(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について説明する。
【実施例1】
【0013】
先ず、その全体構成について
図1〜
図3を用いて説明する。
図1は実施例1の空気調和機の構成図である。
図2は空気調和機の室内機の正面図である。
図3は室内機の側断面図である。
【0014】
なお、実施例では横長の吹出し口を持つ壁掛型の空気調和機について説明するが、本発明はこれに限定されるものではなく、略長方形の吹出し風路を持つ天井埋込形や壁埋込形、床置形、あるいは縦型の壁掛け型やウインド形の空気調和機にも容易に適用でき、同様の効果を発揮できることは勿論のことである。
【0015】
このように、空気調和機は種々の形態に別れることから、吹出し口が横長の空気調和機に使用されている上下風向板、左右風向板の名称をそのまま用いると誤解を生む恐れがあるので、本明細書では、空気調和機の形態を特定しない場合、吹出し口に至る吹出し風路の長手方向に回動軸を有し、風向を回動軸と直交する面内で偏向する風向板を主風向板と言い、吹出し風路の長手方向と直交する方向に回動軸を有し、長手方向に風向を偏向する風向板を副風向板と言うこととし、空気調和機の形態を、例えば、横長の吹出し口を有する壁掛型空気調和機のように特定する場合は、その形態に応じて、主風向板を上下風向板、副風向板を左右風向板の如くに言い換えて、直感的な理解が得られ易いようにした。
【0016】
空気調和機1は、室内機2と室外機6を接続配管8でつなぎ、室内を空気調和する。室内機2は、筐体ベース21にユニット枠22を取付け、ユニット枠22の周りを化粧枠23、下パネル24、露受皿35で覆い、前方に化粧パネル25をユニット枠22に着脱可能に取付けて構成される。また、運転中、化粧パネル25の前方の吸込みパネル251は、
図3のように、下部を支点にして回動自在である。
【0017】
室内機2の上方には室内空気を吸い込む上側空気吸込み口27が設けられ、室内機2の下方には調和空気を室内機2から室内に吹き出す空気吹出し口28が設けられる。空気吹出し口28は、上部ケーシング280a、下部ケーシング280bに取付けられた上側風向板29、下側風向板29′の回動により、開閉自在である。また、上側風向板29、下側風向板29′は、室内機2から吹き出す気流を上下に風向制御して室内に送風する。
【0018】
室内機2の化粧パネル25と上面の上側空気吸込み口27の内方には、上側フィルター231、前側フィルター231′が設置され、ユニット枠22に着脱自在に取付けられる。上側フィルター231、前側フィルター231′の内方には、パイプとフィンで構成された室内熱交換器33が配置される。室内熱交換器33は、水平方向の長さが略等しい送風ファン311を囲むように配置される。送風ファン311は、上部ケーシング280aと下部ケーシング280bの間に配置され、送風ファン311の回転軸は送風モータに連結される。
【0019】
送風ファン311と空気吹出し口28の間に吹出し風路280が上部ケーシング280a、下部ケーシング280bによって形成され、吹出し風路280内に、左右方向に所定間隔で左右風向板285が配置される。
【0020】
このように、室内機2の外筐は、筐体ベース21、ユニット枠22、化粧枠23、下パネル24等からなる筐体20によって形成され、筐体20に化粧パネル25、送風ファン311、上側フィルター231、前側フィルター231′、室内熱交換器33、露受皿35、左右風向板285、吸込みパネル251、上側風向板29、下側風向板29′等の基本的な構造体が取付けられ室内機2を構成する。
【0021】
化粧パネル25の奥には、電気部品ユニットの電装部が設けられる。また、電気部品ユニットの制御基板には、マイコンが設けられており、リモコン5から送られてきた信号を受光部を介して受信し、信号に応じて空気調和機を運転制御する。この時、運転モードに合わせて表示部のランプを点灯および消灯させることで、運転モードを確認できる。
【0022】
運転が開始されると、化粧パネル25の吸込みパネル251は、下部を支点にして前方へ回動して所定角度傾き、室内機2の前面上部が開口する。上側風向板29、下側風向板29′は、マイコンによって制御されて回動し、室内機2の空気吹出し口28を開閉する。室内機2が、リモコン5からの運転信号を受信すると、室外機6も作動する。室外機6から送られた冷媒は、接続配管8を介して室内熱交換器33を循環する。送風ファン311に連結する送風モータは、マイコン制御により、運転状態に合わせて駆動される。
【0023】
次に、空気の吸込みから吹出しまでの流れについて説明する。送風ファン311が
図3において右回りに回転すると、上面の上側空気吸込み口27と化粧パネル25の開口部(前側空気吸込み口27′)から室内空気が吸込まれる。そして、吸込まれた気流は上側フィルター231、前側フィルター231′を通過する際、上側フィルター231、前側フィルター231′の網目により埃等が取り除かれ、室内機2の内部に流れる。
【0024】
気流はさらに室内熱交換器33へ流入し、熱交換された後、送風ファン311へ吸込まれる。送風ファン311からの吹出した気流は、下部ケーシング280bの下流側に設けられた左右風向板285、上下風向板29、29′を通過して、風向制御されて室内に送風される。一方、運転を停止する時は、送風ファン311の駆動を停止した後に、化粧パネル25の吸込みパネル251を回動させて
図3に点線で示すように前面上部の開口を閉ざし、上下風向板29、29′を回動させて、
図3に点線で示すように空気吹出し口28を閉ざす。
【0025】
また、室内熱交換器33の下方には、露受皿35が配置されており、冷房運転時や除湿運転時に室内熱交換器33に発生する凝縮水を受け止める。露受皿35に集められた凝縮水は、ドレン配管37を通して室外に排出される。このように、気流の流路が形成され、送風ファン311を駆動させることで、室内空気が上側空気吸込み口27、前側空気吸込み口27′から吸込まれ、上側フィルター231、前側フィルター231′を通過して、室内熱交換器33において熱交換された後、空気吹出し口28から室内に吹出される。
【0026】
次に、上下方向に風向を偏向する上側風向板の構成について
図2、
図6(b)、
図8(b)を用いて説明する。
図6は室内機の主に暖房運転時の斜視図、(b)はその時の吹出し口の断面図である。
図8は室内機の上側風向板回動部の拡大図、(a)は主に送風・弱暖房運転時、(b)は主に強暖房運転時である。
【0027】
上側風向板29は風向片291と右伝達軸カバー292、左伝達軸カバー293で構成され、その回動軸29aは風向片291の回動軸部291aに右伝達軸カバー292、左伝達軸カバー293を軸カバー固定ネジ298で固定して形成される。また、風向片291は回動軸部291aと風向面291dを遮風面291eでつないだ形になっている。
【0028】
