(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記複数の永久磁石及び前記磁性ヨークは、それぞれ前記永久磁石列が延びる方向に延びる中空部を有する筒形状を有していることを特徴とする請求項3に記載の電気機械。
n相分(nは2以上の整数)の前記巻線部が前記永久磁石列に沿って配置され、前記n個の巻線部に電気角で(360/n)°の位相差を持った励磁電流が流されて前記可動子が前記往復直線運動をする請求項6に記載の電気機械。
n相分(nは2以上の整数)の前記巻線部が前記永久磁石列に沿って配置され、前記n個の巻線部に電気角で(360/(2×n))°の位相差を持った励磁電流が流されて前記可動子が前記往復直線運動をする請求項6に記載の電気機械。
n相分(nは1以上の整数)のn個の前記巻線部が、それぞれ第1の分割巻線部と該第1の分割巻線部とは逆相の関係になるように構成された第2の分割巻線部とから構成され、電気角で(360/2n)°の位相差を持った励磁電流が順番に流れるように前記n個の巻線部の前記第1及び第2の分割巻線部が配置されている請求項6または7に記載の電気機械。
n相分のn個の前記巻線部が、それぞれ第1の分割巻線部と該第1の分割巻線部とは逆相の関係になるように構成された第2の分割巻線部とから構成され、電気角で(360/2n)°の位相差を持った励磁電流が順番に流れるように前記n個の巻線部の前記第1及び第2の分割巻線部が配置されおり、
1つの相の前記巻線部の前記分割巻線部に対応して設けられる個別永久磁石列に含まれる前記複数の永久磁石のピッチをτpとし、
1つの相の前記巻線部に対応して設けられた前記個別永久磁石列の一端側に最初に存在する磁極の端面から、該個別永久磁石列の他端側に位置する他の相の前記巻線部に対応して設けられた他の個別永久磁石列の一端側にあって前記最初に存在する磁極の極性と同極性になる最初の磁極の端面までのピッチをτmとし、
前記同極性になる最初の磁極が、前記他の個別永久磁石列の前記一端側から2番目に存在する磁極であり、
前記磁極片列に含まれる前記複数の磁極片のピッチをPとしたときに、
P=360°(電気角)
τm=2×P+(1/(2×n))×P
τp=P/2
の条件が満たされていることを特徴とする請求項8または9に記載の電気機械。
n相分のn個の前記巻線部が、それぞれ第1の分割巻線部と該第1の分割巻線部とは逆相の関係になるように構成された第2の分割巻線部とから構成され、電気角で(360/(2×n))°の位相差を持った励磁電流が順番に流れるように前記3個の巻線部の前記第1及び第2の分割巻線部が配置されおり、
前記永久磁石列に含まれる前記複数の永久磁石の数がM(Mは自然数)個であり且つ前記複数の永久磁石のピッチがτp一定であり、
1つの前記分割巻線部の長さをτcとし、
前記磁極片列に含まれる前記複数の磁極片のピッチをPとしたときに、
P=360°(電気角)
τc=2×M×τp/(2×n)
τp=P/2±P/(2×M)
の条件が満たされていることを特徴とする請求項8に記載の電気機械。
前記バックヨークの前記永久磁石列が延びる方向の両端には、前記可動子を往復直線運動可能に且つ周方向に回転不可能に支持する軸受がそれぞれ固定されていることを特徴とする請求項16に記載の電気機械。
前記巻線部が前記可動子が延びる方向に2つ並んで配置され、2つの前記巻線部に逆位相の交流電流が流されて前記可動子が往復振動するように構成され、前記複数の永久磁石のピッチをτpとし、前記複数の磁極片のピッチをPとしたときに、P/4<τp<Pの条件が満たされていることを特徴とする請求項1に記載の電気機械。
前記永久磁石列が外力で往復運動させられるように構成され、前記巻線部に交流電圧が誘起されるように構成され、前記複数の永久磁石のピッチをτpとし、前記複数の磁極片のピッチをPとしたときに、P/4<τp<Pの条件が満たされていることを特徴とする請求項1に記載の電気機械。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、巻線部及び永久磁石の数を増やすと、製造が煩雑になり、製造コストが高くなる。
【0005】
本発明の目的は、巻線部の数を少なくすることができて、しかも永久磁石の使用量を下げることができる電気機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願発明は、固定子に対して可動子が往復直線運動可能に構成されている電気機械を改良の対象とする。本発明では、固定子及び可動子の一方は、1以上の永久磁石列と1以上の巻線部とを備えている。1以上の永久磁石列は、同極性の磁極が対向するように並べられた複数の永久磁石が連続して配置されて構成されるか、または同極性の磁極が対向するように並べられた複数の永久磁石からなる個別永久磁石列が複数並べられて構成される。また1以上の巻線部は、巻線導体がコイル状に巻回されて構成され且つ1以上の永久磁石列を囲むように配置される。ここで個別永久磁石列は、1つの巻線部に完全に対応して個別に設けられる。そして固定子及び可動子の他方は、永久磁石列に沿って間隔あけて並ぶように配置された複数の磁極片を有する1以上の磁極片列を備えている。複数の永久磁石のピッチ及び複数の磁極片のピッチは、同方向に着磁され且つ永久磁石列中に1つおきに位置する2つの永久磁石と、該2つの永久磁石に挟まれ且つ該2つの永久磁石の磁化方向とは異なる異方向に着磁された永久磁石に対向する1つまたは2つの磁極片とを通って磁束が流れるように定められている。
【0007】
本発明のように構成された永久磁石列と複数の磁極片を有する磁極片列とを備えていると、リニアモータ、リニア振動アクチュエータ、リニア振動発電機のいずれの電気機械においても、同方向に着磁され且つ永久磁石列中に1つおきに位置する2つの永久磁石と、該2つの永久磁石に挟まれ且つ該2つの永久磁石の磁化方向とは異なる異方向に着磁された永久磁石に対向する1つまたは2つの磁極片とを通って磁束が流れたときに、磁極片列中の複数の磁極片にそれぞれ形成される磁極と該磁極片に隣接する永久磁石により形成された磁極との間に引き合う力が発生し、可動子の推力を高めることができる。また永久磁石列と巻線部とが固定子及び可動子の一方に一緒に配置されているので、組み立てが容易で、しかも巻線部及び永久磁石の数を減らすことができる。
