特許第5750225号(P5750225)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5750225吸収性ポリマーを有するエラストマー柔軟物品および製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5750225
(24)【登録日】2015年5月22日
(45)【発行日】2015年7月15日
(54)【発明の名称】吸収性ポリマーを有するエラストマー柔軟物品および製造方法
(51)【国際特許分類】
   A41D 19/00 20060101AFI20150625BHJP
   A41D 19/015 20060101ALI20150625BHJP
   A41D 19/04 20060101ALI20150625BHJP
【FI】
   A41D19/00 P
   A41D13/10
   A41D19/04 Z
【請求項の数】23
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2009-522010(P2009-522010)
(86)(22)【出願日】2007年7月26日
(65)【公表番号】特表2009-544868(P2009-544868A)
(43)【公表日】2009年12月17日
(86)【国際出願番号】US2007074526
(87)【国際公開番号】WO2008014423
(87)【国際公開日】20080131
【審査請求日】2010年7月8日
【審判番号】不服2014-4170(P2014-4170/J1)
【審判請求日】2014年3月4日
(31)【優先権主張番号】11/460,964
(32)【優先日】2006年7月28日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】502166743
【氏名又は名称】シェンウェイ (ユーエスエー),インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(72)【発明者】
【氏名】チャン,ピン
(72)【発明者】
【氏名】チョウ,ベレ
【合議体】
【審判長】 千葉 成就
【審判官】 熊倉 強
【審判官】 渡邊 真
(56)【参考文献】
【文献】 特表2006−512492(JP,A)
【文献】 特開昭62−177202(JP,A)
【文献】 国際公開第05/060856(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41D 19/00
A41D 13/10
A41D 19/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
非多孔性の流体不透過性エラストマー材料から成る第1の層と、
非多孔性の流体不透過性エラストマー材料、及び前記流体不透過性エラストマー材料の中又は表面上に分散された有効量の超吸収性ポリマー樹脂から成る第2の層と、
を含み、
前記第2の層は、手袋が手に着用されているときに、前記第1の層よりも前記手に近く、前記第2の層は、前記手袋が着用されているときに、前記超吸収性ポリマー樹脂によって前記手に接している水分を吸収するように構成されており、それによって濡れているときの着用を容易にしかつ手を乾燥させ
前記第2の層が、内部表面を含み、
前記手袋が、前記内部表面上に配置された調製物をさらに含み、
前記調製物が、抗菌物質を含み、
前記調製物が、前記使い捨て保護手袋を着用している間のpHの変化を阻止するのに役立つ緩衝剤を含む、使い捨ての保護手袋。
【請求項2】
前記超吸収性ポリマーが、ポリアクリルアミド、ポリアクリレート、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸ナトリウム(またはアンモニウム)、ポリメタクリレート、ポリ酢酸ビニル、無水マレイン酸、ポリスチレン、およびこれらのコポリマー(またはターポリマー)などの合成ポリマーから成る群から選択される、請求項1に記載の手袋。
【請求項3】
前記超吸収性ポリマー樹脂がポリアクリルアミドを含む、請求項2に記載の手袋。
【請求項4】
前記エラストマー材料から成る第2の層が、80〜90重量%の前記超吸収性ポリマー樹脂を含有する、請求項2に記載の手袋。
【請求項5】
0.1〜10重量%のポリアクリルアミドを含有する、請求項3に記載の手袋。
【請求項6】
0.5〜5重量%のポリアクリルアミドを含有する、請求項5に記載の手袋。
【請求項7】
1.0〜3重量%のポリアクリルアミドを含有する、請求項6に記載の手袋。
【請求項8】
前記抗菌物質が、前記保護手袋が着用されている間、酸性であり、前記抗菌物質の酸性度が前記抗菌物質の抗菌性に実質的に寄与する、請求項1〜7のいずれか1項に記載の手袋。
【請求項9】
前記調製物が、水分を含んでいる間、4.5〜6.0の範囲内のpHを有する、請求項8に記載の手袋。
【請求項10】
前記抗菌物質が、食用植物中に天然に存在する酸を含む、請求項1〜9のいずれか1項に記載の手袋。
【請求項11】
前記調製物が、スキンスージング物質をさらに含む、請求項1〜10のいずれか1項に記載の手袋。
【請求項12】
前記スキンスージング物質が、脱水されたアロエベラを含む、請求項11に記載の手袋。
【請求項13】
前記第1の層が、樹脂材料およびポリマー材料から成る群から選択される材料から作製されている、請求項1に記載の手袋。
【請求項14】
前記第1の層が、天然ゴムラテックス、アクリロニトリル、ニトリルブタジエンゴム、ビニル、クロロプレン、およびポリ塩化ビニルから成る群から選択される単一層で作製されている、請求項1に記載の手袋。
【請求項15】
前記第2の層が、流体不透過性材料の単一層で作製されている、請求項1に記載の手袋。
【請求項16】
前記超吸収性ポリマー樹脂が、前記保護手袋の前記第2の層内に均一に分布しており、前記第2の層は前記皮膚に接触する滑らかな表面を提供するように構成されている、請求項1に記載の手袋。
【請求項17】
皮膚を保護するための使い捨ての保護手袋を作製する方法であって、前記使い捨ての保護手袋は複数の層を含み、前記方法は、
非多孔性の流体不透過性エラストマー材料から成る第1の層を形成することと、
非多孔性の流体不透過性エラストマー材料、及び前記流体不透過性エラストマー材料の中又は表面上に分散された有効量の超吸収性ポリマー樹脂から成る第2の層を形成することと
を含み、
前記第2の層を形成するステップが、前記超吸収性ポリマー樹脂分散体を前記流体不透過性エラストマー材料と混合し、かつ、前記第1の層を、得られたエラストマー材料と混合された分散体でコーティングすることを含み、
