特許第5750233号(P5750233)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5750233グリセリン変性有機ポリシロキサンを含む乳化剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5750233
(24)【登録日】2015年5月22日
(45)【発行日】2015年7月15日
(54)【発明の名称】グリセリン変性有機ポリシロキサンを含む乳化剤
(51)【国際特許分類】
   B01F 17/54 20060101AFI20150625BHJP
   C08G 77/38 20060101ALI20150625BHJP
   A61K 8/892 20060101ALI20150625BHJP
   A61K 8/06 20060101ALI20150625BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20150625BHJP
   A61Q 15/00 20060101ALI20150625BHJP
   A61Q 1/02 20060101ALI20150625BHJP
   C11D 3/37 20060101ALI20150625BHJP
【FI】
   B01F17/54
   C08G77/38
   A61K8/892
   A61K8/06
   A61Q19/00
   A61Q15/00
   A61Q1/02
   C11D3/37
【請求項の数】13
【外国語出願】
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2010-90076(P2010-90076)
(22)【出願日】2010年4月9日
(65)【公開番号】特開2010-253472(P2010-253472A)
(43)【公開日】2010年11月11日
【審査請求日】2013年2月1日
(31)【優先権主張番号】10 2009 002 415.8
(32)【優先日】2009年4月16日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】501073862
【氏名又は名称】エボニック デグサ ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Evonik Degussa GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(72)【発明者】
【氏名】チェコ,カリン
(72)【発明者】
【氏名】マハリング,ウルリケ
(72)【発明者】
【氏名】フェレンツ,マイケル
(72)【発明者】
【氏名】ハルトゥング,クリスチャン
(72)【発明者】
【氏名】フォッシュ,ハネローレ
(72)【発明者】
【氏名】マイヤー,ユルゲン
(72)【発明者】
【氏名】ヘルヴェルト,サシャ
【審査官】 小出 直也
(56)【参考文献】
【文献】 特開平04−108795(JP,A)
【文献】 特開2007−202557(JP,A)
【文献】 特開2005−330220(JP,A)
【文献】 特開2000−086767(JP,A)
【文献】 特開2005−194523(JP,A)
【文献】 米国特許第05262155(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01F 17/54
A61K 8/00−8/99
A61Q 1/00−90/00
C08G 77/00−77/62
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I)
2+f+2g−a−bM’M’’D’D’’ 式(I)
(式中、
Mは、(RSiO1/2)であり、
M’は、(RSiO1/2)であり、
M’’は、(RSiO1/2)であり、
Dは、(RSiO2/2)であり、
D’は、(RSiO2/2)であり、
D’’は、(RSiO2/2)であり、
Tは、(RSiO3/2)であり、
Qは、(SiO4/2)であり
(式中、
は、互いに独立に、同一または異なる、場合によりOHまたはエステル基を有する、直鎖または分岐の(場合により芳香族である)1〜16個の炭素原子を有する炭化水素基であり、ただし、Rは、8〜16個の炭素原子を有する直鎖アルキル基ではなく、
は、互いに独立に、同一または異なる、8〜28個の炭素原子を有する直鎖アルキル基であり、
は、−CHCHCHOCHCH(OH)CHOHである)、
aは、0〜2であり、
bは、0〜2であり、
cは、20〜300であり、