【0008】
複数の磁極片は、板状、柱状または環状形状を有していてもよく、その形状は任意である。
【0009】
永久磁石列は、複数の永久磁石のそれぞれの両極側に磁性ヨークが配置された構造を有することができる。このようにすれば、磁束の流れを効率よく高めることができ、また、永久磁石の同極を向かい合わす際に発生する反発力を小さくすることができ、製造作業を容易にできる。
【0010】
複数の永久磁石及び磁性ヨークは、それぞれ永久磁石列が延びる方向に延びる中空部を有する筒形状になるように構成できる。このようにすれば、可動子の推力を大きく低下させることなく、永久磁石及び磁性ヨークの量を下げることができる。
【0011】
永久磁石列は、複数の永久磁石が直接接合された構造にしてもよい。このようにすれば、永久磁石の量を増やすことができ、電気機械の可動子の推力をさらに高めることができる。
【0012】
このような場合においても、複数の永久磁石は永久磁石列が延びる方向に延びる中空部を有する筒形状になるように構成できる。このようにすれば、可動子の推力を大きく低下させることなく、永久磁石の使用量を下げることができる。
【0013】
磁極片列は、非磁性材料からなる筒体の内部に複数の磁極片を収納して構成することができる。このようにすれば、複数の磁極片を筒体の内部に収納するだけで、簡単に磁極片列を構成することができる。
【0014】
電気機械がリニア振動アクチュエータの場合は、巻線部が交番磁束を発生して、永久磁石と磁極片との間に可動子の往復直線運動を繰り返すための推力を発生する。
【0015】
電気機械がリニア振動発電機の場合は、外力によって可動子が往復直線運動をすると、永久磁石列の複数の永久磁石と磁極片列とを流れる磁束が発生し、巻線部に誘起電圧が発生する。
【0016】
電気機械がリニアモータの場合は、n相分(nは2以上の整数)の巻線部に(360/n)°または(360/2n)°の位相差を持った励磁電流が流されて可動子が往復直線運動をする。ちなみに2相モータの場合には、巻線部に(360/2n)°の位相差を持った励磁電流が流される。
【0017】
n相分(nは1以上の整数)のn個の巻線部を、それぞれ第1の分割巻線部と該第1の分割巻線部とは逆相の関係になるように構成された第2の分割巻線部とから構成してもよい。この場合には、電気角で(360/2n)°の位相差を持った励磁電流が順番に流れるようにn個の巻線部の第1及び第2の分割巻線部を配置すればよい。このようにすると例えば3相分の巻線部で6相の巻線部を備えた場合と同様の磁場を形成することができるので、励磁回路の数を減らすことができる。
【0018】
具体的に、相数がn相の場合には、以下のように永久磁石のピッチと磁極片のピッチとの関係を定めればよい。すなわち1つの相の巻線部に対応して設けられる個別永久磁石列に含まれる複数の永久磁石のピッチをτpとし、1つの相の巻線部に対応して設けられた個別永久磁石列の一端側に最初に存在する磁極の端面から、該個別永久磁石列の他端側に位置する他の相の巻線部に対応して設けられた他の個別永久磁石列の一端側にあって最初に存在する磁極の極性と同極性になる最初の磁極の端面までのピッチをτmとする。そして磁極片列に含まれる複数の磁極片のピッチをP=360°(電気角)とする。この場合において、
τm=q×P±(1/n)×P(但しqは自然数)
τp=P/2
の条件が満たされていれば、本発明の電気機械はリニアモータとして機能する。この条件において、qの値は個別永久磁石列の構成に応じて定まる。ピッチτmの式中の「q」および「±」はモータ全体の寸法、相順、永久磁石列長さなどから、選択的に決められるもので、モータの寸法と推力が最適になるように選択される。ちなみに後述する実施例1は、同極性になる最初の磁極が、他の個別永久磁石列の一端側において最初に存在する磁極の場合であり、具体的には、
τm=q×P+(1/n)×P,q=3,n=3
τp=P/2
となる。また後述する実施例2の場合は、同極性になる最初の磁極が、他の個別永久磁石列の一端側から2番目に存在する磁極の場合であり、具体的には、
τm=q×P+(1/n)×P,q=3,n=3
τp=P/2
となる。
【0019】
またn相分のn個の巻線部を、それぞれ第1の分割巻線部と該第1の分割巻線部とは逆相の関係になるように構成された第2の分割巻線部とから構成し、電気角で(360/2n)°の位相差を持った励磁電流が順番に流れるようにn個の巻線部の第1及び第2の分割巻線部が配置される構造としてもよい。すなわち1つの相の巻線部の分割巻線部に対応して設けられる個別永久磁石列に含まれる複数の永久磁石のピッチをτpとし、1つの相の巻線部に対応して設けられた個別永久磁石列の一端側に最初に存在する磁極の端面から、該個別永久磁石列の他端側に位置する他の相の巻線部に対応して設けられた他の個別永久磁石列の一端側にあって最初に存在する磁極の極性と同極性になる最初の磁極の端面までのピッチをτmとし、磁極片列に含まれる複数の磁極片のピッチをP=360°(電気角)とする。この場合には、
τm=q×P±(1/(2×n))×P
τp=P/2
の条件ならば、本発明の電気機械はリニアモータとして機能する。上記条件において、「q」および「±」はモータ全体の寸法、相順、永久磁石列長さなどから、選択的に決められるもので、モータの寸法と推力が最適になるように選択される。
【0020】
なお後述する実施例3(
図8,
図9)では、
τm=2×P+(1/(2×3))×P
τp=P/2
の条件の場合を示している。
【0021】
またn相の巻線部を用いる場合において、永久磁石列に含まれる複数の永久磁石の数が2×M(Mは自然数)個であり且つ複数の永久磁石のピッチがτp一定である場合には、磁極片列に含まれる複数の磁極片のピッチをP=360°(電気角)とすると、1つの相の巻線部の長さτc及び永久磁石のピッチτpが、以下の条件を満たせば本発明の電気機械はリニアモータとして機能する。
【0022】
τc=2×M×τp/n
τp=P/2±P/(2×M)
上記条件において、「±」はモータ全体の寸法、相順、永久磁石列長さなどから、選択的に決められるもので、モータの寸法と推力が最適になるように選択される。
【0023】
ちなみに後述する実施例(
図10,
図11)では、
