(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1に記載された塗布装置では、チューブ群を構築する塗布液チューブは、柔軟性を必要とするためテフロン(登録商標)系材料が使用されている。また、当該装置で塗布される塗布液は有機EL(Electro Luminescence)材料が使用されており、一般的に有機EL材料は酸素に触れることで、発光寿命が短くなるという問題がある。したがって、特許文献1に記載された装置を用いて、有機EL材料を塗布する場合、テフロン(登録商標)系材料で作製された塗布液チューブに酸素が透過し、有機EL材料に悪影響をおよぼす(例えば有機EL材料の寿命を短くする)おそれがある。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、複数の吐出口を有する吐出部を高速に移動しつつ塗布を行う塗布装置において、供給途中の塗布液が酸素等に触れることを防ぐことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に係る発明は、基板に塗布液を塗布する塗布装置であって、基板を水平に保持する基板保持部と、基板に平行な副走査方向に配列された複数の吐出口から基板に向けて塗布液を吐出する吐出部と、副走査方向に垂直かつ基板に平行な主走査方向に伸びるガイド部と、ガイド部に係合しつつガイド部との間に気体を噴出することにより非接触状態でガイド部に支持されるスライダとを有し、スライダに取り付けられた吐出部を主走査方向に移動する主走査機構と、吐出部の主走査方向への移動が完了する毎に基板を吐出部に対して副走査方向に相対的に移動する副走査機構と、可撓性を有し気体をスライダに供給する気体供給チューブと、それぞれが可撓性を有し塗布液を吐出部に供給する複数の塗布液チューブと、気体供給チューブの周囲に前記複数の塗布液チューブを配置するとともに、塗布液チューブの全体の外周に密着して外周を覆うことにより気体供給チューブおよび複数の塗布液チューブを結束する結束材とを有するチューブ群と、チューブ群の吐出部とは反対側の端部と連結する接続容器と、接続容器内に不活性ガスを供給するガス供給部と、塗布液チューブに塗布液を供給する塗布液供給部と、気体供給チューブに気体を供給する気体供給部と、を備え、前記ガス供給部は、接続容器内に供給された不活性ガスを、気体供給チューブと複数の塗布液チューブとが結束されることで形成された間隙に供給することを特徴とする。
【0008】
このように構成された発明では、可撓性を有する塗布液チューブと気体供給チューブを結束してなるチューブ群との間に形成された間隙に、接続容器を介して不活性ガスを供給することで、塗布液チューブの周囲に不活性ガスによる層ができるため、塗布液チューブに酸素が透過して該チューブを流れる塗布液が酸素に曝されることを防ぐことができる。これにより、塗布液の酸素による寿命低下等を防ぐことができる。
【0009】
請求項2に係る発明は、基板に塗布液を塗布する塗布装置であって、基板を水平に保持する基板保持部と、基板に平行な副走査方向に配列された複数の吐出口から基板に向けて塗布液を吐出する吐出部と、副走査方向に垂直かつ基板に平行な主走査方向に伸びるガイド部と、ガイド部に係合しつつガイド部との間に不活性ガスを噴出することにより非接触状態でガイド部に支持されるスライダとを有し、スライダに取り付けられた吐出部を主走査方向に移動する主走査機構と、吐出部の主走査方向への移動が完了する毎に基板を吐出部に対して副走査方向に相対的に移動する副走査機構と、可撓性を有し不活性ガスをスライダに供給する気体供給チューブと、それぞれが可撓性を有し塗布液を吐出部に供給する複数の塗布液チューブと、気体供給チューブの周囲に複数の塗布液チューブを配置するとともに、塗布液チューブの全体の外周に密着して外周を覆うことにより気体供給チューブおよび複数の塗布液チューブを結束する結束材とを有するチューブ群と、チューブ群の吐出部とは反対側の端部と連結する接続容器と、接続容器内に不活性ガスを供給するガス供給部と、塗布液チューブに塗布液を供給する塗布液供給部と、を備え、ガス供給部は、接続容器内に供給された不活性ガスを、チューブ群を構成する気体供給チューブと、気体供給チューブと複数の塗布液チューブとが結束されることで形成された間隙とに供給することを特徴とする。
【0010】
このように構成された発明では、可撓性を有する塗布液チューブ、気体供給チューブを結束してなるチューブ群に接続容器を介して不活性ガスを供給することで、塗布液チューブと気体供給チューブとの間に形成された間隙と、気体供給チューブとに不活性ガスを供給することができ、塗布液チューブの周囲に不活性ガスによる層ができるため、塗布液チューブに酸素が透過して該チューブを流れる塗布液が酸素に曝されることを防ぐことができる。これにより、塗布液の酸素による寿命低下等を防ぐことができる。
