特許第5750167号(P5750167)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5750167端末間の体感品質を測定するためのオーディオフィンガープリントの差分
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5750167
(24)【登録日】2015年5月22日
(45)【発行日】2015年7月15日
(54)【発明の名称】端末間の体感品質を測定するためのオーディオフィンガープリントの差分
(51)【国際特許分類】
   H04M 3/00 20060101AFI20150625BHJP
   H04W 88/02 20090101ALI20150625BHJP
   H04M 1/24 20060101ALI20150625BHJP
【FI】
   H04M3/00 B
   H04W88/02 151
   H04W88/02 120
   H04M1/24 G
【請求項の数】20
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2013-541970(P2013-541970)
(86)(22)【出願日】2010年12月7日
(65)【公表番号】特表2014-505393(P2014-505393A)
(43)【公表日】2014年2月27日
(86)【国際出願番号】US2010059300
(87)【国際公開番号】WO2012078142
(87)【国際公開日】20120614
【審査請求日】2013年5月31日
(73)【特許権者】
【識別番号】509348786
【氏名又は名称】エンパイア テクノロジー ディベロップメント エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109586
【弁理士】
【氏名又は名称】土屋 徹雄
(72)【発明者】
【氏名】クルグリック,エゼキエル
【審査官】 山田 倍司
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2010/086020(WO,A1)
【文献】 特表2008−511844(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/088431(WO,A1)
【文献】 特表2008−547145(JP,A)
【文献】 特開2007−179540(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/24− 7/26
H04M 1/00
1/24− 3/00
3/16− 3/20
3/38− 3/58
7/00− 7/16
11/00−11/10
99/00
H04W 4/00−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モバイルの体感品質を判定する方法であって、
デジタルオーディオ信号から生成された第1のオーディオフィンガープリントを受け取ることと、
前記第1のオーディオフィンガープリントと、前記デジタルオーディオ信号から生成された第2のオーディオフィンガープリントとの比較に少なくとも部分的に基づいて体感品質(QoE)の計量値を求めることと
を含み、前記第2のオーディオフィンガープリントは、前記デジタルオーディオ信号の受信側で生成されたものである、方法。
【請求項2】
前記デジタルオーディオ信号はヴォイス・オーバー・アイピー(VoIP)信号を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1のオーディオフィンガープリントは前記デジタルオーディオ信号の送信元で生成されたものである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記QoEの計量値を求めることは、第3のオーディオフィンガープリントと、前記第1のオーディオフィンガープリントおよび前記第2のオーディオフィンガープリントの少なくとも一方との比較に少なくとも部分的に基づいて前記QoEの計量値を求めることを含み、前記第3のオーディオフィンガープリントは、前記デジタルオーディオ信号の前記受信側に位置する少なくとも1つのマイクロフォンで取り込まれた音声に少なくとも部分的に応じて、前記デジタルオーディオ信号の前記受信側で生成されたものである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記デジタルオーディオ信号の前記送信元は第1の携帯電話ハンドセットを含み、前記デジタルオーディオ信号の前記受信側は第2の携帯電話ハンドセットを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記第1のオーディオフィンガープリントは第1のネットワークノードで生成されたものであり、前記デジタルオーディオ信号の前記受信側は第2のネットワークノードを含み、前記第2のオーディオフィンガープリントは前記第2のネットワークノードで生成されたものである、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記第1のネットワークノードおよび/または第2のネットワークノードの少なくとも一方がサーバを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記第1のオーディオフィンガープリントと第2のオーディオフィンガープリントとの比較に少なくとも部分的に基づいてQoEの計量値を求めることは、前記第1のオーディオフィンガープリントの知覚的特性と、前記第2のオーディオフィンガープリントの知覚的特性との比較に少なくとも部分的に基づいて前記QoEの計量値を求めることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
知覚的特性は、平均ゼロ交差率、推定テンポ、平均スペクトル、スペクトルの平坦度、1つまたは複数のスペクトル帯域内で顕著な音、または帯域幅の少なくとも1つを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
命令が記憶されたコンピュータプログラム製品を含む物品であって、前記命令が実行されると、結果として、
デジタルオーディオ信号から生成された第1のオーディオフィンガープリントを受け取り、
前記第1のオーディオフィンガープリントと、前記デジタルオーディオ信号から生成された第2のオーディオフィンガープリントとの比較に少なくとも部分的に基づいて体感品質(QoE)の計量値を求め、前記第2のオーディオフィンガープリントは、前記デジタルオーディオ信号の受信側で生成されたものである、
物品。
【請求項11】
前記デジタルオーディオ信号はヴォイス・オーバー・アイピー(VoIP)信号を含む、請求項10に記載の物品。
【請求項12】
前記QoEの計量値を求めることは、第3のオーディオフィンガープリントと、前記第1のオーディオフィンガープリントおよび前記第2のオーディオフィンガープリントの少なくとも一方との比較に少なくとも部分的に基づいて前記QoEの計量値を求めることを含み、前記第3のオーディオフィンガープリントは、前記デジタルオーディオ信号の前記受信側に位置する少なくとも1つのマイクロフォンで取り込まれた音声に少なくとも部分的に応じて、前記デジタルオーディオ信号の前記受信側で生成されたものである、請求項10に記載の物品。