τc=2×8×τp/3
τp=P/2+P/(2×8)
の条件の場合を示している。
【0024】
またn相の巻線部を用いる場合において、3相分の3個の巻線部が、それぞれ第1の分割巻線部と該第1の分割巻線部とは逆相の関係になるように構成された第2の分割巻線部とから構成され、電気角で(360/(2×n))°の位相差を持った励磁電流が順番に流れるように3個の巻線部の第1及び第2の分割巻線部が配置されている場合において、永久磁石列に含まれる複数の永久磁石の数が2×M(Mは自然数)個であり且つ複数の永久磁石のピッチがτp一定である場合に、磁極片列に含まれる複数の磁極片のピッチをP=360°(電気角)として、次の条件を満たすことにより電気機械はリニアモータとして機能する。すなわち1つの分割巻線部の長さτcと永久磁石のピッチτpが次の条件を満たす必要がある。
【0025】
τc=2×M×τp/(2×n)
τp=P/2±P/(2×M)
上記条件において、「±」はモータ全体の寸法、相順、永久磁石列長さなどから、選択的に決められるもので、モータの寸法と推力が最適になるように選択される。
【0026】
ちなみに後述する実施例(
図12)では、
τc=2×8×τp/(2×3)
τp=P/2+P/(2×8)
の条件の場合を示している。
【0027】
またn相の巻線部を用いる場合に、1つの相の巻線部に対応して設けられる個別永久磁石列に含まれる複数の永久磁石のピッチをτpとし、1つの相の巻線部に対応して設けられた個別永久磁石列の一端側に最初に存在する磁極の端面から、該個別永久磁石列の他端側に位置する他の相の巻線部に対応して設けられた他の個別永久磁石列の一端側にあって最初に存在する磁極の極性と同極性になる最初の磁極の端面までのピッチをτmとし、磁極片列に含まれる複数の磁極片のピッチをP=360°(電気角)としたときには、以下の条件を満たせば本発明の電気機械はリニアモータとして機能する。
【0028】
τm=q×P±(1/(2×n))×P(但しqは自然数)
τp=P/2
上記条件において、「q」および「±」はモータ全体の寸法、相順、永久磁石列長さなどから、選択的に決められるもので、モータの寸法と推力が最適になるように選択される。
【0029】
ちなみに後述する実施例(
図13)では、
τm=3×P+(1/(2×2))×P
τp=P/2
の条件の場合を示している。
【0030】
またn相分のn個の巻線部が、それぞれ第1の分割巻線部と該第1の分割巻線部とは逆相の関係になるように構成された第2の分割巻線部とから構成され、電気角で(360/(2×n))°の位相差を持った励磁電流が順番に流れるようにn個の巻線部の第1及び第2の分割巻線部が配置されいる場合には次の条件にする。すなわち、1つの相の巻線部の分割巻線部に対応して設けられる個別永久磁石列に含まれる永久磁石のピッチをτpとし、1つの相の巻線部に対応して設けられた個別永久磁石列の一端側に最初に存在する磁極の端面から、該個別永久磁石列の他端側に位置する他の相の巻線部に対応して設けられた他の個別永久磁石列の一端側にあって最初に存在する磁極の極性と同極性になる最初の磁極の端面までのピッチをτmとし、同極性になる最初の磁極が、他の個別永久磁石列の一端側から2番目に存在する磁極であり、磁極片列に含まれる複数の磁極片のピッチをP=360°(電気角)とした場合には、以下の条件を満たせば本発明の電気機械はリニアモータとして機能する。
【0031】
τm=q×P±(1/(2×n))×P(但しqは自然数)
τp=P/2
上記条件において、「q」および「±」はモータ全体の寸法、相順、永久磁石列長さなどから、選択的に決められるもので、モータの寸法と推力が最適になるように選択される。
【0032】
ちなみに後述する実施例(
図14)では、
τm=2×P+(1/(2×2))×P
τp=P/2
の条件の場合を示している。
【0033】
複数の巻線部の外側には、磁気回路の一部を構成するバックヨークを設けることができる。このようにすれば、複数の巻線部の外側に磁気回路を積極的に形成でき、可動子の推力を高めることができる。
【0034】
バックヨークの永久磁石列が延びる方向の両端には、可動子を往復直線運動可能に且つ周方向に回転不可能に支持する軸受がそれぞれ固定することができる。このようにすれば、可動子が周方向に回転するのを防ぐことができる。
【0035】
複数の巻線部の両端または複数の分割巻線部の両端には、バックヨークと磁気的に結合されて磁極片列と対向する磁性ティースが設けられていてもよい。このような磁性ティースを設ければ、可動子の推力を高めることができる。
【0036】
永久磁石は、複数の分割永久磁石が組み合わされて構成されていてもよい。永久磁石を、複数の分割永久磁石を組み合わせて構成すれば、種々の形状の永久磁石を安価に構成することができる。
【0037】
固定子に磁極片列を設け、可動子に巻線部及び永久磁石列を設けてもよい。このようにすると、可動子のストロークを長くしても、巻線部の数及び永久磁石の数を増やす必要が無い利点が得られる。
【0038】
磁極片の構成な任意であり、永久磁石列が延びる方向に磁性鋼板を積層して1つの磁極片を構成してもよく、また複数の磁極片を磁性鋼板が積層して構成してもよい。
【0039】
なお巻線部を1つ用い、巻線部に交流電流を流して可動子を往復振動させることによりリニア振動アクチュエータを構成してもよい。また巻線部を可動子が延びる方向に2つ並んで配置し、2つの巻線部に逆位相の交流電流を流して可動子を往復振動させるようにしてもよい。この場合には、複数の永久磁石のピッチをτpとし、複数の磁極片のピッチをPとしたときに、P/4<τp<Pの条件が満たされていることが好ましい。
【0040】
更に永久磁石列を外力で往復運動させられるようにして、巻線部に交流電圧が誘起されるように構成すれば、リニア振動発電機を得ることができる。この場合にも、複数の永久磁石のピッチをτpとし、複数の磁極片のピッチをPとしたときに、P/4<τp<Pの条件が満たされていることが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【
図1】三相のリニアモータに本発明を適用した本発明の実施例の非励磁状態における停止状態を示す断面図である。
【
