(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5750181
(24)【登録日】2015年5月22日
(45)【発行日】2015年7月15日
(54)【発明の名称】超音波診断装置
(51)【国際特許分類】
A61B 8/06 20060101AFI20150625BHJP
A61B 8/14 20060101ALI20150625BHJP
【FI】
A61B8/06
A61B8/14
【請求項の数】8
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-70936(P2014-70936)
(22)【出願日】2014年3月31日
【審査請求日】2015年3月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】390029791
【氏名又は名称】日立アロカメディカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮地 鑑
(72)【発明者】
【氏名】板谷 慶一
(72)【発明者】
【氏名】坂下 肇
(72)【発明者】
【氏名】西山 知秀
(72)【発明者】
【氏名】関 佳徳
【審査官】
竹内 あや乃
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−125203(JP,A)
【文献】
特開2014−36735(JP,A)
【文献】
特開2005−110939(JP,A)
【文献】
森三佳,血流を画像化するVector Flow Mappingとは,The Lipid,2014年,Vol.25, No.1,pp.81-84
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 8/00−8/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波を送受するプローブと、
プローブを制御することにより生体内から超音波の受信信号を得る送受信部と、
超音波の受信信号に基づいて生体内の流体についての運動ベクトルの分布を得るベクトル演算部と、
運動ベクトルの分布に基づいて流体の流れを追跡し、流体の流れが回帰条件を満たすか否かに基づいて流体内の渦を検出する渦検出部と、
を有する、
ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項2】
請求項1に記載の超音波診断装置において、
前記渦検出部は、複数の開始点について、各開始点ごとにその開始点から運動ベクトルの分布に従って流体の流れを追跡し、各開始点から追跡される流体の流れが回帰条件を満たす場合に当該流れが渦であると判定する、
ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の超音波診断装置において、
前記渦検出部は、各開始点から流体の流れを追跡して得られる流線に基づいて当該流れが渦か否かを判定するにあたり、当該開始点から当該流線上の点までの距離に基づいた回帰条件により渦か否かを判定する、
ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の超音波診断装置において、
前記渦検出部は、各開始点から追跡される流体の流れが渦である場合に、その渦の外側の開始点から追跡される流体の流れが渦であるか否かを判定することにより、渦の外側に向かって複数の開始点について渦に対応するか否かを判定し、渦に対応すると判定された最も外側の開始点から得られる流体の流れに基づいて渦の外縁を決定する、
ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の超音波診断装置において、
前記渦検出部は、渦内の注目点について、当該注目点を取り囲む複数の運動ベクトルのうち、互いに対向する運動ベクトル同士が逆方向である場合に、当該注目点を渦の中心点とする、
ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項6】
請求項5に記載の超音波診断装置において、
前記渦検出部は、二次元平面内において検出された渦内の注目点について、当該注目点の上下に近接する運動ベクトルが互いに逆方向であり、且つ、当該注目点の左右に近接する運動ベクトルが互いに逆方向である場合に、当該注目点を渦の中心点とする、
ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項7】
請求項5または6に記載の超音波診断装置において、
前記渦検出部は、中心点の位置が同じ複数の渦を検出した場合に、それら複数の渦のうち最大の渦を当該中心点に対応した渦とする、
ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項8】
超音波の受信信号に基づいて生体内の流体についての運動ベクトルの分布を得るベクトル演算部と、
運動ベクトルの分布に基づいて流体の流れを追跡し、流体の流れが回帰条件を満たすか否かに基づいて流体内の渦を検出する渦検出部と、
を有する、
ことを特徴とする流体情報処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波診断装置に関し、特に、流体に係る診断情報を得る技術に関する。
【背景技術】
【0002】
血流などの流体に超音波を送受して得られる受信信号から流体に係る診断情報を得る技術が知られている。例えば、特許文献1には、生体内の流体に対して超音波を送受して得られる受信信号(エコーデータ)に基づいて、観測面内の複数点において流体に関する2次元の速度ベクトルを得る技術が記載されている。観測面内の複数点における2次元の速度ベクトルの分布から、流体の流れを示す流線などの診断情報を得ることが可能になり、例えば、心臓等の診断への応用が期待される。
【0003】
心臓の診断においては、心臓内における血流の渦に注目する場合があり、例えば、超音波診断装置に血流に関する2次元の速度ベクトルの分布や流線を表示させ、医師等のユーザが目で見て渦等の状態を確認していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013−192643号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した背景技術に鑑み、本願の発明者は、超音波を利用して血流等の流体に係る診断情報を得る技術について研究開発を重ねてきた。
【0006】
本発明は、その研究開発の過程において成されたものであり、その目的は、超音波を利用して流体内の渦を検出する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的にかなう好適な超音波診断装置は、超音波を送受するプローブと、プローブを制御することにより生体内から超音波の受信信号を得る送受信部と、超音波の受信信号に基づいて生体内の流体についての運動ベクトルの分布を得るベクトル演算部と、運動ベクトルの分布に基づいて流体の流れを追跡し、流体の流れが回帰条件を満たすか否かに基づいて流体内の渦を検出する渦検出部と、を有することを特徴とする。
【0008】
上記構成において、運動ベクトルとは、流体の運動に係るベクトル情報であり、具体的には、流体内における各部分の速度と方向を示す速度ベクトルや、各部分の移動量と方向を示す移動ベクトルなどが含まれる。運動ベクトルの分布は、例えば、特許文献1に記載された技術(2次元の速度ベクトルの分布)を利用して得ることができるものの、他の公知の技術を利用して運動ベクトルの分布を得るようにしてもよい。
【0009】
また、回帰条件とは、流体の流れの状態を評価するための条件であり、例えば、遠方に離れてから再び元の位置又は元の位置の近傍に戻ってくる流体の流れを渦として選定するための条件である。例えば、流体の流れを追跡してその追跡結果が回帰条件を満たす場合に、その流れが渦であると判定される。
【0010】
上記装置によれば、流体の流れが回帰条件を満たすか否かに基づいて流体内の渦が検出されるため、例えば、渦を検出するために煩雑な操作をユーザに強いることが無く、望ましくは渦を検出するためのユーザ操作が不要になる。
【0011】
望ましい具体例において、前記渦検出部は、複数の開始点について、各開始点ごとにその開始点から運動ベクトルの分布に従って流体の流れを追跡し、各開始点から追跡される流体の流れが回帰条件を満たす場合に当該流れが渦であると判定することを特徴とする。
【0012】
望ましい具体例において、前記渦検出部は、各開始点から流体の流れを追跡して得られる流線に基づいて当該流れが渦か否かを判定するにあたり、当該開始点から当該流線上の点までの距離に基づいた回帰条件により渦か否かを判定する、ことを特徴とする。
