(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記通行者位置検出手段は、前記通行者の存在を検知する複数の物体検知センサと、前記複数の物体検知センサの各々で得られた前記通行者のセンサ情報に基づいて前記通行者の位置を検出する位置検出手段とから構成されることを特徴とする請求項1記載の通行者検知システム。
前記入出場制御手段は、前記通行者検知システムから前記通行弱者検知信号を受けたときに、通行阻止用ドアの開閉動作を前記通行弱者に合わせて制御することを特徴とする請求項4記載のゲート装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載された類別判別ユニットおよびこれを利用した自動改札機等によれば、自動改札機等の利用者の両膝の挙動に係る情報をカメラで撮影して得るため、腰より下の脚部を撮影されることに対して抵抗を感じる利用者は少なくないという問題が提起される。また特許文献2に記載された改札機によれば、乗車券情報から得られる利用者種別情報に基づいて改札通路の出口側に設けられた通行阻止用ドアの開閉動作を制御する制御パターンを変化させるが、利用者種別情報を得られない場合も多いという問題がある。
【0008】
本発明の目的は、上記の課題に鑑み、利用者が通行弱者であるか否かを適切なタイミングで正確かつ確実に検知し、この検知時に利用者に対して抵抗感を与えず、さらに通行弱者であることが検知された場合には通行弱者に応じた適切な通行制御を行うことが可能となる
通行者検知システム、および当該
通行者検知システムを備えたゲート装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る
通行者検知システムおよびこれを備えたゲート装置は、上記の目的を達成するため、次のように構成される。
【0010】
第1の通行者検知システム(請求項1に対応)は、
通路を通過する通行者の位置を検出する通行者位置検出手段と、
通行者位置検出手段が検出した通行者の位置の情報に基づき通行者の通行速度を算出する通行速度算出手段と、
通行速度算出手段が算出した通行速度の値が所定値以下であるか否かを判断する判断手段(第1の判断手段)と、
上記の判断手段が判断した所定値以下の通行速度の値の発生回数が所定値以上であるときに、通行者を通行弱者と判断する判断手段(第2の判断手段)と、
を備えることによって構成される。
【0011】
杖の利用者等の足が不自由な通行者では、歩行速度にムラが出る。例えば、右足は体の前に踏み出せるが、左足は踏み出せない通行者の場合には、左右の足の動きには移動量に違いが出る。また杖の利用者においても同様に歩行速度が一時的に遅くなる。そこで、上記の通行者検知システムによれば、この歩行速度の下落を、通行者の位置情報から通行速度の情報を取得し、当該通行速度の変化パターンを前提にして、
通行速度の値が所定値以下であるか否かを判断する第1の判断手段と、この第1の判断手段が判断した所定値以下の通行速度の値の発生回数が所定値以上であるときに、通行者を通行弱者と判断する第2の判断手段の各判断機能に基づいて検出することにより、通行弱者を検知するようにしている。
2つの判断手段によってより高い精度で通行弱者を検知するようにしている。
【0014】
第
2の通行者検知システム(請求項
2に対応)は、上記の構成において、好ましくは、通行者位置検出手段は、通行者を撮影する撮像手段と、撮像手段で得られた通行者の画像情報に基づいて通行者の位置を検出する画像処理手段とから構成されることを特徴とする。
【0015】
第
3の通行者検知システム(請求項
3に対応)は、上記の構成において、好ましくは、通行者位置検出手段は、通行者の存在を検知する複数の物体検知センサと、複数の物体検知センサの各々で得られた通行者のセンサ情報に基づいて通行者の位置を検出する位置検出手段とから構成されることを特徴とする。
【0016】
第1のゲート装置(請求項
4に対応)は、通路を通過する通行者が所持する入出場媒体との間で通行情報の送受を行う入出場情報読取り装置と、この入出場読取り装置の読取り動作を制御する入出場制御手段と、上記の第1から第
3のいずれか通行者検知システムを備えており、通行者検知システムは、通行者が通行弱者であると判別して通行弱者を検知したとき、入出場制御手段に対して通行弱者検知信号を与え、他方、入出場制御手段は、通行者検知システムから通行弱者検知信号を受けたときに、入出場