この上側風向板29の回動軸29aを筐体20を構成する下パネル24の溝部24cの両端に支持部24a、24bが設けられる。支持部24aには支軸24eが、支持部24bには駆動モータ287が設けられる。上側風向板29はこれらの間に懸架されて筐体20に取付けられ、駆動モータ287の駆動力を伝達部材296を介して上側風向板29の回動軸29aで受け回動される。
【0029】
下パネル24の溝部24cは上側風向板29を筐体20に取付けたときの回動軸29aの軸心の位置を中心とした円筒状の凹面を有し、溝部24c内で回動軸29aが支障なく回動できるようになっている。291bは回動軸29aに形成された間隙形成部であり、回動軸29aと溝部24cの円筒状凹面との間隙Gpを小さい値に保持しているものである。
【0030】
次に、上下方向に風向を偏向する上側風向板の動作について
図4〜
図9を用いて説明する。
図4は室内機の運転停止時の斜視図、(b)はその時の吹出し口の断面図である。
図5は室内機の主に冷房運転時の斜視図、(b)はその時の吹出し口の断面図である。
図7は室内機の上側風向板回動部の拡大図、(a)は停止時、(b)は主に送風運転時である。
【0031】
運転停止時は、
図4に示すように、吸込みパネル251及び上側風向板29、下側風向板29′は前側空気吸込み口27′及び空気吹出し口28を閉じている。この状態では、空気調和機の室内機2の外観は凹凸の少ない形状になって、室内の雰囲気を乱さず、また、掃除がしやすく、更に、室内機内への塵埃の進入を防いでいる。
【0032】
この時、上側風向板29の回動軸29aの部分を拡大してみると
図7(a)のように、回動軸29aは下側風向板29′で隠され、室内からは全く見えない。回動軸29aは後述するように、遮風面291eで風向面291dと連結された逆U字状をした回動軸部291aと、回動軸部291aの逆U字部を塞ぐようにU字状の右伝達軸カバー292、左伝達軸カバー293で蓋をして構成されている。
【0033】
この右伝達軸カバー292、左伝達軸カバー293を固定する軸カバー固定ネジ298は空気調和機の停止時には下側風向板29′によって隠されて、その無機的な外観を室内に曝すことはなく、室内の雰囲気を乱すこともない。また、暖房運転時には
図6(b)、
図8(b)のように、上側風向板29、下側風向板29′が開くが、上側風向板29の回動に伴って、軸カバー固定ネジ298が、下パネル24の溝部24cに移動し、室内から見えず、室内の雰囲気を乱すことはない。
【0034】
なお、
図4(b)に示すように、上側風向板29の回動軸29aは上部ケーシング280aの下端に位置する。ここで、上部ケーシング280aの下端とは、上部ケーシング280aの下端と接触する箇所を意味していることだけを意味しているわけではなく、回動軸29aが回転できるよう上部ケーシング280aの下端と回動軸29aとの間には隙間がある場合も含む。
【0035】
冷房運転時には
図5(b)、
図7(b)のように、上側風向板29、下側風向板29′が開くので、軸カバー固定ネジ298が室内から見える位置に来るが、在室者が空気調和機の真下に来ると軸カバー固定ネジ298は下側風向板29′で隠されて見えず、空気調和機の真下から離れ空気調和機を覗き込む人の目Eyの位置まで来ると、軸カバー固定ネジ298が室内から見えるが、上側風向板29も回動しているため、U字状をした右伝達軸カバー292、左伝達軸カバー293が室内に対して露出する角θsは極めて小さくなり、ほとんど見えないに等しい。
【0036】
このように、使用者が空気調和機の間近まで寄って、かなり頭を上げて覗き込むようにしない限り、軸カバー固定ネジ298を見つけることは困難である。このため、通常に使う範囲では、空気調和機の停止時も運転時も上側風向板29の回動軸部29aの細かな凹凸を目にすること無しに、空気調和機を使用できるので、室内の雰囲気を乱す、視覚的なノイズを感ずることは無い。
【0037】
また、逆U字状の回動軸部291aとU字状をした右伝達軸カバー292、左伝達軸カバー293によって、回動軸29aには内部が中空状の空間が形成される。この中空状の空間に、実施例3の説明で詳述する上側風向板29に駆動力を伝達する伝達部材296を収納することで、伝達部材296の複雑な形状をした部分を外部に見せないようにしている。このように、伝達部材296の複雑な形状をした部分を回動軸29a内部の中空部に隠すことで、外部から見える部分は単純な形状の部分だけとなり、視覚的ノイズが減少する。
【0038】
次に、溝部での調和空気の流れについて
図5〜
図8を用いて説明する。
【0039】
冷房運転時、上側風向板29、下側風向板29′は吹出し空気の風量が最大となるように、上側風向板29の遮風面291eと下側風向板29′を上部ケーシング280aとほぼ平行にして、
図5(b)の如く回動され、吹出し空気は黒矢印のように流れる。この時、
図7(b)に示すように、上側風向板29の回動軸29aに設けた間隙形成部291bと下パネル24の溝部24cの間のわずかな間隙Gpを通って、わずかな量の吹出し空気が風向面291d、遮風面291eの裏面に漏れ出してくる。
【0040】
漏れ出した吹出し空気は溝部を離れると流速が弱まり、ほとんど自然対流の近い流れで遮風面291eの裏面に沿って流れ、裏面の最低部に達すると回動軸29aと平行に流れ、室内空気と僅かづつ混合しながら、風向片291の左右端に向かう。この時、漏れ出した吹出し空気は遮風面291eの裏面を絶対湿度の低い吹出し空気で覆い、裏面に結露が生ずるのを抑制する。
【0041】
また、この時、吹出し空気は上部ケーシング280aの空気吹出し口28に近い部分を流れる空気とほぼ同じ速度と方向で噴流のごとく空気吹出し口28から吹出し、あまり拡散せずに風向面291dから離れて、室内に直進してゆく。このため、風向面291dは吹出し空気によって冷やされる度合いが小さく、あまり冷やされない。従って、風向面291dの裏面もあまり冷やされず、冷却された部分に室内空気が触れて空気中の水分が凝縮して生ずる結露の現象が抑制される。
【0042】
また、遮風面291eは吹出し空気によって直接冷やされるので冷やされる度合いが大きいが、前述のように、遮風面291eの裏面は漏れ出した絶対湿度の小さい吹出し空気で覆われるので、結露の現象は大きく抑制される。
【0043】
暖房運転時、上側風向板29、下側風向板29′は吹出し空気をできるだけ下方に送り、足元を暖かくするように、上側風向板29の風向面291dと下側風向板29′をほぼ平行にして、
図6(b)の如く回動され、吹出し空気は黒矢印のように流れる。この時、
図8(b)に示すように、上側風向板29の風向片291を下パネル24の溝部24cと上部ケーシング280aとの交線付近で当接させる如くにする。
【0044】
これにより、上側風向板29の回動軸29aと下パネル24の溝部24cの間を通って、風向面291d、遮風面291eの裏面に漏れ出す吹出し空気はほとんどなくなり、吹出し空気を効果的に下向き方向に送ることができる。なお、種々の事情により、上側風向板29の風向片291を下パネル24の溝部24cと上部ケーシング280aとの交線付近で当接させない場合、上側風向板29の回動軸29aと下パネル24の溝部24cの間を通って、吹出し空気が漏れ出す。
