特許第5750239号(P5750239)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5750239光硬化性塗料組成物、及びそれを硬化させてなる塗膜
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5750239
(24)【登録日】2015年5月22日
(45)【発行日】2015年7月15日
(54)【発明の名称】光硬化性塗料組成物、及びそれを硬化させてなる塗膜
(51)【国際特許分類】
   C09D 4/02 20060101AFI20150625BHJP
   C09D 151/00 20060101ALI20150625BHJP
   C08F 265/06 20060101ALI20150625BHJP
【FI】
   C09D4/02
   C09D151/00
   C08F265/06
【請求項の数】5
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2010-135468(P2010-135468)
(22)【出願日】2010年6月14日
(65)【公開番号】特開2012-1575(P2012-1575A)
(43)【公開日】2012年1月5日
【審査請求日】2013年4月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】100075409
【弁理士】
【氏名又は名称】植木 久一
(74)【代理人】
【識別番号】100129757
【弁理士】
【氏名又は名称】植木 久彦
(74)【代理人】
【識別番号】100115082
【弁理士】
【氏名又は名称】菅河 忠志
(74)【代理人】
【識別番号】100125243
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 浩彰
(72)【発明者】
【氏名】宮本 正広
【審査官】 牟田 博一
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−027398(JP,A)
【文献】 特開2003−183586(JP,A)
【文献】 特開2010−241998(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 1/00〜 10/00
101/00〜201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビニルモノマー(A)100重量部、及び体積平均粒子径が0.05〜1μmのポリマー微粒子(B)0.1〜50重量部を含む光硬化性塗料組成物であって、
前記ビニルモノマー(A)が、炭素数3以上のアルコール、及び(メタ)アクリル酸から合成される(メタ)アクリル酸エステル系モノマーと、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートと、ウレタン変性(メタ)アクリレートと、からなる群から選ばれる1種以上のモノマーを主成分とし、かつ、
前記ポリマー微粒子(B)が、その内側に存在するコア層、及びその最も外側に存在するシェル層の少なくとも2層を含むコア/シェル型グラフト共重合体であって、コア層のガラス転移温度がシェル層のガラス転移温度よりも高く、
前記ポリマー微粒子(B)のコア層のガラス転移温度が10℃以上であって、更にその最も外側に存在するシェル層のガラス転移温度が0℃未満であり、
前記ポリマー微粒子(B)が前記ビニルモノマー(A)中で一次分散しており、
前記シェル層が、(1)少なくとも炭素数2〜10でエーテル結合を1つ含むアルコキシアルキル基を有するアルコキシアルキル(メタ)アクリレート(BS−1)及び炭素数2〜10のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート(BS−2)、(2)少なくとも炭素数2〜10でヒドロキシル基を1つ含むヒドロキシアルキル基を有するヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート(BS−1)及び炭素数2〜10のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート(BS−2)、または(3)少なくとも炭素数2〜10でエーテル結合を1つ含むアルコキシアルキル基を有するアルコキシアルキル(メタ)アクリレート(BS−1)及び(メタ)アクリロニトリル(BS−2)を重合してなることを特徴とする、光硬化性塗料組成物。
【請求項2】
前記ビニルモノマー(A)100重量%が、炭素数3以上のアルコール、及び(メタ)アクリル酸から合成される(メタ)アクリル酸エステル系モノマーと、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとからなる群から選ばれる1種以上のモノマー50〜100重量%、芳香族ビニル系モノマー0〜50重量%、並びにその他のビニルモノマー0〜50重量%とからなるモノマーである請求項1に記載の光硬化性塗料組成物。
【請求項3】
前記コア層が、アルキル(メタ)アクリレート、及びアルコキシアルキル(メタ)アクリレートよりなる群から選ばれる1種以上のモノマー(BC−1)50〜98重量%と、多官能ビニルモノマー(BC−2)0.1〜30重量%と、その他ビニルモノマー(BC−3)0〜40重量%とからなるコア層単量体100重量%の共重合体である、請求項1または2に記載の光硬化性塗料組成物。
【請求項4】
前記シェル層が、アルコキシアルキル(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、及びグリシジル(メタ)アクリレートからなる群から選ばれる1種以上のモノマー(BS−1)2〜90重量%と、アルキル(メタ)アクリレート、スチレン、及びα−メチルスチレン、及び(メタ)アクリロニトリルからなる群から選ばれる1種以上のモノマー(BS−2)2〜98重量%と、多官能性ビニルモノマー(BS−3)0〜10重量%と、これらのモノマーと共重合可能なその他のビニルモノマー(BS−4)0〜10重量%とからなるシェル層単量体100重量%の共重合体である、請求項1〜3のいずれかに記載の光硬化性塗料組成物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の光硬化性塗料組成物を硬化させてなる塗膜。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポリマー微粒子で改質された光硬化性塗料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
光硬化性の塗料組成物は紫外線等の照射により速やかに硬化することで塗料(コーティング)として機能することや、塗膜の形成に必要とするエネルギー量が少ないなど、優れた塗料材料として様々な産業材料に広く使用されている。
【0003】
一般に塗料(コーティング)においては、形成された塗膜の物性や外観が重要であるが、光硬化性塗料においても、典型的には優れた伸びを有する塗膜を得ることや、取扱い性や硬化性に優れる塗料が望まれている。
【0004】
このような要求に対し、塗料の構成成分として、ウレタンアクリレートに代表される、オリゴマー成分を特定の構造とする方法で、改良された伸びを有する光硬化性塗料組成物を得ることが、特許文献1に開示されている。即ち、特許文献1には、(A)ウレタン化合物、(B)反応性不飽和基を有する光重合性単量体、及び(C)光重合開始剤を含有し、ウレタン化合物が、(a)1分子中にイソシアネート基を2つ有するイソシアネート化合物と、(b)数平均分子量が1000を超え2500以下であるポリオキシアルキレングリコールと、(c)数平均分子量が62以上1000以下であるアルキレングリコール又はポリオキシアルキレングリコールと、(d)水酸基を有するエチレン性不飽和化合物とを、(c)成分のモル数に対する(b)成分のモル数の比が1以上、かつ、(a)成分のイソシアネート基に対する(b)成分、(c)成分及び(d)成分の有する水酸基の当量比が1.0〜1.1となるように混合し反応させて得られる、光硬化性樹脂組成物が開示されている。
【0005】
一方、特許文献2には、アクリル系熱可塑性樹脂としてのコアシェル構造の重合体が開示されている。特許文献2において、ガラス転移温度は0℃以上である架橋樹脂層の少なくとも1層をコア層に有すると共に、ガラス転移温度が0℃以下である軟質樹脂層を最外層に有する、多層構造重合体が開示されている。この多層構造重合体はアクリル系熱可塑樹脂として柔軟性や常温での(固体状態での)取り扱い性などの点で優れた特性を有することと、粉体の状態で溶融加熱した場合、最外層のガラス転移温度が低いために、溶融流動が低い温度で始まること、が開示されている。しかしながら、塗料組成物としての利用や、塗料組成物への添加剤/改質剤としての利用や効果については、何も言及がない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−089627号公報
【特許文献2】特開平7−002957号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、更に外観に優れつつ、優れた特性の塗膜を得ることができる、これまでにない光硬化性塗料組成物を提供することを目的として、本発明は為された。
【0008】
このような要求に対して発明者らは先に、特定の分散状態、及びそれを実現する為の特定のコア/シェル構造を有するポリマー微粒子を含んでなる光硬化性塗料組成物によって、このような要求を高度に満足できる、光硬化性塗料組成物およびそれを硬化させてなる塗膜を提案している。即ち、該微粒子の内側に存在するコア層のガラス転移温度を0℃未満のゴム状重合体とし、かつ、このようなポリマー微粒子を特定のコア/シェル構造とすることで該微粒子が安定に一次粒子で分散できるようになり、更に光硬化性塗料組成物の硬化前後で該微粒子の分散状態は変化せず、凝集なく一次粒子の状態で存在せしめることで、塗膜の機械的物性を改良し得ること見出している。
【0009】
ここで、微粒子の内側に存在するコア層のガラス転移温度を0℃未満のゴム状重合体とする理由は、このゴム状重合体の存在により塗膜にかかる歪みを緩和することで塗膜の機械的物性を改良することを意図している為である。
【0010】
今回、本発明者らは鋭意検討の結果、優れた外観を有しつつ、更に優れた機械的物性を有する、光硬化性塗料組成物、およびそれよりなる塗膜を提供することを目的として、本発明を完成させた。
