特許第5750306号(P5750306)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5750306
(24)【登録日】2015年5月22日
(45)【発行日】2015年7月22日
(54)【発明の名称】ラベル付き容器の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B65C 3/26 20060101AFI20150702BHJP
   B65D 25/20 20060101ALI20150702BHJP
   B65D 1/00 20060101ALI20150702BHJP
   B65D 1/02 20060101ALI20150702BHJP
   B65C 3/08 20060101ALI20150702BHJP
【FI】
   B65C3/26
   B65D25/20 Q
   B65D1/00 120
   B65D1/02 230
   B65C3/08
【請求項の数】4
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2011-116037(P2011-116037)
(22)【出願日】2011年5月24日
(65)【公開番号】特開2012-240749(P2012-240749A)
(43)【公開日】2012年12月10日
【審査請求日】2014年3月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100081385
【弁理士】
【氏名又は名称】塩川 修治
(72)【発明者】
【氏名】山田 孝
(72)【発明者】
【氏名】稲川 義則
【審査官】 二ッ谷 裕子
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−187159(JP,A)
【文献】 特開2000−226044(JP,A)
【文献】 米国特許第02684775(US,A)
【文献】 米国特許第05832819(US,A)
【文献】 特開昭59−174435(JP,A)
【文献】 特開2012−106774(JP,A)
【文献】 特開2012−140182(JP,A)
【文献】 特開2012−144270(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65C 3/26
B65C 3/08
B65D 1/00
B65D 1/02
B65D 25/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
密封された容器の胴部につながる底部を凹ませて凹み部を形成することで内部の圧力を高め、内部の圧力を高めた状態の容器の表面にラベルを付す、ラベル付き容器の製造方法であって、
前記底部が、胴部につながり、胴部に対して縮径かつ傾斜状をなす傾斜部と、傾斜部につながり、傾斜部から容器の半径方向の外方へ張り出る張り出し部とを有し、張り出し部の閉塞端面を底板部とするものとされ、容器の軸方向の外側へ突き出ている傾斜部及び張り出し部を容器の軸方向の内側へ押し込み、この内側に押し込まれて凹んだ傾斜部と張り出し部とで凹み部を形成する、ラベル付き容器の製造方法
【請求項2】
前記容器の開口部に予めキャップを被着して密封する請求項1に記載のラベル付き容器の製造方法。
【請求項3】
前記容器をブロー成形で成形し、成形後に空気吹き込み口を封止することで、密封された容器を用い、ラベル貼り付け後に空気吹き込み口の近傍をカットして内容物の充填口とする請求項1に記載のラベル付き容器の製造方法。
【請求項4】
前記容器が薄肉容器である請求項1〜3のいずれかに記載のラベル付き容器の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はラベル付き容器の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
射出成形又はブロー成形等されたプラスチック製容器には、特許文献1に記載の如く、容器の表面にタックラベル、シルク印刷ラベル、熱転写ラベル等のデコレーションを貼り付ける等したラベル容器の形態で使用されるものがある。
【0003】
従来のラベル付き容器の製造方法では、容器製造ラインに空圧機器からなる容器加圧装置を備え、容器加圧装置のエアノズルを容器の開口部に挿着して容器の内部の圧力を高め、内部の圧力を高めた状態の容器の表面にラベルを貼り付けている。この方法は、容器の内部の圧力を高めることにより、容器の壁面がラベル貼り付け力により押し込まれて凹み変形することを防止する目的で用いられる。ラベルの貼り付けを終了した後、容器加圧装置のエアノズルが容器の開口部から取外される。
