二官能ベンジル系モノマーをあわせて用いることで、重合開始剤が液晶層中に残存することなく重合が進行するので、表示むら及び焼き付き残像の改善効果が得られることが示された。更に、重合基が開始剤に付加されており、未反応開始剤もモノマーとして反応させることができるので、液晶層中にモノマーが残存することなく重合が進行するので、表示むら及び焼き付き残像の改善効果が得られることが示された。
【0175】
また、上記化学式(5)で表される二官能ビフェニル系モノマーを0.3wt%含み、上記化学式(9)で表される二官能ベンジル系モノマーを0.1wt%含む組成物を用いることにより、残留DC電圧は−10mVと小さくなり、サンプルXと同様に残留DC電圧の改善効果が得られた。また、サンプルX及びサンプルYの結果からわかるように、二官能ベンジル系モノマーを少量添加するのみで、残留DC電圧の改善効果が得られることが示された。
【0176】
更に、上記化学式(5)で表される二官能ビフェニル系モノマーを0.3wt%含み、上記化学式(9)で表される二官能ベンジル系モノマーを0.15wt%含む組成物を用いることにより、残留DC電圧は0mVと小さくなり、サンプルX及びサンプルYと同様に残留DC電圧の改善効果が得られた。
【0177】
サンプルX〜Zのいずれのサンプルも99%以上となり、電圧保持率(VHR)の低下は顕著に見られず、高い信頼性が得られた。これは、紫外線の照射時間が30分間と短いためと考えられる。
【0178】
以上のことから、上記化学式(9)で表される二官能ベンジル系モノマーを液晶材料に添加し、その混合物を用いてPSA層を形成することにより、残留DC電圧が少ない液晶表示装置を設計することができることがわかった。
【0179】
また、上記化学式(9)で表される二官能ベンジル系モノマーは、波長330〜420nm付近に吸収を示し、紫外光照射による重合時間の短縮が可能なモノマーであることがわかった。
【0180】
更に、実施例5と実施例6とを比較するとわかるように、モノマーとして二官能ベンジル系モノマーを用いた場合は、電圧印加型のPSA工程と電圧無印加型のPSA工程とのいずれによっても、残留DC電圧の発生を抑え、表示むら及び焼き付きを低減することができることがわかった。
【0181】
実施例7
以下に、実施形態1に係る液晶表示装置が備える液晶セルを実際に作製した実施例7を示す。実施例7で用いた液晶セルは、液晶層形成用組成物に含まれる重合性モノマーの成分及び重量比が異なること、並びに、紫外線の照射時間を15分間にしたこと以外は、実施例5と同様の方法を用いて各サンプルを作製している。
【0182】
実施例7では、上記化学式(8)及び上記化学式(9)で表されるモノマーを組み合わせて用いている。上記化学式(8)で表される化合物は、フェナントレン系の二官能メタクリレートモノマーである。上記化学式(9)で表される化合物は、ベンジル系の二官能メタクリレートモノマーである。
【0183】
実施例7において調製したサンプルは、以下のサンプルa〜cである。サンプルaは、液晶層形成用組成物中に、上記化学式(8)で表される二官能フェナントレン系モノマーを0.6wt%、上記化学式(9)で表される二官能ベンジル系モノマーを0.03wt%含む。サンプルbは、液晶層形成用組成物中に、上記化学式(8)で表される二官能フェナントレン系モノマーを0.6wt%、上記化学式(9)で表される二官能ベンジル系モノマーを0.1wt%含む。サンプルcは、液晶層形成用組成物中に、上記化学式(8)で表される二官能フェナントレン系モノマーを0.6wt%、上記化学式(9)で表される二官能ベンジル系モノマーを0.15wt%含む。
【0184】
次に、一対の基板によって挟持された液晶層に対し、電圧無印加の状態でブラックライト(300〜370nmにピーク波長がある紫外光)を照射し、重合反応を行うことで、PSA層が垂直配向膜上に形成された液晶セルをそれぞれ完成させた。紫外線の照射時間は15分間とした。紫外光光源としては、東芝ライテック社製のFHF−32BLBを用いた。
