(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記炭化水素溶媒(E)が、脂肪族炭化水素溶媒および脂環族炭化水素溶媒から選ばれる少なくとも1種の炭化水素溶媒であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のオレフィン重合体の製造方法。
溶液重合で使用される反応溶媒が、脂肪族炭化水素溶媒および脂環族炭化水素溶媒から選ばれる少なくとも1種の炭化水素溶媒であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のオレフィン重合体の製造方法。
前記オレフィン重合用触媒が、前記成分(A)〜(D)を前記炭化水素溶媒(E)と混合してなる混合液から不溶分を除いて得られる上澄み液であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のオレフィン重合体の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明のオレフィン重合体の製造方法は、特定のオレフィン重合用触媒を用いて、オレフィンを溶液重合する工程を有する。以下、オレフィン重合用触媒について説明した後、本発明のオレフィン重合体の製造方法について説明する。
【0021】
〔オレフィン重合用触媒〕
本発明で用いられるオレフィン重合用触媒は、例えば、メタロセン化合物(A)、前記メタロセン化合物(A)と反応してイオン対を形成する特定の化合物(B)、特定の化合物(C)およびAl−H結合を有するアルミニウム化合物(D)を炭化水素溶媒(E)と混合して得られる。以下、前記成分をそれぞれ成分(A)〜(D)ともいう。なお、オレフィン重合用触媒には、本発明の目的を損なわない範囲で前記成分(A)〜(D)以外の添加剤が含まれていてもよい。
【0022】
オレフィン重合用触媒の各成分の脂肪族炭化水素溶媒等への溶解性として、成分(A)、(C)および(D)は可溶であり、成分(B)は不溶であることが多い。オレフィン重合用触媒の調製に成分(D)を用いることなく、且つ脂肪族炭化水素溶媒等を用いる場合、成分(B)が脂肪族炭化水素溶媒等に不溶であるため、成分(A)〜(C)各成分の反応が進行せず、触媒調製液中で活性種が形成されにくいと考えられる。
【0023】
これに対して本発明では、オレフィン重合用触媒の調製に成分(D)を用いることにより、成分(A)〜(C)各成分の反応による活性種の形成が良好に進み、しかも当該活性種の脂肪族炭化水素溶媒等に対する溶解性も向上していると考えられる。
【0024】
この理由は定かではないが、以下のように推定される。
成分(A)、成分(B)および成分(C)からオレフィン重合用触媒(活性種)が形成される反応は、例えば成分(A)としてビスシクロペンタジエニルジルコニウムジクロリド(Cp
2ZrCl
2)、成分(B)としてN,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート([PhNMe
2H]
+[B(C
6F
5)
4]
-)、成分(C)としてトリイソブチルアルミニウム(AliBu
3)を用いる場合、以下に示す反応機構で進行すると考えられている。
【0025】
[数1]
Cp
2ZrCl
2+AliBu
3→Cp
2ZriBuCl+iBu
2AlCl …(i)
Cp
2ZriBuCl+AliBu
3→Cp
2ZriBu
2+iBu
2AlCl …(ii)
Cp
2ZriBu
2+[PhNMe
2H]
+[B(C
6F
5)
4]
-
→[Cp
2ZriBu]
+[B(C
6F
5)
4]
-+PhNMe
2+iBu−H …(iii)
【0026】
通常、反応(i)〜(iii)は芳香族炭化水素溶媒中では進行する。
しかしながら、脂肪族炭化水素溶媒および/または脂環族炭化水素溶媒(以下、これらの溶媒を「溶媒A」ともいう。)にはN,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートがほとんど溶解しないため、反応(iii)は当該溶媒A中では進行し難いと考えられる。
【0027】
ここで反応(i)〜(iii)の系に、Al−H結合を有するアルミニウム化合物(D)、例えば立体障害の低いルイス酸であるジイソブチルアルミニウムハイドライド(iBu
2AlH)を共存させると、iBu
2AlHが[PhNMe
2H]
+[B(C
6F
5)
4]
-の窒素原子部分と相互作用して下記式(iv)のような平衡関係をとることで、[PhNMe
2H]
+[B(C
6F
5)
4]
-が活性化したり、その一部が上記溶媒Aに溶解したりするため、反応(iii)が進行しやすくなると考えられる。
【0028】
[数2]
([PhNMe
2H]
+[B(C
6F
5)
4]
-)
n+iBu
2AlH
⇔([PhNMe
2H]
+[B(C
6F
5)
4]
-)
n-1
+[PhNMe
2H]
+[B(C
6F
5)
4]
-・iBu
2AlH …(iv)
【0029】
ここで、([PhNMe
2H]
+[B(C
6F
5)
4]
-)
nは上記溶媒Aに不溶(反応性が低い)であり、([PhNMe
2H]
+[B(C
6F
5)
4]
-)
n-1は上記溶媒Aに不溶(反応性が低い)であり、[PhNMe
2H]
+[B(C
6F
5)
4]
-・iBu
2AlHはN,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートとジイソブチルアルミニウムハイドライドとの相互作用物であって、当該相互作用物は活性化していたり、その一部が上記溶媒Aに溶解(反応性が高い)したりする、と考えられる。
【0030】
なお、成分(D)をオレフィン重合用触媒(活性種)の形成過程に共存させることにより、上記式(iv)のような平衡関係が構築される理由は定かではないが、以下の理由が考えられる。
【0031】
Al−H結合を有するアルキルアルミニウム化合物は電子不足化合物であり、二量体構造をとり易いため、ジイソブチルアルミニウムハイドライドは下記式(a)のような二量体構造をとっていると考えられる。すなわち、ジイソブチルアルミニウムハイドライドは他分子と相互作用することが可能であると考えられる。
【0032】
これに対して、アルキルアルミニウム化合物でもAl−H結合を有しないトリイソブチルアルミニウム等は立体障害が大きいため、トリイソブチルアルミニウムは下記式(b)のような単量体で存在していると考えられる。すなわち、トリイソブチルアルミニウムは他分子と相互作用することが難しいと考えられる。
【0034】
【化6】
したがって、ジイソブチルアルミニウムハイドライドは上記式(iv)のような平衡関係をとることができると推定される。一方、トリイソブチルアルミニウムは上記式(iv)のような平衡関係をとらないか、あるいはトリイソブチルアルミニウムではジイソブチルアルミニウムハイドライドと比べて平衡が極端に原料系に偏っていると推定される。
【0035】
このように本発明では、オレフィン重合用触媒の調製に脂肪族炭化水素溶媒等の芳香族炭化水素溶媒以外の溶媒、特に脂肪族炭化水素溶媒や脂環族炭化水素溶媒を用いた場合にも、良好な触媒活性を有するオレフィン重合用触媒が形成されると考えられる。また、上記オレフィン重合用触媒を用いることにより、触媒が均一に分布した反応場でオレフィンの重合が行えるため、良好なオレフィン重合活性を有するオレフィン重合体の製造方法を提供できる。
【0036】
特に本発明によれば、トルエン等に代表される芳香族炭化水素溶媒を用いることなくオレフィン重合用触媒の均一調製液が得られ、重合プロセス内への芳香族炭化水素溶媒の混入を回避できるため、芳香族炭化水素溶媒が残存しないオレフィン重合体を高収率で得ることができる。
【0037】
〈メタロセン化合物(A)〉
成分(A)は、一般式[A1]で表される化合物(非架橋型メタロセン化合物)および一般式[A2]で表される化合物(架橋型メタロセン化合物)から選ばれる少なくとも1種のメタロセン化合物である。
【0039】
【化8】
式[A1]および[A2]中、Mは周期表第4族または第5族の原子を示す。Mの具体例としては、チタン原子、ジルコニウム原子、ハフニウム原子、バナジウム原子、ニオブ原子、タンタル原子が挙げられ、好ましくはチタン原子、ジルコニウム原子、ハフニウム原子が挙げられる。
【0040】
式[A1]および[A2]中、Qはハロゲン原子、炭化水素基、ハロゲン化炭化水素基(すなわち、前記炭化水素基が有する少なくとも一つの水素原子がハロゲン原子で置換された基)、中性の共役もしくは非共役ジエン、アニオン配位子または孤立電子対で配位可能な中性配位子を示す。
【0041】
ハロゲン原子としては、例えば、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素が挙げられる。
炭化水素基としては、例えば、炭素原子数1〜30、好ましくは1〜20、更に好ましくは1〜10の直鎖状または分岐状の脂肪族炭化水素基;炭素原子数3〜30、好ましくは3〜20、更に好ましくは3〜10の脂環族炭化水素基;炭素原子数6〜30、好ましくは6〜20、更に好ましくは6〜10の芳香族炭化水素基が挙げられる。
【0042】
脂肪族炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、イソプロピル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、ネオペンチル基、1,1−ジメチルプロピル基、1,1−ジエチルプロピル基、1−エチル−1−メチルプロピル基、1,1,2,2−テトラメチルプロピル基、1,1−ジメチルブチル基、1,1,3−トリメチルブチル基などの炭素原子数1〜30、好ましくは1〜20、更に好ましくは1〜10の直鎖状または分岐状のアルキル基;ビニル基、アリル基、イソプロペニル基などの炭素原子数2〜30、好ましくは2〜20、更に好ましくは2〜10の直鎖状または分岐状のアルケニル基;エチニル基、プロパルギル基などの炭素原子数2〜30、好ましくは2〜20、更に好ましくは2〜10の直鎖状または分岐状のアルキニル基が挙げられる。
【0043】
脂環族炭化水素基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、1−メチル−1−シクロヘキシル基、アダマンチル基などの炭素原子数3〜30、好ましくは3〜20、更に好ましくは3〜10の環状飽和炭化水素基;シクロペンタジエニル基、インデニル基、フルオレニル基などの炭素原子数5〜30の環状不飽和炭化水素基が挙げられる。
【0044】
芳香族炭化水素基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、ターフェニル基、フェナントリル基、アントラセニル基などの炭素原子数6〜30、好ましくは6〜20、更に好ましくは6〜10の非置換アリール基;トリル基、ジメチルフェニル基、イソプロピルフェニル基、t−ブチルフェニル基、ジ−t−ブチルフェニル基などのアルキル基置換アリール基;などのアリール基が挙げられる。
【0045】
炭化水素基は、少なくとも一つの水素原子が他の炭化水素基で置換されていてもよい。少なくとも一つの水素原子が他の炭化水素基で置換された炭化水素基としては、例えば、ベンジル基、クミル基などのアリール基置換アルキル基、シクロヘキシルメチル基などの環状飽和炭化水素基置換アルキル基が挙げられる。
【0046】
ハロゲン化炭化水素基としては、例えば、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロフェニル基、クロロフェニル基などの炭素原子数1〜30、好ましくは1〜20、更に好ましくは1〜10のハロゲン化炭化水素基が挙げられる。
【0047】
中性の共役または非共役ジエンとしては、例えば、炭素原子数4〜20の中性の共役または非共役ジエンが挙げられる。具体的には、s−シス−またはs−トランス−η4−1,3−ブタジエン、s−シス−またはs−トランス−η4−1,4−ジフェニル−1,3−ブタジエン、s−シス−またはs−トランス−η4−3−メチル−1,3−ペンタジエン、s−シス−またはs−トランス−η4−1,4−ジベンジル−1,3−ブタジエン、s−シス−またはs−トランス−η4−2,4−ヘキサジエン、s−シス−またはs−トランス−η4−1,3−ペンタジエン、s−シス−またはs−トランス−η4−1,4−ジトリル−1,3−ブタジエン、s−シス−またはs−トランス−η4−1,4−ビス(トリメチルシリル)−1,3−ブタジエンが挙げられる。
