(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5750151
(24)【登録日】2015年5月22日
(45)【発行日】2015年7月15日
(54)【発明の名称】自動テープ敷設装置に使用する複合テープ
(51)【国際特許分類】
C08J 5/24 20060101AFI20150625BHJP
【FI】
C08J5/24
【請求項の数】13
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2013-257696(P2013-257696)
(22)【出願日】2013年12月13日
(62)【分割の表示】特願2010-546407(P2010-546407)の分割
【原出願日】2008年2月18日
(65)【公開番号】特開2014-80031(P2014-80031A)
(43)【公開日】2014年5月8日
【審査請求日】2013年12月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】504132032
【氏名又は名称】ヘクセル コンポジッツ、リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】エリス、ジョン
【審査官】
平井 裕彰
(56)【参考文献】
【文献】
特表2011−512440(JP,A)
【文献】
特開平8−57852(JP,A)
【文献】
特開平6−114964(JP,A)
【文献】
特開2006−116718(JP,A)
【文献】
特開昭59−135121(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29B11/16
15/08〜15/14
C08J 5/04〜 5/10
5/24
B29C70/00〜70/88
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
未硬化複合材料が型に貼り付けられる形式の自動テープ敷設装置で使用するためのテープであって、
A.前記テープは、前記自動テープ敷設装置で前記テープが使用される間、前記未硬化複合材料を支持するための多層支持体を含み、前記多層支持体が、
a.外側面及び内側面を有し、内側面は外側面より粗い、SOPPフィルム層と、
b.外側面及び内側面を有し、内側面は外側面より粗い、BPPフィルム層と、
c.紙テープ第一面及び紙テープ第二面を有し、前記紙テープ第一面に前記SOPPフィルム層の前記内側面が接着されており、前記紙テープ第二面に前記BPPフィルム層の前記内側面が接着されている、紙テープ層と、を有し、
B.前記テープは更に、紙テープ強化材と未硬化樹脂母材とから成る未硬化複合材料層を含み、前記未硬化複合材料層が、前記未硬化複合材料が前記型に貼り付けされる際に、前記型に向いて位置する第1複合面と、前記SOPPフィルム層の前記外側面に剥離可能に接着されている第2複合面とを有している、
自動テープ敷設装置で使用するためのテープ。
【請求項2】
前記SOPPフィルム層と前記BPPフィルム層とが接着剤で前記紙テープ層に接着される、請求項1記載の自動テープ敷設装置で使用するためのテープ。
【請求項3】
前記BPPフィルム層の前記外側面が剥離剤で被覆されている、請求項1記載の自動テープ敷設装置で使用するためのテープ。
【請求項4】
前記SOPPフィルム層が、前記BPPフィルム層より高い横断方向引張り強さを有している、請求項1記載の自動テープ敷設装置で使用するためのテープ。
【請求項5】
自動テープ敷設装置に使用するための請求項1記載のテープのロールであり、
前記多層支持体が、前記SOPPフィルム層の前記外側面により形成される高接着性の側と、前記BPPフィルム層の前記外側面により形成される低接着性の側とを含み、前記テープがロール形状の場合にのみ、前記低接着性の側が前記未硬化複合材料層の前記第1複合面に接触する、テープのロール。
【請求項6】
未硬化複合材料が自動テープ敷設装置テーブル又は型に貼り付けられる形式の自動テープ敷設装置で使用するためのテープを製造する方法であって、
A)前記方法が、前記自動テープ敷設装置で前記テープが使用される間、前記未硬化複合材料を支持するための多層支持体を得る段階であり、前記多層支持体が、
a.外側面及び内側面を有し、内側面は外側面より粗い、SOPPフィルム層と、
b.外側面及び内側面を有し、内側面は外側面より粗い、BPPフィルム層と、
c.紙テープ第一面及び紙テープ第二面を有し、前記紙テープ第一面に前記SOPPフィルム層の前記内側面が接着されており、前記紙テープ第二面に前記BPPフィルム層の前記内側面が接着されている、紙テープ層とを有する、段階を含み、
B)前記方法が更に、紙テープ強化材と未硬化樹脂母材とから成る未硬化複合材料層を得る段階であり、前記未硬化複合材料が前記型に貼り付けされる際に型に向いて位置する第1複合面と、第2複合面とを有する、段階を含み、
C)前記方法が更に、前記SOPPフィルム層の前記外側面に前記第2複合面を剥離可能に取り付ける段階を含む、
自動テープ敷設装置で使用するテープを製造する方法。
【請求項7】