dは、4〜130であり、
eは、3〜75であり、
fは、0〜10であり、
gは、0〜5であり、
ただし、
N=2+c+d+e+2f+3gは、60〜350であり、
y=(a+d)/(b+e)は、1〜6.5であり、かつ
z=a+b+d+eは、10超である)
のグリセリン変性シロキサンを少なくとも1種含む乳化剤。
【請求項2】
2≧a+b>0であることを特徴とする、請求項1に記載の乳化剤。
【請求項3】
前記グリセリン変性シロキサンが、一般式(II)
[D’’’−R−D’’’] 式(II)
(式中、
D’’’は、(RSiO2/2)であり、
は、−CHCHR−R−CHRCH−または−CH=CR−R−CR
=CH−であり、
は、場合によりエーテル、アルコール、エステル、アミンもしくはシロキサン基を有する、直鎖または分岐のアルキレン基であるか、一般式−(Si(CHO)−Si(CH−(式中、h=1〜400)の基である)
のさらなるシロキサン単位を含むことを特徴とする、請求項1または2に記載の乳化剤。
【請求項4】
Si鎖長の異なる前記グリセリン変性シロキサンの混合物が存在することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の乳化剤。
【請求項5】
油中水型またはシリコーン中水型乳化物を調製するためおよび化粧品製剤、皮膚外用製剤または医薬製剤を調製するための、請求項1〜4のいずれか一項に記載の乳化剤の少なくとも1種の使用。
【請求項6】
無機顔料または化粧料粒子を含む乳化化粧料を調製するための、請求項5に記載の使用。
【請求項7】
場合により分散固体を含む、家庭用または工業用の、手入れまたは洗浄用組成物を調製するための、請求項5に記載の使用。
【請求項8】
硬質表面、皮革または繊維製品用の、手入れまたは洗浄用組成物を調製するための、請求項5に記載の使用。
【請求項9】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の乳化剤を少なくとも1種含む、油中水型、シリコーン中水型乳化物または分散物。
【請求項10】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の乳化剤を少なくとも1種含む、化粧品製剤、皮膚外用製剤または医薬製剤。
【請求項11】
前記製剤が、ポリエーテルおよびポリエーテル含有化合物を本質的に含まないことを特徴とする、請求項10に記載の製剤。
【請求項12】
顔料を含有する、請求項10または11に記載の化粧品製剤。
【請求項13】
場合により分散固体を含み、請求項1〜4のいずれか一項に記載の乳化剤を少なくとも1種含む、家庭用または工業用の手入れまたは洗浄用組成物あるいは硬質表面、皮革または繊維製品用の手入れまたは洗浄用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、一般式(I)のグリセリン変性有機ポリシロキサンを含む乳化剤ならびに極めて安定な乳化物および分散物を調製するためのこれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
先行技術
有機変性シロキサンは多種多様な用途に用いられている。その性質は、変性の種類によっても変性量(modification density)によっても具体的に調整することができる。
【0003】
そのため、例えば、アリルポリエーテルを用いて有機物親和性または非イオン性親水性基をシロキサン主鎖に結合させてもよい。この種の化合物は、例えば、ポリウレタンフォーム用泡安定剤や燃料用消泡剤として使用される。
【0004】
これとは対照的に、シロキサンはα−オレフィンと反応させることによって親油性基と結合する。こうして得られたシリコーンワックスは、例えば、化粧品用途における添加剤としての役割を果たす。
【0005】
シロキサンの効果は対応する処方との相溶性に決定的に依存することが、多くの適用分野において見出されている。好適な乳化剤としては、例えば、α−オレフィンをベースとする脂肪族基に加えてポリエーテルも有するシロキサン、例えば、独国のEvonik Goldschmidt GmbHから市販品されているABIL(登録商標)EM90等が挙げられる。
【0006】
最近では、ポリエーテルを含有する化合物への批判が高まりつつあることから、ポリエーテル基を有しなくても良好な乳化および分散性を示すシロキサン系乳化剤が求められている。
【0007】