【0048】
アニオン配位子としては、例えば、メトキシ、tert−ブトキシなどのアルコキシ基;フェノキシなどのアリーロキシ基;アセテート、ベンゾエートなどのカルボキシレート基;メシレート、トシレートなどのスルホネート基が挙げられる。
【0049】
孤立電子対で配位可能な中性配位子としては、例えば、トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、ジフェニルメチルホスフィンなどの有機リン化合物;テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジエチルエーテル、1,2−ジメトキシエタンなどのエーテル類が挙げられる。
【0050】
式[A1]および[A2]中、jは1〜4の整数、好ましくは2〜4の整数、更に好ましくは2または3を示す。jが2以上の整数の場合は複数あるQはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。
【0051】
式[A1]および[A2]中、Cp
1およびCp
2は、互いに同一でも異なっていてもよく、Mと共にサンドイッチ構造を形成することができるシクロペンタジエニル基または置換シクロペンタジエニル基を示す。置換シクロペンタジエニル基とは、シクロペンタジエニル基が有する少なくとも1つの水素原子が置換基で置換された基である。
【0052】
置換シクロペンタジエニル基における置換基としては、例えば、炭化水素基(好ましくは炭素原子数1〜20の炭化水素基、以下「炭化水素基(f1)」として参照することがある。)またはケイ素含有基(好ましくは炭素原子数1〜20のケイ素含有基、以下「ケイ素含有基(f2)」として参照することがある。)が挙げられる。その他、置換シクロペンタジエニル基における置換基としては、ハロゲン化炭化水素基、酸素含有基、窒素含有基などのヘテロ原子含有基(ケイ素含有基(f2)を除く)を挙げることもできる。
【0053】
炭化水素基(f1)としては、好ましくは炭素原子数1〜20の炭化水素基であり、例えば、直鎖状または分岐状の炭化水素基(例:アルキル基、アルケニル基、アルキニル基)、環状飽和炭化水素基(例:シクロアルキル基)、環状不飽和炭化水素基(例:アリール基)が挙げられる。炭化水素基(f1)としては、前記例示の基のうち互いに隣接する炭素原子に結合した任意の二つの水素原子が同時に置換されて脂環または芳香環を形成している基も含む。
【0054】
炭化水素基(f1)としては、具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デカニル基、アリル(allyl)基などの直鎖状の脂肪族炭化水素基;イソプロピル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、アミル基、3−メチルペンチル基、ネオペンチル基、1,1−ジエチルプロピル基、1,1−ジメチルブチル基、1−メチル−1−プロピルブチル基、1,1−プロピルブチル基、1,1−ジメチル−2−メチルプロピル基、1−メチル−1−イソプロピル−2−メチルプロピル基などの分岐状の脂肪族炭化水素基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、ノルボルニル基、アダマンチル基などの環状飽和炭化水素基;フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、フェナントリル基、アントラセニル基などの環状不飽和炭化水素基およびこれらの核アルキル置換体;ベンジル基、クミル基などの、飽和炭化水素基が有する少なくとも1つの水素原子がアリール基で置換された基が挙げられる。
【0055】
ケイ素含有基(f2)としては、好ましくは炭素原子数1〜20のケイ素含有基であり、例えば、シクロペンタジエニル基の環炭素にケイ素原子が直接共有結合している基が挙げられ、具体的には、アルキルシリル基(例:トリメチルシリル基)、アリールシリル基(例:トリフェニルシリル基)が挙げられる。
【0056】
ヘテロ原子含有基(ケイ素含有基(f2)を除く)としては、具体的には、メトキシ基、エトキシ基、フェノキシ基、N−メチルアミノ基、トリフルオロメチル基、トリブロモメチル基、ペンタフルオロエチル基、ペンタフルオロフェニル基が挙げられる。
【0057】
炭化水素基(f1)の中でも、炭素原子数1〜20の直鎖状または分岐状の脂肪族炭化水素基、具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ヘキシル基、イソプロピル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、ネオペンチル基などが好適な例として挙げられる。
【0058】
置換シクロペンタジエニル基は、インデニル基、フルオレニル基、アズレニル基およびこれらが有する一つ以上の水素原子が上記炭化水素基で置換された基も包含し、インデニル基、フルオレニル基、アズレニル基の場合はシクロペンタジエニル基に縮合する不飽和環の二重結合の一部または全部が水添されていてもよい。
【0059】
式[A2]中、Yは炭素原子数1〜30の2価の炭化水素基、炭素原子数1〜20の2価のハロゲン化炭化水素基、2価のケイ素含有基、2価のゲルマニウム含有基、2価のスズ含有基、−O−、−CO−、−S−、−SO−、−SO
2−、−Ge−、−Sn(スズ)−、−NR
a−、−P(R
a)−、−P(O)(R
a)−、−BR
a−または−AlR
a−を示す。ただし、R
aは炭素原子数1〜20の炭化水素基、炭素原子数1〜20のハロゲン化炭化水素基、水素原子、ハロゲン原子または窒素原子に炭素原子数1〜20の炭化水素基が1個または2個結合した窒素化合物残基(−NRHまたは−NR
2;Rは炭素原子数1〜20の炭化水素基)である。
【0060】
メタロセン化合物(A)としては、一般式[A2]で表される化合物が好ましく、国際公開第01/27124号パンフレットに開示されているような、一般式(I)で表される架橋型メタロセン化合物(以下「架橋型メタロセン化合物(I)」ともいう。)が更に好ましい。
【0061】
【化9】
架橋型メタロセン化合物(I)は、構造上、次の特徴[m1]〜[m3]を備える。
[m1]二つの配位子のうち、一つは置換基を有していてもよいシクロペンタジエニル基であり、他の一つは置換基を有するフルオレニル基(以下「置換フルオレニル基」ともいう。)である。
[m2]二つの配位子が、アリール(aryl)基を有する炭素原子またはケイ素原子からなるアリール基含有共有結合架橋部(以下「架橋部」ともいう。)によって結合されている。
[m3]メタロセン化合物を構成する遷移金属(M)が周期表第4族の原子、具体的には、チタン原子、ジルコニウム原子またはハフニウム原子である。
【0062】
以下、架橋型メタロセン化合物(I)が有する、置換基を有していてもよいシクロペンタジエニル基、置換フルオレニル基、架橋部およびその他特徴について、順次説明する。
【0063】
(置換基を有していてもよいシクロペンタジエニル基)
式(I)中、R
1、R
2、R
3およびR
4はそれぞれ独立に水素原子、炭化水素基、ケイ素含有基またはケイ素含有基以外のヘテロ原子含有基を示し、水素原子、炭化水素基またはケイ素含有基が好ましく、隣接する二つの基同士は互いに結合して環を形成していてもよい。
【0064】
例えば、R
1、R
2、R
3およびR
4は全て水素原子であるか、またはR
1、R
2、R
3およびR
4のいずれか一つ以上が炭化水素基(好ましくは炭素原子数1〜20の炭化水素基)またはケイ素含有基(好ましくは炭素原子数1〜20のケイ素含有基)である。その他、ハロゲン化炭化水素基、酸素含有基、窒素含有基などのヘテロ原子含有基を挙げることもできる。
【0065】
R
1、R
2、R
3およびR
4のうちの二つ以上が水素原子以外の置換基である場合は、前記置換基は互いに同一でも異なっていてもよく;R
1、R
2、R
3およびR
4のうちの隣接する二つの基同士は互いに結合して脂環または芳香環を形成していてもよい。
【0066】
R
1〜R
4における炭化水素基の例示および好ましい基としては、上記置換シクロペンタジエニル基の箇所にて定義した炭化水素基(f1)が挙げられる。R
1〜R
4におけるケイ素含有基の例示および好ましい基としては、上記置換シクロペンタジエニル基の箇所にて定義したケイ素含有基(f2)が挙げられる。R
1〜R
4におけるヘテロ原子含有基としては、上記置換シクロペンタジエニル基の箇所にて例示した基が挙げられる。
【0067】
(置換フルオレニル基)
式(I)中、R
5、R
8、R
9およびR
12はそれぞれ独立に水素原子、炭化水素基、ケイ素含有基またはケイ素含有基以外のヘテロ原子含有基を示し、水素原子、炭化水素基またはケイ素含有基が好ましい。R
6およびR
11は水素原子、炭化水素基、ケイ素含有基およびケイ素含有基以外のヘテロ原子含有基から選ばれる同一の原子または同一の基であり、水素原子、炭化水素基およびケイ素含有基が好ましく;R
7およびR
10は水素原子、炭化水素基、ケイ素含有基およびケイ素含有基以外のヘテロ原子含有基から選ばれる同一の原子または同一の基であり、水素原子、炭化水素基およびケイ素含有基が好ましく;R
6およびR
7は互いに結合して環を形成していてもよく、R
10およびR
11は互いに結合して環を形成していてもよく;ただし、“R
6、R
7、R
10およびR
11が全て水素原子であること”はない。
【0068】
重合活性の視点からは、R
6およびR
11がいずれも水素原子ではないことが好ましく;R
6、R
7、R
10およびR
11がいずれも水素原子ではないことが更に好ましく;R
6およびR
11が炭化水素基およびケイ素含有基から選ばれる同一の基であり、且つR
7とR
10が炭化水素基およびケイ素含有基から選ばれる同一の基であることが特に好ましい。また、R
6およびR
7が互いに結合して脂環または芳香環を形成し、R
10およびR
11が互いに結合して脂環または芳香環を形成していることも好ましい。
【0069】
R
5〜R
12における炭化水素基の例示および好ましい基としては、上記置換シクロペンタジエニル基の箇所にて定義した炭化水素基(f1)が挙げられる。R
5〜R
12におけるケイ素含有基の例示および好ましい基としては、上記置換シクロペンタジエニル基の箇所にて定義したケイ素含有基(f2)が挙げられる。R
5〜R
12におけるヘテロ原子含有基としては、上記置換シクロペンタジエニル基の箇所にて例示した基が挙げられる。
【0070】
R
6およびR
7(R
10およびR
11)が互いに結合して脂環または芳香環を形成した場合の置換フルオレニル基としては、後述する一般式[II]〜[VI]で表される化合物に由来する基が好適な例として挙げられる。
【0071】
(架橋部)
式(I)中、R
13およびR
14はそれぞれ独立にアリール基を示し、Y
1は炭素原子またはケイ素原子を示す。本発明のオレフィン重合体の製造方法において重要な点は、架橋部の架橋原子Y
1に、互いに同一でも異なっていてもよいアリール(aryl)基[R
13およびR
14]が結合していることである。製造上の容易性から、R
13およびR
14は互いに同一であることが好ましい。
【0072】
アリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基およびこれらが有する芳香族水素(sp2型水素)の一つ以上が置換基で置換された基が挙げられる。置換基としては、上記置換シクロペンタジエニル基の箇所にて定義した炭化水素基(f1)およびケイ素含有基(f2)や、ハロゲン原子およびハロゲン化炭化水素基が挙げられる。
【0073】
アリール基の具体例としては、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、ビフェニル基などの炭素原子数6〜14、好ましくは6〜10の非置換アリール基;トリル基、ジメチルフェニル基、イソプロピルフェニル基、n−ブチルフェニル基、t−ブチルフェニル基などのアルキル基置換アリール基;シクロヘキシルフェニル基などのシクロアルキル基置換アリール基;クロロフェニル基、ブロモフェニル基、ジクロロフェニル基、ジブロモフェニル基などのハロゲン化アリール基;(トリフルオロメチル)フェニル基、ビス(トリフルオロメチル)フェニル基などのハロゲン化アルキル基置換アリール基が挙げられる。置換基の位置は、メタ位および/またはパラ位が好ましい。これらの中でも、置換基がメタ位および/またはパラ位に位置する置換フェニル基が更に好ましい。