【0013】
望ましい具体例において、前記渦検出部は、各開始点から追跡される流体の流れが渦である場合に、その渦の外側の開始点から追跡される流体の流れが渦であるか否かを判定することにより、渦の外側に向かって複数の開始点について渦に対応するか否かを判定し、渦に対応すると判定された最も外側の開始点から得られる流体の流れに基づいて渦の外縁を決定する、ことを特徴とする。
【0014】
望ましい具体例において、前記渦検出部は、渦内の注目点について、当該注目点を取り囲む複数の運動ベクトルのうち、互いに対向する運動ベクトル同士が逆方向である場合に当該注目点を渦の中心点とする、ことを特徴とする。
【0015】
望ましい具体例において、前記渦検出部は、二次元平面内において検出された渦内の注目点について、当該注目点の上下に近接する運動ベクトルが互いに逆方向であり、且つ、当該注目点の左右に近接する運動ベクトルが互いに逆方向である場合に、当該注目点を渦の中心点とする、ことを特徴とする。
【0016】
望ましい具体例において、前記渦検出部は、中心点の位置が同じ複数の渦を検出した場合に、それら複数の渦のうち最大の渦を当該中心点に対応した渦とする、ことを特徴とする。
【0017】
また、上記目的にかなう好適な流体情報処理装置は、超音波の受信信号に基づいて生体内の流体についての運動ベクトルの分布を得るベクトル演算部と、運動ベクトルの分布に基づいて流体の流れを追跡し、流体の流れが回帰条件を満たすか否かに基づいて流体内の渦を検出する渦検出部と、を有することを特徴とする。
【0018】
上記流体情報処理装置は、コンピュータにより実現することができる。例えば、超音波の受信信号に基づいて生体内の流体についての運動ベクトルの分布を得るベクトル演算機能と、運動ベクトルの分布に基づいて流体の流れを追跡し、流体の流れが回帰条件を満たすか否かに基づいて流体内の渦を検出する渦検出機能と、をコンピュータに実現させるプログラムにより、コンピュータを上記流体情報処理装置として機能させることができる。なお、そのプログラムは、例えば、ディスクやメモリなどのコンピュータが読み取り可能な記憶媒体に記憶され、その記憶媒体を介してコンピュータに提供されてもよいし、インターネットなどの電気通信回線を介してコンピュータに提供されてもよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明により、超音波を利用して流体内の渦を検出する技術が提供される。例えば、本発明の好適な態様によれば、流体の流れが回帰条件を満たすか否かに基づいて流体内の渦が検出されるため、渦を検出するために煩雑な操作をユーザに強いることが無く、望ましくは渦を検出するためのユーザ操作が不要になる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の実施において好適な超音波診断装置の全体構成図である。
【
図2】血流の流れを追跡する処理の具体例を説明するための図である。
【
図3】複数の開始点SPの配置に関する具体例を示す図である。
【
図4】渦の判定に係る具体例を説明するための図である。
【
図5】渦の外縁を決定する処理の具体例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1は、本発明の実施において好適な超音波診断装置の全体構成図である。
図1の超音波診断装置は、生体内における流体の渦を検出する機能を備えており、特に、心臓内における血流の渦を検出するのに適している。そこで、以下においては、診断対象となる流体の好適な一例である心臓内の血流に関する渦の検出について説明する。
【0022】
プローブ10は、心臓を含む空間内に超音波を送受波する超音波探触子である。プローブ10は、複数の振動素子を備えており、複数の振動素子が電子的に走査制御され、心臓を含む空間内で超音波ビームが走査される。プローブ10は、例えば、医師等のユーザ(検査者)に把持されて被検者の体表面上に当接して用いられる。なお、プローブ10は被検者の体腔内に挿入して用いられるものであってもよい。
【0023】
