(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
周波数を連続的に増大させる期間と低下させる期間を有するよう周波数変調した信号を複数の無線局で送受信し、受信側無線局で生成されるビート信号のビート周波数に基づいて、無線局間の距離及び相対速度の少なくとも一方を計測する無線距離・速度計測装置において、
前記周波数変調された信号の送信動作と受信動作を、前記複数の無線局のうち少なくとも前記計測を必要とする無線局間で相互に行い、送信側無線局の送信信号との間で所定の関係を有して受信側無線局にて前記復調用信号を発生させて受信信号を復調処理して前記ビート信号を生成し、生成されたビート信号の周波数増大期間と周波数低下期間の各ビート周波数を検出し、両無線局でそれぞれ検出された前記各ビート周波数に基づいて、前記周波数増大期間のビート周波数と前記周波数低下期間のビート周波数の差である距離を表すビート周波数と、前記周波数増大期間のビート周波数と前記周波数低下期間のビート周波数の和である相対速度を表すビート周波数との少なくとも一方を算出し、その算出結果を用いて無線局間の前記距離及び前記相対速度の少なくとも一方を計測する構成とし、
前記所定の関係として、送信側無線局の送信信号に対して受信側無線局の復調用信号の発生タイミングを所定時間早くするとき、信号送信と復調用信号発生のタイミングずれ及び送信信号と復調用信号の中心周波数ずれの各絶対値の見積り最大値をそれぞれΔxm、ΔFcm、ドップラー周波数の絶対値の見積り最大値をFdm、前記所定時間をΔtとすると、前記Δtが、
Δt>(ΔFcm+Fdm+α)/ΔF+Δxm
(ΔFは送信信号の周波数変化率、αは復調回路の不感帯範囲)
を満たすように設定し、
送信側無線局の送信信号に対して受信側無線局の復調用信号の発生タイミングを所定時間遅くするときは、前記Δtが、
Δt>(ΔFcm+Fdm+α)/ΔF+Lm/c+Δxm
(Lmは送信側無線局と受信側無線局間の想定最大距離、cは送信信号の伝播速度)
を満たすように設定し、
前記所定の関係として、送信側無線局の送信信号の中心周波数に対して受信側無線局の復調用信号の中心周波数を所定周波数ずらすとき、前記所定周波数をΔfchとすると、前記Δfchが、
Δfch>α+ΔF(Lm/c+Δxm)+Fdm+ΔFcm
を満たすように設定する、無線距離・速度計測装置。
受信側無線局の前記復調用信号の中心周波数を、送信側無線局の送信信号の中心周波数より、前記受信側無線局に対して予め定めた前記所定周波数高くする構成とした請求項1に記載の無線距離・速度計測装置。
受信側無線局の前記復調用信号の中心周波数を、送信側無線局の送信信号の中心周波数より、前記受信側無線局に対して予め定めた前記所定周波数低くする構成とした請求項1に記載の無線距離・速度計測装置。
一方の無線局の送信動作時に、受信動作を行う他方の無線局の復調用信号の中心周波数を、前記一方の無線局の送信信号の中心周波数より当該他方の無線局に対して定めた前記所定周波数高くし、前記他方の無線局の送信動作時に、受信動作を行う前記一方の無線局の復調用信号の中心周波数を、前記他方の無線局の送信信号の中心周波数より当該一方の無線局に対して定めた前記所定周波数低くする構成とした請求項1に記載の無線距離・速度計測装置。
両無線局でそれぞれ検出されたビート周波数に基づいて、前記距離を表すビート周波数と前記相対速度を表すビート周波数の少なくとも一方を算出し、その算出結果を用いて前記距離及び前記相対速度の少なくとも一方を計測する計測部を、両無線局の少なくとも一方に設ける構成とした請求項10に記載の無線距離・速度計測装置。
両無線局でそれぞれ検出されたビート周波数に基づいて、前記距離を表すビート周波数と前記相対速度を表すビート周波数の少なくとも一方を算出し、その算出結果を用いて前記距離及び前記相対速度の少なくとも一方を計測する計測部を、両無線局以外の外部に設け、両無線局から前記ビート周波数検出結果を前記計測部に送信する構成とした請求項10に記載の無線距離・速度計測装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、特許文献1に記載された計測装置は、一方の無線局を送信機とし、他方の無線局を受信機としてそれぞれの役割を固定し、一方の無線局から他方の無線局に対して信号を送信して距離や速度を計測する構成である。かかる構成では、以下で説明するように、距離や相対速度の計測誤差が生じるという問題がある。
【0009】
特許文献1の計測装置の構成は、送信側の信号送信タイミングと受信側の復調用信号の発生タイミングを一致させる必要があるが、両者のタイミングにずれが生じた場合、距離の計測誤差が生じる。また、送信信号と復調用信号の中心周波数にずれが生じた場合は、相対速度の計測誤差が生じる。
【0010】
例えば、
図16に示すように、信号送信タイミングと復調用信号発生タイミングとの間にずれΔxが存在し、送信信号の中心周波数と復調用信号の中心周波数との間にずれΔFc(ΔFc=F1′−F1=F2′−F2)が存在するものとする。図中の一点鎖線は、ずれのない時の受信信号を示す。尚、図中、F1は復調用信号で最も低い周波数、F2は復調用信号で最も高い周波数、F1′は送信信号で最も低い周波数、F2′は送信信号で最も高い周波数を示す。また、Fdはドップラー周波数である。ここで、中心周波数のずれΔFcは送信信号の中心周波数が復調用信号の中心周波数より高い場合を「正」とし、信号送信タイミングのずれΔxは、信号送信タイミングが復調用信号発生タイミングに対して遅い(換言すると、復調用信号発生タイミングが信号送信タイミングに対して早い)場合を「正」とすると、周波数増大時のビート周波数fb1と周波数低下時のビート周波数fb2は、下記のように、
fb1=ΔF・L/c−Fd−ΔFc+ΔF・Δx
fb2=−ΔF・L/c−Fd−ΔFc−ΔF・Δx
となる。
従って、距離は、上述の(1)式から、
(fb1−fb2)/2={(ΔF・L/c−Fd−ΔFc+ΔF・Δx)
−(−ΔF・L/c−Fd−ΔFc−ΔF・Δx)}/2
=ΔF・L/c+ΔF・Δx (5)
となる。
また、ドップラー周波数は、上述の(3)式から、
(fb1+fb2)/2={(ΔF・L/c−Fd−ΔFc+ΔF・Δx)
+(−ΔF・L/c−Fd−ΔFc−ΔF・Δx)}/2
=−Fd−ΔFc (6)
となる。
【0011】
上記の(5)式及び(6)式から明らかなように、信号送信タイミングと復調用信号発生タイミングにタイミングずれΔxが生じた場合、そのずれ分Δxが残るために距離計測に誤差が生じる。また、送信信号と復調用信号の中心周波数ずれΔFcが生じた場合には、そのずれ分ΔFcが残るために相対速度計測の誤差が生じる。
【0012】
タイミングずれが生じないようにするためには、例えば両無線局に正確に同期する時計を設ければよいが、そのような時計は一般的に高価であり、また、定期的に同期合わせを行う必要がありメンテナスが大変である。中心周波数ずれについては、特許文献1に、周囲温度測定による中心周波数の補正が示されているが、中心周波数ずれは両無線局の中心周波数の合致調整不良や経年変化等によっても生じるものであり、周囲温度測定による補正だけでは、相対速度の計測誤差を十分に解消できるものではない。