【0074】
(架橋型メタロセン化合物のその他の特徴)
式(I)中、Qはハロゲン原子、炭化水素基、ハロゲン化炭化水素基、炭素原子数4〜20の中性の共役もしくは非共役ジエン、アニオン配位子または孤立電子対で配位可能な中性配位子を示し、jは1〜4の整数を示し、jが2以上の整数の場合は複数あるQはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。
【0075】
Qにおけるハロゲン原子、炭化水素基、ハロゲン化炭化水素基、炭素原子数4〜20の中性の共役もしくは非共役ジエン、アニオン配位子または孤立電子対で配位可能な中性配位子としては、式[A1]および[A2]中におけるQと同様の原子または基を挙げることができる。
【0076】
(好ましい架橋型メタロセン化合物(I)の例示)
以下に架橋型メタロセン化合物(I)の具体例を示す。なお、例示化合物中、オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニルとは式[II]で示される構造の化合物に由来する基を指し、オクタメチルテトラヒドロジシクロペンタフルオレニルとは式[III]で示される構造の化合物に由来する基を指し、ジベンゾフルオレニルとは式[IV]で示される構造の化合物に由来する基を指し、1,1’,3,6,8,8’−ヘキサメチル−2,7−ジヒドロジシクロペンタフルオレニルとは式[V]で示される構造の化合物に由来する基を指し、1,3,3’,6,6’,8−ヘキサメチル−2,7−ジヒドロジシクロペンタフルオレニルとは式[VI]で示される構造の化合物に由来する基を指す。
【0081】
【化14】
架橋型メタロセン化合物(I)としては、例えば、
ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(オクタメチルテトラヒドロジシクロペンタフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(ジベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(1,1’,3,6,8,8’−ヘキサメチル−2,7−ジヒドロジシクロペンタフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(1,3,3’,6,6’,8−ヘキサメチル−2,7−ジヒドロジシクロペンタフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジフェニル−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジメチル−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−(トリメチルフェニル)−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−(ジメチルフェニル)−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(2,3,6,7−テトラtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、
ジ(p−トリル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−トリル)メチレン(シクロペンタジエニル)(3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−トリル)メチレン(シクロペンタジエニル)(オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−トリル)メチレン(シクロペンタジエニル)(オクタメチルテトラヒドロジシクロペンタフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−トリル)メチレン(シクロペンタジエニル)(ジベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−トリル)メチレン(シクロペンタジエニル)(1,1’,3,6,8,8’−ヘキサメチル−2,7−ジヒドロジシクロペンタフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−トリル)メチレン(シクロペンタジエニル)(1,3,3’,6,6’,8−ヘキサメチル−2,7−ジヒドロジシクロペンタフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−トリル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジフェニル−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−トリル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジメチル−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−トリル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−(トリメチルフェニル)−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−トリル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−(ジメチルフェニル)−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−トリル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,3,6,7−テトラメチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−トリル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,3,6,7−テトラtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、
【0082】
ジ(p−クロロフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−クロロフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−クロロフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−クロロフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(オクタメチルテトラヒドロジシクロペンタフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−クロロフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(ジベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−クロロフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(1,1’,3,6,8,8’−ヘキサメチル−2,7−ジヒドロジシクロペンタフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−クロロフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(1,3,3’,6,6’,8−ヘキサメチル−2,7−ジヒドロジシクロペンタフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−クロロフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジフェニル−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−クロロフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジメチル−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−クロロフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−(トリメチルフェニル)−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−クロロフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−(ジメチルフェニル)−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−クロロフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,3,6,7−テトラtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、
ジ(m−クロロフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(m−クロロフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(m−クロロフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(m−クロロフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(オクタメチルテトラヒドロジシクロペンタフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(m−クロロフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(ジベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(m−クロロフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(1,1’,3,6,8,8’−ヘキサメチル−2,7−ジヒドロジシクロペンタフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(m−クロロフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(1,3,3’,6,6’,8−ヘキサメチル−2,7−ジヒドロジシクロペンタフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(m−クロロフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジフェニル−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(m−クロロフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジメチル−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(m−クロロフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−(トリメチルフェニル)−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(m−クロロフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−(ジメチルフェニル)−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(m−クロロフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,3,6,7−テトラtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、