【課題を解決するための手段】
【0011】
検討の結果、驚くべきことに、特定構造のコア/シェル型ポリマー微粒子とビニルモノマーからなる本発明の光硬化性塗料組成物は、従来にない、より優れた外観と、塗膜の(機械的)特性を両立可能である塗膜を提供できることを見出した。
【0012】
即ち、本発明は、ビニルモノマー(A)100重量部、及び体積平均粒子径が0.05〜1μmのポリマー微粒子(B)0.1〜50重量部を含む光硬化性塗料組成物であって、
前記ビニルモノマー(A)が、炭素数3以上のアルコール、及び(メタ)アクリル酸から合成される(メタ)アクリル酸エステル系モノマーと、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートと、ウレタン変性(メタ)アクリレートと、からなる群から選ばれる1種以上のモノマーを主成分とし、かつ、
ポリマー微粒子(B)が、その内側に存在するコア層、及びその最も外側に存在するシェル層の少なくとも2層を含むコア/シェル型グラフト共重合体であって、コア層のガラス転移温度がシェル層のガラス転移温度よりも高いことを特徴とする、光硬化性塗料組成物に関する。
【0013】
言い換えれば、ビニルモノマー(A)の主成分としては、炭素数3以上のアルコール、及び(メタ)アクリル酸から合成される(メタ)アクリル酸エステル系モノマーと、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートと、からなる群、又は、ウレタン変性(メタ)アクリレートとすることが好ましく、これらを併用しても良い。
【0014】
特に本発明においては、前記ビニルモノマー(A)の主成分として、前記炭素数3以上のアルコール、及び(メタ)アクリル酸から合成される(メタ)アクリル酸エステル系モノマーと、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートと、からなる群から選ばれる1種以上を使用すれば、ウレタン変性(メタ)アクリレートを併用しなくても良いことを見出したことも重要な点である。
【0015】
このウレタン変性(メタ)アクリレートを併用しない場合の好ましい実施態様は、前記ビニルモノマー(A)100重量%を、炭素数3以上のアルコール、及び(メタ)アクリル酸から合成される(メタ)アクリル酸エステル系モノマーと、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとからなる群から選ばれる1種以上のモノマー50〜100重量%、芳香族ビニル系モノマー0〜50重量%、並びにその他のビニルモノマー0〜50重量%からなるモノマーとすることである。
【0016】
好ましい実施態様は、前記ポリマー微粒子(B)を、前記ポリマー微粒子(B)のコア層のガラス転移温度が10℃以上であって、更にその最も外側に存在するシェル層のガラス転移温度が0℃未満のポリマー微粒子(B)とすることである。
【0017】
好ましい実施態様は、前記ポリマー微粒子(B)が前記ビニルモノマー(A)中で一次分散していることを特徴とするポリマー微粒子含有ビニルモノマー組成物を含む光硬化性塗料組成物とすることである。このようにビニルモノマー(A)中に、コアシェル型ポリマー微粒子が一次粒子の状態で安定に分散しているので、コアシェル型ポリマーが有する本来の、機械的強度改善効果が発揮でき、その硬化物は機械的特性や外観に優れる。またこのようなポリマー微粒子含有ビニルモノマー組成物を原料として用いることで、コアシェル型ポリマー微粒子を、本発明の組成物中に一次粒子で分散させる為に、高せん断の付与を全く必要としないという効果が奏され、さらに、外観に優れた塗膜が得られるという効果もある。
【0018】
好ましい実施態様は、前記コア層を、アルキル(メタ)アクリレート、及びアルコキシアルキル(メタ)アクリレートよりなる群から選ばれる1種以上のモノマー(BC−1)50〜98重量%と、多官能ビニルモノマー(BC−2)0.1〜30重量%と、その他ビニルモノマー(BC−3)0〜40重量%とからなるコア層単量体100重量%の共重合体とすることである。
【0019】
好ましい実施態様は、前記シェル層を、アルコキシアルキル(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、及びグリシジル(メタ)アクリレートからなる群から選ばれる1種以上のモノマー(BS−1)2〜90重量%と、
アルキル(メタ)アクリレート、スチレン、及びα−メチルスチレン、及び(メタ)アクリロニトリルからなる群から選ばれる1種以上のモノマー(BS−2)2〜98重量%と、
多官能性ビニルモノマー(BS−3)0〜10重量%と、
これらのモノマーと共重合可能なその他のビニルモノマー(BS−4)0〜10重量%とからなるシェル層単量体100重量%の共重合体とすることである。
【0020】
また、本発明は、このような本発明の光硬化性塗料組成物を硬化させてなる塗膜に関する。
【発明の効果】
【0021】
本発明の光硬化性塗料組成物は、従来技術では困難であった、ポリマー微粒子、特にコアシェル型ポリマー微粒子を含んでなる、外観に優れ、かつ表面硬度や耐クラック性などに代表される、塗膜の(機械的)特性に優れる塗膜を提供することが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態について説明する。
【0023】
<光硬化性塗料組成物>
本発明の光硬化性塗料組成物は、ビニルモノマー(A)100重量部、及び体積平均粒子径が0.05〜1μmのポリマー微粒子(B)0.1〜50重量部を含んでなる光硬化性組成物であり、外観、及び機械的強度に優れた塗膜とする観点から、
前記ビニルモノマー(A)が、炭素数3以上のアルコール、及び(メタ)アクリル酸から合成される(メタ)アクリル酸エステル系モノマーと、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートと、ウレタン変性(メタ)アクリレートと、からなる群から選ばれる1種以上のモノマーを主成分とすることを要する。
【0024】
本発明の光硬化性塗料組成物は、上述したように前記ビニルモノマー(A)100重量部に対して、前記ポリマー微粒子(B)を0.1〜50重量部含むことを要するが、ポリマー微粒子(B)の含有量が、0.1重量部未満だと本発明の効果にバラつきが見られることがあり、50重量部を超えると、粘度が高くなりすぎて、取り扱いに支障をきたす場合がある。好ましくはポリマー微粒子(B)の含量を1〜40重量部とすることである。
【0025】
本発明における、ポリマー微粒子(B)は、1次粒子径として体積平均粒子径が、0.05〜1μmの範囲にあり、かつポリマー微粒子が、その内側に存在するコア層、及びその最も外側に存在するシェル層の少なくとも2層を含むコア/シェル型グラフト共重合体であって、コア層のガラス転移温度がシェル層のガラス転移温度よりも高いことを特徴とする。
【0026】
さらに本発明の組成物は、ポリマー微粒子(B)がビニルモノマー(A)の連続層中に、一次粒子で分散してなるポリマー微粒子含有ビニルモノマー組成物と、その他の本発明の組成物と、を混合することで作製されたものであることが好ましい。即ち、(B)は(A)中で0.05〜1μmの粒子径で分散しており、このような組成物を前記本発明のその他の組成物と混合することで、本発明の組成物や、その硬化物中でもポリマー微粒子(B)は一次粒子の状態で分散している。このような一次粒子の状態で分散しており、かつ特定構造のポリマー微粒子(B)を含ませることで、本発明の組成物は各一次粒子の機械的強度向上効果が十分に発揮された更に優れた品質を有する、コアシェル型ポリマー微粒子により改質されたより好ましい光硬化性塗料組成物となる。即ち、従来技術では、実際にビニルモノマー中へコアシェル型ポリマーを混合し、一次粒子で安定に分散している状態を実現し、更にこれを保持することは極めて困難であったが、本発明の組成物は、好ましくはポリマー微粒子(B)がビニルモノマー(A)の連続層中に、一次粒子で分散してなるポリマー微粒子含有ビニルモノマー組成物を原料として用いることで、改良された伸びに代表されるより好ましい光硬化性塗料組成物となる。
【0027】
この一次分散を確保する観点から本発明では、前記ビニルモノマー(A)を、炭素数3以上のアルコール、及び(メタ)アクリル酸から合成される(メタ)アクリル酸エステル系モノマーと、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートと、からなる群から選ばれる1種以上のモノマーを主成分とする、即ち、このようなモノマーがビニルモノマー(A)の50重量%を越えることが好ましい。
【0028】
また、ポリマー微粒子(B)は、ビニルモノマー(A)成分に膨潤することはあっても溶解しない。さらに、ポリマー微粒子(B)は、その良溶剤とされる溶媒に対しても膨潤することはあっても溶解して微粒子の形態を失うことはないように、架橋構造を有するポリマーとすることが好ましい。前記ポリマー微粒子(B)が、前記ビニルモノマー(A)の連続層中に、一次粒子の状態で分散している(以下、一次分散とも呼ぶ。)ことは、その分散粒子径を測定することにより、例えば、光散乱を利用した粒子径測定装置を利用して本発明の組成物中のポリマー微粒子(B)の粒子径を測定することにより確認できる。
【0029】
また、ポリマー微粒子(B)の「安定な分散」とは、ポリマー微粒子(B)が、ビニルモノマー(A)中で凝集したり、分離したり、沈殿したりすることなく、定常的に通常の条件下にて、長期間に渡って、分散している状態を意味し、また、ポリマー微粒子(B)のビニルモノマー(A)中での分布も実質的に変化せず、また、本発明の組成物を危険がない範囲で加熱することで粘度を下げて攪拌したりしても、「安定な分散」を保持できることが好ましい。
【0030】
本発明に係る前記ビニルモノマー(A)100重量%は、炭素数3以上のアルコール、及び(メタ)アクリル酸から合成される(メタ)アクリル酸エステル系モノマー、及びヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとからなる群に含まれるモノマーと、ウレタン変性(メタ)アクリレートと、からなる群から選ばれる1種以上のモノマーを主成分、即ち、50重量%以上含むことを要す。従って、本発明の光硬化性塗料組成物は、前記ビニルモノマー(A)100重量%のうち、前記ウレタン変性(メタ)アクリレートを0〜90重量%含む。これにより前述のようなビニルモノマーとウレタン変性(メタ)アクリレートとの共重合体が、ポリマー微粒子(B)の分散媒(マトリクス)ポリマーとなる光硬化性塗料組成物、及びその硬化物よりなる塗膜を得ることができるが、これらも本発明の範囲に含まれる。本発明の塗料組成物の扱いやすさと塗膜の物性をバランスさせる観点から、ウレタン変性(メタ)アクリレートは、前記ビニルモノマー(A)100重量%のうち、好ましくは1〜70重量%、より好ましくは、1〜45重量%である。