【請求項13】
前記デジタルオーディオ信号の前記送信元は第1の携帯電話ハンドセットを含み、前記デジタルオーディオ信号の前記受信側は第2の携帯電話ハンドセットを含む、請求項12に記載の物品。
【請求項14】
前記第1のオーディオフィンガープリントは第1のネットワークノードで生成されたものであり、前記デジタルオーディオ信号の前記受信側は第2のネットワークノードを含み、前記第2のオーディオフィンガープリントは前記第2のネットワークノードで生成されたものである、請求項10に記載の物品。
【請求項15】
前記第1のオーディオフィンガープリントと第2のオーディオフィンガープリントとの比較に少なくとも部分的に基づいてQoEの計量値を求めることは、前記第1のオーディオフィンガープリントの知覚的特性と、前記第2のオーディオフィンガープリントの知覚的特性との比較に少なくとも部分的に基づいて前記QoEの計量値を求めることを含む、請求項10に記載の物品。
【請求項16】
知覚的特性は、平均ゼロ交差率、推定テンポ、平均スペクトル、スペクトルの平坦度、1つまたは複数のスペクトル帯域内で顕著な音、または帯域幅の少なくとも1つを含む、請求項10に記載の物品。
【請求項17】
デジタルオーディオ信号から生成された第1のオーディオフィンガープリントを受け取り、
前記第1のオーディオフィンガープリントと、前記デジタルオーディオ信号から生成された第2のオーディオフィンガープリントとの比較に少なくとも部分的に基づいて体感品質(QoE)の計量値を求め、前記第2のオーディオフィンガープリントは、前記デジタルオーディオ信号の受信側で生成されたものである、
ように構成された1つまたは複数のモジュールを備えるシステム。
【請求項18】
前記QoEの計量値を求めることは、第3のオーディオフィンガープリントと、前記第1のオーディオフィンガープリントおよび前記第2のオーディオフィンガープリントの少なくとも一方との比較に少なくとも部分的に基づいて前記QoEの計量値を求めることを含み、前記第3のオーディオフィンガープリントは、前記デジタルオーディオ信号の前記受信側に位置する少なくとも1つのマイクロフォンで取り込まれた音声に少なくとも部分的に応じて、前記デジタルオーディオ信号の前記受信側で生成されたものである、請求項17に記載のシステム。
【請求項19】
前記第1のオーディオフィンガープリントと第2のオーディオフィンガープリントとの比較に少なくとも部分的に基づいてQoEの計量値を求めることは、前記第1のオーディオフィンガープリントの知覚的特性と、前記第2のオーディオフィンガープリントの知覚的特性との比較に少なくとも部分的に基づいて前記QoEの計量値を求めることを含む、請求項17に記載のシステム。
【請求項20】
知覚的特性は、平均ゼロ交差率、推定テンポ、平均スペクトル、スペクトルの平坦度、1つまたは複数のスペクトル帯域内で顕著な音、または帯域幅の少なくとも1つを含む、請求項19に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
本明細書では特に指摘しない限り、この項目に記載する方式は本出願のクレームの従来技術ではなく、この項目に含められることにより従来技術であると認められるものではない。
【0002】
サービス品質(QoS)の計量は、元々は交換式の有線電話(landline telephony)で使用するために開発され、高度化されたものである。そのようなQoS計量は特徴がはっきりしており、売り手がサービスを提供する際の重要なツールとなった。近年のヴォイス・オーバー・アイピー(VoIP)による電話サービスの劇的な増加により、有線電話が大きく変化し、近年の3G/4Gの発達により、モバイル環境でVoIPのために電話からのインターネット接続を使用することが可能になりつつある。しかし、そのようなVoIPの応用例の大半には、旧来の有線システムの端末間のQoSの監視機構が組み込まれておらず、また、有線システム向けの前世代の標準を開発した業界団体やグループを欠いている。その結果、ユーザおよび/または提供者が、モバイル装置におけるVoIP呼のQoSおよび総合的な体感品質(Quality of Experience)(QoE)を測定することが難しい場合がある。
【0003】
透かしは、データの劣化を監視するために使用することができる一般的な技術である。通例、透かしはデータストリームに付加され、データ信号がネットワークを横断する際に透かしに見られる変化からデータの劣化を推測することができる。しかし、透かしではデータ信号を改変することが必要となり、データ劣化の間接的な評価しか行うことができない。
【0004】
オーディオまたは音響フィーガープリンティング技術を使用すると、データ信号の改変を必要とせずに、オーディオコンテンツを特徴付け、かつ/または保護することができる。オーディオフィンガープリントでは、オーディオ信号から決定論的に直接生成される、縮約されたデジタル形式の要約を得ることができ、一般に、オーディオサンプルの識別や、オーディオデータベースで類似項目を迅速に検索するために使用することができる。
【発明の概要】
【0005】
いくつかの実施によると、モバイルの体感品質を判定する方法は、一般に、デジタルオーディオ信号から生成されたオーディオフィンガープリントを受け取ることを含むことができる。そして、そのオーディオフィンガープリントと、デジタルオーディオ信号の受信側でデジタルオーディオ信号から生成された別のオーディオフィンガープリントとの比較に少なくとも部分的に基づいて、体感品質(QoE)の計量値を求めることができる。
【0006】
いくつかの実施によると、コンピュータプログラム製品を含む物品も概説され、製品は、実行されると結果として、デジタルオーディオ信号から生成されたオーディオフィンガープリントを受け取り、そのオーディオフィンガープリントと、デジタルオーディオ信号の受信側でデジタルオーディオ信号から生成された別のオーディオフィンガープリントとの比較に少なくとも部分的に基づいて体感品質(QoE)の計量値を求めることにより、モバイルの体感品質を判定することができる命令を記憶している。
【0007】
いくつかの実施によると、デジタルオーディオ信号から生成されたオーディオフィンガープリントを受け取るように構成された1つまたは複数のモジュールを含むことができるシステムが概説される。そして、1つまたは複数のモジュールは、そのオーディオフィンガープリントと、デジタルオーディオ信号から生成された別のオーディオフィンガープリントとの比較に少なくとも部分的に基づいて体感品質(QoE)の計量値を求めるように構成することができ、別のオーディオフィンガープリントは、デジタルオーディオ信号の受信側で生成されたものである。
【0008】
上記の概要は単に説明を目的とするものであり、決して制限的なものではない。上記の例示的態様、実施形態および特徴に加えて、図面および以下の詳細な説明を参照することにより、さらなる態様、実施形態、および特徴が明らかになろう。
【0009】
