【実施例】
【0029】
(実施例1)
上記刃物の実施例につき、
図1〜
図28を用いて説明する。
本例の刃物1は、
図1〜
図6に示すごとく、刀身本体2に替刃3を着脱可能に装着してなる医療用メスである。
図11〜
図13に示すごとく、刀身本体2は、本体ブロック4と該本体ブロック4に対して刃物1の長手方向Yに進退可能に保持されたスライドブロック5とからなる。
【0030】
本体ブロック4は、
図14〜
図18に示すごとく、表側に開放されると共にスライドブロック5を長手方向Yに進退可能に収容する収容部45と、替刃3の裏面を支承する本体支承部41と、表面側から替刃3に係合する本体係合部42とを有する。
スライドブロック5は、
図19〜
図21に示すごとく、本体支承部41よりも後方において替刃3の裏面を支承する後方支承部51と、替刃3を後方へ引き込めるよう替刃3に係合するスライド係合部52と、後方支承部51よりも後方において替刃3の厚み方向Xに撓む可撓部53と、可撓部53の一部から高さ方向Zの双方に突出した翼部56とを有する。
【0031】
図10、
図18に示すごとく、本体ブロック4における収容部45の高さ方向Zの双方には、翼部56を表側から保持する表側保持部43が形成されている。また、
図7〜
図10に示すごとく、表側保持部43は、裏側へ向かって突出した凸状係止部430を備えている。
替刃3を刀身本体2に装着した装着状態Sにおいては、
図7に示すごとく、凸状係止部430によって翼部56が前方から係止されている。そして、装着状態Sからスライドブロック5の可撓部53を撓ませることによって翼部56を凸状係止部430から解除できるよう構成してある。
【0032】
なお、本明細書において、刃物1の長手方向Yにおいて、替刃3の先端が向く方向を「前」とし、その反対側を「後」として表す。また、厚み方向Xは、替刃3の厚み方向と一致する方向を意味し、替刃3が本体支承部41及び後方支承部51に支承される側を「裏」とし、その反対側を「表」として表す。また、長手方向Yと厚み方向Xとの双方に直交する方向を高さ方向Zとする。替刃3は、高さ方向Zの一方の辺に刃35を形成してなるが、高さ方向Zにおける刃35が形成された辺側の方向を「下方」とし、その反対側を「上方」として表す。
【0033】
替刃3は、
図22に示すごとく、厚み方向Xに貫通した開口部31を有する。本体ブロック4の本体係合部42は、
図23〜
図25に示すごとく、本体支承部41から厚み方向Xの表側へ突出し、装着状態Sにおいて開口部31に挿嵌されると共に開口部31の先端に当接するよう構成されている。また、スライド係合部52は、後方支承部51から厚み方向Xの表側に突出し、装着状態Sにおいて開口部31に挿嵌されると共に開口部31の後端に当接するよう構成してある。
【0034】
図22に示すごとく、替刃3の開口部31は、先端側に形成されると共に刃物1の長手方向Y及び厚み方向Xに直交する高さ方向Zの上下幅w1が比較的小さい先端側開口部32と、該先端側開口部32の後端側に連続形成されると共に該先端側開口部32よりも上下幅w2が大きい後端側開口部33とからなる。
【0035】
図23に示すごとく、本体係合部42は、高さ方向Zの上下幅が後端側開口部33よりも小さく先端側開口部32よりも大きい頭部421を有し、頭部421と本体支承部41との間において、高さ方向Zの両側から切り込まれた切込溝部422を設けてなる。切込溝部422に先端側開口部32の外縁において替刃3が係合する。
【0036】
また、
図22に示すごとく、先端側開口部32における先端側には、高さ方向Zの上下幅をより小さくした小幅部分321が形成されている。この小幅部分321に本体ブロック4の本体係合部42の先端部が嵌入することにより、安定した係合状態を得ることができる。
また、本体支承部41は、後端側開口部33よりも高さ方向Zの上下幅が広い。
替刃3は厚み方向Xに可撓性を有する。そして、
図25に示すごとく、装着状態Sにおいて、替刃3は、裏側に凸の状態で厚み方向Xに反るように弾性変形している。
【0037】
装着状態Sにあるとき、後方支承部51は、本体支承部41よりも、後方係合部52の突出方向に突出している。
図24に示すごとく、スライドブロック5は、替刃3の後端34に対して、長手方向Yに対向する後方対向面54を有する。そして、
図26に示すごとく、スライドブロック5を本体ブロック4に対して前進させたとき、後方対向面54が替刃3の後端34に当接して替刃3を前方へ押し出す。
図24に示すごとく、替刃3の後端34及び後方対向面54は、厚み方向Xから見たとき、長手方向Yに対して斜めに形成されている。具体的には、替刃3の後端34は、斜め上方を向くように傾斜している。
【0038】
図14〜