【0045】
しかし、溝部24cを回動軸29aの軸心を中心とした円筒状の凹面としていることから、上側風向板29の回動軸29aに設けた間隙形成部291bと下パネル24の溝部24cの間の間隙Gpは一定となり、このわずかな間隙Gpを通って、漏れ出してくる吹き出し空気の量はわずかであり、暖房効果や足元近くに吹出し空気を送る効果に大きな差は生じない。
【0046】
次に、上側風向板の別の使用形態について
図9を用いて説明する。
図9は室内機の主に冷房・送風運転時の吹出し口の断面図、(b)はその時の上側風向板回動部の拡大図である。
【0047】
送風運転時など、冷風を伴わない運転のときには、下側風向板を所望の方向に回動させ、
図9(a)のように、上側風向板の風向面を下側風向板とほぼ平行の位置に回動させると、吹出し空気は上側風向板の遮風面で縮流され、上側風向板の風向面と下側風向板に挟まれ整流されて平行な流れになって黒矢印のように流れる。
【0048】
このように、縮流させた後に、平行な流れに整流させることで、吹出し空気は風速が速い平行流となり、より遠方まで到達するようになる。上側風向板の風向面と下側風向板が作る平行方向を任意の方向に調整することで、室内の広い範囲に風を送ることができ、一層の節電が求められているおり、冷房に代わって涼感を得る方法として有効性が高い。
【実施例2】
【0049】
次に、実施例2の空気調和機の上側風向板の回動軸について
図10を用いて説明する。
図10は実施例2の空気調和機の上側風向板回動部の拡大図である。
【0050】
実施例2の空気調和機は上側風向板の回動軸に
図10に示すように、複数の間隙形成部を設けたものであり、他の部分は実施例1と同じである。このように例えば間隙形成部を
図10の如く、2箇所にすることにより、上側風向板の回動軸と下パネルの溝部の間の隙間から漏れ出る吹出し空気に対する抵抗が倍になり、漏れ出る吹出し空気の量がほぼ半分になる。
【0051】
また、間隙形成部間に隙間より広い流路ができることで、ラビリンス効果によって圧力損失が増え、吹出し空気の漏れ量をさらに抑制することができ、ショートサーキットが効果的に抑制される。
【実施例3】
【0052】
次に、実施例3の空気調和機の上側風向板の回動軸について
図11〜
図14を用いて説明する。
図11は実施例3の空気調和機の室内機の吹出し口の断面図である。
図12は室内機の主に冷房・送風運転時の上側風向板の回動部の拡大図である。
図13は室内機の他の運転状態の時の上側風向板の回動部の拡大図、(a)は停止時、(b)は主に冷房・送風運転時である。
図14は室内機の他の運転状態の時の上側風向板の回動部の拡大図、(a)は主に送風・弱暖房運転時、(b)は主に強暖房運転時である。
【0053】
実施例3の空気調和機は上側風向板の回動軸を
図11に示すように、円形にしたものであり、他の部分は実施例1と同じである。このように回動軸を円形にすることにより、上側風向板の回動軸と下パネルの溝部の間で構成される吹出し空気が漏れ出る通路が幅は間隙Gpで長さは溝の筒状の内面に沿った長さとなり通路の長さLpが長くなる。このように、間隙Gpはそのままで、通路の長さLpが長くなるので、漏れ出る吹出し空気に対する抵抗が大きくなって、漏れ出る吹出し空気の量が少なくなる。
【0054】
送風運転時には、上側風向板29は
図12のように回動され、通路の長さはLpとなり、実施例1や実施例2の場合に比べかなり大きく、漏れ出る吹出し空気の量は少ない。冷房運転時は、上側風向板29は
図13(b)の如く回動されるが、回動軸29aを円形にしているので、通路の長さは溝部24cの形状で定まるので、送風運転時の通路の長さLpと同じになり、回動軸の回動位置によらず一定となって、漏れ出す吹出し空気の量も一定となり、安定した少ない量にすることができる。
【0055】
図13(a)の運転停止時や
図14(b)の暖房運転時の状態ではこの通路を通る吹出し空気は無いが、このような回動位置でも、通路の長さLpは一定の長さとなっていることが判る。
【0056】
ここで、上側風向板を筐体に着脱する時の手順について
図15〜
図23を用いて実施例3を例にとって説明する。
【0057】
先ず、上側風向板の構造について
図15〜
図21を用いて説明する。
図15は上側風向板の斜視図、(b)は上側風向板の分解斜視図である。
図16は上側風向板の伝達部拡大断面図である。
図17は上側風向板の風向片の斜視図、(b)は上側風向板の風向片を別の角度から見た斜視図である。
図18は上側風向板の風向片の回動軸部詳細図、(a)は平面図、(b)は側面図、(c)は正面断面図、(d)は断面AAである。
図19は上側風向板の軸カバー詳細図、(a)は平面図、(b)は断面BB、(c)は正面断面図、(d)は側面図である。
図20は上側風向板の伝達部材詳細図、(a)は平面図、(b)は左側面図、(c)は正面断面図、(d)は右側面図である。
図21は上側風向板の伝達部材組込み手順、(a)は組込前、(b)は手挿入時、(c)は制限解除時、(d)は最奥挿入時である。
【0058】
上側風向板29は
図15に示すように、風向片291に右伝達軸カバー292、左伝達軸カバー293を取付け、風向片291と右伝達軸カバー292で回動軸29aに形成された中空部に伝達部材296を挿入して組立てられる。伝達部材296は上側風向板29を筐体20に取付けたときに
図16に示すように上側風向板29の駆動モータ287と結合され、駆動モータ287の駆動力を上側風向板29に伝達し、上側風向板29を回動させる。
【0059】
風向片291には
図17(a)、(b)のように、風向面291d、遮風面291e、回動軸部291aが形成され、回動軸部291aの両端部を除いた中央部は外面が半円筒状で内面は後述するように伝達部材296を収納できるよう凹面に形成した半円筒部291gとなっている。半円筒の外面は後述する
図19の右伝達軸カバー292、左伝達軸カバー293の外面と組合わさって、回動軸29aの外面を遮風面291eとの接続部を除いて円筒状にする。
【0060】
このように、この実施例では回動軸29aの外面を円筒状にしたので、下パネル24の溝部24cとの隙間は円筒上のどこでも同じ隙間になるので、風向片291の円筒の外面全部が
図18(d)に示すように間隙形成部291bとなり、同様に、右伝達軸カバー292の円筒の外面全部が
図19(b)に示すように間隙形成部292bとなる。
【0061】
右伝達軸カバー292は
図19に示すように、端部に形成した筒状の筒部292cに続く円筒を切欠いた形状の切欠円筒部292aを有し、前述したように、風向片291の回動軸部291aと組合わせて、上側風向板29の回動軸29aを構成する。筒部292cは風向片291の被伝達部291cに遊嵌し、軸カバー固定ネジ298で風向片291に取付けられる。
【0062】