本開示の主題は特に本明細書の最後の部分で詳細に指摘し、明確に請求する。本開示の上述およびその他の特徴は、添付図面と併せて以下の説明および別記の特許請求の範囲を読むことにより、より完全に明らかになろう。添付図面は本開示によるいくつかの実施形態のみを図示したものであり、したがってその範囲を制限すると見なすべきでないことを理解した上で、添付図面を使用して、本開示についてさらに具体的、詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本開示の少なくとも一部の実施形態により構成された、例示的システムの説明図である。
図2】本開示の少なくとも一部の実施形態により構成された、例示的処理を説明する図である。
図3】本開示の少なくとも一部の実施形態により構成された、別の例示的システムの説明図である。
図4】本開示の少なくとも一部の実施形態により構成された、別の例示的システムの説明図である。
図5】本開示の少なくとも一部の実施形態により構成された、例示的なコンピュータプログラム製品を説明する図である。
図6】本開示の少なくとも一部の実施形態により構成された、例示的コンピューティングデバイスを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下の説明では、具体的な詳細と併せて各種例を記述することにより、クレームに記載の主題の完全な理解を提供する。ただし、当業者には、クレームに記載の主題は、本明細書に開示される具体的な詳細の一部を用いずに実施できることが理解されよう。さらに、状況によっては、クレームに記載の主題を不必要に不明瞭にすることを避けるために、よく知られた方法、手順、システム、構成要素、および/または回路については詳細に説明していない。以下の詳細な説明では、本明細書の一部をなす添付図面を参照する。図面では、文脈上断らない限り基本的に同様の符号で同様の構成要素を識別する。詳細な説明、図面、および特許請求の範囲に記載される例示的実施形態は制限的なものではない。本明細書に提示される主題の主旨または範囲内で、他の実施形態を利用することが可能であり、他の変更を加えることが可能である。本明細書に概説され、図に図示される本開示の実施形態は、幅広い構成で構成、置き換え、組合せ、および設計することができ、それらの構成はすべて明示的に企図され、本開示の一部をなすことは容易に理解されよう。
【0012】
本開示は、特に、モバイル通信システム内でオーディオフィンガープリンティングを用いてサービス品質(QoS)の計量を提供することに一般に関連する、方法、装置、およびシステムに関する。
【0013】
本開示の各種実施によると、発信側通信装置と送信先通信装置の両方でオーディオフィンガープリントを生成し、それらオーディオフィンガープリント間の差分を生成することができる。そのようなオーディオフィンガープリント間の相違により、最適なサービスレベルからの逸脱の測定を得ることができ、したがって、コーデック、圧縮、および/または通信路の問題に関連する1つまたは複数の定量化可能なQoE/QoSの計量(以降「QoE」の計量)を得ることができる。いくつかの例では、オーディオ出力をサンプリングすることによりオーディオフィンガープリントを生成して、ユーザが聞いた際の(to-the-ear)QoEの測定を容易にすることができる。いくつかの例では、サーバなどの中間ネットワークノードを含む通信ネットワーク内の様々な位置でオーディオフィンガープリントを生成することができる。さらに、各種例では、特定の通信事象の進行中および/または後にオーディオフィンガープリントを生成することができる。
【0014】
本開示の各種実施によると、ユーザの声が送信のために取り込まれる時に、モバイル装置のハンドセットで発信側フィンガープリントまたは「通信前(origin)」フィンガープリントを計算または生成することができる。そして、たとえばヴォイス・オーバー・インターネット・プロトコル(VoIP)技術を使用して、通信前フィンガープリントをオーディオ信号と共に受信側のハンドセットに送信することができる。いくつかの例では、通信前フィンガープリントは、対応するオーディオ信号とは別個に提供することができる。各種実施において、受信されたオーディオ信号のオーディオフィンガープリントまたは「受信」フィンガープリントは、受信側のハンドセットで生成することができる。いくつかの例では、受信フィンガープリントは、受信されたオーディオ信号をデジタルからアナログ信号の形態に変換する直前に計算することができる。そして、通信前フィンガープリントを受信フィンガープリントと比較し、2つのフィンガープリント間の差分から、伝送媒体の品質や符号化の影響などの特性の1つまたは複数のQoE測定値を得ることができる。
【0015】
本開示の各種実施によれば、1つまたは複数の内蔵マイクロフォンが組み込まれたモバイル装置を使用して、受信側装置の(1つまたは複数の)スピーカからオーディオ信号を取り込むことができる。そのような実施では、受信側装置の物理的に聞くことができる信号のオーディオフィンガープリントまたは「可聴」フィンガープリントを生成し、通信前フィンガープリントおよび/または受信フィンガープリントと比較することができる。そのような比較により、不良な接続やハンドセット、騒音のある環境等を判別することができるQoEの測定値を得ることができる。
【0016】
本開示の各種実施によれば、サービス提供者および/またはユーザは、通信前フィンガープリント、受信フィンガープリント、および/または可聴オーディオフィンガープリントを比較して各種のQoE計量を得ることができる。各種例で、サービス提供者は、ネットワーク経路の種々の地点でオーディオフィンガープリントを生成し、そのような「中間」フィンガープリントの種々のものを比較して、各ネットワーク区間や構成要素等に関するサービス問題を切り分けることができる。いくつかの例で、ゼロの差分(たとえば通信前フィンガープリントが受信フィンガープリントと全く同じである場合)は、許容できる送信であることを示し、非ゼロの差分は、送信が準最適であることを示すことができる。いくつかの例で、オーディオフィンガープリントは、ほぼリアルタイムの状況で比較することができ、かつ/または、ハンドセットのデータ機能を使用して後の処理の際に比較することができる。同期を助けるために、一部の実施ではパケットのタイミングおよび識別を使用することができる。各種例では、人間の可聴範囲外の同期音を使用して、オーディオフィンガープリント間の同期を助けることができる。
【0017】
本開示の各種実施によれば、オーディオフィンガープリントの比較は、フィンガープリントの二進表現の直接の比較を含むか、かつ/またはフィンガープリントの特徴ベクトル間の距離の測定値を含むことができる。いくつかの例で、フィンガープリントの特徴ベクトルは、平均ゼロ交差率、推定テンポ、平均スペクトル、スペクトルの平坦度、1組の帯域内で顕著な音、および/または帯域幅などのオーディオ信号の知覚的特性(perceptual characteristics)を特定することができる。
【0018】