図2】(A)は巻線部に通電する三相交流波形を示す図であり、(B)は三相の巻線部の配置を示す図である。
【
図3】
図1に示すリニアモータの動作を説明するために用いる図である。
【
図4】(A)は
図1に示すリニアモータを斜めからみた状態での縦断面図であり、(B)は横断面図である。
【
図5】
図1のリニアモータにおける磁極片列の構成を変えた実施例のリニアモータを斜めからみた状態での縦断面図である。
【
図6】個別永久磁石列の一端側に最初に存在する磁極の極性が異なる場合の実施例のリニアモータを斜めからみた状態での縦断面図である。
【
図7】
図6のリニアモータにおける磁極片列の構成を変えた実施例のリニアモータを斜めからみた状態での縦断面図である。
【
図8】(A)は他の実施例のリニアモータを斜めからみた状態での縦断面図であり、(B)は巻線部の配置構成を示す図である。
【
図9】
図8のリニアモータにおける磁極片列の構成を変えた実施例のリニアモータを斜めからみた状態での縦断面図である。
【
図10】同極性の磁極が対向するように並べられた複数の永久磁石が連続して配置されて永久磁石列を有する実施例のリニアモータを斜めからみた状態での縦断面図である。
【
図11】
図10のリニアモータにおける磁極片列の構成を変えた実施例のリニアモータを斜めからみた状態での縦断面図である。
【
図12】他の実施例のリニアモータを斜めからみた状態での縦断面図である。
【
図13】2相のリニアモータに本発明を適用した実施例を斜めからみた状態での縦断面図である。
【
図14】2相のリニアモータに本発明を適用した他の実施例を斜めからみた状態での縦断面図である。
【
図15】(A)及び(B)は、本発明を1相のリニアモータに適用してリニア振動アクチュエータを構成した実施例を斜めからみた状態での縦断面図である。
【
図16】(A)〜(C)は、リニア振動発電機に本発明を適用した実施例を斜めからみた状態での縦断面図である。
【
図17】バックヨークを有しない本発明の電気機械の一実施例の構造を示す断面図である。
【
図18】(A)〜(C)は、本発明の電気機械をリニアモータを適用した場合において、バックヨークに磁性ティースを配置した実施例の構造を示す図である。
【
図19】(A)及び(B)は、可動子の固定構造を説明するための実施例の断面図である。
【
図20】(A)〜(D)は、実施例の電気機械を軸線方向に直交する方向に切断した断面の輪郭の形状の変形例を説明するために用いる図である。
【
図21】(A)及び(B)は、バックヨーク、永久磁石、磁極片の変形例を説明するために用いる図である。
【
図22】(A)及び(B)は、バックヨーク、永久磁石、磁極片の変形例を説明するために用いる図である。
【
図23】磁極片列を固定子に設けて、永久磁石列及び巻線部を可動子に設ける場合の構成の一例を示す図である。
【
図24】磁極片列を固定子に設けて、永久磁石列及び巻線部を可動子に設ける場合の構成の他の例を示す図である。
【
図25】
図23及び
図24の実施例において使用することができる固定子の磁極片列を含む構造物の正面図及び側面図である。
【
図26】
図23及び
図24の実施例において使用することができる固定子の磁極片列を含む構造物の正面図及び側面図である。
【
図27】
図23及び
図24の実施例において使用することができる固定子の磁極片列を含む構造物の正面図及び側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下、図面を参照して本発明の電気機械の複数の実施の形態を詳細に説明する。なお以下の説明で参照する図面には、図示を明確にするために、一部を除いて断面であることを示すハッチングを付していない。
【0043】
(実施例1)
図1は、三相のリニアモータに本発明を適用した本発明の実施例1の電気機械の概略断面図である。
図1には、軸受け構造は図示していない。この三相リニアモータには
図2(A)及び(B)に示す位相関係の三相交流が励磁巻線に通電される。
図1は、非励磁状態における直動軸の代表的な停止状態を示している。
図1に示すように、本例の三相リニアモータ1は、リニアモータ本体3と該リニアモータ本体3に取り付けられたバックヨーク5とを有している。リニアモータ本体3は、可動子7と固定子9とを有している。可動子7は、直動軸11を有しており、直動軸11には複数の磁極片13からなる1つの磁極片列15が含まれている。本実施例で用いる磁極片13は、
図4に示すように円環状形状を有している。磁極片13は、例えば珪素鋼の磁性材料から形成されている。実際には、破線または実線で示すステンレス製の管17の内部に所定のピッチPで複数の磁極片13が間隔をあけて配置されている。隣合う磁極片13間には、図示しない樹脂製のスペーサが配置されている。本実施例で、磁極片のピッチPとは、磁極片13の軸線方向の長さと樹脂製のスペーサの軸線方向の長さ(または隣合う2つの磁極片13の間の空間の長さ)を加えた長さを意味する。本実施例では、この磁極片のピッチPを電気角で360°と定義する。なお複数の磁極片13をインサートとしてインサート成形により一体物の磁極片列15を形成してもよいのは勿論である。後の実施例で説明するが、直動軸11の両端は、直動軸11の直線運動は許容するが、回転運動を許容しないボールスプライン軸受等によってスライド自在に支持されている。
【0044】
固定子9は、3つの巻線部19A,19B及び19Cと複数の永久磁石21からなる永久磁石列23とから構成されている。巻線部19A〜19Cは、巻線導体がコイル状に巻回されて構成され且つ永久磁石列23と同心的に配置されている。巻線部19A〜19Cには、電気角で120°(360/n)°の位相差を持った励磁電流が流される。巻線部19A〜19Cには、U相、V相、W相の順で電流が流れる。
【0045】
永久磁石列23は、複数の円筒形の永久磁石21と複数の永久磁石21の側面に配置された円筒形の複数の磁性ヨーク22とが所定のピッチτpで直動軸11の軸線方向に並んで構成されている。
【0046】