【0083】
ジ(p−ブロモフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−ブロモフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−ブロモフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−ブロモフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(オクタメチルテトラヒドロジシクロペンタフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−ブロモフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(ジベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−ブロモフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(1,1’,3,6,8,8’−ヘキサメチル−2,7−ジヒドロジシクロペンタフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−ブロモフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(1,3,3’,6,6’,8−ヘキサメチル−2,7−ジヒドロジシクロペンタフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−ブロモフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジフェニル−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−ブロモフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジメチル−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−ブロモフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−(トリメチルフェニル)−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−ブロモフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−(ジメチルフェニル)−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−ブロモフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,3,6,7−テトラtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、
ジ(m−トリフルオロメチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(m−トリフルオロメチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(m−トリフルオロメチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(m−トリフルオロメチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(オクタメチルテトラヒドロジシクロペンタフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(m−トリフルオロメチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(ジベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(m−トリフルオロメチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(1,1’,3,6,8,8’−ヘキサメチル−2,7−ジヒドロジシクロペンタフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(m−トリフルオロメチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(1,3,3’,6,6’,8−ヘキサメチル−2,7−ジヒドロジシクロペンタフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(m−トリフルオロメチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジフェニル−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(m−トリフルオロメチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジメチル−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(m−トリフルオロメチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−(トリメチルフェニル)−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(m−トリフルオロメチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−(ジメチルフェニル)−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(m−トリフルオロメチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,3,6,7−テトラtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、
ジ(p−トリフルオロメチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−トリフルオロメチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−トリフルオロメチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−トリフルオロメチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(オクタメチルテトラヒドロジシクロペンタフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−トリフルオロメチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(ジベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−トリフルオロメチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(1,1’,3,6,8,8’−ヘキサメチル−2,7−ジヒドロジシクロペンタフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−トリフルオロメチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(1,3,3’,6,6’,8−ヘキサメチル−2,7−ジヒドロジシクロペンタフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−トリフルオロメチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジフェニル−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−トリフルオロメチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジメチル−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−トリフルオロメチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−(トリメチルフェニル)−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−トリフルオロメチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−(ジメチルフェニル)−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−トリフルオロメチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,3,6,7−テトラtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、
【0084】
ジ(p−tert−ブチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−tert−ブチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−tert−ブチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−tert−ブチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(オクタメチルテトラヒドロジシクロペンタフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−tert−ブチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(ジベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−tert−ブチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(1,1’,3,6,8,8’−ヘキサメチル−2,7−ジヒドロジシクロペンタフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−tert−ブチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(1,3,3’,6,6’,8−ヘキサメチル−2,7−ジヒドロジシクロペンタフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−tert−ブチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジフェニル−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−tert−ブチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジメチル−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−tert−ブチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−(トリメチルフェニル)−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−tert−ブチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−(ジメチルフェニル)−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−tert−ブチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,3,6,7−テトラtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、