図1は、本開示の少なくとも一部の実施による例示的システム100のいくつかの部分を示す図である。システム100は、送信側装置102および送信先またはシンク(sink)装置104を含む。装置102および104は、デジタルオーディオ信号を生成し、セルラ通信ネットワーク等のネットワーク106を通じて受信および/または送信することが可能な任意の種類の装置でよい。たとえば、各種実施で装置102および104は、携帯電話のハンドセットである。装置102および104は、各種信号をアナログ形式とデジタル形式間で変換することが可能な変換モジュール108および110をそれぞれ含む。さらに、装置102および104は、下記でさらに詳しく説明するように、オーディオフィンガープリントを生成することが可能なフィンガープリントモジュール112および114をそれぞれ含む。
【0019】
送信側装置102は、オーディオ入力(たとえばユーザの声により提供される)をアナログオーディオ信号に変換することが可能なマイクロフォン116も含む。そして、モジュール108がアナログオーディオ信号をデジタルオーディオ信号に変換することができる。そして、デジタルオーディオ信号をたとえばVoIP技術を使用してネットワーク106を通じて送信先装置104に通信することができる。フィンガープリントモジュール112は、モジュール108から提供されるデジタルオーディオ信号に応じてオーディオフィンガープリント(「送信側」フィンガープリント)を生成することができる。装置102および104は、図を見やすくするために図1では省略した、送信/受信モジュール、メモリ構成要素、プロセッサ、(1つまたは複数の)アンテナ等の追加的な構成要素および/またはモジュールも含んでよいことが認識できよう。
【0020】
各種実施で、フィンガープリントモジュール112および114は、各種の知られるオーディオフィンガープリンティング技術を使用して送信側フィンガープリントを生成することが可能なソフトウェア、ファームウェアおよび/またはハードウェアの任意の組合せとすることができる。各種実施で、モジュール112および/または114は、少なくとも部分的に、デジタル信号プロセッサ(DSP)の1つまたは複数のプロセッサコアなどの1つまたは複数のプロセッサコアで実行されるソフトウェアおよび/またはファームウェアアルゴリズムによって実装されることができる。送信側装置102は、送信側フィンガープリントもネットワーク106を通じて送信先装置104に通信することができる。
【0021】
送信先装置104は、オーディオ入力(たとえばユーザの声により提供される)をアナログオーディオ信号に変換することが可能なマイクロフォン118を含む。そして、モジュール110がアナログオーディオ信号を、フィンガープリントモジュール114に提供することが可能なデジタルオーディオ信号に変換することができる。さらに、モジュール110は、送信側装置102から受信したデジタルオーディオ信号をアナログオーディオ信号に変換し、その信号をスピーカ120が使用して、オーディオ出力(たとえばデジタルオーディオ信号で伝達された装置102のユーザの声の再生)を生成することができる。そして、スピーカ120のオーディオ出力をマイクロフォン118で取り込み、モジュール110でデジタルオーディオ信号に変換することができる。そして、モジュール110はそのデジタルオーディオ信号をフィンガープリントモジュール114に提供することができる。
【0022】
装置のフィンガープリントモジュール114は、送信側装置102から受信したデジタルオーディオ信号からオーディオフィンガープリント(「シンク」フィンガープリント)を生成することができる。モジュール114は、マイクロフォン118で取り込まれたオーディオ入力から得られるデジタルオーディオ信号から別のオーディオフィンガープリント(「可聴」フィンガープリント)も生成することができる。送信側フィンガープリントおよびシンクフィンガープリントは比較モジュール122に提供され、下記でさらに詳しく説明するように、互いと比較して、1つまたは複数のQoE計量値を生成することができる。また、これも下記でさらに詳しく説明するように、比較モジュール122は、可聴フィンガープリントを受け取り、送信側フィンガープリントおよび/またはシンクフィンガープリントの一方または両方と比較して、1つまたは複数のQoE計量値を生成することもできる。
【0023】
図2は、本開示の各種実施による例示的処理200の流れ図を示す。処理200は、ブロック202および/または204の1つまたは複数で示すように、1つまたは複数の動作、機能、または作用を含むことができる。処理200はブロック202で開始することができる。
【0024】
ブロック202でオーディオフィンガープリントを受け取ることができ、このオーディオフィンガープリントはデジタルオーディオ信号から生成されたものである。いくつかの例では、図1を参照すると、ブロック202では、装置102で生成された送信側フィンガープリントを装置104で受信することができる。フィンガープリントモジュール112は、いくつかの知られるフィンガープリンティング技術のいずれかを使用して、デジタルオーディオ信号から送信側フィンガープリントを生成することができる。いくつかの例では、デジタルオーディオ信号はVoIP信号の少なくとも一部分とすることができる。
【0025】
フィンガープリントの生成では、いくつかの信号処理機能を行うことができる。初めに、強度値の時系列として表されるデジタルオーディオ信号は、16ビットのパルス符号変調(PCM)形式などの標準形式に変換することによって前処理することができる。左チャンネルおよび右チャンネルのモノラル平均化、帯域フィルタリング等の他の前処理を行ってもよい。そして、デジタルオーディオ信号を一連のフレームに分割し、フレーム同士は重複があってもなくともよい。次いで、そのフレームを高速フーリエ変換(FFT)、離散フーリエ変換(DFT)、ハール変換、ウォルシュ・アダマール変換などの各種変換を使用して時間領域から周波数領域に変換することができる。
【0026】
フィンガープリントの生成では次いで、信号フレームから1つまたは複数の特徴を抽出することができる。一部の実施では、抽出される特徴は、これらに限定されないが、平均ゼロ交差率、推定テンポ、平均スペクトル、スペクトルの平坦度、1つまたは複数のスペクトル帯で顕著な音、および/または帯域幅などの知覚的特性である。たとえば、スペクトルの平坦度に対応する特徴は、フレームの信号スペクトル中の一帯域について音を表す品質またはノイズを表す品質を推定することによって取得することができる。別の例では、抽出される特徴は、1フレーム中で顕著な音を有する帯域インデックスの順序付けリストを含むことができる。
【0027】
生成されたフィンガープリントは、1つまたは複数の特徴ベクトルに配列された1つまたは複数の特徴を含むことができる。さらに、フィンガープリントは量子化することができる。たとえば、フィンガープリントのベクトルを二進符号化することができる。さらに、フィンガープリントは、特徴ベクトルを列にまとめてから、その特徴ベクトルを、コードブックに関連付けられた代表コードベクトルで近似することにより、コンパクトな形態で提供することができる。
【0028】
ブロック204で、ブロック202で受け取ったオーディオフィンガープリントと、デジタルオーディオ信号から生成した第2のオーディオフィンガープリントとの比較に少なくとも部分的に基づいてQoE計量値を求めることができ、第2のオーディオフィンガープリントはデジタルオーディオ信号を受信した装置で生成されたものである。いくつかの例では、図1を参照すると、ブロック204で、装置104が比較モジュール112を使用して、装置102から受け取った送信側フィンガープリントをシンクフィンガープリントと比較することができ、ここで、装置104は、フィンガープリントモジュール114を使用して、装置102から受信したデジタルオーディオ信号からシンクフィンガープリントを生成している。
