(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記特許文献1に開示の目荒らし装置は、目荒らしビットを利用して削孔された孔の壁面を切削し、壁面に目荒らしを形成することはできるが、一つの動作で建造物に複数の目荒らしを形成することはできない。また、この目荒らし装置は、回転する円盤状の目荒らしビットによって壁面を切断するが、壁面の切断中に不快かつ大きな音圧レベルの切断音が発生し、その切断音を小さくする手段を備えておらず、周辺に騒音をまき散らし、騒音公害の原因になる場合がある。
【0005】
本発明の目的は、構造物の表面から内部に向かって延びる所定深さの複数の目荒らしを一度の動作で形成することができる目荒らし装置を提供することにある。本発明の他の目的は、目荒らしの形成中に発生する不快かつ大きな切削音の音圧レベルを小さくすることができ、切削音を抑制した静かな状態で構造物に複数の目荒らしを形成することができる目荒らし装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するための本発明の前提は、構造物の表面から内部に向かって延びる所定深さの目荒らしを形成する目荒らし装置である。
【0007】
前記前提における本発明の
第1の特徴は、目荒らし装置が、前後方向へ並ぶ第1および第2支持壁と第1および第2支持壁から前方へ延びる第1〜第4側壁とを有する
とともに第1および第2支持壁の上端部から後方へ延びる連接壁と連接壁の後端部に取り付けられた固定座とを有するハウジングと、第1および第2支持壁とそれら側壁に囲繞された第1スペースと、第1スペースの前方に位置して第2支持壁とそれら側壁に囲繞された第2スペースと、それら支持壁に回転可能に支持された駆動軸を有して第1支持壁の後方に配置され
、先端部が固定座に着脱可能に固定された電気ドリルと、それら支持壁に回転可能に支持された従動軸を有して第1および第2スペースに延びる複数の目荒らしビットと、第1スペースに回転可能に設置されて電気ドリルの駆動軸の回転をそれら目荒らしビットの従動軸に伝える伝達手段とを備え、目荒らし装置では、それら側壁の前端縁に囲繞された前端開口から前方へそれら目荒らしビットの先端部が露出し、電気ドリルの駆動軸の回転にともなって従動軸とともにそれら目荒らしビットが回転し
つつ、それら目荒らしビットによって構造物をその表面から内部に向かって切削することにある。
【0008】
前記前提における本発明の
第2の特徴は、
目荒らし装置が、前後方向へ並ぶ第1および第2支持壁と第1および第2支持壁から前方へ延びる第1〜第4側壁とを有するハウジングと、第1および第2支持壁とそれら側壁に囲繞された第1スペースと、第1スペースの前方に位置して第2支持壁とそれら側壁に囲繞された第2スペースと、それら側壁の前端縁に取り付けられて前後方向へ伸縮可能な蛇腹部材と、それら支持壁に回転可能に支持された駆動軸を有して第1支持壁の後方に配置された電気ドリルと、それら支持壁に回転可能に支持された従動軸を有して第1および第2スペースに延びる複数の目荒らしビットと、第1スペースに回転可能に設置されて電気ドリルの駆動軸の回転をそれら目荒らしビットの従動軸に伝える伝達手段と、第2スペースから空気を吸引するバキューム手段とを備え、目荒らし装置では、蛇腹部材を構造物の表面に当接させ、バキューム手段によって第2スペースから空気を吸引しつつ第2スペースを負圧にしたときに、蛇腹部材が前後方向へ縮んで目荒らしビットの先端部が蛇腹部材から前方へ露出し、電気ドリルの駆動軸の回転にともなって従動軸とともにそれら目荒らしビットが回転しつつ、それら目荒らしビットによって構造物をその表面から内部に向かって切削することにある。
【0009】
前記第2の特徴を有する本発明の一例としては、ハウジングが、第1および第2支持壁の上端部から後方へ延びる連接壁と、連接壁の後端部に取り付けられて電気ドリルの先端部が着脱可能に固定される固定座とを含む。
【0010】
前記第2の特徴を有する本発明の他の一例としては、蛇腹部材が、それら側壁の前端縁に取り付けられて前後方向へ蛇腹折りされた伸縮部と、伸縮部の前端縁につながって構造物の表面に当接する所定面積の当接部とを有し、伸縮部と当接部とが、第1〜第4側壁の前端縁に囲繞された前端開口を取り囲んでいる。
【0011】
前記第2の特徴を有する本発明の他の一例としては、バキューム手段が、第1〜第4側壁のいずれかに連結された吸引ホースと、ハウジングの外側に配置されて吸引ホースに連結された吸引装置とから形成され、吸引装置の風量が、1.5〜4.5m
3/minの範囲にあり、吸引装置の吸引仕事率が、150〜400Wの範囲にある。
【0012】
前記第2の特徴を有する本発明の他の一例として、目荒らし装置では、電気ドリルが稼働すると同時に吸引装置が稼働し、または、電気ドリルが稼働してから0.3〜1.5秒経過後に吸引装置が稼働し、電気ドリルの稼働が停止すると同時に吸引装置の稼働が停止する。
【0013】
前記第2の特徴を有する本発明の他の一例としては、目荒らし装置が、第2スペースに空気を給気する給気弁機構を有し、給気弁機構では、構造物に目荒らしを形成したと略同時に第2スペースに空気を給気する。
【0014】
前記第1および第2の特徴を有する本発明の一例としては、それら目荒らしビットの従動軸が、電気ドリルの駆動軸を中心として駆動軸の径方向外方に位置しつつ周り方向へ等間隔離間して並んでいる。
【0015】
前記第1および第2の特徴を有する本発明の他の一例としては、目荒らし装置が、前記第1〜第4側壁の内面に取り付けられた防音部材を含む。
【0016】
前記第1および第2の特徴を有する本発明の他の一例としては、防音部材が、第2支持壁と前端開口との間の第2スペースに取り付けられている。
【0017】
前記第1および第2の特徴を有する本発明の他の一例としては、防音部材が、1〜6cmの厚みを有するフェルト、ロックウール、グラスウール、ゴムシート、塩ビシートのうちのいずれかである。
【0018】
前記第1および第2の特徴を有する本発明の他の一例としては、伝達手段が、電気ドリルの駆動軸に取り付けられた駆動ギアと、それら目荒らしビットの従動軸に取り付けられた従動ギアとを含み、駆動ギアと従動ギアとのギア比が、従動ギアを1とした場合に駆動ギアが1.2以上、または、駆動ギアを1とした場合に従動ギアが1.2以上である。
【0019】
前記第1および第2の特徴を有する本発明の他の一例としては、目荒らしビットが、ツイストドリルとコアドリルとのうちのいずれかである。
【0020】
前記第1および第2の特徴を有する本発明の他の一例としては、目荒らし装置による構造物の表面の目荒らし形成時に発生する切削音の音圧レベルが、50〜70dBの範囲にある。
【発明の効果】
【0021】
前記第1の特徴を有する本発明の目荒らし装置によれば、それら支持壁に回転可能に支持された駆動軸を有する電気ドリルと、それら支持壁に回転可能に支持された従動軸を有する複数の目荒らしビットとを有し、電気ドリルの駆動軸の回転にともなって従動軸とともにそれら目荒らしビットが回転し、それら目荒らしビットによって構造物をその表面から内部に向かって切削するから、構造物にその表面から内部に向かって延びる所定深さの複数の目荒らしを一度の動作で同時に形成することができ、目荒らしを一つずつ形成する場合と比較し、その手間と時間とを大幅に短縮することができる。
この目荒らし装置は、ハウジングが第1および第2支持壁の上端部から後方へ延びる連接壁と連接壁の後端部に取り付けられて電気ドリルの先端部が着脱可能に固定される固定座とを有するから、電気ドリルの先端部をハウジングの固定座に固定し、先端部から延びる電気ドリルの駆動軸をハウジングの第1および第2支持壁に回転可能に支持させることで、電気ドリルをハウジングに強固に固定することができ、電気ドリルの駆動軸のトルクをそれら目荒らしビットの従動軸に確実に伝えることができるとともに、それら目荒らしビットの刃先によって構造物をその表面から内部に向かって切削することができる。
【0022】