前記SOPPフィルム層と前記BPPフィルム層とが接着剤で前記紙テープ層に接着される、請求項6記載の自動テープ敷設装置で使用するテープを製造する方法。
【請求項8】
前記BPPフィルム層の前記外側面のみを剥離剤で被覆する付加的段階を含む、請求項7記載の自動テープ敷設装置で使用するテープを製造する方法。
【請求項9】
自動テープ敷設装置を用いて型に未硬化複合材料を貼り付けする方法において、前記方法が、
前記自動テープ敷設装置で使用するための、請求項1記載のテープを得る段階と、
前記自動テープ敷設装置を使用して前記型に前記未硬化複合材料を貼り付けする段階と、
前記未硬化複合材料から前記多層支持体の一部又は全部を除去する段階とを含む、自動テープ敷設装置を用いて型に未硬化複合材料を貼り付けする方法。
【請求項10】
前記未硬化複合材料が未だ前記多層支持体に接着されている間に、前記未硬化複合材料を切断する付加的段階を含む、請求項9記載の型に未硬化複合材料を貼り付けする方法。
【請求項11】
自動テープ敷設装置において、
請求項1記載のテープを含む、自動テープ敷設装置。
【請求項12】
請求項5記載のテープのロールであり、前記SOPPフィルム層と前記BPPフィルム層とが接着剤で前記紙テープ層に接着される、テープのロール。
【請求項13】
請求項5記載のテープのロールであり、前記BPPフィルム層の前記外側面のみが剥離剤で被覆される、テープのロール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、広くは、複合部品製造のさい、型に未硬化複合材料(プリプレグ)を貼り付けするのに使用される自動テープ敷設装置に関するものである。より具体的に言えば、本発明は、該敷設装置に使用されるテープに関するものである。
【背景技術】
【0002】
複合材料は、高強度で比較的軽量であることが要求される用途に広く使用されている。複合部品を形成するさいの共通の処置は、型又は他の器材にプリプレグを貼り付けして未硬化部品を形成し、これをオートクレーブその他の適当な硬化プロトコルを使用して硬化させるというものである。
【0003】
「プリプレグ」とは、複合材料工業分野で、1層以上の繊維強化材層に未硬化樹脂を含浸させた複合予備硬化材料をいう。その結果得られる予備含浸構造物は、通常、後で最終硬化構造物を製造するさいに用いるために貯蔵される。プリプレグを用意し使用することが特に望ましいのは、航空機部品、風力タービン羽根、その他の臨界的な構造物を製造する場合である。なぜなら、製造者が、所定量の繊維強化材と組み合わせる樹脂量を注意深く制御できるからである。結果として硬化複合構造物の最終特性を注意深く制御することができる。
【0004】
プリプレグは、部品の寸法や表面の複雑さに応じて様々な手法で型又は器材に貼り付けできる。自動式のプリプレグ貼り付け処理は、特に航空機の胴体、翼の外板、風力タービンの羽根等の大型複合部品を製造する場合に望ましい。そのような自動式の一方法は、一般に「自動テープ敷設機」と呼ばれる自動テープ敷設装置を使用することである。自動テープ敷設装置は、大型のガントリ型装置が多く、その場合、平行のレール間に可動テープ送出ヘッド機構が取り付けられている。テープ送出ヘッドは、概してコンピュータ制御で、多軸を中心として可動であり、種々の型形状にプリプレグ・テープを送出できる。自動テープ敷設装置についての詳細は、非特許文献1に記載されている。
【0005】
自動テープ敷設装置で使用されるプリプレグ・テープは、通常は紙聖の裏材料に支持された未硬化複合材料(プリプレグ)層を含んでいる。裏材料は、テープが型上へ送出されると除去される。テープ材料は、テープが連続的に送出ヘッドへ供給されるように、敷設装置に取り付けられた大型のテープ・ロール又はテーピ・スプールとして備えられている。テープの幅は、通常、75mm(3インチ)〜300mm(12インチ)である。テープの厚さと重量とは、使用される特定のプリプレグ及び裏材料に応じて変更される。
【0006】
裏材料は、プリプレグが型に貼り付けされた後、連続的に巻き取りロールに巻き取られる。結果的に、供給ロール・送出ヘッド・巻き取りロール間の裏材料に連続的な張力が加わる。テープは、また通常、送出ヘッドのところで加熱され、一定量の圧縮圧をかけられることで、プリプレグが、型又は先行貼り付けされたプリプレグ層に適正に確実に接着される。加えて、敷設装置は、テープをコンピュータ制御された経路で貼り付けし、正確に制御された個所及び角度でプリプレグを切断する。
【0007】
自動テープ敷設装置の作業の一つの大きな目標は、供給ロールから巻き取りロールまでの移動時に破断しない裏材料を得ることである。裏材料の破断による自動テープ敷設装置の停止と再スタートとは、費用や時間を食う作業である。したがって、重要なことは、自動式テープ敷設装置内を通過する裏材料に加わる様々な力に耐えられるように、十分な寸法安定性、引き裂き強さ、破裂強さを有するテープ裏材料を得ることである。
【0008】