【0029】
各種実施で、ブロック204におけるフィンガープリントの比較は、フィンガープリント特徴ベクトル間の距離の計量を求めることを含むことができ、距離の計量は、比較対象の各種特徴ベクトルの類似度の測定値を提供することができる。たとえば、量子化された特徴ベクトルを得るには、マンハッタン距離またはハミング距離を求めることができる。その後、その距離の計量を閾値と比較することによりQoE計量を導出することができる。たとえば、各種実施で、距離の計量が閾値と同じか、または超えており、したがって比較対象のフィンガープリントの1つまたは複数の特徴ベクトルが著しく異なるとみなせる場合は、対応するQoEの計量にFAILED(不合格)値を割り当てることができる。対して、距離の計量が閾値未満であり、したがって、比較対象のフィンガープリントの1つまたは複数の特徴ベクトルが類似するとみなせる場合は、対応するQoEの計量にPASS(合格)値を割り当てることができる。
【0030】
上記では処理200の実施について図1の例示的システム100の文脈で説明したが、各種実施において処理200は各種状況で実施することができる。たとえば、図3に、本開示の少なくとも一部の実施形態による別の例示的ネットワーク300のいくつかの部分を示す。ネットワーク300は、セルラ通信ネットワークなどの任意種のネットワークでよい。ネットワーク300は、第1のネットワークノード(ノード「A」)302および第2のネットワークノード(ノード「B」)304を含む。ノード302および304は、ネットワーク300を通じてデジタルオーディオ信号を受信および/または送信することが可能な任意種のネットワークノードである。たとえば、各種実施で、ノード302および/または304は、ネットワークサーバ、ネットワークゲートウェイ等である。ノード302および/または304は、図を見やすくするために図3では省略した、送信/受信モジュール、メモリ構成要素、プロセッサ、等の追加的な構成要素および/またはモジュールも含んでよいことが認識できよう。
【0031】
ノード302および304は、本明細書に記載される要領でオーディオフィンガープリントを生成することが可能なフィンガープリントモジュール306および308をそれぞれ含む。各種実施で、フィンガープリントモジュール306および/または308は、各種の知られるオーディオフィンガープリンティング技術のいずれかを使用して送信側フィンガープリントを生成することが可能なソフトウェア、ファームウェアおよび/またはハードウェアの任意の組合せとすることができる。各種実施で、モジュール306および/または308は、少なくとも部分的に、デジタル信号プロセッサ(DSP)の1つまたは複数のプロセッサコアなどの1つまたは複数のプロセッサコアで実行されるソフトウェアおよび/またはファームウェアアルゴリズムによって実装されることができる。
【0032】
ノード302はデジタルオーディオ信号を受信し、本明細書に説明するようにフィンガープリントモジュール306を使用してその信号のフィンガープリント(「ノードAのフィンガープリント」)を生成することができる。ノード302は、デジタルオーディオ信号を生成した別のネットワークノードや装置などの別の装置でデジタルオーディオ信号から生成された送信側フィンガープリントも受け取ることができる。そして、ノード302は、本明細書に記載されるように、比較モジュール310を使用して、ノードAのフィンガープリントと送信側フィンガープリントとを比較して1つまたは複数のQoE計量値を生成することができる。ノード302は、デジタルオーディオ信号、ノードAのフィンガープリントおよび/または送信側フィンガープリントをノード304に伝達することができる。
【0033】
ノード304はデジタルオーディオ信号を受信し、本明細書に記載するように、フィンガープリントモジュール308を使用してその信号のフィンガープリント(「ノードBのフィンガープリント」)を生成することができる。ノード304は送信側フィンガープリントおよびノードAのフィンガープリントも受け取ることができる。そして、ノード304は、本明細書に記載するように、比較モジュール312を使用してノードBのフィンガープリントを送信側フィンガープリントと比較して1つまたは複数のQoE計量値を生成することができる。また、ノード304は、本明細書に記載するように、モジュール312を使用してノードBのフィンガープリントをノードAのフィンガープリントと比較して、1つまたは複数のQoE計量値を生成することもできる。
【0034】
図3ではノード302がノード304と直接通信的に結合されているが、ノード302をノード304に通信的に結合する1つまたは複数の介在ネットワークノード(図示せず)があってもよいことが認識できよう。また、図3では、デジタルオーディオ信号がノード302と304間で通信されているが、いくつかの例では、デジタルオーディオ信号をノード302と304間で通信するためにアナログ形式に変換することができ、したがって、ノード302および/または304は、デジタルオーディオ信号をアナログオーディオ信号に、またその逆の変換を行うための変換モジュール(図示せず)を含むことができる。
【0035】
図4に、本開示の少なくとも一部の実施形態による別の例示的ネットワーク400のいくつかの部分を示す。ネットワーク400は、セルラ通信ネットワークなどの任意種のネットワークでよい。ネットワーク400は、第1のネットワークノード(ノード「A」)402、第2のネットワークノード(ノード「B」)404、および第3のノード(ノード「C」)406を含む。ノード402、404、および406は、ネットワーク400を通じてデジタルオーディオ信号を受信および/または送信することが可能な任意種のネットワークノードである。たとえば、各種実施で、ノード402、404、および/または406は、ネットワークサーバ、ネットワークゲートウェイ等である。
【0036】
システム400の例では、ノード402および404各々が、本明細書に記載するように、フィンガープリントモジュール(図示せず)を用いてデジタルオーディオ信号から対応するフィンガープリントを生成することができる。さらに、ノード406は、ノード402および404からそれぞれのフィンガープリントに加えて送信側フィンガープリントを受け取り、本明細書に記載するように、1つまたは複数の比較モジュール(図示せず)を用いて1つまたは複数の対応するQoE計量値を生成することができる。たとえば、ノード406は、ノード402および404の両方からフィンガープリントを受け取り、それぞれのノードフィンガープリントを個々に送信側フィンガープリントと比較する、かつ/またはノードフィンガープリント同士を比較することにより、別個のQoE計量値を生成することができる。
【0037】