情報読取り装置の読取り動作を一定期間停止させるように構成される。
【0017】
第2のゲート装置(請求項
5に対応)は、上記の構成において、好ましくは、入出場制御手段は、通行者検知システムから通行弱者検知信号を受けたときに、通行阻止用ドアの開閉動作を通行弱者に合わせて制御することを特徴とする。
【0018】
第3のゲート装置(請求項
6に対応)は、上記の構成において、好ましくは、入出場情報読取り装置がICカードタッチ部と乗車券投入部のいずれか一方または両方であり、入出場
制御手段が改札制御手段であり、自動改札機として機能することを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る
通行者検知システムによれば、カメラ(撮像手段)または物体検知センサによって通路を通過しようとする通行者の位置情報を取得し、複数の当該位置情報から通行者の通行速度の情報を求め、さらに当該通行速度の情報に基づいて
通行者の特徴的な通行速度の変化パターンを基準にして当該通行者が通行弱者であるか否かを判別して通行弱者を検知するようにしたため、通行者が通行弱者であるか否かを適切なタイミングで正確かつ確実に検知することができ、さらにこの検知時に通行者に対して抵抗感を与えることなく検知を行うことができる。
【0020】
また本発明に係るゲート装置によれば、上記の通行弱者検知システムを備えることにより、ゲート装置の通路を通過しようとする通行者が通行弱者であるか否かを、通行者に抵抗感、負担を与えることなく検知し、かつ迅速かつ的確に検知することができ、これにより受付け動作やドア開閉動作について通行弱者に応じた適切な通行制御を行うことができ、後続の通行者との間の間隔を大きくして接触事故等を防止することができ、さらに通路出口側の通行阻止用ドアの衝突事故等を防止することができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に、本発明の好適な実施形態(実施例)を添付図面に基づいて説明する。
【0023】
本発明に係るゲート装置の第1の実施形態を説明する。この第1の実施形態では、ゲート装置が自動改札機であって、かつカメラの撮影動作で得られた画像情報に基づいて通行者(旅客)が通行弱者であるか否かを判断し、通行弱者を検知する。
【0024】
自動改札機は、駅構内の改札口に設置され、鉄道の電車に乗降する旅客を改札のための通行制御する機械である。自動改札機内には通行制御システムが備えられている。本実施形態に係る自動改札機によれば、さらに、通行弱者検知システムが組み込まれている。通行弱者検知システムは、改札通路を通行しようとする者(旅客または利用者)が、通常の利用者(健常者)であるかまたは通行弱者であるかを判断し、これにより通行弱者であることを検知するためのシステムである。本実施形態による通行弱者検知システムでは、通行者の通行速度(歩行速度)を計測し、通常の利用者と通行弱者のそれぞれの通行速度の変化パターンの違いから通行弱者を検知する。当該通行弱者検知システムが通行弱者を検知した場合には、上記の通行制御システムは、通行制御の内容を、通常の利用者の場合の通行制御から通行弱者用の制御に変更する。通行制御の変更例としては、例えば、出口側の通行阻止用ドアを半開または全開の状態にして、衝突や転倒が生じないようにし、また、通行弱者が改札通路を通過するまで後続の通行者の非接触ICカードのタッチ受付動作、乗車券(磁気券)の投入受付動作を不可状態にして通行弱者が安心して通過できるように後続の通行者を制限する。
【0025】
ここで、上記の「通行弱者」とは、体が不自由な者等であって、例えば障害者、妊婦、車椅子利用者、松葉杖利用者、棒状杖利用者等のごとく、通常の利用者(健常者)に比較して、通行速度が遅く、改札通路の通行に時間がかかる者のことを意味している。
【0026】
図1を参照して本実施形態に係る自動改札機の外観構成を概略的に説明する。
【0027】
自動改札機10では、平行に設置された一対の機械本体10Aによって、その間に改札通路11が形成されている。改札通路11について、この図示例では、機械本体10Aの一方の端部の箇所には通路入口11Aが形成され、他方の端部の箇所には通路出口11Bが形成される。
図1に示された状態では、通路入口11Aから通行者(旅客)12が改札通路11内に入ろうとしている状態が示されている。通行者12は、例えば、機械本体10Aにおける改札通路11の通路入口11A側に設けられたICカードタッチ部(ICカード読取り装置)13に乗車券機能を有する非接触ICカードをタッチして改札通路11を通り抜けようとしているところである。
