(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来、電子写真プロセスを用いた画像形成装置における乾式トナーを用いた現像方式としては、キャリアを用いない一成分現像方式と、磁性キャリア(以下、単にキャリアともいう)を用いて非磁性のトナーを帯電させる二成分現像剤を使用し、現像ローラー上に形成されたトナー及びキャリアから成る磁気ブラシにより感光体上の静電潜像を現像する二成分現像方式とが知られている。
【0003】
一成分現像方式は、磁気ブラシによって像担持体上の静電潜像が乱されることがなく高画質化に適している反面、規制ブレードにトナーが付着し、層形成が不均一になって画像欠陥をきたすことがあった。
【0004】
また、色重ねを行うカラー印刷の場合、カラートナーに透過性が要求されるため、非磁性トナーである必要がある。そこで、フルカラー画像形成装置においてはキャリアを用いてトナーを帯電及び搬送する二成分現像方式を採用する場合が多い。しかし、二成分現像方式は安定した帯電量を長期間維持できトナーの長寿命化に適している反面、前述した磁気ブラシによる影響のため画質の面で不利であった。
【0005】
これらの問題を解決する手段の一つとして、磁気ローラー(トナー供給部材)を用いて現像剤を感光体(像担持体)に対して非接触に設置した現像ローラー(トナー担持体)上に移行させる際に、磁気ローラー上に磁性キャリアを残したまま現像ローラー上に非磁性トナーのみを転移させてトナー薄層を形成し、交流電界によって感光体上の静電潜像にトナーを付着させる現像方式が提案されている。
【0006】
ところで、上記の現像方式の場合、現像ローラー上にトナー薄層の層厚が十分に形成されないことにより、感光体上に形成された静電潜像に供給するトナーが不足して画像濃度が低下する、濃度追随不良が発生するおそれがある。また、直前の現像画像の一部が次の現像時に残像(ゴースト)として現れる現象、いわゆる履歴現像が発生しやすいという不具合がある。
【0007】
履歴現像が発生するメカニズムについて説明すると、現像ローラー上のトナー薄層にトナーの消費領域(現像領域)と非消費領域とが生じると、現像ローラー上におけるトナーの付着状態とトナーの電位差にばらつきが生じる関係から、非消費領域に残存するトナー薄層のうち帯電量の低い大径トナーのみが磁気ローラー側に移動し、帯電量の高い小径トナーは現像ローラー表面に残存する。
【0008】
そして、現像ローラー上に残存したトナーの回収性能が低い場合、磁気ローラーからトナーが供給され現像ローラー上に新たなトナー薄層が形成されたとき、直前の現像における現像領域では小径トナーが残存する非消費領域に比べてトナー層厚が薄くなる。この状態で全面ベタ画像やハーフトーン画像を現像すると、直前の現像領域から感光体側に移動するトナー量が少ないため、直前の現像画像が残像として浮かび上がる。
【0009】
そこで、現像ローラー上のトナー回収性を向上させる方法が種々提案されており、例えば特許文献1には、現像ローラー表面に導電材と樹脂(シリコン変性ポリウレタン樹脂)とを含有する被膜層(コート層)を形成した現像ローラーが開示されている。また、特許文献2には、現像ローラー上に形成されたトナー層の、上層のトナーの帯電量と下層のトナーの帯電量との差を規定することで、トナーを均一に、且つ安定して帯電させ、長期間に亘って高画質な画像を得ることができる現像装置が開示されている。
【0010】
さらに特許文献3には、現像ローラーと磁気ローラーとの速度差が600mm/sec以上の現像装置において、現像ローラーを被覆する合成樹脂層を、キャリアとの摩擦による帯電極性がトナーと同極性とすることで、現像ローラー上のトナーの引き剥がし性を向上させる技術が開示されている。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
