(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
道路側縁の地覆部に立設された支柱の間に横桟が取付けられた防護柵であって、前記支柱は、前記横桟が取付けられる前フランジ部と、前記前フランジ部の後方に対向して配置された後フランジ部と、該前フランジ部と後フランジ部とを連結する連結片とを備えた支柱本体と、該支柱本体が固定されかつアンカーボルトにより地覆部に固定されるベース部とを備え、
前記前フランジ部は、前面が道路に面するようにしてベース部に固定される前側立上り片と、該前側立上り片の先端を折れ部として、該折れ部から上斜め後方に向けて傾斜する前側傾斜片と、該前側傾斜片の上端から上方に立ち上がり横桟を取付ける横桟取付片とが形成されるとともに、
前側立上り片の前面は、前記ベース部の先端から前記ベース部の前後方向の寸法の2分の1以上後方に位置するように配置され、
前記後フランジ部は、ベース部に固定される後側立上り片と、該後側立上り片の先端を折れ部として、該折れ部から上斜め後方に向けて傾斜する傾斜片と、該傾斜片の先端から上方に立ち上がり前記前フランジ部の横桟取付片の後方に相対向配置された立上り部とが形成され、
前記後フランジ部における後側立上り片の先端の折れ部は、前記前フランジ部における前側立上り片の先端の折れ部よりも低い高さ位置に形成され、
かつ、前記後フランジ部における後フランジ部と連結片とが接合する接合面は、前記後側立上り片の先端の折れ部より上方では該折れ部より後方に位置しており、
前記立上り部を地覆部の後端より後方にはみ出させて、前記支柱は地覆部に立設されていることを特徴とする防護柵。
【背景技術】
【0002】
一般に、橋梁部や山間部の道路においては、通行車が道路の側縁を越えて道路外に落下することを防ぐために高欄等の防護柵が設けられている。そして、これらの防護柵は、一般に道路の側縁に設けられたコンクリート製の地覆部上に取付けられている。
【0003】
前記防護柵は、車両が道路から飛び出さないために設けられたものであるが、車両が防護柵に衝突すると車両や防護柵への破損等の影響も大きい。したがって、特に幅狭の地覆部に設けられた防護柵を取り替える場合は、横桟を道路側から離れた後方に設置する要望が増えており、横桟を支える支柱を地覆部の後方に設置するばかりでなく、更に支柱においても横桟をなるべく後方に支えることができるような構造が採用されることがある。
【0004】
例えば、特許文献1には、橋梁の地覆コンクリート上に固定されるプレートと、前部フランジと、後部フランジと、両フランジを連結するウエブを有すると共に、前記プレート上に立設された支持本体と、前記プレートの下面に締結部材を介して配置され、前記地覆コンクリートの車道の反対側面に圧接された補助金具とを備える防護柵用支柱が提案されている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記防護柵支柱においては、支柱のプレートの後方が地覆コンクリートの後端から更に後方にはみ出ても、補助金具で支えることができるものであるが、一般に地覆コンクリートより後方は、河川や崖等のような作業者が立ち入ることが困難な場合があり、補助金具を取付ける際の作業性は必ずしもよくなく、また補助金具を用いる分のコストが上昇する。
【0007】
本発明は、前記の如き問題点を解消し、地覆部上に設置する際に、防護柵の横桟をなるべく後方に設置しつつ、安定的に取付けることができる防護柵を提供せんとするものである。
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は次のような構成としている。
すなわちこの発明に係る防護柵は、道路側縁の地覆部に立設された支柱の間に横桟が取付けられた防護柵であって、前記支柱は、前記横桟が取付けられる前フランジ部と、前記前フランジ部の後方に対向して配置された後フランジ部と、該前フランジ部と後フランジ部とを連結する連結片とを備えた支柱本体と、該支柱本体が固定されかつアンカーボルトにより地覆部に固定されるベース部とを備え、
前記前フランジ部は、前面が道路に面するようにしてベース部に固定される前側立上り片と、該前側立上り片の先端を折れ部として、該折れ部から上斜め後方に向けて傾斜する前側傾斜片と、該前側傾斜片の上端から上方に立ち上がり横桟を取付ける横桟取付片とが形成されるとともに、
