特許第5750251号(P5750251)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5750251
(24)【登録日】2015年5月22日
(45)【発行日】2015年7月15日
(54)【発明の名称】LNG気化設備
(51)【国際特許分類】
   F17C 9/02 20060101AFI20150625BHJP
【FI】
   F17C9/02
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2010-209924(P2010-209924)
(22)【出願日】2010年9月17日
(65)【公開番号】特開2012-63000(P2012-63000A)
(43)【公開日】2012年3月29日
【審査請求日】2013年9月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000004444
【氏名又は名称】JX日鉱日石エネルギー株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】502260937
【氏名又は名称】水島エルエヌジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100074332
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 昇
(72)【発明者】
【氏名】堀 英樹
(72)【発明者】
【氏名】宇野 廣一
(72)【発明者】
【氏名】落合 松弘
(72)【発明者】
【氏名】尾笹 恒夫
【審査官】 八木 誠
(56)【参考文献】
【文献】 特表2006−504049(JP,A)
【文献】 特開昭57−083798(JP,A)
【文献】 特開2004−301000(JP,A)
【文献】 特開平09−072496(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/136793(WO,A1)
【文献】 実開昭56−167709(JP,U)
【文献】 特開2010−001961(JP,A)
【文献】 特開昭54−072543(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F17C1/00−13/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の製造プロセスを実施するに当たって海水を取水し冷却水として用いると共に、該製造プロセスを実施するに当たって水蒸気が発生し得る所定の製造プラントが隣接するLNG気化設備であって、
海水との熱交換によりLNGを気化させて低圧ガスを生成するタイプの第一気化器を有する低圧系統と、
海水との熱交換によりLNGを気化させて高圧ガスを生成するタイプの第二気化器を有する高圧系統と、
水蒸気との熱交換によりLNGを気化させるタイプの予備の気化器を有する予備系統とを備え、
前記製造プラントの取水ラインから海水の少なくとも一部が前記低圧系統の第一気化器及び前記高圧系統の第二気化器における熱交換用の海水として供給される一方、前記製造プラントで発生した水蒸気が前記予備系統の気化器における熱交換用の水蒸気として供給され
常態において、前記低圧系統の第一気化器及び前記高圧系統の第二気化器のそれぞれにLNGが供給される一方、前記予備系統が前記低圧系統及び前記高圧系統から切り離されるとともに、前記予備系統に対するLNGの供給が停止され、
前記低圧系統及び前記高圧の系統うち、いずれか一方の系統が停止した場合、停止した前記いずれか一方の系統に前記予備系統が接続されるとともに、他方の系統、及び停止した前記いずれか一方の系統に接続された前記予備系統のそれぞれにLNGが供給されることを特徴とするLNG気化設備。
【請求項2】
前記低圧系統の第一気化器及び前記高圧系統の第二気化器の少なくともいずれか一方における熱交換後の海水を前記製造プラントの取水ラインに返送する請求項1に記載のLNG気化設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定の製造プロセスを実施するに当たって海水を取水し冷却水として用いると共に、該製造プロセスを実施するに当たって水蒸気が発生し得る所定の製造プラント(例えば、製油プラント、化学プラント、製鉄所、火力・原子力発電所)が隣接するLNG気化設備に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、二酸化炭素の増加による地球温暖化問題などに対し、地球規模での環境保全への取り組みの強化が求められている。また、国内では環境問題への取り組みと並行して、エネルギー産業の規制緩和が進む中、エネルギー供給元の選択肢が多様化している。そうした背景からクリーンなエネルギーであるLNGの需要は年々拡大し、発電用・都市ガス用をはじめ、産業用の燃料としても評価されてきている。