【0031】
本発明の塗料組成物は、前記ビニルモノマー(A)100重量部に対して、光重合開始剤を0〜12重量部含んでなることが好ましい。この光重合開始剤は、紫外線、可視光線、電子線などの活性エネルギー線の照射を受けることで、ラジカルを発生させることができる化合物であって、光ラジカル開始剤とも呼ばれる。このラジカル重合開始剤によってフリーラジカルが発生することにより、本発明の組成物中の炭素―炭素不飽和二重結合の重合反応(架橋反応含む)が起こり、その組成物が硬化することで塗膜として機能する。電子線(EB)によって本発明の塗料組成物を硬化させる際には、この光重合開始剤がなくとも本発明の塗料組成物を硬化させることが可能である。
【0032】
本発明の光硬化性塗料組成物は、上述したように光重合開始剤を含み、このような光重合開始剤とともに、必要に応じて、光増感剤を含むことが好ましい。
【0033】
<ビニルモノマー(A)>
本発明に係るビニルモノマー(A)は、上述したように、炭素数3以上のアルコール、及び(メタ)アクリル酸から合成される(メタ)アクリル酸エステル系モノマーと、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートと、ウレタン変性(メタ)アクリレートと、芳香族ビニル系モノマーと、その他のビニルモノマーとからなる群から選ばれるモノマーである。
【0034】
なお、本明細書において(メタ)アクリル酸エステルは、アクリル酸エステル、及び/又は、メタクリル酸エステル、を意味する。
【0035】
(炭素数3以上のアルコール、及び(メタ)アクリル酸から合成される(メタ)アクリル酸エステル系モノマー)
前記炭素数3以上のアルコール、及び(メタ)アクリル酸から合成される(メタ)アクリル酸エステル系モノマーとしては、(メタ)アクリロイルオキシ基を分子内に1個有する(メタ)アクリレートモノマー(AA1)、及び(メタ)アクリロイルオキシ基を分子内に2個以上有する(メタ)アクリレートモノマー(AA2)が例示できるが、空気中での光硬化性が大きいAA2が、AA1より多いことが好ましい。即ち、上述した、炭素数3以上のアルコール、及び(メタ)アクリル酸から合成されるAA1、及びAA2からなる(メタ)アクリル酸エステル系モノマー、及びヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとからなる群に含まれるモノマーを主成分とする場合には、その主成分はAA2であることが好ましい。
【0036】
前記(メタ)アクリロイルオキシ基を分子内に1個有する(メタ)アクリレートモノマー(AA1)としては、ブチル(メタ)アクリレートやプロピル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、イソデシルアクリレート、などの鎖状アルキル(メタ)アクリレートの他、シクロへキシル(メタ)アクリレートやイソボルニル(メタ)アクリレートのような脂環式アルキル(メタ)アクリレートも含まれ、また、2−メトキシエチル(メタ)アクリレートや2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエトキシエチル(メタ)アクリレート、2−フェノキシエチル(メタ)アクリレートのようなアルキルオキシ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチルメタアクリレートや2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートのような水酸基含有(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレートのようなエポキシ基含有(メタ)アクリレートの他、アリル(メタ)アクリレートのようなエチレン性不飽和二重結合を有する(メタ)アクリレートなどが例示される。
【0037】
前記(メタ)アクリロイルオキシ基を分子内に2個以上有する(メタ)アクリレートモノマー(AA2)の内、2個有するものとしては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレートの他、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート類として、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(600)ジ(メタ)アクリレート等が例示される。
【0038】
また、前記AA2の内、3つの(メタ)アクリレート基を有する(A)として、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリエトキシトリ(メタ)アクリレートのようなアルコキシレーテッドトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート類、グリセロールプロポキシトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジ(トリメチロールプロパン)テトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレートなどが例示される。
【0039】
これらの前記(メタ)アクリル酸エステル系モノマーの内、工業的な利用頻度の観点から、イソボルニルアクリレート、イソデシルアクリレート、テトラヒドルフルフリルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジアクリレート(HDODA)、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート(TRPGDA)、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)、トリメチロールプロパントリエトキシトリアクリレート(TMPTETA)、グリセロールプロポキシトリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ジ(トリメチロールプロパン)テトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートがより好ましい。
【0040】
(ウレタン変性(メタ)アクリレート)
本発明に係るウレタン変性(メタ)アクリレートは、嫌気性が弱く、酸素存在雰囲気下であってもラジカル重合阻害を受けにくい性質を有しており、本発明の光硬化性塗料組成物において、この特性を活用することができる。ビニルモノマー(A)100重量%のうち、本発明に係るウレタン変性(メタ)アクリレートを0〜90重量%含みうる。
【0041】
本発明に係るウレタン変性(メタ)アクリレートは、(1)ポリイソシアネートと、(2)水酸基含有(メタ)アクリル酸エステル、更に必要に応じて(3)水酸基を有するポリエステル、水酸基を有するポリエーテル、アクリルポリオール、ポリビニルアルコール等の分子内に水酸基を有する化合物とを反応させて得られるウレタン(メタ)アクリレートであることが好ましい。
【0042】
上記のポリイソシアネートは、分子中に少なくとも2個以上のイソシアネート基を持つ化合物ならば使用可能であるが、トリレンジイソシアネートやヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4‘−ジフェニルメタンジイソシアネート、水添トリレンジイソシアネート、水添4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、リジンジイソシアネートメチルエステル、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等の2価のイソシアネート類およびそれらの2量体または3量体が好ましい。
【0043】
上記の水酸基を有するポリエステルとは、1種以上の多価アルコールと1種以上の多塩基酸とのエステル化合物である。ここで多価アルコールは、アルキレンオキシドの付加物や、環状エステル(例えばカプロラクトンなど)の付加物であってよい。多価アルコールとしては、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、エチレングリコール、トリエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスルトールなどが例示できる。また、上記多塩基酸としては、例えば、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、イソフタル酸、テレフタル酸、無水フタル酸、トリメリット酸などが例示できる。
【0044】
上記水酸基含有ポリエーテルとして好ましいものは、多価アルコールに1種又は2種以上のアルキレンオキサイド、及び/または環状エステル(例えばカプロラクトンなど)を付加することによって得られる水酸基含有ポリエーテルであってもよく、多価アルコールとしては、前記水酸基含有ポリエステルに使用できるものと同じものが例示できる。
【0045】
上記の水酸基含有(メタ)アクリレートとして好ましいものは、多価アルコールと、(メタ)アクリル酸またはメタクリル酸よりなるエステル化合物であり、その分子内に1以上の水酸基を有している。ここでいう多価アルコールは、アルキレンオキシドの付加物や、環状エステル(例えばカプロラクトンなど)の付加物であってよく、上記水酸基含有ポリエステルの場合と同じものを使用できる。
【0046】