送受信部12は、送信ビームフォーマーおよび受信ビームフォーマーとしての機能を備えている。つまり、送受信部12は、プローブ10が備える複数の振動素子の各々に対して送信信号を出力することにより送信ビームを形成し、さらに、複数の振動素子から得られる複数の受波信号に対して整相加算処理などを施して受信ビームを形成する。これにより、超音波ビーム(送信ビームと受信ビーム)が走査面内において走査され、超音波ビームに沿って受信信号が形成される。
【0024】
超音波画像形成部20は、走査面内から得られる受信信号に基づいて超音波画像の画像データを形成する。超音波画像形成部20は、例えば、心臓内の血流が含まれる断面についてのBモード画像の画像データを形成する。
【0025】
ドプラ処理部30は、超音波ビームに沿って得られる受信信号に含まれるドプラシフト量を計測する。ドプラ処理部30は、血流によって超音波の受信信号内に生じるドプラシフトを例えば公知のドプラ処理により計測して、血流についての超音波ビーム方向の速度情報を得る。
【0026】
速度ベクトル演算部40は、血流についての超音波ビーム方向の速度情報から、走査面内における2次元の速度ベクトルの分布を形成する。超音波ビーム方向に沿った1次元の速度情報から、走査面内における2次元の速度ベクトルの分布を形成するにあたっては、公知の様々な手法を利用することができる。
【0027】
例えば、特許文献1(特開2013−192643号公報)に説明されるように、血流についての超音波ビーム方向の速度情報に加えて、心臓壁の運動情報を利用して、走査面内の各位置における血流の2次元速度ベクトルを得るようにしてもよい。なお、互いに方向が異なる2本の超音波ビームを形成して、2本の超音波ビームの各々から速度情報を得て、2次元の速度ベクトルを形成するようにしてもよい。
【0028】
速度ベクトル演算部40は、超音波が送受される空間に対応した演算用座標系において複数のサンプル点について、各サンプル点ごとに速度ベクトルを得る。例えば、演算用座標系をxyz直交座標系で表し、超音波の走査面に対応したxy平面内で、各サンプル点ごとに速度ベクトルを得て、2次元の速度ベクトルの分布を形成する。
【0029】
渦検出部50は、速度ベクトル演算部40において得られる2次元の速度ベクトルの分布に基づいて流体の流れを追跡し、流体の流れが回帰条件を満たすか否かに基づいて流体内の渦を検出する。渦検出部50における具体的な処理については後に詳述する。
【0030】
表示画像形成部60は、超音波画像形成部20から得られる超音波画像の画像データ、速度ベクトル演算部40から得られる2次元の速度ベクトル、渦検出部50における渦の検出結果などに基づいて表示画像を形成する。表示画像形成部60は、例えば、心臓内の断面に係るBモード画像内において血流の渦を明示した表示画像や、Bモード画像内において速度ベクトルの分布または速度ベクトルの分布から得られる流線を示した表示画像を形成する。表示画像形成部60において形成された表示画像は表示部62に表示される。
【0031】
制御部70は、
図1に示す超音波診断装置内を全体的に制御する。なお、
図1の超音波診断装置は、例えば、マウス、キーボード、トラックボール、タッチパネル、ジョイスティック等の操作デバイスを備えていることが望ましい。そして、制御部70による全体的な制御には、操作デバイス等を介してユーザから受け付けた指示も反映される。
【0032】
図1に示す構成(符号を付した各部)のうち、送受信部12,超音波画像形成部20,ドプラ処理部30,速度ベクトル演算部40,渦検出部50,表示画像形成部60は、それぞれ、例えば電気電子回路やプロセッサ等のハードウェアを利用して実現することができ、その実現において必要に応じてメモリ等のデバイスが利用される。表示部62の好適な具体例は液晶ディスプレイ等である。制御部70は、例えば、CPUやプロセッサやメモリ等のハードウェアと、CPUやプロセッサの動作を規定するソフトウェア(プログラム)との協働により実現することができる。
【0033】
図1の超音波診断装置の概要は以上のとおりである。次に、
図1の超音波診断装置による渦の検出に係る具体例について詳述する。なお、
図1に示した構成(符号を付した各部)については、以下の説明において
図1の符号を利用する。
【0034】
図2は、血流の流れを追跡する処理の具体例を説明するための図である。渦検出部50は、複数の開始点SPについて、各開始点SPごとに、その開始点SPを起点として2次元の速度ベクトルの分布に従って流体の流れを追跡する。