図1は、本発明の画像形成装置の概略断面図であり、ここではタンデム方式のカラープリンターについて示している。カラープリンター100本体内には4つの画像形成部Pa、Pb、Pc及びPdが、搬送方向上流側(
図1では右側)から順に配設されている。これらの画像形成部Pa〜Pdは、異なる4色(シアン、マゼンタ、イエロー及びブラック)の画像に対応して設けられており、それぞれ帯電、露光、現像及び転写の各工程によりシアン、マゼンタ、イエロー及びブラックの画像を順次形成する。
【0025】
これらの画像形成部Pa〜Pdには、各色の可視像(トナー像)を担持する感光体ドラム1a、1b、1c及び1dが配設されており、さらに駆動手段(図示せず)により
図1において時計回りに回転する中間転写ベルト8が各画像形成部Pa〜Pdに隣接して設けられている。これらの感光体ドラム1a〜1d上に形成されたトナー像が、各感光体ドラム1a〜1dに当接しながら移動する中間転写ベルト8上に順次転写された後、二次転写ローラー9において転写紙P上に一度に転写され、さらに、定着部7において転写紙P上に定着された後、装置本体より排出される。感光体ドラム1a〜1dを
図1において反時計回りに回転させながら、各感光体ドラム1a〜1dに対する画像形成プロセスが実行される。
【0026】
トナー像が転写される転写紙Pは、カラープリンター100本体下部の用紙カセット16内に収容されており、給紙ローラー12a及びレジストローラー対12bを介して二次転写ローラー9へと搬送される。中間転写ベルト8には誘電体樹脂製のシートが用いられ、その両端部を互いに重ね合わせて接合しエンドレス形状にしたベルトや、継ぎ目を有しない(シームレス)ベルトが用いられる。また、二次転写ローラー9の下流側には中間転写ベルト8表面に残存するトナーを除去するためのブレード状のベルトクリーナ19が配置されている。
【0027】
次に、画像形成部Pa〜Pdについて説明する。回転自在に配設された感光体ドラム1a〜1dの周囲及び下方には、感光体ドラム1a〜1dを帯電させる帯電器2a、2b、2c及び2dと、各感光体ドラム1a〜1dに画像情報を露光する露光ユニット4と、感光体ドラム1a〜1d上にトナー像を形成する現像装置3a、3b、3c及び3dと、感光体ドラム1a〜1d上に残留した現像剤(トナー)を除去するクリーニング部5a、5b、5c及び5dが設けられている。
【0028】
ユーザーにより画像形成開始が入力されると、先ず、帯電器2a〜2dによって感光体ドラム1a〜1dの表面を一様に帯電させ、次いで露光ユニット4によって光照射し、各感光体ドラム1a〜1d上に画像信号に応じた静電潜像を形成する。現像装置3a〜3dには、それぞれシアン、マゼンタ、イエロー及びブラックの各色のトナーが補給装置(図示せず)によって所定量充填されている。このトナーは、現像装置3a〜3dにより感光体ドラム1a〜1d上に供給され、静電的に付着することにより、露光ユニット4からの露光により形成された静電潜像に応じたトナー像が形成される。
【0029】
そして、中間転写ベルト8に所定の転写電圧で電界が付与された後、一次転写ローラー6a〜6dにより感光体ドラム1a〜1d上のシアン、マゼンタ、イエロー、及びブラックのトナー像が中間転写ベルト8上に転写される。これらの4色の画像は、所定のフルカラー画像形成のために予め定められた所定の位置関係をもって形成される。その後、引き続き行われる新たな静電潜像の形成に備え、感光体ドラム1a〜1dの表面に残留したトナーがクリーニング部5a〜5dにより除去される。
【0030】
中間転写ベルト8は、上流側の搬送ローラー10と、下流側の駆動ローラー11とを含む複数の張架ローラーに掛け渡されており、駆動モーター(図示せず)による駆動ローラー11の回転に伴い中間転写ベルト8が時計回りに回転を開始すると、転写紙Pがレジストローラー対12bから所定のタイミングで中間転写ベルト8に隣接して設けられた二次転写ローラー9へ搬送され、フルカラー画像が転写される。トナー像が転写された転写紙Pは定着部7へと搬送される。