好ましい水酸基含有(メタ)アクリレートとしては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、1−メチル−2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド付加グリセリンジ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド付加グリセリンジ(メタ)アクリレート、ε−カプロラクトン付加グリセリンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド付加トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド付加トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ε−カプロラクトン付加トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド付加ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド付加ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ε−カプロラクトン付加ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド付加ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド付加ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ε−カプロラクトン付加ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールモノエトキシレートジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド付加ペンタエリスリトールモノエトキシレートジ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド付加ペンタエリスリトールモノエトキシレートジ(メタ)アクリレート、ε−カプロラクトン付加ペンタエリスリトールモノエトキシレートジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド付加ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド付加ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ε−カプロラクトン付加ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールモノラウリレートテトラ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド付加ジペンタエリスリトールモノラウリレートテトラ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド付加ジペンタエリスリトールモノラウリレートテトラ(メタ)アクリレート、ε−カプロラクトン付加ジペンタエリスリトールモノラウリレートテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールジメタアクリレートトリアクリレート、ジペンタエリスリトールモノメタアクリレートテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールテトラメタアクリレートモノアクリレートが例示できる。
【0047】
本発明に係るウレタン変性(メタ)アクリレートとして好ましくは、前述の(1)ポリイソシアネートと、(2)水酸基含有(メタ)アクリル酸エステル、更に必要に応じて(3)水酸基を有するポリエステル、水酸基を有するポリエーテル、ポリビニルアルコール等の分子内に水酸基を有する化合物とを、イソシアネート(NCO)基/水酸(OH)基の等量比が、約0.7〜1.20、好ましくは0.8〜1.05となる範囲で反応させて得られるものである。更にその分子量は、好ましくは500〜20,000、より好ましくは600〜12,000更に好ましくは、600〜6,000である。分子量を600〜3,000の範囲として、分子内に3つ以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有するウレタン変性(メタ)アクリレートとすると、特に硬さに優れる塗膜を得ることができる。
【0048】
(芳香族ビニル系モノマー)
前記芳香族ビニル系モノマーとして、スチレン、α−メチルスチレン、炭素数1〜12までのアルキル基を有するアルキルスチレン、メトキシスチレン、クロロスチレン、ブロモスチレン、ジビニルベンゼン、フェニルスチレン、ビニルナフタレン等が挙げられる。これらの芳香族ビニル系モノマーの内、工業的な利用頻度の観点から、スチレンがより好ましい。
【0049】
(その他のビニルモノマー)
前記その他のビニルモノマーは、前記炭素数3以上のアルコール、及び(メタ)アクリル酸から合成される(メタ)アクリル酸エステル系モノマーと、前記ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートと、ウレタン変性(メタ)アクリレートと、芳香族ビニル系モノマーと、からなる群に属さないこれら以外のビニルモノマーであって、例えば、炭素数1以上、2以下のアルコール、及び(メタ)アクリル酸から合成される(メタ)アクリル酸エステル系モノマーや、ビニルシアン系モノマー、(メタ)アクリルアミド系モノマー、N−ビニルアミド系モノマー、アリルエステルモノマー等が挙げられる。
【0050】
このような炭素数1以上、2以下のアルコール、及び(メタ)アクリル酸から合成される(メタ)アクリル酸エステル系モノマーとしては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチルなどが例示できる。
【0051】
同様にこのようなビニルシアン系モノマーとしては、(メタ)アクリロニトリルなどが例示できるが、アクリロニトリルが工業的見地からは好ましい。
【0052】
更に(メタ)アクリルアミド系モノマーとしては、(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミドが、N−ビニルアミド系モノマーとしては、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタムが、アリルエステルモノマーとしては、フタル酸ジアリルなどが例示できる。
【0053】
<ポリマー微粒子(B)>
本発明に係るポリマー微粒子(B)は、好ましくは、その内側に存在するコア層、及びその最も外側に存在するシェル層の少なくとも2層を含むコアシェル型構造のポリマー微粒子であって、かつ、コア層のガラス転移温度がシェル層のガラス転移温度よりも高いことを特徴とする。より好ましくは、本発明に係るポリマー微粒子(B)は、ガラス転移温度が10℃以上の半硬質〜硬質重合体からなるコア層の存在下に、グラフト共重合可能なモノマー成分をグラフト重合して、ガラス転移温度が0℃未満となる(コ)ポリマーで構成されるシェル層を形成したポリマー微粒子であり、この場合、その内部に存在するコア層と、その表面にグラフト重合してこのコア層の周囲、又は一部を覆っている、少なくとも1つのシェル層を有する構造となる。
【0054】
本発明のシェル層は、コア層に対して、コア層/シェル層比率(各々の重合体を形成する単量体の質量比)で、60/40〜95/5の範囲であることが好ましく、即ち、ポリマー微粒子(B)に占めるシェル重合体の量は、本発明の要件を満たすのに必要な量以上であればよく、60/40〜90/10であることがより好ましく、70/30〜90/10であることが更に好ましい。コア層/シェル層比率が60/40をはずれてコア層の比率が低下すると、軟質なシェルポリマーの割合が増える為に本発明の組成物の粘度が高くなり、取扱いのし難い組成物になる場合がある。また、95/5をはずれシェル層の比率が低下すると、ポリマー微粒子の取扱い時に凝集をきたし易く、操作性に問題が生じる場合がある。また、本発明の組成物の硬化物に期待する物性が得られない可能性がある。
【0055】
(コア層)
本発明に係るコア層は、本発明に係る硬化物に、硬度低下を抑制しつつ靭性を付与し得るために、粒子構造を形成維保持でき、かつシェル層重合体よりもガラス転移温度が高く硬質な重合体からなる。また、コア層は単層構造であることが多いが、多層構造であってもよい。また、コア層が多層構造の場合は、各層のポリマー組成が各々相違していてもよい。
【0056】
このような本発明に係るコア層を構成する重合体は、架橋構造を有していることが好ましく、このような架橋重合体とした場合にこの重合体は、本発明に係るビニルモノマー(A)成分に溶解せず、また、その良溶剤とされる溶媒に対しても膨潤することはあっても溶解はしない。
【0057】
前記のコア層を構成する重合体のガラス転移温度(Tg)は、好ましくは0℃以上であるが、本発明に係る硬化物の硬度低下を抑制しつつ靭性を付与する観点から、より好ましくは10℃以上、より好ましくは40℃以上である。
【0058】
前記コア層は、通常球形の形状を有するが、この場合のポリマー微粒子(B)中のコア層であるコア部分の体積平均粒子径は、ポリマー微粒子(B)の体積平均粒子径が0.05〜1μmの範囲となる限りにおいて、好ましくは0.05〜1μmであり、より好ましくは0.1〜0.8μmである。上述したようにコア部分は前記ビニルモノマー(A)に不溶なので、その場合、本発明の組成物の硬化物を、例えば透過型電子顕微鏡(TEM)を使って観察すれば、容易にコア部分の粒子径を確認できる。
【0059】
このような重合体は、重合体形成用単量体を重合したものであるが、その内で主となる単量体、即ち、第1単量体となる単量体の種類に応じて、主に(メタ)アクリル酸エステルモノマーを重合することにより得られる(メタ)アクリル系ポリマーが好ましく、ビニルシアン系モノマーやビニル芳香族系モノマーを重合成分として含んでもよく、これらを併用したもの、又は、複合化したものが用いられ得るが、本発明の組成物を含んでなる硬化物で優れた外観と物性の両立を望むのであれば、好ましくは(メタ)アクリル酸エステルモノマーを主成分とする重合体である。前記第1単量体以外に、更に共役ジエン系単量体を含んでもよい。また、このようなモノマー成分を組み合わせることにより、コア層の屈折率が、本発明の組成物を硬化させてなる塗膜を構成するポリマー成分(マトリクスポリマー)の屈折率と近いほど、本発明の塗膜を透明性に優れたものとすることができる。
【0060】
(メタ)アクリル系ポリマーとする場合に好ましい第1単量体は、メタアクリル酸ブチルやメタアクリル酸メチル、アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸2−メトキシエチル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸ステアリル、アクリル酸2−フェノキシエチルである。
【0061】
(コア層の架橋)