【0013】
本発明は上記問題点に着目してなされたもので、中心周波数やタイミングのずれに起因する距離や相対速度の計測誤差をなくし、距離や相対速度の計測精度を向上させることができる無線距離・速度計測装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
このため、本発明は、周波数を連続的に増大させる期間と低下させる期間を有するよう周波数変調した信号を複数の無線局で送受信し、受信側無線局で生成されるビート信号のビート周波数に基づいて、無線局間の距離及び相対速度の少なくとも一方を計測する無線距離・速度計測装置において、
前記周波数変調された信号の送信動作と受信動作を、前記複数の無線局のうち少なくとも前記計測を必要とする無線局間で相互に行い、送信側無線局の
送信信号との間で
所定の関係を有して受信側無線局にて前記復調用信号を発生させて受信信号を復調処理して前記ビート信号を生成し、生成されたビート信号の周波数増大期間と周波数低下期間の各ビート周波数を検出し、両無線局でそれぞれ検出された前記各ビート周波数に基づいて、前記周波数増大期間のビート周波数と前記周波数低下期間のビート周波数の差である距離を表すビート周波数と、前記周波数増大期間のビート周波数と前記周波数低下期間のビート周波数の和である相対速度を表すビート周波数との少なくとも一方を算出し、その算出結果を用いて無線局間の前記距離及び前記相対速度の少なくとも一方を計測する構成とし、
前記
所定の関係として、送信側無線局の
送信信号に対して受信側無線局の
復調用信号の発生タイミングを所定時間早くするとき、信号送信と復調用信号発生のタイミングずれ及び送信信号と復調用信号の中心周波数ずれの各絶対値の見積り最大値をそれぞれΔxm、ΔFcm、ドップラー周波数の絶対値の見積り最大値をFdm、前記所定時間をΔtとすると、前記Δtが、
Δt>(ΔFcm+Fdm+α)/ΔF+Δxm
(ΔFは送信信号の周波数変化率、αは復調回路の不感帯範囲)
を満たすように設定し、
送信側無線局の
送信信号に対して受信側無線局の
復調用信号の発生タイミングを所定時間遅くするときは、前記Δtが、
Δt>(ΔFcm+Fdm+α)/ΔF+Lm/c+Δxm
(Lmは送信側無線局と受信側無線局間の想定最大距離、cは送信信号の伝播速度)
を満たすように設定し、
前記
所定の関係として、送信側無線局の送信信号の中心周波数に対して受信側無線局の復調用信号の中心周波数を所定周波数ずらすとき、前記所定周波数をΔfchとすると、前記Δfchが、
Δfch>α+ΔF(Lm/c+Δxm)+Fdm+ΔFcm
を満たすように設定する
、構成とした。
【0015】
かかる構成では、計測を必要とする互いの無線局において、一方の無線局から周波数を連続的に増大させる期間と低下させる期間を有するよう周波数変調した信号を送信し、他方の無線局がこれを受信し、受信側無線局でビート信号を生成して周波数増大期間と周波数低下期間の各ビート周波数を検出する。所定時間後、他方の無線局から周波数変調した信号を送信し、一方の無線局がこれを受信し、受信側無線局でビート信号を生成して周波数増大期間と周波数低下期間の各ビート周波数を検出する。両無線局のビート周波数の検出結果に基づいて、周波数増大期間のビート周波数と周波数低下期間のビート周波数の差である距離を表すビート周波数や周波数増大期間のビート周波数と周波数低下期間のビート周波数の和である相対速度を表すビート周波数を算出し、その算出結果を用いて無線局間の距離や相対速度を計測する。両無線局のビート周波数の検出結果を用いることにより、送信信号と復調用信号の中心周波数のずれ及び発生タイミングのずれが相殺され、距離や相対速度の計測誤差をなくして計測精度を向上できるようになる。そして、復調処理によってビート信号の生成を可能とするよう、送信側無線局の
送信信号と受信側無線局の
復調用信号の発生タイミングとを予め定めた所定時間ずらして設定するか、送信側無線局の送信信号の中心周波数と受信側無線局の復調用信号の中心周波数とを予め定めた所定周波数ずらすことで、それぞれの無線局で確実にビート周波数を検出することができるようになる。
【0018】
請求項1の構成において、請求項2のように、一方の無線局の送信動作時に、受信動作を行う他方の無線局の
復調用信号の発生タイミングを、前記一方の無線局の
送信信号より当該他方の無線局に対して定めた前記所定時間早くし、前記他方の無線局の送信動作時に、受信動作を行う前記一方の無線局の
復調用信号の発生タイミングを、前記他方の無線局の
送信信号より当該一方の無線局に対して定めた前記所定時間遅くする構成としてもよい。
【0019】
請求項
1又は2の構成において、請求項
3のように、両無線局の前記所定時間を異ならせてもよく、請求項
4のように、両無線局の前記所定時間を同一にしてもよい。
【0021】
請求項
1の構成において、請求項
5のように、受信側無線局の前記復調用信号の中心周波数を、送信側無線局の送信信号の中心周波数より、前記受信側無線局に対して予め定めた前記所定周波数高くする構成とするとよい。また、請求項
6のように、受信側無線局の前記復調用信号の中心周波数を、送信側無線局の送信信号の中心周波数より、前記受信側無線局に対して予め定めた前記所定周波数低くする構成としてもよい。更に、請求項
7のように、一方の無線局の送信動作時に、受信動作を行う他方の無線局の復調用信号の中心周波数を、前記一方の無線局の送信信号の中心周波数より当該他方の無線局に対して定めた前記所定周波数高くし、前記他方の無線局の送信動作時に、受信動作を行う前記一方の無線局の復調用信号の中心周波数を、前記他方の無線局の送信信号の中心周波数より当該一方の無線局に対して定めた前記所定周波数低くする構成としてもよい。
【0022】
請求項
5〜7の構成において、請求項
8のように、両無線局の前記所定周波数を異ならせてもよく、請求項
9のように、両無線局の前記所定周波数を同一にしてもよい。
【0023】
請求項10では、前記各無線局は、少なくとも、前記周波数変調した信号を送受信する送受信部と、前記送信動作と前記受信動作の動作開始タイミングを制御する動作タイミング制御部と、受信動作時に、送信側無線局の
送信信号と
所定の関係を有して復調用信号を生成する復調用信号生成部と、前記送受信部で受信した受信信号を、前記復調用信号を用いて復調処理して前記ビート信号を生成する復調部と、前記生成されたビート信号のビート周波数を検出するビート周波数検出部と、を備える構成とした。
【0024】
請求項
11のように、両無線局でそれぞれ検出されたビート周波数に基づいて、距離を表すビート周波数と相対速度を表すビート周波数の少なくとも一方を算出し、その算出結果を用いて前記距離及び前記相対速度の少なくとも一方を計測する計測部を、両無線局の少なくとも一方に設ける構成とするとよい。
【0025】
請求項
12のように、両無線局でそれぞれ検出されたビート周波数に基づいて、距離を表すビート周波数と相対速度を表すビート周波数の少なくとも一方を算出し、その算出結果を用いて前記距離及び前記相対速度の少なくとも一方を計測する計測部を、両無線局以外の外部に設け、両無線局から前記ビート周波数検出結果を前記計測部に送信する構成とするとよい。
【0026】
請求項