ジ(p−n−ブチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−n−ブチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−n−ブチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−n−ブチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(オクタメチルテトラヒドロジシクロペンタフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−n−ブチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(ジベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−n−ブチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(1,1’,3,6,8,8’−ヘキサメチル−2,7−ジヒドロジシクロペンタフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−n−ブチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(1,3,3’,6,6’,8−ヘキサメチル−2,7−ジヒドロジシクロペンタフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−n−ブチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジフェニル−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−n−ブチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジメチル−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−n−ブチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−(トリメチルフェニル)−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−n−ブチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−(ジメチルフェニル)−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−n−ブチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,3,6,7−テトラtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、
【0085】
ジ(p−ビフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−ビフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−ビフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−ビフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(オクタメチルテトラヒドロジシクロペンタフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−ビフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(ジベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−ビフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(1,1’,3,6,8,8’−ヘキサメチル−2,7−ジヒドロジシクロペンタフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−ビフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(1,3,3’,6,6’,8−ヘキサメチル−2,7−ジヒドロジシクロペンタフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−ビフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジフェニル−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−ビフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジメチル−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−ビフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−(トリメチルフェニル)−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−ビフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−(ジメチルフェニル)−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−ビフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,3,6,7−テトラtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、
ジ(1−ナフチル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(1−ナフチル)メチレン(シクロペンタジエニル)(3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(1−ナフチル)メチレン(シクロペンタジエニル)(オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(1−ナフチル)メチレン(シクロペンタジエニル)(オクタメチルテトラヒドロジシクロペンタフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(1−ナフチル)メチレン(シクロペンタジエニル)(ジベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(1−ナフチル)メチレン(シクロペンタジエニル)(1,1’,3,6,8,8’−ヘキサメチル−2,7−ジヒドロジシクロペンタフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(1−ナフチル)メチレン(シクロペンタジエニル)(1,3,3’,6,6’,8−ヘキサメチル−2,7−ジヒドロジシクロペンタフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(1−ナフチル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジフェニル−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(1−ナフチル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジメチル−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(1−ナフチル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−(トリメチルフェニル)−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(1−ナフチル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−(ジメチルフェニル)−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(1−ナフチル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,3,6,7−テトラtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、
ジ(2−ナフチル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(2−ナフチル)メチレン(シクロペンタジエニル)(3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(2−ナフチル)メチレン(シクロペンタジエニル)(オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(2−ナフチル)メチレン(シクロペンタジエニル)(オクタメチルテトラヒドロジシクロペンタフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(2−ナフチル)メチレン(シクロペンタジエニル)(ジベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(2−ナフチル)メチレン(シクロペンタジエニル)(1,1’,3,6,8,8’−ヘキサメチル−2,7−ジヒドロジシクロペンタフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(2−ナフチル)メチレン(シクロペンタジエニル)(1,3,3’,6,6’,8−ヘキサメチル−2,7−ジヒドロジシクロペンタフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(2−ナフチル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジフェニル−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(2−ナフチル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジメチル−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(2−ナフチル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−(トリメチルフェニル)−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(2−ナフチル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−(ジメチルフェニル)−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(2−ナフチル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,3,6,7−テトラtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、
【0086】
ジ(m−トリル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(m−トリル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジメチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(m−トリル)メチレン(シクロペンタジエニル)(3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、