前記第2の層は、前記使い捨ての保護手袋が使用中であるときは前記第1の層よりも前記皮膚に近く、前記第2の層は、前記使い捨ての保護手袋が皮膚に接して使用されているときに前記皮膚に接している水分を吸収するのに役立つように前記超吸収性ポリマー樹脂分散体をその中に又は表面上に含む、方法。
【請求項18】
前記第1の層を形成するステップが、前記第2の層を形成するステップに先行する、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記第2の層が、前記皮膚に接触する滑らかな内側表面を有して形成される、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記第2の層の表面に調製物を塗布することをさらに含み、前記調製物は手からの発汗によって活性化されるスキンコンディショニング物質を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項21】
前記保護手袋の前記第1の層および前記第2の層が成形器上で形成され、前記調製物は前記保護手袋が前記成形器から剥がされた後で塗布される、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
調製物を前記第2の層の表面に塗布することをさらに含み、前記調製物は抗菌剤を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項23】
前記第1の層を形成するステップが、成形器をラテックス、ニトリル、またはPVCを含む組成物でコーティングすることを含む、請求項17に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸収性ポリマーを有するエラストマー柔軟物品、例えば、手袋などに関する。特に、本発明は吸収性ポリマーを有するエラストマー柔軟物品に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、使い捨ての手袋は、化学、生物学、および医学の分野において、手袋着用者の手を、取り扱われる対象物から隔離する保護手段として幅広く使用されることによって重要な役割を果たしている。使い捨ての手袋は、食品の調理中に食品を汚染に対して保護するために、手袋が一般的に使用される食品産業において、および、外科医、看護士、歯科医などの医療従事者によって、感染因子からの保護のために手袋が着用されてきた医学界において、幅広く使用されてきた。医学界は長年、患者と医療従事者との間の微生物による交差汚染に関心を払ってきた。医療従事者は、ウイルスまたは細菌などの感染因子に曝露されたり手を通じて汚染されたりするリスクを低減するための保護の物理的障壁形態として手袋を頻繁に着用している。
【0003】
対象物を取り扱いやすくするために、従来の使い捨て手袋は通常、皮膚と手袋との間の空間を最小限にするように薄く弾性のある材料で作製されている。この種の手袋の1つの欠点は、例えばラテックスの手袋には、ウイルスが使用者の手まで通過することを可能にする経路が存在し得ることが示唆されてきたことである。医療従事者にとって、皮膚洗浄剤中の殺菌剤を用いて頻繁に手を洗うことは習慣だが、殺菌剤の効果は短命であることがあり、ウイルスまたは細菌などの感染因子は水分があって暖かい環境にある手袋の下で再増殖する可能性がある。さらなる欠点は、使い捨て手袋の長時間の着用は、手の表面にウイルス、細菌、酵母、真菌などの感染因子が増殖し、かつ増殖することを可能にする水分のある環境を生じ得ることである。痒みおよび炎症は、使い捨て検査手袋を長時間着用した場合にしばしば生じる結果であり、このような手袋を着用するのを不快にする。使い捨て手袋の閉塞性でぴったりした性質は、皮膚が特に長い使用時間中に呼吸することを妨げる。加えて、医学または歯科の仕事に就いている多くの人は、洗浄後にまだ手が濡れているときに手袋を着用する必要がある。かかる使い捨て手袋は、皮膚が濡れているときに着用することが非常に難しくなり、濡れた手への着用を非常に不便なものとしている。
【0004】
発汗を軽減するためには、手袋を着用すること、着用していること、および脱ぐことをより容易にすることに加えて、使い捨て手袋の内側表面にパウダーが一般的に使用される。しかし、パウダーに伴い得るいくつかの不都合がある。連続的な発汗は、一般的に手袋の表面上にあるパウダーの薄い層を容易に覆い得る。これは特に連続的および頻繁な手袋の着用が要求される場合に当てはまる。例えば歯科医は、歯科手術進行中には40分間以上にわたって連続的に手袋を着用することがある。加えて、パウダーを付けた手袋の使用後には手の洗浄が必要である。パウダーを除去するための頻繁な手の洗浄は不便であり、かつ皮膚の過剰な乾燥も引き起こすことがある。
【0005】
またさらに、手袋用の従来の皮膚用調製物は、蓄積していく発汗およびその調製物を覆い得る他の物質の存在下では、手袋の内部で長時間の有効性を発揮できない。さらに、手袋用の従来の皮膚用調製物は、一部の用途に関する一部の使用者にとって望ましくない物質、例えば使用者の知らない物質(例えば、天然には存在しない抗菌剤)または有害であると疑われている物質(例えば、従来の発汗防止剤)を含有することがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は改良されたエラストマー柔軟物品、例えば、使い捨て検査手袋などを対象とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施形態によれば、第1の層、および第1の層よりも手の近くにある第2の層を含む使い捨て保護手袋があり、第2の層は、手袋が手に着用されているときには手と接触するようにその中にまたはその表面上に分散された有効量の吸収性ポリマー物質を有する。第2の層は、手袋を着用しているときは、皮膚の過剰な発汗または水分を吸収し、それによって普通の使い捨て手袋を用いて普通に生じるよりも水分がより少ない環境を維持するように構成されている。
【0008】
本発明による別の実施形態によれば、外層、および外層よりも皮膚の近くにある内層を含む使い捨て保護物品があり、内層は天然のゴムラテックスよりも少ないタンパク質を有し、かつその中に分散された超吸収性ポリマー物質を有する内部表面、内層材料に加えてその表面上に分散されたスキンコンディショニングまたはスージング物質を含み、その吸収性ポリマー物質は過剰の発汗または皮膚上の水分を吸収する働きをし、さらにスキンコンディショニングまたはスージング物質の一部は残っている皮膚からの発汗と物理的に相互作用して、それに対して皮膚を整えるまたは癒す能力を増加する。
【0009】