【0028】
自動改札機10の機械本体10Aでは、さらに通路入口11A側には、乗車券投入部(乗車券読取り装置)14と通行表示部15が設けられており、また通路出口11B側の内壁面には通行阻止用の開閉ドア16が設けられている。さらに機械本体10Aの上面の中央位置にはカメラ17が設置される共に、内壁面には通路入口11Aから通路出口11Bに向かう方向に改札通路11に沿って複数の物体検知センサ18が同じ高さに一列状に設置されている。物体検知センサ18は、例えば赤外線センサであり、受光・遮光の作用に基づいてその前を通過する物体(通行者129の存在を検知する機能を有している。
【0029】
カメラ17は、自動改札機10の機械本体10Aに内蔵され、破線の撮影範囲19で示すように改札通路11に進入しようとする通行者12の身体部分、好ましくは上半身(顔の部分を含む)を撮影している。
【0030】
図2に、自動改札機10に設けられた通行制御システムと通行弱者検知システムの各構成の機能ブロック図を示す。
【0031】
通行制御システムは、改札機制御部21によって実現される。改札機制御部21は、通常、通行者12が改札通路11に進入するときに行う改札行為(非接触ICカードのタッチ行為または乗車券の投入行為)に基づいて、ICカードタッチ部13または乗車券投入部14において乗車情報を受け付け、ICカードタッチ部13または乗車券投入部14から当該乗車情報を読み込んで必要な改札処理(条件確認、決済等の処理)を実行する。改札通路11を通過しようとする通行者12が不正な通行者である場合、あるいは通行の権利を有しない通行者である場合には、通行阻止のためのドア部22にドア閉信号を送ってドア駆動装置を駆動し開閉ドア16を閉じさせる。また改札制御部21は、通常、通行表示部15に対して通行表示制御信号を送って、通行の許可または禁止を表示する制御を実行している。
【0032】
通行弱者検知システムはカメラ制御部23により構成され、カメラ17の撮影動作で得られた通行者12の画像情報に基づいて、カメラ制御部23が通行者12が通行弱者である否かを判別し、その検知を行う。
図3に示されるように、通常の利用者の通行速度(グラフ(A))と通行弱者の通行速度(グラフ(B))では、通行速度の変化パターンに顕著な相違点が存在する。体が不自由な通行弱者では歩行の速度にムラが出る。例えば、右足は体の前に踏み出せるが、左足は体の前に踏み出せない通行者の場合には、右足と左足の各踏出しの移動量に違いが生じる。また杖の利用者の場合にも同様に歩行速度が一時的に遅くなる。このため、通常の利用者の通行速度ではグラフ(A)に示すように時間経過に応じて一定の通行速度31が維持されるのに対して、通行弱者の通行速度32ではグラフ(B)に示すように周期的に停止状態が生じ、通行速度の変化において一時的な下落32aの状態が生じる。従って、この通行速度(歩行速度)の一時的な下落32aの変化パターンを利用して通行弱者の検知を行うことができる。
【0033】
そこで、
図2に示されたカメラ制御部23では、カメラ17から与えられる画像情報を入力して当該画像情報に基づき通行者12の位置を計測する通行者位置計測部24と、この通行者位置計測部24で得られた通行者12の位置情報に基づいて通行速度の変化パターンを取得し、当該通行速度の変化パターンにおける一時的な下落32aの変化パターンを判別することにより通行弱者であるか否かを判別し、通行弱者を検知する通行弱者判別部25と、通行弱者判別部25から出力される通行弱者検知信号を入力し、改札機制御部21に対して出力する通信部26とを備えている。上記の通行者位置計測部24と通行弱者判別部25の各々の動作の詳細は、以下のフローチャートを参照して説明される。
【0034】
次に、
図4〜
図8に示すフローチャートを参照して自動改札機10による通行制御の処理を説明し、さらに、それに関連して通行弱者の検知動作の処理を説明する。自動改札機10では、通行者12が通行弱者であると検知された場合には、通行弱者に応じた通行制御が行われる。
【0035】
図4において最初の判断ステップS11では通行者12が検知されたか否かが判断される。判断ステップS11での通行者検知の判断は、非接触ICカードがICカードタッチ部13にタッチされたか否か、または乗車券(磁気券)が乗車券投入部14に投入されたか否かに基づいて判断される。判断ステップS11でYESである場合には通行弱者判別のルーチンステップS100が実行され、NOである場合には判断ステップS11の前段に戻る。通行弱者判別のルーチンステップS100の内容は