本発明に係るコア層は、上記単量体を重合してなるポリマー成分に架橋構造が導入されていることが好ましい。架橋構造の導入方法としては、特に限定されるものではなく、一般的に用いられる手法を採用することができる。例えば、上記モノマーを重合してなるポリマー成分に架橋構造を導入する方法としては、上記モノマー成分に後述する多官能性単量体等の架橋性単量体を添加し、次いで重合する方法等が挙げられる。具体的には、前記弾性コア層は、ゲル含量が80質量%以上であることが好ましく、85質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることがさらに好ましく、95質量%以上であることが特に好ましい。なお、本明細書でいうゲル含量とは、凝固、乾燥により得られたクラム約1.2gをトルエン100gに浸漬し、23℃で24時間静置した後に不溶分と可溶分を分別したときの、不溶分と可溶分の合計量に対する不溶分の比率を意味する。
【0062】
(多官能性単量体)
前記多官能性単量体としては、ブタジエンは含まれず、アリル(メタ)アクリレート、アリルオキシアルキル(メタ)アクリレート等のアリル基を有するアルキル(メタ)アクリレート類;ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等の多官能性(メタ)アクリレート類;ジアリルフタレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、ジビニルベンゼン等が挙げられる。特に好ましくはアリルメタアクリレート、トリアリルイソシアヌレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、及びジビニルベンゼンである。
【0063】
<シェル層>
本発明に係るシェル層は、前記ポリマー微粒子(B)と前記ビニルモノマー(A)との相溶性を向上させ、本発明に係る硬化性組成物、又はその硬化物中においてポリマー微粒子(B)が一次粒子の状態で分散することを可能にする役割を担うと共に、従来は軟質であったコア層が担っていた、機械的特性の向上の役割も担っている。
【0064】
このようなシェル重合体は、コア層にグラフトしている。より正確には、シェル層の形成に用いる単量体成分が、コア層を形成するコアポリマーにグラフト重合して、実質的にシェル層とコア層とが化学結合していることが好ましい。即ち、好ましくは、シェル重合体は、コアポリマーの存在下にシェル重合体の構成成分であるモノマー(混合物)をグラフト重合させることで形成され、このようにすることで、このコアポリマーにグラフト重合されており、コアポリマーの一部又は全体を覆っている。この重合操作は、水性のポリマーラテックス状態で調製され存在するコアポリマーのラテックス対して、シェル重合体の構成成分であるモノマーを加えて重合させることで実施する。このようにして得られる(B)の一次粒子径は0.05〜1μmである。また、シェル層を構成するポリマーのTgは、好ましくは0℃未満の軟質な共重合体である。
【0065】
このようなシェル重合体は、シェル重合体形成用単量体(BS)を重合したものであるが、上述の一次分散性を効果的に確保する観点からは、アルコキシアルキル(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、及びグリシジル(メタ)アクリレートからなる群から選ばれる1種以上のモノマー(BS−1)2〜90重量%と、アルキル(メタ)アクリレート、スチレン、及びα−メチルスチレン、及び(メタ)アクリロニトリルからなる群から選ばれる1種以上のモノマー(BS−2)2〜98重量%と、多官能性ビニルモノマー(BS−3)0〜10重量%と、これらのモノマーと共重合可能なその他のビニルモノマー(BS−4)0〜10重量%と、の合計100重量%のシェル重合体形成用単量体(BS)の共重合体であることが好ましい。
【0066】
このようなシェル重合体形成用単量体(BS)の組み合わせとしては、例えば、(1)モノマー(BS−1)である炭素数2〜10でかつ酸素原子によるエーテル結合を1つ含むアルコキシアルキル基を有するアルコキシアルキル(メタ)アクリレート、及びモノマー(BS−2)である炭素数2〜10のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートの組み合わせ、(2)モノマー(BS−1)である炭素数2〜10でヒドロキシル基を1つ含むヒドロキシアルキル基を有するヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、及びモノマー(BS−2)である炭素数2〜10のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートの組み合わせ、(3)モノマー(BS−1)である炭素数2〜10でかつ酸素原子によるエーテル結合を1つ含むアルコキシアルキル基を有するアルコキシアルキル(メタ)アクリレート(m−1)、及びモノマー(BS−2)である(メタ)アクリロニトリルとの組み合わせ、等が好ましく例示できる。
【0067】
前記シェル重合体形成用単量体(BS)中の、モノマー(BS−1)、モノマー(BS−2)、多官能性ビニルモノマー(BS−3)、及びこれらのモノマーと共重合可能なその他のビニルモノマー(BS−4)の比率について、より安定な硬化性組成物を得る観点から、モノマー(BS−1)2〜90重量%、モノマー(BS−2)2〜98重量%、多官能性ビニルモノマー(BS−3)0〜10重量%、及びこれらのモノマーと共重合可能なその他のビニルモノマー(BS−4)0〜10重量%とすることが好ましく、シェル層に架橋構造を導入して上述した膨潤を十分に防止する観点からは、多官能性ビニルモノマー(BS−3)0.1〜5重量%を必須成分として含むシェル重合体形成用単量体(BS)とすることがより好ましい。
【0068】
前記モノマー(BS−1)中のアルコキシアルキル(メタ)アクリレートとしては、(メタ)アクリル酸2−メトキシエチル、(メタ)アクリル酸4−メトキシブチル、(メタ)アクリル酸2−エトキシエチル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル、及び(メタ)アクリル酸2−フェノキシエチルが好ましく例示できる。
【0069】
前記モノマー(BS−1)中のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとしては、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチルが好ましく例示できる。
【0070】
前記モノマー(BS−2)中の炭素数2〜10のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートとしては、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸第三ブチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシルが好ましく例示できる。
【0071】
前記多官能性ビニルモノマー(BS−3)としては、(メタ)アクリル酸アリル、1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、フタル酸ジアリル、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパン(トリ)アクリレート、トリアリルイソシアヌレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレートが好ましく例示できる。
【0072】
前記これらのモノマーと共重合可能なその他のビニルモノマー(BS−4)としては、(メタ)アクリルアミド系モノマー、アリルエステルモノマー、N−ビニルピロリドン系モノマーなどが挙げられる。(メタ)アクリルアミド系モノマーとしては、(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミドが、アリルエステルモノマーとしては、フタル酸ジアリルが、N−ビニルピロリドン系モノマーとしては、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタムなどが例示できる。
【0073】
<光重合開始剤>
本発明に係る光重合開始剤は、紫外線、電子線、可視光線の照射を受けて、ビニルモノマー(A)をラジカル重合させるものの中から選択できる。
【0074】
このような光重合開始剤としては、ベンゾフェノン、4,4−ビス(N,N‘−ジメチルアミノ)ベンゾフェノン等のベンゾフェノン類、ベンゾインやベンゾインアルキルエーテル(アルキル=メチル、エチル、イソプロピル)等のベンゾイン類、2,2−ジメトキシアセトフェノン、1,1−ジクロロアセトフェノン等のアセトフェノン類、ベンジルジメチルケタール(Irgacure651、チバスペシャルティケミカル製)等のベンジルケタール類、2−メチルアントラキノン、1−クロロアントラキノン、2−アミルアントラキノン等のアントラキノン類、フェニルジ(2,4,6−トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド(Irgacure819、チバスペシャルティケミカル製)等のビスアシルホスフィンオキシド類、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニルホスフィンオキシド等のベンゾイルホスフィンオキシド類、トリフェニルホスフィンの他、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(例えばIrgacure184、チバスペシャルティケミカル製など)、2−ヒドロキシイソプロピルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−1−プロパノン等のα−ヒドロキシフェニルケトン類、チオキサントンや2−クロロチオキサントン等のチオキサントン類、カンファーキノン等が例示できる他、アクリジン誘導体、フェナジン誘導体、キノキサリン誘導体なども使用可能である。
【0075】
このような光重合開始剤は、電子線で本発明の組成物を硬化させる際には必ずしも必要でない一方、紫外線や可視光線で硬化させる場合には必要である。好ましい光重合開始剤の配合量は、ビニルモノマー(A)100重量部に対して、0.1〜12重量部である。本発明の用件を満たす接着剤組成物が、光透過性良好で特に紫外線や可視光線を遮ったり、散乱したりすることがなければ、より好ましくは0.3〜8重量部である。これら複数の光重合開始剤を組み合わせて使用することもできる。