本発明の別の実施形態によれば、皮膚を保護するための使い捨て保護物品を作製する方法があり、この使い捨て保護物品は複数の層またはコーティングを含む。この方法は第1の層を形成すること(この第1の層はエラストマー柔軟材料を含む)および第2の層を形成することを含み、この第2の層はエラストマー柔軟材料を含んでおり、かつ使い捨て保護物品が使用中であるときは第1の層よりも皮膚の近くにあり、前記第2の層はこの使い捨て保護物品が皮膚に使用されているときは皮膚上の過剰の発汗または水分を吸収するのに役立つようにその中にまたはその表面上に分散された吸収性ポリマー物質を含む。スキンスージング(皮膚癒し;skin conditioning)、スキンコンディショニング(皮膚調整;skin conditioning)、もしくは皮膚保湿および/または抗菌性コーティングも使用中の皮膚との接触のために第2の層の内側表面に塗布することができる。
【0010】
本発明の他の実施形態によれば、本発明のいずれかの実施形態による任意の手袋を作製する方法がある。
【0011】
本発明の他の実施形態によれば、本発明のいずれかの実施形態による方法によって作製される手袋がある。
【0012】
本発明の一部の実施形態の特徴、態様、および利点は、付帯の図面を参照することによってよりよく理解されるようになるであろう。これらの図面は本発明の範囲において限定的と考えるべきではなく、単に例示的である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】吸収性ポリマーを有するエラストマー柔軟物品が手袋である本発明の一実施形態の前面斜視図である。
図2図1に示した吸収性ポリマーを有するエラストマー柔軟物品の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
要約を含む本明細書中の図面および記述は、本発明の1つまたは複数の現時点で好ましい実施形態および一部の任意の特徴および代替の実施形態も記載している。記述および図面は例示の目的のためのものでありかつ限定ではない。本明細書のタイトル、項名などは簡易にしており便宜のためのものであって限定ではない。
【0015】
本発明の一実施形態によれば、超吸収性ポリマーエラストマー柔軟物品がある。本発明の別の実施形態によれば、製造の方法がある。
【0016】
以下の参考文献は、それらの全体をすべての目的で参照により本明細書に組み入れる。
米国特許出願第10/719573号、2003年11月22日申請、標題「抗菌性エラストマー柔軟物品および製造方法(An Antimicrobial Elastomeric Flexible Article and Manufacturing Method)」、
米国特許出願第10/138370号、2002年5月2日申請、標題「エラストマー柔軟物品および製造方法(An Elastomeric Flexible Article and Manufacturing Method)」、
米国特許第6953582号、標題「皮膚強化手袋および製造方法(Skin-enhancing glove and method of manufacture)」、
米国特許第6423328号、標題「アロエベラ手袋および製造方法(Aloe Vera Glove and Manufacturing Method)」、および
米国特許第6630152号、標題「アロエベラ手袋および製造方法(Aloe Vera Glove and Manufacturing Method)」。
【0017】
第1および第2の層
図1および2に例示する通り、本発明の一部の実施形態による吸収性ポリマーエラストマー柔軟物品は使い捨て保護手袋である。この使い捨て保護手袋は第1の層10および第2の層12を含む。柔軟物品は手袋として図1および2に示しているが、他の形態の物品、例えばコンドーム、または身体の一部などに着用されるもしくは覆うための他の保護用物品なども使用することができる。例えば、保護手袋は、手を覆う多孔性材料層のない手袋として、例えば多孔性材料の層を用いることなく、具体化することができる。
【0018】
使用中は、第1の層10は、使い捨て手袋のために普通に使用されるものなどのエラストマー柔軟材料を含む。第2の層12は、第1の層よりも使用者の手に近い。第2の層12は、手袋が使用者の手に着用されているときに、皮膚からの過剰な発汗または水分を吸収し、かつ皮膚に通気性の感触を与えるに足るように構成することができる。第2の層12は、使用者を感染因子から保護するためのさらなる障壁を提供することができる。
【0019】
本発明の一部の実施形態では、エラストマー柔軟物品は、使用が簡単で便利であり、かつ使用者が着用して細かい仕事を正確に実行することを可能にする保護手袋である。例えば、この手袋は、少なくとも2つの層、第1の層10および第2の層12で作製された使い捨ての検査用手袋として具体化することができる。第1の層10は当業者に知られている様々な材料から作製することができる単一の層で作製することができる。ビニルなどの樹脂材料またはアクリロニトリルなどのポリマー材料が一般的な選択肢である。使い捨て手袋を作製するために一般的に使用される3つの材料は、天然ゴムラテックス、アクリロニトリル、およびポリ塩化ビニルであるが、他の任意のエラストマー材料も使用することができる。さらに他の材料、例えば、ポリウレタン、クロロプレン、ネオプレン、ブタジエンなど、または当業者に知られている任意のエラストマー材料も使用することができる。
【0020】
より使用者の手に近い第2の層12は、使用者を第1の層10に関連する物質(例えば、アレルギー性タンパク質または抗菌剤)からおよび感染因子から保護するのに役立つ追加の障壁を提供することができる流体不透過性材料の単一層で作製することができる。例えば、第2の層12は、手を覆う非多孔性材料を含むように、例えば多孔性材料の層を用いることなく、具体化することができる。第2の層は、例えば、上記の第1の層10のために使用される液体不透過性材料のいずれかを含むことができる。好ましくは、ラテックスは、満足に除去するのにまたは対処するのに困難なまたは費用が高いアレルギー性のタンパク質を有する可能性があるので、第2の層12はラテックスでは作製されない。したがって、好ましくは、第2の層12は、天然のラテックスよりも少ないタンパク質を含む。検討した具体的な材料に加えて、適当な材料の任意の組合せ、例えば、ニトリル−ニトリルまたは任意の他の組合せを使用することができる。さらに、一実施形態によれば、好ましくは第2の層12は皮膚との接触のための実質的に滑らかな内側表面を形成する。
【0021】
本発明の一部の実施形態では、エラストマー柔軟物品は、指において約0.3mm以下、または約0.2mm以下の全体の厚さを有する保護手袋である。この手袋は、指において少なくとも約0.08mmの最小厚さを有すればよい。この手袋は、本明細書において検討した通り2つの層を含み、内層は指において手袋の厚さの少なくとも約5パーセント、または少なくとも約10パーセントを有する。さらに、他の厚さを意図される用途に応じて選択することができる。
