(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0009】
図1は、リアプロジェクション装置10の全体構成図である。
図1に示すように、リアプロジェクション装置10は、映像出力部14と、反射ミラー16と、透過型スクリーン18とを備える。映像出力部14は、映像を形成する映像光PLを反射ミラー16へと出力する。反射ミラー16は、映像出力部14から出力された映像光PLを透過型スクリーン18へと反射する。透過型スクリーン18は、反射ミラー16によって反射された映像光PLを透過及び反射して、前方へと投射する。
【0010】
図2は、透過型スクリーン18の全体斜視図である。
図3は、透過型スクリーン18の拡大断面図である。
図4は、
図3の一部拡大図である。
図2、
図3及び
図4に示すように、透過型スクリーン18は、ベース部22と、複数のプリズム部24と、複数の拡散反射層26とを有する。
【0011】
ベース部22は、正面視にて長方形の平板状に形成されている。ベース部22は、光を透過可能な材料からなる。ベース部22は、巻き取り可能な柔軟性を有する材料によって構成されている。ベース部22を構成する材料の例は、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、スチレン樹脂、アクリルスチレン共重合樹脂、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂である。
【0012】
複数のプリズム部24は、ベース部22の後面に形成されている。複数のプリズム部24は、ベース部22と一体化されている。プリズム部24は、ベース部22と同じ材料で構成されている。プリズム部24は、水平方向に沿って直線状に延びる三角柱状に形成されている。プリズム部24の水平方向の長さは、ベース部22の水平方向の長さと等しい。従って、プリズム部24は、ベース部22の水平方向の全長にわたって設けられている。各プリズム部24は、互いに平行に配置されている。複数のプリズム部24は、上下方向に沿って、周期的に配列されている。プリズム部24のピッチの一例は、100μmから300μmである。プリズム部24の前後方向の高さの一例は、70μmから200μmである。
【0013】
プリズム部24は、入射面30と、反射面32とを有する。入射面30及び反射面32は、一対の面の一例である。また、反射面32は一対の面の一方の面の一例であって、入射面30は一対の面の他方の面の一例である。
【0014】
入射面30は、長方形の平面状に形成されている。入射面30は、反射面32よりも映像光PLの進行方向の上流側に配置されている。入射面30は、ベース部22の法線方向から傾斜している。入射面30の法線方向は、映像光PLの進行方向から少しずらすことが好ましい。これにより、入射面30による映像光PLの反射を抑制しつつ、入射面30により反射された映像光PLが映像出力部14へと照射されることを抑制できる。
【0015】
反射面32は、長方形の平面状に形成されている。反射面32は、入射面30の下方に配置されている。反射面32は、入射面30よりも映像光PLの進行方向の下流側に配置されている。反射面32は、入射面30と交差する。反射面32は、ベース部22の法線方向から傾斜している。反射面32の傾斜方向は、拡散反射層26が映像光PLを全反射可能な角度に設定することが好ましい。この場合、反射面32の傾斜方向は、映像光PLの入射角度に対応して設定される。
【0016】
プリズム部24の入射面30とベース部22の出射面23に平行な鉛直面との間の角度θ
αの一例は、51°である。プリズム部24の反射面32とベース部22の出射面23に平行な鉛直面との間の角度θ
βの一例は、75°である。尚、各プリズム部24の角度θ
α、θ
βは、製造工程の簡略化の観点からは全て等しくすることが好ましい。一方、各プリズム部24の角度θ
α、θ
βは、画質向上の観点からは異ならせることが好ましい。各角度θ
α、θ
βを異ならせる場合、各プリズム部24に入射する映像光PLの入射角度と角度θ
α、θ
βとを対応させて、徐々に変化させることが好ましい。
【0017】
拡散反射層26は、各プリズム部24の反射面32に設けられている。拡散反射層26は、シリカ、マイカ、酸化チタン、炭酸バリウムを含む反射塗料によって構成される。反射塗料のバインダ樹脂の屈折率とプリズム部24の樹脂を構成する屈折率を略同一にすることで拡散反射層26の拡散反射性能を向上させることができる。拡散反射層26は、入射面30から入射した入射した映像光PLを拡散してベース部22へと反射する。拡散反射層26の厚みの一例は、10μmから20μmである。拡散反射層26を厚くすることにより、隠蔽性が向上し、ゲインを向上させることができる。拡散反射層26は、水平方向において、反射面32の全長にわたって形成されている。拡散反射層26は、入射面30と反射面32との間の頂部50から反射面32の途中部にわたって設けられている。頂部50とは、各プリズム部24において入射面30と反射面32とが交差する部分のことである。途中部の一例は、プリズム部24の頂部50を通り映像光PLの進行方向に平行な直線と、反射面32との交差する交差部52である。外部の照明等から出力される外光の反射を抑制する観点からは、交差部52よりも頂部50側に拡散反射層26を縮小すればよい。
【0018】