ノード402、404、および/または406は、図を見やすくするために図4では省略した、送信/受信モジュール、メモリ構成要素、プロセッサ等の追加的な構成要素および/またはモジュールも含んでよいことが認識できよう。図4ではノード402、404、および406が相互と直接通信的に結合されているが、図4の各種ノードを相互に通信的に結合する1つまたは複数の介在ネットワークノード(図示せず)があってもよいことが認識できよう。たとえば、ノード406は、ノード402および404から遠隔に位置するサーバであり、ノード402および404は、1つまたは複数の介在ノードで相互から隔てられた個々のネットワークゲートウェイである。
【0038】
図5に、本開示の少なくとも一部の例により構成された例示的コンピュータプログラム製品500を示す。プログラム製品500は、信号伝達媒体502を含むことができる。信号伝達媒体502は、たとえばプロセッサによって実行されると、図2に関連して上述した機能を提供することができる1つまたは複数の命令504を含むことができる。したがって、たとえば、図1および図3のシステムを参照すると、装置102、104、ならびに/またはノード302および/もしくは304の1つまたは複数は、媒体502で伝達される命令504に応じて、図2に示すブロックの1つまたは複数を行うことができる。
【0039】
いくつかの実施では、信号伝達媒体502は、これらに限定されないが、ハードディスクドライブ、コンパクトディスク(CD)、デジタル多用途ディスク(DVD)、デジタルテープ、メモリなどのコンピュータ可読媒体506を包含することができる。いくつかの実施では、信号伝達媒体502は、これらに限定されないが、メモリ、読み出し/書き込み用(R/W)CD、R/W DVDなどの記録可能媒体508を包含することができる。いくつかの実施では、信号伝達媒体502は、これらに限定されないが、デジタルおよび/またはアナログの通信媒体(たとえば、光ファイバーケーブル、導波管、有線通信リンク、無線通信リンク等)などの通信媒体510を包含することができる。したがって、たとえば図1のシステムを参照すると、プログラム製品500は信号伝達媒体502でワイヤレスに装置102に伝達することができ、信号伝達媒体502は、無線通信媒体510(たとえば、802.11標準に準拠した無線通信媒体)により装置108に伝達される。
【0040】
図6は、本開示の各種実施による例示的コンピューティングデバイス600を示すブロック図である。ごく基本的な構成601で、コンピューティングデバイス600は通例、1つまたは複数のプロセッサ610およびシステムメモリ620を含む。メモリバス630は、プロセッサ610とシステムメモリ620間の通信に使用することができる。
【0041】
求められる構成に応じて、システムメモリ620は、これらに限定されないが、揮発性メモリ(RAMなど)、不揮発性メモリ(ROM、フラッシュメモリなど)、またはそれらの組合せを含む任意の種類とすることができる。システムメモリ620は通例、オペレーティングシステム621、1つまたは複数のアプリケーション622、およびプログラムデータ624を含む。アプリケーション622は、図2に示すフローチャートに関連して説明した動作を含む本明細書に記載の機能を行うように構成された命令623を含むことができる。プログラムデータ624は、命令623を実装するために有用である可能性のある、デジタルオーディオ信号のフレーム値やフィンガープリントベクトルデータ等のフィンガープリントに関連するデータ625を含むことができる。いくつかの例では、アプリケーション622は、本明細書に記載される本開示の実施を提供することができるように、オペレーティングシステム621上でプログラムデータ624を用いて動作するように構成することができる。ここに説明した基本的構成を図6に示し、それらの構成要素を点線601で囲って示す。
【0042】
コンピューティングデバイス600は、基本構成601と、必要とされる装置およびインタフェースとの間の通信を助ける追加的な機能または機能性、および追加的なインタフェースを有することができる。たとえば、バス/インタフェースコントローラ640を使用して、ストレージインタフェースバス641を介して基本構成601と1つまたは複数のデータ記憶装置650との間の通信を容易にすることができる。データ記憶装置650は、取外し式記憶装置651、非取外し式記憶装置652、またはそれらの組合せとすることができる。取外し式記憶装置および非取外し式記憶装置の例をいくつか挙げると、フレキシブルディスクドライブやハードディスクドライブ(HDD)などの磁気ディスク装置、コンパクトディスク(CD)ドライブやデジタル多用途ディスク(DVD)ドライブなどの光学ディスクドライブ、ソリッドステートドライブ(SSD)、およびテープドライブがある。例示的なコンピュータ記憶媒体は、コンピュータ可読命令、データ構造、プログラムモジュール、またはその他のデータなどの情報を記憶するために任意の方式または技術で実装された、揮発性および不揮発性の媒体、取外し式および非取外し式の媒体を含むことができる。
【0043】
システムメモリ620、取外し式ストレージ651および非取外し式ストレージ652はすべて、コンピュータ記憶媒体の例である。コンピュータ記憶媒体には、これらに限定されないが、RAM、ROM、EEPROM、フラッシュメモリ、もしくは他のメモリ技術、CD−ROM、デジタル多用途ディスク(DVD)、もしくは他の光学ストレージ、磁気カセット、磁気テープ、磁気ディスクストレージ、もしくは他の磁気記憶装置、または、所望の情報を記憶するために使用することができ、コンピューティングデバイス600によるアクセスが可能な他の媒体が含まれる。そのようなコンピュータ記憶媒体を装置600の一部とすることができる。
【0044】
コンピューティングデバイス600は、各種インタフェース装置(たとえば、出力インタフェース、周辺インタフェース、および通信インタフェース)からバス/インタフェースコントローラ640を介して基本構成601に至る通信を容易にするインタフェースバス642も含むことができる。例示的な出力インタフェース660は、グラフィック処理ユニット661およびオーディオ処理ユニット662を含み、それらは、1つまたは複数のA/Vポート663を介してディスプレイやスピーカなどの各種外部装置と通信するように構成することができる。例示的な周辺インタフェース660には、シリアルインタフェースコントローラ671やパラレルインタフェースコントローラ672が含まれ、それらは、1つまたは複数のI/Oポート673を介して入力装置(たとえば、キーボード、マウス、ペン、音声入力装置、タッチ入力装置など)、または他の周辺装置(たとえば、プリンタ、スキャナなど)などの外部装置と通信するように構成することができる。例示的な通信インタフェース680にはネットワークコントローラ681があり、1つまたは複数の通信ポート682を介してネットワーク通信により1つまたは複数の他のコンピューティングデバイス690との通信を容易にするように構成することができる。ネットワーク通信接続は通信媒体の一例である。通信媒体は通例、搬送波や他の移送機構等の変調データ信号中のコンピュータ可読命令、データ構造、プログラムモジュール、または他のデータによって具現化され、任意の情報伝達媒体を含む。「変調データ信号」は、信号中に情報を符号化するようにその特性の1つまたは複数を設定または変化させた信号等である。限定ではなく例として、通信媒体は、有線ネットワークや直接配線接続などの有線媒体と、音響、無線周波数(RF)、赤外線(IR)、および他の無線媒体などの無線媒体を含む。本明細書で使用する用語「コンピュータ可読媒体」は、記憶媒体と通信媒体の両方を含むことができる。
