(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5750149
(24)【登録日】2015年5月22日
(45)【発行日】2015年7月15日
(54)【発明の名称】刃先交換式ドリル
(51)【国際特許分類】
B23B 51/00 20060101AFI20150625BHJP
【FI】
B23B51/00 T
B23B51/00 P
B23B51/00 K
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-247031(P2013-247031)
(22)【出願日】2013年11月29日
(62)【分割の表示】特願2012-90054(P2012-90054)の分割
【原出願日】2012年4月11日
(65)【公開番号】特開2014-40002(P2014-40002A)
(43)【公開日】2014年3月6日
【審査請求日】2014年1月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】503212652
【氏名又は名称】住友電工ハードメタル株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】富士重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100130513
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 直也
(74)【代理人】
【識別番号】100074206
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 文二
(74)【代理人】
【識別番号】100130177
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 弥一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100112575
【弁理士】
【氏名又は名称】田川 孝由
(72)【発明者】
【氏名】田村 匠
(72)【発明者】
【氏名】吉田 匡宏
(72)【発明者】
【氏名】貝森 善春
(72)【発明者】
【氏名】小野 譲
【審査官】
大山 健
(56)【参考文献】
【文献】
特開2003−025128(JP,A)
【文献】
特開2001−179518(JP,A)
【文献】
特開2000−190323(JP,A)
【文献】
特開2012−011481(JP,A)
【文献】
実開昭60−029018(JP,U)
【文献】
特開2010−173007(JP,A)
【文献】
実開平01−117813(JP,U)
【文献】
特開2002−066820(JP,A)
【文献】
特開2009−142963(JP,A)
【文献】
特開2005−186247(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23B 51/00−51/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドリル本体(1)の先端に着脱自在の切削ヘッド(2)を設け、その切削ヘッド(2)に軸方向端面視において回転中心から径方向外端まで直線的に延びる切れ刃(4)とねじれ溝(5)を備えさせた刃先交換式ドリルであって、
前記切れ刃(4)に連なるすくい面(9)に、回転軸(CL)に対して傾斜して切れ刃(4)の軸方向すくい角を負の角度にするシンニング面(10)を形成し、そのシンニング面(10)を、前記切れ刃(4)の径方向内端から径方向外端に至る間の全領域に存在させ、
前記切削ヘッド(2)の外周のランド部(12)に、前記ねじれ溝(5)に隣接して前記切れ刃(4)の径方向外端部において回転方向に幅(W2′)を有するマージン(6)を形成し、そのマージン(6)の前記ねじれ溝(5)側端がリーディングエッジ(8)を形成し、
さらに、前記マージン(6)を主マージンとし、その主マージン(6)から所定量回転方向後方に移動した位置のランド部外周に副マージン(7)を設け、その両マージン(6、7)間に形成されるクリアランスの大きさを0.3mm〜1.0mmとした刃先交換式ドリル。
【請求項2】