ジ(p−イソプロピルフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−イソプロピルフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−イソプロピルフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−イソプロピルフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、
ジフェニルシリレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルシリレン(シクロペンタジエニル)(3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルシリレン(シクロペンタジエニル)(オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルシリレン(シクロペンタジエニル)(オクタメチルテトラヒドロジシクロペンタフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルシリレン(シクロペンタジエニル)(ジベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルシリレン(シクロペンタジエニル)(1,1’,3,6,8,8’−ヘキサメチル−2,7−ジヒドロジシクロペンタフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルシリレン(シクロペンタジエニル)(1,3,3’,6,6’,8−ヘキサメチル−2,7−ジヒドロジシクロペンタフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルシリレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジフェニル−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルシリレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジメチル−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルシリレン(シクロペンタジエニル)(2,7−(トリメチルフェニル)−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルシリレン(シクロペンタジエニル)(2,7−(ジメチルフェニル)−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルシリレン(シクロペンタジエニル)(2,3,6,7−テトラtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド
が挙げられる。
【0087】
架橋型メタロセン化合物(I)としては、上記例示の化合物の「ジルコニウム」を「ハフニウム」または「チタニウム」に変えた化合物、「ジクロリド」を「ジフロライド」、「ジブロミド」、「ジアイオダイド」、「ジメチル」または「メチルエチル」などに代えた化合物、「シクロペンタジエニル」を「3−tert−ブチル−5−メチル−シクロペンタジエニル」、「3,5−ジメチル−シクロペンタジエニル」、「3−tert−ブチル−シクロペンタジエニル」または「3−メチル−シクロペンタジエニル」などに変えた化合物を挙げることもできる。
【0088】
以上のメタロセン化合物(A)は公知の方法によって製造可能であり、特に製造方法が限定されるわけではない。公知の方法としては、例えば、本出願人による国際公開第01/27174号パンフレット、国際公開第04/029062号パンフレットに記載の方法が挙げられる。
【0089】
〈メタロセン化合物(A)と反応してイオン対を形成する化合物(B)〉
成分(B)は、メタロセン化合物(A)と反応してイオン対を形成する化合物であって、且つ一般式[B1]で表される化合物(アンモニウム塩)である。本発明では一般式[B1]で表される化合物、すなわちルイス塩基を副生するアンモニウム塩が、後述する、ルイス酸であるAl−H結合を有するアルミニウム化合物(D)と相互作用することができることから好ましい。また、当該化合物を用いることで、例えば、高い重合温度でも高い重合活性を発現することができる傾向にあることから好ましい。
【0090】
【化15】
式[B1]中、R
e+はアンモニウムカチオンを示し、R
f〜R
iはそれぞれ独立に炭素原子数1〜20の炭化水素基または炭素原子数1〜20のハロゲン化炭化水素基を示す。本発明では、アンモニウムカチオンとは、NH
4+およびNH
4+のHを各種の置換基(例:アルキル基、シクロアルキル基、アリール基)で置換してなるカチオンを含む。
【0091】
上記アンモニウムカチオンとしては、例えば、トリメチルアンモニウムカチオン、トリエチルアンモニウムカチオン、トリ(n−プロピル)アンモニウムカチオン、トリイソプロピルアンモニウムカチオン、トリ(n−ブチル)アンモニウムカチオン、トリイソブチルアンモニウムカチオンなどのトリアルキルアンモニウムカチオン;N,N−ジメチルアニリニウムカチオン、N,N−ジエチルアニリニウムカチオン、N,N−2,4,6−ペンタメチルアニリニウムカチオンなどのN,N−ジアルキルアニリニウムカチオン;ジイソプロピルアンモニウムカチオンなどのジアルキルアンモニウムカチオン;ジシクロヘキシルアンモニウムカチオンなどのジシクロアルキルアンモニウムカチオンが挙げられ、高い重合温度でも高い重合活性を発現し、また、工業的に入手しやすいという観点から、N,N−ジメチルアニリニウムカチオンが好ましい。
【0092】
炭素原子数1〜20の炭化水素基としては、例えば、炭素原子数6〜20の芳香族炭化水素基が挙げられ、非置換アリール基および置換アリール基が好ましい。アリール基における置換基としては、例えば、炭化水素基が挙げられる。
【0093】
炭素原子数1〜20のハロゲン化炭化水素基としては、例えば、炭素原子数6〜20のハロゲン化芳香族炭化水素基が挙げられ、ハロゲン化アリール基が好ましい。アリール基における置換基としては、例えば、ハロゲン化炭化水素基、ハロゲン原子が挙げられる。
【0094】
炭化水素基およびハロゲン化炭化水素基の具体的な態様としては、例えば、フェニル基、トリル基、ジメチルフェニル基、トリフルオロメチルフェニル基、ジトリフルオロメチルフェニル基、ペンタフルオロフェニル基が挙げられる。
【0095】
一般式[B1]で表される化合物としては、例えば、トリアルキルアンモニウム塩、N,N−ジアルキルアニリニウム塩、ジアルキルアンモニウム塩、ジシクロアルキルアンモニウム塩が挙げられる。
【0096】
トリアルキルアンモニウム塩としては、具体的には、トリエチルアンモニウムテトラフェニルボレート、トリプロピルアンモニウムテトラフェニルボレート、トリ(n−ブチル)アンモニウムテトラフェニルボレート、トリメチルアンモニウムテトラキス(p−トリル)ボレート、トリメチルアンモニウムテトラキス(o−トリル)ボレート、トリ(n−ブチル)アンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリエチルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリプロピルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリプロピルアンモニウムテトラキス(2,4−ジメチルフェニル)ボレート、トリ(n−ブチル)アンモニウムテトラキス(3,5−ジメチルフェニル)ボレート、トリ(n−ブチル)アンモニウムテトラキス(4−トリフルオロメチルフェニル)ボレート、トリ(n−ブチル)アンモニウムテトラキス(3,5−ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、トリ(n−ブチル)アンモニウムテトラキス(o−トリル)ボレートが挙げられる。
【0097】
N,N−ジアルキルアニリニウム塩としては、具体的には、N,N−ジメチルアニリニウムテトラフェニルボレート、N,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(3,5−ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、N,N−ジエチルアニリニウムテトラフェニルボレート、N,N−ジエチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N−ジエチルアニリニウムテトラキス(3,5−ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、N,N−2,4,6−ペンタメチルアニリニウムテトラフェニルボレート、N,N−2,4,6−ペンタメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートが挙げられる。
【0098】
ジアルキルアンモニウム塩およびジシクロアルキルアンモニウム塩としては、具体的には、ジ(1−プロピル)アンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ジシクロヘキシルアンモニウムテトラフェニルボレートが挙げられる。
【0099】
成分(B)は1種単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
成分(B)としては、高い重合温度でも高い重合活性を発現し、また、工業的に入手しやすいという観点から、N,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートが特に好ましい。
【0100】
〈化合物(C)〉
化合物(C)は、有機アルミニウムオキシ化合物(C−1)および有機アルミニウム化合物(C−2)(下記(D)に該当する化合物を除く)から選ばれる少なくとも1種の化合物であり、有機アルミニウム化合物(C−2)を少なくとも1種用いることが好ましい。本発明では、有機アルミニウムオキシ化合物とはAl−C結合を有し、独立のAl−O結合を複数有する化合物をいい、有機アルミニウム化合物とはAl−C結合を有し、独立のAl−O結合を複数有しない(独立のAl−O結合を有しないか、独立のAl−O結合を一つ有する)化合物をいう。ただし、独立のAl−O結合とは、例えば−Al(R)−O−Al(R)−O−Al−の場合はAl−O結合数=2、RAl(OR)
2の場合はAl−O結合数=1というように(Rは例えば炭化水素基)、Al原子およびO原子を重複してカウントしないことをいう。したがって、本発明では、有機アルミニウム化合物(C−2)に有機アルミニウムオキシ化合物(C−1)は含まれないものとする。
【0101】
有機アルミニウムオキシ化合物(C−1)を選ぶ場合には、1種単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。有機アルミニウム化合物(C−2)を選ぶ場合には、1種単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0102】
《有機アルミニウムオキシ化合物(C−1)》
有機アルミニウムオキシ化合物(C−1)としては、例えば、一般式[C1]で表される化合物および一般式[C2]で表される化合物などの従来公知のアルミノキサン、一般式[C3]で表される修飾メチルアルミノキサンなどのメチルアルミノキサン類縁体、一般式[C4]で表されるボロン含有有機アルミニウムオキシ化合物が挙げられる。
【0104】
【化17】
式[C1]および[C2]中、Rは炭素原子数1〜10の炭化水素基、好ましくはメチル基を示し、nは2以上、好ましくは3以上、より好ましくは10以上の整数を示し、nの上限値は特に限定されないが、通常30である。Rがメチル基である有機アルミニウムオキシ化合物を、以下「メチルアルミノキサン」ともいう。
【0105】
【化18】
式[C3]中、Rは炭素原子数2〜20の炭化水素基を示し、mおよびnはそれぞれ独立に2以上の整数を示し、m+nの上限値は特に限定されないが、通常40である。複数あるRは互いに同一でも異なっていてもよい。
【0106】
メチルアルミノキサンは、その入手の容易性および重合活性の高さから、ポリオレフィン業界で繁用されてきた有機アルミニウムオキシ化合物である。また、飽和炭化水素に対する溶解性に優れたメチルアルミノキサン類縁体(例:式[C3]で表される修飾メチルアルミノキサン)も開発されている。
【0107】