図17に示すごとく、刀身本体2における本体ブロック4は、長手方向Yの先端部分に、本体支承部41及び本体係合部42を設け、後端部分に把持部44を有する。本体ブロック4は、内側にスライドブロック5をスライド可能に収容する収容部45を設けてなる。収容部45は、
図18に示すごとく、厚み方向Xの裏側に設けた収容底部451と、高さ方向Zの上下にそれぞれ設けた収容壁部452との内側に形成される凹状の空間として形成されている。そして、一対の収容壁部452の一部に、表側保持部43が形成されている。表側保持部43は、収容壁部452の一部を収容部45側から切り欠いて形成された翼部配置部453の表側に形成されている。つまり、表側保持部43は、翼部配置部453を表側から覆うように形成されている。
【0039】
収容壁部452における表側保持部43の後端側には、高さ方向Zに切り欠かれた翼部挿入部454が隣接している。翼部挿入部454は、一対の収容壁部452にそれぞれ一つずつ形成されている。スライドブロック5は、一対の翼部56を一対の翼部挿入部454に位置合わせした状態で、表側から本体ブロック4の収容部45へ挿入配置し、また、収容部45から取り外すことができるよう構成されている。
【0040】
図7〜
図9に示すごとく、表側保持部43は、その裏側面に、翼部配置部453に向かって突出した凸状係止部430を有する。凸状係止部430の後端部432は、翼部挿入部454の前端よりも前方に配置され、凸状係止部430の前端部431は、翼部配置部453の前端よりも後方に配置されている。
【0041】
凸状係止部430の前端部431は、前端側へ向かうほど突出量が小さくなるテーパ部を有する。一方、凸状係止部430の後端部432は、長手方向Yに直交する端面を有する。
図7に示すごとく、装着状態Sにおいて、スライドブロック5の翼部56は、凸状係止部430の後端部432の端面に当接するようにして係止される。また、
図9に示すごとく、刃替状態Tにおいては、スライドブロック5の翼部56は、凸状係止部430の前端部431の前側に配置される。より正確には、翼部56は、その後方の角部を凸状係止部430の前端部431におけるテーパ部に当接させている。そして、装着状態Sと刃替状態Tとの間でスライドブロック5を移動させる際には、スライドブロック5の可撓部53を撓ませて、一対の翼部56が凸状係止部430をその裏面側から乗り越えられるようにする。
【0042】
図19〜
図21に示すごとく、スライドブロック5は、長手方向Yの先端部分に、後方支承部51とスライド係合部52とを設け、後端部分に、表側へ立ちあがると共に後方へ延びる操作部55を有する。操作部55の表面には、使用者(オペレータ)の指との間の滑り止めのための凹凸部が形成されている。
図6に示すごとく、操作部55は、本体ブロック4における把持部44の一部であって収容部43の後端に隣接する部分に設けた凹状載置面441においてスライド可能に載置される。
【0043】
また、スライドブロック5は、
図19に示すごとく、翼部56よりも前方において、中央片503と、該中央片503に対して高さ方向Zの双方に配される一対の分岐片504とに分岐している。
中央片503は、後方支承部51及びスライド係合部52を備えている。つまり、分岐部分から厚み方向Xの裏面側へ後退した位置において前方へ延びるように後方支承部51が形成され、該後方支承部51の前端部に厚み方向Xの表面側へ突出するようにスライド係合部52が形成されている。
一対の分岐片504は、中央片503に対して高さ方向Zの双方に配され、前方へ延びている。そして、
図24に示すごとく、この一対の分岐片504の前端に、替刃3の後端34に対して対向する後方対向面54が形成されている。
【0044】
一対の分岐片504のうち、高さ方向Zの上側の分岐片504は、下側の分岐片504よりも長い。そして、これらにそれぞれ設けた後方対向面54は、略同一平面上に形成されている。また、後方対向面54は、長手方向Y及び高さ方向Zに対して斜めであって、厚み方向Xに平行に形成されている。つまり、一対の後方対向面54は、替刃3における斜めの後端34に対して略平行となるように形成されている。
【0045】
また、分岐片504の後方対向面54は、スライドブロック5の端面として形成されている。つまり、スライドブロック5を打ち抜き又は切削加工する際に、その加工端面として、後方対向面54が形成される。
図26に示すごとく、スライドブロック5を本体ブロック4に対して前進させたとき、一対の後方対向面54が替刃3の後端34を押すことにより、替刃3を前方へ押し出すよう構成されている。
【0046】
また、スライドブロック5は、本体ブロック4の収容部45に収容された状態において、可撓部53が裏側に凸の状態で厚み方向Xに撓むことができるよう構成されている必要がある。そのため、