13のように、前記計測を必要とする無線局の少なくとも一方は、移動可能な移動局とする。
また、請求項
14のように、前記移動局は、列車とする。
【発明の効果】
【0027】
本発明の無線距離・速度計測装置によれば、複数の無線局において少なくとも計測を必要とする無線局間で送信動作と受信動作を相互に行い、両無線局で検出した周波数増大期間と周波数低下期間の各ビート周波数の検出結果を用いて、周波数増大期間のビート周波数と周波数低下期間のビート周波数の差である距離を表すビート周波数や周波数増大期間のビート周波数と周波数低下期間のビート周波数の和である相対速度を表すビート周波数を算出し、その算出結果を用いて無線局間の距離や相対速度を計測する構成としたので、
送信信号と
復調用信号の発生タイミングのずれ及び送信信号と復調用信号の互いの中心周波数のずれに起因する計測誤差をなくすことができる。従って、距離や相対速度の計測精度を向上することができる。
【0028】
また、復調処理によってビート信号の生成の確実性を向上するよう、送信側無線局の
送信信号と受信側無線局の
復調用信号の発生タイミングとのタイミングずれ及び中心周波数ずれの各絶対値の見積り最大値と、ドップラー周波数の絶対値の見積り最大値とに基づいて設定した
所定の関係を有して
送信信号と
復調用信号の発生タイミングをずらすことにより、それぞれの無線局で確実にビート周波数を検出することができ、距離や相対速度を確実に計測できる。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1に本発明に係る無線距離・速度計測装置の第1実施形態の構成を示す。
図1において、本実施形態の無線距離・速度計測装置は、2つの無線局として送受信機10、20を備え、両送受信機10、20間で、例えば
図2の下図に示すような、周波数変調された信号、例えば周波数が連続的に変化するFM−CW波を、
図3のように所定間隔Tで交互に送受信し、送受信機10、20間の距離や相対速度を計測する構成である。
【0031】
図4に送受信機10の構成を示す。
図4において、送受信機10は、送受信アンテナ11と、FM−CW波発生器12と、復調用信号発生器13と、復調回路14と、送受信切替え用の切替えスイッチ15と、信号解析部16と、距離・速度算出部17と、タイミング制御部18とを備える。
【0032】
前記送受信アンテナ11は、FM−CW波発生器12で発生したFM−CW波を送信すると共に、他方の送受信機20から送信されるFM−CW波を受信するもので、FM−CW波発生器12及び切替えスイッチ15と共に送受信部に相当する。前記復調用信号発生器13は、復調用のFM−CW波を発生して復調回路14に出力するもので復調用信号生成部に相当する。前記復調回路14は、復調用信号発生器13からの復調用信号により受信信号を復調処理しビート信号を発生するもので、復調部に相当する。前記切替えスイッチ15は、送信動作期間に送受信アンテナ11をFM−CW波発生器12側に接続し、受信動作期間に送受信アンテナ11を復調回路13に接続するものである。前記信号解析部16は、復調回路14から入力するビート信号を、例えばFFT(Fast Fourier Transform)処理等によって解析してビート周波数を検出するもので、ビート周波数検出部に相当する。前記タイミング制御部18は、FM−CW波発生器12のFM−CW波発生タイミング、復調用信号発生器13の復調用信号発生タイミング及び切替えスイッチ15の切替えタイミングを制御すると共に、送受信機20に対する送受信動作の開始タイミングを通知する指令を発生するもので、動作タイミング制御部に相当する。また、タイミング制御部18は、自身の前記タイミング通知指令を基準として予め定めたタイミングでFM−CW波発生器12、復調用信号発生器13及び切替えスイッチ15に駆動制御信号を出力する。尚、送受信動作の開始タイミングの通知指令に関しては、外部から両送受信機10、20へ通知指令を送信するようにしてもよい。
【0033】
送受信機20の構成は、タイミング制御部18が動作開始のタイミング通知指令を発生しないことを除いて送受信機10と同様の構成であるので、説明を省略する。尚、送受信機20の信号解析部16で検出したビート周波数を送受信機10側に送信し、送受信機10側の距離・速度算出部17で距離・速度算出を実施するようにした場合、送受信機20の距離・速度算出部17は省略してもよい。
【0034】
次に、本実施形態装置による距離、相対速度の計測動作について説明する。
送受信機10のタイミング制御部18から送受信動作開始のタイミング通知指令を発生し、このタイミング通知指令を送受信機20側に送信する。送受信機20は、タイミング通知指令を受信することにより、送受信機10と同期して
図3に示すように、交互に送受信動作を行う。
【0035】
タイミング通知指令の発生時点を基準として、予め設定したプログラムに従って、所定のタイミングで、両送受信機10、20で同時に動作を開始する。そして、送受信機10側では、タイミング制御部18から駆動制御信号を発生し、切替えスイッチをFM−CW波発生器12に接続すると共に、FM−CW波発生器12からFM−CW波を発生し、送受信アンテナ11から送信する。他方の送受信機20側では、送受信機10の送信動作に合わせて切替えスイッチ15を復調回路14に接続すると共に、送受信機10側のFM−CW波の発生タイミングに合わせてタイミング制御部18により復調用信号発生器13を駆動してFM−CW波の復調用信号を発生する。
【0036】
送受信機20で、送受信機10から送信されたFM−CW波を受信すると、この受信信号は切替えスイッチ15を介して復調回路14に入力する。復調回路14は、入力する受信信号を復調用信号を用いて復調処理し発生したビート信号を信号解析部16に出力する。信号解析部16は、入力するビート信号を解析処理してそのビート周波数を検出する。
【0037】
このとき送受信機20で検出される、周波数増大時のビート周波数fb1
2と周波数低下時のビート周波数fb2
2は、
図5(A)に示すように、
fb1
2=ΔF・L/c−Fd−ΔFc+ΔF・Δx (7)
fb2
2=−ΔF・L/c−Fd−ΔFc−ΔF・Δx (8)
となる。ここで、ΔFは周波数の変化率(周波数増大時「正」)、cはFM−CW波の伝搬速度(光速)、Fdはドップラー周波数、Lは無線局間の距離を示す。また、送信信号の中心周波数と復調用信号の中心周波数との間のずれΔFc(ΔFc=F1′−F1=F2′−F2)と、信号送信タイミングと復調用信号発生タイミングとの間
のずれΔxとが、存在するものとする。尚、
図5において、F1は復調用信号で最も低い周波数、F2は復調用信号で最も高い周波数、F1′は送信信号で最も低い周波数、F2′は送信信号で最も高い周波数であり、一点鎖線は、ずれのない時の送受信機20における受信信号を示す。また、中心周波数のずれΔFcは送信信号が復調用信号より高い場合を「正」とし、信号送信タイミングのずれΔxは、信号送信タイミングが復調用信号発生タイミングに対して遅い(換言すると、復調用信号発生タイミングが信号送信タイミングに対して早い)場合を「正」としている。
【0038】
送受信機10の送信動作終了後、