式[C3]で表される修飾メチルアルミノキサンは、例えば、トリメチルアルミニウムとトリメチルアルミニウム以外のアルキルアルミニウムとを用いて調製される(例えば、US4960878やUS5041584等に製造方法が開示されている。)。東ソー・ファインケム社などのメーカーから、トリメチルアルミニウムとトリイソブチルアルミニウムとを用いて調製された(すなわち、Rがイソブチル基である)修飾メチルアルミノキサンが、MMAOやTMAOといった名称で商業的に生産されている(例えば、「東ソー研究・技術報告」第47巻55(2003)参照)。
【0108】
なお、本発明のオレフィン重合体の製造方法での溶液重合においては、特開平2−78687号公報に例示されているベンゼン不溶性の有機アルミニウムオキシ化合物を用いることもできる。
【0109】
【化19】
式[C4]中、R
cは炭素原子数1〜10の炭化水素基を示す。複数あるR
dはそれぞれ独立にハロゲン原子または炭素原子数1〜10の炭化水素基を示す。
【0110】
《有機アルミニウム化合物(C−2)》
有機アルミニウム化合物(C−2)としては、例えば、一般式[C5]で表される有機アルミニウム化合物、一般式[C6]で表される周期表第1族金属とアルミニウムとの錯アルキル化物が挙げられる。
【0111】
R
amAl(OR
b)
nX
p ・・・[C5]
式[C5]中、R
aおよびR
bはそれぞれ独立に炭素原子数1〜15、好ましくは1〜4の炭化水素基を示し、Xはハロゲン原子を示し、mは0<m≦3、nは0≦n<3、pは0≦p<3の数であり、且つm+n+p=3である。
【0112】
一般式[C5]で表される有機アルミニウム化合物としては、例えば、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリn−ブチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウム、トリオクチルアルミニウムなどのトリn−アルキルアルミニウム;
トリイソプロピルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリsec−ブチルアルミニウム、トリtert−ブチルアルミニウム、トリ2−メチルブチルアルミニウム、トリ3−メチルヘキシルアルミニウム、トリ2−エチルヘキシルアルミニウムなどのトリ分岐鎖アルキルアルミニウム;
トリシクロヘキシルアルミニウム、トリシクロオクチルアルミニウムなどのトリシクロアルキルアルミニウム;トリフェニルアルミニウム、トリトリルアルミニウムなどのトリアリールアルミニウム;
一般式(i−C
4H
9)
xAl
y(C
5H
10)
z(式中、x、yおよびzは正の数であり、z≦2xである。)で表されるイソプレニルアルミニウムなどのアルケニルアルミニウム;
イソブチルアルミニウムジメトキシド、イソブチルアルミニウムジエトキシドなどのアルキルアルミニウムジアルコキシド;ジメチルアルミニウムメトキシド、ジエチルアルミニウムエトキシド、ジブチルアルミニウムブトキシドなどのジアルキルアルミニウムアルコキシド;エチルアルミニウムセスキエトキシド、ブチルアルミニウムセスキブトキシドなどのアルキルアルミニウムセスキアルコキシド;
一般式R
a2.5Al(OR
b)
0.5(式中、R
aおよびR
bは式[C5]中のR
aおよびR
bと同義である。)で表される平均組成を有する部分的にアルコキシ化されたアルキルアルミニウム;ジエチルアルミニウムフェノキシド、ジエチルアルミニウム(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノキシド)などのアルキルアルミニウムアリーロキシド;ジメチルアルミニウムクロリド、ジエチルアルミニウムクロリド、ジブチルアルミニウムクロリド、ジエチルアルミニウムブロミド、ジイソブチルアルミニウムクロリドなどのジアルキルアルミニウムハライド;エチルアルミニウムセスキクロリド、ブチルアルミニウムセスキクロリド、エチルアルミニウムセスキブロミドなどのアルキルアルミニウムセスキハライド;
エチルアルミニウムジクロリドなどのアルキルアルミニウムジハライドなどの部分的にハロゲン化されたアルキルアルミニウム;エチルアルミニウムエトキシクロリド、ブチルアルミニウムブトキシクロリド、エチルアルミニウムエトキシブロミドなどの部分的にアルコキシ化およびハロゲン化されたアルキルアルミニウムが挙げられる。
【0113】
M
2AlR
a4 ・・・[C6]
式[C6]中、M
2はLi、NaまたはKを示し、複数あるR
aはそれぞれ独立に炭素原子数1〜15、好ましくは1〜4の炭化水素基を示す。一般式[C6]で表される化合物としては、例えば、LiAl(C
2H
5)
4、LiAl(C
7H
15)
4が挙げられる。
【0114】
また、一般式[C5]で表される化合物に類似する化合物も使用することができ、例えば窒素原子を介して2以上のアルミニウム化合物が結合した有機アルミニウム化合物を挙げることができる。このような化合物としては、例えば、(C
2H
5)
2AlN(C
2H
5)Al(C
2H
5)
2が挙げられる。
有機アルミニウム化合物(C−2)としては、一般式[C5]で表される化合物が好ましく、トリイソブチルアルミニウム、トリエチルアルミニウムが特に好ましい。
【0115】
〈Al−H結合を有するアルミニウム化合物(D)〉
成分(D)としては、Al−H結合を有するアルミニウム化合物(メタロセン化合物(A)に該当する化合物を除く)であれば特に限定されない。例えば、一般式[D1]で表される化合物、リチウムアルミニウムハイドライドが挙げられ、脂肪族炭化水素溶媒および脂環族炭化水素溶媒への溶解性という観点から、一般式[D1]で表される化合物が好ましい。
【0116】
R
qAlH
r ・・・[D1]
式[D1]中、Rは炭素原子数1〜15、好ましくは1〜4の炭化水素基を示し、Rが複数ある場合にRはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。前記炭化水素基としては、例えば、炭素原子数1〜15のアルキル基、炭素原子数3〜15のシクロアルキル基、炭素原子数6〜15のアリール基が挙げられる。qは0≦q≦2、rは1≦r≦3の数であり、且つq+r=3である。
【0117】
一般式[D1]で表されるAl−H結合を有するアルミニウム化合物としては、例えば、ジメチルアルミニウムハイドライド、ジエチルアルミニウムハイドライド、ジイソプロピルアルミニウムハイドライド、ジブチルアルミニウムハイドライド、ジイソブチルアルミニウムハイドライド、ジイソヘキシルアルミニウムハイドライド、ジフェニルアルミニウムハイドライド、ジシクロヘキシルアルミニウムハイドライド、フェニルアルミニウムジハイドライド、アランが挙げられる。これらの中でも、脂肪族炭化水素溶媒および脂環族炭化水素溶媒への溶解性、工業的な入手しやすさという観点から、ジエチルアルミニウムハイドライド、ジイソブチルアルミニウムハイドライドが特に好ましい。
【0118】
本発明では、成分(D)を用いることにより以下の有利な効果がある。すなわち、成分(D)の存在により成分(A)〜(C)各成分の反応による活性種の形成が良好に進み、しかも当該活性種が脂肪族炭化水素溶媒等に溶解しやすくなるため、良好なオレフィン重合活性を有するオレフィン重合用触媒が得られる。
成分(D)は1種単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0119】
〈炭化水素溶媒(E)〉
上記成分(A)〜(D)の各構成成分の混合に用いられる炭化水素溶媒(E)は、好ましくは不活性炭化水素溶媒であり、より好ましくは常圧下における沸点が20〜200℃の飽和炭化水素溶媒である。
【0120】
炭化水素溶媒(E)としては、脂肪族炭化水素溶媒および脂環族炭化水素溶媒から選ばれる少なくとも1種の炭化水素溶媒を用いることが好ましい。脂肪族炭化水素としては、例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン、灯油が挙げられ;脂環族炭化水素としては、例えば、シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタンが挙げられる。これらの中でも、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカンなどの脂肪族炭化水素がより好ましい。
【0121】
なお、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素やエチレンクロリド、クロルベンゼン、ジクロロメタンなどのハロゲン化炭化水素も、「不活性炭化水素溶媒」に分類される。しかしながら、芳香族炭化水素溶媒やハロゲン化炭化水素溶媒が系内に存在すると、得られるオレフィン重合体内部にこれらの溶媒が残留しうるため、環境負荷等の観点から好ましくない。したがって、オレフィン重合用触媒の調製において、芳香族炭化水素溶媒およびハロゲン化炭化水素溶媒それぞれの使用量は、炭化水素溶媒(E)全量に対して、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下であり;芳香族炭化水素溶媒およびハロゲン化炭化水素溶媒は使用しないことが特に好ましい。
炭化水素溶媒(E)は1種単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0122】
〈オレフィン重合用触媒の調製〉
本発明のオレフィン重合体の製造方法において、上記成分(A)〜(D)の各成分を炭化水素溶媒(E)と混合して得られたオレフィン重合用触媒を、重合反応器へ送入する方法は、任意に選ばれる。
【0123】
例えば、[s1]上記成分(A)〜(D)を炭化水素溶媒(E)と一括して混合して得られた混合液を、そのまま重合反応器へ送入する方法、[s2]上記成分(A)〜(D)の各成分の炭化水素溶媒(E)溶液(または懸濁液)をそれぞれ混合して、そのまま重合反応器へ送入する方法、[s3]上記成分(A)〜(D)を炭化水素溶媒(E)と一括して混合してなる混合液から不溶分を除いて得られる上澄み液を、重合反応器へ送入する方法、[s4]上記成分(A)〜(D)の各成分の炭化水素溶媒(E)溶液(または懸濁液)をそれぞれ混合してなる混合液から不溶分を除いて得られる上澄み液を、重合反応器へ送入する方法が挙げられる。
【0124】
上記方法[s1]および[s2]のように上澄み液とともに不溶分をも重合反応器へ送入する方法では、(a)不溶分が触媒フィードラインで沈殿して、ラインが閉塞する場合があることや、(b)フィード量が一定にならず、重合活性が安定しない場合があることや、(c)不溶分が製品ポリマー中に残り、透明性不良(フィッシュアイ)の原因となる場合がある。したがって、上記方法[s3]および[s4]のように、上記成分(A)〜(D)(および/またはこれらが反応して形成された活性種)のうち、炭化水素溶媒(E)に溶解している部分(上澄み液)のみを重合反応器へ送入する方法が特に好ましい。
【0125】
オレフィン重合用触媒を構成する成分(B)は、一般的に脂肪族炭化水素や脂環族炭化水素には溶解し難いため、当該溶媒中では成分(A)〜(C)各成分の反応が進行せず、触媒調製液中で活性種が形成され難いと考えられる。これに対して本発明では、オレフィン重合用触媒の調製に成分(D)を使用しているので、成分(A)〜(C)各成分の反応による活性種の形成が良好に進行し、当該活性種が脂肪族炭化水素溶媒等に溶解しやすくなると考えられる。
【0126】
オレフィン重合用触媒を用いてオレフィンの溶液重合を行うに際して、成分(A)は、反応容積1リットル当り、通常10
-10〜10
-1モル、好ましくは10
-9〜10
-2モルとなるような量で用いられる。
【0127】
成分(B)は、成分(B)と成分(A)中の遷移金属原子(M)とのモル比[(B)/M]が、通常1〜50、好ましくは1〜20、特に好ましくは1〜10となるような量で用いられる。
【0128】
成分(C)は、成分(C)中のアルミニウム原子(Al)と成分(A)中の遷移金属原子(M)とのモル比[Al/M]が、通常10〜5,000、好ましくは20〜2,000となるような量で用いられる。
【0129】
成分(D)は、成分(D)と成分(B)とのモル比[(D)/(B)]が、通常5〜500、好ましくは10〜200となるような量で用いられる。また、成分(D)は、成分(C)と成分(D)との合計に対する成分(D)の量[((D)/{(C)+(D)})×100、モル%]が、通常30〜98モル%、好ましくは35〜95モル%、特に好ましくは40〜90モル%となるような量で用いられる。