前記第2の特徴を有する本発明の目荒らし装置によれば、それら支持壁に回転可能に支持された駆動軸を有する電気ドリルと、それら支持壁に回転可能に支持された従動軸を有する複数の目荒らしビットとを有し、電気ドリルの駆動軸の回転にともなって従動軸とともにそれら目荒らしビットが回転し、それら目荒らしビットによって構造物をその表面から内部に向かって切削するから、構造物にその表面から内部に向かって延びる所定深さの複数の目荒らしを一度の動作で同時に形成することができ、目荒らしを一つずつ形成する場合と比較し、その手間と時間とを大幅に短縮することができる。この目荒らし装置は、第1〜第4側壁の前端縁に取り付けられて前後方向へ伸縮可能な蛇腹部材と、第2スペースから空気を吸引するバキューム手段とを含み、構造物に所定深さの目荒らしを形成するときに、バキューム手段によってハウジングの第2スペースから空気が吸引されてスペースが負圧になり、蛇腹部材が前後方向へ縮んで構造物の表面に吸い付き、蛇腹部材によってハウジングの各側壁と構造物の表面との間隙が塞がれるから、目荒らしビットによって構造物の表面を所定深さに切削するときに発生する切削音が第2スペースの外側に漏れることはなく、構造物の切削中における不快かつ大きな切削音の発生を防ぐことができ、切削音を抑制した静かな状態で構造物にその表面から内部に向かって延びる所定深さの目荒らしを形成することができる。この目荒らし装置は、バキューム手段によって第2スペースから空気が吸引されることにより、構造物の切削中に発生した塵埃を空気とともにバキューム手段に吸引させることができ、構造物の切削中における塵埃のまき散らしを防ぐことができる。また、構造物の切削中に発生した塵埃をバキューム手段に吸引させることで、ハウジングの第2スペースに塵埃が残存することはなく、第2スペースに塵埃が残存することによるその塵埃の防音部材への付着を防ぐことができ、防音部材の防音性能の低下を防ぐことができる。
【0023】
前記第2の特徴を有する本発明の目荒らし装置において、ハウジングが第1および第2支持壁の上端部から後方へ延びる連接壁と連接壁の後端部に取り付けられて電気ドリルの先端部が着脱可能に固定される固定座とを含む目荒らし装置は、電気ドリルの先端部をハウジングの固定座に固定し、先端部から延びる電気ドリルの駆動軸をハウジングの第1および第2支持壁に回転可能に支持させることで、電気ドリルをハウジングに強固に固定することができ、電気ドリルの駆動軸のトルクをそれら目荒らしビットの従動軸に確実に伝えることができるとともに、それら目荒らしビットの刃先によって構造物をその表面から内部に向かって切削することができる。
【0024】
前記第2の特徴を有する本発明の目荒らし装置において、蛇腹部材がそれら側壁の前端縁に取り付けられて前後方向へ蛇腹折りされた伸縮部と伸縮部の前端縁につながって構造物の表面に当接する所定面積の当接部とを有し、伸縮部と当接部とが前端開口を取り囲んでいる目荒らし装置は、バキューム手段によってハウジングの第2スペースから空気が吸引されて第2スペースが負圧になったときに、蛇腹部材の伸縮部が前後方向へ縮んで蛇腹部材の当接部が構造物の表面に吸い付き、前端開口を取り囲む蛇腹部材の当接部によってハウジングの各側壁と構造物の表面との間隙が塞がれるから、目荒らしビットによって構造物の表面を所定深さに切削するときに発生する切削音が第2スペースの外側に漏れることはなく、構造物の切削中における不快かつ大きな切削音の発生を防ぐことができ、切削音を抑制した静かな状態で構造物にその表面から内部に向かって延びる所定深さの目荒らしを形成することができる。
【0025】
前記第2の特徴を有する本発明の目荒らし装置において、バキューム手段が第1〜第4側壁のいずれかに連結された吸引ホースとハウジングの外側に配置されて吸引ホースに連結された吸引装置とから形成され、吸引装置の風量が1.5〜4.5m3/minの範囲にあり、吸引装置の吸引仕事率が150〜400Wの範囲にある目荒らし装置は、風量が前記範囲にあるとともに吸引仕事率が前記範囲にある吸引装置によってハウジングの第2スペースから空気が吸引されてスペースが確実に負圧になり、蛇腹部材が前後方向へ縮んで構造物の表面に吸い付き、蛇腹部材によってハウジングと構造物の表面との間隙が塞がれるから、目荒らしビットによって構造物の表面を所定深さに切削するときに発生する切削音が第2スペースの外側に漏れることはなく、構造物の切削中における不快かつ大きな切削音の発生を防ぐことができ、切削音を抑制した静かな状態で構造物にその表面から内部に向かって延びる所定深さの目荒らしを形成することができる。目荒らし装置は、風量や吸引仕事率が前記範囲にある吸引装置によってハウジングの第2スペースから空気が吸引されることにより、構造物の表面の切削中に発生した塵埃を空気とともに吸引装置に吸引させることができ、構造物の切削中における塵埃のまき散らしを防ぐことができる。また、構造物の切削中に発生した塵埃を吸引装置に吸引させることで、ハウジングの第2スペースに塵埃が残存することはなく、第2スペースに塵埃が残存することによるその塵埃の防音部材への付着を防ぐことができ、防音部材の防音性能の低下を防ぐことができる。
【0026】
前記第2の特徴を有する本発明の目荒らし装置において、電気ドリルが稼働すると同時に吸引装置が稼働し、または、電気ドリルが稼働してから0.3〜1.5秒経過後に吸引装置が稼働し、電気ドリルの稼働が停止すると同時に吸引装置の稼働が停止する目荒らし装置は、吸引装置が常時稼働していると、ハウジングの第2スペースが常時負圧になり、蛇腹部材を構造物の表面に当接させたときに蛇腹部材が構造物の表面に吸い付き、構造物の表面に対する目荒らし装置の位置決めが困難になるが、電気ドリルの稼働前に吸引装置が稼働することはなく、ハウジングの第2スペースが負圧になる前に蛇腹部材を構造物の表面に当接させることができ、構造物の表面に対する目荒らし装置の位置決めが容易になり、構造物の所望の位置に目荒らしを形成することができる。目荒らし装置は、電気ドリルの稼働が停止すると同時に吸引装置の稼働が停止するから、構造物に目荒らしを形成した後、構造物の表面から蛇腹部材を容易に離間させることができ、構造物に次の目荒らしを短時間で次々と形成することができる。また、電気ドリルの停止と同時に吸引装置を停止させるから、吸引装置を常時稼働させる場合と比較し、吸引装置の消費電力を少なくすることができ、目荒らし装置における省エネを図ることができる。
【0027】
前記第2の特徴を有する本発明の目荒らし装置において、第2スペースに空気を給気する給気弁機構を有し、給気弁機構において構造物に目荒らしを形成したと略同時に第2スペースに空気を給気する目荒らし装置は、バキューム手段によって第2スペースから空気を吸引し、第2スペースを負圧にしたときに、蛇腹部材が構造物の表面に吸着する場合があるが、目荒らしを形成したと略同時に給気弁機構を利用して第2スペースに空気が給気されるから、目荒らしを形成した後、第2スペースの負圧状態が解除され、蛇腹部材を構造物の表面から容易に引き離すことができ、次の目荒らしの形成作業にスムースに移ることができる。
【0028】
前記第1および第2の特徴を有する本発明の目荒らし装置において、それら目荒らしビットの従動軸が電気ドリルの駆動軸を中心として駆動軸の径方向外方に位置しつつ周り方向へ等間隔離間して並んでいる目荒らし装置は、電気ドリルの駆動軸の回転にともなって駆動軸の周り方向へ等間隔離間して並ぶ複数の従動軸が回転し、駆動軸の周り方向へ等間隔離間して並ぶ複数の目荒らしビットの刃先によって構造物をその表面から内部に向かって切削することができ、駆動軸の周り方向へ等間隔離間して並ぶ複数の目荒らしを一度の動作で形成することができ、電気ドリルの駆動軸を中心として整然と並ぶ複数の目荒らしを構造物に形成することができる。
【0029】
前記第1および第2の特徴を有する本発明の目荒らし装置において、第1〜第4側壁の内面に取り付けられた防音部材を含む目荒らし装置は、ハウジングの第2スペースに伝播した切削音の音圧レベルをそれら側壁に取り付けられた防音部材によって減衰させることができ、目荒らしの形成中に発生した切断音を小さくすることができる。目荒らし装置は、防音部材によって切削音の音圧レベルを減衰させることができるから、目荒らしの形成中に発生する不快かつ大きな切削音の音圧レベルを小さくすることができ、切削音を抑制した静かな状態で構造物に複数の目荒らしを形成することができる。
【0030】
