(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したような分取液体クロマトグラフ装置では、最適なクロマトグラフィ条件を算出するために、同一の試料と溶離液を用いて薄層クロマトグラフィを行い、目的とする成分の、溶離液に対する移動度Rfを手作業で算出している。具体的には、薄層クロマトグラフィの対象となるTLCプレートを紫外光等で照射して、その光を照射している間に手作業で目的とする成分のスポットを描き、その後、溶離液の基準位置からの浸透距離を定規で測定すると共に目的とする成分の基準位置からの移動距離を定規で測定し、溶離液の浸透距離に対する成分の移動距離の比を求めている。そして、得られた移動度Rfを分取液体クロマトグラフ装置に入力して、最適なクロマトグラフィ条件を求めている。
【0007】
しかし、上述した分取液体クロマトグラフ装置において分取液体クロマトグラフィを行う際に、目的とする成分の移動度Rfを算出しなければならないという問題がある。この移動度Rfの算出にはユーザに多大な労力と時間を要求し、分取液体クロマトグラフィの省力化、スピードアップの大きな障害となっている。また、正確な移動度Rfを算出するのに経験を必要とし、ユーザ毎の算出値のばらつきも避けられない。また、正確な移動度Rfが測定できなければ、その移動度Rfに従って算出したクロマトグラフィ条件が理想的な条件から離れてしまう。
【0008】
移動度Rfを算出する際に問題となる点を具体的に列挙すると以下のようになる。まず、目的とする成分により形成されるスポットが目視しづらい場合、移動距離の測定が難しい。また、薄層クロマトグラフィの展開距離自体が短い場合には誤差が生じやすい。これに加え、成分の特性によりスポットが展開方向に伸びるテーリングが生じると成分の移動距離の決定が難しく、他の成分のスポットと重なるような場合にはさらに測定が難しくなる。さらに、発色試薬により目的とする成分を呈色して成分の基準位置からの移動距離を測定する場合には、その成分の特性によりスポットの色、濃さが変動するため正確な移動距離を測定することが難しい。
【0009】
本発明の目的は、このような移動度Rfの算出における問題を解消し、ユーザが容易に且つ迅速に分取液体クロマトグラフィを行うことのできる分取液体クロマトグラフ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の分取液体クロマトグラフ装置は、薄層クロマトグラフ装置を備えており、前記薄層クロマトグラフ装置は、薄層クロマトグラフィを実行するために試料と溶離液とを含んだTLCプレートに光を照射する照射手段と、前記光が照射されている前記TLCプレートを撮像するための撮像手段と、前記撮像手段による撮像によって得られたデジタル画像データに係る画像を表示するディスプレイと、前記ディスプレイに表示された前記画像上においてユーザが初期位置である基準位置、前記溶離液の到達位置、及び移動度Rfの算出対象となる前記試料の成分の位置を指定することにより、前記デジタル画像データに基づき、前記溶離液の前記基準位置からの浸透距離及び前記試料の成分の前記基準位置からの移動距離を取得し、前記浸透距離に対する前記移動距離の比を取ることで前記移動度Rfを算出する移動度算出手段とを有し、前記分取液体クロマトグラフ装置は、前記移動度算出手段によって算出された前記移動度Rfを、液体クロマトグラフィにおける
溶離液に含まれる複数の溶媒の混合比の条件を算出するために取り込む分取液体クロマトグラフ制御手段を有することを特徴とする。
【0011】
この分取液体クロマトグラフ装置によれば、ユーザは画像上で対象となる試料の成分を指定するだけで、ユーザが移動度Rfを算出することなしに分取液体クロマトグラフィにおける最適なクロマトグラフィ条件
(以下において、「溶離液に含まれる複数の溶媒の混合比の条件」を意味するものとして用いる)を設定できる。これにより、上述した移動度Rfの算出における問題が解消される。すなわち、測定者ごとの算出値のばらつきをなくすことができる。また、移動度算出手段は、デジタル画像データを元に溶離液の基準位置からの浸透距離、成分の基準位置からの移動距離を検出するため、ユーザが目視確認して距離を決定する場合に比べ測定精度が上昇する。特に成分のスポットが目視しづらい場合、成分が展開方向に伸びている場合、他の成分のスポットと重なっている場合にはその効果がさらに顕著になる。そして、移動度Rfの測定精度が上昇することにより、分取液体クロマトグラフィにおけるクロマトグラフィ条件をより理想的な条件に近づけることができる。また、分取液体クロマトグラフ制御手段が取り込む移動度Rfのデータはクロマトグラフィ条件の算出の他にも試料の溶出時間の算出、サンプルの負荷量の算出などに利用することができる。