例えば、ポリエーテル基に替えてグリセリン誘導体またはポリグリセリン誘導体を親水性成分とすることが可能である。ポリグリセリン変性シロキサンは、例えば、欧州特許第1213316号に記載されている。欧州特許出願公開第1550687号(シンエツ)には、乳化物用のグリセリン変性シロキサンが用いられている。ポリグリセリン変性シロキサンはまた、例えば、シンエツからKF−6100またはKSG−710の名称で市販されている。
【0008】
しかし、これまで記載されたグリセリン変性シロキサン化合物は、例えば市販の化粧品製剤に必要とされるような乳化物および分散物の十分な安定化には適していないのが通常である。最終製品を適切に長持ちさせるとともに一定の品質を確保するためには貯蔵安定性を有する処方が必要である。そのためには、乳化物または分散物が、様々な温度で数ヶ月間、油分離または水分離または固形分分離を起こすことなく常に安定な組成および均質性を有していなければならない。特に、無機顔料、例えば二酸化チタンや酸化鉄等をさらに含むメークアップおよび日焼け止め用乳化化粧料の場合は、優れた長期安定性および非常に優れた顔料分散性を特徴とする化粧料を調製することが難しい場合が多く、その際は、先行技術に記載されているグリセリン系シリコーン乳化剤では十分に安定化された乳化物が得られないのが通常である。先行技術に記載されているグリセリン含有シリコーン乳化剤を利用して調製された乳化物は保存中に分離する可能性があり、したがって安定性が十分ではなく、再現性のある結果が得られない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって本発明の目的は、再現性よく調製することができ、かつ強力な乳化剤および分散剤として使用することができ、その際は処方を再現性よく極めて高く安定化させる、ポリエーテルを含まない新規な種類の有機変性シロキサンを開発することにあった。
【課題を解決するための手段】
【0010】
発明の説明
驚くべきことに、具体的に選択された一般式(I)のグリセリン変性有機ポリシロキサンが非常に強力な乳化剤および分散剤となり、したがって、過去に記載された系と比較して大幅な改善を達成することが見出された。これを用いて調製した乳化物、特に、顔料を含む分散物および粒子を含む分散物も、再現性よく非常に安定である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明による乳化剤を、例を用いて以下に説明するが、本発明をこれらの例示的な実施形態に限定することを意図するものではない。範囲、一般式、または化合物の分類を以下に示す場合、これらは明示した対応する範囲または化合物群のみならず、個々の値(範囲)または化合物を抜き出すことによって得ることができるあらゆる部分範囲および化合物の部分群も包含することを意図する。本明細書の文脈中に文書を引用する場合は、これらの内容全体が本発明の開示内容に属するものと見なされる。本発明の文脈内で、化合物、例えば、複数の異なる構成単位を有し得る有機変性ポリシロキサン等が記載される場合、これらはこの化合物中でランダムに分布していてもよいし(ランダムオリゴマー)、または配列していてもよい(ブロックオリゴマー)。このような化合物中の構成単位の数に関するデータは、対応する化合物全体で平均した平均値を意味するものと理解すべきである。
【0012】
本発明の文脈における乳化剤とは、少なくとも1種の一般式(I)の物質および場合により少なくとも1種の共乳化剤(共乳化剤が存在することが好ましい)を含む乳化剤を意味するものと理解される。
【0013】
本発明は、一般式(I)
2+f+2g−a−bM’M’’D’D’’ 式(I)
(式中、
Mは、(RSiO1/2)であり、
M’は、(RSiO1/2)であり、
M’’は、(RSiO1/2)であり、
Dは、(RSiO2/2)であり、
D’は、(RSiO2/2)であり、
D’’は、(RSiO2/2)であり、
Tは、(RSiO3/2)であり、
Qは、(SiO4/2)であり
(式中、
は、互いに独立に、同一または異なる、場合によりOHまたはエステル基を有する、直鎖または分岐の(場合により芳香族である)1〜16個の炭素原子を有する炭化水素基であり、好ましくはメチルまたはフェニルであり、特にメチルであり、
は、互いに独立に、同一または異なる、直鎖または分岐の(場合により芳香族である)1〜30個の炭素原子を有する炭化水素基であり、好ましくは8〜28個の炭素原子を有する直鎖アルキル基であり、特にn−ドデシルまたはn−ヘキサデシルまたはウンデシル酸メチルエステル基であり、
は、−CHCHCHOCHCH(OH)CHOHである)、
aは、0〜2、特に0〜1であり、
bは、0〜2、特に0〜1であり、
cは、20〜300、好ましくは30〜220、特に40〜150であり、