図3に示すように、所定時間T後に、送受信機10側では、受信動作を行うために、切替えスイッチ15を復調回路14側に切替え接続し、FM−CW波を停止し、復調用信号を発生させる。また、送受信機20側では、切替えスイッチ15をFM−CW波発生器12側に切替え接続し、FM−CW波を発生させ、復調用信号を停止し、送信動作を行う。これにより、送受信機10側の復調回路14からビート信号が発生し、信号解析部16はそのビート周波数を検出する。
【0039】
このとき送受信機10で検出される、周波数増大時のビート周波数fb1
1と周波数低下時のビート周波数fb2
1は、
図5(B)に示すように、
fb1
1=ΔF・L/c−Fd+ΔFc−ΔF・Δx (9)
fb2
1=−ΔF・L/c−Fd+ΔFc+ΔF・Δx (10)
となる。
【0040】
このように、送受信機10、20間で、少なくとも1回、交互に送受信動作を行った後、送受信機20側で検出したビート周波数の検出結果を送受信機10側の距離・速度算出部17に送信し、送受信機10側で、距離・速度算出部17により、両送受信機10、20のビート周波数の検出結果を用いて、下記の(11)、(12)式から距離を表すビート周波数(fb1とfb2の差)と相対速度を表すビート周波数(fb1とfb2の和)を算出し、その結果に基づいて送受信機10、20間の距離や相対速度を算出する。
距離を表すビート周波数(fb1とfb2の差)に関して、
(fb1
2−fb2
2)/4+(fb1
1−fb2
1)/4
={(ΔF・L/c−Fd−ΔFc+ΔF・Δx)−(−ΔF・L/c−Fd−ΔFc−ΔF・Δx)}/4+{(ΔF・L/c−Fd+ΔFc−ΔF・Δx)−(−ΔF・L/c−Fd+ΔFc+ΔF・Δx)}/4
=(ΔF・L/c+ΔF・Δx)/2+(ΔF・L/c−ΔF・Δx)/2
=ΔF・L/c (11)
相対速度を表すビート周波数(fb1とfb2の和)に関して、
(fb1
2+fb2
2)/4+(fb1
1+fb2
1)/4
={(ΔF・L/c−Fd−ΔFc+ΔF・Δx)+(−ΔF・L/c−Fd−ΔFc−ΔF・Δx)}/4+{(ΔF・L/c−Fd+ΔFc−ΔF・Δx)+(−ΔF・L/c−Fd+ΔFc+ΔF・Δx)}/4
=(−Fd−ΔFc)/2+(−Fd+ΔFc)/2
=−Fd (12)
【0041】
上記(11)式及び(12)式から明らかなように、距離を表すビート周波数には信号発生タイミングのずれ成分Δxが含まれず、信号発生タイミングのずれに起因する距離計測誤差をなくすことができる。また、相対速度を表すビート周波数には中心周波数のずれ成分ΔFcが含まれず、中心周波数のずれに起因する相対速度計測誤差をなくすことができる。従って、距離や相対速度の計測精度を向上できる。
【0042】
前述したように、上述の説明も計測原理が分かり易いように、周波数低下時のビート周波数を負の値として説明しており、実際の処理においては、上述した算出式において負の周波数を加算するときは減算し、減算するときは加算することになる。以下の説明も同様とする。
【0043】
尚、送信信号と復調用信号の中心周波数ずれが存在しない場合については、各ビート周波数fb1
1、fb2
1、fb1
2、fb2
2において、ΔFc=0として算出すればよい。また、信号発生タイミングのずれが存在しない場合については、各ビート周波数fb1
1、fb2
1、fb1
2、fb2
2において、Δx=0として算出すればよい。これらのいずれの場合も、距離を表すビート周波数からは信号発生タイミングのずれ成分Δxを、相対速度を表すビート周波数からは中心周波数のずれ成分ΔFcを、それぞれ除くことができることは明らかであり、信号発生タイミングのずれや中心周波数のずれに起因する計測誤差をなくすことができる。
【0044】
無線局として送受信機が3つ以上存在する場合も同様である。距離や相対速度を計測したい送受信機間で、例えば
図2の下図に示すような、周波数変調された信号、例えば周波数が連続的に変化するFM−CW波を相互に送受信し、各送受信機のビート周波数の検出結果を用いて、上述の(11)、(12)式から距離を表すビート周波数(fb1とfb2の差)と相対速度を表すビート周波数(fb1とfb2の和)を算出し、その結果に基づいて送受信機間の距離や相対速度を算出する。
【0045】
ところで、無線機の復調回路は、周波数0Hz(直流)付近の信号を低減・除去するように構成することが多い。その場合、復調処理で生成されるビート信号のビート周波数が0Hz付近であるとビート信号の検出が困難になったり不可能になる虞れがある。以下、ビート信号の検出が困難や不可能である周波数範囲を不感帯と称す。
【0046】
図6は、その一例であり、送受信機20で受信した送受信機10の送信FM−CW波が送受信機20の復調用信号であるFM−CW波と周波数上で近接し、送受信機20側のプラスのビート周波数fb1
2が復調回路の不感帯に含まれてしまう例である。
【0047】
図示のようにfb1
2=ΔF・L/c−Fd−ΔFc+ΔF・Δx≒0であるようなビート信号は低減・除去され、そのビート周波数の検出が不能になることが考えられ、その場合、(11)、(12)式は、fb1
2=0として、下記(11)′、(12)′式のようになり、信号発生タイミングのずれ成分Δxや中心周波数のずれ成分ΔFcを取り除くことは出来ない。
(fb1
2−fb2
2)/4+(fb1
1−fb2
1)/4
={0−(−ΔF・L/c−Fd−ΔFc−ΔF・Δx)}/4+{(ΔF・L/c−Fd+ΔFc−ΔF・Δx)−(−ΔF・L/c−Fd+ΔFc+ΔF・Δx)}/4
=(3・ΔF・L/c+Fd+ΔFc−ΔF・Δx)/4 (11)′
(fb1
2+fb2
2)/4+(fb1
1+fb2
1)/4
={0+(−ΔF・L/c−Fd−ΔFc−ΔF・Δx)}/4+{(ΔF・L/c−Fd+ΔFc−ΔF・Δx)+(−ΔF・L/c−Fd+ΔFc+ΔF・Δx)}/4
=(−ΔF・L/c−3Fd+ΔFc−ΔF・Δx)/4 (12)′
【0048】
かかる問題を解消するための本発明の実施形態を以下に説明する。
復調処理で生成されるビート信号のビート周波数が略0Hz(直流)となることを防止するには、送信信号(例えばFM−CW波)の送信タイミングと復調用信号(FM−CW波)の生成タイミングを、予め定めた所定時間(Δt)ずらすようにすればよい。
以下に説明する本発明の第2実施形態は、
図7の(A)に示すように、受信側の復調用信号生成タイミングを送信側の信号送信タイミングよりΔtだけ早くする(換言すれば、送信側の信号送信タイミングを受信側の復調用信号生成タイミングよりもΔtだけ遅くする)構成例である。尚、ハードウエア構成は、
図4と同じであり、送受信機10、20内のタイミング制御部18のタイミング制御が第1実施形態と異なるだけである。
【0049】
本実施形態では、送受信機10が送信側で送受信機20が受信側の場合は、送受信機20側での復調用信号の生成がΔtだけ早くなるので、送受信機20の
図8(A)に示す復調用信号は、図中の矢印で示すように時間軸上で左方へΔt移動することとなり、周波数の増大時及び低下時共にビート周波数が図中の矢印方向に変化し、ビート周波数の絶対値が大きくなる。また、送受信機10が受信側で送受信機20が送信側の場合は、送受信機10側での復調用信号の生成がΔtだけ早くなるので、送受信機10の