前側立上り片の前面は、前記ベース部の先端から前記ベース部の前後方向の寸法の2分の1以上後方に位置するように配置され、
前記後フランジ部は、ベース部に固定される後側立上り片と、該後側立上り片の先端を折れ部として、該折れ部から上斜め後方に向けて傾斜する傾斜片と、該傾斜片の先端から上方に立ち上がり前記前フランジ部の横桟取付片の後方に相対向配置された立上り部とが形成され、
前記後フランジ部における後側立上り片の先端の折れ部は、前記前フランジ部における前側立上り片の先端の折れ部よりも低い高さ位置に形成され、
かつ、前記後フランジ部における後フランジ部と連結片とが接合する接合面は、前記後側立上り片の先端の折れ部より上方では該折れ部より後方に位置しており、
前記立上り部を地覆部の後端より後方にはみ出させて、前記支柱は地覆部に立設されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、後フランジ部は、ベース部に固定される後側立上り片から斜め後方に屈曲することにより折れ部が設けられると共に、後フランジ部と連結片とが接合する接合面は、折れ部より上方では折れ部より後方に位置しているので、車両が防護柵の横桟に衝突した際、前記接合面を通じて後フランジ部を後方に押圧する荷重が、該接合面のどの部位においても、折れ部より後方で生じ、折れ部に荷重が集中しやすくなり、前記折れ部を基点とする変形を誘導することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、本発明を実施するための最良の形態について図面を参照し、具体的に説明する。
【0012】
図1〜5は本発明に係る防護柵Pにおいて第1の実施形態を示す説明図であり、
図1は正面図、
図2は
図2の拡大断面図、
図3は
図1の道路側から見た部分拡大斜視図、
図4は道路と反対側から見た部分拡大斜視図、
図5は
図4の部分分解斜視図である。1は道路側縁の地覆部Rに立設された支柱、2は支柱1の間に架設された横桟であり、本発明に係る防護柵Pは支柱1、横桟2から主に構成され、支柱1はアンカーボルトB2を介して地覆部Rに固定されている。そして防護柵Pは、車両が地覆部Rの前端に乗り上げただけでは、衝突しにくくするために、地覆部Rの後方寄りに支柱1を固定して横桟2がなるべく後方に配置されるようにしている。(なお、本説明において、道路側を前方、道路と反対側を後方とする。)また支柱1も地覆部Rの後方寄りに位置するように、後記する支柱1を地覆部Rに固定するためのベース部4の前端よりも後方に横桟2が位置している。
【0013】
支柱1は、横桟2が取付けられる支柱本体3と、該支柱本体3の下端が固定されるベース部4とを備えている。
【0014】
横桟2は、支柱1の間に架設されるものであり、車輌が衝突した際の衝撃を吸収して容易に破断されないための必要な強度を考慮すると、強度的に安定しておりコストの安い鋼管を適宜長さに切断したものが好適に用いられ、耐食性を向上させるために、亜鉛めっきや塗装を施してもよい。本実施形態では、横桟2の断面形状は円形であり、横桟2同士は横桟2内に挿入された筒状のスリーブ21を介して横方向に連結されている。尚、横桟2の断面形状は矩形状あるいは楕円形状等でもよく、スリーブ21の断面形状もその形状に合わせて横桟2同士を連結できるものであればよい。
【0015】
支柱本体3は、道路側に配置されて横桟2が取付けられる前フランジ部31と、前フランジ部31の後方に対向して配置された後フランジ部32と、前フランジ部31と後フランジ部32とを連結する連結片33とから構成され、これら前フランジ部31と後フランジ部32とが連結片33に溶接によって接合されて一体化されている。前フランジ部31の前面には、後方に凹んで形成された支持部31aが設けられ、横桟2が該支持部31aに当接され、支持部31aから横桟2内に挿入されたスリーブ21に向けて貫通された貫通孔に通された固定ボルトB1と、ナットN1によって取付けられている。なお前記固定ボルトB1は、支持部31aを介さずに、スリーブ21を介して横桟2同士を連結するために用いてもよい。また前記支持部31aは、前フランジ部31と一体に形成されたものでもよく、前フランジ部31と別体で形成して、溶接等により接合したものでもよい。
【0016】