dは、4〜130、好ましくは5〜80、特に8〜40であり、
eは、3〜75、好ましくは3.5〜45、特に4〜25であり、
fは、0〜10、好ましくは0〜5、特に0であり、
gは、0〜5、好ましくは0〜2、特に0であり、
ただし、
N=2+c+d+e+2f+3gは、51〜350、好ましくは60〜250、特に65〜180であり、
y=(a+d)/(b+e)は、1〜6.5、好ましくは1.3〜6、特に1.5〜5.5であり、かつ
z=a+b+d+eは、10超、好ましくは12超、特に14超である)
のグリセリン変性シロキサンを少なくとも1種含む乳化剤を提供する。
【0014】
具体的には、処方中で良好な性能を発揮させるためには、
a)長いシリコーン主鎖を示すN、
b)十分に高い変性量を示すz、および
c)疎水性アルキル基対親水性グリセリン基の選択比率を示すy
が重要である。以下に記載する、乳化物を非常に良好に安定化させるために必要なこの相互作用は、過去の先行技術においては認識されなかったものである。
【0015】
本発明による好ましい乳化剤は、存在するグリセリン変性シロキサンが、2≧a+b>0の条件を満たすことを特徴とする。
【0016】
本発明による乳化剤の場合、存在するグリセリン変性シロキサンが、適切な場合にはより高い分子量およびより幅広い分子量分布が得られるように、さらに分岐を有すると有利であろう。このことは、乳化物の安定化効果に関し有利となり得る。
【0017】
したがってさらに本発明は、上述の変数を有する式(I)のグリセリン変性シロキサンを含む乳化剤であって、一般式(II)
[D’’’−R−D’’’] 式(II)
(式中、
D’’’は、(RSiO2/2
(式中、
は、式(I)と同義である)であり、
は、−CHCHR−R−CHRCH−または−CH=CR−R−CR=CH−であり、
は、場合により、エーテル、アルコール、エステル、アミンもしくはシロキサン基を有する直鎖または分岐のアルキレン基であるか、一般式−(Si(CHO)−Si(CH−(式中、h=1〜400)の基、例えば、−(CH−、−(CH−、−CHOCH−、−CHOCHC(CHCH)(CHOH)CHOCH−、−Si(CHO−Si(CH−である)
のシロキサン単位をさらに含む乳化剤を提供する。
【0018】
本発明による乳化剤中にグリセリン変性シロキサンの混合物が存在してもよいことは明白である。これに関連して、式(I)においてNで定義されるSi鎖の長さが異なるグリセリン変性シロキサンの混合物を含む本発明による乳化剤が好ましい。
【0019】
有機変性シロキサンは、ヒドロシリル化によって調製することができる。ヒドロシリル化に使用されるSiH官能性シロキサンは、当業者に周知の、例えば米国特許第7196153B2号に記載されている平衡化法により得ることができる。
【0020】
グリセロールモノアリルエーテルは、例えば、Raschigから入手することができる。1−ドデセンや1−ヘキサデセン等のα−オレフィンは、例えば、ShellまたはChevron Chemicalから市販されている。
【0021】
ヒドロシリル化は、確立された方法によって触媒の存在下に実施することができる。これに関連して、例えば、シリカ、酸化アルミニウム、もしくは活性炭、または類似の担体材料上に固定された、白金錯体、ロジウム錯体、オスミウム錯体、ルテニウム錯体、パラジウム錯体、イリジウム錯体等の触媒もしくは類似の化合物または対応する単体元素もしくはこれらの誘導体を使用することが可能である。ヒドロシリル化は、シス白金やカルステッド(Karstedt)触媒[トリス(ジビニルテトラメチルジシロキサン)ビス白金]等のPt触媒の存在下に実施してもよい。触媒の使用量は、オレフィン1モル当たり10−7〜10−1mol、好ましくは1〜20ppmであってもよい。ヒドロシリル化は、0〜200℃、好ましくは50〜140℃の温度で実施してもよい。反応は、脂肪族または芳香族炭化水素、環状オリゴシロキサン、アルコール、カーボネート、エステル等の好適な溶媒中で実施してもよい。溶媒を使用することにより、出発物質間に非相溶性が生じないようにし、したがって、最終生成物中に生じ得る非相溶性も防ぐとともに、反応開始の遅延を防ぐことが可能になる。溶媒を使用せずに実施することも可能である。ヒドロシリル化を行うための好適な方法は、例えば、書籍「Chemie und Technologie der Silicones(Chemistry and technology of silicones)」, Verlag Chemie, 1960, page 43に加えて米国特許第3775452号および欧州特許第1520870号にも記載されており、これらを特に参照する。