【0003】
そのため、既設のLNGプラントにおいてLNG気化設備を単に増設するだけでは需要に追いつかず、新たなLNGプラントを建設するための用地確保が早急の課題となってきている。一つの試みとして、製油プラントの用地の一部をLNGプラントの用地に代替し、既設の製造プラントにLNGプラントを併設するといった計画も出されている(例えば、特許文献1参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−301000号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、新たなLNGプラントを既設の製造プラントと独立して併設するとした場合、海水との熱交換によりLNGを気化させるタイプの気化器からなるLNG気化設備のLNGプラントであれば、LNG気化設備に対して海水を熱媒として供給するための海水取水設備、LNG気化設備で熱交換された海水を海に戻すための排水処理設備等も新たに設ける必要があり、また、水蒸気との熱交換によりLNGを気化させるタイプの気化器からなるLNG気化設備のLNGプラントであれば、LNG気化設備に対して水蒸気を熱媒として供給するための水蒸気発生設備等も新たに設ける必要があり、これら付帯設備の分の設置スペースも含めると、LNGプラントを建設するために多大な用地が必要となるばかりか、建設コストが高騰してしまう。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたもので、所定の製造プロセスを実施するに当たって海水を取水し冷却水として用いると共に、該製造プロセスを実施するに当たって水蒸気が発生し得る所定の製造プラントが隣接するLNG気化設備であって、海水との熱交換によりLNGを気化させて低圧ガスを生成するタイプの第一気化器を有する低圧系統と、海水との熱交換によりLNGを気化させて高圧ガスを生成するタイプの第二気化器を有する高圧系統と、水蒸気との熱交換によりLNGを気化させるタイプの予備の気化器を有する予備系統とを備え、前記製造プラントの取水ラインから海水の少なくとも一部が前記低圧系統の第一気化器及び前記高圧系統の第二気化器における熱交換用の海水として供給される一方、前記製造プラントで発生した水蒸気が前記予備系統の気化器における熱交換用の水蒸気として供給され、常態において、前記低圧系統の第一気化器及び前記高圧系統の第二気化器のそれぞれにLNGが供給される一方、前記予備系統が前記低圧系統及び前記高圧系統から切り離されるとともに、前記予備系統に対するLNGの供給が停止され、前記低圧系統及び前記高圧系統のうち、いずれか一方の系統が停止した場合、停止した前記いずれか一方の系統に前記予備系統が接続されるとともに、他方の系統、及び停止した前記いずれか一方の系統に接続された前記予備系統のそれぞれにLNGが供給されることを特徴とする。
【0007】
上記構成によるLNG気化設備は、主系統の気化器へのLNGの供給を停止し、該LNGを予備系統の気化器に供給することにより、主系統から予備系統への切り替えを行うもので、主系統がダウンしても、予備系統を用いてガスを供給先に安定供給することができる。詳しく言えば、通常は、製造プラントの海水取水設備にて取水された海水の少なくとも一部が取水ラインからLNG気化設備に供給され、海水との熱交換によりLNGを気化し、パイプライン等を介して火力発電所等、LNGを燃料とする場所に供給するのであるが、予備系統へ切り替えられると、製造プラントからLNG気化設備に供給された水蒸気との熱交換によりLNGを気化し、供給する。
【0008】
LNG気化設備に対して海水を熱媒として供給するための海水取水設備及びLNG気化設備に対して水蒸気を熱媒として供給するための水蒸気発生設備等の付帯設備は、製造プラントのものを利用することで、LNG気化設備のために別途設ける必要はない。
【0009】