前記主マージン(6)の幅(W2)を0.4mm〜1.2mmとした請求項1に記載の刃先交換式ドリル。
【請求項3】
前記シンニング面(10)の回転軸(CL)に対する傾き角(θ)について、0°<θ<25°の条件を満たした請求項1又は請求項2に記載の刃先交換式ドリル。
【請求項4】
前記シンニング面(10)の切れ刃(4)の径方向外端部における回転軸方向の幅寸法(W)を、0.2mm〜1.0mmに設定した請求項1又は請求項2に記載の刃先交換式ドリル。
【請求項5】
前記シンニング面(10)の回転軸(CL)に対する傾き角(θ)について、0°<θ<25°の条件を満たし、かつ前記シンニング面(10)の切れ刃(4)の径方向外端部における回転軸方向の幅寸法(W)を、0.2mm〜1.0mmに設定した請求項1に記載の刃先交換式ドリル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、FRP(繊維強化プラスチックス)と金属の重ね板を加工するのに特に適した刃先交換式ドリルに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、FRP、中でもCFRP(炭素繊維強化プラスチックス)が、飛行機の胴体や翼用の構造材として特に脚光を浴びている。このCFRPは、チタン合金やアルミニウムなどの金属を組み合わせて複合板材として提供されることがある。
【0003】
その複合板材は、CFRPの一面に金属を重ねたもの(以下では単に重ね板と言う)が用いられている。その重ね板は、例えば、飛行機の胴体や翼などを構成する場合、ボルトやリベットなどの締結材を通す穴をあける必要がある。
【0004】
その穴あけのための工具として、例えば、下記特許文献1がFRP加工用として提案しているドリルを使用することが考えられる。
【0005】
特許文献1に記載されたドリルは、先端角を多段設定にして外径側の先端角を内径側の先端角よりも小さくしており、その多段設定によって、切れ刃の外周側(外径方向外端側)で押し広げ作用が低減し、それにより、加工される貫通穴の抜けぎわ(出口)などにおけるバリの発生が抑えられるものになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平5−177420号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1のドリルは、FRPの単板の加工では、先端角を多段にした効果が発揮されるが、CFRPと金属が積層された前掲の重ね板の加工では、強度が十分でなく、下穴加工後に同ドリルで本加工を行う場合には特に、下穴に喰いつく際に、切れ刃が欠け易い。
【0008】
下穴付きの加工は動力増加の抑制が図れる。そのために、金属加工に利用されている一般的な形状のソリッドドリルでも予め下穴を設けることで上記重ね板の加工を行うことができるが、この場合にも、下穴に喰いつく際に切れ刃に欠けの問題が発生する。
【0009】
なお、切れ刃の欠け対策としていわゆるネガランドの付与やホーニングによる刃先強化処理が知られている。ところが、これ等の方法では、切れ味が鈍るため、主軸負荷の軽減効果が損なわれ、さらに、重ね板の穴入口・出口部においてデラミネーション(層間剥離。CFRPの剥離やCFRPと金属の剥離)が起こり易くなる。
【0010】
そこで、この発明は、FRP、中でも前掲の重ね板加工用のドリルについて、製品の品質低下を招くデラミネーションを抑制しながら切れ刃の欠けを減少させること、それによって、良好な加工性能の確保と耐久性向上を両立させることを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するため、この発明においては、ドリル本体の先端に着脱自在の切削ヘッドを設け、その切削ヘッドに軸方向端面視において回転中心から径方向外端まで直線
的に延びる切れ刃とねじれ溝を備えさせた刃先交換式のドリルに以下の構成を加えた。即ち、前記切れ刃に連なるすくい面に、回転軸に対して傾斜して切れ刃の軸方向すくい角を負の角度にするシンニング面(ネガシンニング面)を形成し、そのシンニング面を、切れ刃の径方向内端から径方向外端に至る間の全領域に設置した。
なお、回転中心部は、チゼル幅が0.5mm以下のチゼル刃を有していてもよい。
【0012】
この刃先交換式ドリルは、前記シンニング面の回転軸に対する傾き角(=切れ刃の軸方向すくい角)θを、0°<θ<25°、より良くは5°<θ<10°に設定するとよい。