【0011】
請求項3に係る発明は、塗布液供給部は、塗布液を貯留する塗布液貯留部と、塗布液貯留部から接続容器まで塗布液を供給する複数の金属配管と、を有し、それぞれの金属配管は、接続容器に連結されたチューブ群から延出されたそれぞれの塗布液チューブと接続することを特徴とする。
【0012】
このように構成された発明では、塗布液貯留部から接続容器まで塗布液を供給する管を金属配管とすることで塗布液チューブと接続されるまでに塗布液が酸素に曝されることを防ぐことができる。
【0013】
請求項4に係る発明は、それぞれの金属配管と、それぞれの塗布液チューブとの接続は、接続容器内で行われることを特徴とする。このように構成された発明では、金属配管と塗布液チューブとを接続容器内に接続することで、塗布液貯留部から基板上に塗布されるまでの間で酸素に曝されることを確実に防ぐことができる。
【0014】
請求項5に係る発明は、ガス供給部は、接続容器内に大気圧よりも高い圧力で不活性ガスを供給することを特徴とする。このように構成された発明は、接続容器内に供給された不活性ガスを確実に間隙に送出することができる。
【0015】
請求項6に係る発明は、塗布液が有機EL表示装置用の有機EL材料または正孔輸送材料を含むことを特徴とする。このように構成された発明では、塗布液の酸素曝露による寿命低下を防ぐことができ、有機EL表示装置用の塗布装置に適用することができる。
【発明の効果】
【0016】
請求項1ないし請求項6のいずれかに係る発明によれば、複数の吐出口を有する吐出部を高速に移動しつつ塗布を行う塗布装置において、可撓性を有する塗布液チューブ、気体供給チューブを結束してなるチューブ群に形成される間隙に、接続容器を介して不活性ガスを供給することで、塗布液チューブの周囲に不活性ガスによる層を形成し、塗布液チューブに酸素が透過することによる塗布液の酸素曝露を防ぐことができる。これにより、塗布液の酸素による寿命低下等を防ぐことができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、この発明の実施の形態を
図1および
図2を参照しつつ説明する。
図1はこの発明に係る塗布装置1の平面図であり、
図2はその正面図である。
【0019】
この塗布装置1は、矩形状のガラス基板(以下、単に「基板」と称する)9に対して塗布液を塗布するためのものである。より詳細には、この塗布装置1は、アクティブマトリックス駆動方式の有機EL(Electro Luminescence)表示装置用の基板9に、揮発性の溶媒(本実施の形態では、芳香族の有機溶媒)、および、発光材料としての有機EL材料を含む塗布液を塗布するためのものである。
【0020】
この塗布装置1は、主として、基板9を水平に保持するステージ10と、ステージ10を移動させるステージ移動機構20と、ステージ10に保持された基板9の上面に塗布液を塗布するための塗布ヘッド30と、塗布ヘッド30に塗布液を供給するための塗布液供給部32と、ヘッド移動機構50に不活性ガスを供給するガス供給部33と、塗布液供給部32に接続された分岐管327と、ガス供給部33に接続されたガス供給管331とが接続される接続容器40と、塗布ヘッド30を移動させるヘッド移動機構50とを備える。また、塗布装置1は、塗布装置1が備える各部と電気的に接続されて、これらの各部の動作を制御する制御部2を備える。
【0021】
ステージ10は、平板状の外形を有し、その上面に基板9を水平姿勢に載置して保持する基板保持部として機能する。また、ステージ10は、基板9よりもサイズが小さい。ステージ10の上面には複数の吸引孔(図示省略)が形成されている。これらの吸引孔は真空ポンプ等に接続されており、該真空ポンプを動作させることで、ステージ10上に基板9を載置したときには、吸引孔からの吸引圧により基板9はステージ10の上面に吸着され固定的に保持される。また、ステージ10は、その内部にヒータによる加熱機構(図示省略)を備える。そして、ステージ10上に載置された基板9を所定の温度に加熱することができる。
【0022】
ステージ移動機構20は、ステージ10を基板9の主面に対して平行な所定の方向(すなわち、
図1中のY方向であり、以下、「副走査方向」と称する)に水平移動させる。ステージ移動機構20は、ステージ10を回転させる回転機構24と、ステージ10を回転可能に支持する支持プレート23と、支持プレート23を水平に支持する基台21と、基台21を副走査方向に移動させる副走査機構22とを有している。回転機構24、副走査機構22は、制御部2と電気的に接続されており、制御部2からの指示に応じてステージ10を移動させる。