図6、
図7、
図10に示すごとく、スライドブロック5を収容部45に収容配置した状態において、スライドブロック5の可撓部53の裏面と、本体ブロック4の収容部45の収容底部451との間には、隙間が形成されている。そして、スライドブロック5は、先端部付近及び後端部付近の裏面において、本体ブロック4と当接している。具体的には、スライドブロック5の先端部付近における中央片503の裏面と、後端部における操作部55の裏面とが、本体ブロック4に当接し、その間の部分は、本体ブロック4との間に隙間が形成されている。
換言すると、本例においては、中央片503と操作部55との間の部分が可撓部53となると言える。
【0047】
また、
図2、
図14、
図17に示すごとく、本体ブロック4の表側面には、収容部45に対して高さ方向Zの上下にそれぞれ隣接する表面凹部47が形成されている。表面凹部47は、
収容部45に収容されたスライドブロック5の可撓部53の一部に隣接して形成されている。これにより、一対の表面凹部47の間における収容部45の開口部が広がり、この部分において使用者が指等によってスライドブロック5の可撓部53を押圧しやすくしている。
【0048】
次に、本例の刃物1における替刃3の装着方法及び取外し方法につき、説明する。
まず、
図28に示すごとく、スライドブロック5を前進させて、刀身本体2を刃替状態Tとする。この状態において、本体ブロック4の本体係合部42とスライドブロック5のスライド係合部52とが接合する。この連結された本体係合部42とスライド係合部52とを、替刃3の後端側開口部33に通すようにして、
図26に示すごとく、替刃3を刀身本体2の先端部に配置する。
【0049】
このとき、替刃3の裏面を、本体ブロック4の本体支承部41とスライドブロック5の後方支承部51とに接触させる。
また、替刃3の後端34は、スライドブロック5の後方対向面54に対向配置される。
【0050】
次いで、スライドブロック5を本体ブロック4に対して後退させる。このとき、
図7〜
図9に示すごとく、スライドブロック5の一対の翼部56は、本体ブロック4の一対の凸状係止部430の前端部431からその裏面を後方へ向かって摺動する。つまり、翼部56は、凸状係止部430の前端部431におけるテーパ部に沿って凸状係止部430の裏面に移動する。これに伴い、スライドブロック5が可撓部53において、裏面側に凸の状態で撓む。スライドブロック5を後退させる際に、可撓部53を裏面側へ押し込むことによって撓ませることもできるが、上記のごとく、凸状係止部430の前端部431にテーパ部が形成されていることにより、スライドブロック5を後方へ移動させる際、スライドブロック5が自然に撓むため、予め撓ませる必要は特にない。
【0051】
このようにスライドブロック5を後退させることにより、
図24に示すごとく、スライド係合部52が、後端側開口部33の後端において替刃3を後方へ引っ張る。そして、替刃3が後方へ向かって移動するにつれて、本体係合部42が替刃3の先端側開口部32に向って相対的に移動する。これにより、替刃3は、
図23に示すごとく、先端側開口部32の上下部分において、本体係合部42に設けた切込溝部422に係合される。そして、スライドブロック5を本体ブロック4に対してさらに後方へ引き込むことにより、
図24、
図25に示すごとく、本体係合部42の先端が替刃3の先端側開口部32の小幅部分321に嵌入すると共にその先端に当接する。
【0052】
そして、スライドブロック5の翼部56は、
図7〜
図9に示すごとく、凸状係止部430の裏面を後方へ摺動して、凸状係止部430の後端部432に達する。凸状係止部430の裏面を翼部56が摺動している間は、少なくともスライドブロック5の可撓部53は、裏側へ凸の状態で撓むように弾性変形しており、翼部56は表側へ向かって付勢された状態にある。それゆえ、スライドブロック5の翼部56が凸状係止部430の後端部432に達すると、翼部56は、その復元力によって表側へ向かって自然に移動し、凸状係止部430の後端部432に係止される。つまり、翼部56は、長手方向Yにおいて、前方への移動が規制される。
また、翼部56は、少なくともその一部が、凸状係止部430の後方において表側保持部43によって表側から保持された状態となる。
【0053】
このようにして、刀身本体2に替刃3が装着された装着状態Sが実現する。
この装着状態Sにおいては、
図25に示すごとく、替刃3が裏側に凸の状態となるように湾曲した状態で弾性変形している。すなわち、装着状態Sにおいては、本体ブロック4における本体支承部41よりもスライドブロック5における後方支承部51が表側へ突出している。なお、このとき、スライドブロック5は特に撓んだ状態にはない。
【0054】