【0013】
前記シンニング面の切れ刃の径方向外端部における回転軸方向の寸法(シンニング幅)Wを、0.2mm〜1.0mmにするのもよい。
【0014】
前記切削ヘッドの外周のランド部に、前記ねじれ溝に隣接
して前記切れ刃の径方向外端部において回転方向に幅を有するマージンを形成し、そのマージンの前記ねじれ溝側端がリーディングエッジを形成したものとし得る。そのマージンを主マージンとし、その主マージンよりもドリル回転方向後方に配置される副マージンを形成し、両マージン間に形成されるクリアランス(両マージン間に形成されるぬすみ)の大きさ(径方向寸法)を0.3mm〜1.0mmに設定することが望ましい。
【0015】
さらに、前記切削ヘッドに、1/100〜1.5/100mmのバックテーパを付すのがよい。このほか、ねじれ溝は、ねじれ角が20°程度の弱ねじれの溝がよい。
【発明の効果】
【0016】
この発明のドリルは、切れ刃を回転中心から径方向外端まで直線的に延びる形状にし、なおかつ、その切れ刃の全域を、シンニング面の設置によって負のすくい角を持つ刃にしたことで、デラミネーションの抑制と切れ刃の耐久性向上を両立させることができる。
【0017】
切削ヘッドの交換が可能なドリルは、ソリッドドリルに比べてバックテーパを大きく(例えば上記1/100〜1.5/100mm程度)設定することができ、摩擦面を減少させて加工時の発熱、それによる加工穴面の品質低下(穴壁面の焦げなど)を抑制することができる。
【0018】
また、切れ刃の全域のすくい角を、切れ刃に沿ったすくい面にシンニング面を設けて負の角度(ネガティブ)となしたことで、切れ刃の耐欠損性が改善されて下穴に喰いつくときの切れ刃の欠けが抑制される。
【0019】
さらに、シンニング面の設置によって切れ刃の耐欠損性を高める構造によれば、切れ味の鈍化がネガランドやホーニング処理で刃先を強化したドリルほどきつくならない。これに加えて、切れ刃を回転中心から径方向外端まで直線的に延びる形状にしたことでリーディングエッジが鋭角になり、CFRPの炭素繊維が切断され易くなってデラミネーションの抑制機能も確保される。
【0020】
なお、刃先交換式ドリルは、ソリッドドリルに比べて工具費が低減されるので、素材の使用量が多くなる直径が12mmを越えるようなドリルを使用するときには特に、経済効果が高まる。また、金属加工時に比べて寿命が極端に短縮されるCFRPの重ね板の加工では、短研磨サイクルでの工具管理が煩雑になるが、刃先交換式ドリルは、刃先再生のための再研磨工程を無くすことができるため、工具管理の面でも有利になる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】(a):この発明のドリルの一例を示す側面図、(b):切れ刃外端近傍のマージン部を
図1(a)のX方向に見た拡大図
【
図3】
図2のIII−III線に沿った箇所の拡大断面図
【
図4】この発明のドリルのマージン高さを高くした例を示す正面図
【
図5】シンニング面の無いドリル(θ=0°)を
図2のIII−III線と同一箇所で切断した図
【
図6】(a):従来ドリルの芯上がり角度の説明図、(b):この発明でチゼルエッジを設けるドリルの芯上がり角度の説明図
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、添付図面の
図1〜
図6に基づいて、この発明の刃先交換式ドリルの実施の形態を説明する。
図1〜
図3に示したドリルは、工具鋼などで形成されたドリル本体1の先端に切削ヘッド2を2本の締結ボルト3で着脱自在に装着し、その切削ヘッド2に、中心対称形状の2枚の切れ刃4,4を設けている。また、切屑排出用の2条のねじれ溝5、5と、主マージン6,6及び副マージン7,7を設けている。
【0023】
ドリル本体1は、切削ヘッド2のねじれ溝5、5につながる2条のねじれ溝5´、5´を有するが、このドリル本体1にはマージンはない。また、ドリル本体1は、その外径が切削ヘッド2の軸方向後端の外径よりも小さい。
【0024】
切削ヘッド2には、1/100〜1.5/100mmのバックテーパが付されている。この大きなバックテーパの付与によって加工時の摩擦熱を抑制できる。
【0025】
切削ヘッド2に設けた切れ刃4,4は、