成分(B)〜(D)の上記量比は、オレフィン重合用触媒の調製時の仕込み比である。
【0130】
〔オレフィン重合体の製造方法〕
本発明のオレフィン重合体の製造方法は、上述のオレフィン重合用触媒を重合反応器へ送入し、前記重合反応器内でオレフィンを溶液重合する工程を有する。「溶液重合」とは、反応溶媒中に重合体が溶解した状態で重合を行う方法の総称である。
【0131】
溶液重合における重合温度は、通常50〜300℃、好ましくは70〜250℃、更に好ましくは100〜200℃である。重合圧力は、通常常圧〜10MPaゲージ圧、好ましくは常圧〜8MPaゲージ圧の条件下である。重合反応は、回分式、半連続式、連続式のいずれの方法においても行うことができる。さらに重合を反応条件の異なる2段以上に分けて行うことも可能である。
【0132】
溶液重合の際には、オレフィン重合用触媒の調製に用いた成分(C)以外に、有機アルミニウム化合物(C−2)(例:トリイソブチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム)を重合反応器内へ別途添加することができる。反応溶媒はH
2Oなどの触媒毒となる不純物を微量含んでいることもある。有機アルミニウム化合物(C−2)を相当量添加することによって、前記触媒毒を除外でき、触媒の失活をより防ぐことできる。
【0133】
別途添加される有機アルミニウム化合物(C−2)の濃度としては、溶液重合における反応溶媒中において、通常0.001〜2mmol/L、好ましくは0.005〜1.5mmol/L、更に好ましくは0.01〜1mmol/L程度である。
【0134】
〈オレフィン〉
本発明のオレフィン重合体の製造方法に適用できるオレフィンとしては、例えば、炭素原子数2〜20のα−オレフィン(例:エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−エイコセン)、炭素原子数3〜20の環状オレフィン(例:シクロペンテン、シクロヘプテン、ノルボルネン、5−メチル−2−ノルボルネン、テトラシクロドデセン、2−メチル−1,4,5,8−ジメタノ−1,2,3,4,4a,5,8,8a−オクタヒドロナフタレン)、スチレン、ビニルシクロヘキサン、ジエンが挙げられる。
オレフィンは1種単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0135】
〈反応溶媒〉
溶液重合で用いられる反応溶媒は、上述した炭化水素溶媒(E)と同様に、好ましくは不活性炭化水素溶媒であり、より好ましくは常圧下における沸点が20〜200℃の飽和炭化水素溶媒である。
【0136】
反応溶媒としては、脂肪族炭化水素溶媒および脂環族炭化水素溶媒から選ばれる少なくとも1種の炭化水素溶媒を用いることが好ましい。脂肪族炭化水素としては、例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン、灯油が挙げられ;脂環族炭化水素としては、例えば、シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタンが挙げられる。これらの中でも、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカンなどの脂肪族炭化水素がより好ましい。
【0137】
なお、反応溶媒として芳香族炭化水素溶媒やハロゲン化炭化水素溶媒が系内に存在すると、得られるオレフィン重合体内部にこれらの溶媒が残留しうるため、環境負荷等の観点から好ましくない。したがって、芳香族炭化水素溶媒およびハロゲン化炭化水素溶媒それぞれの使用量は、反応溶媒全量に対して、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下であり;芳香族炭化水素溶媒およびハロゲン化炭化水素溶媒は使用しないことが特に好ましい。
反応溶媒は1種単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0138】
〈オレフィン重合体〉
得られるオレフィン重合体の分子量は、本発明の範囲内において、重合反応器中の水素濃度や重合温度を変化させることによって調節することができる。使用する成分(B)および成分(C)の量により調節することもできる。水素を添加する場合、その量は生成するオレフィン重合体1kgあたり0.001〜5,000NL程度が適当である。
【実施例】
【0139】
以下、実施例に基づいて本発明を更に具体的に説明する。
各種物性の測定法は以下のとおりである。
〔密度〕
190℃に設定された(株)神藤金属工業所製油圧式熱プレス機を用い、100kg/cm
2の圧力で、実施例および比較例で得られたオレフィン重合体から0.5mm厚のシートを成形した(スペーサー形状:240×240×0.5mm厚の板に45×45×0.5mmの開口を9個取ってなる)。20℃に設定された別の(株)神藤金属工業所製油圧式熱プレス機を用い、100kg/cm
2の圧力で前記シートを圧縮することにより前記シートを冷却して、測定用試料(プレスシート)を作成した。熱板として5mm厚のSUS板を用いた。測定用試料を120℃で1時間熱処理し、1時間かけて直線的に室温(25℃)まで徐冷したのち、密度勾配管で密度を測定した。
【0140】
〔メルトフローレート(MFR)〕
オレフィン重合体のメルトフローレート(MFR)は、ASTM D−1238の標準法に準拠し、190℃、2.16kg荷重下で測定した。
【0141】
〔溶融粘度〕
オレフィン重合体の溶融粘度は、ブルックフィールド社製デジタル粘度計を使用し、サンプル量約8g、測定温度140℃で測定した。
【0142】
〔上澄み液の金属濃度〕
上澄み液の金属濃度は、(株)島津製作所製ICPS7500装置を用いたプラズマ発光分光分析で測定した。
【0143】
[触媒調製液(a−1)の調製]
充分に窒素置換したガラス製フラスコに、トリイソブチルアルミニウムのヘキサン溶液(1mol/L)1.14mL、ジイソブチルアルミニウムハイドライドのヘキサン溶液(1mol/L)0.76mL、N,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートのヘキサン懸濁液(1mmol/L)15.2mL、およびジ(p−トリル)メチレン(シクロペンタジエニル)(オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリドのヘキサン溶液(2mmol/L)1.9mLをこの順序で装入し、2時間撹拌して、触媒調製液(a−1)を得た。上澄み液のジルコニウム濃度は0.19mmol/Lであった。
【0144】
[触媒調製液(a−2)〜(a−9)の調製]
トリイソブチルアルミニウムのヘキサン溶液およびジイソブチルアルミニウムハイドライドのヘキサン溶液の使用量を表1に記載のとおりに変更したこと以外は触媒調製液(a−1)の調製と同様にして、触媒調製液(a−2)〜(a−7)を得た。
【0145】
トリイソブチルアルミニウムのヘキサン溶液およびジイソブチルアルミニウムハイドライドのヘキサン溶液の使用量、ならびに成分(A)の種類を表1に記載のとおりに変更したこと以外は触媒調製液(a−1)の調製と同様にして、触媒調製液(a−8)〜(a−9)を得た。
触媒調製の条件を表1〜4に示す。
【0146】
[実施例1]
充分に窒素置換した内容積2リットルのステンレス製オートクレーブに、ヘプタン700mLおよび1−オクテン300mLを装入し、系内の温度を145℃に昇温した後、水素700mLを装入し、エチレンを供給することにより全圧を3MPa−Gとした。
【0147】
次いで、トリイソブチルアルミニウム0.3mmolおよび触媒調製液(a−1)の上澄み液(ジルコニウム原子換算で0.08μmol)を窒素で圧入し、撹拌回転数を400rpmとすることにより重合を開始した。
【0148】
その後、エチレンのみを連続的に供給することにより全圧を3MPa−Gに保ち、150℃で10分間重合を行った。少量のエタノールを系内に添加することにより重合を停止した後、未反応のエチレンをパージした。
【0149】
得られた重合体溶液から溶媒および未反応の1−オクテンを留去して濃縮した後、残留物を130℃の減圧下で12時間乾燥した。その結果、エチレン/1−オクテン共重合体49.6gを得た。得られた共重合体の密度は898kg/m
3、MFRは0.79g/10分であった。
【0150】
[実施例2〜5、比較例1〜2]
実施例1において、触媒調製液(a−1)の上澄み液の代わりに表2に記載の触媒調製液の上澄み液を使用したこと以外は実施例1と同様にして重合を行った。
【0151】
[実施例6]
充分に窒素置換した内容積2リットルのステンレス製オートクレーブに、ヘプタン950mLおよび4−メチル−1−ペンテン50mLを装入し、系内の温度を145℃まで昇温した。
【0152】
次いで、水素を2.03MPa圧入した後、トリイソブチルアルミニウム0.3mmolおよび触媒調製液(a−2)の上澄み液(ジルコニウム原子換算で0.05μmol)をエチレンで圧入することにより重合を開始した。
【0153】
その後、エチレンのみを連続的に供給することにより全圧を3MPa−Gに保ち、150℃で30分間重合を行った。少量のエタノールを系内に添加することにより重合を停止した後、未反応モノマーをパージした。
【0154】
得られた重合体溶液からヘプタンを留去した後、更に120℃、減圧下で12時間乾燥した。その結果、エチレン/4−メチル−1−ペンテン共重合体53.1gを得た。得られた共重合体の密度は938kg/m
3、140℃での溶融粘度は130mPa・sであった。
【0155】
[比較例3]
実施例6において、触媒調製液(a−2)の上澄み液の代わりに表3に記載の触媒調製液の上澄み液を使用したこと以外は実施例6と同様にして重合を行った。
【0156】
[実施例7]
充分に窒素置換した内容積2リットルのステンレス製オートクレーブに1−オクテン1000mlを装入し、系内の温度を120℃に昇温した後、水素を供給することにより全圧を3MPa−Gとした。
【0157】
次いで、トリイソブチルアルミニウム0.4mmolおよび触媒調製液(a−8)の上澄み液(ジルコニウム原子換算で0.2μmol)を窒素で圧入し、攪拌回転数を400rpmにすることにより重合を開始した。
【0158】
その後、水素のみを連続的に供給することにより全圧を3MPa−Gに保ち、120℃で60分間重合を行った。少量のエタノールを系内に添加することにより重合を停止した。
175℃、減圧下(1mmHg)で、得られた重合体溶液から溶媒および未反応の1−オクテンを留去し、384.7gの液状重合体(1−オクテン重合体)を得た。
【0159】
[比較例4]
実施例7において、触媒調製液(a−8)の上澄み液の代わりに表4に記載の触媒調製液の上澄み液を使用したこと以外は実施例7と同様にして重合を行った。
以上の結果を表2〜4に示す。
【0160】
【表1】
【0161】
【表2】
【0162】
【表3】
【0163】
【表4】
実施例および比較例の結果から、以下のことがわかる。
【0164】
オレフィン重合用触媒の各成分の脂肪族炭化水素溶媒への溶解性として、(A)ジ(p−トリル)メチレン(シクロペンタジエニル)(オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリドは可溶、ジ(p−クロロフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリドは可溶、(B)N,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートは不溶、(C)トリイソブチルアルミニウムは可溶、(D)ジイソブチルアルミニウムハイドライドは可溶である。
【0165】
成分(D)を使用しない比較例では、触媒調製液の上澄み液でのジルコニウム濃度が成分(D)を使用する実施例と同じであるにもかかわらず、触媒活性(重合活性)が極めて低い結果となった。すなわち比較例は、上澄み中に存在するジルコニウム成分は触媒活性を有しない形態であることを示している。
【0166】
これに対して実施例では、成分(D)を使用することで、成分(A)、(B)および(C)各成分の反応による活性種の形成が良好に進み、当該活性種が脂肪族炭化水素溶媒に溶解していると考えられる。