図5および
図6を参照して後述される。通行弱者判別のルーチンステップS100の後には、通行可能条件を満たしているか否かを判断する判断ステップS12が実行される。通行可能条件は、有効なICカードまたは乗車券を確認できたか否かという条件である。判断ステップS12でYESである場合には次の判断ステップS13で通行者12が通行弱者か否かが判断される。判断ステップS13では、通行弱者判別のルーチンステップS100の判別結果に基づいて判断が行われる。また判断ステップS12でNOである場合には、判断ステップS14で通行者12が無札通行者であるか否かが判断される。判断ステップS14でYESである場合には次の判断ステップS15において通行弱者か否かが判断され、NOである場合には最初の判断ステップS11の前段に戻る。判断ステップS15では、通行弱者判別のルーチンステップS100の判別結果に基づいて判断が行われる。
【0036】
ここで、上記の通行弱者判別処理のルーチンステップS100を
図5〜
図7を参照して説明する。
【0037】
自動改札機10の改札通路11に進入した通行者12が通行弱者であるか否かの判別は、カメラ17の撮影動作で得られた画像情報に基づいて、通行者の通行速度の変化パターンを求めることにより行われる。そこで、最初の処理ではカメラ17による撮影動作および画像情報の取込みが行われる(処理ステップS101)。処理ステップS101は一定の時間間隔(周期)で繰り返し行われる。これにより、通行者の複数の位置が計測される(処理ステップS102)。上記の処理は、
図2に示した通行者位置計測部24で実行される。
【0038】
上記の処理ステップS102による通行者の位置計測では、通行者12を撮影して得た画像情報において特定の部位の位置座標を取得する。自動改札機10の機械本体10A上のカメラ17の設置位置と、カメラ17の撮影範囲19とに基づいて位置に係る空間が予め定義されており、その空間内で位置が決められる。
【0039】
次に、一定時間の時間経過に伴う通行者の複数の位置情報に基づいて、当該一定時間の時間経過における通行者の複数の通行速度が計測される(処理ステップS103)。カメラ17によって得られる画像情報を利用する場合には、一定周期で撮影されるフレーム間での移動量で通行速度を計算する。例えば、1/30秒周期で画像を取得するカメラの場合には、フレーム間の差分が5ピクセルであれば、150ピクセル/秒のように通行速度を算出することができる。より正確に通行速度を得るには2台以上のカメラを利用したステレオ画像処理によって、正確な通行者位置をフレーム毎に算出し、1フレーム進む毎の通行者12の移動距離から移動速度を求めることができる。このようにして、通行者12の複数の通行速度に基づいて通行者12の通行速度の変化パターンを求めることが可能となる。
【0040】
次の処理ステップS104では、求められた通行者12の通行速度の変化パターンに基づいて通行弱者であるか否かを判別して検知するための処理が行われる。通行弱者の判別・検知の処理のための処理ステップS104では、通行者の通行速度の変化パターンが前述の
図3(B)で示した通行速度32に一致するか否かについて確認される。通行弱者であるか否かを判断する次の判断ステップS105においては、処理ステップS104で得られた通行者12の通行速度の変化パターンが通行速度32に一致するときにはYESと判断され、一致しないときにはNOと判断される。判断ステップS105でYESと判断されるときには通行弱者が検知されたということを意味する。上記の処理および判断は、
図2に示した通行弱者検知部25で実行される。判断ステップS105でYESのときには
図2に示すように通信部26から改札機制御部21へ通行弱者検知信号が送られ(処理ステップS106)、NOのときには最初の処理ステップS101に戻る。
【0041】
上記の「通行弱者の判別・検知」の処理ステップS104の詳細内容の一例を
図6のフローチャートと
図7の解説図を参照して説明する。
【0042】
図6において、最初に通行速度が閾値Th以下であるか否かが判断される(判断ステップS201)。閾値Thは、通行弱者の通行速度の変化パターンを示した
図7に示されている。