また、替刃3を刀身本体2から外すに当たっては、上記装着状態Sから、スライドブロック5を本体ブロック4に対して前進させる。このとき、スライドブロック5を、可撓部53において裏側へ向かって押し込んで撓ませる。これにより、一対の翼部56が本体ブロック4の凸状係止部430よりも裏側へ変位し、翼部56と凸状係止部430との係合状態が外れる。この状態で、スライドブロック5を本体ブロック4に対して前方へ押し込むことにより、
図7〜
図9に示すごとく、翼部56が凸状係止部430の裏面を摺動しながら前方へ移動する。
【0055】
そして、スライドブロック5を前進させるに伴い、スライドブロック5に設けた後方対向面54が替刃3の後端34を前方へ押すことにより、
図26に示すごとく、替刃3が前方へ移動する。これによって、本体ブロック4における本体係合部42が替刃3の開口部31内において、相対的に後方へ移動し、先端側開口部32から後端側開口部33へ移る。そして、スライドブロック5を、スライド係合部52が本体係合部42に当接するまで前進させると、本体係合部42とスライド係合部52との双方が、後端側開口部33に配置される。この状態において、替刃3が表側へ外れることとなる。
なお、替刃3、本体ブロック4、及びスライドブロック5は、いずれもステンレス鋼等の金属製である。
【0056】
次に、本例の作用効果につき説明する。
上記刃物1において、刀身本体2に替刃3を装着するに当たっては、スライドブロック5を前進させて替刃3を着脱可能な刃替状態Tとして、替刃3を本体係合部42及びスライド係合部52に仮係合する。そして、スライドブロック5を後退させることによって、本体係合部42とスライド係合部52とが替刃3を長手方向の両側へ引っ張るようにする。これにより、替刃3を刀身本体2に装着した装着状態Sとすることができる。
また、上記と反対に、装着状態Sから、スライドブロック5を強制的に前進させて、刃替状態Tとすることによって、容易に替刃3のみの交換が可能となる。
【0057】
そして、装着状態Sにおいて、
図7に示すごとく、凸状係止部430によって翼部56が前方から係止される。これによって、スライドブロック5が前進することを規制し、装着状態Sが維持される。また、装着状態Sからスライドブロック5の可撓部53を撓ませることによって翼部56を凸状係止部430から解除できるよう構成してある。
【0058】
すなわち、刃物1は、スライドブロック5の可撓部53の弾性変形を利用することにより、装着状態Sにおけるスライドブロック5の固定と、装着状態Sから刃替状態Tへの切り替えとを容易に実現することができる。それゆえ、装着状態Sにおいてスライドブロック5が前進することを規制するためにあえて新たな部材を設ける必要がないし、装着状態Sを解除するための構成も極めて単純にすることができる。
そのため、刃物1は、部品点数を低減することができると共に、その構成を簡単にすることができる。
【0059】
また、凸状係止部430は、前端部に431にテーパ部を有する。これにより、刃替状態Tから装着状態Sへスライドブロック5をスライドさせる際に、翼部56をテーパ部に沿って凸状係止部430の裏面に移動させることができる。そして、そのままスライドブロック5を後方へ移動させることにより、翼部56を凸状係止部430の後端部432に容易に係止させることができる。それゆえ、刃替状態Tから装着状態Sへのスライドブロック5の移動を円滑に行うことができる。
【0060】
また、替刃3は、厚み方向Xに可撓性を有し、装着状態Sにおいて、裏側に凸の状態で厚み方向に反るように弾性変形している。これにより、替刃3が、自身の弾性力(復元力)によって、本体支承部41と本体係合部42と後方支承部51とに押し付けられることとなる。これにより、替刃3を刀身本体2に、より安定して固定することができる。
【0061】
また、装着状態Sにあるとき、後方支承部51は、本体支承部41よりも、厚み方向Xの表側に突出している。これにより、本体係合部42に係合されると共に本体支承部41と後方支承部51とによって裏面から支承された替刃3が、本体支承部41及び後方支承部51に向って凸となるように反りやすい。これにより、替刃3の弾性力によって、替刃3を刀身本体2に、確実に固定することができる。
【0062】
また、装着状態Sにおいて、本体係合部42は替刃3の開口部31に挿嵌されると共に開口部3の先端に当接し、スライド係合部52は替刃3の開口部31に挿嵌されると共に開口部31の後端に当接する。これにより、本体係合部42とスライド係合部52とによって、替刃3を容易かつ確実に係合することができ、装着状態Sを容易に形成することができる。
【0063】