また前フランジ部31は、溶接によってベース部4に接合されて、好適には垂直に立ち上がる前側立上り片31bと、その先端から上斜め後方に向けて傾斜する前側傾斜片31cと、本形態では、その上端から上方に垂直に立ち上がる横桟取付片31dとを備え、横桟取付片31dに横桟2が取付けられる支持部31aが設けられている。
【0017】
後フランジ部32は、本形態では、前フランジ部31より左右方向の幅が短くなされている。そして、ベース部4の後端面に下端部が固定されて、好適には垂直に立ち上がる後側立上り片32aと、その先端を折れ部34として、ここから上斜め後方に向けて傾斜する傾斜
片32bとその先端から上方に垂直に立ち上がる立上り部32cとからなる後側屈曲片32dとを形成することにより、折れ部34より上方に位置する後側屈曲片32dにおける連結片33との接合面35を折れ部34より後方に位置するようにし、さらにその後側屈曲片32dの上端が前側に向けて屈曲されて、前フランジ部31の背面に接合されている。
【0018】
連結片33は、本形態では、前フランジ部31と後フランジ部32との間に配置されて前面側が前フランジ部31の背面に溶接等によって接合され、背面側が後フランジ部32の前面に溶接等によって接合されている。
【0019】
支柱本体3は、車輌が衝突した際の衝撃を吸収して容易に破断しないための必要な強度を考慮すると、強度的に安定しておりコストの安い鋼材を適宜形状に加工したものを接合したものが好適に用いられ、耐食性を向上させるために、亜鉛めっきや塗装を施してもよい。また支柱本体3は、アルミニウム合金、ステンレス合金等の他の金属を用いてもよい。
【0020】
支柱1のベース部4は、
図3〜7に示すように、地覆部Rの後方側であって、該ベース部4の後端が地覆部Rの後端からはみ出ないように該地覆部Rに固定されている。そして、ベース部4は、横長長方形状であって、道路側となる前部左側と前部右側、道路側と反対側となる後方左側と後方右側とに貫通孔5が設けられている。
【0021】
地覆部Rには、アンカーボルトB2が設けられ、地覆部R上に突出するアンカーボルトB2が設けられ、その上端のねじ部がベース部4の各貫通孔5を挿通され、スプリングワッシャW及び平片状のワッシャWを介してナットN2をベース部4上から締め付けることにより、ベース部4が地覆部R上に固定される。
【0022】
アンカーボルトB2は、地覆部Rに強固に固着できる形態であれば、地覆部Rに設けた挿入孔Cに挿入して接着剤により両者の隙間を充填する形態でもよく、また前記挿入孔Cに埋設した雌めじアンカー(図示せず)に螺合されるものでもよい。
【0023】
ベース部4は、車輌が衝突した際に、支柱本体3に加わる衝突荷重を吸収して容易に破断しないための必要な強度を考慮すると、強度的に安定しておりコストの安い鋼片を適宜長さに切断したものが好適に用いられ、耐食性を向上させるために、亜鉛めっきや塗装を施してもよい。また、ベース部4の形状は、設置される地覆部Rの幅寸法や必要な強度に応じて、正方形状や縦長の長方形状でもよく、隅部を切除した形態でもよい。
【0024】
ベース部4の道路側となる前部左側と前部右側に設けられた貫通孔5a、5bは、本実施形態では、支柱本体の連結片33を中央にして左右対称状に配置され、防護柵Pの長手方向である横方向に長い横長孔である。貫通孔5a、5bの形態は特に限定されるものではなく、アンカーボルトB2の位置調整や支柱1の僅かな設置誤差が生じても貫通孔5a、5bにアンカーボルトB2を挿入してナットN2等によりベース部4が締結される形態であればよい。
【0025】
貫通孔5a、5bより後方に設けられた貫通孔5c、5dは、これも支柱本体3の連結片33を中央にして左右対称状に配置されて、防護柵Pの長手方向である横方向に長い横長孔である。そして、貫通孔5c、5dは、前フランジ部31と後フランジ部32との間で、前記前フランジ側に位置している。貫通孔5c、5dの形態は特に限定されるものではなく、アンカーボルトB2の位置調整や支柱1の僅かな設置誤差が生じても前記貫通孔5c、5dにアンカーボルトB2を挿入してナットN2等によりベース部4が締結される形態であればよい。
【0026】