テープ裏材料は、強いだけではなく、軽量で引き裂き抵抗を有していなければならない。このことが特に重要なのは、プリプレグ層の切断に用いる切断刃が、プリプレグを確実に完全に切断するために、裏材料に意図的に切れ目を入れるからである。加えて、裏材料は示差剥離特性を有していなければならない。例えば、裏材料の表面は、テープが供給ロールから繰り出されるさい、プリプレグに粘着してはならない。プリプレグは、また送出ヘッドに到達するまでは、裏材料に接着したままでなければならず、送出ヘッドのところで型上に又は先行貼り付けされたプリプレグ上に示差剥離される。裏材料は、また寸法安定性のために、かつまた保管時、使用時、また張力下にある時、裏材料が水分により劣化しないように、耐湿性でなければならない。
【0009】
自動テープ敷設装置には、普通、剥離剤であるシリコーンで処理した紙を基材とする裏材料が使用される。紙を基材とする裏材料の一つの問題は、特に、プリプレグ層の切断時に切れ目を入れるさい、引き裂き力を受けることである。紙の裏材料は、またテープの保管時に湿気を吸収した場合、又は使用時に張力を受けた場合、強度を失う傾向がある。これらの問題を解決するために、紙の厚さを増したり紙を接着テープで補強したりすることが試みられてきた。だが、これらの試みでは、全く満足のゆく結果は得られなかった。
【0010】
紙を基材とする裏材料は、自動テープ敷設装置に使用する場合、プリプレグ・テープを作る過程で、通常、種々の幅で長手方向に切れ目が入れられる。紙を基材とする裏材料は、きれいな切れ目縁部をもつのが理想的だろう。紙を基材とする従来の裏材料に係わる共通の問題点は、結果として得られる切れ目の縁部が、ざらついており、繊維の残片が、後で未硬化の複合材料に付着することがある点である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】グリムショウほか著「大型複合構造物の手ごろな製造のための高等テープ敷設技術」(第46回国際SAMPEシンポジウム、pp.2487〜2494、2001年5月6日から10日)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
したがって、切れ目が入れられても引き裂き抵抗を有する新たな裏材料を得ることが望ましい。加えて、裏材料は、自動テープ敷設装置での使用に適した裏材料に必要な、既述の特性とは別の特性を有しているのがよい。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明によれば、自動テープ敷設装置に使用するテープが得られ、その場合、裏材料は、特に切断刃により裏材料に切れ目が入れられた時に引き裂き抵抗を示す多層支持体である。この多層支持体の裏材料は、この他にも、例えば高温安定性、吸湿安定性、示差剥離性、綺麗な切断縁部、軽量等の望ましい特徴を備えている。
本発明は、一定の多層支持体が、自動テープ敷設装置内でプリプレグを支持する裏材料として用いるのに特に好適であるという発見に係わるものである。本発明により、該自動テープ敷設装置に使用するテープ、それも、フィルム外側面とフィルム内側面とを備えた少なくとも1プラスチック・フィルムを有するプラスチック層から成る多層支持体を含むテープが得られる。該プラスチック・フィルムは、繊維層の内側面がフィルム内側面に接着されるように、繊維層に接着される。本発明の1特徴として、繊維強化材と未硬化樹脂母材とから成る未硬化複合材料層が、剥離可能にプラスチック層の外側面又は繊維層の外側面に接着されることで、自動テープ敷設装置に使用するのに適当なテープが得られる。
【0014】
未硬化複合材料層が繊維層外側面に剥離可能に接着されるテープの場合、本発明の特徴は、未硬化複合材料層が剥離可能に繊維層外側面に接着される前に、繊維層外側面を剥離剤で被覆することにある。また、未硬化複合材料層がプラスチック層外側面に剥離可能に接着されるテープの場合、本発明の特徴は、第2プラスチック・フィルムの内側面を繊維層の外側面に接着させることにある。
本発明は、多層支持体を含むプリプレグ・テープに係わり、並びに該テープを製造かつ使用する方法に係わるものである。加えて、本発明は、該テープのロール又はスプールと、該テープを内包する何らかの自動テープ敷設装置に係わるものである。
本発明の、以上に記載した特徴及びその他の多くの特徴と、それに付随する利点は、添付図面との関連で行う以下の詳細な説明を参照することにより、より良く理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明によるテープ・ロール実施例の簡単化した斜視図。テープ・ロールは自動テープ敷設装置用の供給リールに取り付けられている(実施例1)
【
図2】
図1のテープ・ロールの拡大側面図。ロールからのテープの剥離を示している。
【
図3】本発明によるテープの好適実施例の側面図。未硬化複合材料層がフィルム外側面に剥離可能に接着されている。(実施例2)
【
図4】本発明によるテープの別の好適実施例の側面図。未硬化複合材料層が繊維層の外側面に剥離可能に接着されている。(実施例3)
【
図5】自動テープ敷設装置による未硬化複合材料の切断作業を示す簡単化した略図。切れ目を入れるさいの種々のレベルを示す。
【
図6】自動テープ敷設装置の送出ヘッド機構による型への未硬化複合材料の貼り付けを示す略図。
【実施例1】
【0016】
本発明によるテープ・ロールは、