図2に示すように、ドリルの軸方向端面視(正面図)において回転中心から径方向外端まで直線的に延びる刃になっている。
図7のような一般的な刃型では、リーディングエッジ8の部分で、切れ刃4と被切削材との接触角βが大幅に鈍角(β>90°)となるのに対し、直線の切れ刃では
図2に示すように、切れ刃4と被切削材との接触角βを90°とすることができ、繊維が切れ易くなる。このように、接触角βを90°近傍に保つことができれば、本発明の効果が得られるので、切れ刃が微小の芯上がり量を有していてもよい。より具体的には、切れ刃4が、回転中心部にチゼルエッジを有していてもよく、このチゼルエッジの幅は、接触角βとの関係から0.5mm以下とするのが好ましい。そのチゼルエッジの幅が0.5mm以下であれば、芯上がり量Yも小さくて
図6に示す芯上がり角度αが
図6(b)のように小さく抑えられるため、切れ刃外端の被削材に対する接触角が小さく保たれ、そのために、デラミネーションの抑制効果も期待通りに発揮される。そのことを実験で確認した。
【0026】
切れ刃4に沿ったすくい面9には、シンニング面10を設けている。そのシンニング面10は、
図3に示すように、ドリルの回転軸(中心の軸線)CLに対して面の軸方向後部が離反する方向に傾いた面にして切れ刃の回転中心にある内端から径方向外端に至る領域に設けており、これにより、切れ刃4の全域に負のすくい角が付与される。
【0027】
シンニング面10の回転軸CLに対する傾き角θは、0°<θ<25°、より好ましくは5°〜10°の範囲に設定するとよい。その傾き角θが0°或いはそれ以下では刃先の強化効果が不足し、また、25°を超えると切れ味の低下によってデラミネーションの抑制が不十分になる。
【0028】
また、シンニング面10の切れ刃の径方向外端部における回転軸方向の寸法(
図1のW)は、0.2mm〜1.0mmとするのが好ましい。刃先の強化効果を得るためには、この幅Wを0.2mm以上の大きさとするのが好ましいが、その幅Wが大きいと、ねじれ角やシンニング面の傾き角が大きいマージン付ドリルの場合、
図1(b)に示すように、切
れ刃近傍のマージン幅W2´(回転方向)が小さくなってしまう。マージン幅が小さくなる領域が大きいと、マージンのガイド効果が低下してしまうので、Wは1.0mm以下とするのがより好ましい。
【0029】
先端の前逃げ面11の逃げ角γ(
図3参照)は、15°に設定している。逃げ角γは、この範囲に限定されるものではないが、この逃げ角が大き過ぎるとシンニング面10による刃先強化の効果が薄れて欠け発生の可能性が高まる。一方、その逃げ角が小さすぎると、被削材の弾性変形により前逃げ面11が擦れる可能性が高まり、被削材に下穴があるとは言え、加工時のスラスト増加につながる。
【0030】
主マージン6は、
図1、図2に示すように、
ねじれ溝5に隣接してランド部12の回転方向先端
の切れ刃4の径方向外端部において幅W2′を有するように設けられており、この主マージン6のねじれ溝5側端がリーディングエッジ8となっている。その主マージン6から所定量回転方向後方に移動した位置のランド部外周に副マージン7を設けていわゆるダブルマージンの設計にしており、副マージンの設置によるガイド性の向上により被削材に喰いつくときの挙動の乱れが抑制される。
【0031】
なお、下穴を有する加工の場合、下穴の軸中心と、工具の軸中心が同一軸上でない場合があるため、切削中の挙動が乱れることがある。このため、FRPの加工では、粉化するなどした切屑やチタン合金の切屑がランド部外周の隙間(加工穴の内周面との間に形成される隙間)に入り込み易い。
【0032】
この隙間への切りくず詰まりを軽減するため、通常の下穴のない金属加工用ドリルのマージン高さに比べ、比較的高く設計する。
図4に示す主マージン6と副マージン7間に形成されるクリアランス(両マージン間に形成されるぬすみ)の大きさを0.3mm〜1.0mmに設定して
図4のようなマージン形状にすることが有効なことを見出した。主マージン6と副マージン7の幅W2は、0.4mm〜1.2mm程度がガイド性能を維持しながら被削材との接触面積を小さく抑えられて好ましかった。また、副マージン7の位置は、主マージン6から40°〜60°回転方向後方側に設けるのが好ましい。
【0033】