図7に示した通行速度の変化パターンでは、
図3の(B)に示した通行弱者の通行速度32の変化パターンにおいて、計測された各時点の通行速度値が記号「●」と「○」でプロットして示されている。通行速度値を表す記号「●」は閾値Thよりも大きな値を意味し、通行速度値を表す記号「○」は閾値Th以下の小さい値を意味している。すなわち「○」は通行速度が下落した状態における速度値を意味している。
【0043】
判断ステップS201でYESである場合には、閾値以下連続回数を1つカウントアップし(処理ステップS202)、NOである場合には閾値以下連続回数のカウント値をクリアして最初の判断ステップS201の前段階に戻る(処理ステップS203)。処理ステップS202は、通行弱者の通行速度32の変化パターンにおいて閾値Th以下の通行速度値の発生回数をカウントすることを意味する。また処理ステップS203は、通行速度31の変化で下落の状態が終わり、通行速度の値が閾値Thより大きくなる変化状態になったので、閾値以下のカウントを終了することを意味している。
【0044】
処理ステップS202の後には判断ステップS204が実行される。判断ステップS204は、閾値以下連続回数が設定された回数M以上であるか否かが判断される。判断ステップS204でNOである場合には上記のステップS201,S202,S204を繰り返す。処理ステップS202はカウンタとして機能する。判断ステップS204でYESである場合には、次の処理ステップS205に移行する。処理ステップS205では、現に通行している通行者12は通行弱者であると判断する。こうして、通行者12が通行弱者と判断され、通行弱者が検知されることになる。通常の利用者の場合には、前述した通り、
図3(A)に示した通行速度31の変化パターンであるので、
図6に示した通行弱者検知処理の流れは実行されず、通行弱者であるという判別・検知がなされることはない。
【0045】
図6に示された通行弱者の判別・検知によれば、
図7に示した閾値Th以下の小さい通行速度値を示す「○」の数を順次にカウントすることによって通行弱者であるか否かを判断するので、通行速度の遅い通行者のすべてを通行弱者とみなして検知することになる。
【0046】
図8に、上記の「通行弱者の判別・検知」の処理ステップS104の詳細内容の他の例を示す。この処理の内容においてステップS201〜S204は
図6で説明した内容と同じである。この処理の内容で特徴的な点は、閾値以下連続回数が設定された回数M以上であるか否かを判断する判断ステップS204においてYESの場合に、処理ステップS206に移行する点である。処理ステップS206では、通行速度下落の回数をカウントする処理が行われ、当該下落回数を1つカウントアップする。この処理ステップS206によれば、
図7に示されるように、通行速度31の変化パターンにおいて通行速度の下落32aの状態の発生回数がカウントされる。そして次の判断ステップS207では、通行速度の下落回数が設定回数N以上であるか否かが判断される。判断ステップS207でNOであるときには最初の判断ステップS201まで戻り、YESであるときには現に通行している通行者12は通行弱者であると判断する(処理ステップS208)。こうして、通行者12が通行弱者と判断され、通行弱者が検知されることになる。
図8に示した「通行弱者の判別・検知」の処理によれば、通行者12の左右の歩行速度の違いをより確実に算出することができる。この処理によれば、通行速度が閾値Th以下の低速がM以上である場合に下落状態と判断し、この下落状態の回数がN以上となると、左右の歩行速度が異なると判断して通行弱者が検知される。
【0047】
図5のフローチャートに戻り、処理ステップS106に示すように通信部26から改札機制御部21へ通行弱者検知信号が送られると、
図4で示した判断ステップS13,S15の各々において通行弱者であると判断され、YESとなる。
【0048】
判断ステップS13でYESと判断された場合には、改札機制御部21は受付停止を行う受付不可信号をICカードタッチ部13と乗車券投入部14に与え、ICカードの読取り動作または乗車券の読取り動作を停止する(処理ステップS16)。そして、その後、予め設定された任意時間の間、上記の読取り動作の中止状態を維持する(処理ステップS17)。当該任意な一定時間の経過後、改札制御部21は受付開始信号をICカードタッチ部13と乗車券投入部14に与え、ICカードの読取り動作または乗車券の読取り動作を開始し、受付動作を再開する(処理ステップS18)。