図1に符号10で示されている。ロール10は、自動テープ敷設装置用のテープ供給システムの一部品である軸12に取り付けて示されている。この自動テープ敷設装置は、比較的大型の複合構造物を製造する場合に、航空宇宙工業分野で通常使用されるガントリ型のいずれかの装置でよい。自動テープ敷設装置は、幾つかの製造会社から市販されている。自動テープ敷設装置は、フラット・テープ敷設装置又は輪郭テープ敷設装置のいずれかでよい。これらの自動テープ敷設装置を使用して作られる複合部品には、航空機の胴体、翼の外板、尾部の外板、昇降舵、フラップ、エンジン・ナセル、風力タービンの羽根、その他多くの、航空宇宙用、民間用、軍事用、宇宙用の複合部品が含まれ、更に、工業、スポーツ、輸送の各市場用複合部品が含まれている。
【実施例2】
【0017】
図1及び
図2に示すテープ14は未硬化複合材料層16を含み、該複合材料層は、多層支持体18に剥離可能に接着され、かつ支持されている。未硬化複合材料層16は、繊維強化材と未硬化樹脂母材とから成っている。未硬化複合材料層16は第1複合材料面15を含み、該複合材料面は、複合材料層が型に貼り付けされるさい、型に対向する位置に置かれる。複合材料層16は第2複合材料面17を含み、該複合材料面は多層支持体18に剥離可能に接着されている。
【0018】
繊維強化材は、炭素、ガラス、セラミック、その他自動テープ敷設装置による大型構造物製作時に使用される種類の何らかの繊維材料でよい。繊維の配向は、一方向、織り方向、ランダム、準等方向のいずれかでよい。一方向炭素繊維は、自動テープ敷設装置で使用するのに好適な繊維強化材である。繊維の寸法とトウ又は糸当たりの繊維数とは、製作される部品の寸法及び種類に応じて大幅に変更できる。繊維の直径は、通常、0.003〜0.05mmである。繊維の各トウ又は糸は、概して、3,000〜160,000の単一繊維を含むが、通常は6,000〜24,000の単一繊維を含んでいる。繊維強化材は、1層以上の繊維層を有することができ、繊維は、所望とあれば、異なる配向であってもよい。繊維強化材の寸法及び重量は、製作される構造物の種類に応じて変更されよう。自動テープ敷設装置に用いられる繊維層の通常の重量範囲は20gsm〜2000gsm(グラム毎平方メートル)だが、通常は70gsm〜900gsm、好ましくは134gsm〜268gsmである。
【0019】
樹脂母材は、エポキシ樹脂、ビスマレイミド樹脂、フェノール樹脂のいずれかであり、これらの樹脂は、通常、航空宇宙分野及び風力タービン分野で使用されている。このほか母材樹脂として使用できるポリマーは、多層支持体と適合性があり、かつ自動テープ敷設装置に使用するのに適したポリマーである。好ましいエポキシ樹脂は、例えばポリエーテルスルフォン又はポリエーテルイミド等の熱可塑性ポリマーで強化されたエポキシ樹脂である。樹脂母材は「未硬化」状態だが、これは、樹脂が完全に硬化するには、未だ、少なくともオートクレーブその他の硬化システム内で何らかの最終硬化処理を受けねばならないことを意味する。未硬化樹脂は、所望とあれば、プリプレグ材料用の周知の硬化プロトコルにしたがって部分硬化されるか、又は「段階的に」硬化される。未硬化複合材料層16内の樹脂量は、該複合材料層16の全重量の15〜70重量%だが、好ましくは全重量の30〜50重量%である。
【0020】
プリプレグは、好適な未硬化複合材料である。プリプレグの幅は、25mm(1インチ)〜600mm(24インチ)だが、より好ましくは75mm(3インチ)〜300mm(12インチ)であり、重量は、25gsm〜2857gsmの範囲、より一般的には82gsm〜1285gsmだが、好ましくは206gsm〜412gsmである。プリプレグは、2層以上の繊維強化層を有することができ、厚さは0.01mm〜3.0mmとなろう。好適なプリプレグは、1方向炭素繊維をエポキシ樹脂母材と組み合わせることで得られる。通常、宇宙航空分野の主な構造部材であるエポキシ・プリプレグは、いずれも使用できる。未硬化樹脂含有量は、全プリプレグ重量の、好ましくは30〜50重量%である。本発明の多層支持体と共に使用するのに適したプリプレグは、ヘクセル・コーポレーション(カリフォルニア州ダブリン)から「ヘクスプライ」(Hexply)の商品名で市販されており、入手可能である。
【0021】
本発明による多層支持体は、最低条件として、繊維層に接着される少なくとも1プラスチック・フィルムから成るプラスチック層を含まねばならない。しかし、多層支持体は、第2プラスチック・フィルムを含むのが好ましい。
図2及び
図3に示すように、好適多層支持体18はプラスチック・フィルム20を含み、該フィルムは、未硬化複合層16に剥離可能に接着された外側面22と、繊維層26に接着された内側面24とを有している。繊維層26は、繊維外側面28と繊維内側面30とを含んでいる。多層支持体18は、また第2プラスチック・フィルム32を含み、該フィルムが、内側面34と外側面26とを含み、しかも、内側面34が繊維外側面28に接着されている。
【0022】