【0022】
第2の層のさらなる考察
第2の層12の内部に吸収性ポリマーを分散させるために、吸収性ポリマー樹脂をエラストマー化合物中に分散させる。例えば、吸収性ポリマーまたはより好ましくはSAPとして知られている超吸収性ポリマーは、凝固して第2の層12を形成するはずの組成物(例えば、液体またはスラリー)中に組み込むことができる。超吸収性ポリマーは、例えば、吸収性ポリマーが加えられた組成物を撹拌することによって、手袋の第2の層全体に実質的に均一に分散させることができる。
【0023】
超吸収性ポリマーの第2の層12への分散は、実質的に均一な過剰な発汗または水分の吸収能力をもたらし、手をより乾燥して、より冷たく快適に保つのに有効な手袋が得られる。この手袋は、手が通常以上に汗をかくことがある夏場の条件または他の暖かい環境におけるより暖かい温度に対して有効である。超吸収性ポリマーの分散も、手袋を着用している間の皮膚のより良好な通気性に役立つ。
【0024】
吸収性ポリマー層12を第1の層10の表面上にまたは近接して配置するためには、任意の有用な方法を使用することができる。例えば、吸収性ポリマー層12は、例えば形成されたもしくは形成しつつある手袋の第1の層上にスプレーコートするまたは浸漬コートすることによって第1の層の表面上に配置することができる。
【0025】
本発明の実施形態は、任意の有用な吸収性ポリマーまたはSAPとしても知られている超吸収性ポリマーを使用することができる。SAPは高度に水吸収性でありかつ無毒性であり、圧力下においてさえ吸収した水を保持する能力がある。かかるポリマーの一部の例としては、ポリアクリルアミド、ポリアクリレート、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸ナトリウム(またはアンモニウム)、ポリメタクリレート、ポリ酢酸ビニル、無水マレイン酸、ポリスチレン、およびこれらのコポリマー(またはターポリマー)などの合成ポリマーが挙げられる。他の物質も使用することができる。かかる物質にはデンプン(またはセルロース)グラフトアクリロニトリル(またはエポキシクロロプロパン、アクリル酸、アクリル酸塩、メチルアクリレート、アクリルアミド、スチレン、酢酸ビニル)コポリマーまたはターポリマーが含まれる。
【0026】
本発明の現時点で好ましい一実施形態は、有効な超吸収性ポリマーがポリアクリルアミドである手袋である。ポリアクリルアミドの化学組成は架橋ポリアクリル酸/ポリアクリルアミドコポリマーのカリウム塩である。ポリアクリルアミドは、例えば、LiquiBlock 40Fの名称で市販されている超吸収性ポリマーである。本発明におけるSAPは、SAP樹脂分散体の形態に加工し、それをエラストマー手袋用配合物中に分散する。このSAP樹脂を含む分散体は結果として得られるSAP層12である。本発明の層12中のSAP樹脂分散体の有効性は、かかる層を有していない一般的エラストマー手袋よりも約200〜約300倍の水分吸収能力を提供する。層12中のSAP樹脂分散体の水分吸収能力を提供することにおける、一般的なラテックスおよびニトリルの手袋と比較した、有効性については下の表1を参照されたい。それぞれの手袋につき3個の試料を乾燥状態で計重し、次いで5分間水と接触させた後で計重した。
【0027】
【表1】
【0028】
本発明の一部の例によれば、超吸収性ポリマーは、手袋の第2の層の全乾燥重量の約50.0重量%〜約90.0重量%存在し得る。好ましくは、SAPは手袋の第2の層の全乾燥重量の約80.0重量%〜90.0重量%存在する。また、他の量のSAPを使用することができる。さらに、使用するために選択される量は使用するSAPの種類に依存し得る。
【0029】
現時点で好ましい実施形態によれば、SAPはポリアクリルアミドであり、SAPは第2の層全体に分散させることができ、存在し得るSAP分散体の量は第2の層の約90.0重量%未満であればよい。SAP分散体の濃度は、本発明の一実施形態によれば、約1%〜約5%であればよい。好ましくは、SAP分散体の濃度は約2.5%〜約3.5%である。また、他の濃度も可能である。
【0030】
本発明の実施形態は、濡れた状態での着用および発汗の吸収を促進しつつ使用者を感染因子から保護するために、追加の障壁を提供することのできる第2の層を含む。本発明の一部の実施形態によれば、使い捨て保護手袋の第2の層12は、内部表面および内部表面上に配置された調製物14を含む。第2の層12は調製物14が第2の層12の内部表面に接着できるように構成されている。本発明の別の実施形態によれば、第2の層12は、使用者の手に有益な結果を提供することができる。第2の層12の内部表面は第1の層よりも使用者の手に近い。本発明の一部の実施形態によれば、第2の層12および第1の層10は共にラミネートされており、例えば、表面は互いに直接接触している。
【0031】
第2の層上の調製物の考察
本発明の一部の実施形態によれば、調製物14は、第2の層に追加的に塗布された抗菌物質を含むことができる。一実施形態では、調製物14は天然に存在する物質である抗菌物質を使用する。例えば、調製物14中の抗菌物質は植物由来の酸、または食用植物由来の酸でよく、調製物14は使い捨て保護手袋の着用中のpHの変化を阻止するのに役立つ緩衝剤を含むことができる。皮膚からのすべての発汗と混ざり得る調製物14でコートされた第2の層12の内部表面は、好ましくは使用者の皮膚と接触しており、かつ調製物14の存在に起因して、抗菌性、抗ウイルス性、またはこれらの組合せである性質を有する。添加された抗菌物質は、使用者の手が手袋の内部で発汗するときに生じ得る微生物の増殖を克服することができる。例えば、調製物14の一実施形態は、参照により組み入れられる米国特許出願第10/138370号に記載されているいずれの実施形態であってもよい。本発明のさらに別の実施形態では、調製物14は、保湿剤および/または使用者の手に有益な結果を提供し得るアロエベラなどの癒し剤を含むことができる。例えば、調製物14は、例えば、参照により組み入れられる米国特許第6953582号、米国特許第6423328号、米国特許第6630152号に記載されているいずれのコーティングからの成分、例えばアロエベラまたは他の皮膚に有益な物質も含むことができる。一般的に、調製物14は、参照により組み入れられる米国特許第6953582号、米国特許第6423328号、米国特許第6630152号に記載されているいずれのコーティングも、またはこれらに記載されているコーティングのための成分のいずれかの組合せである任意のコーティングも実現することができる。例えば、調製物は、抗菌剤(例えば、天然に存在する種類の酸、例えば、添加された緩衝剤と共に)および皮膚に有益な物質(例えば、アロエベラ)の両方を含むことができる。