【0076】
<光増感剤>
更にこれら光重合開始剤とともに、慣用的に組み合わせて使用される光増感剤を併用してもよい。光増感剤とは、それ自身単独では紫外線等の照射によって活性化しないが、光重合開始剤と一緒に使用すると、光重合開始剤単独の場合よりも、ラジカル重合を進行しやすくさせる機能を有する。
【0077】
そのような光増感剤としては、n−ブチルアミン、トリエチルアミン、N−メチルジエタノールアミン、ピペリジン、N,N−ジメチルアニリン、トリエチレンテトラミン、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のアミン類、O−トリルチオウレアのような尿素系化合物、s−ベンジル−イソチウロニウム−p−トルエンスルフィネート等の硫黄化合物、N,N−ジメチル−p−アミノベンゾニトリル等のニトリル類、ナトリウムジエチルチオフォスフェート等のリン化合物等が例示され、0〜6重量部を本発明の組成物に添加することが好ましい。
【0078】
<硬化>
本発明の塗料組成物の硬化には、電子線〜紫外〜可視光領域の光を利用することができ、例え紫外〜可視光の場合には、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプやレーザー光、LED光、太陽光などが利用できる。典型的には1〜9,000mJ/cm2の積算光量を照射することにより、硬化可能である。硬化に際しては空気雰囲気下、不活性ガス雰囲気下、或いはそれらの混合ガス雰囲気下でも、硬化可能であるが、酸素濃度が少ない雰囲気下での硬化は、架橋構造の形成促進や硬化阻害の少なさなどの観点から、品質の優れた塗膜を与える傾向がある。
【0079】
光電子線(EB)による硬化の場合には、光重合開始剤は必ずしも必要でない。典型的には、100〜500kVの加速電圧を有する電子線発生装置を用いることが例示できる。硬化に際しては空気雰囲気下、不活性ガス雰囲気下、或いはそれらの混合ガス雰囲気下でも、硬化可能であるが、電子線によるオゾンと窒素酸化物発生の可能性の観点や、低酸素濃度ほど重合阻害が少ない等の観点から、酸素濃度は低い方が好ましい傾向にある。
【0080】
<その他>
本発明の塗料組成物の塗布方法については特に限定されるものではなく、バーコート法、マイクロバーコート法、スプレー法、ディップ(ドブ浸け)法、ロールコータ法、ロールナイフコート法、スピンコート法、スライドコート法、カーテンコート法、メニスカスコーター法、ビードコーター法、グラビアコート法、ダイコート法、ロッドコート法、スクリーン印刷法、フレクソ印刷法、オフセット印刷法、グラビア印刷法、等の各種方法を用いることができる。
【0081】
また、本発明の組成物は適宜、有機溶剤で希釈して使用することもできる。ビニルモノマー(A)と混合可能な溶媒であって、本発明の塗料組成物の取扱い性を著しく損なわない限り、使用可能な有機溶媒に制限はない。好ましくは、ビニルモノマー(A)と混合可能であり、かつ、ポリマー微粒子(B)が本発明の塗料組成物から分離せず、沈殿もしくは浮上等の発生しない範囲で、有機溶媒を用いることが好ましい。より好ましくは、ビニルモノマー(A)と混合可能であり、かつ、ポリマー微粒子(B)が一次粒子で分散している状態を損なわない範囲で、有機溶媒を使用することが好ましい。上記のような要件を満たす範囲において、有機溶媒の使用量には特に制限はない。有機溶剤の具体例としては、ギ酸メチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエステル類や、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、メチルグリコール、エチルセロソルブ、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ等のアルコール類、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、ジアセトンアルコール、アセトン等のケトン類、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド類が例示される他、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジオキソラン等のエーテル類、塩化メチレン、ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素や、ジメチルスルホキシド、炭酸プロピレン等なども使用可能である。これらを適宜混合して使用してもよい。
【0082】
本発明の塗料組成物は、種々の基材に塗布して利用することが可能であり、ポリエステル、ポリカーボネート、アクリル系ポリマー、シクロオレフィン系ポリマー、セルロースアシレートなどの樹脂材料の他、種々の熱硬化樹脂のみならず、木材、金属等の表面に塗布して利用できる。
【実施例】
【0083】
以下、実施例および比較例によって本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0084】
(評価方法)
(1)体積平均粒子径
ポリマー微粒子(B)の体積平均粒子径は、粒子径測定装置(日機装(株)製Microtrac(登録商標) UPA)で測定した。
【0085】
(2)耐おもり落下性試験(デュポン式衝撃)
JIS K5600−5−3のデュポン式に従って、実施例、及び比較例に記載の試験片を用いて、塗膜が打撃面となるようにして試験した。おもりは700gで実施した。試験(打撃)後の塗膜表面を観察して、塗膜表面にクラックが観察されない落錘高さを評価結果とした。試験は室温にて実施し、4つの試験片を用いて各試験を実施した。即ち、この値が大きい程、耐衝撃性に優れることとなる。
【0086】
(3)鉛筆硬度
JIS K5600に従って、荷重500g、23℃にて評価した。評価結果…2B、B、HB、F、H、2H、…の順により表面が硬く傷つけにくい結果であることを示す。
【0087】
(4)耐屈曲性試験(コニカルマンドレル法)
ASTM D522に記載のコニカルマンドレルに準拠したBYK−Gardner Conical Mandrel(BYK−Gardner USA製) を使用し、実施例、及び比較例に記載の試験片を、コニカル型のマンドレルに沿って140度折り曲げた。塗膜は外側(マンドレルと接触しない側)にして折り曲げた。折り曲げ後の塗膜表面を観察して、塗膜表面でクラックが止まっている場所が、コニカル型のマンドレルの先端、即ち、最もクラックが発生しやすい位置から、いくらの距離であるかを測定し(距離測定の要領はASTM D522に準拠:0〜8インチの範囲)、評価結果とした。試験は室温にて実施し、4つの試験片を用いて各試験を実施し、1/4インチ単位の離散的距離にて3個以上のサンプルでクラックが発生していない距離を評価結果とした。即ち、この値が小さい程、耐屈曲性に優れることとなる。
【0088】
(5)重合体のTgの評価(又は測定)方法
コア層やシェル層のガラス転移温度(Tg)は、ポリマーを構成する各モノマーのホモポリマーのガラス転移温度の文献値からFOX式:1/T=Σ(W/T)(式中、T:共重合体のガラス転移温度、W:モノマーxの重量分率、T:モノマーxのホモポリマーのガラス転移温度を表す。)を用いて算出した値である。例えば、a、b、cの3成分からなる場合には、1/T=W/T+W/T+W/Tにより導き出される。本実施例において計算に用いる、ホモポリマーのガラス転移温度としては、下記の値を用いた。
【0089】
ポリ(メチルメタアクリレート): 105℃
ポリ(エチルアクリレート): −24℃
ポリ(n−ブチルアクリレート): −54℃
ポリ(n−ブチルメタアクリレート): 20℃
ポリ(2−メトキシエチルアクリレート): −50℃
ポリ(グリシジルメタクリレート): 78℃
ポリスチレン: 100℃
ポリアクリロニトリル: 97℃
一方、上述の方法でガラス転移温度が計算できない場合には、分析的手法によってもコア層やシェル層のガラス転移温度を決定することができる。即ち、(1)水性ラテックスの状態にあるコアシェル型ポリマー微粒子を、塩析もしくは噴霧乾燥などの方法で処理してポリマー分を固形物として得た後、これを加熱下、典型的には130〜180℃、でプレス加工してシート状にしたサンプル用いる方法、或いは(2)コアシェル型ポリマー微粒子を含んでなるビニルエステル樹脂組成物の硬化物を用いる方法、を挙げることができ、これら何れかのサンプルを動的粘弾性測定装置(Dynamic Mechanical Analyzer:DMA測定)で分析することで観察されるTanδの値から、一般的に行われているように、ガラス転移温度を決定することも可能である。
【0090】
[アクリル系ポリマー微粒子(B1)の作成]
窒素雰囲気下、2Lのガラス反応容器に、水650g、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.24g、リン酸三カリウム0.12g、硫酸鉄(II)六水和物5mg、EDTA(エチレンジアミン四酢酸)20mg、及びナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート0.6gを仕込んで40℃とした後、メタクリル酸ブチル(BMA)188g、メタクリル酸メチル(MMA)150g、アクリル酸ブチル(BA)37g、メタクリル酸アリル(AlMA)9.0g、及びクメンハイドロパーオキサイド0.25gの混合物を200分にわたって加え、その後90分時間攪拌を続けた。この間そこに、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(合計2g)を2度に分けて加えた。このようにしてメタクリル酸ブチルを主成分とする単量体混合物の重合物である、コア層となるコポリマー(384g)の水性ラテックスを得た。
【0091】
次に、このコアポリマーの水性ラテックスに、アクリル酸2−メトキシエチル31.5g、アクリル酸ブチル31.5g、アクリル酸エチル62g、及び架橋剤であるメタクリル酸アリル2.5gからなるモノマー混合物(127.5g)と、t−ブチルハイドロパーオキサイド0.09gと、からなる混合物を120分にわたり加え、グラフト重合させた。前記混合物添加終了後、更に2時間攪拌を続けて反応を完結させることで、ポリマー微粒子(B1)を含む水性ラテックスを得た。重合転化率は99%であった。この水性ラテックス状態のポリマー微粒子(B1)(511.5g)の一部をとって水で希釈し、粒子径測定装置(日機装(株)製Microtrac UPA)で体積平均粒子径を測定したところ、0.2μmであり粒子径分布はシャープな単分散であった。