図8(B)に示す復調用信号は、同じく時間軸上で図の左方へΔt移動することとなり、送受信機10が送信側で送受信機20が受信側の場合と同様に、周波数の増大時及び低下時共にビート周波数が図中の矢印方向に変化し、ビート周波数の絶対値が大きくなる。
【0050】
この場合の送受信機20、10でそれぞれ検出されるビート周波数fb1
2とfb2
2、fb1
1とfb2
1は、以下のようになる。
fb1
2=ΔF・L/c−Fd−ΔFc+ΔF(Δx+Δt)
fb2
2=−ΔF・L/c−Fd−ΔFc−ΔF(Δx+Δt)
fb1
1=ΔF・L/c−Fd+ΔFc−ΔF(Δx−Δt)
fb2
1=−ΔF・L/c−Fd+ΔFc+ΔF(Δx−Δt)
従って、
距離を表すビート周波数(fb1とfb2の差)は、下記の(13)式のようになる。
(fb1
2−fb2
2)/4+(fb1
1−fb2
1)/4
=[{ΔF・L/c−Fd−ΔFc+ΔF(Δx+Δt)}−{−ΔF・L/c−Fd−ΔFc−ΔF(Δx+Δt)}]/4+[{ΔF・L/c−Fd+ΔFc−ΔF(Δx−Δt)}−{−ΔF・L/c−Fd+ΔFc+ΔF(Δx−Δt)}]/4
={ΔF・L/c+ΔF(Δx+Δt)}/2+{ΔF・L/c−ΔF(Δx−Δt)}/2
=ΔF・L/c+ΔF・Δt (13)
また、相対速度を表すビート周波数(fb1とfb2の和)は、下記の(14)式のようになる。
(fb1
2+fb2
2)/4+(fb1
1+fb2
1)/4
=[{ΔF・L/c−Fd−ΔFc+ΔF(Δx+Δt)}+{−ΔF・L/c−Fd−ΔFc−ΔF(Δx+Δt)}]/4+[{ΔF・L/c−Fd+ΔFc−ΔF(Δx−Δt)}+{−ΔF・L/c−Fd+ΔFc+ΔF(Δx−Δt)}]/4
=(−Fd−ΔFc)/2+(−Fd+ΔFc)/2
=−Fd (14)
上記(13)式において、ΔF及びΔtは既知であるため、距離を表すビート周波数を算出することが出来る。
【0051】
ここで、復調用信号の早生成分Δtは、タイミングずれΔxと中心周波数ずれΔFcの各絶対値の見積り最大値Δxm、ΔFcm及びドップラー周波数Fdの絶対値の見積り最大値Fdm(相対速度の想定最大値)を設定することで決めることができる。復調回路の不感帯範囲を±αとすると、各ビート信号のビート周波数が不感帯の範囲外となるためには、以下の式を満たせばよい。
ΔF・L/c−Fd−ΔFc+ΔF(Δx+Δt)>α
−ΔF・L/c−Fd−ΔFc−ΔF(Δx+Δt)<−α
ΔF・L/c−Fd+ΔFc−ΔF(Δx−Δt)>α
−ΔF・L/c−Fd+ΔFc+ΔF(Δx−Δt)<−α
ここで、|Δx|≦Δxm、|ΔFc|≦ΔFcm、|Fd|≦Fdmとおくと、上の4式から、早生成分Δtは以下の(15)式を満たすように定めればよい。
Δt>(ΔFcm+Fdm+α)/ΔF+Δxm (15)
【0052】
かかる第2実施形態の構成によれば、受信側無線局において送信側無線局からの送信信号を復調処理して得られるビート信号のビート周波数が増大するので、ビート周波数が復調回路の不感帯(0Hz付近)に入ることを防止できる。従って、距離や相対速度を確実に計測できる。
【0053】
送受信機10側と送受信機20側で早生成分Δtの値を異ならせてもよい。送受信機10側の早生成分をΔt1、送受信機20側の早生成分をΔt2(Δt2≠Δt1)とすると、送受信機20、10でそれぞれ検出されるビート周波数fb1
2とfb2
2、fb1
1とfb2
1は、以下のようになる。
fb1
2=ΔF・L/c−Fd−ΔFc+ΔF(Δx+Δt1)
fb2
2=−ΔF・L/c−Fd−ΔFc−ΔF(Δx+Δt1)
fb1
1=ΔF・L/c−Fd+ΔFc−ΔF(Δx−Δt2)
fb2
1=−ΔF・L/c−Fd+ΔFc+ΔF(Δx−Δt2)
従って、
距離を表すビート周波数(fb1とfb2の差)は、下記の(16)式のようになる。
(fb1
2−fb2
2)/4+(fb1
1−fb2
1)/4
=[{ΔF・L/c−Fd−ΔFc+ΔF(Δx+Δt1)}−{−ΔF・L/c−Fd−ΔFc−ΔF(Δx+Δt1)}]/4+[{ΔF・L/c−Fd+ΔFc−ΔF(Δx−Δt2)}−{−ΔF・L/c−Fd+ΔFc+ΔF(Δx−Δt2)}]/4
={ΔF・L/c+ΔF(Δx+Δt1)}/2+{ΔF・L/c−ΔF(Δx−Δt2)}/2
=ΔF・L/c+ΔF(Δt1+Δt2)/2 (16)
また、相対速度を表すビート周波数(fb1とfb2の和)は、(14)式において、
(fb1
2+fb2
2)/4+(fb1
1+fb2
1)/4
=(−Fd−ΔFc)/2+(−Fd+ΔFc)/2
となり、早生成分Δtの項が含まれないことから、
(fb1
2+fb2
2)/4+(fb1
1+fb2
1)/4=−Fd
であり、(14)式と同様となる。
従って、(16)式のΔF、Δt1、Δt2は既知であるので、送受信機10側と送受信機20側で早生成分Δtの値が異なった場合でも、距離を表すビート周波数を算出できる。
【0054】
前述したように、早生成分Δt1、Δt2は、タイミングずれΔxと中心周波数ずれΔFcの各絶対値の見積り最大値Δxm、ΔFcm及びドップラー周波数Fdの絶対値の見積り最大値Fdm(相対速度の想定最大値)を設定することで決めることができ、各ビート信号のビート周波数が復調回路の不感帯範囲±αの範囲外となるためには、以下の式を満たせばよい。
ΔF・L/c−Fd−ΔFc+ΔF(Δx+Δt1)>α
−ΔF・L/c−Fd−ΔFc−ΔF(Δx+Δt1)<−α
ΔF・L/c−Fd+ΔFc−ΔF(Δx−Δt2)>α
−ΔF・L/c−Fd+ΔFc+ΔF(Δx−Δt2)<−α
|Δx|≦Δxm、|ΔFc|≦ΔFcm、|Fd|≦Fdmとおくと、上の4式から、早生成分Δt1、Δt2は、以下の(17)式を満たすように定めればよい。
Δt1、Δt2>(ΔFcm+Fdm+α)/ΔF+Δxm (17)
【0055】
無線局として送受信機が3つ以上存在する場合も同様である。距離や相対速度を計測したい送受信機間で、例えば
図2の下図に示すような、周波数変調された信号、例えば周波数が連続的に変化するFM−CW波を相互に送受信して送受信機間の距離や相対速度を計測する。例えば、
図7の(B)に示すように、各送受信機10、20、30が順次に他の各送受信機20と30、30と10、10と20と送受信動作を行なう際に受信側の復調用信号の生成をΔtだけ早くする。このΔtは図示のように、送受信機10、20間ではΔt12、送受信機10、30間ではΔt13、送受信機20、30間ではΔt23として計測対象によって異なっても良い。
【0056】
送受信機10、20間での距離や相対速度は、送受信機10の送信信号を送受信機20で受信して復調したビート信号の周波数と、送受信機20の送信信号を送受信機10で受信して復調したビート信号の周波数によって、(13)式、(14)式から計測できる。同様に、送受信機10、30間での距離や相対速度は、送受信機10の送信信号を送受信機30で受信して復調したビート信号の周波数と、送受信機30の送信信号を送受信機10で受信して復調したビート信号の周波数によって、送受信機20、30間での距離や相対速度は、送受信機20の送信信号を送受信機30で受信して復調したビート信号の周波数と、送受信機30の送信信号を送受信機20で受信して復調したビート信号の周波数によって、それぞれ計測できる。