本発明のこの実施例では、繊維層26がプラスチック・フィルム間にサンドイッチ状に挟まれている。結果として、繊維層26は、従来式の紙の支持体の場合とは異なり、未硬化複合材料に直接には接触しない。したがって、処理済み繊維層と未硬化複合材料間の望ましくない相互作用のため、他の場合には使用不可能な一定種類の材料で繊維層26を処理することもできる。例えば、感温性染料で繊維層26を処理でき、感温性染料によって支持体の加熱温度を表示できる。その他の種類の添加剤同様、感圧性染料も利用できる。加えて、繊維層は未硬化樹脂から剥離されるので、印刷、マーキング、その他の印を繊維層に付すこともできる。
【実施例3】
【0023】
図4には、符号38で別の好適多層支持体が示されている。多層支持体38は、未硬化複合材料層40を支持している。多層支持体38は、また繊維層42を含み、該繊維層は、未硬化複合材料層40に剥離可能に接着された繊維内側面44と、プラスチック・フィルム48に接着された繊維外側面46とを有し、フィルム48は、第2プラスチック・フィルム52に接着されたフィルム外側面50を有している。この実施例では、フィルム48,52は、2つのプラスチック・フィルムを有するプラスチック層を形成している。別の実施例(図示せず)では、複合材料層40は、プラスチック・フィルム52の外側面に接着させることができる。この構成では、内側繊維面44が露出し、好ましくは剥離剤で被覆される。
【0024】
本発明によれば、多層支持体の異なる層及びフィルムは、互いに、また未硬化複合材料層と、相互作用することで、自動テープ敷設装置に使用するのに必要な幾つかの特性を得なければならない。例えば、多層支持体18の外側面19は、テープ14がテープ・ロール10から繰り出されるにつれて、固有粘着性を有する未硬化複合材料層16から剥離可能でなければならない。この所要剥離特性は、
図2の矢印54によって表されている。
【0025】
別の所要特性は、多層支持体の内側面が、型への未硬化複合材料層の貼り付け作業中に未硬化複合材料層から剥離せねばならないことである。
図6に示すように、未硬化複合材料層16は、型56又は先行貼り付けされた未硬化複合材料層に貼り付けされる。自動テープ敷設装置の送出ヘッド58は、矢印64が示す横方向に型の上方を移動しながら、必要な圧力(矢印62)を型に加えることで、未硬化複合材料層を適確に貼り付けする。符号60で示すように、多層支持体は、テープが、矢印59で示したように連続的に送出ヘッド58から送出されるにつれて、貼り付けされた複合材料層17から剥離できなければならない。重要な点は、多層支持体が、型から未硬化複合材料層を引き剥がしたり、貼り付けされた材料層57を損傷したりすることなく、固有粘着性を有する未硬化複合材料層から剥離される点である。
【0026】
更に要求される特性は、多層支持体が、自動テープ敷設装置による複合材料層の切断時に支持体に切れ目が入れられるさいにも、引き裂き抵抗能力を示すことである。自動テープ敷設装置は、未硬化複合材料層を完全に切断するように精密制御された切断刃を含んでいる。切断刃が、複合材料層を完全切断するだけでなく、下の支持体に切れ目を入れるように設定されることも、通常の慣行である。切断制御システムは、極めて精密であり、±0.01mm以内に切断深さを制御可能である。しかし、支持体に偶然に、意図しない深さの切り込み又は切れ目が入れられることがある。加えて、切断刃がプリプレグ・テープ縁部を移動するにつれて、すべてのプリプレグが確実に完全切断されるようにするために、プリプレグ・テープの縁部に意図的に深く切れ目が入れられる。これらの種々の切れ目入れ作業により、しばしば支持体が引き裂かれたり破断したりし、それによって、また自動テープ敷設装置を停止させねばならなくなる。
【0027】
図5には、本発明により得られた抗引き裂き特性が示されている。切断刃70は、自動テープ敷設装置での理想的な目標切断レベルを示しており、この場合、切断刃70は、未硬化複合材料層16を完全に切断しているが、その下の支持体18には僅かの切れ目しか入れていない。切断刃72は、意図せずして支持体18内へより深く切り込んだ通常見られる状況を示している。通常、このような切り込みは紙の厚さの最大10分の1である。本発明により得られる多層支持体は、この状況での引き裂き力に抵抗性を有している。なぜなら、切れ目はプラスチック・フィルム20に限定され、下の繊維層26には影響しないからである。切断刃76の場合は、通常の状況ではないが、起こり得る状況を示しており、この場合には、切断刃76がプラスチック・フィルム20を完全に切断し、繊維層26内へ突入している。この状況でも、プラスチック・フィルム32が引き裂きに抵抗する。
【0028】
本発明のプリプレグ・テープ用の裏材料を形成する多層支持体は、繊維層と単数又は複数のプラスチック・フィルムの層とを、取り扱い上、テープを過度に重くしたり扱いにくくすることなしに、既述の特徴を有する支持体が得られるように組み合わせたものである。加えて、この多層支持体には従来の繊維層が利用されているので、結果として得られたプリプレグ・テープ用裏材料は、従来のプリプレグ・テープ用裏紙の外見及び感触を有している。このため、従来の紙製裏材料で作業するのに慣れた自動テープ敷設装置作業員には、プリプレグ・テープの扱いが、より容易になろう。
【0029】