【0012】
また、本発明の分取液体クロマトグラフ装置において、前記薄層クロマトグラフ装置は、前記撮像手段による前記TLCプレートのデジタル画像データを記憶する記憶手段をさらに有していることが好ましい。
【0013】
これによると、TLCプレートのデジタル画像データを記憶できることで、必要に応じてデータを読み出してクロマトグラフィ条件を作成でき、TLCプレートのサンプルを保存する必要がなくなる。特に、発色試薬により目的とする成分を呈色して成分の基準位置からの移動距離を測定する場合には、経時的にスポットが退色するため有用である。
【0014】
また、本発明の分取液体クロマトグラフ装置においては、前記薄層クロマトグラフ装置が有する前記移動度算出手段は、前記デジタル画像データに基づき、前記基準位置から、ユーザによって指定され
た成分のスポットにおける前記成分の濃度が最も高い位置までを前記成分の移動距離として前記移動度Rfを算出することが好ましい。
【0015】
これによれば、クロマトグラフィ条件を算出するための薄層クロマトグラフィにおいて移動度Rfを算出する試料の成分が移動方向に長く伸びて、テーリングするような場合にでも試料の成分の基準位置からの移動距離を正確に測定できる。
【0016】
さらに、本発明の分取液体クロマトグラフ装置において、前記薄層クロマトグラフ装置は、前記ディスプレイ上において、前記試料の成分のスポットとその周辺の領域との濃度差を拡大可能な濃度変更手段をさらに有することが好ましい。
【0017】
これによると、TLCプレートのデジタル画像データ上のスポットを目視確認する場合、目的とする成分の吸光係数が小さい、あるいは成分の量が微量である等の理由により色が薄く判別が難しいような場合にでも、着目する成分のスポットを強調表示することでユーザが容易に目的のスポットを判別でき、指定することができる。
【0018】
さらに、本発明の分取液体クロマトグラフ装置において、前記薄層クロマトグラフ装置は、前記撮像手段による撮像によって得られたデジタル画像データの前記ディスプレイ上での表示サイズを拡大可能な表示サイズ変更手段をさらに有することが好ましい。
【0019】
これによれば、クロマトグラフィ条件を算出するための薄層クロマトグラフィにおける試料の成分の基準位置からの移動距離が小さく、ユーザがディスプレイ上で目的の成分のスポットが他の成分のスポットと近接していて確認しづらい場合にでも、デジタル画像データを拡大することで、目的のスポットを指定する操作を容易に実行できる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の分取液体クロマトグラフ装置によれば、ユーザは画像上で対象となる試料の成分を指定するだけで、ユーザが移動度Rfを算出することなしに分取液体クロマトグラフィにおける最適なクロマトグラフィ条件を設定できる。これにより、上述した移動度Rfの算出における問題が解消される。また、移動度算出手段は、デジタル画像データを元に溶離液の基準位置からの浸透距離、成分の基準位置からの移動距離を検出するため、ユーザが目視確認して距離を決定する場合に比べ測定精度が上昇する。特に成分のスポットが目視しづらい場合、成分が展開方向に伸びている場合、他の成分のスポットと重なっている場合にはその効果がさらに顕著になる。そして、移動度Rfの測定精度が上昇することにより、分取液体クロマトグラフィにおけるクロマトグラフィ条件をより理想的な条件に近づけることができる。また、分取液体クロマトグラフ制御手段が取り込む移動度Rfのデータはクロマトグラフィ条件の算出の他にも試料の溶出時間の算出、サンプルの負荷量の算出などに利用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
<分取液体クロマトグラフ装置の概略構成>
本実施形態に係る分取液体クロマトグラフ装置10について説明する。分取液体クロマトグラフ装置10は、溶媒A及びBをそれぞれ貯留した容器11および12、電磁弁13、ポンプP1、並びに、容器14を有している。容器11及び12が貯留した溶媒A及びBは、ポンプP1によって汲み上げられ、いったん容器14に貯留される。このとき、汲み上げられる溶媒A及びBのそれぞれの量は、電磁弁13によって調節されている。これによって、電磁弁13によって調節された混合比で溶媒A及びBが混合され、容器14において移動相となる溶離液が形成される。