【0057】
次に、本発明の第3実施形態について説明する。
第3実施形態は、復調処理で生成されるビート信号のビート周波数が略0Hz(直流)となることを防止するため、
図9の(A)に示すように、受信側の復調用信号生成タイミングを送信側の信号送信タイミングよりΔtだけ遅くする(換言すれば、送信側の信号送信タイミングを受信側の復調用信号生成タイミングよりもΔtだけ早くする)構成である。尚、
図9は、送受信機10側と送受信機20側で遅生成分Δtの値をΔt1とΔt2として異ならせた例である。
【0058】
本実施形態は、送受信機10が送信側で送受信機20が受信側の場合に、その復調用信号生成タイミングを送受信機10の信号送信タイミングよりΔt1だけ遅くし、送受信機10が受信側無線機の場合に、その復調用信号生成タイミングを送受信機20の信号送信タイミングよりΔt2だけ遅くした例であり、
図10に、受信側送受信機での受信信号と復調信号の生成タイミングとビート周波数を示し、
図10の(A)は送受信機20が受信側の場合、(B)は送受信機10が受信側の場合である。
【0059】
かかる構成では、送受信機10が送信側で送受信機20が受信側の場合は、送受信機20の
図10(A)に示す復調用信号が、図中の矢印で示すように時間軸上で右方へΔt1移動することとなり、周波数の増大時及び低下時共にビート周波数が図中の矢印方向に変化し、ビート周波数の絶対値が大きくなる。また、送受信機10が受信側で送受信機20が送信側の場合は、送受信機10の
図10(B)に示す復調用信号は、同じく時間軸上で図の右方へΔt2移動することとなり、送受信機10が送信側で送受信機20が受信側の場合と同様に、周波数の増大時及び低下時共にビート周波数が図中の矢印方向に変化し、ビート周波数の絶対値が大きくなる。尚、本実施形態では、送受信機10、20において、復調用信号が受信信号より時間軸上で遅れ、周波数の増大時と低下時でビート周波数の正負が逆となっている。
【0060】
この場合の送受信機20,10でそれぞれ検出されるビート周波数fb1
2とfb2
2、fb1
1とfb2
1は、以下のようになる。
fb1
2=ΔF・L/c−Fd−ΔFc+ΔF(Δx−Δt1)
fb2
2=−ΔF・L/c−Fd−ΔFc−ΔF(Δx−Δt1)
fb1
1=ΔF・L/c−Fd+ΔFc−ΔF(Δx+Δt2)
fb2
1=−ΔF・L/c−Fd+ΔFc+ΔF(Δx+Δt2)
従って、
距離を表すビート周波数(fb1とfb2の差)は、下記の(18)式のようになる。
(fb1
2−fb2
2)/4+(fb1
1−fb2
1)/4
=[{ΔF・L/c−Fd−ΔFc+ΔF(Δx−Δt1)}−{−ΔF・L/c−Fd−ΔFc−ΔF(Δx−Δt1)}]/4+[{ΔF・L/c−Fd+ΔFc−ΔF(Δx+Δt2)}−{−ΔF・L/c−Fd+ΔFc+ΔF(Δx+Δt2)}]/4
={ΔF・L/c+ΔF(Δx−Δt1)}/2+{ΔF・L/c−ΔF(Δx+Δt2)}/2
=ΔF・L/c−ΔF(Δt1+Δt2)/2 (18)
また、相対速度を表すビート周波数(fb1とfb2の和)は、下記の(19)式のようになる。
(fb1
2+fb2
2)/4+(fb1
1+fb2
1)/4
=[{ΔF・L/c−Fd−ΔFc+ΔF(Δx−Δt1)}+{−ΔF・L/c−Fd−ΔFc−ΔF(Δx−Δt1)}]/4+[{ΔF・L/c−Fd+ΔFc−ΔF(Δx+Δt2)}+{−ΔF・L/c−Fd+ΔFc+ΔF(Δx+Δt2)}]/4
=(−Fd−ΔFc)/2+(−Fd+ΔFc)/2
=−Fd (19)
上記(18)式において、ΔF、Δt1、Δt2は既知であるため、距離を表すビート周波数を算出することが出来る。相対速度を表すドップラー周波数Fdを算出できることは(19)式から明らかである。
【0061】
尚、上記実施形態では、それぞれの送受信機10、20での遅生成分をΔt1、Δt2として異ならせた例を示したが、同じとしてもよく、この場合、上述の式中のΔt1、Δt2をΔtに置き換えればよい。
【0062】
遅生成分Δt1、Δt2は、タイミングずれΔxと中心周波数ずれΔFcの各絶対値の見積り最大値Δxm、ΔFcm、送受信機間距離Lの想定最大値Lm及びドップラー周波数Fdの絶対値の見積り最大値Fdm(相対速度の想定最大値)を設定することで決めることができ、各ビート信号のビート周波数が復調回路の不感帯範囲±αの範囲外となるためには、以下の式を満たせばよい。
ΔF・L/c−Fd−ΔFc+ΔF(Δx−Δt1)<−α
−ΔF・L/c−Fd−ΔFc−ΔF(Δx−Δt1)>α
ΔF・L/c−Fd+ΔFc−ΔF(Δx+Δt2)<−α
−ΔF・L/c−Fd+ΔFc+ΔF(Δx+Δt2)>α
|Δx|≦Δxm、|ΔFc|≦ΔFcm、L≦Lm、|Fd|≦Fdmとおくと、上の4式から、遅生成分Δt1、Δt2は、以下の(20)式を満たすように定めればよい。
Δt1、Δt2>(ΔFcm+Fdm+α)/ΔF+Lm/c+Δxm (20)
【0063】
無線局としての送受信機が3つ以上存在する場合の遅生成(受信側復調用信号生成タイミングを送信側信号送信タイミングより遅く生成する)の関係は、前述した第2実施形態の早生成(受信側復調用信号生成タイミングを送信側信号送信タイミングより早く生成する)の場合と同様である。各送受信機が順次に他の各送受信機と送受信動作を行なう際に受信側の復調用信号の生成をΔtだけ遅くする。このΔtは送受信機10、20間ではΔt12、送受信機10、30間ではΔt13、送受信機20、30間ではΔt23と計測対象によって異なっても良い。
【0064】
尚、一方の無線局の送信動作時に、受信動作を行う他方の無線局の復調用信号発生タイミングを、一方の無線局の信号送信タイミングより早くし、他方の無線局の送信動作時に、受信動作を行う一方の無線局の復調用信号発生タイミングを、他方の無線局の信号送信タイミングより遅くするようにしてもよい。例えば、送受信機10が送信側で送受信機20が受信側の場合に、送受信機20の復調用信号の生成タイミングを送受信機10の信号送信タイミングより早くし、送受信機20が送信側で送受信機10が受信側の場合に、送受信機10の復調用信号の生成タイミングを送受信機20の信号送信タイミングより遅くする構成としてもよい。
【0065】
この場合、送受信機20で検出されるビート周波数fb1
2とfb2
2は、第2実施形態で示したものであり、送受信機10で検出されるビート周波数fb1
1とfb2
1は、第3実施形態で示したものであり、以下のようになる。
fb1
2=ΔF・L/c−Fd−ΔFc+ΔF(Δx+Δt1)
fb2
2=−ΔF・L/c−Fd−ΔFc−ΔF(Δx+Δt1)
fb1
1=ΔF・L/c−Fd+ΔFc−ΔF(Δx+Δt2)
fb2
1=−ΔF・L/c−Fd+ΔFc+ΔF(Δx+Δt2)
従って、
距離を表すビート周波数(fb1とfb2の差)は、下記の(21)式のようになる。
(fb1
2−fb2
2)/4+(fb1
1−fb2
1)/4
=[{ΔF・L/c−Fd−ΔFc+ΔF(Δx+Δt1)}−{−ΔF・L/c−Fd−ΔFc−ΔF(Δx+Δt1)}]/4+[{ΔF・L/c−Fd+ΔFc−ΔF(Δx+Δt2)}−{−ΔF・L/c−Fd+ΔFc+ΔF(Δx+Δt2)}]/4