【0023】
回転機構24は、ステージ10の内部に取り付けられた回転子により構成されたモータを有している。また、ステージ10の中央部下面側と支持プレート23との間には回転軸受機構が設けられている。そのため、モータを動作させると、回転子がZ軸周りの回転方向に駆動し、回転軸受機構の回転軸を中心としてステージ10が所定角度の範囲内で回転する。
【0024】
副走査機構22は、支持プレート23を下方から支持する基台21の下面に取り付けられたリニアモータ221と、副走査方向に延びる一対のガイドレール222とを有している。このため、リニアモータ221を駆動させると、ガイドレール222に沿って基台21およびステージ10が副走査方向に移動する。
【0025】
塗布ヘッド30は、複数のノズル31を備える。より具体的にはノズル31を16個備えている。なお、ノズル31の個数については1個以上であればよく、多数のノズルを備えていても良い。
【0026】
塗布ヘッド30は、ステージ10に保持された基板9の上面に向けて有機EL材料を含む塗布液を連続的に吐出する。言い換えると、塗布ヘッド30はノズル31から塗布液を液柱の状態で吐出するための吐出部である。また、複数のノズル31は、基板9の主面に平行であって副走査方向に垂直な方向(すなわち、
図1中のY方向に垂直なX方向であり、以下、「主走査方向」と称する)に関して略直線状に離れて配列されるとともに
図1中の副走査方向に僅かにずれて配置される。
【0027】
本実施形態では、隣接する2本のノズル31の間の副走査方向に関する距離が、基板9の塗布領域91(
図1中において破線で囲んで示す)上にあらかじめ形成されている主走査方向に伸びる隔壁間のピッチ(以下、「隔壁ピッチ」と称する)の3倍に等しくなるように調整されている。
【0028】
塗布液供給部32は、有機EL材料を含む塗布液を塗布ヘッド30へ供給するための機構である。
【0029】
図3に示すように、塗布液供給部32は、塗布液貯留部として機能する塗布液を貯留する容器321に一端が接続される液供給管322を有し、液供給管322には、ポンプ323、マスフローコントローラ324、圧力計325およびフィルタ326が、容器321側から(他方の端部に向かって)順に設けられる。液供給管322の容器321とは反対側の端部は複数の分岐管327に分岐しており、複数の分岐管327が後記する接続容器40に接続されている。
【0030】
塗布液供給部32から複数の分岐管327に塗布液が一定の流量にて導入され、それぞれのノズル31に塗布液が供給される。なお、ここで、液供給管322および複数の分岐管327は、酸素等が浸透しない材質の管が用いられている。このような材質としては、例えばステンレス鋼等の金属配管を用いることができる。このように、液供給管322、分岐管327に酸素曝露が起こりにくい材質を採用することで、酸素等の影響を受けて有機EL材料の寿命低下を防ぐことができる。
【0031】
ガス供給部33は、ヘッド移動機構50に不活性ガス(たとえば、窒素ガス等)を供給するための機構であり、後記する、接続容器40にガス供給管331を介して接続されている。ガス供給部33は少なくとも塗布処理が行われている間は不活性ガスを供給している。なお、処理が停止している間も不活性ガスを供給していてもよい。
【0032】
ヘッド移動機構50は、一対のガイド部51と、ガイド部51に対して摺動可能に配設されるスライダ52と、一対のガイド部51の両端部近傍に配設され、Z軸方向を向く軸を中心に回転可能な一対のプーリ53と、プーリ53に巻回された無端状の同期ベルト54とを備える。
【0033】
図4に示すように、スライダ52は貫通孔52aが形成されており、ガイド部51が貫通孔52aに挿入される。実際には、
図1に示すように(−Y)側のスライダ52には後述のチューブ群42に含まれる気体供給チューブ421を介して、また、(+Y)側のスライダ52には図示省略の気体供給チューブ421を介してガス供給部33から一定圧力の不活性ガスが供給されており、
図4に示すように、貫通孔52aの内周面とガイド部51の外周面との間に不活性ガスが噴出され(
図4では、不活性ガスの噴出方向を符号A1を付す矢印にて示している。)、スライダ52がガイド部51に非接触状態にて係合しつつ主走査方向に移動可能に支持される。
【0034】
図1に示す2つのガイド部51の間において、ガイド部51の両端部の近傍には、環状の同期ベルト54が掛けられる2つのプーリ53がそれぞれ設けられる。スライダ52は同期ベルト54に固定されており(
図4参照)、(−Y)側のスライダ52には塗布ヘッド30が取り付けられる。ヘッド移動機構50では、一方のプーリ53に接続されるモータが駆動されることにより、同期ベルト54が時計回りまたは反時計回りに回転し、塗布ヘッド30が(−X)方向または(+X)方向に高速かつ滑らかに移動する。