【0023】
なお、溶離液として用いられる溶媒は2種類に限定されず、使用状態・目的に応じてその数が増やされる。一般に、溶媒A及びBには、非極性分子及び極性分子が用いられる。
【0024】
分取液体クロマトグラフ装置10は、さらに、ポンプP2、インジェクター15、及び、カラム16を有している。ポンプP2は、容器14に貯留された溶離液を汲み上げて、インジェクター15へと流し出す。インジェクター15には、複数の成分を含んでいる試料が設置されている。インジェクター15に設置された試料は、ポンプP2によって汲み上げられた溶離液と共に、カラム16に流し出される。
【0025】
カラム16には、固定相が充填されている。固定相にはシリカゲルが用いられている。移動相である溶離液と共にカラム16に流入した試料は、カラム16の固定相に吸着しつつ溶離液の流下に従って移動し、所定時間後にカラム16から排出される。ここで、試料に含まれた各成分が排出されるのに要する時間は、溶離液との親和性やカラムの固定相と各成分との相互作用に依存し、成分毎に異なる。つまり、溶離液との親和性の弱いものや、固定相との相互作用が強いものは、カラム内に長く留まる。また、逆に、溶離液との親和性の強いものや、固定相との相互作用の弱いものは、早く排出される。これによって、カラムに設置された試料が成分毎に分離されて溶出する。
【0026】
なお、カラムは一本に限定されない。複数のカラムが並設されており、例えば、複数種類の分取液体クロマトグラフィが可能となるように、選択的に経路を選ぶことができるような構成とされていてもよい。
【0027】
分取液体クロマトグラフ装置10は、さらに、検知器17及びフラクションコレクター18を有している。検知器17は、カラム16から排出される試料の各成分を検知する。フラクションコレクター18は、検知器17の検知結果に基づいて、試料に含まれる各成分をそれぞれ異なる試験管に収容する。
【0028】
分取液体クロマトグラフ装置10は、さらに、分取液体クロマトグラフ制御部19を有している。分取液体クロマトグラフ制御部19の機能は、汎用のコンピュータ及び所定のプログラムによって実現されている。このコンピュータには、CPU、ROM、RAM、ハードディスク、FDやCDの駆動装置などのハードウェアが収納されており、ハードディスクには、このコンピュータを分取液体クロマトグラフ制御装置19として機能させるためのプログラム(このプログラムは、CD−ROM、FD、MOなどのリムーバブル型記録媒体に記録しておくことにより、任意のコンピュータにインストールすることが可能である。)を含む各種のソフトウェアが記憶されている。分取液体クロマトグラフ制御装置19は、後述する薄層クロマトグラフ装置により算出された移動度Rfを取り込んで後述するクロマトグラフィ条件を算出する。また、分取液体クロマトグラフ制御装置19は電磁弁13に電気的に接続されている。そして、分取液体クロマトグラフ制御装置19は、電磁弁13を制御して、溶媒A及びBの混合比を調節する。また、分取液体クロマトグラフ制御装置19は、図示されないポンプP1及びP2の駆動モータに電気的に接続されており、ポンプP1及びP2の駆動を制御する。
【0029】
そして、分取液体クロマトグラフ装置10は、上述した分取液体クロマトグラフィに先立ってクロマトグラフィ条件を算出するために対象となる試料の成分の移動度Rfを薄層クロマトグラフィにより算出する薄層クロマトグラフ装置40を備えている。
【0030】
<分取液体クロマトグラフィの概略>
上記のような構成を有する分取液体クロマトグラフ装置10によって、液体クロマトグラフィが以下のように行われる。
【0031】
まず、容器11及び12に溶媒A及びBが貯留される。そして、インジェクター15に試料が設置される。
【0032】
次に、分取液体クロマトグラフ制御部19が、電磁弁13を制御して混合比を調節しつつ、ポンプP1の駆動を制御して、ポンプP1に溶媒A及びBを汲み上げさせる。このとき、分取液体クロマトグラフ制御部19は、例えば、
図2に示されるグラフ51に従って混合比を調節する。汲み上げられた溶媒A及びBは、調節された混合比で混合され、溶離液として、いったん容器14に貯留される。
【0033】
図2の上段のグラフ51は、溶媒A及びBの混合比の時間変化の例を表したものである。このグラフ51において横軸は経過時間、縦軸は、溶媒A及びB全体の質量に対する溶媒Bの質量の割合である。グラフ51に示されるように、時間帯52が、W(wait)、G(gradient)、T(top)、FW(forward wash)、EQ(equilibration)(EQのみ図示されず)の順に設定されている。