={ΔF・L/c+ΔF(Δx+Δt1)}/2+{ΔF・L/c−ΔF(Δx+Δt2)}/2
=ΔF・L/c+ΔF(Δt1−Δt2)/2 (21)
また、相対速度を表すビート周波数(fb1とfb2の和)は、下記の(22)式のようになる。
(fb1
2+fb2
2)/4+(fb1
1+fb2
1)/4
=[{ΔF・L/c−Fd−ΔFc+ΔF(Δx+Δt1)}+{−ΔF・L/c−Fd−ΔFc−ΔF(Δx+Δt1)}]/4+[{ΔF・L/c−Fd+ΔFc−ΔF(Δx+Δt2)}+{−ΔF・L/c−Fd+ΔFc+ΔF(Δx+Δt2)}]/4
=(−Fd−ΔFc)/2+(−Fd+ΔFc)/2
=−Fd (22)
上記(21)式において、ΔF、Δt1、Δt2は既知であるため、距離を表すビート周波数を算出することが出来る。相対速度を表すドップラー周波数Fdを算出できることは(22)式から明らかである。
【0066】
また、上述の例では、早生成分Δt1と遅生成分Δt2が異なる例であるが、Δt1=t2=Δtとすると、ΔF(Δt1−Δt2)/2=0となるので、(21)式からΔF・Δt1、ΔF・Δt2を除去する処理の必要がなくなる利点がある。
【0067】
上述したように、送信側の送信信号と受信側の復調用信号の生成タイミングをずらしてビート周波数を復調回路の不感帯の範囲外にさせる場合、両者の生成タイミング差を前述の(17)式、
(20)式の条件を満たして設定すればよいので、例えば受信側の復調用信号の生成タイミングを変化させて生成タイミング差を生じさせる場合を考えると、下記の4通りの組み合わせを考えることができる。
1.送受信機10、20側共に早生成。
2.送受信機20側を早生成、送受信機10側を遅生成。
3.送受信機20側を遅生成、送受信機10側を早生成。
4.送受信機10、20側共に遅生成。
【0068】
無線局としての送受信機が3つ以上存在する場合も同様である。各送受信機が順次に他の各送受信機と送受信動作を行なう際に受信側の復調用信号の生成をΔtだけずらす。このΔtは送受信機10、20間ではΔt12、送受信機10、30間ではΔt13、送受信機20、30間ではΔt23と計測対象によって異なっても良い。
図9の(B)は、計測対象との1回目の送受信では受信側復調用信号を早生成し、2回目の送受信では受信側復調用信号を遅生成する例である。1回目の送受信で受信側復調用信号を遅生成し、2回目の送受信で受信側復調用信号を早生成しても良い。
尚、受信側の復調用信号の生成タイミングのずらす量は同じでもよいし、異なっていてもよい。
送信側の信号送信タイミングを変化させて生成タイミング差を生じさせる場合も、同様の組み合わせを設定することができる。
【0069】
送受信機20(又は送受信機10)で受信した送受信機10(又は送受信機20)の送信信号が著しく高い周波数となった場合、周波数の増大時と低下時で異符号として表れていたビート周波数fb1、fb2は同符号となる。このような現象は、例えば送受信機10と送受信機20が高速で近づいている場合等に現れる。このような場合も、復調処理で生成されるビート信号のビート周波数が0Hz付近になることが考えられる。尚、送受信機20(又は送受信機10)で受信した送受信機10(又は送受信機20)の送信信号が著しく低い周波数となった場合も同様であり、このような現象は、例えば送受信機10と送受信機20が高速で遠ざかる場合等に現れる。
【0070】
このようにビート周波数が同符号となるような場合でも、復調処理で生成されるビート信号のビート周波数が、復調回路の不感帯の範囲外となるようにするには、受信側無線機の復調用信号の中心周波数と送信側無線機の送信信号の中心周波数を、予め定めた所定周波数ずらすよう設定すればよい。
【0071】
以下に説明する本発明の第4実施形態は、受信側の復調用信号の中心周波数を送信側の送信信号の中心周波数より予めΔfch高くする(換言すれば,送信側の送信信号の中心周波数を受信側の復調用信号の中心周波数より予めΔfch低くする)ことで、ビート周波数がプラス(正)側となるよう設定した例である。
【0072】
本実施形態は、
図11(A)、(B)に示すように、送受信機10が送信側で送受信機20が受信側の場合、送受信機20側の復調用信号の中心周波数を送受信機10の送信信号の中心周波数よりΔfch1高くし、送受信機20が送信側で送受信機10が受信側の場合、送受信機10側の復調用信号の中心周波数を送受信機20の送信信号の中心周波数よりΔfch2高くした例である。
【0073】
この場合の送受信機20、10でそれぞれ検出されるビート周波数fb1
2とfb2
2、fb1
1とfb2
1は、以下のようになる。
fb1
2=ΔF・L/c−Fd−ΔFc+ΔF・Δx+Δfch1
fb2
2=−ΔF・L/c−Fd−ΔFc−ΔF・Δx+Δfch1
fb1
1=ΔF・L/c−Fd+ΔFc−ΔF・Δx+Δfch2
fb2
1=−ΔF・L/c−Fd+ΔFc+ΔF・Δx+Δfch2
従って、
距離を表すビート周波数(fb1とfb2の差)は、下記の(23)式のようになる。
(fb1
2−fb2
2)/4+(fb1
1−fb2
1)/4
={(ΔF・L/c−Fd−ΔFc+ΔF・Δx+Δfch1)−(−ΔF・L/c−Fd−ΔFc−ΔF・Δx+Δfch1)}/4+{(ΔF・L/c−Fd+ΔFc−ΔF・Δx+Δfch2)−(−ΔF・L/c−Fd+ΔFc+ΔF・Δx+Δfch2)}/4
=(ΔF・L/c+ΔF・Δx)/2+(ΔF・L/c−ΔF・Δx)/2
=ΔF・L/c (23)
また、相対速度を表すビート周波数(fb1とfb2の和)は、下記の(24)式のようになる。
(fb1
2+fb2
2)/4+(fb1
1+fb2
1)/4
={(ΔF・L/c−Fd−ΔFc+ΔF・Δx+Δfch1)+(−ΔF・L/c−Fd−ΔFc−ΔF・Δx+Δfch1)}/4+(ΔF・L/c−Fd+ΔFc−ΔF・Δx+Δfch2)+(−ΔF・L/c−Fd+ΔFc+ΔF・Δx+Δfch2)}/4
=(−Fd−ΔFc+Δfch1)/2+(−Fd+ΔFc+Δfch2)/2
=−Fd+(Δfch1+Δfch2)/2 (24)
上記(24)式において、Δfch1、Δfch2は既知であるため、相対速度を表すビート周波数を算出することが出来る。
【0074】
Δfch1、Δfch2は、タイミングずれΔxと中心周波数ずれΔFcの各絶対値の見積り最大値Δxm、ΔFcm、送受信機間距離Lの想定最大値Lm及びドップラー周波数Fdの絶対値の見積り最大値Fdm(相対速度の想定最大値)を設定することで決めることができる。そして、ビート周波数fb1、fb2が共にプラスであることから、各復調信号のビート周波数が
図11のようにプラス側の不感帯範囲αの範囲外とするためには、fb2
2、fb2
1に着目し、以下の式を満たせばよい。
fb2
2=−ΔF・L/c−Fd−ΔFc−ΔF・Δx+Δfch1>α
fb2
1=−ΔF・L/c−Fd+ΔFc+ΔF・Δx+Δfch2>α
|Δx|≦Δxm、|ΔFc|≦ΔFcm、L≦Lm、|Fd|≦Fdmとおくと、上の2式から、中心周波数のオフセット分Δfch1、Δfch2は、それぞれ次式を満たすように定めればよいことになる。
Δfch1、Δfch2>α+ΔF(Lm/c+Δxm)+Fdm+ΔFcm (25)
【0075】