ここで、本発明は、前記低圧系統の第一気化器及び前記高圧系統の第二気化器の少なくともいずれか一方における熱交換後の海水を前記製造プラントの取水ラインに返送する構成を採用するのがより好ましい。この場合、排水処理設備等の付帯設備も、製造プラントのものを利用することで、LNG気化設備のために別途設ける必要はない。
【0010】
しかも、上記各種付帯設備を製造プラントとLNG気化設備とで供用することにより、それぞれが独立して各付帯設備を備える場合における総排水量よりも少ない排水量となる。言い換えれば、LNG気化設備が製造プラントの付帯設備を利用することにより、製造プラントにLNG気化設備を併設する場合であっても、製造プラント単独の場合による排水量と同じになる。
【0011】
また、熱交換後の海水は、LNGの冷熱によって水温が取水時よりも低下した状態となって、製造プラントの取水ラインに返送され、この冷却された海水が取水ラインに返送されることにより、取水ラインを流れる海水全体の水温が下がり、この海水が製造プラントの冷却水として用いられることとなる。
【発明の効果】
【0012】
以上の如く、本発明は、LNG気化設備が製造プラントの付帯設備を利用することにより、LNG気化設備のための新たな付帯設備が不要となり、その分、LNG気化設備の建設用地が少なくて済み、また、建設コストも低減することができる。これは、既設の製造プラントの用地の一部をLNG気化設備の用地に代替し、既設の製造プラントにLNG気化設備を併設する場合に限らず、製造プラントとLNG気化設備の両方を新たに建設する場合であっても同様である。
【0013】
また、本発明は、主系統と予備系統とで気化器の熱媒を換えているため、次のようなメリットがある。例えば、主系統の気化器と同様、予備系統の気化器も海水との熱交換によりLNGを気化させるタイプの気化器とすれば、主系統の非常時に切り替えられる予備系統の気化器を即座に稼働させることができるようにするために、通常時でも常に予備系統の気化器に海水を通水させておく必要がある。海水が通水されていない状態でLNGを気化器内に流すと、気化器内で静水している海水が凍ってその体積膨張により気化器が破裂するおそれがあるからであるが、上記必要に答えようとすれば、その分だけ設備動力を無駄に消費し、ランニングコストが悪化してしまう。しかしながら、上述の如く、予備系統の気化器は水蒸気との熱交換によりLNGを気化させるタイプの気化器であるため、気化器をいつでも稼働させることができるようにするために要求される水蒸気の供給を、製造プラントから簡単且つ安価に受けることができる。
【0014】
また、本発明は、前記主系統の気化器における熱交換後の海水を前記製造プラントの取水ラインに返送する構成を採用することにより、製造プラント単独の場合による排水量と同じとなるため、次のようなメリットがある。即ち、都道府県の条例や地域特有の条例で取(排)水の規制が設けられているところもあるが、本発明によれば、製造プラントにLNG気化設備を併設することによっても、取(排)水量が増えることはないので、既設の製造プラントに併設してLNG気化設備を新たに建設する場合、取(排)水の規制に抵触することもなく、場所を問わず、LNG気化設備の建設が認可されやすい。
【0015】
あるいは、例えば、いわゆる瀬戸内法によれば、一日当たりの最大排水量が50立方メートル以上となる事業所において排水量を変更する場合、建設に先立って環境アセスメントを実施しなければならないこととなっているが、本発明によれば、既設の製造プラントに併設してLNG気化設備を新たに建設する場合であっても、総排水量が増加することはないため、瀬戸内法で求められる環境アセスメントも不要となり、瀬戸内法の適用範囲内においてLNGプラントを建設する場合の建設計画の短期化を図ることができる。
【0016】
また、LNGの冷熱を利用することにより、製造プラントに供給される冷却水の温度が低くなるので、製造プラントにおける冷却効率が高められ、製造能力増強に繋がるばかりでなく、排水の温度が高くならないので、環境にも望ましい。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本実施形態に係るLNGプラントの概念図を示す。
図2】本実施形態に係るLNGプラントと製油プラントとの複合プラントの概念図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係るLNG気化設備の一実施形態を含むLNGプラントについて図1に基づき説明する。