【0034】
グラフ51に示されるように、溶媒A及びBの混合比は、経時変化するように設定されている。時間帯Wと時間帯T及びFWとでは混合比が異なっている。時間帯W、T及びFWのそれぞれの時間帯内では、混合比が一定に保たれている。一方、時間帯Gでは、混合比が直線的に変化するように設定されている。
【0035】
図2の中段の表53は、時間帯52の各時間帯の溶媒A及びBにおける混合比の設定例を示している。この表に示される設定例によると、溶媒Aの質量:溶媒Bの質量が、時間帯Wでは、80:20に、時間帯T、FW及びEQでは、74:26に、それぞれ設定されている。
【0036】
次に、分取液体クロマトグラフ制御部19が、ポンプP2の駆動を制御して、ポンプP2に容器14に貯留された溶離液を汲み上げさせる。汲み上げられた溶離液は、インジェクター15に設置された試料と共に、カラム16に流入する。カラム16に流入した試料に含まれる各成分は、成分毎に分離され、所定時間経過後にカラム16から溶出する。
【0037】
図2の下段のグラフ54は、カラム16から流出する試料の溶出曲線の例である。グラフ横軸は経過時間、縦軸は吸光度である。カラム16から溶出した試料に含まれる各成分がピークに達するごとに、溶出曲線は突出した値を示す。グラフ54は、このような突出値PK1及びPK2を示している。
【0038】
なお、分取液体クロマトグラフ制御部19が、図示されない表示装置を有しており、グラフをその表示装置に表示させるようなものであってもよい。
【0039】
このように、分取液体クロマトグラフィにおいては、グラフ51のように溶離液の混合比を時間的に変化させて目的となる成分を分離して取り出す。この混合比の最適な条件が本明細書におけるクロマトグラフィ条件に該当する。
【0040】
<薄層クロマトグラフィ>
以下は、薄層クロマトグラフィ(TLC:thin layer chromatography)に係る説明である。薄層クロマトグラフィは、液体クロマトグラフィのクロマトグラフィ条件の算出に必要な試料の各成分の移動度Rfを導出するために行われる。
図3は、薄層クロマトグラフィを説明するための図である。
【0041】
薄層クロマトグラフィは、
図3に示すように試料23が設置されたTLCプレート20と、溶離液22が用意された容器21を用いて行われる。容器21に用意された溶離液22は液体クロマトグラフ装置10によるクロマトグラフィに用いられる溶媒と同様の溶媒を所定の混合比で混合した、溶離液22が貯留される。また、TLCプレート20は、液体クロマトグラフ装置10に用いられる固定相と同様の材料からなり、シリカゲルが用いられている。また、TLCプレート20には、液体クロマトグラフ装置10による液体クロマトグラフィの試料と同じ成分を有する試料23が設置される。試料23が設置されたTLCプレート20は、
図3に示されるように、容器に貯留された溶離液22に浸される。
【0042】
TLCプレート20が溶離液22に浸されると、毛管作用により溶離液22がTLCプレート20に吸い上げられてゆく。TLCプレート20に設置された試料23に含まれる成分は、溶離液22の移動に伴って、徐々に上方に移動する。そして、TLCプレート20に浸透した溶離液22の浸透距離と試料23に含まれる成分の移動距離に基づいて、その成分に係る移動度Rfが求められる。
図4は、溶離液22がTLCプレート20の上端に達したときの様子を示している。TLCプレート20における試料23の初期位置を基準位置Sとし、基準位置Sから溶離液の到達位置EであるTLCプレート20の上端までの長さを基準長さ1.0としたとき、移動度Rfは基準長さに対する基準位置から成分の位置Cまでの移動距離(0≦Rf≦1.0)の比として求められる。
【0043】
上記のような薄層クロマトグラフィにより、混合比と移動度Rfとの関係が求められる。なお、一般に、移動度Rfは混合比の一次関数で表される。このとき、一次関数の傾き、つまり、混合比に対する移動度Rfの変化率は、試料23に含まれる成分によらず、一定である。
【0044】
<薄層クロマトグラフ装置>
図5は、本実施形態に係る分取液体クロマトグラフ装置10に備えられた薄層クロマトグラフィを行うための薄層クロマトグラフ装置40の模式図である。薄層クロマトグラフ装置40は、薄層クロマトグラフィの制御を行う薄層クロマトグラフ制御部43、TLCプレート20に可視光または紫外光を照射する照射部41、照射部41によって可視光または紫外光が照射されているTLCプレート20を撮像する撮像部42、撮像部42によって撮像されたTLCプレート20の画像を表示するディスプレイ49を有している。