前記第1および第2の特徴を有する本発明の目荒らし装置において、防音部材が第2支持壁と前端開口との間の第2スペースに取り付けられている目荒らし装置は、それら側壁に取り付けられた防音部材や第2支持壁と前端開口との間の第2スペースに取り付けられた防音部材によってハウジングの第2スペースに伝播した切削音の音圧レベルを減衰させることができ、目荒らしの形成中に発生した切断音を小さくすることができる。目荒らし装置は、防音部材によって切削音の音圧レベルを減衰させることができるから、目荒らしの形成中に発生する不快かつ大きな切削音の音圧レベルを小さくすることができ、切削音を抑制した静かな状態で構造物に複数の目荒らしを形成することができる。
【0031】
前記第1および第2の特徴を有する本発明の目荒らし装置において、防音部材が1〜6cmの厚みを有するマット状のフェルト、ロックウール、グラスウール、ゴムシート、塩ビシートのうちのいずれかである目荒らし装置は、防音部材が前記厚みを有するフェルトやロックウール、グラスウールの互いに絡み合う繊維で形成されるから、防音部材を多孔質構造にすることができ、多孔質構造によって作られた繊維間の多数の空間によって切削音の音圧レベルを確実に減衰させることができるとともに、目荒らしの形成中に発生した切削音を確実に小さくすることができる。また、防音部材が前記厚みを有するゴムシート、塩ビシートで形成されるから、ゴムシートやビシートによって切削音の音圧レベルを確実に減衰させることができ、目荒らしの形成中に発生した切削音を確実に小さくすることができる。
【0032】
前記第1および第2の特徴を有する本発明の目荒らし装置において、伝達手段が電気ドリルの駆動軸に取り付けられた駆動ギアとそれら目荒らしビットの従動軸に取り付けられた従動ギアとを含み、駆動ギアと従動ギアとのギア比が、従動ギアを1とした場合に駆動ギアが1.2以上、または、駆動ギアを1とした場合に従動ギアが1.2以上である目荒らし装置は、それらギアのギア比を従動ギア1:駆動ギア1.2以上とした場合、電気ドリルの駆動軸の回転速度に対して目荒らしビットの従動軸の回転速度が速くなり、駆動軸のトルクを大きくした状態で、直径の小さい目荒らしビットを速く回転させることができ、その目荒らしビットを利用して構造物に複数の目荒らしを素早く形成することができる。また、それらギアのギア比を駆動ギア1:従動ギア1.2以上とした場合、電気ドリルの駆動軸の回転速度に対して目荒らしビットの従動軸の回転速度が遅くなり、従動軸のトルクを大きくした状態で、直径の大きい目荒らしビットをゆっくりと回転させることができ、その目荒らしビットを利用して構造物に複数の目荒らしを確実に形成することができる。
【0033】
前記第1および第2の特徴を有する本発明の目荒らし装置において、目荒らしビットがツイストドリルとコアドリルとのうちのいずれかである目荒らし装置は、目荒らしビットがツイストドリルである場合、ツイストビットを利用して構造物にその表面から内部に向かって延びる所定深さの穴状の複数の目荒らしを形成することができ、目荒らしビットがコアドリルである場合、コアドリルを利用して構造物にその表面から内部に向かって延びる所定深さのコア抜き状の複数の目荒らしを形成することができる。
【0034】
前記第1および第2の特徴を有する本発明の目荒らし装置において、構造物の表面の目荒らし形成時に発生する切削音の音圧レベルが50〜70dBの範囲にある目荒らし装置は、吸引装置によってハウジングの第2スペースから空気が吸引されてスペースが負圧になり、蛇腹部材が前後方向へ縮んで構造物の表面に吸い付き、蛇腹部材によってハウジングの各側壁と構造物の表面との間隙が塞がれるとともに、防音部材によって切断中に発生する切削音の音圧レベルを減衰することで、目荒らし装置において発生する切削音の音圧レベルを前記範囲にすることができ、切削音を抑制した静かな状態で構造物にその表面から内部に向かって延びる所定深さの目荒らしを形成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0036】
後方から示す目荒らし装置10Aの斜視図である
図1等の添付の図面を参照し、本発明にかかる目荒らし装置の詳細を説明すると、以下のとおりである。なお、
図2は、各側壁16〜19を分離して示す目荒らし装置10Aの斜視図であり、
図3は、目荒らし装置10Aの正面図である。
図4は、側壁18を省略して示す目荒らし装置10Aの側面図であり、
図5は、第1および第2固定キー37,38を分離して示す固定座21の斜視図である。
図1では、前後方向を矢印A、上下方向を矢印Bで示し、横方向を矢印Cで示す。
【0037】
目荒らし装置10Aは、建築物(構造物)の床面(床スラブ)や外壁面、内壁面、天井面(天井スラブ)、柱面、梁面等にその表面から内部に向かって延びる所定深さの複数の目荒らし57(
図7参照)を形成する場合に好適に利用されるとともに、道路(構造物)や塀(構造物)等にその表面から内部に向かって延びる所定深さの複数の目荒らし57を形成する場合に好適に利用される。目荒らし装置10Aは、ハウジング11および電気ドリル12と、複数のツイストドリル13(目荒らしビット)とを備えている。
【0038】
ハウジング11は、上下方向へ延びる所定厚みの第1支持壁14(後方支持壁)および上下方向へ延びる所定厚みの第2支持壁15(前方支持壁)と、前後方向へ延びる所定厚みの第1〜第4側壁16〜19と、前後方向へ延びる所定厚みの連接壁20および上下方向へ延びる固定座21とから形成されている。第1および第2支持壁14,15や第1〜第4側壁16〜19、連結壁20、固定座21は、アルミニウムや合金等の軽量な金属または強化プラスチックから作られている。
【0039】
第1支持壁14と第2支持壁15とは、同形同大の矩形に成型され、前後方向へ並んでいる。第1支持壁14に対して第2支持壁15が前後方向前方に位置し、第2支持壁15に対して第1支持壁14が前後方向後方に位置している。第1支持壁14の中心には、壁14を貫通する第1中央軸孔22が形成されている。第1中央軸孔22の径方向外方には、第1〜第5軸受け穴(図示せず)が形成されている。第1〜第5軸受け穴は、第1中央軸孔22を中心として軸孔22の周り方向へ等間隔離間して並んでいる。第2支持壁15の中心には、壁15を貫通する第2中央軸孔23が形成されている。第2中央軸孔23の径方向外方には、第2支持壁15を貫通する第6〜第10軸受け孔24が形成されている。第6〜第10軸受け孔24は、第2中央軸孔23を中心として軸孔23の周り方向へ等間隔離間して並んでいる。
【0040】
第1および第2支持壁14,14の下端部には、横方向へ離間して並ぶ複数の連結ピン挿通孔が穿孔されている。第1および第2支持壁14,15の両側部(両側面)には、上下方向へ離間して並ぶ複数のボルト螺着穴25が穿孔されている。第1および第2支持壁14,15の上端部(上面)には、横方向へ離間して並ぶ複数のボルト螺着穴26が穿孔されている。第1支持壁14と第2支持壁15とは、それら支持壁14,15の連結ピン挿通孔に挿通された連結ピン27によって連結されている。
【0041】
第1〜第4側壁16〜19は、第1および第2支持壁14,15から前方へ延びている。第1および第2側壁16,17(上下側壁)は、前後方向へ長い矩形に成型され、上下方向へ離間対向している。第3および第4側壁18,19(左右側壁)は、前後方向へ長い同形同大の矩形に成型され、横方向へ離間対向している。第1〜第4側壁16〜19は、それら壁16〜19の交差箇所が固定手段(溶接、融着、接着)によって固定されている。第3および第4側壁18,19には、上下方向へ離間して並ぶ複数のボルト挿通孔28が穿孔されている。第1〜第4側壁16〜19は、第1および第2支持壁14,15に複数の固定ボルト29(雄螺子)によって強固に固定されている。それら固定ボルト29は、それら側壁16〜19のボルト挿通孔28に挿通されているとともに、それら支持壁14,15のボルト螺着穴25に螺着されている。
【0042】
ハウジング11には、
図4に示すように、第1および第2支持壁14,15と第1〜第4側壁16〜19とに囲繞された所定容積の第1スペース30(ギア収容スペース)が画成され、第2支持壁15と第1〜第4側壁16〜19とに囲繞された所定容積の第2スペース31(目荒らしビット収容スペース)が画成されているとともに、第1〜第4側壁16〜19の前端縁に囲繞された矩形の前端開口32が画成されている。ハウジング11では、第1スペース30と第2スペース31とが前後方向へ並び、第1スペース30に対して第2スペース31が前後方向前方に位置し、第2スペース31に対して第1スペース30が前後方向後方に位置している。