【0019】
本実施形態に係るLNGプラントは、LNG船1に積み込まれたLNGを受入ライン2を介してLNGタンク3に貯蔵し、該LNGタンク3内のLNGを第一ポンプ4で供給ライン5を介してLNG気化設備に送り、ここでLNGを熱交換により気化させて各供給先にLNGガスをパイプラインで送ったり、あるいは、LNGを気化させずに液体のままローリー出荷するプラントである。
【0020】
供給ライン5は、低圧ガス(例えば約1MPa)を生成するための第一供給ライン5aと、高圧ガス(例えば約5MPa)を生成するための第二供給ライン5bと、上記ローリー出荷のための第三供給ライン5cとに分岐される。
【0021】
第一供給ライン5aは、調節弁6を介して第一気化器7に接続され、該第一気化器7で生成された低圧ガスは、第一パイプライン8を介して供給先に送られる。一方、第二供給ライン5bは、第一ポンプ4で昇圧されたLNGをさらに昇圧するための第二ポンプ9及び調節弁10を介して第二気化器11に接続され、該第二気化器11で生成された高圧ガスは、第二パイプライン12を介して供給先に送られる。
【0022】
また、第一供給ライン5aからは第一予備供給ライン5a’が分岐され、該第一予備供給ライン5a’は、第一切換弁13、逆止弁14及び調節弁15を介して予備気化器16に接続され、該予備気化器16で生成された低圧ガスは、第二切換弁18を有する第一中継ライン17を介して前記第一パイプライン8に送られる。一方、第二供給ライン5bであって前記第二ポンプ9よりも下流側位置からは第二予備供給ライン5b’が分岐され、該第二予備供給ライン5b’は、第三切換弁19及び前記調節弁15を介して前記予備気化器16に接続され、該予備気化器16で生成された高圧ガスは、逆止弁21及び第四切換弁22を有する第二中継ライン20を介して前記第二パイプライン12に送られる。
【0023】
そして、第一気化器7及び第二気化器11には、海水との熱交換によりLNGを気化させる温水式気化器、より詳しくは、海水との熱交換により中間媒体(プロパン、ブタン、フロン等)を蒸発させ、この蒸気中に配置される配管内のLNGを気化させる中間媒体式気化器が用いられる。この気化器は、オープンラック式気化器に比べて必要な海水量が少なくて済むため、配管系が小さく、全体的に小型であり、省スペース化を図ることができるという特徴がある。
【0024】
一方、予備気化器16には、蒸気との熱交換によりLNGを気化させる温水式気化器、より詳しくは、水蒸気をスチームエジェクタを介して水中に供給し、この加熱された温水中に配置される配管内のLNGを気化させるスチームエジェクタ式気化器が用いられる。この気化器は、スチームエジェクタより吸引される空気が温水を激しく撹拌することにより、高い熱交換性能を有するという特徴がある。
【0025】
LNGプラントは、以上のように構成されており、第一供給ライン5a及び第一パイプライン8、あるいは第二供給ライン5b及び第二パイプライン12が本発明に係る「主系統」に相当し、第一予備供給ライン5a’、第二予備供給ライン5b’、第一中継ライン17及び第二中継ライン20が本発明に係る「予備系統」に相当する。
【0026】
通常は、第一〜第四切換弁13,18,19,22が閉じられることにより、LNGが第一気化器7及び第二気化器11にのみ供給される。しかも、第一気化器7及び第二気化器11のそれぞれ上流側、即ち第一供給ライン5a及び第二供給ライン5bは、第一予備供給ライン5a’及び第二予備供給ライン5b’を介して接続されているが、第一切換弁13及び第三切換弁19が閉じられているので、第二ポンプ9で昇圧されたLNGが低圧系統に流入することはなく、また、第一気化器7及び第二気化器11のそれぞれ下流側、即ち第一パイプライン8及び第二パイプライン12は、第一中継ライン17及び第二中継ライン20を介して接続されているが、第二切換弁18及び第四切換弁22が閉じられているので、高圧ガスが低圧系統に流入することはない。その結果、第一気化器7では低圧ガスが、第二気化器11では高圧ガスが、それぞれ生成される。
【0027】