また、スライドブロック5は後方対向面54を有し、スライドブロック5を本体ブロック4に対して前進させたとき、後方対向面54が替刃3の後端34に当接して替刃3を前方へ押し出すよう構成してある。これにより、スライドブロック5を前進させることによって、替刃3を前進させて本体係合部42との係合を容易に解くことができる。これにより、一層、替刃の交換を容易にすることができる。
【0064】
また、スライドブロック5は、中央片503と一対の分岐片504とに分岐し、一対の分岐片504の前端に後方対向面54が形成されている。これにより、後方対向面54を替刃3の後端34に安定して当接させやすくなる。すなわち、一対の分岐片504は、中央片503と異なる部分に形成されるため、分岐片504の前端は端面として加工することが可能である。そのため、この分岐片504の前端に後方対向面54を形成することにより、後方対向面54を替刃3の厚み方向Xに平行な面とすることができる。その結果、後方対向面54を替刃3の後端34に対して安定して当接させることができ、スライドブロック5を本体ブロック4に対して前進させたとき、替刃3を前方へ安定して押し出すことができる。
【0065】
以上のごとく、本例によれば、替刃のみの交換を可能としつつ、部品点数が少なく、かつ簡単な構成の刃物を提供することができる。
【0066】
(実施例2)
本例は、
図29〜
図41に示すごとく、本体ブロック4に対して長手方向Yにスライド可能に取り付けられたスライドカバー6を備えた刃物1の例である。なお、スライドカバー6以外の構成については、実施例1と同様であるため、本例においても、適宜
図1〜
図28をも利用して説明する。
スライドカバー6は、長手方向の双方に開口した筒状を有する。なお、スライドカバー6は、ステンレス鋼等の金属からなり、一枚の金属板を切り曲げすることによって形成されている。
【0067】
スライドカバー6は、替刃3を覆う前方位置CF(
図29〜
図31)と替刃3を露出させる後方位置CR(
図32〜
図36)とにおいてロックできるよう構成されている。
スライドカバー6は、
図39に示すごとく、厚み方向Xの内側に向って形成された係合爪部61を有し、該係合爪部61は、スライドカバー6のカバー本体60に対して高さ方向Zに弾性的に変位可能に構成されている。係合爪部61は、スライドカバー6の裏側から表側(内側)へ向かって突出している。
【0068】
図16、
図41に示すごとく、本体ブロック4は、長手方向Yに形成されたスライド溝部48を裏面に備えている。スライド溝部48における前方と後方とには、それぞれ係合爪部61を前後方向から保持する前方保持部481と後方保持部482とが形成されている。
【0069】
スライド溝部48には、係合爪部61がスライド可能に配置される。そして、前方保持部481又は後方保持部482に係合爪部61を係合させることによって、それぞれ前方位置CF又は後方位置CRにおいて、スライドカバー6がロックされる。
スライド溝部48は、前方保持部481から前方へ伸びると共に本体ブロック4の前方へ開放された前方溝部483と、前方保持部481から後方へ伸びると共に後方保持部482と連結された後方溝部484とを有する。
【0070】
すなわち、スライド溝部48は、前方から順に、前方溝部483、前方保持部481、後方溝部484、後方保持部482によって構成されている。これらは、長手方向Yに略一直線状に連続している。ただし、前方溝部483と前方保持部481との間、前方保持部481と後方溝部484との間、及び、後方溝部484と後方保持部482の間は、高さ方向Zのいずれかからくびれた連通部485、486、487によって連通している。連通部486及び連通部487は、高さ方向Zの上(
図41においては下)からくびれている。一方、連通部485は、高さ方向Zの下(
図41においては上)からくびれている。
つまり、前方保持部481と前方溝部483との連通部485と、前方保持部481と後方溝部484との連通部486とは、高さ方向Zにおいて互いに反対側に形成されている。
【0071】
図37〜
図39に示すごとく、スライドカバー6は、高さ方向Zの両側に、高さ方向Zに弾性変形可能な一対のバネアーム631を備えている。一対のバネアーム631は、カバー本体60との連続部から前方へ伸びると共に先端部において互いに連結部632によって連結されている。この連結部632に係合爪部61が形成されている。具体的には、係合爪部61は、連結部632から後方に伸びた延設部633の先端部分を、長手方向Yを軸に約90°表側へ向かって屈曲することによって形成されている。
【0072】
また、