【0045】
薄層クロマトグラフ制御部43の機能は、汎用のコンピュータ及び所定のプログラムによって実現されている。このコンピュータには、CPU、ROM、RAM、ハードディスク、FDやCDの駆動装置などのハードウェアが収納されており、ハードディスクには、このコンピュータを薄層クロマトグラフ制御部43として機能させるためのプログラム(このプログラムは、CD−ROM、FD、MOなどのリムーバブル型記録媒体に記録しておくことにより、任意のコンピュータにインストールすることが可能である。)を含む各種のソフトウェアが記憶されている。そして、これらのハードウェア及びソフトウェアが組み合わされることによって、以下に説明する移動度算出部45、記憶部46、濃度変更部47、および表示サイズ変更部48が構築されている。
【0046】
移動度算出部45は、ユーザがTLCプレート20画像上で基準位置S、対象となる試料の位置C、及び溶離液の到達位置Eをこの順番で入力部50のマウスでクリックして指定した点と、TLCプレート20のデジタル画像データに基づいて以下のように移動度Rfを算出する。移動度算出部45は、ユーザによって指定された画像上の画素の色情報を取得し、その色データがユーザにより設定可能なしきい値よりも大きく変化する画素を境界とする。このようにユーザにより指定された位置付近の画素の情報を処理することにより、移動度算出部45は、ユーザが指定した位置をより正確に認識できる。このようにして、移動度算出部45は、基準位置Sおよび溶離液の到達位置Eをユーザが指定した位置とデジタル画像データを元に特定する。次に、移動度算出部45は、同じ方法によりユーザが指定した試料の成分のスポットを特定する。そして、そのスポットの成分にかかる色情報の濃度をスポット内の全ての画素について比較し、濃度の最も高い画素をその成分の位置Cと特定する。その後、移動度算出部45は、基準位置Sから溶離液の到達位置Eまでの浸透距離と、基準位置Sから成分の位置Cまでの移動距離を算出し、移動距離を浸透距離で割ることによってユーザが指定した成分の移動度Rfを算出する。
【0047】
記憶部46は、撮像部42によって撮像されたTLCプレート20のデジタル画像データを記憶する。このようにデジタル画像データを記憶しておくことで、必要に応じてデジタル画像データを読み出して目的とする試料の成分の移動度Rfを移動度算出部45により算出できるようになる。また、試料が経時変化により退色してしまい、移動度Rfを算出できなくなることを防止できる。さらに、手作業で移動度Rfを算出する場合に、溶離液がTLCプレートの上端に達したことをユーザが見落としたときには、溶離液の基準位置からの浸透距離が正しく算出できなくなり、薄層クロマトグラフィを再度行わなければならない。しかし、撮像部42が一定時間ごとにTLCプレートを撮像してデジタル画像データを記憶部に記憶するようにすれば、このようなユーザの見落としによる作業のやり直しを防止することができる。また、溶離液の到達位置に注意する必要がなくなり、ユーザの負担が減少する。
【0048】
濃度変更部47は、撮像部42によって撮像され、ディスプレイ49に表示されたTLCプレート20の画像において、試料の成分のスポットがユーザにとって確認しづらい場合に、ユーザが入力手段50によって入力した指示に基づいて目的とする成分のスポットの濃度を強調する。このとき、濃度変更部47はユーザによって指定され
た成分のスポットの濃度とその成分が達していない位置の濃度の差を拡大するように画像の濃度を調整する。これによって、ユーザは目的となる成分のスポットを明確に確認することができる。
【0049】
表示サイズ変更部48は、撮像部42によって撮像され、ディスプレイ49に表示されたTLCプレート20の画像において、目的とする試料の成分のスポットと、他の成分のスポットが近接しており、スポットの判別が難しいような場合に、ユーザが入力手段50によって入力した指示に基づいて表示画像を拡大する。これによって、ユーザは目的となる成分のスポットを明確に確認することができる。
【0050】
照射部41は、可視光または紫外光を放射できるランプによって構成されており、薄層クロマトグラフ制御部43からの信号により光をTLCプレート20に照射する。
【0051】
撮像部42は、デジタルカメラで構成されており、薄層クロマトグラフ制御部43からの信号に従って、照射部41により光が照射されているTLCプレート20の画像を撮像する。