【0022】
特定の製剤特性を確立するために、適切であれば、本発明による乳化剤を共乳化剤と併用してもよい。原則として、当業者に周知のあらゆる乳化剤が共乳化剤として好適である。イソステアリン酸、オレイン酸、および/またはポリヒドロキシステアリン酸もしくはポリリシノール酸のポリグリセリンエステル等、例えば、イソステアリン酸ポリグリセリル−4(例えば、ISOLAN(登録商標)GI 34(Evonik Goldschmidt GmbH))、(ジイソステアリン酸/ポリヒドロキシステアリン酸/セバシン酸)ポリグリセリル−4(ISOLAN(登録商標)GPS(Evonik Goldschmidt GmbH))、ジポリヒドロキシステアリン酸ポリグリセリル−2、ポリリシノール酸ポリグリセリル−3等の共乳化剤を併用するかまたはジポリヒドロキシステアリン酸PEG−30等のポリヒドロキシステアリン酸のエトキシ化脂肪酸エステルを併用することが特に好ましい。
【0023】
さらなる好ましい共乳化剤は、ポリシロキサン−ポリエーテル共重合体(ジメチコンコポリオール)、例えば、PEG/PPG−20/6ジメチコン、PEG/PPG−20/20ジメチコン、ビス(PEG/PPG−20/20)ジメチコン、PEG−12もしくはPEG−14ジメチコン、PEG/PPG−14/4もしくは4/12もしくは20/20もしくは18/18もしくは17/18もしくは15/15ジメチコン等、またはポリシロキサン−アルキル−ポリエーテル共重合体もしくは対応する誘導体、例えば、ラウリルもしくはセチルジメチコンコポリオール等、特に、セチルPEG/PPG−10/1ジメチコン(ABIL(登録商標)EM 90(Evonik Goldschmidt GmbH))である。
【0024】
さらに本発明は、好ましくは無機顔料および/または化粧料粒子をさらに含んでいてもよい油中水型またはシリコーン中水型乳化物を調製するための、本発明による乳化剤の使用を提供する。
【0025】
本発明による乳化剤は、特に、化粧品製剤、皮膚外用製剤または医薬製剤の調製に加えて、家庭用または工業用の、特に、硬質表面、皮革または繊維製品用の、手入れおよび洗浄用組成物(場合により分散固体を含む)の調製にも使用される。これに関連して、単純な油中水型またはシリコーン中水型乳化物も同様に製剤と理解されるべきである。
【0026】
本明細書においては、本発明による乳化剤を、無機顔料(例えば、二酸化チタン、酸化鉄、酸化亜鉛等)および/または化粧料粒子を含む乳化化粧料の調製に使用することがより好ましい。
【0027】
化粧料に使用される典型的な粒子は、粒度が5〜50μmであり、肌感触およびマット感を改善するかまたはシワを目立たなくするために使用される(「ソフトフォーカス効果」)。典型的な粒子材料は、PMMA、PE、ナイロン−12、シリコーン粒子またはシリコーンエラストマー、デンプンおよび窒化ホウ素である。本明細書において、使用される粒子は、全体的な特性(profile of properties)に応じて、密な構造または多孔質構造のいずれであってもよい。
【0028】
本発明による乳化剤を利用して調製される油中水型およびシリコーン中水型乳化物、特に、化粧品製剤、皮膚外用製剤または医薬製剤に加えて、家庭用または工業用の手入れおよび洗浄用組成物ならびに硬質表面、皮革または繊維製品用の手入れおよび洗浄用組成物(場合により分散固体を含む)は、本発明による乳化剤を少なくとも1種含み、これも同様に、本発明によって提供される。
【0029】
これに関連して、好ましい化粧品製剤は、顔料、特に無機顔料を含む化粧料(例えば、酸化鉄顔料、二酸化チタン、または酸化亜鉛粒子を含むものなど)および化粧料粒子を含む製剤である。
【0030】
本発明による製剤は、例えば、
エモリエント剤、
共乳化剤および界面活性剤、
増粘剤/粘度調整剤/安定剤、
UV光防護遮蔽剤(UV photoprotective filter)、
酸化防止剤、
ハイドロトロープ剤(またはポリオール)、
固体およびフィラー、
皮膜形成剤、
真珠光沢剤、
防臭および制汗有効成分、
昆虫忌避剤、
セルフタンニング剤、
防腐剤、
コンディショニング剤、
香料、
染料、
化粧有効成分、
ケア成分(care additive)、
過脂肪剤、
溶媒
の群から選択されるさらなる成分を少なくとも1種含んでいてもよい。
【0031】
個々の群の代表例として使用してもよい物質は当業者に周知であり、例えば、独国特許出願第102008001788.4号に見ることができる。当該特許出願を本明細書に参考として組み込み、したがって本開示内容の一部を構成するものとする。