【0032】
調製物14の様々な実施形態を作製する方法は、参照により組み入れられる、米国特許出願第10/138370号、米国特許第6953582号、米国特許第6423328号、米国特許第6630152号に記載されている通り、またはそれらの任意の組合せである。
【0033】
本発明の一実施形態によれば、手袋の使用中に、手袋内の手が直面する環境は、調製物14の存在に起因して酸性である。酸性の環境は、使用者のためにさらなる微生物保護の層を提供することができるだけではなく、使用者の手の角質を落としかつ滑らかにすることによって有益な結果も提供することができる。例えば、調製物は、手袋の内側表面上で乾燥された酸性調製物であればよく、手からの発汗が乾燥した酸性調製物に水分を与える。例えば、着用されている手袋中には発汗以外の他の水分は導入されない。酸性調製物は、酸性溶液を含む混合物であればよく、混合物は、その必要はないが、それ自体が溶液であってもよい。好ましくは、調製物14は、pHを維持しかつpH変動を安定させるために、緩衝剤を含有する。調製物が手袋の内側表面上で乾燥されたかどうかにかかわらず、本実施形態では使用中の調製物は酸性である。好ましくは、使用中の調製物14のpHは、約6未満、例えば、約3.8〜約6の間、より好ましくは約4.5〜約6の間、または約5〜約5.8の間である。好ましくは、調製物14は、多少長引いた使用の後でさえ、例えば多少長引いた発汗の後でさえpHを所望の範囲内に維持するように配合される。皮膚の角質剥離をもたらすためには低いpHを使用すればよい。
【0034】
調製物14は、第2の層12の内部表面上に、いかなる任意の方法によっても配置することができる。例えば、調製物は、エラストマー柔軟物品上に乾燥(例えば、粉末)または湿った(例えば、湿った混合物)形態で配置することができる。本発明の一実施形態では、調製物は、好ましくはエラストマー柔軟物品、例えば、手袋の上に粉末ではない形態で配置する。好ましくは、調製物は、エラストマー柔軟物品上に非乾燥形態で配置し、次いで好ましくは完全にまたは少なくとも実質的に脱水する。好ましくは、脱水は、調製物がエラストマー柔軟物品の表面で脱水されるように、かつ脱水によって提供される力があってそれが調製物をエラストマー柔軟物品の表面に付着させるように実施される。好ましくは、調製物は、工場生産の間にエラストマー柔軟物品上に配置され、物品の最終購入者または最終所有者または着用者によってではない。
【0035】
本発明の一実施形態では、調製物14は、上述の通り、pHを維持しかつpH変動を安定化するのに役立つように緩衝剤を含有する。任意の有用な緩衝剤を使用することができる。緩衝剤は、当業者には周知である。
【0036】
さらに、任意に、より平坦なコーティングを助成するために増粘剤を調製物14中で使用することができる。好ましく使用される通常の増粘剤は、非グリース状で非油状の化合物である。例となるポリマーおよび増粘剤は、参照により本明細書に組み入れるCTFA化粧品成分ハンドブック(CTFA Cosmetic Ingredient Handbook)、第1版,J.M.Nikitakis編、The Cosmetic,Toiletry and Fragrance Association、Washington,DC(1988年)(以後CTFAハンドブック)、30、47、48、67および97〜100頁に挙げられている。当業者に周知の任意の増粘剤を使用することができる。
【0037】
本発明の一部の実施形態では、調製物14は、他の任意の成分、例えば、発汗抑制剤および/またはスキンスージング物質などを含むことができる。スキンスージング物質には、例えば、皮膚保湿物質、皮膚栄養物質または皮膚抗炎症物質が含まれる。加えて、調製物は、他の任意成分、例えば、水溶性のエモリエント剤であるグリセリン、および乳化助剤、保存料、香料、または色素なども含むことができる。
【0038】
スキンスージング物質の例には、例えば、特に手袋上で乾燥されない本発明の実施形態のための皮膚保湿剤が含まれる。例にはアロエベラ、ローション、クリームなども含まれる。
【0039】
調製物内の酸性溶液は、通常、ヒドロキシカルボン酸(本明細書では「ヒドロキシ酸」と呼ぶ)などの有機酸を含む。混合物内の酸性溶液は、通常、α−ヒドロキシカルボン酸(本明細書では「α−ヒドロキシ酸」という用語を使用する)を含む。本発明の一実施形態によれば、存在する酸溶液は、通常、ヒドロキシカルボン酸、一般的にはα−ヒドロキシカルボン酸、例えばリンゴ酸である。
【0040】
例となるヒドロキシ酸は、参照により組み入れる米国特許出願第10/138370号で開示されている。調製物中に含まれる酸の詳しい量は、酸の種類、製造方法および装置、ならびに調製物でコートされた手袋の意図される最終用途、例えば、頻繁または長い持続時間の着用、頻繁ではない短い持続時間の着用、主に感染を阻止するための使用、または感染を阻止するためおよび皮膚の角質を剥離させるための使用などに依存する。
【0041】
本発明の一実施形態では、調製物14は、乾燥する前には約0.1重量%〜約20重量%の酸を含有する。この範囲の上限に向かって皮膚の角質剥離能力はより大きくなる傾向がある。本発明の別の実施形態では、調製物は、乾燥する前には約0.1重量%〜約10重量%の酸を含有する。本発明の別の実施形態では、調製物は、乾燥する前には約0.2重量%〜約2重量%の酸を含有する。酸はヒドロキシ酸または他の種類であってもよい。使用する酸の実際の濃度または種類が何であれ、本明細書に明確に記載されていてもいなくても、本発明は好ましくは先に検討した所望のpH値も達成するように具体化される。
【0042】
一般的に美容師および皮膚科医は、荒れた皮膚を滑らかにするため、およびしわ、にきび跡、老化斑、不規則な色素沈着、前癌性うろこ状斑を除去するための表皮剥離剤として高い濃度のヒドロキシ酸(例えば、50〜70重量パーセント)を使用する。中程度の濃度のヒドロキシ酸(例えば、10〜50重量%)は、通常毛穴の栓を取ることによって、にきびの抑制を助けること、ならびにレチンAの有効性および皮膚の漂白を高めることが知られている。しかし、これらの濃度では、ヒドロキシ酸含有製品は劇的な結果を提供するが、皮膚を炎症または火傷させる可能性が高い。この組成物は、例えば30重量%以上のヒドロキシ酸濃度では皮膚を化学的に火傷させる能力がある。
【0043】
したがって、酸性溶液の酸性をその溶液が皮膚を炎症する可能性とバランスさせることが役に立つ。ヒドロキシ酸含有組成物を含む多くの酸含有組成物は、しばしば組成物の最初の数回の皮膚への塗布の後になって、ひりひりする感覚または灼熱感を感じることを使用者に警告する。ひりひりする感覚または灼熱感または酸による化学火傷に伴い得る炎症を最小限にするかまたは避け、それでもこれらの酸の有益な抗菌性、抗真菌性、抗ウイルス性の効果を提供する使い捨て手袋などのエラストマー柔軟物品を提供することが好ましい。