図14に示すごとく、本体ブロック4の上面の一部であって、スライドカバー6が後方位置CRに位置するときに上側のバネアーム631が対向配置される部分には、下方へ向かって凹んだくびれ部493が形成されている。これにより、後述するように、後方位置CRにおいて、上側のバネアーム631が下方へ弾性変形することを許容している。また、本体ブロック4の上面の一部であって、スライドカバー6が前方位置CFに位置するときに上側のバネアーム631が対向配置される部分には、前方へ行くにしたがって下方へ凹んだ上側傾斜部494が形成されている。さらに、本体ブロック4の下面の一部であって、スライドカバー6が前方位置CFに位置するときに下側のバネアーム631が対向配置される部分には、前方へ行くほど上方へ向かって凹んだ下側傾斜部495が形成されている。これら上側傾斜部494及び下側傾斜部495の存在により、後述するように、前方位置CFにおいて、上下のバネアーム631が下方又は上方へ弾性変形することを許容している。
【0073】
また、
図34、
図37、
図38に示すごとく、スライドカバー6は、後方位置CRに配されたときにスライドブロック5における可撓部53に対向する位置に、厚み方向Xに弾性変形可能な表側押圧部64を設けてなる。
表側押圧部64は、スライドカバー6の表側に形成されており、カバー本体60との連続部から後方に伸び、その後端部が厚み方向Xに大きく変位できるよう構成されている。表側押圧部64は、
図40に示すごとく、厚み方向Xの内側(裏側)に向かって湾曲した湾曲部641を備え、該湾曲部641においてスライドブロック5の可撓部53に当接する。
【0074】
また、
図40に示すごとく、スライドカバー6は、上記係合爪部61以外にも、裏側から内側へ向かって立設した2つの摺動爪部661、662を有する。摺動爪部661、662は、
図16、
図41に示すごとく、本体ブロック4の裏面に形成された2つの摺動溝部491、492にそれぞれ配置される。摺動溝部491、492は、本体ブロック4の裏面において、長手方向Yに平行に形成され、前方に開放されている。そして、スライドカバー6を本体ブロック4に対して前後にスライドさせるとき、摺動爪部661、662は、それぞれ摺動溝部491、492内を前後に摺動する。
【0075】
また、
図39に示すごとく、スライドカバー6の裏側には、厚み方向Xに弾性変形可能な押さえバネ部65が形成されている。この押さえバネ部65は、本体ブロック4の裏面に弾性的に当接し、本体ブロック4に対するスライドカバー6の厚み方向Xのガタツキを防いでいる。
【0076】
また、スライドカバー6は、
図37〜
図39に示すごとく、表側と裏側との双方に、スライドカバー6の内側に貫通する複数の窓部62が形成されている。
図29〜
図31に示すごとく、スライドカバー6を前方位置CFに配置して、替刃3を覆う状態としたときにも、上記窓部62の存在によって、窓部62から替刃3を視認することができる。また、刃物1を消毒する場合にも、窓部62を消毒液が通過することができるため、替刃3や刀身本体2の先端部分の消毒を効果的に行うことができる。
【0077】
一方、刃物1を使用する際には、
図32〜
図36に示すごとく、スライドカバー6を後方位置CRにおいてロックする。これにより、替刃3がスライドカバー6から露出する。
このとき、スライドカバー6の係合爪部61は、本体ブロック4のスライド溝部48の後端にある後方保持部482に係合されている。これにより、後方位置CRにあるスライドカバー6は、本体ブロック4に対して、前方へ移動することが規制されている。
【0078】
次に、スライドカバー6を後方位置CRから前方位置CFへスライドさせるにあたっては、一対のバネアーム631のうちの上側のバネアーム631を下方へ押下することにより、係合爪部61を、高さ方向Zの下方(
図41の上方)へ下げる。これにより、係合爪部61は、後方保持部482から外れ、連通部487から前方へ移動することが許容される。そして、スライドカバー6を前方へスライドさせる。このとき、係合爪部61は、スライド溝部48の後方溝部484を通って、前方保持部481に到達する。係合爪部61は、連通部486から前方保持部481に配置される。この状態において、上記一対のバネアーム631は高さ方向Zに付勢されていない自由状態となる。そして、前方保持部481において、高さ方向Zの略中心部分に、係合爪部61が位置する。この位置は、前方保持部481の前側の連通部485よりも下方であると共に、前方保持部481の後側の連通部486よりも上方である。つまり、係合爪部61は、前方保持部481において、前後の移動が規制された状態となる。
このようにして、スライドカバー6は、前方位置CFにおいてロックされることとなる。
【0079】
そして、スライドカバー6を本体ブロック4から外す際には、係合爪部61を前方保持部481から前方へ外し、前方溝部483を通じて前方へ移動させる。そのために、下側のバネアーム631を上方(