そして、点検、故障等の理由により第一気化器7が停止した場合は、調節弁6を閉じると共に、第一切換弁13及び第二切換弁18を開くことにより、LNGが予備気化器16及び第二気化器11にのみ供給される。しかも、予備気化器16及び第二気化器11のそれぞれ上流側、即ち、第一予備供給ライン5a’及び第二供給ライン5bは、第二予備供給ライン5b’を介して接続されているが、第三切換弁19が閉じられているので、第二ポンプ9で昇圧されたLNGが低圧系統に流入することはなく、また、予備気化器16及び第二気化器11のそれぞれ下流側、即ち、第一中継ライン17及び第二パイプライン12は、第二中継ライン20を介して接続されているが、第四切換弁22が閉じられているので、高圧ガスが低圧系統に流入することはない。その結果、予備気化器16では低圧ガスが、第二気化器11では高圧ガスが、それぞれ生成される。
【0028】
一方、点検、故障等の理由により第二気化器11が停止した場合は、上記通常状態から、調節弁10を閉じると共に、第三切換弁19及び第四切換弁22を開くことにより、LNGが第一気化器7及び予備気化器16にのみ供給される。しかも、第一気化器7及び予備気化器16のそれぞれ上流側、即ち、第一供給ライン5a及び第二予備供給ライン5b’は、第一予備供給ライン5a’を介して接続されているが、第一切換弁13が閉じられているので、第二ポンプ9で昇圧されたLNGが低圧系統に流入することはなく、また、第一気化器7及び予備気化器16のそれぞれ下流側、即ち、第一パイプライン8及び第二中継ライン20は、第一中継ライン17を介して接続されているが、第二切換弁18が閉じられているので、高圧ガスが低圧系統に流入することはない。その結果、第一気化器7では低圧ガスが、予備気化器16では高圧ガスが、それぞれ生成される。
【0029】
このように、本実施形態に係るLNGプラントによれば、切換弁13,18,19,22の適宜な制御により、低圧系統と高圧系統とで予備気化器を供用することができ、各系統毎に予備の気化器を設ける場合に比べて気化器の台数が減る分、LNGプラントの建設用地が少なくて済み、また、建設コストも低減することができる。
【0030】
尚、変則的な使用方法であるが、上記通常状態から第一切換弁13及び第二切換弁18を開くことにより、LNGが予備気化器16にも供給されるため、低圧ガスを予備気化器16の分だけ増産することができる一方、上記通常状態から第三切換弁19及び第四切換弁22を開くことにより、第二ポンプ9により昇圧されたLNGが予備気化器16にも供給されるため、高圧ガスを予備気化器16の分だけ増産することができる。
【0031】
ところで、本実施形態に係るLNGプラントは、昨今のLNGの需要増大に伴って製油所の用地の一部をLNGプラントの用地に代替し、既設の製油所に併設されて複合プラントの形態を採るものである。それを図2に示す。
【0032】
製油所Aは、原油タンクの他、常圧蒸留装置、減圧蒸留装置、ナフサ水素化脱硫装置、接触改質装置、脱ベンゼン装置、灯油水素化脱硫装置、軽油深度水素化脱硫装置、重質軽油水素化分解装置、重油直接脱硫装置、重油流動接触分解装置等の各種製油設備30が設置されている。尚、これらの設備は周知であるので詳細な説明は割愛し、また、製油所の規模等によっても設備に若干の変動はあることを述べておく。
【0033】
各種製油設備は、製油プロセスを実施するに当たって冷却が必要となるものがあるので、それらについては、海水を取水し冷却水として用いるようになっている。海水は、取水口31から海水取水設備(図示しない)によって取水され、取水ライン32を通って各種製油設備30に供給され、そして、冷却系統を通って熱交換された海水は、放水(排水)ライン33を通って放水(排水)口34から海に戻される。
【0034】
そして、LNGプラントBの第一及び第二気化器7,11で用いられる海水は、製油所Aの取水ライン32から供給を受けるようになっている。即ち、取水ライン32からは、一部の海水が第一及び第二気化器7,11に流れるよう供給ライン35が分岐されている。また、熱交換後の海水は、取水ライン32へ戻されるようになっている。即ち、第一及び第二気化器7,11からの熱交換後の海水が返送ライン36を通って取水ライン32に返送されるようになっている。
【0035】
返送ライン36は、供給ライン35よりも取水ライン32の下流側に接続されており、そのため、供給ライン35を通って第一及び第二気化器7,11に至る海水は、LNGの冷熱により冷却され、この冷却された海水が返送ライン36を通って取水ライン32に流れ込み、その結果、取水ライン32から各種製油設備30に至る海水全体の水温が下がり、この海水が各種製油設備30の冷却水として用いられることとなって、各種製油設備30における冷却効率が高められ、設備能力の増強に繋がる。
【0036】