次に、透過型スクリーン18の動作を説明する。映像光PLが、反射ミラー16によって反射されて透過型スクリーン18に達する。反射ミラー16に反射された映像光PLの進行方向の一例は、鉛直方向から15°後方に傾斜した方向である。透過型スクリーン18に達した映像光PLは、プリズム部24の入射面30から入射する。映像光PLは、プリズム部24の内部を通過して、反射面32に達する。映像光PLは、反射面32に設けられた拡散反射層26によって拡散されて反射される。この後、映像光PLは、プリズム部24及びベース部22の内部を進行して、ベース部22の出力側の面から前方へと出射される。これにより、ユーザは、映像を見ることができる。
【0019】
上述したように、透過型スクリーン18は、映像光PLを拡散して反射する拡散反射層26を有する。これにより、透過型スクリーン18は、映像光PLの出射方向を広げることができるので、視野角を広げることができる。また、透過型スクリーン18は、拡散反射層26によって映像光PLを広げるので、拡散用のレンチキュラーレンズを省略することができる。これにより、透過型スクリーン18は、フレネルレンズとレンチキュラーレンズにより構成されていた透過型スクリーンに比べて、軽量化及び薄型化を実現するとともに、両レンズの位置合わせを省略できるので、製造工程を簡略化できる。更に、透過型スクリーン18は、両レンズを用いないので、両レンズに起因する浮き及び相対的な歪み等が生じることがなく、温度及び湿度の影響も受けがたい。これにより、透過型スクリーン18は、画像の低下を抑えることができる。
【0020】
図5は、別の実施形態による透過型スクリーン118の拡大断面図である。
図5に示すように、透過型スクリーン118は、反射側光吸収層34を更に備える。
【0021】
反射側光吸収層34は、水平方向において、反射面32の全長にわたって形成されている。反射側光吸収層34は、反射面32の全面を覆う。反射側光吸収層34の一部は、拡散反射層26を介して、反射面32を覆う。尚、反射側光吸収層34は、各反射面32の一部に形成してもよいが、拡散反射層26が形成されていない領域を少なくとも覆うことが好ましい。反射側光吸収層34を構成する材料の一例は、カーボンブラックを含有するウレタンである。光吸収塗料のバインダ樹脂の屈折率とプリズム部24の樹脂を構成する屈折率を略同一にすることで、反射側光吸収層34の光吸収性を向上させることができる。
【0022】
透過型スクリーン118では、例えば、ベース部22の出射側の面から入射した外光OL及び内部反射による迷光が、反射側光吸収層34によって吸収される。尚、外光OLの入射角度の一例は、鉛直方向から前方に20°未満である。これにより、外光OL及び迷光が、反射側光吸収層34によって吸収されて、出射側から出射されることを抑制できる。この結果、透過型スクリーン118は、コントラストを向上させることができる。
【0023】
図6は、別の実施形態による透過型スクリーン218の拡大断面図である。
図7は、
図6の一部拡大図である。
図6及び
図7に示すように、透過型スクリーン218は、入射側光吸収層36を更に備える。入射側光吸収層36を構成する材料の一例は、カーボンブラックを含有するウレタンである。光吸収塗料のバインダ樹脂の屈折率とプリズム部24の樹脂を構成する屈折率を略同一にすることで入射側光吸収層36の光吸収性を向上させることができる。
【0024】
入射側光吸収層36は、水平方向において、入射面30の全長にわたって形成されている。入射側光吸収層36は、入射面30のベース部22側の一部の領域に形成されている。例えば、入射側光吸収層36は、底部から頂部方向の途中部まで形成されている。底部とは、入射面30の前方側の端部と、隣接するプリズム部24の反射面32の前方側の端部とが交差する部分のことである。入射面30の頂部50から途中部まで、入射側光吸収層36から露出した露出領域が形成されている。ここでいう途中部の一例は、プリズム部24の頂部50を通り入射方向に平行な直線と、入射面30との交差部54である。これにより、露出領域が映像光PLの入射領域と略等しくなる。尚、露出領域の形成領域は適宜変更してよく、少なくとも一部の映像光が反射面32に達するように構成すればよい。
【0025】
透過型スクリーン218では、例えば、ベース部22の出射側の面から入射した外光OLが、拡散反射層26によって反射された後、入射面30に達した外光OLを入射側光吸収層36が吸収できる。この結果、透過型スクリーン218は、コントラストを向上させることができる。
【0026】
更に、入射側光吸収層36は、映像光PLの入射領域に形成されていない。これにより、入射側光吸収層36が、映像光PLを吸収することを抑制できる。この結果、ゲインの低減を抑制することができる。
【0027】
図8は、別の実施形態による透過型スクリーン318の拡大断面図である。
図8に示すように、透過型スクリーン318は、色補償層40と、反射防止層42とを更に備える。
【0028】
色補償層40は、ベース部22の出射側の面に設けられている。色補償層40は、ティント剤等を含み、外光を吸収して特定の色を補償する。これにより、色補償層40は、コントラストを強調する。また、色補償層40は、反射防止層42とベース部22とを接着する接着剤としても機能する。
【0029】
反射防止層42は、色補償層40を介して、ベース部22の出射側の面に設けられている。ベース部22の反射防止層42は、外光の反射を防止する。尚、反射防止層42に代えて、眩しさを防ぐ防眩層、表面の傷を抑制するハードコート層等を設けてもよい。