本実施例では、永久磁石21の軸線方向の厚み寸法と磁性ヨーク22の軸線方向の厚み寸法を加えた寸法が、永久磁石列23における永久磁石のピッチτpとなる。磁性ヨーク22は、鉄などの磁性材料から形成されている。例えば、珪素鋼からなる複数の磁性鋼板を軸線方向に積層して磁性ヨーク22を形成してもよい。磁性ヨーク22の材料としては、炭素鋼、フェライト系ステンレス、圧粉磁心等も用いることができる。本実施例の永久磁石列23は、同極性の磁極が対向するように並べられた複数の永久磁石21からなる3つの個別永久磁石列23A〜23Cによって構成されている。3つの個別永久磁石列23A〜23Cは、それぞれ巻線部19A〜19Cに対応して個別に設けられている。隣合う2つの個別永久磁石列23A及び23B間または23B及び23C間には磁気的なギャップgが形成されている。このギャップgは、軸線方向の両極側に位置する2つの磁性ヨーク22の軸線方向長さとギャップgの軸線方向の厚みとを加算した値(電気角)が、前述の永久磁石21のピッチτpとなるように定められている。また本実施例では、1つの巻線部19Aとこの巻線部19Aの内側に配置された1つの個別永久磁石列23Aとが、モールド樹脂材料によってモールドされて一体化されている。そして一体化された巻線部19A及び個別永久磁石列23Aと、一体化された巻線部19B及び個別永久磁石列23Bと、一体化された巻線部19C及び個別永久磁石列23Cとが、筒状のバックヨーク5の内周面に接着剤やモールド樹脂材料等の接合手段を用いて接合されている。永久磁石列23を構成する3つの個別永久磁石列23A〜23Cを構成する複数の永久磁石21は、同極性の磁極が対向するように並べられている。
図1,
図3及び
図4において永久磁石21中の矢印は磁化方向を示している。また細い線の矢印は磁束の流れを示している。
【0047】
複数の永久磁石21のピッチτp及び複数の磁極片のピッチPは、同方向に着磁され且つ永久磁石列23中に1つおきに位置する2つの永久磁石21と、該2つの永久磁石に挟まれ且つ該2つの永久磁石の磁化方向とは異なる異方向に着磁された永久磁石に対向する1つまたは2つの磁極片13とを通って磁束が流れるように定められている。
【0048】
本実施の形態のように、相数が3相の場合には、以下のように永久磁石21のピッチτpと磁極片13のピッチPとの関係を定めればよい。すなわち3つの相の巻線部19A〜19Cに対応して設けられる個別永久磁石列23A〜23Cに含まれる複数の永久磁石21のピッチをτpとし、例えば1つの相の巻線部19Aに対応して設けられた個別永久磁石列23Aの一端側に最初に存在する磁極24Aの端面から、該個別永久磁石列23Aの他端側に位置する他の相の巻線部19Bに対応して設けられた他の個別永久磁石列23Bの一端側にあって最初に存在する磁極24Aの極性と同極性になる最初の磁極24Bの端面までのピッチ(電気角)をτmとする。ここで1つの磁極(24A,24B)は、1つの永久磁石21と該1つの永久磁石21に隣接して配置された1つの磁性ヨーク22とによって構成される。そして磁極片列15に含まれる複数の磁極片13のピッチをP=360°(電気角)とする。この場合において、
τm=q×P±(1/3)×P(但しqは自然数)
τp=P/2
の条件が満たされていれば、本発明の電気機械はリニアモータとして機能する。
【0049】
この条件をn相として一般化すると以下のようになる。
【0050】
τm=q×P±(1/n)×P(但しqは自然数)
τp=P/2
上記条件において、「q」および「±」はモータ全体の寸法、相順、永久磁石列長さなどから、選択的に決められるもので、モータの寸法と推力が最適になるように選択される。
【0051】
本実施例では、前述の同極性になる最初の磁極が、他の個別永久磁石列23Bの一端側において最初に存在する磁極24Bの場合であり、q=3、n=3となってτm=3×P+(1/3)×Pとなる。この場合に、q=3とするのは、モータ全長を、実施例の長さのように制限した場合に、コイル数を増やすことなく、推力が最大となる最適なqを選択したためである。
【0052】
次に本例のリニアモータ1の可動子7が固定子9に対して往復直線運動を行う原理を説明する。
図2(A)は、巻線部19A〜19C(U相、V相、W相)の位相の波形であり、
図3の(1)〜(3)は、
図2(A)に示す(1)〜(3)の3ヶ所における可動子7と固定子9の位置関係を示す図である。
図2(A)の(1)に示す位置で、巻線部19A〜19Cが励磁されると、
図3の(1)に示すように、U相のエリアで複数の永久磁石21及び複数の磁極片13を通って磁束(矢印A1)が流れる。このとき磁束の強いU相のエリアが強く引き合い、このエリアにおいて永久磁石21が磁極片13を強く引く推力が発生し、可動子7が図面上右方向に(1/3)Pだけ移動する。同様にして、
図2の(2)に示す位置で、巻線部19A〜19Cが励磁されると、
図3の(2)に示すように、V相のエリアで複数の永久磁石21及び複数の磁極片13を通って磁束(矢印A2)が流れる。このとき磁束の強いV相のエリアが強く引き合い、このエリアにおいて永久磁石21が磁極片13を強く引いて推力が発生し、可動子7が図面上右方向に更に(1/3)Pだけ移動する。同様にして、
図2の(3)に示す位置で、巻線部19A〜19Cが励磁されると、
図3の(3)に示すようにW相のエリアで複数の永久磁石21及び複数の磁極片13を通って磁束(矢印A3)が流れる。このとき磁束の強いW相のエリアが強く引き合い、このエリアにおいて永久磁石21が磁極片13を強く引いて推力が発生し、可動子7が図面上右方向に更に(1/3)Pだけ移動する。可動子7を逆方向に移動させる場合には、巻線部19A〜19Cを励磁する(U相、V相、W相)の位相を180°進めればよい。
【0053】
上記実施例では、磁極片13として円環状形状を有するものを用いたが、
図5(A)及び(B)に示すように、磁極片13´として円柱形状を有するものを用いてもよい。
【0054】
(実施例2)
上記実施の形態では、個別永久磁石列23A〜23Cは全て、一端側に最初に存在する磁極の極性が同じであった。しかしながら一端側に最初に存在する磁極が、個別永久磁石列毎に異なっていてもよい。
図6は、個別永久磁石列123A〜123Cの一端側に最初に存在する磁極の極性が異なる場合の実施例である。
図6の実施例は
図4の実施例と同様に磁極片113が円環状形状を呈しており、
図7の実施例は
図5の実施例と同様に磁極片113´が円柱形状を呈している。
図6及び
図7の実施例は、個別永久磁石列123A〜123Cの極性の相違を除いて、その他の構成は