切欠円筒部292aには開口292dが設けられ、後述する伝達部材296の押圧部296aと対向したときにマイナスドライバーなどの工具を使用して、この開口292dを通して押圧部296aを押すことで、伝達部材296を更に内部へ移動可能にさせることができるようになっている。
【0063】
回動軸部291aの駆動モータ287側の端部は
図18に符合291cで示す被伝達部となっていて、中空とした内面を多角形に形成した平坦部291fにして、後述するように、
図20の伝達部材296の多角形部296cと係合して伝達部材296からの駆動力の伝達を受け、遮風面291e、風向面291dと共に、自らも回動して風向を変化させる。
【0064】
伝達部材296は前述したように、風向片291の被伝達部291cの多角形内面に係合する多角形部296cを有し、駆動モータ287側に駆動モータ287の駆動軸287aと結合する駆動軸結合部296gを設け、反駆動モータ287側に伝達部材296の軸方向で反駆動モータ287側への移動を制限する押込み制限部296f、押圧部296a及び押込み制限部296fの機能を解除するための変形部296bを具えている。
【0065】
上側風向板29を組立てるときは、
図15(b)のように、左伝達軸カバー293を風向片291に被せ、風向片291の被伝達部291cに、前述したように、右伝達軸カバー292の筒部292cを通して、軸カバー固定ネジ298で左伝達軸カバー293、右伝達軸カバー292を一緒に固定する。これにより、回動軸29a内部に、伝達部材296を挿入できる内部空間が形成される。
【0066】
次に、
図21(a)の矢印のように伝達部材296を風向片291の被伝達部291cの平坦部291fで形成された中空部を通して、回動軸29aに形成された内部空間に挿入する。伝達部材296の先端部296dから押圧部296aに掛けての傾斜部296jが右伝達軸カバー292のストッパ部292eに当たると止まるが、少し力を加えると傾斜部296jがストッパ部292eに押されて、変形部296bが撓み、押圧部296aはストッパ突起292gを潜り抜ける。潜り抜けたところで、移動制限凹部296kがストッパ突起292gに掛かり、ここで変形部296bのばね作用で変形が戻って、
図21(b)のように押込み制限部296fがストッパ部292eに引っ掛かり、それ以上の挿入ができなくなる。
【0067】
次に、
図21(c)のように、マイナスドライバーのような工具910で右伝達軸カバー292の開口292dを通して伝達部材296の押圧部296aを押す。押圧部296aを工具910で押すことで、ストッパ部292eと伝達部材296の押込み制限部296fとの引っ掛かりが外れ、続いて工具910を引込み方向矢印PIの方向に移動させ、
図21(d)のように、伝達部材296を最奥まで引込む。
【0068】
この状態で、伝達部材296が下になるように上側風向板29の回動軸29aを垂直にすると、伝達部材296の滑動仮止部296hが右伝達軸カバー292の開口滑り部292fに当たるまで伝達部材296は落下するが、伝達部材296の自重ではそれより落下することは無い。しかし、結合部外面296mを持って、少しの力で引っ張ると、滑動仮止部296hと開口滑り部292fが共に滑り易いように傾斜を付けてあるので、容易に変形部296bを変形させ、押込み制限部296fがストッパ部292eを潜り抜け、
図21(b)の状態にすることができる。
【0069】
次に、組立てた上側風向板を筐体に取付ける手順について
図22を用いて説明する。
図22は上側風向板の筐体への組込み手順、(a)は組込前、(b)は駆動軸との係合前、(c)は手係合途中、(d)は係合完結時である。
【0070】
上側風向板29を筐体20に取付けるときは、
図22(a)のような上側風向板29を組立てた状態で、先ず、筐体20の駆動モータ287と反対側の支持部24aに、上側風向板29の伝達部材296を挿入した側と反対側になる回動軸29aの支持軸端29eを支持させ、次に、伝達部材296の駆動軸結合部296gを、
図22(b)のように、支持部24bに設けられた駆動モータ287の駆動軸287aに合わせる。
【0071】
この状態から、手で伝達部材296の結合部外面296mを摘んで、
図22(c)のように、引出し方向矢印POの方向に引出し、駆動軸287aに結合させる。この時、前述のように、
図22(a)=
図19(d)の状態から伝達部材296を引出して、
図21(b)の状態にするのは容易なことなので、
図22(b)の状態から
図22(d)にする作業に何の支障も無く容易に伝達部材296を駆動軸287aに結合させることができる。
【0072】
伝達部材296を駆動軸287aに結合させた位置では、移動制限凹部296kがストッパ突起292gに掛かり、変形部296bのばね作用で変形が戻っているので、
図21(b)のように押込み制限部296fがストッパ部292eに引っ掛かり、それ以上の挿入ができないので、伝達部材296と駆動モータ287の結合が自然に外れることは無い。
【0073】
これにより、上側風向板29と駆動モータ287は確実に結合され、駆動モータ287を駆動することで、上側風向板29を
図4(b)の運転停止時の状態から
図6(b)の下吹出しの状態までの広範囲にわたって、任意の位置に回動し、風向を変化させることができる。
【0074】
次に、メンテナンスの時など、上側風向板を筐体から取外す場合について
図23を用いて説明する。
図23は上側風向板の筐体からの取外し手順、(a)は取外し前、(b)は制限解除時、(c)は係合外し途中、(d)は係合解除時である。
【0075】
上側風向板29を筐体20から取外すときは、
図23(a)の筐体20に取付けた状態で、マイナスドライバーなどの工具910を使用して、
図23(b)のように、右伝達軸カバー292の開口292dを通して伝達部材296の押圧部296aを押す。押圧部296aを工具910で押すことで、ストッパ部292eと伝達部材296の押込み制限部296fとの引っ掛かりが外れ、続いて工具910を、
図23(c)のように、引込み方向矢印PIの方向に移動させ、
図23(d)のように、伝達部材296を最奥まで引込む。
【0076】
これにより、伝達部材296と駆動モータ287の結合が外れ、上側風向板29を筐体20から取外すことができる。このように、取外すときにはマイナスドライバーなどの工具910を使わなければならないので、使用者が誤って取外し、内部の送風ファン311などの回転物に触れる恐れは無く、取付け時は工具910を使用しなくても取付けが可能なので、メンテナンスの作業が簡単になる。
【実施例4】
【0077】
次に、実施例4の空気調和機の上側風向板について
図24を用いて説明する。
図24は実施例4の空気調和機の室内機の上側風向板の分解斜視図である。
【0078】
実施例4の空気調和機は回動軸29aの両側に伝達部材296を組込むようにしたものであり、他の部分は実施例3と同じである。実施例4の空気調和機の上側風向板29は