【0030】
次に、プロジェクション装置の内部構成、及び、照明装置等の配置に関する具体例について説明する。
図9は、プロジェクション装置410の配置の具体例を説明する概略図である。
図9に示すプロジェクション装置410では、映像出力部14が、透過型スクリーン418の後方且つ下方に配置されている。ベース部22及びプリズム部24の屈折率を1.6とする。透過型スクリーン418は、高さHが1250mmの100インチ型とする。プロジェクション装置410の前方且つ上方には、2つの照明装置60、62が設置されている。
【0031】
映像出力部14と透過型スクリーン418との鉛直方向の距離D1は、363mmである。映像出力部14と透過型スクリーン418との水平方向の距離D2は、432mmである。映像出力部14と透過型スクリーン418の中心とを結ぶ線と、鉛直方向との間の角度θ1は、24°である。映像出力部14と透過型スクリーン418の上端とを結ぶ線と、鉛直方向との間の角度θ2は、15°である。映像出力部14と透過型スクリーン418の下端とを結ぶ線と、鉛直方向との間の角度θ3は、50°である。
【0032】
照明装置60、62と透過型スクリーン418の中心との鉛直方向の距離D3は、1500mmである。照明装置60と透過型スクリーン418との水平方向の距離D4は、866mmである。照明装置62と透過型スクリーン418との水平方向の距離D5は、1500mmである。照明装置60と透過型スクリーン418の中心とを結ぶ線と、鉛直方向との間の角度θ4は、30°である。照明装置62と透過型スクリーン418の中心とを結ぶ線と、鉛直方向との間の角度θ5は、45°である。
【0033】
図10、
図11、
図12は、
図9に示す透過型スクリーン418の部分拡大図である。
図10に示す透過型スクリーン418では、入射面30と鉛直面との間の角度θ7は、80°である。反射面32と鉛直面との間の角度θ8は、60°である。尚、入射面30と反射面32との間の頂角は、40°である。映像出力部14から出力された映像光PLは、鉛直方向との間の角度が15°から50°で透過型スクリーン418に入射する。入射した映像光PLは、拡散反射層26によって拡散されつつ反射された後、出射面23から一定の広がりを持った状態で出力されて前方へと進行する。例えば、鉛直方向との間の角度が24°で透過型スクリーン418に入射する映像光PLは、拡散反射層26によって拡散されつつ反射される。その拡散された映像光PLは、18°下方に傾斜した方向を中心として一定の広がりを持った状態で、出射面23から出力されて前方へと進行する。
【0034】
図11に示すように、照明装置60から出力された外光OL1は、出射面23に対して約30°の角度で透過型スクリーン418に入射する。外光OL1の一部は、入射側光吸収層36によって吸収される。残りの外光OL1は、入射面30及び拡散反射層26によって拡散されつつ反射された後、拡散されて一定の広がりを持ちつつ進行する外光OL1の多くは反射側光吸収層34または入射側光吸収層36に達して吸収される。
【0035】
図12に示すように、照明装置60から出力された外光OL2は、出射面23に対して約45°の角度で透過型スクリーン418に入射する。外光OL2の一部は、入射側光吸収層36によって吸収される。残りの外光OL2は、入射面30及び拡散反射層26によって拡散されつつ反射された後、拡散されて一定の広がりを持ちつつ進行する外光OL2の多くは反射側光吸収層34または入射側光吸収層36に達して吸収される。
【0036】
図13は、プロジェクション装置510の配置の他の具体例を説明する概略図である。
図13において、
図9と同じ構成、角度及び距離に関しては、同じ符号を付与する。
図13に示すプロジェクション装置510では、映像出力部14が、透過型スクリーン518の後方且つ上方に配置されている。
【0037】
図14、
図15、
図16は、
図13に示す透過型スクリーン518の部分拡大図である。
図14に示す透過型スクリーン518では、例えば、鉛直方向との間の角度が24°で透過型スクリーン518に入射する映像光PLは、拡散反射層26によって拡散されつつ反射される。その拡散された映像光PLは、18°上方に傾斜した方向を中心として一定の広がりを持った状態で、出射面23から出力されて前方へと進行する。
【0038】
図15に示すように、照明装置60から出力された外光OL1は、出射面23に対して約30°の角度で透過型スクリーン518に入射する。外光OL1は、反射側光吸収層34または入射側光吸収層36に達して吸収される。
【0039】
図16に示すように、照明装置60から出力された外光OL2は、出射面23に対して約45°の角度で透過型スクリーン518に入射する。外光OL2は、反射側光吸収層34または入射側光吸収層36に達して吸収される。
【0040】
上述の実施形態における各構成の形状、配置、個数、材料等は適宜変更してよい。例えば、プリズム部24の頂角等は適宜変更してよい。
【0041】
また、上述の実施形態では、巻き取り可能な透過型スクリーンを例に説明したが、ベース部の出射側の面にプラスチック板及びガラス板等を設けて補強して、巻き取り不能なパネル型としてもよい。
【0042】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0043】
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。