【0043】
連接壁20は、前後方向へ長い矩形に成型され、第1および第2支持壁14,15の上端部(上面)から後方へ延びている。連接壁20の前端部には、横方向へ離間して並ぶ複数のボルト挿通孔33が穿孔され、連接壁の後端部には、横方向へ離間して並ぶ複数のボルト挿通孔34が穿孔されている。連接壁20の上面には、横方向へ長い取っ手35が取り付けられている。連接壁20は、第1および第2支持壁14,15に複数の固定ボルト36(雄螺子)によって強固に固定されている。それら固定ボルト36は、連接壁20のボルト挿通孔33に挿通されているとともに、それら支持壁14,15のボルト螺着穴26に螺着されている。
【0044】
固定座21は、所定厚みの第1固定キー37と、第1固定キー37に着脱可能に固定される所定厚みの第2固定キー38とから形成されている。第1固定キー37は、上下方向へ長い矩形に成型され、連接壁20の後端部から下方へ延びている。第1固定キー37の上端部(上面)には、横方向へ離間して並ぶ複数のボルト螺着穴39が穿孔されている。第1固定キー37の側部(側面)には、上下方向へ離間して並ぶ複数のボルト螺着穴40が穿孔され、それら螺着穴40の間に位置して横方向へ凹む半円状の第1固定溝41が形成されている(
図5参照)。第1固定キー37は、連結壁20に複数の固定ボルト42(雄螺子)によって強固に固定されている。それら固定ボルト42は、連接壁20のボルト挿通孔34に挿通されているとともに、第1固定キー37のボルト螺着穴39に螺着されている。
【0045】
第2固定キー38は、上下方向へ長い矩形に成型され、第1固定キー37の側部(側面)に着脱可能に固定されている。第2固定キー38の側部(側面)には、上下方向へ離間して並ぶ複数のボルト挿通孔43が穿孔され、それら挿通孔43の間に位置して横方向へ凹む半円状の第2固定溝44が形成されている。第2固定キー38は、第1固定キー37に複数の固定ボルト45(雄螺子)によって強固に固定されている。それら固定ボルト45は、第2固定キー38のボルト挿通孔43に挿通されているとともに、第1固定キー37のボルト螺着穴40に螺着されている。
【0046】
電気ドリル12は、軸受け46(先端部)と、軸受け46から前方へ延びる駆動軸47とを有し、その本体部分が第1支持壁14の後方に配置されている。電気ドリル12には、トリガー48(スイッチ)、速度切り換えレバー(図示せず)、正逆回転切り換えレバー(図示せず)が設置されている。電気ドリル12から延びるコード49は、AC電源(図示せず)に接続される。電気ドリル12には、モーターが内蔵され、トリガー48を引くことでモーターが駆動するとともに駆動軸47が回転する。電気ドリル12として、AC電源式電気ドリルを図示しているが、充電式の電気ドリルを使用することもできる。
【0047】
電気ドリル12は、その軸受け46が固定座21に着脱可能に固定されている。電気ドリル12の軸受け46を固定座21に固定するには、軸受け46を第1固定キー37の第1固定溝41に嵌め込んだ後、第2固定キー38の第2固定溝44を軸受け46に嵌め込み、第2固定キー38を軸受け46に設置する。次に、固定ボルト45を第2固定キー38のボルト挿通孔43に挿通しつつ、ボルト45を第1固定キー37のボルト螺着穴40に螺着する。電気ドリル12の軸受け46は、第1固定キー37と第2固定キー38とに挟まれた状態で固定座21に強固に固定される。
【0048】
電気ドリル12の駆動軸47は、第1支持壁14の第1中央軸孔22に回転可能に挿通されて軸孔22に支持されているとともに、第1スペース30を通って第2支持壁15に達し、第2支持壁15の第2中央軸孔23に回転可能に挿通されて軸孔23に支持されている。第1スペース30に延びる駆動軸47には、軸47の回転を各ツイストドリル13に伝える駆動ギア50(伝達手段)が取り付けられている。
【0049】
それらツイストドリル13は、超硬合金から作られている。ツイストドリル13は、第1および第2スペース30,31に配置され、従動軸51(柄)と、従動軸51から前方へ延びる刃52と、固定リング53とを有する。それらツイストドリル13の従動軸51は、電気ドリル12の駆動軸47の径方向外方に位置し、駆動軸47を中心として軸47の周り方向へ等間隔離間して並んでいる。ゆえに、それらツイストドリル13は、駆動軸47の径方向外方に位置して軸47の周り方向へ等間隔離間して並んでいる。ツイストドリル13の従動軸51は、その後端部が第1支持壁14の第1〜第5軸受け穴に回転可能に挿入され、その中間部が第2支持壁15の第6〜第10軸受け孔24に挿通されて第1スペース14と第2スペース15とに延びている。ツイストドリル13の刃52は、第2スペース15に位置し、その先端部54(刃52の一部)がハウジング11の前端開口32から前方へ露出している。
【0050】
第1スペース30に位置する従動軸51には、従動ギア55(伝達手段)が取り付けられているとともに、固定リング53が固定されている。第2スペース31に位置する従動軸51には、固定リング53が固定されている。従動ギア55は、駆動ギア50の径方向外方に位置し、駆動ギア50を中心としてギア50の周り方向へ等間隔離間して並んでいる。それら従動ギア55の刃は、駆動ギア50の刃に係合している。従動ギア55は、駆動ギア50の回転によって回転する。なお、5本のツイストドリル13を図示しているが、ツイストドリル13の本数に特に限定はなく、ツイストドリル13が2本以上であればよい。
【0051】
駆動ギア50と従動ギア55とのギア比は、従動ギア55を1とした場合、駆動ギア50が1.2以上、好ましくは、駆動ギア50が1.5以上である。または、駆動ギア50を1とした場合、従動ギア55が1.2以上、好ましくは、従動ギア55が1.5以上である。ギア比が従動ギア55が1であって駆動ギア50が1.2以上である場合、従動ギア55が駆動ギア50よりも速く(高速)回転する。ギア比が駆動ギア50が1であって駆動ギア55が1.2以上である場合、従動ギア55が駆動ギア50よりも遅く(低速)回転する。
【0052】
なお、駆動ギア50と従動ギア55とのギア比が1:1であってもよい。また、駆動ギア50と従動ギア55と間にギアを介在させてもよい。この場合においても、駆動ギア50と従動ギア55とのギア比は、従動ギア55を1とした場合、駆動ギア50が1.2以上であることが好ましく、または、駆動ギア50を1とした場合、従動ギア55が1.2以上であることが好ましい。駆動ギア50と従動ギア55と間にギアを介在させた場合、駆動ギア50(駆動軸47)の回転方向と従動ギア55(従動軸51)の回転方向とが同一になる。
【0053】
図6は、目荒らし装置10Aを利用して建築物の内壁面56に目荒らし57を形成する手順を説明する図であり、
図7は、内壁面56に形成された目荒らし57の一例を示す図である。
図6では、側壁18の図示を省略している。目荒らし装置10Aを利用して建築物の内壁面56(コンクリートやモルタル)に目荒らし57を形成する場合、電気ドリル12の柄を一方の手で持ち、連結壁20の取っ手35を他方の手で持って目荒らし装置10Aを持ち上げ、ハウジング11の前端開口32を内壁面56に対向させる。その状態で、電気ドリル12のトリガー48を引く。
【0054】
トリガー48を引くと、モーターが駆動して
図6に矢印L1で示すように駆動軸47が回転し、駆動軸47の回転にともなって
図6に矢印L2で示すように従動軸51(ツイストドリル13)が回転する。ツイストドリル13を回転させながら、ハウジング11を矢印L3で示す内壁面56に向かって移動させ、ハウジング11の前端開口32から前方へ露出するそれらツイストドリル13の刃52の先端部54を内壁面56に押し付ける。刃52の先端部54を内壁面56に押し付けることで、内壁面56がドリル13によってその表面から内部に向かって切削され、先端部54が内壁面56の表面から内部に食い込み、
図7に示すように、内壁面56にその表面から内部に向かって延びる複数の目荒らし57が形成される。
【0055】