【0045】
コンピューティングデバイス600は、携帯電話、スマートフォン、携帯情報端末(PDA)、個人媒体プレーヤ装置、ワイヤレスウェブ閲覧装置、個人ヘッドセット装置、特定用途装置、または上記機能のいずれかを備えた複合装置など、小フォームファクタの携帯型(または移動型)電子装置の一部として実装することができる。コンピューティングデバイス600はまた、ラップトップコンピュータおよび非ラップトップコンピュータ構成の両方を含むパーソナルコンピュータとして実装することができ、またはワークステーションもしくはサーバ構成として実装することもできる。
【0046】
本開示で参照する表現「〜に応答して(〜responsive to)」または「〜に応じて(in response to)」は、特定の特徴および/または構造のみに応じることに限定されない。ある特徴が別の特徴および/または構造に応ずることも可能であり、その特徴および/または構造の内部に位置することも可能である。さらに、本明細書または下記の特許請求の範囲で「結合された(coupled)」または「応答して」もしくは「応じて」または「通信状態にある(in communication with)」等の語または表現を使用する場合、それらの語は広く解釈すべきである。たとえば、「〜に結合された(coupled to)」という表現は、その表現が使用される文脈に応じて、通信的、電気的、および/または動作的に結合されていることを意味することができる。
【0047】
上記の詳細な説明の一部は、コンピュータメモリなどのコンピューティングシステムメモリの中に記憶されたデータビットやバイナリのデジタル信号に対する動作のアルゴリズムまたは記号的表現の形で提示している。そのようなアルゴリズム的な記述または表現は、データ処理技術の当業者が作業の内容を他の当業者に伝えるために使用する技法の例である。アルゴリズムとは、本明細書において、また一般に、所望の結果が得られる、自己無撞着な一連の動作または同様の処理と見なされる。この文脈において、動作または処理は、物理的な数量を物理的に操作することを伴う。通例、必ずしもそうとは限らないが、そのような数量は、記憶、転送、組合せ、比較、またはその他の方法で操作されることが可能な電気信号または磁気信号の形態をとることができる。主として一般に使用されているという理由から、そのような信号をビット、データ、値、要素、記号、文字、項、数、数字などとして参照することが時に利便であることが分かっている。ただし、上記の術語および同様の術語はすべて対応する物理的数量に関連するものとし、単に利便な標識であることを理解されたい。特に断らない限り、以下の説明から明らかなように、本明細書の記載全体を通じて、「処理する(processing)」「演算する(computing)」「計算する(calculating)」「求める(determining)」などの語を利用した記述は、コンピューティングデバイスのメモリ、レジスタ、または他の情報記憶装置、伝送装置、または表示装置内で物理的な電子的数量または磁気的数量として表されるデータを操作または変形させるコンピューティングデバイスの動作または処理を意味することが理解される。
【0048】
前述の詳細な説明では、ブロック図、フローチャート、および/または例の使用によって、装置および/またはプロセスの様々な実施形態を説明してきた。そのようなブロック図、フローチャート、および/または例が1つまたは複数の機能および/または動作を含む限りにおいて、そのようなブロック図、フローチャート、または例の中のそれぞれの機能および/または動作は、広範囲のハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、または実質上それらのすべての組合せにより、個別におよび/または集合的に実装可能であることが、当業者には理解されるであろう。ある実施形態では、本明細書に記載された主題のいくつかの部分は、特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、デジタルシグナルプロセッサ(DSP)、または他の集積化方式によって実装することができる。しかし、本明細書で開示された実施形態のいくつかの態様が、全体においてまたは一部において、1つまたは複数のコンピュータ上で動作する1つまたは複数のコンピュータプログラムとして(たとえば、1つまたは複数のコンピュータシステム上で動作する1つまたは複数のプログラムとして)、1つまたは複数のプロセッサ上で動作する1つまたは複数のプログラムとして(たとえば、1つまたは複数のマイクロプロセッサ上で動作する1つまたは複数のプログラムとして)、ファームウェアとして、あるいは実質上それらの任意の組合せとして、等価に集積回路に実装することができることを、当業者は認識するであろうし、電気回路の設計ならびに/またはソフトウェアおよび/もしくはファームウェアのコーディングが、本開示に照らして十分当業者の技能の範囲内であることを、当業者は認識するであろう。さらに、本明細書に記載された主題のメカニズムを様々な形式のプログラム製品として配布することができることを、当業者は理解するであろうし、本明細書に記載された主題の例示的な実施形態が、実際に配布を実行するために使用される信号伝達媒体の特定のタイプにかかわらず適用されることを、当業者は理解するであろう。信号伝達媒体の例には、フレキシブルディスク、ハードディスクドライブ(HDD)、コンパクトディスク(CD)、デジタル多用途ディスク(DVD)、デジタルテープ、コンピュータメモリ、などの記録可能なタイプの媒体、ならびに、デジタル通信媒体および/またはアナログ通信媒体(たとえば、光ファイバケーブル、導波管、有線通信リンク、無線通信リンクなど)の通信タイプの媒体が含まれるが、それらには限定されない。
【0049】
本明細書で説明したやり方で装置および/またはプロセスを記載し、その後そのように記載された装置および/またはプロセスを、データ処理システムに統合するためにエンジニアリング方式を使用することは、当技術分野で一般的であることを当業者は認識するであろう。すなわち、本明細書に記載された装置および/またはプロセスの少なくとも一部を、妥当な数の実験によってデータ処理システムに統合することができる。通常のデータ処理システムは、一般に、システムユニットハウジング、ビデオディスプレイ装置、揮発性メモリおよび不揮発性メモリなどのメモリ、マイクロプロセッサおよびデジタル信号プロセッサなどのプロセッサ、オペレーティングシステムなどの計算実体、ドライバ、グラフィカルユーザインタフェース、およびアプリケーションプログラムのうちの1つもしくは複数、タッチパッドもしくはスクリーンなどの1つもしくは複数の相互作用装置、ならびに/またはフィードバックループおよびコントロールモータを含むコントロールシステム(たとえば、位置検知用および/もしくは速度検知用フィードバック、コンポーネントの移動用および/もしくは数量の調整用コントロールモータ)を含むことを、当業者は理解するであろう。通常のデータ処理システムは、データコンピューティング/通信システムおよび/またはネットワークコンピューティング/通信システムの中に通常見られるコンポーネントなどの、市販の適切なコンポーネントを利用して実装することができる。