【0049】
改札制御部21に関する上記の処理ステップS16〜S18によって、通行弱者が自動改札機10の改札通路11に進入したときには、その後、改札のための受付動作を遅延させ、通行弱者に続いて改札通路11に進入しようとする利用者の進入動作が遅れるようにし、通行弱者と後続者との間の間隔を広くする。これにより通行弱者と後続の通常の利用者との間の接触および衝突の事故をなくすことができる。
【0050】
なお判断ステップS13でNOと判断された場合には、通行弱者が検出されない場合であるので、処理を終了し、改札制御部21において通常の改札制御が実行される。
【0051】
次に判断ステップS15において、YESと判断された場合には通行弱者用のドア制御が実行され(処理ステップS19)、NOと判断された場合には通常のドア制御が実行される(処理ステップS20)。通行弱者用のドア制御の処理ステップS19では、改札機制御部21がドア部22に対して通行弱者用のドア制御信号を送り、開閉ドア16を例えば閉めない、または半開状態にするという安全なドア制御が行われる。これにより通行弱者が通路出口11B側の開閉ドア16への衝突の衝撃を和らげることができる。通常のドア制御の処理ステップS20では、改札機制御部21がドア部22に対して通常のドア閉信号を送ってドア駆動装置を駆動し開閉ドア16を閉じさせる。処理ステップS19,S20を実行した後、処理は終了する。
【0052】
次に、
図9〜
図11を参照して本発明に係るゲート装置の第2の実施形態を説明する。第2の実施形態でもゲート装置は自動改札機である。また第2の実施形態では、
図1に示した物体検知センサ18の検知動作で得られたセンサ情報に基づいて通行者(旅客)が通行弱者であるか否かを判断し、通行弱者を検知する。
【0053】
図9は、第2実施形態に係る自動改札機10に設けられた通行制御システムと通行弱者検知システムの各構成の機能ブロック図を示す。
【0054】
図9において、
図2で説明した要素と同一の要素には同一の符号を付している。すなわち、通行制御システムの構成要素として、改札機制御部21、ICカードタッチ部13、乗車券投入部14、通行表示部15、ドア部22が設けられている。
【0055】
また通行弱者検知システムのセンサとして複数の物体検知センサ18が利用される。複数の物体検知センサ18の各々は、その前に通行者12が存在するとき、当該存在を表すセンサ情報を出力する。通行者検出部41は、それらのセンサ情報に基づいて通行者12の位置を検出する。物体検知センサ18から出力されたセンサ情報は、通行弱者検知部42の通行速度計測部43にも入力される。また通行者検出部41で検出された通行者位置情報も通行速度計測部43に入力される。通行速度計測部43で通行速度が計測される。通行速度計測部43で計測された通行速度は低速カウント更新部44に入力される。低速カウント更新部44は、入力された通行速度の値が所定の低速である場合にはメモリ(カウンタ機能部)45で記憶された低速の通行速度のカウント値を更新する。低速カウント更新部44で更新された低速のカウント値は通行弱者判別部46に入力される。通行弱者判別部46は、入力された低速のカウント値が所定の条件を満たすとき、通行者弱者検知信号を改札機制御部21に対して与える。また改札機制御部21には、上記の通行者検出部41から通行者位置情報が入力されている。
【0056】
物体検知センサ18を利用する場合には、通行者検出部41は、各物体検知センサ18の受光・遮光の情報に基づいて通行者12の位置を検出する。また通行速度計測部43は、受光・遮光の推移速度に基づいて通行者12の通行速度を求める。つまり、複数の物体検知センサ18の各々から出力される受光・遮光に係るセンサ情報の変化に要する時間を計測することにより、通行速度が求められる。例えば複数の物体検知センサ18が5cm間隔で配置されている場合には、進行方向に何秒間隔でセンサの受光・遮光の状態が変化するかを計測することにより通行速度を計算することができる。或る物体検知センサ18のセンサ状態が変化してから次の位置にある物体検知センサ18のセンサ状態が変化するのに1秒かかったとすれば、通行速度は5cm/秒であることが分かる。
【0057】
図10のフローチャートを参照して通行弱者の判別・検知の処理の流れの第1の例を説明する。この通行弱者の判別・検知の処理の流れは、
図9に示した通行弱者検知部42の動作を示している。またこの通行弱者の判別・検知は、