内壁面56に目荒らし57を作った後、目荒らし装置10Aを内壁面56から引き離し、次に目荒らし57を形成する内壁面56の箇所に装置10Aを移動させ、既述の手順で内壁面56に次の目荒らし57を形成する。なお、同様の手順によって内壁面56のみならず、建物の床面や外壁面、天井面、柱面、梁面等のあらゆる面に目荒らし57を作ることができる。
【0056】
目荒らし装置10Aは、電気ドリル12の駆動軸47の回転にともなって従動軸51とともにそれらツイストドリル13(目荒らしビット)が回転し、それらツイストドリル13の刃52によって内壁面56をその表面から内部に向かって切削するから、内壁面56にその表面から内部に向かって延びる所定深さの複数の目荒らし57を一度の動作で同時に形成することができ、目荒らし57を一つずつ形成する場合と比較し、その手間と時間とを大幅に短縮することができる。
【0057】
目荒らし装置10Aは、それらギア50,55のギア比を従動ギア55を1とし、駆動ギア50を1.2以上とした場合、電気ドリル12の駆動軸47の回転速度に対してツイストドリル13の従動軸51の回転速度が速くなり、駆動軸47のトルクを大きくした状態で、直径の小さいツイストドリル13を速く(高速)回転させることができ、そのツイストドリル13を利用して内壁面56に複数の目荒らし57を素早く形成することができる。また、それらギア50,55のギア比を駆動ギア50を1とし、従動ギア55を1.2以上とした場合、電気ドリル12の駆動軸47の回転速度に対してツイストドリル13の従動軸51の回転速度が遅くなり、従動軸51のトルクを大きくした状態で、直径の大きいツイストドリル13をゆっくりと回転させることができ、そのツイストドリル13を利用して内壁面56に複数の目荒らし57を確実に形成することができる。
【0058】
図8は、後方から示す他の一例の目荒らし装置10Bの斜視図であり、
図9は、各側壁16〜19を分離して示す目荒らし装置10Bの斜視図である。
図10は、目荒らし装置10Bの正面図であり、
図11は、側壁18を省略して示す目荒らし装置10Bの側面図である。
図12は、蛇腹部材59の斜視図であり、
図13は、
図12のD−D線端面図である。
図8〜
図11では、吸引装置65の図示を省略している。
図8では、前後方向を矢印A、上下方向を矢印Bで示し、横方向を矢印Cで示す。
【0059】
目荒らし装置10Bは、
図1のそれと同様に、建築物(構造物)の床面(床スラブ)や外壁面、内壁面、天井面(天井スラブ)、柱面、梁面等にその表面から内部に向かって延びる所定深さの複数の目荒らし57(
図7参照)を形成する場合に好適に利用されるとともに、道路(構造物)や塀(構造物)等にその表面から内部に向かって延びる所定深さの複数の目荒らし57を形成する場合に好適に利用される。
【0060】
目荒らし装置10Bが
図1のそれと異なるところは、防音部材58と蛇腹部材59とバキューム手段60とを有する点であり、その他の構成は
図1の目荒らし装置10Aと同一であるから、
図1の装置10Aの説明を援用するとともに、
図1の装置10Aと同一の符号を付すことで、この目荒らし装置10Bにおけるその他の構成の詳細な説明は省略する。目荒らし装置10Bは、ハウジング11および電気ドリル12と、複数のツイストドリル13(目荒らしビット)と、防音部材58および蛇腹部材59と、バキューム手段60とを備えている。
【0061】
ハウジング11は、第1支持壁14(後方支持壁)および第2支持壁15(前方支持壁)と、第1〜第4側壁16〜19と、連接壁20および固定座21(第1固定キー37および第2固定キー38)と、フランジ61とから形成されている。第1および第2支持壁14,15や第1〜第4側壁16〜19、連結壁20、固定座21は、
図1の装置10Aのそれらと同一である。フランジ61は、第1〜第4側壁16〜19の前端縁に取り付けられ、前端開口32を取り囲んでいる。フランジ61は、アルミニウムや合金等の軽量な金属または強化プラスチックから作られている。フランジ61は、第1〜第4側壁16〜19の前端縁に固定手段(溶接、融着、接着)によって固定されている。
【0062】
電気ドリル12やツイストドリル13は、
図1の装置10Aのそれらと同一であるが、この装置10Bの電気ドリル12には、マイクロコンピュータ(図示せず)が内蔵され、マイクロコンピュータが電気ドリル12の発停(ON/OFF)に関連させてバキューム手段60の発停(ON/OFF)を行う。具体的には、電気ドリル12が稼働(ON)すると同時にバキューム手段60を稼働(ON)させ、または、電気ドリル12が稼働(ON)してから0.3〜1.5秒経過後にバキューム手段60を稼働(ON)させる。さらに、電気ドリル12の稼働が停止(OFF)すると同時にバキューム手段60の稼働を停止(OFF)させる。なお、バキューム手段60の起動時間は、0.3〜1.5秒の範囲で自由に設定することができる。
【0063】
電気ドリル12は、その軸受け46が固定座21に着脱可能に固定されている。第1スペース30に延びる電気ドリル12の駆動軸47には、軸47の回転を各ツイストドリル13に伝える駆動ギア50(伝達手段)が取り付けられている。ツイストドリル13の刃52は、第2スペース15に位置し、その先端部54(刃52の一部)がハウジング11の前端開口32から前方へ露出している。第1スペース30に位置するツイストドリル13の従動軸51には、従動ギア55(伝達手段)が取り付けられている。駆動ギア50と従動ギア55とのギア比は、
図1の装置10Aのそれと同一である。
【0064】
防音部材58は、第1〜第4側壁16〜19の内面の略全域に固定されている。防音部材58は、固定手段(接着剤や両面テープ)によってそれら壁16〜19の内面に固着されている。防音部材58は、フェルト、ロックウール、グラスウール、ゴムシート、塩ビシート(防音マット)のうちのいずれかから作られているが、その他の材質で作られていてもよい。フェルトやロックウール、グラスウール、ゴムシート、塩ビシートは、その厚みが1〜6cmの範囲にある。防音部材58は、前記厚みを有するフェルトやロックウール、グラスウールの互いに絡み合う繊維で形成された多孔質構造になっており、多孔質構造によって作られた繊維間の多数の空間が画成されている。防音部材58では、ハウジング11の第2スペース31に伝播した切削音の音圧レベルが繊維間の空間において減衰する。また、ゴムシートや塩ビシートによってハウジング11の第2スペース31に伝播した切削音の音圧レベルが減衰する。
【0065】
フェルトやロックウール、グラスウール、ゴムシート、塩ビシートの厚みが1cm未満では、防音部材58における音圧レベルの減衰性能が低下し、第2スペース31に伝播した切削音の音圧レベルを防音部材58によって減衰させることができない場合がある。フェルトやロックウール、グラスウール、ゴムシート、塩ビシートの厚みが6cmを超過すると、防音部材58が嵩張り、第2スペース31に複数のツイストドリル13(目荒らしビット)を配置する空間を確保することが困難になるのみならず、目荒らし装置10Bの重量が必要以上に大きくなり、装置10Bを動かすときの自由度が奪われ、装置10Bを自由に動かすことが困難になる。
【0066】
蛇腹部材59は、フランジ61(第1〜第4側壁16〜19の前端縁)に取り付けられた伸縮部62と、伸縮部62の前端縁につながる所定面積の当接部63とを有する。伸縮部62は、前後方向へ蛇腹折り(ジグザグ折り)され、その後端部分が固定手段(接着剤、ボルトおよびナット)によってフランジ61の前面に固定されている。伸縮部62と当接部63とは、ハウジング11の前端開口32全域を取り囲む枠を形成している。蛇腹部材59は、伸縮部62を介して前後方向へ伸縮する。蛇腹部材59では、建物の床面や外壁面、内壁面、天井面、柱面、梁面等をその表面から内部に向かって所定深さに切削する際に、当接部63がそれら面(表面)に当接する。
【0067】
伸縮部62および当接部63には、ナイロン繊維やポリエステル繊維から作られた布、ゴムシート(クロロプレンゴム、エチレンプロピレンゴム、ブチルゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム、クロロスルホン化エチレンゴム)の間にナイロン繊維やポリエステル繊維から作られた布を介在させたゴム引布等を使用することができる。
【0068】