【0031】
定着部7に搬送された転写紙Pは、定着ローラー対13により加熱及び加圧されてトナー像が転写紙Pの表面に定着され、所定のフルカラー画像が形成される。フルカラー画像が形成された転写紙Pは、複数方向に分岐した分岐部14によって搬送方向が振り分けられる。転写紙Pの片面のみに画像を形成する場合は、そのまま排出ローラー対15によって排出トレイ17に排出される。
【0032】
一方、転写紙Pの両面に画像を形成する場合は、定着部7を通過した転写紙Pの一部を一旦排出ローラー対15から装置外部にまで突出させる。その後、転写紙Pは排出ローラー対15を逆回転させることにより分岐部14で用紙搬送路18に振り分けられ、画像面を反転させた状態でレジストローラー対12bに再搬送される。そして、中間転写ベルト8上に形成された次の画像が二次転写ローラー9により転写紙Pの画像が形成されていない面に転写され、定着部7に搬送されてトナー像が定着された後、排出ローラー対15を介して排出トレイ17に排出される。
【0033】
図2は、カラープリンター100に搭載される現像装置3aの構成を示す側面断面図である。なお、ここでは
図1の画像形成部Paに配置される現像装置3aについて説明するが、画像形成部Pb〜Pdに配置される現像装置3b〜3dの構成についても基本的に同様であるため説明を省略する。
【0034】
図2に示すように、現像装置3aは、二成分現像剤(以下、単に現像剤ともいう)が収納される現像容器20を備えており、現像容器20は仕切壁20aによって第1及び第2攪拌室20b、20cに区画され、第1及び第2攪拌室20b、20cには図示しないトナーコンテナから供給されるトナー(正帯電トナー)をキャリアと混合して撹拌し、帯電させるための第1攪拌スクリュー21a及び第2攪拌スクリュー21bが回転可能に配設されている。
【0035】
そして、第1攪拌スクリュー21a及び第2攪拌スクリュー21bによって現像剤が攪拌されつつ軸方向に搬送され、仕切壁20aの両端に形成された現像剤通過路(図示せず)を介して第1及び第2攪拌室20b、20c間を循環する。図示の例では、現像容器20は左斜め上方に延在しており、現像容器20内において第2攪拌スクリュー21bの上方には磁気ローラー22が配置され、磁気ローラー22の左斜め上方には現像ローラー23が対向配置されている。そして、現像ローラー23は現像容器20の開口側(
図2の左側)において感光体ドラム1aに対向しており、磁気ローラー22及び現像ローラー23は図中時計回りに回転する。
【0036】
なお、現像容器20には、第1攪拌スクリュー21aと対面してトナー濃度センサー(図示せず)が配置されており、トナー濃度センサーで検知されるトナー濃度に応じて補給装置(図示せず)からトナー補給口20dを介して現像容器20内にトナーが補給される。
【0037】
磁気ローラー22は、非磁性の回転スリーブ22aと、回転スリーブ22aに内包される複数の磁極を有する固定マグネット体22bで構成されている。本実施形態では、固定マグネット体22bの磁極は、主極35、規制極(穂切り用磁極)36、搬送極37、剥離極38、及び汲上極39の5極構成である。磁気ローラー22と現像ローラー23とはその対面位置(対向位置)において所定のギャップをもって対向している。
【0038】
また、現像容器20には穂切りブレード25が磁気ローラー22の長手方向(
図2の紙面表裏方向)に沿って取り付けられており、穂切りブレード25は、磁気ローラー22の回転方向(図中時計回り)において、現像ローラー23と磁気ローラー22との対向位置よりも上流側に位置付けられている。そして、穂切りブレード25の先端部と磁気ローラー22表面との間には僅かな隙間(ギャップ)が形成されている。