【0004】
尚、薄肉容器ほど、ラベル貼り付け力に対する耐押込変形能を高めることが必要とされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005-345793
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記従来技術では、空圧機器からなる複雑で大規模な容器加圧装置を用いる必要がある。
【0007】
本発明の課題は、容器の表面にラベルを付すに際し、容器の内部の圧力を簡易に高めることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に係る発明は、密封された容器の胴部につながる底部を凹ませて凹み部を形成することで内部の圧力を高め、内部の圧力を高めた状態の容器の表面にラベルを付す、ラベル付き容器の製造方法であって、前記底部が、胴部につながり、胴部に対して縮径かつ傾斜状をなす傾斜部と、傾斜部につながり、傾斜部から容器の半径方向の外方へ張り出る張り出し部とを有し、張り出し部の閉塞端面を底板部とするものとされ、容器の軸方向の外側へ突き出ている傾斜部及び張り出し部を容器の軸方向の内側へ押し込み、この内側に押し込まれて凹んだ傾斜部と張り出し部とで凹み部を形成するようにしたものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明のラベル付き容器の製造方法によれば、容器の表面にラベルを付すに際し、容器の内部の圧力を簡易に高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1はラベル付き容器の製造方法の一例を示す模式図である。
図2図2は凹み部の凹み前後の状態を示す模式図である。
図3図3はラベル付き容器の製造方法の他の例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1に示すラベル付き容器10は、容器本体20にキャップ30を被着して用いられ、容器本体20の表面にラベル40が貼り付けられる。
【0012】
容器本体20は、ブロー成形で形成されたプラスチック成形体からなる。容器本体20を構成する樹脂は、後述する底部24の弾性的な押し込み変形を容易にする必要がある。具体的には、PP、HDPE、PET、EVOH(いわゆるエチレン−酢酸ビニル共重合体の加水分解物)等の各種樹脂を採用でき、これらの各種樹脂を多層にしても良い。容器本体20は、肉厚を概ね300μm〜2000μmとする薄肉容器である。尚、本明細書では、薄肉容器とは、容器重量をR、容器満容量をVとし、R=α・(Vの2/3乗)とするとき、係数α(2/3乗係数という)が0.45以下の容器をいう。
【0013】
容器本体20は、首部21、肩部22、胴部23、底部24を有し、首部21の上端部に内容物を注入及び/又は吐出する開口部20Aを備える。容器本体20は、首部21の外周ねじ部にキャップ30を螺着され、密封される。
【0014】
ラベル40は、商品名等の印刷が施されたフィルムからなり、容器本体20の胴部23の表面に定めたラベル貼り付け面に貼り付けられる。
【0015】
容器10を製造するにあたっては、図1に示す如く、成形後の容器本体20(図1(A))の開口部20Aに予めキャップ30を被着(密封栓を挿着しても可)して密封し(図1(B))、密封された容器本体20の壁面の一部、本実施例では底部24を凹ませて凹み部50を形成し(図1(C))、容器本体20の内容積を減容することで内部の圧力を高め、内部の圧力を高めた状態の容器本体20の胴部23の表面のラベル貼り付け面にラベル40を貼り付ける(図1(D))。
【0016】
容器10において、容器本体20の底部24に凹み部50を形成することによる内容積の減容比率は1〜20%、特に薄肉容器では10〜20%になり、内部の圧力(空気圧力)が高められる。
【0017】
凹み部50を形成する底部24の形態の一例を示せば、図2になる。図2において、容器本体20の底部24は、胴部23につながり、胴部23に対して縮径かつ概ね傾斜状をなす階段状の傾斜部25と、傾斜部25につながり、傾斜部25から容器本体20の半径方向の外方へわずかに張り出る張り出し部26とを有する。
【0018】
容器本体20は、ブロー成形の直後には、底部24を構成する傾斜部25及び張り出し部26が胴部23から容器本体20の外側へ突き出している。張り出し部26の閉塞端面は底板部26Aを構成し、底板部26Aにはピンチオフ部(不図示)を有する。そして、容器本体20の底部24は、容器本体20の外側へ突き出ている傾斜部25及び張り出し部26が容器本体20の内側へ押し込まれると、傾斜部25は、底部24まわりで胴部23との境界部である反転境界部25Aに対し容器本体20における軸方向の内側にまで押し込まれた押し込み反転部25Bとなる。このようにして押し込み反転部25Bを構成するに至った底部24の傾斜部25と張り出し部26とが、容器本体20の内側へ凹んだ凹み部50を形成する。