図4及び
図5の実施例と同じであるため、
図6及び
図7に示した実施例には、
図4及び
図5に示した実施例に付した符号の数に100の数を加えた数の符号を付して説明を省略する。これらの実施例では、個別永久磁石列123Bにおいて、個別永久磁石列123Aの最初の磁極124Aと同極性になる最初の磁極は、個別永久磁石列123Bの一端側から2番目に存在する磁極124Cである。この場合には、前述のピッチτm=q×P±(1/3)×P(但しqは自然数)は、τm=3×P+(1/3)×Pとなる。ここでqが3となり、±が+となるのは、本実施例のモータ全長を制限した場合に、コイル数を増やすことなく、推力が最大となる最適なqおよび符号を選択したためである。
【0055】
(実施例3)
図8(A)は、本発明をリニアモータに適用した他の実施例の断面図である。本実施例では、
図4及び
図5に示した実施例の構成と同様の部分には、
図4及び
図5に付した符号の数に200の数を加えた数の符号を付して説明を省略する。本実施例では、
図8(B)に示すように、3相分(nは1以上の整数)の3個の巻線部を、それぞれ第1の分割巻線部219A〜219Cと該第1の分割巻線部とは逆相の関係になるように構成された第2の分割巻線部219A´〜219C´とから構成している。またこれらの分割巻線部219A〜219C及び219A´〜219C´に対応して、個別永久磁石列223A〜223C及び223A´〜223C´を設けて永久磁石列を構成している。本実施例では、電気角で(360/6)°の位相差を持った励磁電流が順番に流れるように3個の巻線部の第1及び第2の分割巻線部(219A〜219C及び219A´〜219C´)を配置してある。本実施例によれば、3相分の巻線部で6相の巻線部を備えた場合と同様の磁場を形成することができるので、巻線部の数を減らすことができる。本実施例では、例えば1つの相の巻線部の分割巻線部219B´に対応して設けられる個別永久磁石列223B´に含まれる複数の永久磁石のピッチをτpとし、1つの分割巻線部219B´に対応して設けられた個別永久磁石列223B´の一端側に最初に存在する磁極224Aの端面から、該個別永久磁石列223B´の他端側に位置する他の相の分割巻線部219Aに対応して設けられた他の個別永久磁石列223Aの一端側にあって前記最初に存在する磁極224Aと同極性になる最初の磁極の端面224Cまでのピッチをτmとする。本実施例では、同極性になる最初の磁極の端面224Cが、他の個別永久磁石列223Aの一端側から2番目に存在する磁極である。磁極片列215に含まれる複数の磁極片213のピッチをP=360°(電気角)とすると、前述のピッチ(電気角)τmとτpは以下のように定めればよい。
【0056】
τm=2×P+(1/6)×P
τp=P/2
上記の条件をn相の巻線部を備えた場合として、一般的に表現すれば以下のようになる。
【0057】
τm=2×P+(1/(2×n))×P
τp=P/2
上記の条件が満たされていれば、本実施例は、リニアモータとして機能する。
【0058】
図9の実施例は
図5の実施例と同様に磁極片213´が円柱形状を呈するものであり、その他の構成は
図8(A)の構成と同様である。
【0059】
(実施例4)
上記各実施例では、永久磁石列が巻線部に対応して設けられた複数の個別永久磁石列によって構成されている。しかしながら、本発明で用いる永久磁石列は、同極性の磁極が対向するように並べられた複数の永久磁石が連続して配置されて構成されたものでも良いのは勿論である。
図10は、このような実施例の一例を示している。本実施例では、永久磁石列323が、同極性の磁極が対向するように並べられた複数の永久磁石321が連続して配置されて構成されている。なお
図10には、
図4に示した実施例の構成と同様の部分に、
図4に付した符号の数に300の数を加えた数の符号を付して、
図4の実施例と
図10の実施例の共通部分についての説明を省略する。
【0060】
本実施例では、3相の巻線部319A〜319Cを用いる。この場合において、永久磁石列323に含まれる複数の永久磁石321の数が2×M(Mは自然数)個であり且つ複数の永久磁石321のピッチがτp一定であり、磁極片列315に含まれる複数の磁極片313のピッチをP=360°(電気角)とする。1つの相の巻線部319Aの長さ(電気角)τc及び永久磁石のピッチ(電気角)τpが、以下の条件を満たせば本実施例のリニアモータは動作する。
【0061】
なお以下の条件ではn相の巻線部を備えたものとして表現する。
【0062】
τc=2×M×τp/n
τp=P/2±P/(2×M)
この条件を本実施例に当てはめると、以下のようになる。
【0063】
τc=2×8×τp/3
τp=P/2+P/(2×8)
本実施例によれば、
図4の実施例に比べて、より推力リップル及びコギング力が小さくなる利点が得られる。
【0064】
図11の実施例は
図5の実施例と同様に磁極片313´が円柱形状を呈するものであり、その他の構成は
図10の構成と同様である
(実施例5)
図10及び
図11の実施例のように、同極性の磁極が対向するように並べられた複数の永久磁石が連続して配置されて永久磁石列を用いる場合でも、
図8(A)に示した実施例と同様に、1つの巻線部を第1及び第2の分割巻線部に分けて使用することができる。
図12の実施例では、3相分の3個の巻線部が、それぞれ第1の分割巻線部419A〜419Cと該第1の分割巻線部とは逆相の関係になるように構成された第2の分割巻線部419A´〜419C´とから構成され、電気角で(360/6)°の位相差を持った励磁電流が順番に流れるように3個の巻線部の第1及び第2の分割巻線部が配置されている。その他の構成は、
図10と同様である。したがって
図12には、
図10に示した実施例の構成と同様の部分に、
図10に付した符号の数に100の数を加えた数の符号を付して、
図10の実施例と
図12の実施例の共通部分についての説明を省略する。この場合にも、永久磁石列423に含まれる複数の永久磁石421の数が2×M(Mは自然数)個であり且つ複数の永久磁石421のピッチがτp一定であり、磁極片列415に含まれる複数の磁極片413のピッチをP=360°(電気角)とすると、次の条件を満たすことにより本実施例はリニアモータとして機能する。すなわち1つの分割巻線部の長さ(電気角)τcと永久磁石のピッチ(電気角)τpが次の条件を満たす必要がある。