図24に示すように風向片291の回動軸29aに左伝達軸カバー294、右伝達軸カバー292を取付け、風向片291と左伝達軸カバー294及び右伝達軸カバー292で回動軸29aに形成された中空部に伝達部材296を挿入して組立てられる。
【0079】
これにより、筐体20の溝部24cの両端に駆動モータ287を設置し、長尺の上側風向板29の両端から上側風向板29を駆動でき、片側駆動の場合に、上側風向板29の剛性に応じて生ずる上側風向板29の両端での変形量の差による美観の劣化を防止し、美観を向上させることができる。
【0080】
また、上側風向板29を筐体20に取付けるときに、初め、下パネル24の支軸24eに支持軸端29eを若干斜めにしたまま嵌め込み、伝達部材296が駆動軸287aにぶつからなくなってから伝達部材296側の軸心を合わせて、伝達部材296を引出す方法を採ると、支持軸端29eを斜めにしたまま嵌め込めるようにする必要がある。
【0081】
このためには、支軸24eを嵌め込む支持軸端29eの嵌め込み穴の寸法を大きくする必要があり、支軸24eと支持軸端29eの間に大きな遊びができる。このような大きな遊びがあると、使用者が空気調和機に触れたときの高級感が減殺され、使用者に不満を抱かせる元となるほか、空気調和機運転中の僅かな振動で騒音が発生する恐れが出るなど、好ましくない。
【0082】
これを避けるため、最初から上側風向板29の回動軸29aを下パネル24の支軸24e、及び、駆動モータ287の駆動軸287aと軸心が一致するように合わせ、上側風向板29を軸心に沿って平行に移動させることで、余分な遊びを無しで、支軸24eに支持軸端29eを嵌め込み、次いで、伝達部材296を駆動軸287aに嵌め込む方法も考えられる。
【0083】
しかし、この方法でも、支軸24eに支持軸端29eを嵌め込むための移動距離が、伝達部材296を駆動軸287aに嵌め込むための移動距離に含まれるため、伝達部材296と駆動軸287aとの実際の係合長さが短くなる。結合長さが短くなると、駆動軸287aと伝達部材296の係合部の面圧が高くなり、伝達部材296の信頼性が低下する。
【0084】
また、係合長さを確保しようとすると、係合に際しての伝達部材296の移動距離が長くなって、駆動モータ287の駆動軸287aと風向片291の被伝達部291cの距離が長くなり、伝達部材296も長くなって、必要な強度が増え、寸法が大きくなり、引いては上側風向板29の大型化につながり、資源を浪費してしまう。
【0085】
実施例4の空気調和機のように、回動軸29aの両側に伝達部材296を組込むことにより、伝達部材と駆動軸の係合部の長さを長くでき、係合部に係る単位面積あたりの負荷が軽減され、係合部の信頼性が増すことができる。また、美観が向上し、騒音発生の恐れを除去でき、使用者の信頼を増すことができる。
【実施例5】
【0086】
次に、実施例5の空気調和機の上側風向板について
図25〜
図29を用いて説明する。
図25は実施例5の空気調和機の室内機の上側風向板の分解斜視図である。
図26は室内機の正面図である。
図27は上側風向板の支持部材詳細図、(a)は平面図、(b)は左側面図である。
図28は上側風向板の中央支持部の断面図である。
図29は中央支持部の筐体組込み手順、(a)は支軸との係合前、(b)は係合途中、(c)は係合完結時である。
【0087】
実施例5の空気調和機は上側風向板29の回動軸29aの中央部を支える機構を設けたものであり、他の部分は実施例4と同じである。回動軸29aの中央部を支える機構は下パネル24に設けた支持片24d、支持片24dに嵌める支持ブッシュ26、上側風向板29の風向片291、右伝達軸カバー292及び支持部材297で構成される。
【0088】
伝達部材296は実施例4と同様に、上側風向板29を筐体20に取付けたときに
図16に示すように上側風向板29の駆動モータ287と結合され、駆動モータ287の駆動力を上側風向板29に伝達し、上側風向板29を回動させる。風向片291には
図25のように、回動軸部291aの中央部を切欠き、切欠きの片側(実施例では中支持軸カバー292′側)の回動軸部291aの端部に実施例3で説明した中空部291cを設けている。
【0089】
中支持軸カバー292′、右伝達軸カバー292は
図25に示すように、実施例3、実施例4の右伝達軸カバー292の長さだけを短くしたものであり、他の部分は実施例3、実施例4と同じである。中軸カバー293′は実施例3の左伝達軸カバー293の長さだけを短くしたものであり、他の部分は実施例3と同じである。左伝達軸カバー294は
図25に示すように、実施例4の左伝達軸カバー292の長さだけを短くしたものであり、他の部分は実施例4と同じである。
【0090】
回動軸部291aの中央部に設けた中空部291cには支持部材297が挿入され、上側風向板29を筐体20に組込んだときに、支持部材297をスライドさせて下パネル24の設けられた支持片24dに支持ブッシュ26を介して係合させ、上側風向板29の重力による変形を矯正する。
【0091】
支持部材297は
図27に示すように、実施例3の伝達部材296(
図20参照)の多角形部296cの途中から円筒状の軸部297gを形成したものであり、先端部297dから多角形部297cまでは伝達部材296の先端部296dから多角形部296cまでと同じである。支持部材297を上側風向板29に組込むときには、
図25のように、左伝達軸カバー294を風向片291の回動軸部291aに被せ、軸カバー固定ネジ298で左伝達軸カバー294、中支持軸カバー292′を一緒に固定する。
【0092】
これにより、回動軸部291aと中支持軸カバー292′との間に、支持部材297を挿入できる内部空間が形成される。次に、中支持軸カバー292′の筒部292cを被せた、風向片291の中央部の被伝達部291cに、実施例3で説明した方法(
図21参照)と同様な方法で支持部材297を挿入し、
図28のように支持部材297を上側風向板29に組込む。
【0093】
次いで、風向片291の右半分の回動軸部291aに中軸カバー293′、右伝達軸カバー292を取付け、風向片291と左伝達軸カバー294及び右伝達軸カバー292で回動軸29aに形成された中空部に伝達部材296を挿入する。
【0094】
このように組立てられた上側風向板29を筐体20に組込むときは、
図28のような上側風向板29を組立てた状態で、先ず、上側風向板29の中央部の切欠き部を、
図29(a)のように下パネル24の支持片24dに合わせ、支持部材297の押圧部297aをドライバーで押しながら
図29(b)のように支持片24dの方向に移動させ、支持部材297の軸部297gを支持片24dに嵌挿された支持ブッシュ26に係合する。
【0095】
次いで、軸部297gと支持ブッシュ26が十分に係合するまで支持部材297を移動させ、
図29(c)のように、支持部材297の押込み制限部297fが中支持軸カバー292′のストッパ部292eに掛かって逆方向の移動が制限されるようにする。以下、実施例3で説明した手順(