【0039】
現像ローラー23は、非磁性の現像スリーブ23aと、現像スリーブ23a内に固定された現像ローラー側磁極23bで構成されている。現像ローラー側磁極23bは、固定マグネット体22bの対向する磁極(主極)35と異極性である。
【0040】
現像ローラー23には、直流電圧(以下、Vslv(DC)という)及び交流電圧(以下、Vslv(AC)という)を印加する第1バイアス回路30が接続されており、磁気ローラー22には、直流電圧(以下、Vmag(DC)という)及び交流電圧(以下、Vmag(AC)という)を印加する第2バイアス回路31が接続されている。また、第1バイアス回路30及び第2バイアス回路31は共通のグランドに接地されている。
【0041】
第1バイアス回路30及び第2バイアス回路31には電圧可変装置33が接続されており、現像ローラー23に印加されるVslv(DC)、Vslv(AC)及び磁気ローラー22に印加されるVmag(DC)、Vmag(AC)を可変できるようになっている。
【0042】
前述のように、第1攪拌スクリュー21a及び第2攪拌スクリュー21bによって、現像剤が攪拌されつつ現像容器20内を循環してトナーを帯電させ、第2攪拌スクリュー21bによって現像剤が磁気ローラー22に搬送される。穂切りブレード25には固定マグネット体22bの規制極36が対向するため、穂切りブレード25として非磁性体或いは規制極36と異なる極性の磁性体を用いることにより、穂切りブレード25の先端と回転スリーブ22aとの隙間に引き合う方向の磁界が発生する。
【0043】
この磁界により、穂切りブレード25と回転スリーブ22aとの間に磁気ブラシが形成される。そして、磁気ローラー22上の磁気ブラシは穂切りブレード25によって層厚規制された後、現像ローラー23に対向する位置に移動すると、固定マグネット体22bの主極35及び現像ローラー側磁極23bにより引き合う磁界が付与されるため、磁気ブラシは現像ローラー23表面に接触する。そして、磁気ローラー22に印加されるVmag(DC)と現像ローラー23に印加されるVslv(DC)との電位差ΔV、及び磁界によって現像ローラー23上にトナー薄層を形成する。
【0044】
現像ローラー23上のトナー層厚は現像剤の抵抗や磁気ローラー22と現像ローラー23との回転速度差等によっても変化するが、ΔVによって制御することができる。ΔVを大きくすると現像ローラー23上のトナー層は厚くなり、ΔVを小さくすると薄くなる。現像時におけるΔVの範囲は一般的に100V〜350V程度が適切である。
【0045】
図3は、現像ローラー23及び磁気ローラー22に印加されるバイアス波形の一例を示す図である。
図3(a)に示すように、現像ローラー23には、Vslv(DC)にピークツーピーク値がVpp1である矩形波のVslv(AC)を重畳した合成波形Vslv(実線)が第1バイアス回路30から印加される。また、磁気ローラー22には、Vmag(DC)にピークツーピーク値がVpp2であり、且つVslv(AC)と位相が異なる矩形波のVmag(AC)を重畳した合成波形Vmag(破線)が第2バイアス回路31から印加される。
【0046】
従って、磁気ローラー22及び現像ローラー23間(以下、MS間という)に印加される電圧は、
図3(b)に示すようなVpp(max)とVpp(min)を有する合成波形Vmag−Vslvとなる。なお、Vmag(AC)はVslv(AC)よりもDuty比が大きくなるように設定される。実際には
図3で示すような完全な矩形波ではなく、一部が歪んだ形状の交流電圧が印加される。
【0047】
磁気ブラシによって現像ローラー23上に形成されたトナー薄層は、現像ローラー23の回転によって感光体ドラム1aと現像ローラー23との対向部分に搬送される。現像ローラー23にはVslv(DC)及びVslv(AC)が印加されているため、感光体ドラム1aとの間の電位差によってトナーが飛翔し、感光体ドラム1a上の静電潜像が現像される。