【0092】
このポリマー微粒子(B1)のコア層のTgは38℃であり、シェル層のTgは−39℃である。
【0093】
[ポリマー微粒子(B1)を含む組成物U1−1の調製]
ポリマー微粒子(B1)を含む水性ラテックス1000gと、酢酸メチル1000gを混合後、更に700gの水を加えてポリマー微粒子(B1)を再沈させた。再沈物から液相を分離後、この再沈物に1300gの酢酸メチルを加え室温で90分間攪拌した。この混合物をビニルモノマー(A)としてのジトリメチロールプロパンテトラアクリレート(DTMP4A)1580gに混合した後、酢酸メチルを減圧下で留去することで、100重量部のジトリメチロールプロパンテトラアクリレート(DTMP4A)中にポリマー微粒子(B1)であるグラフト重合体粒子が17.7重量部、即ち、15重量%のポリマー微粒子(B1)が分散した組成物U1−1(1859g)を得た。
【0094】
この組成物U1−1をメチルエチルケトンで希釈し、粒子径測定装置(日機装(株)製Microtrac UPA)にて、ポリマー微粒子(B)の体積平均粒子径を再び測定したところ、体積平均粒子径は0.2μmで、粒子径分布は水性ラテックス状態の(B)と同様にシャープな単分散であった。
【0095】
また、得られた組成物U1−1の10gを取って10gのメチルエチルケトンで希釈し合計20gの溶液とした後、0.45μmの目開きのフィルター(膜材質:RC[再生セルロース])を通すことでフィルター評価を実施したところ、20gの溶液は全てろ過できた。
【0096】
さらに、この組成物U1−1においてポリマー微粒子(B1)の分散状態は遮光下の冷暗所で3ヶ月間放置後も変化しなかった。
【0097】
[ポリマー微粒子(B1)を含む組成物U1−2〜U1−5]
上記組成物U1−1の調整において、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート(DTMP4A)に代えて、
組成物U1−2ではエトキシ化(エチレンオキシド3mol付加)トリメチロールプロパントリアクリレート(EO3TMPTA、Sartomer社製SR−454を使用)838gを、
U1−3ではペンタエリスリトールトリアクリレート(PETA、新中村化学製A−TMM−3LM−Nを使用)838gを、
組成物U1−4では、ヘキサンジオールジアクリレート(HDODA)839gを、
組成物U1−5では、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPEHA、新中村化学製、A−DPH)1580gを、
用いたこと以外は同様にして、組成物U1−2〜U1−4を得た。
【0098】
この組成物U1−2〜U1−5のそれぞれをメチルエチルケトンで希釈し、粒子径測定装置(日機装(株)製Microtrac UPA)にて、ポリマー微粒子(B)の体積平均粒子径を再び測定したところ、体積平均粒子径は0.2μmで、粒子径分布は水性ラテックス状態の(B)と同様にシャープな単分散であった。
【0099】
また、得られた組成物U1−2〜U1−5の10gを取って10gのメチルエチルケトンで希釈し合計20gの溶液とした後、0.45μmの目開きのフィルター(膜材質:RC[再生セルロース])を通すことでフィルター評価を実施したところ、20gの溶液は全てろ過できた。
【0100】
さらに、この組成物U1−2〜U1−5においてポリマー微粒子(B1)の分散状態は遮光下の冷暗所で3ヶ月間放置後も変化しなかった。
【0101】
[アクリル系ポリマー微粒子(B2)の作成]
窒素雰囲気下、2Lのガラス反応容器に、水650g、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.2g、リン酸三カリウム0.12g、硫酸鉄(II)六水和物5mg、EDTA(エチレンジアミン四酢酸)20mg、及びナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート0.6gを仕込んで40℃とした後、アクリル酸ブチル(BA)400g、メタクリル酸アリル(AlMA)8g、及びクメンハイドロパーオキサイド0.27gの混合物を200分にわたって加え、その後90分時間攪拌を続けた。この間そこに、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(合計2g)を2度に分けて加えた。このようにしてアクリル酸ブチルを主成分とする単量体混合物の重合物であり、コアポリマーとなるコポリマー(408g)の水性ラテックスを得た。
【0102】
次に、このコアポリマーの水性ラテックスに、アクリル酸2−メトキシエチル25g、アクリル酸ブチル25g、アクリル酸エチル50g、及び架橋剤であるメタクリル酸アリル2.0gからなるモノマー混合物(102g)と、t−ブチルハイドロパーオキサイド0.09gと、からなる混合物を120分にわたり加え、グラフト重合させた。前記混合物添加終了後、更に2時間攪拌を続けて反応を完結させることで、ポリマー微粒子(B1)を含む水性ラテックスを得た。重合転化率は99%であった。この水性ラテックス状態のポリマー微粒子(B2)(510g)の一部をとって水で希釈し、粒子径測定装置(日機装(株)製Microtrac UPA)で体積平均粒子径を測定したところ、0.2μmであり粒子径分布はシャープな単分散であった。
【0103】
このポリマー微粒子(B2)のコア層のTgは−50℃であり、シェル層のTgは−39℃である。
【0104】
[ポリマー微粒子(B2)を含む組成物U2−5の調製]
ポリマー微粒子(B2)を含む水性ラテックス1000gと、酢酸メチル1000gを混合後、更に700gの水を加えてポリマー微粒子(B2)を再沈させた。再沈物から液相を分離後、この再沈物に1300gの酢酸メチルを加え室温で90分間攪拌した。この混合物をビニルモノマー(A)としてのジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHEA、新中村化学製A−DPH)1580gに混合した後、酢酸メチルを減圧下で留去することで、100重量部のジトリメチロールプロパンテトラアクリレート(DTMP4A)中にポリマー微粒子(B2)であるグラフト重合体粒子が17.7重量部、即ち、15重量%のポリマー微粒子(B2)が分散した組成物U2−5(1859g)を得た。
【0105】
この組成物U2−5をメチルエチルケトンで希釈し、粒子径測定装置(日機装(株)製Microtrac UPA)にて、ポリマー微粒子(B)の体積平均粒子径を再び測定したところ、体積平均粒子径は0.2μmで、粒子径分布は水性ラテックス状態の(B)と同様にシャープな単分散であった。
【0106】
また、得られた組成物U2−5の10gを取って10gのメチルエチルケトンで希釈し合計20gの溶液とした後、0.45μmの目開きのフィルター(膜材質:RC[再生セルロース])を通すことでフィルター評価を実施したところ、20gの溶液は全てろ過できた。
【0107】
さらに、この組成物U2−5においてポリマー微粒子(B2)の分散状態は遮光下の冷暗所で3ヶ月間放置後も変化しなかった。
【0108】
[アクリル系ポリマー微粒子(B3)の作成]
窒素雰囲気下、2Lのガラス反応容器に、水650g、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.12g、リン酸三カリウム0.12g、硫酸鉄(II)六水和物5mg、EDTA(エチレンジアミン四酢酸)20mg、及びナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート0.6gを仕込んで40℃とした後、メタクリル酸ブチル(BMA)130g、メタクリル酸メチル(MMA)245g、メタクリル酸アリル(AlMA)9.0g、及びクメンハイドロパーオキサイド0.25gの混合物を200分にわたって加え、その後90分時間攪拌を続けた。この間そこに、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(合計2g)を2度に分けて加えた。このようにしてメタクリル酸アルキルを主成分とする単量体混合物の重合物である、コア層となるコポリマー(384g)の水性ラテックスを得た。
【0109】
次に、このコアポリマーの水性ラテックスに、アクリル酸2−メトキシエチル31.5g、アクリル酸ブチル31.5g、アクリル酸エチル62g、及び架橋剤であるメタクリル酸アリル2.5gからなるモノマー混合物(127.5g)と、t−ブチルハイドロパーオキサイド0.09gと、からなる混合物を120分にわたり加え、グラフト重合させた。前記混合物添加終了後、更に2時間攪拌を続けて反応を完結させることで、ポリマー微粒子(B1)を含む水性ラテックスを得た。重合転化率は99%であった。この水性ラテックス状態のポリマー微粒子(B1)(511.5g)の一部をとって水で希釈し、粒子径測定装置(日機装(株)製Microtrac UPA)で体積平均粒子径を測定したところ、0.3μmであり粒子径分布はシャープな単分散であった。
【0110】
このポリマー微粒子(B3)のコア層のTgは71℃であり、シェル層のTgは−39℃である。
【0111】
[ポリマー微粒子(B3)を含む組成物U3−5の調製]
上記組成物U1−5の調整において、ポリマー微粒子(B1)の水性ラテックスに代えて、ポリマー微粒子(B3)の水性ラテックスを用いたことと意外は同様にして、組成物U3−5を得た。
【0112】
この組成物U3−5をメチルエチルケトンで希釈し、粒子径測定装置(日機装(株)製Microtrac UPA)にて、ポリマー微粒子(B)の体積平均粒子径を再び測定したところ、体積平均粒子径は0.3μmで、粒子径分布は水性ラテックス状態の(B)と同様にシャープな単分散であった。
【0113】
また、得られた組成物U3−5の10gを取って10gのメチルエチルケトンで希釈し合計20gの溶液とした後、1μmの目開きのフィルター(膜材質:PTFE)を通すことでフィルター評価を実施したところ、20gの溶液は全てろ過できた。
【0114】
さらに、この組成物U3−5においてポリマー微粒子(B3)の分散状態は遮光下の冷暗所で3ヶ月間放置後も変化しなかった。
【0115】
(実施例1)