【0032】
本発明による乳化剤は、ポリエーテル構造に頼る必要なく強力な性能を達成するので、本発明による好ましい製剤は、ポリエーテルおよびポリエーテル含有化合物を本質的に含まない製剤であることを特徴とする。
【0033】
本発明に関連する、「ポリエーテルおよびポリエーテル含有化合物を本質的に含まない」という用語は、使用される化合物が、アルコキシ基、オリゴアルコキシ基またはポリアルコキシ基、例えば、エチレンオキシドまたはプロピレンオキシド等を微量しか含まず、好ましくは一切含まないことを表す。ポリエーテルを含む化合物の濃度は、製剤全体を基準として0.1重量%未満であるべきであり、特に好ましくは0.01重量%未満であり、好ましくは、慣用の分析手法、例えば、NMR分光、GPC、MALDI等の検出限界を超えない。
【0034】
本発明による乳化剤は、好ましくは、化粧品製剤または医薬製剤の調製に使用される。この種の製剤は、例えば、クリーム、ローションまたはスプレー、例えば、ケアクリーム、ベビークリーム、日焼け止めローション、軟膏、制汗剤、防臭剤、メークアップ剤(make-up)等であってもよい。特に、化粧品製剤は、例えば、酸化鉄顔料、二酸化チタン、酸化亜鉛粒子等の分散固体を含むメークアップ剤または日焼け止め製品等の製剤であってもよい。
【0035】
したがって、本発明による製剤は、スキンケア製品、フェイスケア製品、頭皮ケア製品、ボディケア製品、陰部ケア製品、フットケア製品、ヘアケア製品、ネイルケア製品、デンタルケア製品または口腔ケア製品に使用してもよい。
【0036】
本発明による製剤は、乳化物、懸濁物、溶液、クリーム、軟膏、ペースト、ゲル、オイル、粉末、エアゾール、スティック、スプレー、洗浄製品、メークアップまたは日焼け止め製剤、フェイシャルトナー(facial toner)の形態で使用してもよい。
【0037】
以下に列挙する実施例において本発明の一例を説明するが、本発明およびその適用範囲を実施例に具体的に述べる実施形態に限定することを意図するものではない。
【実施例】
【0038】
式(I)のアルキル/グリセリン変性シロキサンを調製する一般手順:
2+f+2g−a−bM’M’’D’D’’ 式(I)
式中、
Mは、(RSiO1/2)であり、
M’は、(RSiO1/2)であり、
M’’は、(RSiO1/2)であり、
Dは、(RSiO2/2)であり、
D’は、(RSiO2/2)であり、
D’’は、(RSiO2/2)であり、
Tは、(RSiO3/2)であり、
Qは、(SiO4/2)であり、
本実施例に関しては、
は、メチルであり、
は、アルキルまたは11−メトキシ−11−オキソウンデシルであり、
は、−CHCHCHOCHCH(OH)CHOHであり、
f=g=0である。
【0039】
撹拌機、滴下漏斗、温度計および環流冷却器を備えた四つ口フラスコ内に、最初に、トルエン約30%(初期総重量を基準とする)中のα−オレフィン1.3×(a+d)mol、グリセリンモノアリルエーテル1.3×(b+e)mol、およびカルステッド触媒10ppm(溶媒を除いた原料を基準とする)を導入し、95℃に加熱した。一般式(III)
[MeSiO1/22−a−b[MeHSiO1/2a+b[MeSiO2/2[MeHSiO2/2d+e 式(III)
のSiH−シロキサン1molを滴下し、混合物を95℃で2時間撹拌した。SiH価測定によれば、SiH−シロキサンの完全な転化が達成された。次いで、110℃で約1mbarに減圧して揮発性画分を留去した。各場合において、粘性のあるわずかに濁ったほぼ無色の生成物を得た。
【0040】
表1にこの一般手順で調製したシロキサンの一覧を示す。
【0041】
【表1】
【0042】
さらに、わずか20時間後に乳化物の安定化を速やかに差別化することができる、非常に限界的な(critical)化粧料中におけるこれらの生成物の乳化力を表1の最終列にまとめた。この限界乳化物試験は以下の処方をベースとする。
【0043】
【表2】
【0044】
調製:B相をA相に室温で撹拌しながらゆっくりと加える;手早く均質化する;C相およびD相を加える;均質化する。
【0045】