【0048】
さらに回転スリーブ22aが時計回りに回転すると、今度は主極35に隣接する異極性の剥離極38により発生する水平方向(ローラー周方向)の磁界により磁気ブラシは現像ローラー23表面から引き離され、現像に用いられずに残ったトナーが現像ローラー23から回転スリーブ22a上に回収される。さらに回転スリーブ22aが回転すると、固定マグネット体22bの剥離極38及びこれと同極性の汲上極39により反発する磁界が付与されるため、トナーは現像容器20内で回転スリーブ22aから離脱する。そして、第2攪拌スクリュー21bにより攪拌、搬送された後、再び適正なトナー濃度で均一に帯電された二成分現像剤として汲上極39により再び回転スリーブ22a上に磁気ブラシを形成し、穂切りブレード25へ搬送される。
【0049】
次に、現像ローラー23を構成する現像スリーブ23aについて詳述する。現像スリーブ23aは、アルミニウムまたはアルミニウム合金製のスリーブ本体をアルマイト処理することにより外周面にアルマイト層が形成されており、アルマイト層の表面には樹脂材料からなるコート層が積層されている。アルマイト層は、現像ローラー23へ現像バイアスを印加する際のリークの発生を防止する。
【0050】
コート層は、現像スリーブ23a上に供給されたトナーの固着を抑制し、現像ローラー23から感光体ドラム表面へのトナーの移送が比較的容易に行われるようにする。さらに、コート層が現像剤に与える機械的ストレスは金属表面に比べて少ないため、現像剤搬送量を増加させたときの現像ローラー23からのトナー回収性の向上と現像剤の劣化防止との両立を図ることができる。
【0051】
コート層の材質としては、シリコン変性ポリウレタンの他、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、メラミン樹脂、シリコン樹脂、フッ素樹脂等が挙げられるが、正帯電トナーの樹脂材料と帯電性が近く、トナーの剥離性が良好なウレタン樹脂、アクリル樹脂が好ましい。中でも、ウレタン樹脂の炭素の一部をケイ素に置換したシリコン変性ポリウレタン樹脂を用いた場合、ウレタン樹脂の吸湿性が改善されて環境変化に対するコート層の帯電特性の変化が抑制されるため好ましい。
【0052】
なお、コート層に導電性フィラーを含有させることにより、現像ローラー23のインピーダンスを調整し、且つ抵抗ムラを抑制できる。導電性フィラーとしては、カーボンブラックやアセチレンブラック、酸化チタン、チタン酸カリウム等が挙げられる。
【0053】
次に、本発明の現像装置に用いられる二成分現像剤について説明する。二成分現像剤は、トナーとキャリアとを含有するものである。二成分現像剤におけるトナーとキャリアとの重量比(T/C)は、キャリア100重量部に対してトナー5〜20重量部が好ましく、8〜15重量部がより好ましい。
【0054】
トナーはトナー母粒子に外添剤を添加したものである。トナー母粒子は、結着樹脂および着色剤を含有するものである。トナー母粒子には、必要に応じて離型剤、電荷制御剤、磁性粉等を含有させてもよい。トナー母粒子の重量平均粒子径は、5〜12μmが好ましく、6〜10μmがより好ましい。トナー母粒子の重量平均粒子径は、粒度分布測定装置(例えば、コールター社製、マルチサイザ−II型)によって測定する。トナー母粒子は、粉砕分級法、溶融造粒法、スプレー造粒法、重合法等の公知の方法で製造される。
【0055】
外添剤としては、シリカ、酸化チタン、アルミナ等の無機酸化物、ステアリン酸カルシウム等の金属石鹸等が挙げられる。外添剤の量は、トナー母粒子100重量部に対して、通常0.1〜5重量部である。
【0056】