好適多層支持体18の繊維層26は、通常、自動テープ敷設装置に使用される従来の紙テープ材料やセルローズ材料のいずれでもよい。繊維層26は、紙、セルローズ、その他の紙に似た材料、例えばクラフト紙その他の、印刷又は複合材料分野で剥離紙用に通常使用される原紙のいずれかで構成できる。繊維層26の重量は20gsm〜200gsmである。好適重量は60gsm〜80gsmである。繊維層26として使用できる紙テープは市販されており、幾つかの製造元、例えばフータマキタ(ドイツのフォルヒハイム)、モンディ(英国ロンドンのハマースミス)、ロペレックス(英国のグロソップ)から入手できる。
【0030】
注意すべき点は、市販の紙テープは片面又は両面が剥離剤、例えばシリコーンで処理されていることがある点である。
図3に示した実施例の場合、プラスチック・フィルム20,32が繊維層26に堅く接着したままになるように、繊維外側面28と繊維内側面30とは、シリコーンその他の剥離剤で処理されていない。
図4に示した種類の実施例の場合は、紙テープがプリプレグ(図示されている)に接触しているか又は露出したまま(図示せず)だが、プリプレグに接触している面又は露出している面は、剥離剤で処理するのが好ましい。
【0031】
プラスチック・フィルム20は、ポリプロピレン製、又は物理・化学特性がポリプロピレンに似たフレキシブルな他のポリマー・フィルム製が好ましい。その他の使用可能なプラスチック・フィルムには、ポリエチレン及びポリエーテルテレフタレート(PET)、ポリエステル、ポリアミド(グレード6,12及びそのコポリマー)、その他のポリーマー・フィルムが含まれる。プラスチック・フィルムは、プリプレグ・テープが製造過程で達する温度及びプラスチック・ファイルが自動テープ敷設装置内で加熱される温度に耐えられるのがよい。通常のプリプレグ工程での温度は30℃〜180℃であり、自動テープ敷設装置内の温度は10℃〜100℃だが、より一般的には15℃〜40℃、通例は約25℃の温度である。ポリプロピレンは、好ましくは、厚さ20から200マイクロメートル、重量15gsm〜250gsmを有する同時延伸フィルム(SOPP−film)である。
【0032】
好適なポリプロピレン・フィルムの重量は20gsm〜40gsm、厚さは20〜50マイクロメートルである。特に好ましいのは、厚さ30(±3)マイクロメートル、重量24(±3)gsmの不透明なSOPP−フィルムである。この種のフィルムは、ISO 525−3/2/500で測定して、敷設装置方向(md)と敷設装置横断方向(cd)とで80N/mm
2を超える引張り強さを有するのが好ましい。該フィルムのmd及びcdでの破断点伸びは、同じくISO 525−3/2/500で測定して、30%以上がよい。
【0033】
プラスチック・フィルム20のフィルム内側面24は、適当な接着剤を用いて繊維層26に接着されている。繊維層26にフィルム内側面24を接着するには、従来のどのようなポリプロピレン接着手段を用いてもよいが、接着剤は、テープがプリプレグ過程を経るさい又は自動テープ敷設装置を通過するさい、繊維層26からプラスチック・フィルムが剥離しないように十分な強度を有することが条件である。接着剤は、15gsm以下の量がよく、好ましくは2〜6gsmの範囲であり、かつまた耐熱性であるのがよい。代表的な接着剤としては、ポリウレタンその他の有溶剤又は無溶剤の接着剤が挙げられる。市販のSOPPフィルムの一方の側又は面は、他方の側又は面より粗い。紙テープには粗い方の面を接着するのが好ましい。フィルム外側面22は、フィルム内側面24より滑らかであるのが好ましく、外側面22には、剥離剤又はその他の表面処理剤による処理を施さない。
【0034】
未硬化複合材料層16は、テープが送出ヘッド58へ移動する間は、プラスチック・フィルム20に接着したままで、
図6に示すように符号60のところでだけ示差的に剥離される。フィルム外側面22は、多層支持体の高接着性の又は「密な」側と考えられる。フィルム外側面22と未硬化複合材料層16間の接着剤量を低減するのが望ましい事情がある場合には、フィルム外側面22にシリコーン等の剥離剤を施してもよい。
【0035】
プラスチック・フィルム32は、またポリプロピレン製、又はポリプロピレンに似た物理・化学特性を有する別のフレキシブルなポリマー製であるのが好ましい。その他の使用可能なプラスチック・フィルムには、ポリエチレン及びポリエーテルテレフタレート(PET)、ポリエステル、ポリアミド(グレード6,12及びそれらのコポリマー)、その他のポリマー・フィルムが含まれる。ポリプロピレンは、好ましくは、インフレート(BPP)・フィルムであり、該フィルムは、厚さ20〜200マイクロメートル、重量15gsm〜250gsmである。好適なポリプロピレンBPPフィルムは、重量20gsm〜40gsm、厚さ20〜50マイクロメートルである。特に好ましいのは、不透明で、厚さ30(±4)マイクロメートル、重量27(±3)gsmのポリプロピレン・インフレート・フィルムである。該フィルムは、md及びcdの引張り強さが、ISO 527−3/2/500で測定して、各々30N/mm
2と15N/mm
2以上であるのが好ましい。md及びcdでの該フィルムの破断点伸びは、同じくISO 527−3/2/500で測定して340%と390%以上であるのがよい。