図41の下方)へ押し上げることによって、前方保持部481に配置されていた係合爪部61を、前方保持部481から外して、連通部485から前方へ移動することを許容する。この状態で、スライドカバー6を前方へスライドさせ、係合爪部61を前方溝部483を通じて本体ブロック4から前方へ外す。これにより、スライドカバー6を本体ブロック4(刀身本体2)から外すことができる。
【0080】
本例の場合には、装着状態Sにおいて、スライドカバー6を前方位置CFにロックすることによって、スライドカバー6が替刃3を覆うため、使用者の安全を確保すると共に、替刃3の破損を防ぐことができる。また、刃物1の使用時においては、スライドカバー6を後方位置CRにロックすることによって、円滑な刃物1の使用を確保することができる。
【0081】
また、スライドカバー6の係合爪部61が本体ブロック4のスライド溝部48にスライド可能に配置されると共に、前方保持部481又は後方保持部482に係合爪部61を係合させることによって、それぞれ前方位置CF又は後方位置CRにおいて、スライドカバー6がロックされるよう構成してある。これにより、スライドカバー6を、前方位置CFと後方位置CRとの間で、容易に移動させると共にロックすることができる。
【0082】
また、スライド溝部48は、本体ブロック4の裏面に形成されているため、スライド溝部48を、収容部45の開口側と反対側に開口させることとなり、その配置の自由度を向上させることができる。
【0083】
また、スライド溝部48は、前方溝部483と後方溝部484とを有し、前方保持部481と前方溝部483との連通部485と、前方保持部481と後方溝部484との連通部486とは、高さ方向Zにおいて互いに反対側に形成されている。これにより、スライドカバー6を、刀身本体2に対して容易に着脱することができると共に、前方位置CFにおいて確実に固定することができる。すなわち、前方溝部483を設けることにより、前方溝部483に係合爪部61を通過させながら、スライドカバー6を刀身本体2に対して、その長手方向Yから容易に着脱することができる。また、前方保持部481と前方溝部483との連通部485と、前方保持部481と後方溝部484との連通部486とが高さ方向Zにおいて互いに反対側に形成されていることにより、前方保持部481に係合爪部61を容易かつ確実に配置しやすくすることができる。例えば、後方位置CRから前方位置CFへスライドカバー6をスライドさせて係合爪部61を前方保持部481に配置しようとする際に、その勢いで係合爪部61が前方保持部481を通過することを防ぐことができる。
【0084】
また、スライドカバー6は、一対のバネアーム631を備え、該一対のバネアーム631は先端部において互いに連結部632によって連結されており、該連結部632に係合爪部61が形成されている。これにより、バネアーム631の弾性変形によって、係合爪部61を高さ方向Zに容易に変位させることができる。
【0085】
また、スライドカバー6は、表側押圧部64を設けてなる。これにより、スライドカバー6を後方位置CRに配置したときに、表側押圧部64を介してスライドブロック5の可撓部53を厚み方向Xに押すことができる。これにより、スライドブロック5を撓ませて装着状態Sを解除する作業を容易に行うことができる。
その他、実施例1と同様の作用効果を有する。
【0086】
なお、本例の刃物1において、スライドカバー6に設けた表側押圧部64の代わりに、スライドカバー6に表側開口部を設けてもよい(図示略)。すなわち、スライドカバー6は、後方位置CRに配されたときにスライドブロック5における可撓部53に対向する位置に、該可撓部53を露出させる表側開口部64を設けてなるものであってもよい。この場合には、スライドカバー6を後方位置CRに配置したときに、表側開口部64から露出したスライドブロック6の可撓部53を厚み方向Xに押すことができる。これによっても、スライドブロック6を撓ませて装着状態Sを解除する作業を容易に行うことができる。
【0087】
(実施例3)
本例は、
図42〜
図50に示すごとく、本体ブロック4を略円筒形状とした刃物の例である。
本体ブロック4は、
図46に示すごとく、本体支承部41及び本体係合部42を設けた先端部付近を除く部分が長手方向Yを軸とした略円筒形状を有する。そして、この略円筒形状の筒状部40は長手方向Yに貫通しており、その内側空間が、スライドブロック5を収容する収容部45となっている。
【0088】
また、筒状部40は、高さ方向Zの下方に、長手方向Yに沿って形成された下方開口部401を有する。
図42、
図44に示すごとく、収容部45に配されたスライドブロック5は、下方開口部401に翼部56を配置している。翼部56は、下方開口部401から外方へ突出している。
そして、