無線局としての送受信機が3つ以上存在する場合の中心周波数のオフセットの関係は生成タイミングをずらす場合と同様である。各送受信機が順次に計測対象の他の各送受信機と送受信動作を行なう際に受信側の復調用信号の中心周波数を送信側の送信信号の中心周波数より予めΔfch高くする。このΔfchは送受信機10、20間ではΔfch12、送受信機10、30間ではΔfch13、送受信機20、30間ではΔfch23と計測対象によって異なっても良い。
【0076】
第4実施形態では、受信側の復調用信号の中心周波数を送信側の送信信号の中心周波数より高くする(換言すれば,送信側の送信信号の中心周波数を受信側の復調用信号の中心周波数より低くする)例を示したが、逆に、受信側の復調用信号の中心周波数を送信側の送信信号の中心周波数より低くする(換言すれば,送信側の送信信号の中心周波数を受信側の復調用信号の中心周波数より高くする)ように設定しても同様である。この場合、ビート周波数は共にマイナス側となり、ビート周波数をマイナス側の不感帯範囲−αの範囲外とするためには、fb1
2、fb1
1に着目し、以下の式を満たせばよい。
fb1
2=ΔF・L/c−Fd−ΔFc+ΔF・Δx−Δfch1<−α
fb1
1=ΔF・L/c−Fd+ΔFc−ΔF・Δx−Δfch2<−α
上の2式から、中心周波数のオフセット分Δfch1、Δfch2は、それぞれ次式を満たすように定めればよいことになる。
Δfch1、Δfch2>α+ΔF(Lm/c+Δxm)+Fdm+ΔFcm (26)
【0077】
無線局としての送受信機が3つ以上存在する場合の中心周波数を低くする関係は高くする場合と同様である。各送受信機が順次に計測対象の他の各送受信機と送受信動作を行なう際に受信側の復調用信号の中心周波数を送信側の送信信号の中心周波数より予めΔfch低くする。このΔfchは送受信機10、20間ではΔfch12、送受信機10、30間ではΔfch13、送受信機20、30間ではΔfch23と計測対象によって異なっても良い。
【0078】
上述したように、送信側の送信信号と受信側の復調用信号の中心周波数をずらしてビート周波数を復調回路の不感帯の範囲外にさせる場合、両者の周波数差を前述の(25)式、(26)式の条件を満たして設定すればよいので、例えば受信側の復調用信号の中心周波数を変化させて中心周波数に周波数差(オフセット量Δfch)を生じさせる場合を考えると、送信側の送信信号の中心周波数との関係で下記の4通りの組み合わせを考えることができる。
1.送受信機10、20側共に高く設定。
2.送受信機20側を高く、送受信機10側を低く設定。
3.送受信機20側を低く、送受信機10側を高く設定。
4.送受信機10、20側共に低く設定。
【0079】
また、無線局としての送受信機が3つ以上存在する場合も同様である。各送受信機が順次に計測対象の他の各送受信機と送受信動作を行なう際に受信側の復調用信号の中心周波数を送信側の送信信号の中心周波数より予めΔfchずらす。このΔfchは送受信機10、20間ではΔfch12、送受信機10、30間ではΔfch13、送受信機20、30間ではΔfch23と計測対象によって異なっても良い。中心周波数のオフセットの高低は計測対象との1回目の送受信で受信側を高くし、2回目の送受信で受信側を低くしても、1回目の送受信で受信側を低くし、2回目の送受信で受信側を高くしても良い。
【0080】
尚、受信側の復調用信号の中心周波数のずらし量Δfch1とΔfch2は、異なってもよく、同じでもよい。送信側の送信信号の中心周波数を変化させて周波数差を生じさせる場合も、同様の組み合わせを設定することができる。
【0081】
また、上述の2、3のように、送受信機20側を高く(又は低く)、送受信機10側を低く(又は高く)設定するような組み合わせの場合において、Δfch1とΔfch2を同じ(即ち、Δfch1=−Δfch2)にすると、(24)式において、Δfch1+Δfch2=0となるので、(24)式からΔfch1、Δfch2を除去する処理の必要がなくなる利点がある。
【0082】
上述した各実施形態において、距離を表すビート周波数や相対速度を表すドップラー周波数を複数回算出し、これらに対して平均化処理や最尤推定法等を用いることで、距離と速度の計測精度を向上できる。
【0083】
上述の各実施形態では、距離・速度算出部17を一方の送受信機に設ける構成を示したが、両方の送受信機10、20に設けてお互いにビート周波数の検出結果を送受信してそれぞれで距離や相対速度を算出する構成としてもよい。また、距離・速度算出部17を外部装置に設け、各送受信機10、20からビート周波数の検出結果をそれぞれ外部装置に送信し、外部装置側で距離や相対速度を算出する構成としてもよい。
【0084】
本発明の無線距離・速度計測装置は、例えば、一方の送受信機を列車に搭載して移動局とし、他方の送受信機を地上側に固定局として複数設置し、列車と複数の固定局との間で相互に送受信することで、列車の位置や速度の検出に適用できる。この場合、移動局である列車側をマスターとし、列車側から地上側の各固定局に対して動作指令を送信して送受信動作を行うことで、列車とその地上側の各固定局との間の距離や相対速度を計測することが考えられる。或いは、固定局である地上側をマスターとし、地上側から列車側の移動局や他の固定局に対して動作指令を送信して送受信動作を行うことで、列車とその地上側の各固定局との間の距離や相対速度を計測することが考えられる。また、外部の計測部をマスターとし、外部から列車側の移動局や地上側の固定局に対して動作指令を送信して送受信動作を行うことで、列車とその地上側の各固定局との間の距離や相対速度を計測することが考えられる。
【0085】
また、無線局としての送受信機が3つ以上存在する場合に、各送受信機が順次に計測対象の他の各送受信機と相互に送受信動作を行って他の送受信機との距離や相対速度を計測し、それぞれの計測結果を、例えば外部の管理装置で収集し、管理装置から必要な計測データを随時読み出すようなことも考えられる。
【0086】
無線局としての送受信機がNo.1、No.2、No.3の3台存在する場合の例を
図12、
図13に示す。ここでは、
図12に示すように3台の送受信機が相互に送受信動作を行い互いの距離や相対速度を計測する場合を示している。まず、
図13に示すようにNo.1の送受信機が送信を行い、No.2、No.3の送受信機が受信するビート周波数を検出する。次に、No.2の送受信機が送信を行い、No.1、No.3の送受信機が受信するビート周波数を検出する。次に、No.3の送受信機が送信を行い、No.1、No.2の送受信機が受信するビート周波数を検出する。No.1とNo.2の送受信機間の距離や相対速度は、(1)と(2)の送受信動作により計測できる。同時にNo.1とNo.3の送受信機間とNo.2とNo.3の送受信機間の距離や相対速度は、(1)と(3)、(2)と(3)の送受信動作によりそれぞれ計測できる。例えば、No.1の送受信機を列車側の移動局とし、No.2、No.3の各送受信機を地上側の固定局として、No.2とNo.3の送受信機間での距離や相対速度計測を不要とすると、No.2の送受信機はNo.3の送受信機の送信波を受信しても計測する必要がなく、また、No.3の送受信機はNo.2の送受信機の送信波を受信しても計測する必要がない。