上記で得たU1−1(3.15g)、U1−2(1.19g)、U1−4(4.77g)、及びDTMP4A(g)、EO3TMPTA(g)、HDODA(g)、CD9053(0.9g)を混合し合計10gの混合物を得た。この混合物は、ポリマー微粒子B1を2.0g、DTMP4Aを2.7g、EO3TMPTAを0.9g、HDODAを3.6g、CD9053を0.9g含んで成る混合物である。この混合物にメチルエチルケトン2g、光ラジカル重合開始材のIrgacure184(登録商標)を0.324g、Irgacure819(登録商標)を0.081g、更に加えて混合してポリマー微粒子含有光硬化性塗料組成物を得た。
【0116】
この塗料組成物を200×100mm×0.6mm厚の冷間圧延鋼板(SPCC−SB、JIS G3141)上に、バーコーター(#20)を用いて塗布後、80℃にて2分間乾燥させた。これを、UV照射装置(ECS−301、アイグラフィクス社製)を用いて、120W/cmのメタルハライドランプで1000mJ/cm2の積算光量にて硬化させて、1mil(1milは1/1000インチ=25.4μm)の膜厚の塗膜を形成したところ、目視で表面平滑な塗膜が得られた。この塗膜を、耐おもり落下性試験で評価した結果、35cmであった。鉛筆硬度は、2Hであった。
【0117】
(比較例1)
DTMP4A(2.7g)、EO3TMPTA(0.9g)、HDODA(3.6g)、CD9053(0.9g)との混合物を得た後、実施例2のポリマー微粒子に代わる軟質成分として、Sartomer社製のガラス転移温度が20℃である、ウレタンアクリレートCN959(2.0g)を更に加えて、合計10gの混合物を得た。この混合物に対して、実施例2と同じ要領でメチルエチルケトン、Irgacure184と、Irgacure819を同様に加えて混合して光硬化性塗料組成物を作製した。
【0118】
この塗料組成物を実施例1で用いたものと同じ鋼板上に、バーコーター(#20)を用いて塗布後、同様の手順で硬化させ、1milの塗膜を形成した。
【0119】
この塗膜を、コニカルマンドレル法にて耐屈曲試験で評価した結果、25cmであった。鉛筆硬度は、2Hであった。
【0120】
(実施例2)
上記で得たU1−1(3.5g)、U1−2(0.95g)、U1−4(4.95g)、及びEO3TMPTA(0.3g)、HDODA(0.3g)、を混合し合計10gの混合物を得た。この混合物は、ポリマー微粒子B1を2.0g、DTMP4Aを3.0g、EO3TMPTAを1.0g、HDODAを4.0gを含んで成る混合物である。この混合物にメチルエチルケトン2g、光ラジカル重合開始材のIrgacure184(登録商標)を0.32g、Irgacure819(登録商標)を0.08を更に加えて混合し、ポリマー微粒子含有光硬化性塗料組成物を得た。
【0121】
この塗料組成物を200×100mm×0.6mm厚の冷間圧延鋼板(SPCC−SB、JIS G3141)上に、バーコーター(#20)を用いて塗布後、80℃にて2分間乾燥させた。これを、UV照射装置(ECS−301、アイグラフィクス社製)を用いて、120W/cmのメタルハライドランプで1000mJ/cm2の積算光量にて硬化させて、1mil(1milは1/1000インチ=25.4μm)の膜厚の塗膜を形成したところ、目視で表面平滑な塗膜が得られた。この塗膜を、耐おもり落下性試験で評価した結果、30cmであった。鉛筆硬度は、2Hであった。
【0122】
(比較例2)
DTMP4A(3.0g)、EO3TMPTA(1.0g)、HDODA(4.0g)との混合物を得た後、実施例2のポリマー微粒子に代わる成分として、Sartomer社製のガラス転移温度が20℃である、ウレタンアクリレートCN959(2.0g)を更に加えて、合計10gの混合物を得た。この混合物に対して、実施例2と同じ要領でメチルエチルケトン、Irgacure184と、Irgacure819を同様に加えて混合して光硬化性塗料組成物を作製した。
【0123】
この塗料組成物を実施例1で用いたものと同じ鋼板上に、バーコーター(#20)を用いて塗布後、同様の手順で硬化させ、1milの塗膜を形成した。
【0124】
この塗膜を、コニカルマンドレル法にて耐屈曲試験で評価した結果、15cm未満(15cmでも塗膜が割れる)であった。鉛筆硬度は、2Hであった。
【0125】
(実施例3)
上記で得たU1−3(2.13g)、U1−2(1.2g)、U1−4(4.67g)、及びPETA(1.1g)、CD9053(0.9g)を混合し合計10gの混合物を得た。この混合物は、ポリマー微粒子B1を2.0g、PETAを2.7g、EO3TMPTAを0.9g、HDODAを3.5g、CD9053を0.9g、それぞれ含んで成る混合物である。この混合物に、メチルエチルケトン2.0g、光ラジカル重合開始材のIrgacure184(登録商標)を0.32g、Irgacure819(登録商標)を0.08gを更に加えて混合し、ポリマー微粒子含有光硬化性塗料組成物を得た。
【0126】
この塗料組成物を200×100mm×0.6mm厚の冷間圧延鋼板(SPCC−SB、JIS G3141)上に、バーコーター(#20)を用いて塗布後、80℃にて2分間乾燥させた。これを、UV照射装置(ECS−301、アイグラフィクス社製)を用いて、120W/cmのメタルハライドランプで1000mJ/cm2の積算光量にて硬化させて、1mil(1milは1/1000インチ=25.4μm)の膜厚の塗膜を形成したところ、目視で表面平滑な塗膜が得られた。この塗膜を、耐おもり落下性試験で評価した結果、35cmであった。鉛筆硬度は、2Hであった。
【0127】
(比較例3−1)
PETAを2.7g、EO3TMPTAを0.9g、HDODAを3.5gと、CD9053を0.9gよりなる混合物を得た後、実施例3のポリマー微粒子の代わりにウレタンアクリレートCN959(Sartomer社製、Tg=20℃)を2.0g加えて、混合物を作成し合計10gの混合物を得た。更に実施例3と同じ要領で、メチルエチルケトン、Irgacure184、Irgacure819を加えて混合して光硬化性塗料組成物を作製した。
【0128】
この塗料組成物を実施例3で用いたものと同じ鋼板上に、バーコーター(#20)を用いて塗布後、同様の手順で硬化させ、1milの塗膜を形成した。
【0129】
この塗膜を、耐おもり落下性試験で評価した結果、25cmであった。鉛筆硬度は、2Hであった。
【0130】
(比較例3−2)
比較例3−1のCN959代わりに、ウレタンアクリレートCN964(Sartomer社製、Tg=−24℃)を2.0g加えた以外は、比較例3−1と同様に混合物を作成し、合計10gの混合物を得た。更に実施例3と同じ要領で、メチルエチルケトン、Irgacure184、Irgacure819を加えて混合して光硬化性塗料組成物を作製した。
【0131】
この塗料組成物を実施例3で用いたものと同じ鋼板上に、バーコーター(#20)を用いて塗布後、同様の手順で硬化させ、1milの塗膜を形成した。
【0132】
この塗膜を、耐おもり落下性試験で評価した結果、25cmであった。鉛筆硬度は、2Hであった。
【0133】
以上の実施例3、及び比較例3−1と3−2の結果から、ポリマー微粒子(B)を含む本発明の光硬化性塗料組成物(実施例3)は、ポリマー微粒子(B)を含まず従来技術として代表的なウレタンアクリレートオリゴマーを除いて同一の組成物(比較例3−1及び3−2)に比べて耐おもり落下性(靭性)に優れつつ、塗膜の硬度を損なっていないことが判る。
【0134】
(実施例4)
上記で得たU1−5(8.7g)、及びN−ビニルピロリドン(NVP)(1.4g)を混合し合計10.1gの混合物を得た。この混合物は、ポリマー微粒子D1を1.3g、DPEHAを7.4g、NVPを1.4g、それぞれ含んで成る混合物である。この混合物に、メチルエチルケトン2.0g、光ラジカル重合開始材のIrgacure184(登録商標)を0.35g、Irgacure819(登録商標)を0.085g、を更に加えて混合し、ポリマー微粒子含有光硬化性塗料組成物を得た。
【0135】
この塗料組成物を100×70mm×2.0mm厚のPMMA板(クリアー)上、及び100×70mm×75μm厚のPETフィルム(東レ製、ルミラー)上に、バーコーター(#4)を用いてそれぞれ塗布後、80℃にて2分間乾燥させた。これを、UV照射装置(ECS−301、アイグラフィクス社製)を用いて、120W/cmのメタルハライドランプで1000mJ/cm2の積算光量にて硬化させたところ、目視で表面平滑な7〜8μmの膜厚の塗膜が得られた。この塗膜の鉛筆硬度は、4H(PMMA板)、2H(PETフィルム)であった。
【0136】
(比較例4)
上記で得たU2−5(8.7g)、及びN−ビニルピロリドン(NVP)(1.4g)を混合し合計10.1gの混合物を得た。この混合物は、ポリマー微粒子D2を1.3g、DPEHAを7.4g、NVPを1.4g、それぞれ含んで成る混合物である。この混合物へ実施例4と同様に、メチルエチルケトン、Irgacure184、Irgacure819をそれぞれ加えて混合し、ポリマー微粒子含有光硬化性塗料組成物を得た。
【0137】
この塗料組成物を実施例4と同様に、PMMA板(クリアー)上、及びPETフィルム(東レ製、ルミラー)上に、に塗布後、乾燥、UV照射装置を用いて硬化させたところ、目視で表面平滑な7〜8μmの膜厚の塗膜が得られた。この塗膜の鉛筆硬度は、3H(PMMA板)、H(PETフィルム)であった。
【0138】
(実施例5)
上記で得たU3−5(8.7g)、及びN−ビニルピロリドン(NVP)(1.4g)を混合し合計10.1gの混合物を得た。この混合物は、ポリマー微粒子D3を1.3g、DPEHAを7.4g、NVPを1.4g、それぞれ含んで成る混合物である。この混合物に、メチルエチルケトン2.0g、光ラジカル重合開始材のIrgacure184(登録商標)を0.35g、Irgacure819(登録商標)を0.085g、を更に加えて混合し、ポリマー微粒子含有光硬化性塗料組成物を得た。
【0139】
この塗料組成物を100×70mm×2.0mm厚のPMMA板(クリアー)上に、バーコーター(#4)を用いてそれぞれ塗布後、80℃にて2分間乾燥させた。これを、UV照射装置(ECS−301、アイグラフィクス社製)を用いて、120W/cmのメタルハライドランプで1000mJ/cm2の積算光量にて硬化させたところ、目視で表面平滑な7〜8μmの膜厚の塗膜が得られた。この塗膜の鉛筆硬度は、5H(PMMA板)であった。
【0140】
以上の実施例4、実施例5、及び比較例4の結果から、コア層のガラス転移温度が本発明の用件を満たすポリマー微粒子(B)を含む、本発明の光硬化性塗料組成物(実施例4)は、コア層のガラス転移温度が0℃未満であり、本発明の用件を満たさないポリマー微粒子(B)を含んでなることを除いて同一の組成物(比較例4)に比べて、塗膜の硬度を高い状態に維持できていることが判る。