図22参照)と同様にして、左右の伝達部材296を駆動モータ287の駆動軸287aに結合し、上側風向板29の筐体20への組込みを完了する。
【0096】
このように、上側風向板29の中央部を支持することにより、中央部の支持が無い場合に、上側風向板29の中央部に生ずる自重などによる変形が抑制され、空気調和機使用中の外観が良くなる。
【実施例6】
【0097】
次に、実施例6の空気調和機の上側風向板について
図30を用いて説明する。
図30は実施例6の空気調和機を説明する室内機吹出し口の断面図、(a)は改良前の室内機吹出し口の断面図、(b)は改良後の室内機吹出し口の断面図である。
【0098】
実施例6の空気調和機は実施例3の空気調和機の下パネル24と露受皿35との係合方法を変えたものであり、他の部分は実施例3と同じである。下パネル24は空気調和機を据付けたときに使用者の居住する室内に面していて、空気調和機の暖房運転時には、上側風向板29がほぼ真下まで回動するので、室内から使用者が見ることのできるのは、前面の大半となる外観構成部24kの範囲となる。
【0099】
従って、この外観構成部24kには、製品の品質を高めるため、外観を損なう、凹凸を避け、ねじなどは室内から見えない場所にすることが必要である。実施例3では露受皿35に下パネル係合孔35aを設け、下パネル24の下部に設けた下パネルサポート24fに下パネル係合爪24gを形成して、下パネル係合孔35aに下パネル係合爪24gを係合し、下パネル24の上部に設けた上固定部24hを露受皿35の上受座35bに固定している。
【0100】
この他、図示していないが、下パネル24と露受皿35の左右端に近い部分の形状を利用して下パネル24と露受皿35を正確な位置に導き、固定する工夫がなされている。このように構成することで、上部ケーシング280aとなる露受皿35の底部と上部ケーシング280aの下流部となる下パネル下端部24mとの突合せ部Bは正しく組合わされ、間に隙間が生ずることは無い。
【0101】
しかし、下パネル24の中央付近のでは前述の形状を利用した固定部から遠く、また、下パネル24の上固定部24hからも遠いため、突合せ部Bを隙間無く保持するのは、下パネル係合孔35aと下パネル係合爪24gとの係合部だけになる。このため、温度変化や、資源を節約するため薄肉化している下パネル24の強度低下と相俟って、悪条件が重なった場合、突合せ部Bを隙間無く保持することが難しくなり、隙間が生じてしまう恐れがある。
【0102】
このように、突合せ部Bに隙間が生ずると、
図30(a)に矢印で示したように、突合せ部Bの隙間から下パネル24と露受皿35の間に吹出し空気が侵入する。特に、冷房時は冷たい吹出し空気が進入するので、下パネル24が冷やされ、下パネル24の室内側の面に室内空気の水分が凝縮して結露してくる。特に、湿度が高い日には結露した水滴が落下し、室内を汚す恐れもある。
【0103】
実施例6ではこのような恐れをなくすため、
図30(b)に示すように、露受皿35の下部に下受座35cを、下パネル24の溝部24cに下固定部24nを設け、下固定部24nを下受座35cに下パネル固定ネジ299で、上部ケーシング280aとなる露受皿35の底部と上部ケーシング280aの下流部となる下パネル下端部24mとの突合せ部Bの隙間が無いように固定する。
【0104】
このように、突合せ部Bの隙間が無いように、突合せ部Bとの距離が近い位置で下パネル24を強固に固定するので、突合せ部Bは安定し、隙間を生じたりすることが無く、冷たい吹出し空気が下パネル24と露受皿35の間に漏れ出す恐れも無くなり、湿度が高いときでも、結露の落下で室内を汚す恐れも無い。
【0105】
また、この場合、下パネル24の下固定部24nは溝部24cの奥に設けることができるので、筐体20に上側風向板29を組込んだ時には、上側風向板29の回動軸29aで隠され、空気調和機を停止または、運転しているときも、室内に下固定部24n、下パネル固定ネジ299が露出することは無く、外観を良好に保つことができる。
【実施例7】
【0106】
次に、実施例7の空気調和機の上側風向板について
図31〜
図34を用いて説明する。
図31は実施例7の空気調和機の室内機の吹出し口の断面図である。
図32は室内機の主に冷房運転時の上側風向板の回動部の拡大図である。
図33は室内機の他の運転状態の時の上側風向板の回動部の拡大図、(a)は停止時、(b)は主に冷房・送風運転時である。
図34は室内機の他の運転状態の時の上側風向板の回動部の拡大図、(a)は主に送風・弱暖房運転時、(b)は主に強暖房運転時である。
【0107】
実施例7の空気調和機は実施例3の空気調和機の上側風向板29の風向片291の遮風面291eに通気開口291hを設け、回動軸部291aに開口カバー291jを設けたものであり、他の部分は実施例3と同じである。実施例3の空気調和機では冷房運転時に
図13(b)のように吹出し空気の流れに吸い寄せられて、上側風向板29の回動軸29aの間隙形成部291b、292bと溝部24cで形成された隙間を通して、小矢印のように、少量の室内空気が吹出し風路280に流込む。
【0108】
この隙間を流れる空気の量を少なくすることで、暖房運転時に吹出し温風を効果的に下向きに送風することができることは前述した。また、冷房運転時に遮風面291eの上面に室内の湿度が高いときに結露を生ずることや、遮風面291eの上面に断熱材を貼付して結露を抑制することも前述した。
【0109】
実施例7の空気調和機では冷房運転時に吹出し風路に進入してくる室内空気が多くなるようにする。
【0110】
また、
図4(b)に示すように、下部ケーシング280bの延長線301と、上部ケーシング280aの延長線302との間が吹出空気の風向き303である。
【0111】
そして、
図39に示すように、下流風向板300eは上部ケーシング280aの延長線302と平行よりも上向きである。このようにすることで、下流風向板300eの吹出空気の上流に中流風向板300cを挟むことができ、下流風向板300eへの吹出空気の流れを遮ることができる。
【0112】
また、
図40に示すように、上側風向板29は、上流風向板300a、下に凹状である第1の曲部300b、中流風向板300c、下に凸状である第2の曲部300d、及び、下流風向板300eから構成される。このように構成することで、冷房運転時に、空気吹出口から吹出す気流に対して、上流風向板300aの垂直方向の面積を減らし、中流風向板300cの垂直方向の面積を増やすことができる。そのため、中流風向板300cに流れる送風ファンから吹出される気流の量が増大する。すると、中流風向板300cに流れる気流の量が増える分、中流風向板300cで乱流が発生し、剥離が発生しやすくなる。よって、中流風向板300cの下流に位置する下流風向板300eに流れる気流を抑制でき、下流風向板300eにおける結露の発生を抑制することができる。なお、第1の曲部300bは下に凹状であり、第2の曲部300dは下に凸状である場合について説明したが、第1の曲部300b及び第2の曲部300dを屈曲する形状としてもよい。