限界試験用乳化物を60℃、50℃および室温で20時間保存した。調製した後および50℃で20時間保存した後の乳化物の粘度を測定した。さらに乳化物を−15℃で一夜凍結させた後、再び解凍して評価を行った。乳化物安定性が極めて優れている(+++)とは、この試験の全保存温度において乳化物に水または油分離の徴候がない上に粘度低下も起こらなかったことを指す。乳化物安定性が非常に優れている(++)とは、60℃で保存した際の水分離が多くとも微量程度であることを示す。乳化物安定性が良好である(+)とは、さらに凍結安定性も劣り得ることを示す。乳化物安定性が普通である(o)とは、60℃における水分離がより顕著であるとともに、50℃においても微量の水分離があり得ることを示し、そして凍結安定性が劣ることを示す。乳化物安定性が劣る(−)とは、全保存温度において水分離が顕著に現れることを示す。乳化物安定性が非常に劣る(−−)とは、すべての保存温度において比較的深刻な水分離があるかまたは室温下での顕著な水分離に試験用乳化物のはっきりとした粘度低下が伴うことを表す。乳化物安定性が壊滅的である(−−−)とは、W/O乳化物がまったく形成されないかまたは調製直後に分離するかのいずれかを意味する。
【0046】
これに従い、表1からのアルキル/グリセリン変性ポリシロキサンに関する以下の結果を得た:
実施例1〜7は、シリコーン鎖長が一定(ここでは長くなるように選択(N=100))であり、かつ変性度が一定(これも高くなるように選択(z=25))である場合は、疎水性アルキル基対親水性グリセリン基の比率yが乳化物の安定性に決定的な影響を与えることを示す。グリセリンの割合が高い場合(実施例7)は、ヒドロキシル基の数が多いために生成物がSiOCの形成によって架橋する可能性があり、したがってほとんどの場合にゲルを形成するという理由から、合成された生成物は使用することができない。yが約1.5〜5.5の場合(実施例3〜5)に良好な乳化物安定性が観察される。これらの値を下回る(実施例6)かまたは超える(実施例1〜2)場合は、親水性対疎水性の比率が十分な安定化に好ましくないものになる。良好な乳化物安定性を得るには、十分な親水性グリセリン基とともに十分な数の疎水性アルキル基も存在することが必要である。実施例8および9(ヘキサデシルまたはウンデシル酸メチルエステル基)および実施例10(さらなるα,ω−変性)は、実施例3〜5と変数が類似しており、したがって、同様に良好な乳化物安定性を示す。
【0047】
実施例11〜16においては、シリコーン鎖長はここではほぼ一定で、長くなるように選択(N=67〜90)されており、疎水性アルキル基対親水性グリセリン基の比率は、最初の実施例で確認された良好な値(y=1.5〜2.3)でほぼ一定になるように調整されている。乳化物安定性に関し良好な結果を得るためには、ここで変化させた変性度の変数zが10を超えなければならない。
【0048】
最後に、表1のC部においては、疎水性アルキル基対親水性グリセリン基の比率(y=1.5〜1.9)および変性度(z=20)を良好な値でほぼ一定に維持し、シリコーン鎖長を変化させた。良好な乳化物安定性を得るためには、シリコーン鎖長Nが50を超えなければならないことが明らかである。
【0049】
要約すると、処方中で良好な乳化性能を得るためには、アルキル/グリセリン変性シロキサン乳化剤が、
a)長いシリコーン主鎖(N>50)、
b)十分に高い変性量(z>10)、および
c)疎水性アルキル基対親水性グリセリン基の選択比率(少なくともy=1〜6.5)
を有することが必要であることが確認された。
【0050】
適用例:
ここに記載する乳化化粧料は、乳化化粧料に乳化剤として使用されるアルキル/グリセリン変性有機ポリシロキサンの能力の一例を例示することを意図するものである。
【0051】
各場合において、水相を油相中に導入した後、慣用法を用いて均質化することにより調製を実施した。
【0052】
【表3】
【0053】
【表4】
【0054】
【表5】
【0055】
【表6】
【0056】
処方例10と類似の本発明によるアルキル/グリセリン変性ポリシロキサンの使用に関して言えば、ほとんどの場合、先行技術より慣用されている乳化剤(例えば、ISOLAN(登録商標)GPS、ARLACEL(登録商標)P-135、ABIL(登録商標)EM 90、ABIL(登録商標)EM 97)よりも安定性が高く発色も強くなると言える。
【0057】
それでもやはり、個々の状況に応じて(可能性としては、粘度調整または特定の肌感触を確立するために)、先行技術からの乳化剤と併用することが有利な場合がある。通常、これは容易に実施することができる(処方例11〜14)。
【0058】
本発明によるシリコーン鎖長の異なる2種の乳化剤を併用することも、乳化物の安定化に特に有利となる可能性がある(処方例9)。
【0059】
コーティングされた二酸化チタン(例えば、AC 360)を使用すること以外に、本発明によるポリシロキサン乳化剤を使用することによっても、コーティングされていない顔料を安定化することができる。ここでも、原則として、先行技術の乳化剤よりも高い安定性および強い発色が得られる。
【0060】
【表7】