【0185】
続いて、完成した各液晶セルに対して、それぞれ残留DC電圧(mV)の測定を行った。実施例7において残留DC電圧の値は、DCオフセット電圧2Vを10時間印加した後、フリッカ消去法を用いることで決定している。
【0186】
また、完成した各液晶セルに対して、それぞれ電圧保持率(VHR)の測定を行った。VHRは、1Vのパルス電圧を印加後、16.61ms間の電荷保持を確認することで決定した。また、VHRの測定は、初期段階と、冷陰極管(CCFL:Cold Cathode Fluorescent Lamp)バックライトで光を照射しながら通電後1000時間が経過してからの段階との計2回行った。
【0187】
表7は、上記各サンプルを用いた残留DC電圧(mV)及びVHR(%)の測定結果を示す表である。
【0189】
上記化学式(8)で表される二官能フェナントレン系モノマーを0.6wt%含み、上記化学式(9)で表される二官能ベンジル系モノマーを0.03wt%含む組成物を用いることにより、残留DC電圧は−10mVと小さくなり、残留DC電圧の改善効果が得られた。これにより、水素引き抜き型の開始剤となる二官能ベンジル系モノマーとあわせて、二官能ビフェニル系モノマーではなく二官能フェナントレン系モノマーを用いることで、より短時間で重合反応を進行させることができ、焼き付き残像の改善効果及び表示むらの抑制効果が得られることが示された。
【0190】
また、上記化学式(8)で表される二官能フェナントレン系モノマーを0.6wt%含み、上記化学式(9)で表される二官能ベンジル系モノマーを0.1wt%含む組成物を用いることにより、残留DC電圧は−10mVと小さくなり、サンプルaと同様に残留DC電圧の改善効果が得られた。また、サンプルa及びサンプルbの結果からわかるように、二官能ベンジル系モノマーを少量添加するのみで、残留DC電圧の改善効果が得られることが示された。
【0191】
更に、上記化学式(8)で表される二官能フェナントレン系モノマーを0.6wt%含み、上記化学式(9)で表される二官能ベンジル系モノマーを0.15wt%含む組成物を用いることにより、残留DC電圧は0mVとなり、サンプルa及びサンプルbと同様に残留DC電圧の改善効果が得られた。
【0192】
サンプルa〜cのいずれのサンプルも99%以上となり、電圧保持率(VHR)の低下は顕著に見られず、高い信頼性が得られた。これは、紫外線の照射時間が15分間と短いためと考えられる。
【0193】
以上のことから、上記化学式(9)で表される二官能ベンジル系モノマーに加えて上記化学式(8)で表される二官能フェナントレン系モノマーを液晶材料に添加し、その混合物を用いてPSA層を形成することにより、より短時間で残留DC電圧が少ない液晶表示装置を設計することができることがわかった。
【0194】
実施例8
以下に、実施形態1に係る液晶表示装置が備える液晶セルを実際に作製した実施例8を示す。実施例8で用いた液晶セルは、配向膜に配向処理を施さなかったこと、及び、PSA層の形成の際に、閾値以上の電圧を印加した状態で光の照射を行ったこと以外は、実施例7と同様の方法を用いて各サンプルを作製している。
【0195】
実施例8において調製したサンプルは、以下のサンプルd〜fである。サンプルdは、液晶層形成用組成物中に、上記化学式(8)で表される二官能フェナントレン系モノマーを0.6wt%、上記化学式(9)で表される二官能ベンジル系モノマーを0.03wt%含む。サンプルeは、液晶層形成用組成物中に、上記化学式(8)で表される二官能ビフェニル系モノマーを0.6wt%、上記化学式(9)で表される二官能ベンジル系モノマーを0.1wt%含む。サンプルfは、液晶層形成用組成物中に、上記化学式(8)で表される二官能フェナントレン系モノマーを0.6wt%、上記化学式(9)で表される二官能ベンジル系モノマーを0.15wt%含む。
【0196】