キャリアとしては、磁性体の粒子、または結着樹脂中に磁性体を分散させた樹脂粒子が挙げられる。磁性体としては、例えば、鉄、ニッケル、コバルト等の磁性体金属、これらの合金、あるいは希土類を含有する合金類、ヘマタイト、マグネタイト、マンガン−亜鉛系フェライト、ニッケル−亜鉛系フェライト、マンガン−マグネシウム系フェライト、リチウム系フェライトなどのソフトフェライト、銅−亜鉛系フェライト等の鉄系酸化物、これらの混合物が挙げられる。
【0057】
結着樹脂としては、例えば、ビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリイミド樹脂、セルロース樹脂、ポリエーテル樹脂、これらの混合物等が挙げられる。磁性体の粒子は、焼結法、アトマイズ法等の公知の方法によって製造される。キャリアは、その表面に、コート樹脂からなる被覆層を有していてもよい。
【0058】
本発明の現像装置3a〜3dは、現像ローラー23の表面に形成されるコート層が、トナーとの摩擦帯電により画像形成時におけるトナーの帯電極性(正極性)と逆極性(負極性)を示し、現像ローラー23との摩擦帯電によるトナーの帯電量の絶対値QTが15μC/g以下であり、且つ、現像ローラー23との摩擦帯電によるキャリアの帯電量の絶対値QCが0.1μC/g以下であることを特徴としている。
【0059】
なお、現像ローラー23との摩擦帯電によるトナーの帯電量の絶対値QT、及びキャリアの帯電量の絶対値QCは、帯電量の測定条件によって変化する。本明細書中でいうトナーの帯電量の絶対値QT、及びキャリアの帯電量の絶対値QCとは、現像ローラー23を80rpmで回転させ、接触圧15gf/cm、接触角20°で樹脂ブレード(材質UW137、硬度79°、反発弾性28%、シンジテック社製)を押し当てながら、現像ローラー23上に0.1〜0.3mg/cm
2のトナー層若しくはキャリア層を形成したときの、トナー粒子及びキャリア粒子の帯電量の絶対値を指す。
【0060】
トナーの帯電量が増加すると、画像濃度の低下やカブリが発生し易くなる。本発明では、現像ローラー23との摩擦帯電によるトナー帯電量の絶対値QTを15μC/g以下とすることにより、画像濃度の低下やカブリの発生を効果的に抑制することができる。
【0061】
また、現像ローラー23と磁気ローラー22を用いた現像装置3a〜3dでは、現像ローラー23上に微量のキャリアが存在すると考えられる。正帯電トナーを用いる場合、キャリアは負に帯電するため、現像ローラー23上に負帯電キャリアが存在すると、感光体ドラム1a〜1dの非画像領域から現像ローラー23に向かう電界の影響により、現像ローラー23上のキャリアが感光体ドラム1a〜1dの表面へ飛翔するキャリア飛びが発生する。
【0062】
そこで、本発明の現像装置3a〜3dでは、キャリアの帯電量の絶対値QCを0.1μC/g以下とすることにより、キャリアに加わる静電気力を低下させて現像ローラー23から感光体ドラム1a〜1dへのキャリア飛びを抑制し、キャリア飛びに起因する白筋等の画像不具合を抑制している。
【0063】
キャリアの帯電量の絶対値QCを低下させる方法としては、現像ローラー23のコート層に添加する導電性フィラーの種類及び添加量を調整することにより、現像ローラー23の表面抵抗率(Ω/□)を下げる方法が挙げられる。現像ローラー23の表面抵抗率を10
9以下とすることで、キャリアの帯電量の絶対値QCを0.1μC/g以下に抑えることができる。また、現像ローラー23の表面抵抗率を下げることでトナーの帯電量QTも抑えられるため、現像ローラー23における電荷溜まりの発生も抑制できる。
【0064】
一方、現像ローラー23の表面抵抗率が低下すると、現像ローラー23と感光体ドラム1a〜1dとの間に放電(リーク)が生じやすくなる。
図4は、現像ローラー23の表面抵抗率(Ω/□)とリーク発生現像バイアスとの関係を示すグラフである。なお、ここでいう現像バイアスとは、Vslv(DC)に矩形波のVslv(AC)を重畳した合成波形Vslv(