【0113】
以上説明したように、空気吸込口及び空気吹出口を有する筐体と、筐体内に配置された熱交換器と、室内空気を空気吸込口から吸込み、熱交換器を通してから、吹出空気を空気吹出口から吹出す送風ファンと、送風ファンから空気吹出口への送風路を形成するケーシングと、空気吹出口に位置する上下風向板と、を備え、ケーシングは、送風路の下方に位置する下部ケーシングと、送風路の上方に位置する上部ケーシングと、を有し、上下風向板は、上流風向板と、上流風向板に対して吹出空気の下流方向に位置する中流風向板と、中流風向板に対して吹出空気の下流方向に位置する下流風向板と、上流風向板と中流風向板との間に位置し、且つ、中流風向板を下部ケーシングの延長線に近づく方向に向ける第1の曲部と、中流風向板と下流風向板との間に位置し、且つ、下流風向板を下部ケーシングの延長線から離れる方向に向ける第2の曲部と、を有し、冷房運転時、下流風向板は上部ケーシングの延長線と平行よりも上向きである。
【0114】
これにより、第1の曲部と第2の曲部との間にある上側上下風向板に流れる空気吹出口から吹出す気流を増やすことができ、第1の曲部と第2の曲部との間にある上側上下風向板で乱流が発生しやすくなる。乱流が発生することにより空気吹出口から吹出される気流が上側上下風向板から剥離しやすくなり、第2の曲部よりも下流側にある上側上下風向板に空気吹出口から吹出す室内空気を流しにくくすることができる。つまり、冷房運転時に、空気吹出口から吹出す低温の室内空気が第2の曲部より下流側の上側上下風向板に流れにくいので、結露の発生を抑制することができる。
【0115】
また、冷房運転時、上流風向板は上部ケーシングの延長線上に位置し、且つ、第2の曲部は第1の曲部より鋭角である。
【0116】
これにより、冷房運転時に上側上下風向板が気流を偏向するのを抑えつつ、結露の発生を抑制することができる。
【0117】
また、第2の曲部は、上下風向板の中央よりも吹出空気の上流方向に位置する。
【0118】
これにより、冷風が流れづらい上側上下風向板の面積を増大させ、結露の発生をより抑制することができる。
【0119】
また、上下風向板は、上下風向板を上下方向に回転させる回転軸を有し、上流風向板若しくは回転軸は、上下風向板の上面と下面とを貫通する貫通孔を有する。
【0120】
これにより、上側上下風向板の上方に空洞を通じて気流を流すことで、上側上下風向板の上面と下面との温度差を減らし、第1の曲部より上流側の上側上下風向板で結露が発生することを抑制することができる。また、第2の曲部よりも下流側の上側上下風向板の上面には気流を流す必要がないため、上側上下風向板の上方に空洞を通じて流す気流の量を抑えることができる。
【0121】
また、空気吹出し口に吹出し空気の風向を偏向する風向板を有し、風向板を支持する空気調和機本体側の支持部の間に、該風向板の回動軸を中心とする円弧状の溝部を形成した筐体と、該風向板の回動の動作の間、該回動軸と該溝部との間の間隙を最小に保つ間隙形成部を該回動軸の外面に形成し、該回動軸の少なくとも一部を中空形状に構成し、該回動軸と風向面を遮風面で連結した風向板と、該中空部に該回動軸の軸方向に滑動自在に収納した、該風向板の駆動モータの駆動力を該回動軸に伝達する伝達部材と、該駆動モータと伝達部材が係合する位置で該滑動を制限する制限機構とを具える。
【0122】
これにより、風向板の回動軸と筐体との間を吹出し空気が殆ど流れない隙間にして、暖房時など、吹出し空気を下向きにしたい時に、風向板より空気吸込み口側を流れてショートサーキットを起こす無駄な流れを大幅にカットできる。
【0123】
また、伝達部材を中空部に収め、滑動の制限機構を中空部内に設けることで、中空部の外面を凹凸の少ない滑らかな曲面に形成できるので、従来の風向板の支柱を伴なった支持機構のような、視覚的なノイズを激減できる。
【0124】
また、風向板を筐体に組込むときには、風向板の回動軸の一端に伝達部材を差込み、回動軸の他端を筐体の溝部の他端の係合部に係合させ、一端に差込んだ伝達部材を筐体溝部の一端に固定した駆動モータの駆動軸に合わせて、駆動軸側に滑動させ、駆動軸と係合する位置で滑動の制限機構を作動させる。このように、風向板を筐体に組込むことで、風向板は外れる恐れも無く、筐体にスムーズに、確実に回動可能に取付けられる。このため、ショートサーキットを効果的に抑制し、視覚的なノイズを小さくし、メンテナンスを容易にする空気調和機を得ることができる。
【0125】
また、前記回動軸の中空形状部の外面を円柱状に形成する。
【0126】
これにより、回動軸部から吹出し空気が漏れる時の通路になる筐体の溝部との間の隙間の通路の長さが、大略、溝部の円周方向の長さ迄長くなり、隙間を通る空気の抵抗が増え、漏れでる吹出し空気の量が減少する。また、回動軸部の外観が一様な曲率の滑らかな面になるので、視覚的なノイズを減少できる。また、同じ半円形状の溝部に対して、中空部の面積が広くなり、伝達部材の強度、剛性を上げることができる。逆に、必要となる伝達部材の強度、剛性に対して、回動軸の外径を小さくできるので、この部の質量を減らし、風向板を軽量化できる。このため、ショートサーキットを効果的に抑制する空気調和機を得ることができる。
【0127】
また、前記間隙形成部を複数設ける。
【0128】
これにより、漏れ出てくる吹出し空気の抵抗となる隙間が複数個所になり、抵抗が2倍となって漏れる吹出し空気の量が約半分になる。また、間隙形成部間に隙間より広い流路ができることで、ラビリンス効果によって圧力損失が増え、吹出し空気の漏れ量をさらに抑制することができる。このため、ショートサーキットを効果的に抑制する空気調和機を得ることができる。
【0129】
また、前記溝部内に溝部と上部ケーシングとの位置関係を固定する係合部を設ける。
【0130】
これにより、下パネルの溝部の回動軸方向の直線性を確保しやすくなり、上側風向板の回動に伴う、上側風向板の間隙形成部と溝部との隙間の変化が小さくなるので、設計上の隙間の寸法を小さくでき、隙間から漏れる吹出し空気の量をさらに少なくできる。また、上部ケーシングとみぞ部との位置関係が固定されることから、吹出し風路に面する下パネルと上部ケーシングの突合せ部を段差や隙間の無いように組立てることができる。下パネルと上部ケーシングの突合せ部に隙間が有ると、冷房時、冷たい吹出し空気が
図11の矢印のように下パネルと露受け皿の間の空間に漏れ出し、下パネルが冷やされて下パネルの室内側に室内空気中の水分が凝縮し、結露して外観を損ね、また、結露する量が多いと滴下して室内を汚す恐れがある。下パネルと上部ケーシングの突合せ部に段差が有ると、上部ケーシングに沿って流れてきた吹出し空気が段差に衝突し、2方向に分かれ、一部は突合せ部の隙間から下パネルの裏側に入り、他は吹出し風路の中央よりに方向を変えて流れ、段差の下流に渦を発生させ、予期せぬところに結露を生じさせたり、渦音を発生させたりする。下パネルと上部ケーシングの突合せ部の隙間や段差が無くなると、この部から下パネルの裏側に漏れていた吹出し空気が遮断され、下パネルが冷やされなくなって、下パネルの表面の結露が少なくなると共に、渦の発生も少なくなって、結露や異音の発生も少なくなり、結露による外観の悪化や結露の滴下による室内の汚れや騒音による快適性の悪化を防ぐことができる。この時、係合部が下パネルの溝部に設けられているので、空気調和機の使用状態では、係合部の前に回動軸が組込まれ、室内から見えなくなるので、視覚的なノイズとなることも無い。このため、ショートサーキットを効果的に抑制し、視覚的なノイズを小さくし、外観の悪化を防ぐ空気調和機を得ることができる。