【0044】
本発明の一実施形態によれば、酸性溶液中のヒドロキシ酸は任意の酸であってよい。例えば、ヒドロキシ酸は脂肪酸、例えばグリコール酸;芳香族の酸は、例えばサリチル酸;または芳香族および脂肪族の成分を有し、例えばマンデル酸であってよい。例となるヒドロキシ酸には、α−ヒドロキシ酸、例えば、これらだけには限定されないが、グリコール酸、クエン酸、乳酸、酒石酸、およびリンゴ酸が含まれる。これらのα−ヒドロキシ酸は天然に存在する酸であり、果物中に見出され、かつスキンケア、およびスキントリートメント組成物中で数年間使用されてきた。角質の剥離を望む場合にはグリコール酸および乳酸が最も有効なα−ヒドロキシ酸であることが理論化されてきており、これらの酸分子は小さくてより皮膚に浸透する能力があるからである。ヒドロキシカプリル酸は、スキンケア組成物中で使用されてきた合成α−ヒドロキシ酸である。他の有用なα−ヒドロキシ酸は、例えば、マンデル酸、ロイシン酸、アゼライン酸、およびエチルグリコール酸である。
【0045】
サリチル酸、β−ヒドロキシプロピオン酸およびβ−ヒドロキシ酪酸のようなβ−ヒドロキシ酸も、本発明の一実施形態の酸性溶液中で有用である。一般的に、2〜10個の炭素原子を含有する脂肪族炭素鎖を有するどの脂肪族α−またはβ−ヒドロキシ酸でも、この酸性溶液中で使用することができる。ヒドロキシ酸は、モノカルボン酸、ジカルボン酸、またはポリカルボン酸であり得る。
【0046】
酸性溶液中の酸はヒドロキシ酸には限定されない。基本的に、皮膚用化粧品組成物中で使用されている、または使用することのできる任意の酸を本発明の溶液中に組み入れることができる。酸は、伝統的には有機酸である。
【0047】
本発明の一実施形態による使い捨て手袋の酸性の第2の層は、使い捨て検査用手袋の特徴を目立った構造上の変更なく保持し、かつ使いやすく便利である。酸性混合物(例えば、緩衝されたリンゴ酸溶液)と内部表面の連携は、脱水によってもたらされる力によるものであり得る。かかる連携は、発汗が脱水された酸性pHの溶液を溶解させるときに緩くなる。手袋が長く着用されるほど、手は発汗しやすく、その結果、より多くの酸性溶液が溶解して手袋の表面から分離し、かつ手に塗布されることになる。次いで、溶液の酸性度が手の皮膚を整えて、濡れた条件下で微生物が増殖することを防ぐ。さらに過剰の水分はすべて述べた通り、第2の層中の吸収性ポリマーによって吸収される。こうして皮膚に快適性をさらに提供する。
【0048】
一実施形態では、約5.5のpHを有するリンゴ酸の溶液が、手袋をコートするために使用される。リンゴ酸溶液は手袋の内側表面に約0.01ミリメートルの厚さで分布する。好ましくは、リンゴ酸の分布は実質的に平坦で均一である。好ましくは、リンゴ酸と表面との結合は、少なくとも部分的には脱水によって提供される非共有結合性の力によるものである。
【0049】
方法のより詳しい考察
本発明の一部の実施形態は、吸収性ポリマーを有するエラストマー柔軟物品、例えば、使い捨て手袋を製造する方法である。
【0050】
本発明の方法の実施形態の一部によれば、水分吸収性および濡れた手への着用の特徴を有している手袋(または他の物品)を製造する1つの方法がある。1つのかかる方法によれば、少なくとも2つの層を有する手袋を、例えば、いくぶん手に似た形状の従来の手袋成形器を使用して、成形する。この方法によれば、手袋層A(例えば、上記で考察した内側の「第2の」手袋層12)を、例えば手袋成形器上で成形するまたは成形し始める。その後しばらくして、もう1つの手袋層B(例えば、上記で考察した外側の「第1の」手袋層10)を、手袋層Aを覆って成形する。例えば、層AおよびBは、表面が互いに直接接触しているところでラミネートされる。その後、コーティングAを手袋層Aの利用可能な表面(すなわち、手袋層Bに面していない表面)上に塗布することができる。例えば、コーティングAは、手袋を両方とも成形器から剥がして手袋Aが外側に向くように裏返した後で、手袋層A上に塗布することができる。手袋層AまたはBは、外層および内層の任意の組合せで、例えば、それぞれの層が、本明細書または参照により組み入れる文献のいずれかの箇所に記載されているエラストマー層であればよい。検討した具体的な材料に加えて、適当な材料の任意の組合せ、例えば、ニトリル−ニトリル、または任意の他の組合せを使用することができる。同様に、コーティングAは本明細書または参照により組み入れる文献のいずれかの箇所に記載されている任意のコーティングであってよい。本明細書において検討される一部の具体的な方法例では、手袋が着用されるとき、層Aは層Bに対して「外側」である。しかし、代替の実施方法では、手袋が着用されるときは、層AおよびコーティングAを層Bに対して「内側」として、例えば、一部のステップの順序変更を含めることによって、成形することができる。
【0051】
本発明の一実施形態によれば、水分吸収性および濡れた状態での着用の特徴を有している手袋(または他の物品)を製造する1つの方法がある。この方法によれば、手袋は成形器、例えば、それぞれいくぶん手に似た形状の従来の手袋成形器上で成形される。この方法によれば、手袋は以下のように作られる:
好ましくは、成形器を任意の有用な方法、例えば、任意の従来の方法を使用して清浄化する;
好ましくは、成形器を任意の有用な方法、例えば、任意の従来の方法を使用して乾燥または加熱する;
手袋着用時に外層となる層を任意の有用な方法を使用して成形する;
その後、手袋着用時に内層となる層を任意の有用な方法、例えば、ある量の、好ましくはそれ自体有効量の超吸収性ポリマーを含む材料組成物を使用するのに適合した任意の従来の方法を使用して、好ましくは外層に隙間なく隣接して成形する;この内層は、手袋の着用中は着用者の手に対して水分吸収を提供する;
好ましくは、その後、手袋を成形器から剥がして裏返す;
好ましくは、その後、任意の内側コーティングを内層に、手袋着用時に内層の内側表面となるものに、スプレーまたは浸漬のどちらかによって塗布し、内層はスキンスージング物質および抗菌物質のどちらかまたは好ましくは両方を含み、任意の内側コーティングのための抗菌物質は、好ましくは酸、好ましくは天然に好ましくは食用植物中に存在する種類の酸を含み、かつ好ましくは緩衝剤を含む。
【0052】
方法例
本発明の一部の実施形態による方法の一部の具体的な実装例を以下にまとめる。一般的に、個々のステップは、本明細書および参照により組み入れる文献米国特許第6423328号、米国特許第6630152号、米国特許第6953582号または米国特許出願第10/138370号および米国特許出願第10/719573号の以前の説明を見れば説明を要しない。これらの方法例において使用することができる特定の配合のセットは表A〜Gの一部の中にまとめられている。