バキューム手段60は、吸引ホース64(蛇腹ホース)と吸引装置65とから形成され、ハウジング11の第1スペース30から空気を吸引(排気)し、建物の床面や外壁面、内壁面、天井面、柱面、梁面等に目荒らし57を形成する際(切削開示時から切削継続中を含む切削中)に第2スペース31を負圧にする。吸引ホース64は、吸引装置65からハウジング11に向かって延び、側壁17および防音部材58を貫通して第2スペース31に達している。
【0069】
吸引装置65としては、吸引ポンプまたは吸引ファンおよび集塵機能を備えた装置、または、所定の集塵容積(集塵方式:2ウェイ方式(紙パック/布袋)、紙パック方式、布フィルター方式、特殊フィルター方式等)の集塵機能を有する業務用掃除機を使用することができる。吸引装置65には、制御手段(図示せず)が内蔵され、それを起動・停止させるON/OFFスイッチ(図示せず)が設置されているとともに、その吸引風量(吸引仕事率)を調整する風量調整機構(図示せず)が設置されている。吸引装置65の制御手段は、インターフェイス66を介して電気ドリル12のマイクロコンピュータに接続され、マイクロコンピュータからの指令に基づいて吸引装置65のON/OFFを制御する。
【0070】
なお、電気ドリル12にマイクロコンピュータが内蔵されておらず、電気ドリル12と吸引装置65とが接続されていなくてもよい。この場合は、電気ドリル12の発停と吸引装置65の発停とが連動せず、電気ドリル12と吸引装置65とを別々に稼働させるとともに、電気ドリル12と吸引装置65とを別々に停止させる。
【0071】
吸引装置65は、その風量が1.5〜4.5m
3/minの範囲(好ましくは、1.75〜3.5m
3/minの範囲)にあり、その吸引仕事率が150〜400W(好ましくは、200〜300W)の範囲にある。風量が1.5m
3/min未満であって吸引仕事率が150W未満では、吸引装置65(バキューム手段60)によって第2スペース31を十分な負圧にすることができず、蛇腹部材59(当接部63)によって床面や外壁面、内壁面、天井面、柱面、梁面等とハウジング11(当接部63)との間隙を塞ぐことができない。その結果、床面や外壁面、内壁面、天井面、柱面、梁面等をツイストドリル13によって所定深さに切削するときに発生する切削音のハウジング11の外側への漏れを防ぐことができず、それら面の切削中に発生する塵埃(切り屑)を吸引装置65に十分に吸引させることができない。風量が4.5m
3/minを超過するとともに吸引仕事率が400Wを超過すると、蛇腹部材16(当接部49)が床面や外壁面、内壁面、天井面、柱面、梁面等に強く吸着し、装置10Bを自由に動かすことが困難になる。
【0072】
吸引装置65の風量が前記範囲にあり、吸引装置65の吸引仕事率が前記範囲にあるから、装置65によってハウジング11の第2スペース31から空気が十分に吸引されて第2スペース31を確実に負圧にすることができ、蛇腹部材16(当接部46)によって床面や外壁面、内壁面、天井面、柱面、梁面等とハウジング11との間隙を塞ぐことができる。さらに、床面や外壁面、内壁面、天井面、柱面、梁面等の切削中に発生する塵埃を吸引装置65に吸引させることができる。
【0073】
図14は、目荒らし装置10Bを利用して建築物の内壁面56に目荒らし57を形成する手順を説明する図である。
図14では、吸引装置65の図示を省略している。目荒らし装置10Bを利用して建築物の内壁面56(コンクリートやモルタル)に目荒らし57を形成する場合、吸引装置65の風量調節機構によって装置65の吸引風量を設定した後、吸引装置65のスイッチをONにする。なお、スイッチをONにしたとしても、吸引装置65は直ちに稼働しない。次に、電動電気ドリル12の柄を一方の手で持ち、連結壁20の取っ手35を他方の手で持って目荒らし装置10Bを持ち上げ、ハウジング11の前端開口32を内壁面56に対向させるとともに、蛇腹部材59の当接部63を内壁面56に当接させる。その状態で、電気ドリル12のトリガー48を引く。
【0074】
トリガー48を引くと、モーターが駆動して
図14に矢印L1で示すように駆動軸47が回転し、駆動軸47の回転にともなって
図14に矢印L2で示すように従動軸51(ツイストドリル13)が回転する。電気ドリル12のマイクロコンピュータは、それと同時(電気ドリル12の稼働と同時)に、または、それから0.3〜1.5秒経過後(電気ドリル12の稼働から0.3〜1.5秒経過後)に吸引装置65の制御手段に起動指令を出力する。吸引装置65の制御手段は、マイクロコンピュータからの指令にしたがって吸引装置65を起動させる。
【0075】
吸引装置65が稼働すると、
図14に矢印L4で示すように、ハウジング11の第2スペース31から設定風量の空気が吸引ホース64を介して装置65に吸引される。吸引装置65によって第2スペース31の空気が吸引されることでスペース31が負圧になり、蛇腹部材59の伸縮部62が前後方向へ縮んで当接部63が内壁面56に吸い付くとともに、回転するツイストドリル13の刃52の先端部54がハウジング11の前端開口32から前方へ露出する。その状態で、ドリル13の刃52の先端部54を内壁面56に押し付けることで、内壁面56がドリル13によってその表面から内部に向かって切削され、先端部54が内壁面56の表面から内部に食い込み、内壁面56にその表面から内部に向かって延びる複数の目荒らし57が形成される(
図7参照)。
【0076】
ツイストドリル13の刃52による内壁面56の切削中では、吸引装置65によってハウジング11の第2スペース31から空気が吸引されてスペース31が負圧になり、蛇腹部材59の伸縮部62が前後方向へ縮んで当接部63が内壁面56に吸い付き、当接部63によってハウジング11(フランジ61)と内壁面56との間隙が塞がれ、ツイストドリル13によって内壁面56を切削するときに発生する切削音がハウジング11の外側に漏れることがない。また、各側壁16〜19の内面に固定された防音部材58によってハウジング11の第2スペース31に伝播した切削音の音圧レベルが減衰する。その結果、内壁面56の切削中にカッター装置10Bから切削音が発生したとしても、その音圧レベルは50〜70dBに抑えられる。また、吸引装置65によって第2スペース31から空気が吸引されることにより、内壁面56の切削中に発生した塵埃が空気とともに吸引装置65(吸引装置65の集塵機能)に吸引され、塵埃が第2スペース31に残存することはない。
【0077】
内壁面56に目荒らし57を形成した後、電気ドリル12のトリガー48を戻すと、モーターが停止して駆動軸47の回転が停止するとともに、従動軸51(ツイストドリル13)の回転が停止する。電気ドリル12のマイクロコンピュータは、それと同時(電気ドリル12の停止と同時)に吸引装置65の制御手段に停止指令を出力する。吸引装置65の制御手段は、マイクロコンピュータからの指令にしたがって吸引装置65を停止させる。
【0078】
内壁面56に目荒らし57を作った後、目荒らし装置10Bを内壁面56から引き離し、次に目荒らし57を形成する内壁面56の箇所に装置10Bを移動させ、既述の手順で内壁面56に次の目荒らし57を形成する。なお、同様の手順によって内壁面56のみならず、建物の床面や外壁面、天井面、柱面、梁面等のあらゆる面に目荒らし57を作ることができる。
【0079】
目荒らし装置10Bは、
図1のそれが有する効果に加え、以下の効果を有する。目荒らし装置10Bは、建物(構造物)の内壁面56に所定深さの目荒らし57を形成するときに、吸引装置65(バキューム手段60)によってハウジング11の第2スペース31から空気が吸引されてスペース31が負圧になり、蛇腹部材59の伸縮部62が前後方向へ縮んで蛇腹部材59の当接部63が内壁面56に吸い付き、当接部63によってハウジング11と内壁面56との間隙が塞がれるから、ツイストドリル13の刃52によって面56を所定深さに切削するときに発生する切削音がハウジング11の外側に漏れることはなく、切削中における不快かつ大きな切削音の発生を防ぐことができる。また、ハウジング11の第2スペース31に伝播した切削音の音圧レベルを側壁16〜19に取り付けられた防音部材58によって減衰させることができ、目荒らし57の形成中に発生した切削音を小さくすることができる。目荒らし装置10Bは、切削音を抑制した静かな状態(目荒らし装置10Bにおいて発生する切削音の音圧レベル:50〜70dB)で内壁面56にその表面から内部に向かって延びる所定深さの目荒らし57を形成することができる。