図2には、代表例として1つの開始点SPのみが図示されている。
【0035】
渦検出部50は、開始点SPから、その開始点SPの位置における速度ベクトル(
図2における矢印)の方向に進んで追跡点TPを探索する。追跡点TPは、例えば、破線で示す格子状の演算グリッド上において探索される。演算グリッド上の追跡点TPが探索されると、その追跡点TPの位置における速度ベクトルが参照され、その速度ベクトルの方向に進んで次の追跡点TPが探索される。
【0036】
なお、追跡点TPの位置に速度ベクトルが無い場合には、例えば、その追跡点TPの近傍において既に算出されている複数の速度ベクトルに基づいて、例えば補間処理等により得られる補間ベクトルが、その追跡点TPにおける速度ベクトルとされる。
【0037】
こうして、
図2に示すように、1つの開始点SPを起点として速度ベクトルの分布に従って次々に追跡点TPが探索され、血流の流れが追跡される。また、開始点SPと複数の追跡点TPについて、互いに隣り合う点同士を直線または曲線で結ぶことにより、折れ線状または曲線状の流線が形成される。
【0038】
渦検出部50は、診断対象となる関心領域内、例えば心臓の心腔内の全域に亘って、複数の開始点SPを離散的に配置し、各開始点SPを起点として血流の流れを追跡して流線を形成する。
【0039】
図3は、複数の開始点SPの配置に関する具体例を示す図である。渦検出部50は、例えば
図3に例示するように、複数の開始点SPを格子状に離散的に配置し、各開始点SPごとに流線(実線の曲線)を形成する。なお、複数の開始点SPを配置する格子の大きさや格子の間隔(複数の開始点SPの間隔)は可変であることが望ましい。流線が形成されると、渦検出部50は、各開始点SPから得られる流線に基づいて、その開始点SPを起点とする血流の流れが渦であるか否かを判定する。
【0040】
図4は、渦の判定に係る具体例を説明するための図である。
図4には、代表例として1つの開始点SPのみが図示されており、その開始点SPから得られる流線が実線で図示されている。渦検出部50は、開始点SPから流線上の点までの距離に基づいた回帰条件により、開始点SPから得られる流線が渦か否かを判定する。
【0041】
具体的には、流線上の複数の計測点について、各計測点ごとに開始点SPからその計測点までの距離Lが算出され、流線に沿って距離Lの最大値Lmaxと最小値Lminが探索される。例えば、開始点SPから予め定められた流線長までが探索範囲とされ、まず、最大値Lmaxが探索され、次に、最大値Lmaxの後方(流線上において開始点SPから遠ざかる方向)において最小値Lminが探索される。そして、渦検出部50は、最大値Lmaxと最小値Lminの比率(Lmin/Lmax)が閾値(例えば0.4)以下である場合に、開始点SPから得られる流線が渦であると判定する。
【0042】
なお、距離Lは、流線の開始点SP以外の点を基準としてもよい。例えば、開始点SPの近傍または流線の近傍に基準点を設定し、その基準点から流線上の計測点までの距離Lが利用されてもよい。また、距離Lに基づいた回帰条件は、あくまでも渦の判定に係る1つの具体例であり、流線に係る他の評価値により渦の判定が行われてもよい。
【0043】
渦検出部50は、複数の開始点SPから得られる複数の流線(例えば
図3参照)について、各開始点SPごとにその流線(血流の流れ)が渦であるか否かを判定する。そして、渦検出部50は、各開始点SPから追跡される流線(流体の流れ)が渦である場合に、その渦の外側における流れを確認して渦の外縁を決定する。
【0044】
図5は、渦の外縁を決定する処理の具体例を説明するための図である。
図5には、開始点SPから得られる流線が渦である場合の具体例が図示されている。渦検出部50は、開始点SPから得られる流線を渦であると判定すると、その渦の外側に開始点SPをずらして、渦の外側における流線(流体の流れ)を確認する。
【0045】
例えば、
図5に示すように、渦検出部50は、開始点SPを渦の外側にずらして開始点SP1とし、開始点SP1から得られる流線1について渦か否かの判定(
図4参照)を行う。そして、流線1が渦である場合に、渦検出部50は、さらに、開始点SP1を渦の外側にずらして開始点SP2とし、開始点SP2から得られる流線2について渦か否かの判定(