【0053】
方法例1
外層が主に天然ゴムから成り、内層が主にニトリルから成る2層を有している手袋(または他の物品)を成形し、任意の内側コーティングを塗布する。後で分かる通り、ニトリルの内側表面を調製するために塩素化が用いられる。この方法例1では、他の方法例と同じく、必ずしもすべてのステップが必須ステップではない。
【0054】
方法例1は、成形器を粉末を含んでいない凝固剤中に浸すことと、乾燥することと、天然ゴムラテックス(ベースラテックス)中に浸すことと、乾燥すること/硬化させることと、浸出させることと、超吸収性ポリマー樹脂を含んでいるニトリル中に浸すことと、乾燥すること/硬化させることと、手袋を成形器から剥がすことと、洗浄することと、手袋を裏返すことと、塩素化することと、洗浄することと、乾燥すること/後硬化させることと、手袋を裏返すことと、内側コーティングを塗布することと、乾燥することと、冷却することとを含む。
【0055】
一般的に、方法例のための特定のパラメーターは、製造者の要求および希望によって変化させることができる。例えば、製造者によって乾燥または浸出度または加硫または清浄度などの種々の基準に到達することが、手袋製品の特定の要求される品質または等級に応じて、求められることがある。
【0056】
方法例1のための特定の1組のパラメーターは、この項の下記において方法例1のステップの再列挙中の括弧の中に挙げられている。パラメーターの変化、より一般的には、パラメーターを決定することは、当業者の専門知識の範囲内であろう。
【0057】
方法例1、再列挙:成形器を、粉末を含んでいない凝固剤(例えば、約45℃の凝固剤)中に浸すこと、乾燥すること(例えば、約65℃で約3分間)、天然ゴムラテックス(例えば、約40℃以下のラテックス)中に浸すこと、乾燥すること/硬化させること(例えば、約110℃で約20分間)、浸出させること(例えば、約85℃の温水中で約3分間)、乾燥すること(例えば、約80℃で約5分間)、SAP樹脂分散体を含有するニトリル中に浸すこと(例えば、約40℃以下のニトリル)、乾燥すること/硬化させること(例えば、約20℃で約20分間)、手袋を成形器から剥がすこと、浸出させること(例えば、約85℃の水中で約3分間)、手袋を裏返すこと、塩素化すること(例えば約350ppmでほぼ室温以下で約2分間、例えばアンモニア中で例えば約2分間例えば続いて中和)、浸出させること(例えば約40℃以下の冷水中で例えば約5分間)、乾燥すること/硬化させること(例えば、約85℃で約15分間)、手袋を裏返すこと、任意で表面処理すること(例えば、タンブル乾燥中に従来のシリコーンに基づくコーティングを使用して非付着性コーティングをスプレーすること)、乾燥すること(例えば、タンブル乾燥によって約55℃〜65℃で約30分間)。
【0058】
方法例2
外層が主に天然ゴムから成り、内層が主にニトリルから成る2層を有している手袋(または他の物品)を成形し、任意の内側コーティングを塗布する。後で分かる通り、ニトリルの内側表面を調製するために塩素化を使用し、内側のコーティングは手袋を成形器から剥がした後で塗布する。この方法は、成形器を凝固剤中に浸すことと、乾燥することと、天然ゴムラテックス中に浸すことと、乾燥すること/硬化させることと、浸出させることと、乾燥することと、SAP樹脂分散体を含んでいるニトリル中に浸すことと、乾燥すること/硬化させることと、剥がすことと、リンスすることと、手袋を裏返すことと、塩素化することと、リンスする(例えば、温水中で)ことと、再度リンスする(例えば、冷水中で)ことと、乾燥することと、内側コーティング溶液中に浸すことと、乾燥することと、手袋を裏返すことと、表面処理することと、乾燥することとを含む。
【0059】
方法例3
外層が主にニトリルから成り、内層が主にニトリルから成る2層を有している手袋(または他の物品)を成形し、任意の内側コーティングを塗布する。後で分かる通り、ニトリルの内側表面を調製するために塩素化を使用する。この方法例は、成形器を、粉末を含んでいない凝固剤中に浸すことと、乾燥することと、ニトリルゴム中に浸すことと、乾燥すること/硬化させることと、浸出させることと、乾燥することと、SAP樹脂分散体を含んでいるニトリル中に浸すことと、乾燥すること/硬化させることと、浸出させることと、塩素化することと、浸出させることと、乾燥すること/硬化させることと、内側コーティング溶液に浸すことと、乾燥することと、手袋を成形器から剥がすことと、乾燥すること/後硬化させることと、任意の表面処理をすること(例えば、非付着性コーティングを塗布する)と、乾燥することとを含む。
【0060】
方法例4
外層が主にニトリルから成り、内層が主にニトリルから成る2層を有している手袋(または他の物品)を成形し、任意の内側コーティングを塗布する。後で分かる通り、ニトリルの内側表面を調製するために塩素化を使用し、内側のコーティングは手袋を成形器から剥がした後で塗布する。この方法は、成形器を凝固剤中に浸すことと、乾燥することと、ニトリルゴム中に浸すことと、乾燥すること/硬化させることと、浸出させることと、乾燥することと、SAP樹脂分散体を含んでいるニトリル中に浸すことと、乾燥すること/硬化させることと、剥がすことと、リンスすることと、手袋を裏返すことと、塩素化することと、リンスすることと、乾燥することと、手袋を裏返すことと、内側コーティング溶液を塗布することと、乾燥することと、表面処理することと、乾燥することとを含む。
【0061】
方法例5
外層が主にニトリルから成り、内層が主にポリウレタンから成る2層を有している手袋(または他の物品)を成形し、任意の内側コーティングを塗布する。この方法は、成形器を、粉末を含んでいない凝固剤中に浸すことと、乾燥することと、ニトリル中に浸すことと、乾燥すること/硬化させることと、浸出させることと、乾燥することと、SAP樹脂分散体を含んでいるポリウレタン中に浸すことと、乾燥することと、内側コーティング混合物に浸すことと、乾燥することと、剥がすことと、乾燥することと、任意の表面処理をすること(例えば、非付着性コーティングをスプレーすること)と、乾燥することとを含む。
【0062】
方法例6
外層が主にニトリルから成り、内層が主にポリウレタンから成る2層を有している手袋(または他の物品)を成形し、任意の内側コーティングを塗布する。後で分かる通り、内側のコーティングは手袋を成形器から剥がした後で塗布する。この方法は、成形器を凝固剤中に浸すことと、乾燥することと、ニトリル中に浸すことと、乾燥すること/硬化させることと、浸出させることと、乾燥することと、SAP樹脂分散体を有するポリウレタンコーティングすることと、浸出させることと、乾燥することと、剥がすことと、リンスすることと、再度リンスすることと、内側コーティング溶液を塗布することと、乾燥することと、任意の表面処理をすること(例えば、非付着性コーティングをスプレーすること)と、乾燥することとを含む。