次に、一対の基板によって挟持された液晶層に対し、電圧無印加の状態でブラックライト(300〜370nmにピーク波長がある紫外光)を照射し、重合反応を行うことで、PSA層が垂直配向膜上に形成された液晶セルをそれぞれ完成させた。紫外線の照射時間は15分間とした。紫外光光源としては、東芝ライテック社製のFHF−32BLBを用いた。
【0197】
続いて、完成した各液晶セルに対して、それぞれ残留DC電圧(mV)の測定を行った。実施例8において残留DC電圧の値は、DCオフセット電圧2Vを10時間印加した後、フリッカ消去法を用いることで決定している。
【0198】
また、完成した各液晶セルに対して、それぞれ電圧保持率(VHR)の測定を行った。VHRは、1Vのパルス電圧を印加後、16.61ms間の電荷保持を確認することで決定した。また、VHRの測定は、初期段階と、冷陰極管(CCFL:Cold Cathode Fluorescent Lamp)バックライトで光を照射しながら通電後1000時間が経過してからの段階との計2回行った。
【0199】
表8は、上記各サンプルを用いた残留DC電圧(mV)及びVHR(%)の測定結果を示す表である。
【0201】
上記化学式(8)で表される二官能フェナントレン系モノマーを0.6wt%含み、上記化学式(9)で表される二官能ベンジル系モノマーを0.03wt%含む組成物を用いることにより、残留DC電圧は−10mVと小さくなり、残留DC電圧の改善効果が得られた。これにより、水素引き抜き型の開始剤となる二官能ベンジル系モノマーをあわせて、二官能ビフェニル系モノマーではなく二官能フェナントレン系モノマーを用いることで、より短時間で重合反応を進行させることができ、焼き付き残像の改善効果及び表示むらの抑制の効果が得られることが示された。
【0202】
また、上記化学式(8)で表される二官能フェナントレン系モノマーを0.6wt%含み、上記化学式(9)で表される二官能ベンジル系モノマーを0.1wt%含む組成物を用いることにより、残留DC電圧は−10mVと小さくなり、サンプルdと同様に残留DC電圧の改善効果が得られた。また、サンプルd及びサンプルeの結果からわかるように、二官能ベンジル系モノマーを少量添加するのみで、残留DC電圧の改善効果が得られることが示された。
【0203】
更に、上記化学式(8)で表される二官能フェナントレン系モノマーを0.6wt%含み、上記化学式(9)で表される二官能ベンジル系モノマーを0.1wt%含む組成物を用いることにより、残留DC電圧は−10mVと小さくなり、サンプルd及びサンプルeと同様に残留DC電圧の改善効果が得られた。
【0204】
サンプルd〜fのいずれのサンプルも99%以上となり、電圧保持率(VHR)の低下は顕著に見られず、高い信頼性が得られた。これは、紫外線の照射時間が15分間と短いためと考えられる。
【0205】
以上のことから、上記化学式(9)で表される二官能ベンジル系モノマーに加えて上記化学式(8)で表される二官能フェナントレン系モノマーを液晶材料に添加し、その混合物を用いてPSA層を形成することにより、より短時間で残留DC電圧が少ない液晶表示装置を設計することができることがわかった。
【0206】
また、上記化学式(9)で表される二官能ベンジル系モノマーは、波長330〜420nm付近に吸収を示し、紫外光照射による重合時間の短縮が可能なモノマーであることがわかった。
【0207】
更に、実施例7と実施例8とを比較するとわかるように、モノマーとして二官能ベンジル系モノマーを用いた場合は、電圧印加型のPSA工程と電圧無印加型のPSA工程とのいずれによっても、残留DC電圧の発生を抑え、表示むら及び焼き付きを低減することができることがわかった。
【0208】
なお、本願は、2010年9月7日に出願された日本国特許出願2010−200147号を基礎として、パリ条約ないし移行する国における法規に基づく優先権を主張するものである。該出願の内容は、その全体が本願中に参照として組み込まれている。