【0065】
なお以下の条件ではn相の巻線部を備えたものとして表現する。
【0066】
τc=2×M×τp/(2×n)
τp=P/2±P/(2×M)
この条件を本実施例に当てはめると、以下のようになる。
【0067】
τc=2×8×τp/(2×3)
τp=P/2+P/(2×8)
図12の例で、Mが8となり、±が+となるのは、モータ全長を本実施例のように制限した場合に、コイル数を増やすことなく、推力が最大となる最適なMおよび符号を選択したためである。本実施例によれば、推力リップル及びコギング力が小さくなる利点が得られる。なお磁極片が円柱形状を呈するものであっても、本実施例と同様に、1つの巻線部を第1及び第2の分割巻線部に分けて使用することができるのはもちろんである。
【0068】
(実施例6)
図13は2相のリニアモータに本発明を適用した実施例である。本実施例は、
図4に示した3相のリニアモータと比べて1相少ない点を除いて、基本的な構成は同じである。そのため
図13には、
図4に示した部材と同様の部材には、
図4に付した符号の数に500の数を加えた数の符号を付して説明を省略する。本実施例のように2相の巻線部519A及び519Bを用いる場合にも、1つの相の巻線部に対応して設けられる個別永久磁石列523A及び523Bに含まれる複数の永久磁石521のピッチ(電気角)をτpとし、1つの相の巻線部に対応して設けられた個別永久磁石列523Aの一端側に最初に存在する磁極524Aの端面から、該個別永久磁石列523Aの他端側に位置する他の相の巻線部519Bに対応して設けられた他の個別永久磁石列523Bの一端側にあって最初に存在する磁極の極性と同極性になる最初の磁極524Bの端面までのピッチ(電気角)をτmとする。そして磁極片列515に含まれる複数の磁極片513のピッチをP=360°(電気角)とする。このとき、以下の一般条件を満たせば本実施例のリニアモータは動作する。
【0069】
τm=q×P±(1/(2×n))×P(但しqは自然数)
τp=P/2
上記条件は、本実施例のように、同極性になる最初の磁極が、他の個別永久磁石列の一端側において最初に存在する磁極524Bである場合には、q=3、n=2として、以下のようになる。
【0070】
τm=3×P+(1/(2×2))×P
τp=P/2
上記条件において、qの値は個別永久磁石列の構成に応じて定まる。またピッチτmの式中の「±」はモータ全体の寸法、相順、永久磁石列長さなどから、選択的に決められるもので、モータの寸法と推力が最適になるように選択される。
【0071】
図14は、
図8に示した実施例と同様に、1個の巻線部を、それぞれ第1の分割巻線部619A及び619Bと該第1の分割巻線部とは逆相の関係になるように構成された第2の分割巻線部619A´及び619B´とから構成している。またこれらの分割巻線部619A及び619B及び619A´及び619B´に対応して、個別永久磁石列623A及び623B及び623A´及び623B´を設けて永久磁石列623を構成している。本実施例では、電気角で(360/4)°の位相差を持った励磁電流が順番に流れるように3個の巻線部の第1及び第2の分割巻線部(619A及び619B及び619A´及び619B´)を配置してある。本実施例によれば、2相分の巻線部で4相の巻線部を備えた場合と同様の磁場を形成することができるので、巻線部の数を減らすことができる。本実施例では、例えば1つの相の巻線部の分割巻線部619B´に対応して設けられる個別永久磁石列623B´に含まれる複数の永久磁石のピッチをτpとし、1つの相の巻線部619B´に対応して設けられた個別永久磁石列623B´の一端側に最初に存在する磁極624Aの端面から、該個別永久磁石列623Bの他端側に位置する他の相の巻線部に対応して設けられた他の個別永久磁石列623A´の一端側にあって前記最初に存在する磁極の磁極624Aと同極性になる最初の磁極の端面624Cまでのピッチをτmとする。本実施例では、同極性になる最初の磁極の端面624Cが、他の個別永久磁石列623A´の一端側から2番目に存在する磁極である。磁極片列615に含まれる複数の磁極片613のピッチをP=360°(電気角)とすると、前述のピッチ(電気角)τmとτpは以下の一般条件を満たすように定まる。
【0072】
τm=q×P±(1/(2×n))×P(但しqは自然数)
τp=P/2
本実施例では、q=2、n=2となり、条件は以下のようになる。
【0073】
τm=2×P+(1/4)×P
τp=P/2
上記条件において、qの値は個別永久磁石列の構成に応じて定まる。またピッチτmの式中の「±」はモータ全体の寸法、相順、永久磁石列長さなどから、選択的に決められるもので、モータの寸法と推力が最適になるように選択される。
【0074】
図13及び
図14の実施例があれば、モータの駆動回路に合わせることができる自由度が高くなる。
【0075】
(実施例7)
図15(A)及び(B)は、本発明を1相のリニアモータに適用してリニア振動アクチュエータを構成した実施例である。本実施例は、
図13及び
図14に示した2相のリニアモータと比べて1相少ない点を除いて、基本的な構成は同じである。そのため
図15(A)及び(B)には、
図13及び
図14に示した部材と同様の部材には、
図13及び
図14に付した符号の数に200または100の数を加えた数の符号を付して説明を省略する。
図15(A)は、1相の巻線部719を用いる場合に、巻線部719に対応して永久磁石列723を設けている。この場合には、磁極片列に含まれる複数の磁極片のピッチをP=360°(電気角)として、永久磁石のピッチτpは、P/4<τp<Pの条件を満たせばよい。本実施例ではτp=P/2の場合を示しており、もっとも推力が大きくなる条件であり、P/4<τp<P/2もしくはP/2<τp<Pの場合には、推力低下を抑えつつ、コギングを小さくでき、滑らかな駆動が実現できる。
【0076】
図15(B)の実施例は、