【0063】
方法例7
外層が主にポリ塩化ビニル(PVC)から成り、内層が主にポリウレタンから成る2層を有している手袋(または他の物品)を成形し、任意の内側コーティングを塗布する。この方法は、PVC中に浸すことと、乾燥することと、SAP樹脂分散体を有するポリウレタンコーティングすることと、乾燥することと、内側コーティング溶液中に浸すことと、乾燥することと、剥がすことと、乾燥することとを含む。
【0064】
方法例8
外層が主にPVCから成り、内層が主にポリウレタンから成る2層を有している手袋(または他の物品)を成形し、任意の内側コーティングを塗布する。後で分かる通り、内側のコーティングは手袋を成形器から剥がした後で塗布する。この方法は、PVC中に浸すことと、乾燥することと、SAP樹脂分散体を有するポリウレタンコーティングすることと、乾燥することと、剥がすことと、内側コーティング溶液を塗布することと、乾燥することとを含む。
【0065】
方法例9
外層が主に天然ゴムから成り、内層が主にニトリルから成る2層を有している手袋(または他の物品)を成形し、任意の内側コーティングを塗布する。後で分かる通り、最初のSAP樹脂の準備が記載されている。この方法例9では、他の方法例と同じく、必ずしもすべてのステップが必須のステップではない。
【0066】
方法例9は、SAP樹脂のニトリル中分散体(表面ラテックス)を調製することと、成形器を粉末を含んでいない凝固剤中に浸すことと、乾燥することと、天然ゴムラテックス(ベースラテックス)中に浸すことと、乾燥すること/硬化させることと、浸出させることと、乾燥することと、SAP樹脂のニトリル中分散体(表面ラテックス)中に浸すことと、乾燥すること/硬化させることと、手袋を成形器から剥がすことと、洗浄することと、手袋を裏返すことと、塩素化することと、洗浄することと、乾燥する/後硬化することと、手袋を裏返すことと、乾燥することと、冷却することとを含み、表面ラテックスの調製はSAP樹脂を練ることと、前加硫されたニトリルラテックスを調製することと、ニトリルラテックスをSAP樹脂分散体に加えることと、ある時間連続して撹拌することとを含む。
【0067】
一般的に、方法例のための特定のパラメーターは、製造者の要求および希望によって変化させることができる。例えば、製造者によってSAP分散体などに基づく水分吸収または濡れた状態での着用の特徴の種々の基準に到達することが、手袋製品の特定の要求される品質または等級に応じて求められることがある。
【0068】
方法例9のための特定の1組のパラメーターは、表A〜C中に列挙されており、表AはSAP樹脂を調製する方法を記載しており、表Bは表面ラテックス、すなわち、SAP樹脂分散体を調製する方法を記載しており、表Cはラテックス層を調製することを記載している。
【0069】
本発明の一部の実施形態による方法例および物品はすでに説明した。方法例1〜9で使用することができる可能性のある配合の例の特定の組を表A〜Gに示す。配合の例は単に例に過ぎず、配合の例は一部の事例では飛躍的にすら変更することができ、それでも本発明の様々な実施形態を実現していることは当業者には明白であろう。例えば、表中の多くの成分は単に任意の成分、または成分の種類の特定の実施形態もしくは例に過ぎない。単に例に過ぎないが、加硫促進剤、または酸化防止剤、または着色料などが任意の成分である。もう1つの例として、例の数値または数値範囲は単に本発明の特定の実施形態による例に過ぎず、他の実施形態では、数値または数値範囲は変化し得る。様々な表で、「〜」という記号が「約」を意味するために使用されており、したがって例えば「〜5」は「約5」を意味することになる。
【0070】
【表2】
【0071】
【表3】
【0072】
【表4】
【0073】
【表5】
【0074】
【表6】
【0075】
【表7】
【0076】
【表8】
【0077】
方法例1〜9を検討した。もちろん、他の具体的な実施方法も可能である。上記の方法例において、内層は水分吸収、手への着用を促進し、かつさらに皮膚にとって快適な湿度を提供するSAP樹脂分散体を含有する。前述の通り、任意の内側コーティングを塗布することができる。例えば、内側のコーティングは細菌の増殖を抑制するために皮膚の自然なpHまたはそれに近いpHに緩衝されている酸性コーティングであってもよい。内層はまた、着用者の皮膚を保護するための第2の障壁としても働く。
【0078】
さらに、本明細書において検討した具体的な調製物または上記で組み入れた2件の参考文献(米国特許第6274154号または米国特許出願第09/938715号)で検討されているアロエベラ溶液に加えて、
【0079】
重ねて、本発明のいずれの実施形態も、代わりにまたは追加して、手袋の内側上で乾燥させるかまたは塗布することができ、着用中に手袋の内部で手に有益である任意の他の物質(例えば任意の調製物)を使用することを実現させることができる。さらに、任意の他の物質は、好ましくは水分が人為的に手袋中へ導入されることを必要とせず、代わりに、着用後に手袋の内側表面に導入される水分は手袋着用中の手からの発汗だけである。
【0080】
詳細な説明および図面を通じて、実施形態例、例えば、製品および方法は、特定の実施形態および構成を参照しつつ提示されている。しかし、本発明はこれらの特定の実施形態または構成には限定されない。本発明は本発明の趣旨および範囲を逸脱することなく他の具体的な形態で実現し得ることは当業者に理解されるであろう。
【0081】
例えば、手袋の実施形態が図1および2に例示されているが、皮膚に接触する任意の他の物品または形態も本発明を実現することができる。例えば、本発明は、ピール、物品、ラップ、および(他の)医療器具として具体化することができる。同様に、調製物の組成および用途は、本発明の趣旨および範囲を逸脱することなく多様であり得る。例えば、様々な異なる調製物が、究極の最終吸収性ポリマーエラストマー柔軟物品、例えば、本明細書の中で記載したような特徴を有する手袋を得るために利用され得る。例えば、調製物の配合は、使用中の快適性、巧緻性、快感度、または保護を制御することの要望通りに、より厚いまたはより薄いコーティングまたは層を有するために多様であり得る。
【0082】
本発明の範囲は前記の具体例の実施形態または配置だけには限定されず、むしろ付帯の特許請求の範囲によって示される。特許請求の範囲の内部の等価物の意義および範囲の内部に入るあらゆる変更は、特許請求の範囲の内部に包含されると理解するものとする。
図1
図2