図4参照)を行う。そして、流線2が渦である場合に、渦検出部50は、さらに、開始点SP2を渦の外側にずらして開始点SP3とし、開始点SP3から得られる流線3について渦か否かの判定(
図4参照)を行う。
【0046】
こうして、渦の外側に向かって開始点SPをずらしながら渦か否かの判定を行い、開始点SP3から得られる流線3が渦ではないことを確認すると、渦検出部50は、渦であることを確認した最も外側の開始点SP2から得られる流線2を最も外側の渦であると判定する。そして、流線2に基づいて、渦の外縁が決定される。例えば、開始点SP2から流線2までの最短距離地点(
図4における最小値Lminの計測点)を直線で結び、当該直線と流線2によって形成される閉曲線が渦の外縁とされる。さらに、渦検出部50は、渦の中心点を探索してもよい。
【0047】
図6は、渦の中心点の具体例を示す図である。渦検出部50は、渦内における注目点について、その注目点を取り囲む複数の速度ベクトルのうち、互いに対向する速度ベクトル同士が逆方向である場合に、その注目点が渦の中心点であると判断する。
【0048】
具体的には、
図6に示すように、二次元平面内において検出された渦内の注目点について、その注目点の上下(Y軸方向)に近接する速度ベクトルUと速度ベクトルDが互いに逆方向であり、且つ、その注目点の左右(X軸方向)に近接する速度ベクトルLと速度ベクトルRが互いに逆方向である場合に、その注目点が渦の中心点とされる。
【0049】
渦検出部50は、複数の開始点SP(
図3参照)から得られる複数の流線について、各開始点SPごとに流線が渦であるか否かを判定し、渦であると判定された流線について、渦の中心点を探索する。そして、中心点の位置が同じである複数の渦が検出された場合には、それらの渦が同じ渦であるとみなされて一つに纏められる。例えば、中心点の位置が同じである複数の渦のうち、面積の大きい方の渦がその中心点に対応した渦として残される。
【0050】
図7は、渦の表示に係る具体例を示す図である。
図7の表示画像64は、表示画像形成部60において形成される画像の具体例であり、超音波画像形成部20において形成される心臓内の断面を示す超音波画像内に、渦検出部50において検出された血流内の渦を明示した画像である。例えば、渦検出部50において得られる渦の外縁が表示画像64内に描画される。
図7の表示画像64内には、2つの渦の外縁が破線で表示されている。医師等のユーザ(検査者)は、表示画像64から、渦の位置や大きさを視覚的に把握することができる。また、渦の中心点の座標や渦の面積(外縁の面積)などの渦に係る診断情報が数値等で表示されてもよい。これにより、医師等のユーザが定量的に渦の評価を行うことが可能になる。
【0051】
なお、各位置における速度ベクトルを矢印で示して、表示画像64内に速度ベクトルの分布を表示するようにしてもよいし、表示画像64内に公知のカラードプラ画像を表示させてもよい。
【0052】
以上、本発明の実施において好適な超音波診断装置について説明したが、例えば、
図1に示した速度ベクトル演算部40と渦検出部50と表示画像形成部60のうちの少なくとも一つをコンピュータにより実現し、そのコンピュータを流体情報処理装置として機能させてもよい。
【0053】
なお、上述した実施形態は、あらゆる点で単なる例示にすぎず、本発明の範囲を限定するものではない。本発明は、その本質を逸脱しない範囲で各種の変形形態を包含する。
【符号の説明】
【0054】
10 プローブ、12 送受信部、20 超音波画像形成部、30 ドプラ処理部、40 速度ベクトル演算部、50 渦検出部、60 表示画像形成部、70 制御部。
【要約】
【課題】超音波を利用して流体内の渦を検出する技術を提供する。
【解決手段】送受信部12は、プローブ10が備える複数の振動素子の各々に対して送信信号を出力することにより送信ビームを形成し、さらに、複数の振動素子から得られる複数の受波信号に基づいて受信ビームを形成する。これにより、超音波ビーム(送信ビームと受信ビーム)が走査面内において走査される。速度ベクトル演算部40は、血流についての超音波ビーム方向の速度情報から、走査面内における2次元の速度ベクトルの分布を形成する。渦検出部50は、速度ベクトル演算部40において得られる2次元の速度ベクトルの分布に基づいて流体の流れを追跡し、流体の流れが回帰条件を満たすか否かに基づいて流体内の渦を検出する。
【選択図】
図1