【0036】
プラスチック・フィルム32のフィルム内側面34は、適当な接着剤を用いて繊維層26に接着される。市販のBPPフィルムの一方の側又は面は、通常、他方の側又は面より粗くなっている。紙テープには粗い方の面を接着するのが好ましい。従来のポリプロピレン接着手段は、繊維層26にフィルム内側面34を接着させるのに使用できるが、その接着剤が、テープがプリプレグ過程を経るさい又は自動テープ敷設装置を通過するさい、プラスチック・フィルム32が繊維層26から剥離しないだけの十分な強度を有することが条件である。接着剤の量は、15gsmを超えないのがよく、最大約180℃の熱に耐えられるものがよい。代表的な接着剤には、ポリウレタン接着剤が含まれる。フィルム外側面36は、より滑らかな面であるのが好ましく、シリコーン等の剥離剤で処理されるのが好ましい。剥離剤の使用により、フィルム外側面36は、
図2の符号54で示すように、テープ10のロールから確実に剥離される。フィルム外側面36は、多層支持体の低付着性の又は「ルーズ」な側と考えられる。
【0037】
プラスチック・フィルム22,32は、等しいポリプロピレン材料製、又は等しい適当なポリマー・フィルム製でよいが、その他の適当なポリマー・フィルムの組み合わせで作ることもできる。しかし、プラスチック・フィルム20は、既述の種類の同時延伸ポリプロピレン(SOPP)・フィルムであるのが好ましく、それも、特に、未硬化複合材料層に対して示差接着でき、かつ同時延伸過程によって達せられる敷設装置横断方向での高引き裂き抵抗が得られるように、密な面を有するように設計するのが好ましい。この高い横断方向強度により、切断刃により支持体が切れ目を入れられるか又は完全切断される場合に、引き裂きの伝搬に十二分に抵抗できる。また、プラスチック・フィルム32は、既述の種類のポリプロピレンのインフレート(BPP)・フィルムであるのが好ましく、それも、特に、未硬化プリプレグから示差剥離可能で、かつまた切断刃の切り込み又は切断による支持体への初期損傷後に付加的な高い引き裂き抵抗が得られるように、ルーズな面を有するように設計するのが好ましい。
【0038】
多層支持体18は、50gsm〜200gsmの重量を有し、重量25gsm〜2857gsmの未硬化複合材料層を支持可能であるのがよい。多層支持体に好適な重量は80gsm〜140gsmである。
図4に示す別の好適多層支持体38は、プリプレグ4の支持に、又は自動テープ敷設装置に使用可能な何らかの別の未硬化複合材料の支持に使用できる。プリプレグの重量は25gsm〜2857gsmの範囲内で変動し、支持体の重量は50gsm〜200gsmの範囲である。好適支持体重量は80gsm〜140gsmである。また、好適プリプレグ重量は206gsm〜412gsmである。
【0039】
繊維層42は、既述の多層支持体18の繊維層26と等しい紙で作ることができるが、重量50gsm〜150gsmの両面シリコーン被覆剥離紙等の、現在複合処理で通常使用される何らかの別の紙で作ることもできる。内側面44は、未硬化複合材料層40の示差剥離を可能にするため、周知のように、シリコーン等の剥離剤で処理されている。内側面44は、多層支持体の密な側と考えられる。外側面46は、繊維層42とプラスチック・フィルム48との良好な接着を保証するために、剥離剤で処理されていない。プラスチック・フィルム48,52は、多層支持体18のプラスチック・フィルム20,32と等しい材料で作ることができる。フィルム48にはフィルム20と等しいポリプロピレンを用い、フィルム52にはフィルム32と等しいポリプロピレンを用いるのが好ましい。
【0040】
重要な点は、フィルム48の両面とも剥離剤で処理されていない点である。フィルム48は、一方の側が繊維層42に接着され、他方の側がフィルム52に接着されている。これらの接合は、双方とも接着剤又は熱貼り合わせにより形成できる。既述のように、支持体重量を出来るだけ小さく維持するには、最小量の接着剤を使用するのがよいが、他方、自動テープ敷設装置を通過する間に支持体の剥離を防止するには十分に強力な接着が必要である。好適な接合法は、貼り合わせ接着である。
プラスチック・フィルム52は、プラスチック・フィルム48に貼り合わせ接着するのが好ましい。しかし、所望とあれば、適当な熱貼り合わせ法又は他の加熱と接着の組み合わせも使用可能である。フィルム52の外側面は、支持体38の「ルーズな」側を得るために、シリコーン等の剥離剤で処理される。
【0041】
別の実施例では、フィルム52は除かれ、単一のフィルム48のみが使用され、繊維層42と組み合わされる。この実施例では、内側面44が剥離剤で処理され、多層支持体の密な側が得られている。フィルム48の外側面50は、多層支持体のルーズな側を得るために、剥離剤で処理しないのが好ましい。しかし、外側面50に剥離剤を被覆して、このルーズな側の特性を適合させることもできる。
【0042】
実際の例は次の通りである:
例1
図3に示したのと等しい形式で多層支持体を製作した。この場合、繊維層26は2つのポリプロピレン・フィルム20,32の間に挟まれている。ポリプロピレン・フィルム20は、不透明の同時延伸ポリプロピレン・フィルムだった。フィルム20は、厚さ30(±4)マイクロメートル、幅300mm、重量24(±3)gsmであった。フィルム20のmd及びcdでの引張り強さは、双方とも、ISO 520−3/2/500により測定して約90N/mm