次に、防護柵Pの横桟2に車両が衝突した場合について詳しく説明する。車両が地覆部R上に乗り上げて、横桟2に衝突した場合、その衝突荷重によって、支柱本体3の前部は上方へ引っ張られる引張力が働き、支柱本体3の後部は下方へ押し下げられる圧縮力が生じる。この引張力に対しては、ベース部4の貫通孔5a、5bは、支柱本体3の下端より前方でベース部4の前端より後方に配置されているので、ベース部4の前記4個の貫通孔5に挿入されたアンカーボルトB2によってベース部4の前部が上方へ捲り上げられることを効率的に抑えることができる。また貫通孔5c、5dに挿入されたアンカーボルトB2は、前フランジ部31と後フランジ部32との間で、前記前フランジ側に位置しているので、前記ベース部4の捲り上がりを更に効果的に抑えることができる。
【0027】
また後フランジ部32は、後側立上り片32aとその先端から上斜め後方に向けて傾斜する後側屈曲片32dとの間に折れ部34が設けられている。そして、後フランジ部32
の折れ部34より上方に位置する後側屈曲片32dにおいては、当該後側屈曲片32dと連結片33とが接合する接合面35は、折れ部34の前後方向の位置Xより後方に位置している。すなわち、本形態においては、後フランジ部32の後側屈曲片32dと連結片33との接合面35は、前記折れ部34からその上端にわたって、折れ部34と同じ位置かそれよりも後方に位置している。
【0028】
これにより、車両が横桟2に衝突した際、横桟2から前フランジ部31、連結片33を経て後フランジ部32を後方に押圧する荷重が掛かるが、前記荷重は、折れ部34より上方では、該接合面35のどの部位においても、折れ部34より後方で生じるため、折れ部34に荷重が集中しやすくなり、折れ部34を基点とする変形を誘導することができる。
【0029】
前側立上り片31bの前面は、ベース部4の先端から前後方向の寸法Yの2分の1以上奥になるように位置するのが好ましい。これにより、車両が横桟2に衝突した際、支柱本体3の前部は前方に引っ張られても、ベース部4の前部は捲り上げられにくくなる。また、ベース部4の肉厚を通常(16mm)より厚くして(19mm)、前フランジ部31の肉厚(6mm)の3倍以上となされている。これにより、前フランジ部31が固定されたベース部4の中央部も捲り上がられにくくなる。更に、後フランジ部32の後側立上り
片32aは、ベース部4の後端面に下端部が溶接により接合されている。これにより、後フランジ部32をより後方に固定することが可能となり、またベース部4との接合強度を増すことができる。
【0030】
これらによって、比較的狭い地覆部Rに防護柵Pを取付ける場合であっても、防護柵Pの横桟2を道路側から離れた地覆部Rの後側に横桟2を取付ける支柱1を安定的に固定することができる。
【0031】
図8は、それぞれ本発明に係る防護柵Pの変形を示す側面図である。本形態に係る防護柵Pは、
図1〜7に示された防護柵Pに比べて、主に支柱本体3の前フランジ部31及び後フランジ部32が異なるものであるが、他は同様な形態である。
【0032】
すなわち、
図8に示された防護柵Pにおいては、前フランジ部31は、
図1〜6に示された形態と同様であるが、後フランジ部32において、前記後側屈曲片32dの代わりに後側立上り片32aの上端から後方に向けて張り出して湾曲する後側湾曲片36を備えるものであって、この点が異なるが、折れ部34より上方に位置する後側湾曲片36においても、当該後側湾曲片36と連結片33とが接合する接合面35は、折れ部34の前後方向の位置Xより後方に位置しているものであり、後フランジ部32において、折れ部34より上方の連結片33と接合する接合面35が、折れ部34の前後方向の位置Xより後方に位置している点においては、
図1〜7に示された形態と同様である。
【0033】
また
図9に示された防護柵Pは、前フランジ部31が、前側立上り片31bと、その上端から後方に向けて張り出して湾曲する前側湾曲片37とを備え、該前側湾曲片37に横桟2が取付けられる支持部37aが設けられている。また後フランジ部32は、
図8に示された防護柵Pと同様に、後側立上り片32aと、その上端から後方に向けて張り出して湾曲する後側湾曲片36とを備えており、この点が異なるものであるが、後フランジ部32において、折れ部34より上方の連結片33と接合する接合面35が、折れ部34の前後方向の位置Xより後方に位置している点においては、
図1〜7に示された形態及び
図8に示された形態と同様である。
【0034】
この
図8−9に示すように、前フランジ部31及び後フランジ部32の形態は、本発明の目的を達成する範囲であれば、適宜変更してもよい。