ドリルの先端角は、137°〜143°に設定しており、一般的な金属加工用のドリルの先端角(135°が一般的)よりも若干大きい。この範囲の先端角を選択し、さらに、ダブルマージンの設計にすることで、下穴があけられた重ね板を加工するときの下穴に対する喰いつきの挙動を安定させることができる。
【実施例】
【0034】
−実施例1−
この発明のドリルの性能を評価するために、下記のドリルを使用して下記被削材の切削試験を行った。
・使用ドリルA(発明品):ドリル本体の先端に切削ヘッドを取り付けたダブルマージンの刃先交換式ドリル。直径φ14.00mm、切れ刃エッジに微小ホーニングを施したストレート刃型、シンニング面有り。シンニング面の傾斜角θ=5°、ねじれ溝のねじれ角=20°、前逃げ面の逃げ角γ=15°
・使用ドリルB(比較品):シンニング面有り。シンニング面の傾斜角θ=0°(
図5参照)、その他の仕様はドリルAと同一。
被削材:厚みt1=11.0mmのCFRPと、Ti−6Al−4Vの組成の厚みt2=8.0mmのチタン合金から成る重ね板(
図8参照)。CFRPには直径φd1=9.50mmの下穴があけられ、チタン合金にはCFRPの下穴と同軸の直径φd2=10.50mmの下穴があけられている。
切削条件:切削速度 Vc=17.15m/min(n=390rpm)
送り量 f=0.0504mm/rev(Vf=19.8mm/min)
切削形式:オイルミスト(アルコール性クーラント使用)
【0035】
ドリルは、本体の先端側外周を治具でガイドして被削材に切り込ませた。その結果、比較品は、2穴加工段階で切れ刃に欠けが生じた。これに対し、発明品は、30穴加工時点でも切れ刃は健全であった。
【0036】
−実施例2−
リーディングエッジが鋭角になる実施例1のドリルA(発明品)と、リーディングエッジが鈍角になる
図7の一般的刃型のドリルC(比較品2、刃型を除く仕様は、発明品と同一)を使用して、実施例1で挙げた重ね板の穴広げ加工を行った。切削条件は実施例1と同一である。
その結果、比較品2による加工ではデラミネーションが発生したが、発明品による加工ではデラミネーションは起こらなかった。
【0037】
−実施例3−
実施例1のドリルAにおいて、シンニング面の切れ刃の径方向外端部における回転軸方向の幅寸法Wを、W=0.7mmとしたドリルA1と、W=1.2mmとしたドリルA2(共に発明品。Wを除くその他の仕様は両者とも実施例1のドリルAと同一)を使用して実施例1で挙げた重ね板の穴広げ加工を行った。この試験の条件も実施例1と同じである。
その結果、Wを大きく設けたことで主マージン部の幅(回転方向)が小さくなったドリルA2は、1穴加工後に欠けが発生したが、ドリルA1による加工では10穴加工後でもその不具合が起こらなかった。
【0038】
−実施例4−
主マージンと、副マージンの高さHを0.2mmとしたドリルA3と、その高さHを0.5mmとしたドリルA4(共に発明品。マージン高さを除くその他の仕様は両者とも実施例1のドリルAと同一)を使用して実施例1で挙げた重ね板の穴広げ加工を行った。この試験の切削条件も実施例1と同一である。
【0039】
その結果、ドリルA3による加工では、ランド部と加工穴の内周面との間の隙間に切屑が堆積して10穴加工時点でトルク増加や、2つのマージンの間にチタン合金の切りくずが堆積して溶着が生じたが、ドリルA4による加工ではその不具合が起こらなかった。
【0040】
−実施例5−
実施例1のドリルAと
図7の一般的刃型を有するソリッドタイプのドリルC´を使用して実施例1で挙げた重ね板の20穴連続穴広げ加工を行った。この試験の切削条件も実施例1と同一である。
その結果、ドリルC´は、10穴で欠け又は摩耗によるデラミネーションの増加が発生したため、1度再研磨を必要としたのに対し、ドリルAは、20穴加工後も継続使用が可能であった。また、20穴加工時点で、ドリルAは、10穴加工後に行った工具交換の作業に多くの時間を費やしたドリルC´よりも加工時間が1時間少なく実施できた。
【符号の説明】
【0041】
1 ドリル本体
2 切削ヘッド
4 切れ刃
5,5´ ねじれ溝
6 主マージン
7 副マージン
8 リーディングエッジ
9 すくい面
10 シンニング面
11 前逃げ面
12 ランド部
CL 回転軸
θ シンニング面の傾き角
α 芯上がり角度
β 被削材との接触角
γ 逃げ角
H マージンの高さ
W シンニング面の切れ刃外端部における回転軸方向の幅寸法
W2 マージン幅