図3参照)のピークツーピーク値(Vpp1)を指す。
【0065】
図4に示すように、現像ローラー23の表面抵抗率が10
6を下回ると1260Vより低い現像バイアスでリークが発生する。現像バイアスが低くなると、感光体ドラム1a〜1dの表面電位と交流電圧のピーク値との電位差が小さくなり、現像ローラー23から感光体ドラム1a〜1d上へトナーが十分に飛翔せず画像濃度ムラが発生する。
【0066】
従って、キャリアの帯電量の低下によるキャリア飛びの抑制、及びトナーの帯電量の低下による現像ローラー23上の電荷溜まりの抑制と、現像ローラー23と感光体ドラム1a〜1dとの間におけるリークの抑制とを両立させるためには、現像ローラー23の表面抵抗率を10
6以上10
9以下とすることが好ましい。
【0067】
その他本発明は、上記実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。例えば、上記実施形態では帯電方向が正(プラス側)である正帯電トナーを用いる現像装置を例に挙げて説明したが、帯電方向が負(マイナス側)である負帯電トナーを用いる現像装置にも全く同様に適用可能である。
【0068】
また、本発明は
図1に示したタンデム式のカラープリンターに限らず、デジタル或いはアナログ方式のモノクロ複写機、モノクロプリンター及びロータリー現像式のカラープリンター及びカラー複写機、ファクシミリ等、現像装置を備えた種々の画像形成装置に適用可能である。以下、実施例により本発明の効果を更に詳細に説明する。
【実施例1】
【0069】
(トナー粒子及びキャリア粒子の帯電量測定)
直径16mmのアルミスリーブの外周面に、導電性フィラーとしてカーボンブラック及び酸化チタンを配合したシリコン変性ポリウレタン樹脂から成る厚さ7μmのコート層を積層した。なお、カーボンブラック及び酸化チタンの配合比を調整し、表面抵抗率が異なる4種類の現像スリーブ23aを作製した。
【0070】
4種類の現像スリーブ23aを80rpmで回転させ、接触圧15gf/cm、接触角20°で樹脂ブレード(材質UW137、硬度79°、反発弾性28%、シンジテック社製)を押し当てながら、現像ローラー23上に0.1〜0.3mg/cm
2のトナー層若しくはキャリア層を形成し、トナー粒子及びキャリア粒子の帯電量をQMメーター(TREK社製、MODE210S)にて5回測定し、5回の平均値を帯電量とした。
【0071】
現像剤としては、平均粒子径7μm、比重1.2の正帯電トナーと、平均粒子径50μmのコーティングフェライトキャリアとから成る二成分現像剤を用い、キャリアに対するトナーの混合比率(T/C)を10重量%とした。
【0072】
トナー粒子及びキャリア粒子の帯電量を、カーボンブラック及び酸化チタンの配合比、及び現像スリーブ23aの表面抵抗率と併せて表1に示す。
【0073】
【表1】
※ウレタン樹脂を100として算出
【0074】
表1から明らかなように、比較例の現像スリーブ23aでは、キャリアの帯電量の絶対値QCが0.35と高くなっているのに対し、本発明1〜3の現像スリーブ23aでは、QCが0.01〜0.08と低く抑えられた。また、トナーの帯電量の絶対値QTに関しては、本発明1で比較例よりも高くなっているものの、本発明2では比較例と同等であり、本発明3では比較例よりも低かった。
【0075】
なお、比較例の現像スリーブ23aでは、本来正帯電であるトナーの帯電量が負(−)になっている。これは、カーボンブラックと酸化チタンの配合比によってコート層の帯電特性がトナーよりも正(+)側に寄っており、トナーよりもさらに正に帯電し易くなっているため、トナーはコート層との摩擦帯電により負に帯電したものである。
【実施例2】
【0076】
(画像上に発生する白筋の抑制効果)