【0050】
本明細書に記載された主題は、様々なコンポーネントをしばしば例示しており、これらのコンポーネントは、他の様々なコンポーネントに包含されるか、または他の様々なコンポーネントに接続される。そのように図示されたアーキテクチャは、単に例示にすぎず、実際には、同じ機能を実現する多くの他のアーキテクチャが実装可能であることが理解されよう。概念的な意味で、同じ機能を実現するコンポーネントの任意の構成は、所望の機能が実現されるように効果的に「関連付け」される。したがって、特定の機能を実現するために組み合わされた、本明細書における任意の2つのコンポーネントは、アーキテクチャまたは中間のコンポーネントにかかわらず、所望の機能が実現されるように、お互いに「関連付け」されていると見ることができる。同様に、そのように関連付けされた任意の2つのコンポーネントは、所望の機能を実現するために、互いに「動作可能に接続」または「動作可能に結合」されていると見なすこともでき、そのように関連付け可能な任意の2つのコンポーネントは、所望の機能を実現するために、互いに「動作可能に結合できる」と見なすこともできる。動作可能に結合できる場合の具体例には、物理的にかみ合わせ可能な、および/もしくは物理的に相互作用するコンポーネント、ならびに/またはワイヤレスに相互作用可能な、および/もしくはワイヤレスに相互作用するコンポーネント、ならびに/または論理的に相互作用する、および/もしくは論理的に相互作用可能なコンポーネントが含まれるが、それらに限定されない。
【0051】
本明細書における実質的にすべての複数形および/または単数形の用語の使用に対して、当業者は、状況および/または用途に適切なように、複数形から単数形に、および/または単数形から複数形に変換することができる。様々な単数形/複数形の置き換えは、理解しやすいように、本明細書で明確に説明することができる。
【0052】
通常、本明細書において、特に添付の特許請求の範囲(たとえば、添付の特許請求の範囲の本体部)において使用される用語は、全体を通じて「オープンな(open)」用語として意図されていることが、当業者には理解されよう(たとえば、用語「含む(including)」は、「含むがそれに限定されない(including but not limited to)」と解釈されるべきであり、用語「有する(having)」は、「少なくとも有する(having at least)」と解釈されるべきであり、用語「含む(includes)」は、「含むがそれに限定されない(includes but is not limited to)」と解釈されるべきである、など)。導入される請求項で具体的な数の記載が意図される場合、そのような意図は、当該請求項において明示的に記載されることになり、そのような記載がない場合、そのような意図は存在しないことが、当業者にはさらに理解されよう。たとえば、理解の一助として、添付の特許請求の範囲は、導入句「少なくとも1つの(at least one)」および「1つまたは複数の(one or more)」を使用して請求項の記載を導くことを含む場合がある。しかし、そのような句の使用は、同一の請求項が、導入句「1つまたは複数の」または「少なくとも1つの」および「a」または「an」などの不定冠詞を含む場合であっても、不定冠詞「a」または「an」による請求項の記載の導入が、そのように導入される請求項の記載を含む任意の特定の請求項を、単に1つのそのような記載を含む実施に限定する、ということを示唆していると解釈されるべきではない(たとえば、「a」および/または「an」は、通常、「少なくとも1つの」または「1つまたは複数の」を意味すると解釈されるべきである)。同じことが、請求項の記載を導入するのに使用される定冠詞の使用にも当てはまる。また、導入される請求項の記載で具体的な数が明示的に記載されている場合でも、そのような記載は、通常、少なくとも記載された数を意味すると解釈されるべきであることが、当業者には理解されよう(たとえば、他の修飾語なしでの「2つの記載(two recitations)」の単なる記載は、通常、少なくとも2つの記載、または2つ以上の記載を意味する)。さらに、「A、BおよびC、などの少なくとも1つ」に類似の慣例表現が使用されている事例では、通常、そのような構文は、当業者がその慣例表現を理解するであろう意味で意図されている(たとえば、「A、B、およびCの少なくとも1つを有するシステム」は、Aのみ、Bのみ、Cのみ、AおよびBを共に、AおよびCを共に、BおよびCを共に、ならびに/またはA、B、およびCを共に、などを有するシステムを含むが、それに限定されない)。「A、B、またはC、などの少なくとも1つ」に類似の慣例表現が使用されている事例では、通常、そのような構文は、当業者がその慣例表現を理解するであろう意味で意図されている(たとえば、「A、B、またはCの少なくとも1つを有するシステム」は、Aのみ、Bのみ、Cのみ、AおよびBを共に、AおよびCを共に、BおよびCを共に、ならびに/またはA、B、およびCを共に、などを有するシステムを含むが、それに限定されない)。2つ以上の代替用語を提示する事実上いかなる離接する語および/または句も、明細書、特許請求の範囲、または図面のどこにあっても、当該用語の一方(one of the terms)、当該用語のいずれか(either of the terms)、または両方の用語(both terms)を含む可能性を企図すると理解されるべきであることが、当業者にはさらに理解されよう。たとえば、句「AまたはB」は、「A」または「B」あるいは「AおよびB」の可能性を含むことが理解されよう。
【0053】
また、「最適化する」という表現は、最大化および/または最小化を含みうることを理解されたい。本明細書で使用する「最小化」等の語は、大域的最小点、局所的最小点、近似大域的最小点、および/または近似局所的最小点を含みうる。同様に、本明細書で使用する「最大化」等の語は、大域的最大点、局所的最大点、近似大域的最大点、および/または近似局所的最大点を含むことも理解されたい。
【0054】
本明細書における「実施」「一実施」「いくつかの実施」または「他の実施」の参照は、1つまたは複数の実施に関連して記載される特定の特徴、構造、または特性が、少なくとも一部の実施に含まれうるが、必ずしもすべての実施には含まれないことを意味することができる。上記説明における「実施」「一実施」または「いくつかの実施」の様々な出現は、必ずしもすべてが同じ実施を指すとは限らない。
【0055】
各種方法およびシステムを用いて特定の例示的技術について本明細書に記載し、図示したが、当業者には、クレームに記載の主題から逸脱することなく、各種の他の変更を加えることができ、均等物を代わりに用いてよいことを理解されたい。また、本明細書に記載される中核となる概念から逸脱することなく、多くの変更を加えて特定の状況をクレームに記載の主題の教示に合わせることが可能である。したがって、クレームに記載の主題は開示される特定の例に限定されず、そのようなクレームに記載の主題は添付の特許請求の範囲およびその均等物の範囲に該当するすべての実施も含むことができるものとする。
図1
図2
図3
図4
図5
図6