【0080】
目荒らし装置10Bは、吸引装置65(バキューム手段60)によってハウジング11の第2スペース31から空気が吸引されることにより、内壁面56の切削中に発生した塵埃を空気とともに吸引装置65(集塵機構)に吸引させることができ、面56の切断中における塵埃のまき散らしを防ぐことができる。さらに、内壁面56の切削中に発生した塵埃を吸引装置65に吸引させることで、ハウジング11の内部空間23に塵埃が残存することはなく、第2スペース31に塵埃が残存することによるその塵埃の防音部材58への付着を防ぐことができ、防音部材58の防音性能の低下を防ぐことができる。
【0081】
目荒らし装置10Bは、吸引装置65が常時稼働していると、第2スペース31が常時負圧になり、蛇腹部材59を内壁面56に当接させたときに蛇腹部材58の当接部63が面56に吸い付き、面56に対する目荒らし装置10Bの位置決めが困難になるが、電気ドリル12の稼働前に吸引装置65が稼働することはなく、第2スペース31が負圧になる前に蛇腹部材59の当接部63を内壁面56に当接させることができ、面56に対する目荒らし装置10Bの位置決めが容易になり、内壁面56の所望の位置に目荒らし57を形成することができる。
【0082】
目荒らし装置10Bは、電気ドリル12の稼働が停止すると同時に吸引装置65の稼働が停止するから、内壁面56に目荒らし57を形成した後、面56から蛇腹部材59の当接部63を容易に離間させることができ、内壁面56に次の目荒らし57を短時間で次々と形成することができる。また、電気ドリル12の停止と同時に吸引装置65を停止させるから、吸引装置65を常時稼働させる場合と比較し、吸引装置65の消費電力を少なくすることができ、目荒らし装置10Bにおける省エネを図ることができる。
【0083】
図15は、側壁18を省略して示す他の一例の目荒らし装置10Cの側面図であり、
図16は、目荒らし装置10Cの側壁16〜19の斜視図である。
図15では、吸引装置65の図示を省略している。この目荒らし装置10Cが
図8のそれと異なるところは、防音部材58が各側壁16〜19に加えて第2支持壁15と前端開口32との間の第2スペース31に取り付けられている点であり、その他の構成は
図1や
図8の目荒らし装置10A,10Bと同一であるから、
図1や
図8の装置10A,10Bの説明を援用するとともに、装置10A,10Bと同一の符号を付すことで、この目荒らし装置10Cにおけるその他の構成の詳細な説明は省略する。目荒らし装置10Cは、ハウジング11および電気ドリル12と、複数のツイストドリル13(目荒らしビット)と、防音部材58および蛇腹部材59と、バキューム手段60とを備えている。
【0084】
ハウジング11は、第1支持壁14(後方支持壁)および第2支持壁15(前方支持壁)と、第1〜第4側壁16〜19と、連接壁20および固定座21(第1固定キー37および第2固定キー38)と、フランジ61とから形成されている。第1および第2支持壁14,15や第1〜第4側壁16〜19、連結壁20、固定座21、フランジ61は、
図1や
図8の装置10A,10Bのそれらと同一である。
【0085】
電気ドリル12やツイストドリル13は、
図8の装置10Bのそれらと同一である。電気ドリル12に内蔵されたマイクロコンピュータは、電気ドリル12が稼働(ON)すると同時にバキューム手段60を稼働(ON)させ、または、電気ドリル12が稼働(ON)してから0.3〜1.5秒経過後にバキューム手段60を稼働(ON)させる。さらに、電気ドリルの稼働が停止(OFF)すると同時にバキューム手段60の稼働を停止(OFF)させる。
【0086】
電気ドリル12は、その軸受け46が固定座21に着脱可能に固定されている。第1スペース30に延びる電気ドリル12の駆動軸47には、軸47の回転を各ツイストドリル13に伝える駆動ギア50(伝達手段)が取り付けられている。ツイストドリル13の刃52は、第2スペース15に位置し、その先端部54がハウジング11の前端開口32から前方へ露出している。第1スペース30に位置するツイストドリル13の従動軸51には、従動ギア55(伝達手段)が取り付けられている。駆動ギア50と従動ギア55とのギア比は、
図1や
図8の装置10A,10Bのそれと同一である。
【0087】
防音部材58は、第1〜第4側壁16〜19の内面の略全域に固定されているとともに、第2支持壁15と前端開口32との間の第2スペース31であって吸引ホース64の後方に取り付けられている。第2スペース31に取り付けられた防音部材58には、それらツイストドリル13の従動軸51を回転可能に挿通する貫通孔が形成されている。防音部材58は、固定手段(接着剤や両面テープ)によってそれら側壁16〜19の内面に固着され、第2スペース31の防音部材58は、各側壁に取り付けられた防音部材58の内面に固定手段(接着剤や両面テープ)によって固着されている。それら防音部材58は、
図8の装置10Bのそれと同一の素材から作られ、その厚みが1〜6cmの範囲にある。防音部材58の厚みを前記範囲にする理由は、
図8の装置10Bのそれと同一である。防音部材58では、ハウジング11の第2スペース31に伝播した切削音の音圧レベルが繊維間の空間において減衰する。
【0088】
蛇腹部材59は、フランジ61(第1〜第4側壁16〜19の前端縁)に取り付けられた伸縮部62と、伸縮部62の前端縁につながる所定面積の当接部63とを有する。伸縮部62と当接部63とは、ハウジング11の前端開口32全域を取り囲む枠を形成している。伸縮部62や当接部63は、
図8の装置10Bのそれと同一の素材から作られている。
【0089】
バキューム手段60は、吸引ホース64(蛇腹ホース)と吸引装置65とから形成され、ハウジング11の第2スペース31から空気を吸引(排気)し、目荒らし57を形成する際(切削開示時から切削継続中を含む切削中)に第2スペース31を負圧にする。吸引ホース64は、吸引装置65からハウジング11に向かって延び、側壁17および防音部材58を貫通して第2スペース31に達している。吸引装置65は、
図8の装置10Bのそれと同一であり、その風量が1.5〜4.5m
3/minの範囲(好ましくは、1.75〜3.5m
3/minの範囲)、その吸引仕事率が150〜400W(好ましくは、200〜300W)の範囲にある。吸引装置65の風量や吸引仕事率を前記範囲にする理由は、
図8の装置10Bのそれと同一である。
【0090】
目荒らし装置10Cを利用して建築物の内壁面56に目荒らし57を形成する手順は、
図8の装置10Bのそれと同一であるから、その説明は省略する。この目荒らし装置10Cは、
図1や
図8の装置10A,10Bが有する効果に加え、以下の効果を有する。目荒らし装置10Cは、ハウジング11の第2スペース31に伝播した切削音の音圧レベルを側壁16〜19に取り付けられた防音部材58によって減衰させることができるとともに、第2スペース31に取り付けられた防音部材58によって減衰させることができ、目荒らし57の形成中に発生した切削音を確実に小さくすることができる。目荒らし装置10Cは、切削音を抑制した静かな状態(目荒らし装置10Cにおいて発生する切削音の音圧レベル:50〜70dB)で内壁面56にその表面から内部に向かって延びる所定深さの目荒らし57を形成することができる。
【0091】
図17は、側壁18を省略して示す他の一例の目荒らし装置10Dの側面図であり、
図18は、目荒らし装置10Dを利用して建築物の内壁面56に目荒らし57を形成する手順を説明する図である。
図17,18では、吸引装置65の図示を省略している。この目荒らし装置10Dが
図8のそれと異なるところは、第2支持壁15に給気弁機構67が設置され、第1および第2支持壁14,15に空気の給気口68,69が形成されている点であり、その他の構成は
図1や
図8の目荒らし装置10A,10Bと同一であるから、
図1や
図8の装置10A,10Bの説明を援用するとともに、装置10A,10Bと同一の符号を付すことで、この目荒らし装置10Cにおけるその他の構成の説明は省略する。目荒らし装置10Dは、ハウジング11および電気ドリル12と、複数のツイストドリル13(目荒らしビット)と、防音部材58および蛇腹部材59と、バキューム手段60と、給気弁機構67とを備えている。