【0131】
また、前記回動軸の伝達部材からの駆動力の被伝達部の中空形状部の内面に複数の平坦部を設け、該平坦部を辺数6以下の正多角形状又は平行に配置する。
【0132】
これにより、中空形状部内面の各辺には同じ量のモーメントが掛かり、突出して大きなモーメントが掛かることが無い。このため、風向板の回動動作の信頼性を向上できる。また逆に、風向板の回動に必要となるモーメントにあわせた伝達部材、中空部の寸法にすれば、伝達部材、中空部を小さくでき、材料を節約できるこの場合、辺数が6を超えると軸心と辺との距離が軸心と頂点との距離に近づき、材質を合成樹脂とした場合、辺の変形、頂点の崩れなどで、伝達部材が中空部の中で空転する恐れが大きくなる。このため、風向板の回動動作の信頼性の高い空気調和機を得ることができる。
【0133】
また、風向面の翼型後縁と回動軸中心を結ぶ線を基準線とし、基準線からの風向板の最大高さが基準線の長さの0.15〜0.3の範囲であり、且つ、基準線からの風向板の最大高さの位置迄の基準線に沿った長さが基準線の長さの0.25〜0.45の範囲である。
【0134】
これにより、風向板を回動軸の両端で支えた場合の風向板の撓みが、回動軸の中空部と遮風面で抑制されて小さくなって、使用中はもとより、停止中の美観も良くなり、外観の品質が向上する。この場合、基準線からの風向板の最大高さが基準線の長さの0.15未満では変形量が大きくなり、基準線の長さの0.3を超えるとまた、基準線からの風向板の最大高さの位置迄の基準線に沿った長さが基準線の長さの0.25未満では、基準線の長さの0.45を超えるとこのため、外観の品質が良い空気調和機を得ることができる。
【0135】
また、風向面の翼型後縁と回動軸中心を結ぶ線を基準線とし、基準線からの風向面の最大高さの位置に該基準線が張る角が42〜63度の範囲である。
【0136】
また、前記制限機構は、前記滑動の範囲の中間部に設けられた押込み方向の滑動を制限する機構であって、該制限機構を解除する解除機構を、更に具える。
【0137】
これにより、メンテナンスの時などに、風向板を筐体から外す場合は、回動軸の一端で回動軸と駆動軸の間に嵌め込んだ伝達部材の滑動制限を解除する制限解除機構を作動させる。制限解除機構を作動させることで、伝達部材の回動軸側への活動が可能になるので、伝達部材を回動軸の中空部に引込み、駆動モータの駆動軸から外す。次に、他端の伝達部材係合部から伝達部材を引抜き、風向板を筐体から取外す。このように、風向板を筐体から簡単に取外すことができるので、メンテナンスも容易になる。このため、メンテナンスが容易な空気調和機を得ることができる。
【0138】
また、前記解除機構は手動工具を使用して作動させる機構である。
【0139】
これにより、例えば、マイナスドライバーを使用し、回動軸の外表面から内部に設けられた伝達部材の制限解除機構の押圧部を押し、押圧部に繋がる変形部を撓ませて押込み制限爪をストッパ部から外す。これで、伝達部材は滑動可能となり、ドライバーで押したまま回動軸方向に引込むことで、駆動モータの駆動軸との係合が外れ、風向板を斜めにして回動軸方向に引くことで、他端の係合部を外し、完全に筐体から取外すことができる。この時、普段は手の届かない、奥まったところにある押圧部を手動工具を使用して押し、押しながら伝達部材を動かすことで、ようやく、風向板を外すことができる構造にすることで、他のメンテナンス時に、不用意に、押圧部を押して風向板を外してしまう恐れが無く、メンテナンス作業を効率的に行うことができる。このため、メンテナンスが容易な、空気調和機を得ることができる。
【0140】
また、前記風向板の前記伝達部材の滑動機構及び前記制限機構を前記回動軸の片側端部に具える。
【0141】
これにより、伝達部材、滑動機構、滑動制限機構、制限解除機構を片側に具えるだけとなり、伝達部材、滑動機構、滑動制限機構、制限解除機構を両側に具えるものより、部品数が少なくて済み、資源を節約でき、軽量化も図れ、コストも安くなる。このため、資源を節約した空気調和機を得ることができる。
【0142】
また、前記風向板の前記伝達部材の滑動機構及び前記制限機構を前記回動軸の両側端部に具える。これにより、伝達部材と駆動軸の係合部の長さを長くでき、係合部に係る単位面積あたりの負荷が軽減され、係合部の信頼性が増す。また、筐体の溝部の両端に駆動モータを配置すれば、長尺の風向板の両端から風向板を駆動でき、片側駆動の場合に、風向板の剛性に応じて生ずる風向板両端での変形量の差による美観の劣化を防止し、美観を向上させることができる。このため、美観が向上した空気調和機を得ることができる。
【0143】
また、前記風向板の中央部の回動軸の少なくとも一部を中空形状に構成し、空気調和機本体側に該中央部の回動軸を保持する支持部材を具え、該中空部に該回動軸に保持力を伝達する保持部材を該回動軸の軸方向に滑動自在に収納し、該支持部材と保持部材が係合する位置で該滑動を制限する制限機構を具える。
【0144】
これにより、メンテナンスで一端取外した風向板を再組込する時に、先ず、中央の係合部を係合させ、次に、一端の伝達部材を係合させ、次に他端の係合部を係合する。空気調和機は室内の高所に据付られることが多く、メンテナンスは多くの場合、脚立に登って不自由な姿勢で顔を上向きにした決して楽な姿勢とはいえない姿勢で行うことが多い。
【0145】
この場合、中央に係合部が無いと、距離的に離れた両端の係合部を、脚立の上の不自由な姿勢で見比べながら、一端の係合部を係合させなければならず、係合した後も本当に係合しているかどうかも確かめる必要があるため、片手で風向板を支え、他方の手でドライバーを握って、狭い脚立の上で上半身を左右にねじって係合部を確認しながらの作業になり、難しい作業であった。
【0146】
中央部に風向板を支持する支持部材があると、バランスの取り易い風向板の中央部を持って、これに近い位置にある保持部材の押圧部をドライバーで押しながら動かすので、脚立の上で上半身をねじらずに作業ができ、容易な作業となる。
【0147】
風向板の中央部を保持した後は一端の伝達部材を片手で駆動軸に合わせながら、近い位置にある保持部材の押圧部を他方の手に持ったドライバーで押しながら移動させる作業となり、容易な作業となる。次に、同様の作業を他端の係合部でも行い、組込みが完了する。この場合も、係合部と押圧部が近くに位置するので作業は容易である。このため、メンテナンス作業の容易な空気調和機を得ることができる。