図14に示した実施例と同様に、1個の巻線部を、それぞれ第1の分割巻線部719Aと該第1の分割巻線部とは逆相の関係になるように構成された第2の分割巻線部719A´とから構成している。本実施例でも磁極片列に含まれる複数の磁極片のピッチをP=360°(電気角)として、永久磁石のピッチτpをP/4<τp<Pとし、また第1の分割巻線部719Aの領域と第2の分割巻線部719A´の領域での、永久磁石列から見た磁極片列の位相差が電気角で180°(=P/2)となる条件が満たされる。本実施例ではτp=P/2の場合を示しており、もっとも推力が大きくなる条件であり、P/4<τp<P/2もしくはP/2<τp<Pの場合には、推力低下を抑えつつ、コギングを小さくでき、滑らかな駆動が実現できる。
【0077】
(実施例8)
図16(A)〜(C)は、リニア振動発電機に本発明を適用した実施例の断面状態を示す斜視図である。
図16(A)が単相のリニア振動発電機の構造を示しており、
図16(B)が2相のリニア振動発電機の構造を示しており、
図16(C)が3相のリニア振動発電機の構造を示している。これらの発電機では、可動子807,907及び1007を外力で往復駆動することにより、磁極片列815,915及び1015を通して永久磁石列823,923及び1023の磁束が
図1及び
図3に示すような磁路で流れて巻線部に電圧が誘起される。
【0078】
(実施例9)
図17は、バックヨークを有しない本発明の電気機械の一実施例の構造を示している。本実施例では、バックヨークを備えていないので、巻線部1119A〜1119C及び個別永久磁石列1123A〜1123Cは、絶縁樹脂モールド部1102により一体化されている。バックヨークが無い場合には、推力は低下するものの電気機械の軽量化を図ることができる。またバックヨークが無い分、巻線部の巻線のターン数を増やすことができて、高効率のモータを提供することができる。
【0079】
(実施例10)
図18(A)〜(C)は、本発明の電気機械をリニアモータを適用した場合において、推力を向上させて、高効率化を図るために、バックヨーク1205,1305及び1405に磁性ティース1206,1306及び1406を配置した実施例の構造を示している。これらの実施例では、巻線部の両側に、一端がバックヨーク1205,1305及び1405と磁気的且つ機械的に結合されたリング状の磁性ティース1206,1306及び1406を固定している。このような磁性ティース1206,1306及び1406を設けると、磁性ティース1206,1306及び1406が磁極として機能する。
【0080】
(実施例11)
図19(A)及び(B)は、可動子の固定構造を説明するための実施例の断面図である。
図19(A)の実施例では、可動子1507の磁極片列1515を収容するステンレス製の管1517の両端を延長し、この両端をバックヨーク1505からなるケーシングの両端に嵌合した一対のボールスプライン軸受1504A及び1504Bにより支持している。一対のボールスプライン軸受1504A及び1504Bを用いれば、可動子1507は軸線方向にスライドするが、軸線を中心にして回転することはない。
図19(B)の実施例ではバックヨーク1605からなるケーシングの両端に一対の摩擦軸受1604A及び1604Bを嵌合して、ステンレス製の管1617を軸線方向にスライド可能に支持している。この構造で可動子の回動を阻止するために、別途回転阻止機構を設ければよい。
【0081】
また、上記の各実施例の電気機械は、軸線方向に直交する方向に切断した断面の輪郭が円形であるが、これらの断面は、
図20(A)〜(D)に示すように、楕円形、正方形、長方形、扁平形状等の種々の形状を採用できる。なお
図20(A)〜(D)においては、Aがバックヨークを示し、Bが巻線部を示し、Cが永久磁石列を示し、Dが磁極片列を示している。
【0082】
またバックヨーク、永久磁石、磁極片は、必ずしも一体に形成されている必要はない。例えば
図21(A)に示すように、バックヨークAを2つの部材A1及びA2を組み合わせる構造としてもよい。
図21(A)の例では、
図21(B)に示すように隣合う永久磁石C1及びC3をそれぞれ4つの永久磁石片によって構成している。C3は、隣合う永久磁石C1及びC3の間に位置する磁性ヨークである。
図22(A)の例では、
図22(B)に示すように隣合う永久磁石C1及びC3をそれぞれ平行に並ぶ2つの永久磁石片列によって構成している。C3は、隣合う永久磁石C1及びC3の間に位置する2つの分割磁性ヨークである。
【0083】
上記各実施例では、磁極片列を可動子に設けて、永久磁石列及び巻線部を固定子に設けている。しかしながら本発明は、磁極片列を固定子に設けて、永久磁石列及び巻線部を可動子に設ける場合にも当然にして適用できる。
図23は、磁極片列Dを固定子に設けて、永久磁石列C及び巻線部Bを可動子に設ける場合の構成の一例を示す図である。この例では、固定子側に断面形状がU字状をなすベースHを設け、このベースHの中央部に磁極片列Dを固定する。そしてベースHの一対の側壁部上にレールGを固定し、このレールG上にガイドFを介して可動プレートEを配置する。可動プレートEの裏面には、バックヨークAがネジ止めされている。この例では、永久磁石列Cはその横断面形状が環状を呈しており、環状の永久磁石列Cの内部に磁極片列Dが配置されている。
図24の例では、
図22に示した構造と同様にして、永久磁石列Cを2つの分割永久磁石列C11及びC12によって構成している。
図25(A)及び(B)〜
図27(A)及び(B)は、それぞれ
図23及び
図24の実施例において使用することができる固定子の磁極片列Dを含む構造物の正面図及び側面図を示している。
図25の構造では、複数の磁極片dが可動子の移動方向に複数枚の磁性鋼板を積層して構成されている。複数の磁極片dを含む磁極片列Dは、複数のアルミ等の非磁性材板を間に介して積層されて、貫通軸Jにより一体化されている。
図26(A)及び(B)の構造では、複数の磁極片dを構成する部分を一体に有する打ち抜き磁性板を複数枚重ねて磁極片列Dが構成されている。隣合う磁極片dを連結する連結部eは、磁気抵抗が大きくなるようになるべく横断面積が小さくなるように細く形成されている。
図27(A)及び(B)の構造では、
図26(A)及び(B)の構造を補強するために、連結部eの数を増やすと共に、連結部eが形成されている部分の周囲を網(メッシュ)状にしている。このようにすると多少磁気抵抗は大きくなるが、機械的強度は増加する。