【0092】
ハウジング11の第1および第2支持壁14,15や第1〜第4側壁16〜19、連結壁20、固定座21、フランジ61は、
図1や
図8の装置10A,10Bのそれらと同一であるが、第1支持壁14には、その上端部に壁14を貫通する給気口68が形成されている。電気ドリル12やツイストドリル13、防音部材58、蛇腹部材59、バキューム手段60は、
図8の装置10Bのそれらと同一である。
【0093】
給気弁機構67は、金属棒70とコイルバネ71とから形成されている。金属棒70は、第1スペース14に位置する蓋72と、第2スペース15に位置するバネ受け73とを有し、第2支持壁15の給気口69に挿通されているとともに、第2スペースに位置してスペースを前後方向へ延びている。金属棒70は、その先端部74が前端開口32から外側に露出している。コイルバネ71は、第2支持壁15とバネ受け73との間に配置され、金属棒70を前端開口32に向かって前方へ付勢している。
【0094】
目荒らし装置10Dを利用して建築物の内壁面56(コンクリートやモルタル)に目荒らし57を形成する手順は、以下のとおりである。吸引装置65のスイッチをONにした後、電気ドリル12の柄を一方の手で持ち、連結壁20の取っ手35を他方の手で持って目荒らし装置10Dを持ち上げ、ハウジング11の前端開口32を内壁面56に対向させるとともに、蛇腹部材59の当接部63を内壁面56に当接させる。その状態で、電気ドリル12のトリガー48を引く。
【0095】
トリガー48を引くと、モーターが駆動して
図18に矢印L1で示すように駆動軸47が回転し、駆動軸47の回転にともなって
図18に矢印L2で示すように従動軸51(ツイストドリル13)が回転する。電気ドリル12のマイクロコンピュータは、それと同時に、または、それから0.3〜1.5秒経過後に吸引装置65の制御手段に起動指令を出力する。吸引装置65の制御手段は、マイクロコンピュータからの指令にしたがって吸引装置65を起動させる。
【0096】
吸引装置65が稼働すると、
図18に矢印L4で示すように、ハウジング11の第2スペース31から設定風量の空気が吸引ホース64を介して装置65に吸引される。吸引装置65によって第2スペース31の空気が吸引されることでスペース31が負圧になり、蛇腹部材59の伸縮部62が前後方向へ縮んで当接部63が内壁面56に吸い付くとともに、回転するツイストドリル13の刃52の先端部54がハウジング11の前端開口32から前方へ露出する。その状態で、ドリル13の刃52の先端部54を内壁面56に押し付けることで、内壁面56がドリル13によってその表面から内部に向かって切削され、先端部54が内壁面56の表面から内部に食い込み、内壁面56にその表面から内部に向かって延びる複数の目荒らし57が形成される(
図7参照)。
【0097】
ドリル13の先端部54が内壁面56に食い込むと、給気弁機構67の金属棒70の先端部74(先端)が内壁面56の表面に当接し、先端部54が内壁面56にさらに食い込むと、コイルバネ71の付勢に抗して金属棒70が後方に移動するとともに、蓋72が第1スペース30の後方に移動する。それによって
図18に矢印L5で示すように空気が第1支持壁14の給気口68を通って第1スペース30に流入するとともに、第2支持壁15の給気口69を通って第2スペース31に流入する。空気が第2スペース31に流入すると、バキューム手段60(吸引装置65)によって負圧になったスペース31に空気が給気され、スペース31の負圧状態が解除される。装置10Dは、内壁面56に所定深さの目荒らし57を形成(目荒らし57の完成と略同時)すると、給気弁機構67によって第2スペース31に空気が給気され、スペース31の負圧状態が解除されるから、目荒らし装置10Dを内壁面56から容易に引き離すことができる。
【0098】
内壁面56に目荒らし57を形成した後、電気ドリル12のトリガー48を戻すと、モーターが停止して駆動軸47の回転が停止するとともに、従動軸51(ツイストドリル13)の回転が停止する。電気ドリル12のマイクロコンピュータは、それと同時(電気ドリル12の停止と同時)に吸引装置65の制御手段に停止指令を出力する。吸引装置65の制御手段は、マイクロコンピュータからの指令にしたがって吸引装置65を停止させる。内壁面56に目荒らし57を作った後、目荒らし装置10Dを内壁面56から引き離し、次に目荒らし57を形成する内壁面56の箇所に装置10Dを移動させ、既述の手順で内壁面56に次の目荒らし57を形成する。
【0099】
この目荒らし装置10Dは、
図1や
図8の装置10A,10Bが有する効果に加え、以下の効果を有する。目荒らし装置10Dは、バキューム手段60(吸引装置65)によって第2スペース31から空気を吸引し、スペース31を負圧にしたときに、蛇腹部材59の当接部63が内壁面56に吸着する場合があるが、目荒らし57を形成したと略同時に給気弁機構67を利用してスペース31に空気が給気されるから、目荒らし57を形成した後、スペース31の負圧状態が解除され、蛇腹部材59の当接部63を内壁面56から容易に引き離すことができ、次の目荒らし57の形成作業にスムースに移ることができる。
【0100】
図19は、側壁18を省略して示す他の一例の目荒らし装置10Eの側面図である。
図19では、吸引装置65の図示を省略している。この目荒らし装置10Eが
図8のそれと異なるところは、ツイストドリル13に替えてコアドリル75(目荒らしビット)が使用されている点であり、その他の構成は
図1や
図8の目荒らし装置10A,10Bと同一であるから、
図1や
図8の装置10A,10Bの説明を援用するとともに、装置10A,10Bと同一の符号を付すことで、この目荒らし装置10Eにおけるその他の構成の説明は省略する。
【0101】
なお、
図1の目荒らし装置10Aや
図15の目荒らし装置10C、
図17の目荒らし装置10Dにおいて、ツイストドリル13に替えてコアドリル75を使用することができる。目荒らし装置10Eは、コアドリル75を利用して既述の手順により、建築物の床面や外壁面、内壁面、天井面、柱面、梁面等にその表面から内部に向かって延びる所定深さのコア抜き状の複数の目荒らしを形成することができる。
【0102】
図20は、側壁18を省略して示す他の一例の目荒らし装置10Fの側面図であり、
図21は、目荒らし装置10Fに設置された複合ドリル76の側面図である。この目荒らし装置10Fが
図8のそれと異なるところは、ツイストドリル13に替えて複合ドリル75(目荒らしビット)が使用されている点であり、その他の構成は
図1や
図8の目荒らし装置10A,10Bと同一であるから、
図1や
図8の装置10A,10Bの説明を援用するとともに、装置10A,10Bと同一の符号を付すことで、この目荒らし装置10Fにおけるその他の構成の説明は省略する。
【0103】
なお、
図1の目荒らし装置10Aや
図15の目荒らし装置10C、
図17の目荒らし装置10Dにおいて、ツイストドリル13に替えて複合ドリル76を使用することができる。複合ドリル76は、ドリル軸の先端に位置する台座77にその径方向へ並ぶ2つの超硬刃78a,78bが着脱可能に固定されている。一方の超硬刃78aは、台座77から軸方向前方に突出し、その刃先が台座77の一方の側面から他方の側面に向かって傾斜している。他方の超硬刃78bは、台座77から軸方向前方に突出し、その刃先が台座77の他方の側面から一方の側面に向かって傾斜している。目荒らし装置10Fは、複合ドリル76を利用して既述の手順により、建築物の床面や外壁面、内壁面、天井面、柱面、梁面等にその表面から内部に向かって延びる所定深さの複数の目荒らしを形成することができる。
【解決手段】目荒らし装置10Aは、ハウジング11の第1〜第4側壁16、17,19の前端縁に囲繞された前端開口32から前方へそれら目荒らしビット13の先端部54が露出し、電気ドリル12の駆動軸47の回転にともなって従動軸51とともにそれら目荒らしビット13が回転する。目荒らし装置10Aでは、ハウジング11とともにそれら目荒らしビット13を構造物の表面に押し当て、それら目荒らしビット13によって構造物をその表面から内部に向かって切削することで、一度の動作で構造物に複数の目荒らしを形成する。