2であった。md及びcdでの破断点伸びは、ISO 520−3/2/500で測定して双方とも約40%であった。
【0043】
繊維層26は、厚さ70(±5)マイクロメートル、幅300mm、重量70gsmの白色クラフト紙だった。ポリプロピレン・フィルム32は、インフレート法で作られた無色のポリプロピレン・フィルムであり、厚さは30(±4)マイクロメートル、幅300mm、重量27(±4)gsmだった。プラスチック・フィルム32のmd及びcdでの引張り強さは、ISO 520−3/2/500で測定して各々約40N/mm
2と25N/mm
2だった。md及びcdでの破断点伸びは、ISO 520−3/2/500で測定して各々約35%と40%だった。
【0044】
ポリプロピレン・フィルム20,32の粗い側は、ポリウレタン接着処理により繊維層26に接着剤で貼り合わせた。フィルム32の露出面は、ルーズな側を得るために、シリコーン剥離剤で処理した。フィルム20の露出面は処理せずに、プリプレグに接着するための密な側として使用した。結果として得られた多層支持体は厚さ150マイクロメートル、幅300mm、重量132(±3)gsmだった。
【0045】
プリプレグは、自動テープ敷設装置用のテープ製造の標準的処置に従って多層支持体に貼り付けした。プリプレグは、繊維強化材として一方向(UD)炭素繊維を含有し、未硬化樹脂母材として熱可塑性強化エポキシを含有していた。幾つかのプリプレグの変化形を作製し試験した。使用したエポキシ・プリプレグは、へクセル・コーポレーション(カリフォルニア州ダブリン)からM21Eの商標名で市販されている種類の典型的な宇宙航空分野の主要構造物用エポキシ/炭素繊維プリプレグだった。一方向炭素繊維は、またへクセル・コーポレーションからIMA GS又はIM7 GSの商標名で入手可能である。M21Eプリプレグは、エポキシ樹脂を34重量%含有し、繊維を268gsm含有していた。プリプレグの商標名は、ヘクスプライ(Hexply)M21E/34/268/IMA GS 12kである。
【0046】
多層支持体にプリプレグを貼り付けした後、結果として得られたテープを、従来式のテープ敷設装置で型にプリプレグを貼り付けするのに使用した。テープは、切断刃が支持体に切れ目を入れた時でも、引き裂き抵抗を含む満足な自動テープ敷設能力を示した。多層支持体の裏材料は、また他の望ましい特徴、例えば高温安定性、湿分安定性、示差剥離性、軽量等を備えていた。加えて、プリプレグ・テープの切れ目縁部は、綺麗で、標準プリプレグ・テープに通常見られる残片が無かった。このことは、裏材料の多層支持体により得られる品質の別の主要特徴である。なぜなら、今日、通常のプリプレグ・テープでは、この繊維の残片が、自動テープ敷設過程で複合部品に伝搬され、最終硬化積層構造物に許容不可能なレベルの汚染を生じさせるからである。
【0047】
ルーズな側の剥離力は、FINAT FTM 10試験法で測定して約0.1N/25mmだった。密な側の剥離力は11N/25mmを超えていたが、この値は、従来の紙支持体テープで観察される密な側の剥離力より有意に高い値である。このより高い剥離強さにより、プリプレグは、送出ヘッドに達するまで、確実にテープに付着したままとなる。加えて、例示テープの含湿量は、ASTM D644により測定して2.5%に過ぎない。この値は、従来の紙の支持体テープの場合に観察された含湿量より有意に低い値である。重要な点は、この値が、外側プラスチック・フィルムの性質による安定的レベルの含湿量である点であり、したがって、湿分に関連する問題点並びに冷凍/解凍サイクルに対して製品の保管品質が高められる。
【0048】
ルーズな側の動摩擦係数は、ASTM D1894により測定して0.17であることが判明した。密な側の摩擦係数も、同じくASTM D1894で測定して0.28であることが判明した。これらの摩擦係数は、従来の紙支持体から得られる摩擦係数と同等である。多層支持体は、md又はcdの双方で40N/mm
2を超える引張り強さを有し、ISO 527−3/2/500の方法で測定してmd及びcd双方とも破断点伸びが3%を超えた。引き裂き試験は、シンシナティ・バージョン6の自動テープ敷設装置で行った。支持体には、300mmの全幅にわたり30マイクロメートル(23%)深さの切れ目を入れた後、一方の縁部からテープ中央へ向かって50mmにわたり完全に切断した。支持体には、10%のヘッド速度で切断動作が行われた場合に自動テープ敷設装置を通過するさいに受ける標準張力を連続的に加えた。支持体は、手積み成形で製造を続ける間、破断しなかった。これに対して、標準紙テープの支持体は、そのような状況では破断することが予想される。
【0049】
以上、本発明の代表的な実施例を説明したが、当業者は、開示内容が代表例に過ぎず、開示の範囲内で他の種々の別形式、適応例、変更態様が、本発明の範囲内で可能なことに留意されたい。したがって、本発明は以上の既述には限定されることはなく、特許請求の範囲に記載によってのみ限定されるものである。