実施例1で使用した本発明1〜3、及び比較例の各現像スリーブ23a内に、現像ローラー側磁極を配置した現像ローラー23を、
図2に示した現像装置3aに搭載し、さらに
図1に示すようなカラープリンター100に搭載した。印字率5%のテスト画像を500枚連続印字した後に25%のハーフ画像を印字し、ハーフ画像上に発生する白筋の本数をカウントした。なお、試験は感光体ドラム1a及び現像装置3aを含むシアンの画像形成部Paにおいて行った。
【0077】
試験機の条件としては、システム線速を25枚/分とし、感光体ドラム1aの直径を30mm、回転速度を440rpmとし、現像ローラー23の回転速度を275rpm(感光体との対向面において順回転)とした。また、感光体ドラム−現像ローラー間ギャップを110μmとした。現像剤としては、実施例1で用いたものと同様の二成分現像剤を使用した。
【0078】
現像ローラー23への電圧印加条件は、Vslv(DC)=150V、Vslv(AC)のVppを1.5kV、周波数を3.6kHz、Duty(正)=37%とした。また、磁気ローラー21にはVmag(DC)=450V、Vmag(AC)のVppを0.8kV、周波数を3.6kHz、Duty(正)=63%として逆位相で印加した。
【0079】
評価方法としては、白筋の本数をカウントするとともに画像を目視により観察し、画質上問題のない場合を○、問題のある場合を×とした。評価結果を表2に示す。
【0080】
【表2】
【0081】
表2から明らかなように、比較例の現像スリーブ23aを用いた現像装置では、ハーフ画像上に12本の白筋が発生した。これは、表1に示したように現像ローラー23(現像スリーブ23a)の表面抵抗率が5×10
10Ω/□と高く、キャリアの帯電量の絶対値QCが0.1を超える(帯電量−0.35)であるため、キャリア飛びが発生したためである。
【0082】
これに対し、本発明1〜3の現像スリーブを用いた現像装置では、現像ローラー23(現像スリーブ23a)の表面抵抗率がそれぞれ5×10
8Ω/□、5×10
6Ω/□、5×10
4Ω/□であり、比較例に比べて低いため、キャリアの帯電量の絶対値QCが0.1以下に抑えられ、画像上に発生する白筋の本数が顕著に減少した。
【0083】
なお、本発明1の現像スリーブ23aを用いた場合、現像ローラー23との摩擦によるトナーの帯電量が上昇しているため、現像ローラー23上に電荷溜まりが生じて画像に影響を及ぼすことが懸念されるが、本発明1に比べて更に表面抵抗率が低い本発明2、3の現像スリーブ23aでは、現像ローラー23との摩擦によるトナーの帯電量の上昇も抑えられ、画像上の白筋の発生、及び電荷溜まりの発生の両方を抑制することができた。但し、本発明3では、現像ローラー23の表面抵抗率が小さくなりすぎて、現像ローラー23と感光体ドラム1aとの間でリークが発生し易くなった。
【0084】
以上の結果より、現像ローラー23のコート層の帯電極性をトナーと逆極性とするとともに、トナー帯電量の絶対値QTが15μC/g以下、キャリアの帯電量の絶対値QCが0.1μC/g以下となるように設定することで、キャリア飛びによる白筋の発生を効果的に抑制できることが確認された。
【0085】
さらに、現像ローラー23の表面抵抗率を10
6Ω/□以上10
9Ω/□以下とすることで、現像ローラー23上の電荷溜まりによる濃度低下、履歴現像等の画像不良や現像ローラー23と感光体ドラム1aとの間のリークも抑制できることが確認された。なお、ここではシアンの画像形成部Paを用いて試験を行ったが、マゼンタ、イエロー及びブラックの画像形成部Pb〜Pdにおいても同様の結果が得られることが確認されている。
【0086】
なお、上記実施例は本発明の一構成例にすぎず、ドラム表面電位や現像ローラー23及び磁気ローラー22への電圧印加条件等は装置の仕様や使用環境に応じて適宜設定することができる。