【0019】
尚、底部24の傾斜部25(押し込み反転部25B)は該底部24まわりに定めた反転境界部25Aに対し、容器本体20における胴部23と張り出し部26の間の環状の部分において軸方向の内側深くにまで押し込まれるから、この押し込みによって形成される凹み部50をその後も安定維持できる。そして、底部24における凹み部50の外周縁(反転境界部25Aの位置)が容器10を正立使用する時の接地面になる。
【0020】
本実施形態では、容器本体20はブロー成型により形成したものを用いたが、射出成形により形成したものを用いても良い。
【0021】
図3は、容器10を製造する他の例を示すものであり、容器本体20の底部24に凹み部50を形成する前に、容器本体20を密封する手段として、ブロー成形された容器本体20の首部21に付帯して開口部20Aから延在する空気吹き込み部(フラッシュ又はバリともいう)21Aを用いたものである。
【0022】
即ち、容器本体20をブロー成形で成形し、成形後に空気吹き込み部21Aに備える空気吹き込み口21Bを封止することで、密封された容器本体20(図3(A))となる。そして、密封された容器本体20の壁面の一部、本実施例では底部24を凹ませて凹み部50を形成し(図3(B))、容器本体20の内容積を減容することで内部の圧力を高める。内部の圧力を高めた状態の容器本体20の胴部23の表面のラベル貼り付け面にラベル40を貼り付ける(図3(C))。ラベル40を貼り付けた後の容器本体20の空気吹き込み部21A(空気吹き込み口21Bの近傍)をカットして内容物の充填口(開口部20A)を形成する(図4(D))。
【0023】
従って、本実施例の容器10によれば、以下の作用効果を奏する。
(a)密封された容器本体20の壁面の一部(底部24)を凹ませることで内部の圧力を高め、内部の圧力を高めた状態の容器本体20の表面にラベル40を貼り付ける。容器製造ライン上に空圧機器からなる容器加圧装置を設備することなく、単に容器本体20の壁面の一部を凹ませる手段を設備することにより、容器本体20の内部の圧力を簡易に高め、ラベル貼り付け性を向上できる。
【0024】
容器本体20の内部の圧力を高めるのに容器加圧装置のエアノズルを容器本体20の開口部20Aに挿着するものでなく、容器本体20の開口部20Aを密封するものであり、容器本体20の内部への異物の混入がない。
【0025】
(b)容器本体20の開口部20Aに予めキャップ30を被着して密封することにより、上述(a)の容器本体20を確実に密封して内部の圧力を高めることができる。
【0026】
(c)容器本体20をブロー成形で成形し、成形後に空気吹き込み口21Bを封止することで、密封された容器本体20を用い、ラベル40を貼り付けた後に空気吹き込み口21Bの近傍をカットして内容物の充填口(開口部20A)とする。ブロー成形された容器本体20の空気吹き込み口21Bを封止することにより、上述(a)の容器本体20を確実に密封して内部の圧力を高めることができる。
【0027】
(d)薄肉容器10は、ラベル貼り付け力により凹み変形し易く、特にラベル貼り付け面の曲率半径が大きい(平面に近づく)とき、凹み変形し易い。一方、薄肉容器10は、密封された容器本体20の壁面の一部が凹まされることで大きく膨らみ、ラベル貼り付け力に対する大きな耐押込変形能を生じる。これにより、薄肉容器10のラベル貼り付け性を向上できる。
【0029】
また、凹み部50は、容器本体20へのラベル40の貼り付け後に容器本体20の外側へ突き出る如くに復元するものでも良い。
【0030】
また、容器本体20の密封手段は、首部21に付帯して開口部20Aから延在する筒状部をヒートシールして容器本体20を密封するものであり、ラベル40を貼り付けた後の容器本体20から切除されるものでも良い。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明によれば、密封された容器の壁面の一部を凹ませることで内部の圧力を高め、内部の圧力を高めた状態の容器の表面にラベルを付すものであり、容器の内部の圧力を簡易に高めることができる。
【符号の説明】
【0032】
10 ラベル付き容器
20 容器本体
20A 開口部
21A 空気吹き込み部
21B 空気吹き込み口
23 胴部
24 底部
25 傾斜部
26 張り出し部
26A 底板部
30 キャップ
40 ラベル
50 凹み部
図1
図2
図3