図47に示すごとく、下方開口部401における厚み方向Xの表側に、表側保持部43が形成され、そこから裏側へ凸状係止部430が突出している。また、本例においては、凸状係止部430の後方においても、表側保持部43から裏側へ突出した後方係止部433が形成されている。
また、下方開口部401の周囲には、内側へ凹んだ曲面状の下方凹部402が形成されている。
また、
図46に示すごとく、筒状部40の後端部には、表側に切り欠かれた後端切欠部403が形成されている。後端切欠部403には、スライドブロック5の後端に設けた操作部55が配される。
【0089】
スライドブロック5は、
図48〜
図50に示すごとく、翼部56を高さ方向Zの下方に突出形成してなり、実施例1のように上方へ突出した翼部は備えていない。また、スライドブロック5の後端には、表側へ折り返された操作部55が形成されている。スライドブロック5における他の構成は、実施例1におけるものと同様である。
【0090】
刀身本体2に替刃3を装着した装着状態Sにおいては、スライドブロック5の先端部付近における中央片503の裏面と、後端部における操作部55の裏面とが、本体ブロック4に当接し、その間の部分は、本体ブロック4との間に隙間が形成されている。操作部55は、本体ブロック4における筒状部40の表側面に当接している。
【0091】
図44、
図45に示すごとく、刃替状態Tにおいては、本体ブロック4に対してスライドブロック5が前進した状態にあり、スライドブロック5の翼部56は、下方開口部401の前端部に位置している。この状態において、本体ブロック4の本体係合部42とスライドブロック5のスライド係合部52とを替刃3の開口部31に貫通させることにより、替刃3を刀身本体2に仮係合する。
【0092】
次いで、スライドブロック5を本体ブロック4に対して後退させる。このとき、
図44、
図42に示すごとく、スライドブロック5の翼部56は、本体ブロック4の凸状係止部430の前端部431からその裏面を後方へ向かって摺動する。つまり、翼部56は、凸状係止部430の前端部431に設けられたテーパ部に沿って凸状係止部430の裏面に移動する。これに伴い、スライドブロック5が可撓部53において、裏面側に凸の状態で撓む。
【0093】
このようにスライドブロック5を後退させることにより、スライド係合部52が、後端側開口部33の後端において替刃3を後方へ引っ張る。これにより、替刃3は、
図42、
図43に示すごとく、刀身本体2に装着される。
【0094】
そして、スライドブロック5の翼部56は、凸状係止部430の裏面を後方へ摺動して、凸状係止部430の後端部432に達する。凸状係止部430の裏面を翼部56が摺動している間は、少なくともスライドブロック5の可撓部53は、裏側へ凸の状態で撓むように弾性変形している。それゆえ、スライドブロック5の翼部56が凸状係止部430の後端部432に達すると、翼部56は、その復元力によって表側へ向かって自然に移動し、凸状係止部430の後端部432に係止される。
また、翼部56は、凸状係止部430の後方において表側保持部43によって表側から保持された状態となる。
このようにして、刀身本体2に替刃3が装着された装着状態Sが実現する(
図42、
図43)。
この装着状態Sにおいて、スライドブロック5は特に撓んだ状態にはない。
【0095】
また、替刃3を刀身本体2から外すに当たっては、上記装着状態Sから、スライドブロック5を本体ブロック4に対して前進させる。このとき、スライドブロック5を、可撓部53において裏側へ向かって押し込んで撓ませる。つまり、本体ブロック4の下面における下方開口部401から突出した翼部56を裏面側へ押し込む。具体的には、例えば使用者の指や爪で翼部56を裏側へ向かって押し込む。これに伴い、スライドブロック5が可撓部53において撓む。そして、翼部56が本体ブロック4の凸状係止部430よりも裏側へ変位し、翼部56と凸状係止部430との係合状態が外れる。この状態で、スライドブロック5を本体ブロック4に対して前方へ押し込むことにより、翼部56が凸状係止部430の裏面を摺動しながら前方へ移動する。
【0096】
そして、スライドブロック5を前進させるに伴い、スライドブロック5に設けた後方対向面54が替刃3の後端34を前方へ押すことにより、替刃3が前方へ移動する。これによって、本体ブロック4における本体係合部42が替刃3の開口部31内において、相対的に後方へ移動し、先端側開口部32から後端側開口部33へ移る。そして、スライドブロック5を、スライド係合部52が本体係合部42に当接するまで前進させると、本体係合部42とスライド係合部52との双方が、後端側開口部33に配置される。この状態において、替刃3が表側へ外れることとなる。
その他は、実施例1と同様である。
本例の場合にも、実施例1と同様の作用効果を得ることができる。