図6で説明した通行弱者の判別・検知に対応している。
図10において、最初の処理ステップS301では通行者12の通行速度が計測される。通行速度計測部43での処理内容である。処理ステップS301で計測された通行速度が前述した閾値Th以下であるか否かが判断される(判断ステップS302)。判断ステップS302でYESである場合には次の処理ステップS303で低速カウンタの加算が行われ、NOである場合には加算処理が行われず、判断ステップS304に移行する。低速カウンタの加算処理の処理ステップS303は、低速カウント更新部44とメモリ35により実行される。こうして、通行者12の通行速度の変化パターンが仮に
図7に示すような場合において、閾値Th以下の低速の通行速度の数がカウントされる。その後、次の判断ステップS304において、低速カウンタでのカウント値がM以上であるか否かが判断される。判断ステップS304において、YESの場合には通行者12は通行弱者であるとみなされ(処理ステップS305)、NOの場合には通行者12は通行弱者でないとみなされる(処理ステップS306)。判断ステップS304、処理ステップS305,S306は通行弱者判別部46で実行される。処理ステップS305で通行弱者であるとみなされたときには、通行弱者判別部46から改札機制御部21に対して通行弱者検知信号が送られる。
【0058】
次に
図11のフローチャートを参照して通行弱者の判別・検知の処理の流れの第2の例を説明する。この通行弱者の判別・検知の処理の流れは、
図10に示した通行弱者の判別・検知の処理を改善したものであり、左右の歩行速度の違いをより確実に算出することができる。この通行弱者の判別・検知は、
図8で説明した通行弱者の判別・検知に対応している。
図11の処理の流れにおいて、
図10で説明したステップと同一のステップには同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。判断ステップS301でNOと判断された場合には、判断ステップS311、処理ステップS312、処理ステップS313が実行される。また判断ステップS314が設けられる。判断ステップS311では低速カウンタのカウント値がM以上であるか否かが判断される。低速カウンタのカウント値がM以上であるということは、下落32aの状態が発生したことを意味する。判断ステップS311がYESである場合には処理ステップS312が実行され、速度下落カウンタが加算される。その後の処理ステップS313が実行される。判断ステップS311でNOと判断された場合にも処理ステップS313が実行される。処理ステップS313では低速カウンタがクリアされる。その後、判断ステップS314に移行する。判断ステップS314では速度下落カウンタのカウント値がN以上であることが判断される。判断ステップS314において、YESの場合には通行者12は通行弱者であるとみなされ(処理ステップS305)、NOの場合には通行者12は通行弱者でないとみなされる(処理ステップS306)。処理ステップS305で通行弱者であるとみなされたときには、通行弱者判別部46から改札機制御部21に対して通行弱者検知信号が送られる。
以上の処理の流れによれば、低速カウンタのカウント値、低速下落カウンタのカウント値の組合せに基づいて通行者12が通行弱者であるか否かが判断され、より高い精度で通行弱者を判別・検知することができる。
【0059】
上記の実施形態では自動改札機の例を説明したが、本発明は自動改札機に限定されず、セキュリティーゲート等のゲート装置にも一般的に適用することができる。一般的なゲート装置の場合には、上記の改札通路は入出場のための通路となり、ICカードタッチ部(ICカード読取り装置)および乗車券投入部(乗車券読取り装置)は、通路を通過しようとする通行者が所持する入出場媒体(入場用のICカードや磁気チケット等)との間で通行情報の送受を行う入出場情報読取り装置となる。また改札機制御部は、当該入出場読取り装置の読取り動作や通行阻止用ドアの開閉動作を制御する入出場制御手段となる。
【0060】
以上の実施形態で説明された構成、形状、大きさおよび配置関係については本発明が理解・実施できる程度に概略的に示したものにすぎない。従って本発明は、説明された実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示される技術的思想の範囲を逸脱しない限り様々な形態に変更することができる。