また、各種製油設備30内の冷却系統を通って熱交換された海水は、入熱によって水温が冷却水供給時よりも上昇するが、もともとLNGの冷熱によって海水が冷却されているため、海水を第一及び第二気化器7,11に通さない場合よりも温度は低く抑えられる。その結果、冷却系統を通って熱交換される海水温度(即ち、排水温度)を引き下げることができ、温排水に対する有効な環境対策となる。
【0037】
一方、LNGプラントBの予備気化器16で用いられる水蒸気は、製油プロセスを実施するに当たって各種製油設備30から発生する水蒸気を利用するようになっている。即ち、各種製油設備30からは、発生した水蒸気が予備気化器16に流れるよう供給ライン37が配管されている。
【0038】
このように、製油所Aの用地の一部をLNGプラントBの用地に代替し、既設の製油所AにLNGプラントBを併設する場合、LNGプラントBが既設の製油所Aの海水取水設備、排水処理設備、あるいは蒸気発生設備等の付帯設備を供用できるので、予備気化器16の供用と合わせて、さらにプラントBの建設用地を少なく済ませることができ、且つさらに建設コストを低減することができる。
【0039】
また、少なくとも予備の気化器としてスチームエジェクタ式気化器を用いているため、次のようなメリットがある。例えば、主系統の気化器と同様、予備系統の気化器も海水との熱交換によりLNGを気化させるタイプの気化器とすれば、主系統の非常時に切り替えられる予備系統の気化器を即座に稼働させることができるようにするために、通常時でも常に予備系統の気化器に海水を通水させておく必要がある。海水が通水されていない状態でLNGを気化器内に流すと、気化器内で静水している海水が凍ってその体積膨張により気化器が破裂するおそれがあるからであるが、上記必要に答えようとすれば、その分だけ設備動力を無駄に消費し、ランニングコストが悪化してしまう。しかしながら、上述の如く、予備系統の気化器は水蒸気との熱交換によりLNGを気化させるタイプの気化器であるので、気化器をいつでも稼働させることができるようにするために要求される水蒸気の供給を、製油所Aから簡単且つ安価に受けることができる。
【0040】
尚、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0041】
例えば、上記実施形態においては、LNGを一旦LNGタンク3に貯蔵し、ここからLNGを各気化器7,11に供給するようにしているが、例えばLNG船から直接的に供給するようにしてもよい。
【0042】
また、上記実施形態においては、一本を供給ライン5を第一供給ライン5aと第二供給ライン5bとに分けてLNGを供給するようにしているが、第一供給ライン5aと第二供給ライン5bとは互いに独立したラインであってもよい。
【0043】
また、上記実施形態においては、製油所Aとの組み合わせによる複合プラントについて説明したが、要は、所定の製造プロセスを実施するに当たって海水を取水し冷却水として用いると共に、製造プロセスにおいて水蒸気が発生し得る所定の製造プラント(例えば、化学プラント、製鉄所、火力・原子力発電所)であればよく、製油所(製油プラント)には限定されない。
【0044】
また、上記実施形態においては、第一又は第二気化器7,11から予備気化器16への運転切り替えの契機として、第一又は第二気化器7,11の点検、故障等を挙げているが、取水系統の不具合によって第一又は第二気化器7,11に海水が供給されなくなるような場合にも適用され得る。
【符号の説明】
【0045】
A…製油所(製造プラント)、B…LNGプラント、3…LNGタンク、4…第一ポンプ、5…供給ライン、5a…第一供給ライン(低圧ガス生成用供給ライン)、5a’…第一予備供給ライン(低圧ガス生成用予備供給ライン)、5b…第二供給ライン(高圧ガス生成用供給ライン)、5b’…第二予備供給ライン(高圧ガス生成用予備供給ライン)、5c…第三供給ライン(LNG供給ライン)、7…第一気化器(低圧ガス生成用気化器)、8…第一パイプライン(低圧ガス移送用パイプライン)、9…第二ポンプ、11…第二気化器(高圧ガス生成用気化器)、12…第二パイプライン(高圧ガス移送用パイプライン)、13…第一切換弁、14…逆止弁、16…予備気化器、17…第一中継ライン、18…第二切換弁、19…第三切換弁、20…第二中継ライン、21…逆止弁、22…第四切換弁、30…製油設備、32…取水ライン、35供給ライン(海水供給ライン)、36…返送ライン(海水返送ライン)、37…供給ライン(水蒸気供給ライン)
図1
図2