【0052】
ディスプレイ49は、撮像部42によって撮像されたTLCプレート20の画像を表示する。
【0053】
次に上述した薄層クロマトグラフィにおいて、移動度Rfを薄層クロマトグラフ装置40によって算出し、分取液体クロマトグラフ装置10にそのデータを伝送する手順について説明する。
図6はそのフローチャートである。
【0054】
ユーザは、薄層クロマトグラフ装置40にTLCプレート20をセットする(S1)。TLCプレート20を取り込んだ薄層クロマトグラフ装置40は、液体クロマトグラフ装置10のインジェクター15に貯留されている試料をこのTLCプレート上に滴下し、液体クロマトグラフ装置10の容器14に貯留された溶離液をTLCプレート20の一端から浸透させる(S2)。
【0055】
照射部41は、溶離液が浸透するTLCプレート20に可視光または紫外光を照射しており、撮像部42は、薄層クロマトグラフ制御部43から出力される信号に基づいて可視光または紫外光が照射されているTLCプレート20を撮像する。撮像部42による撮像のタイミングはユーザが入力部50から入力するか、それ以外の場合は薄層クロマトグラフ制御部43内部のクロックに従って一定期間ごとに撮像されるよう設定されている。
【0056】
溶離液が所定の位置まで浸透した時点で、薄層クロマトグラフ制御部43は撮像部42によりTLCプレート20を撮像し(S3)、そのデータを記憶部46に記憶すると共にディスプレイ上に表示する(S4)。ユーザはその画像上で、マウスにより目的とする試料の成分により形成されたスポットを指定する。その際、ユーザはスポットが薄く判別しづらい場合(S5)は、上述した濃度変更部47によりそのスポットを強調表示して指定しやすくできる(S6)。また、ユーザはスポットが他の成分により形成されるスポットと近接して区別しづらい場合(S7)は、上述した表示サイズ変更部48により表示画像を拡大してスポットを指定しやすくできる(S8)。そして、ユーザは移動度Rf算出のために基準位置S、対象となる試料の成分の位置C、および溶離液の到達位置Eをマウスのポインタにより指定する(S9)。そして、移動度算出部45が、ユーザが指定した位置とデジタル画像データに基づき、対象となる試料の成分の移動度Rfを算出する(S10)。そして、算出された移動度Rfは、分取液体クロマトグラフ装置10の分取液体クロマトグラフ制御部19にデータとして伝送される(S11)。
【0057】
ここで、上述したS5および6においてスポットの濃度調整を行った場合について
図7および8を参照しながら説明する。
図7は濃度調整を行う前のTLCプレートの画像である。TLCプレート上のスポットはその位置が判別しにくい。
図8は同じTLCプレートの画像に濃度調整を行ったもので、
図7に比較してスポットが強調して表示されており、5つのスポットが確認できる。これによりユーザは目的とするスポットを容易に指定できる。特に最上部の5つ目のスポットは
図7においては確認が難しく、本発明による濃度調整により初めて確認できるものである。
【0058】
さらに、上述したS7および8においてTLC画像のサイズ調整を行った場合について
図9および10を参照しながら説明する。
図9はサイズ調整を行う前のTLCプレートの画像である。TLCプレート自体が小さく、ユーザはスポットを指定しにくい。
図10は同じTLCプレートの画像にサイズ調整を行ったもので、
図9に比較してTLCプレートの画像が拡大されており、ユーザは容易にスポットを指定できる。
【0059】
つぎに本実施形態の変形例について説明する。本実施形態において薄層クロマトグラフ装置は、TLCプレートの画像を記憶する記憶部を有することとしたが、記憶部を有しない構成とすることもできる。この場合、撮像部はリアルタイムでTLCプレートの画像をディスプレイに表示できるように撮像を繰り返し、ユーザは溶離液が所定の位置に達したことを確認して、基準位置、試料の成分の位置、および溶離液の到達位置をマウスで指定することにより、その成分の移動度が算出される。
【0060】
また、本実施形態では、ユーザが試料の成分により形成されたスポットの位置を指定して、移動度算出手段がその成分の移動度を求める際、その成分の位置を成分のスポットの濃度が最も高い位置として特定していたが、成分の位置はスポットを図形として見た場合の重心として特定してもよい。
【0061】
また、本実施例では、分取液体クロマトグラフ制御部と、薄層クロマトグラフ制御部とを分けて説明したが、この2つの制御部を1つのコンピュータ上に構築することも可能である。