【0035】
ヘッド移動機構50が、塗布ヘッド30を主走査方向に移動させる主走査機構となる。なお、ヘッド移動機構50は、制御部2と電気的に接続されており、制御部2からの指示に応じて塗布ヘッド30を移動させる。
【0036】
塗布ヘッド30の主走査方向への移動が完了するごとに、基板9を保持するステージ10を副走査方向に移動させることにより、基板9の表面の塗布領域91に対して塗布液の塗布を実行する。なお、塗布ヘッド30の主走査時には、受液部12の近傍にて加速または減速が完了し、基板9の上方においては、塗布ヘッド30は、例えば、毎秒3〜5m程度の一定速度で移動する。
【0037】
制御部2は、各種の演算処理を実行しつつ、塗布装置1が備える各部の動作を制御する。制御部2は、例えば各種演算処理を行うCPU、ブートプログラム等を記憶するROM、演算処理の作業領域となるRAM、プログラムや各種のデータファイルなどを記憶するハードディスクなどの記憶部、各種表示を行うディスプレイ、キーボード、および、マウスなどの入力部、LAN等を介してデータ通信機能を有するデータ通信部、等を有するコンピュータによって構成される。コンピュータにインストールされたプログラムにしたがってコンピュータが動作することにより、当該コンピュータが塗布装置1の制御部2として機能する。なお、制御部2において実現される各機能部は、コンピュータによって所定のプログラムが実行されることによって実現されてもよいし、専用のハードウェアによって実現されてもよい。
【0038】
また、この塗布装置1は、基板9上に形成されたアライメントマーク(図示省略)を撮像して検出するための左右一対の撮像部11を備える。この一対の撮像部11には、各々、CCDカメラが配設されている。そして、撮像部11で検出されたアライメントマークの位置に基づき、基板9の位置合わせが行なわれる。
【0039】
また、塗布ヘッド30の往復移動方向(X方向)に関してステージ10の両側には、塗布ヘッド30におけるノズル31からの塗布液を受ける一対の受液部12が配設されている。塗布ヘッド30は、基板9に対する塗布処理を行っていない間(待機している間)も、塗布液を連続的に吐出している。受液部12は、この間に吐出される塗布液を受けるための機構であり、その内部に多孔性部材を備えるため塗布ヘッド30から吐出された塗布液が周囲に液跳ねすることを防ぐことができる。
【0040】
図5は、チューブ群42の切断部端面図である。チューブ群42は、ガス供給部33から導入される不活性ガスをスライダ52に導く可撓性を有する気体供給チューブ421と、それぞれが可撓性を有するとともに塗布液供給部32から導入される塗布液を複数のノズル31に導く塗布液チューブ328とを有し、気体供給チューブ421の周囲に塗布液チューブ328が配置される。ここで、気体供給チューブ421の内部はガス供給路422として機能し、それぞれの塗布液チューブ328の内部が塗布液供給路329として機能する。
【0041】
また、それぞれの塗布液チューブ328、および気体供給チューブ421は、フッ素系樹脂で形成されており、このような材料としてPFA(テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)等のテフロン(登録商標)系材料を採用することができる。もちろん、可撓性を有する塗布液チューブ328および気体供給チューブ421は、他の材料にて形成されてもよい。
【0042】
実際には、複数の塗布液チューブ328は、気体供給チューブ421の外周上にて等間隔(すなわち、気体供給チューブ421の中心軸を中心とする周方向に等角度感覚にて)配置される。本実施形態では、気体供給チューブ421の外径(直径)が6ミリメートル(mm)とされ(内径4mm)、塗布液チューブ328の外径が1.5ミリメートル(mm)とされ(内径0.5mm)、16本(
図5は図示の都合上、8本のみ記載している)の塗布液チューブ328は気体供給チューブ421の外周上に密に配列される。
【0043】
また、チューブ群42は複数の塗布液チューブ328の全体の外周(すなわち、気体供給チューブ421の周囲に配置される複数の塗布液チューブ328を1つの部材として捉えた場合の外周)に密着して当該外周を覆う結束材424を有し、結束材424により気体供給チューブ421および複数の塗布液チューブ328がほぼ一体的に結束される。この時、気体供給チューブ421と複数の塗布液チューブ328とが結束材424によって結束されることで間隙423が形成される。
【0044】
実際には、複数の塗布液チューブ328を気体供給チューブ421の周囲に配置したものを、テフロン(登録商標)系材料にて形成される管状の熱収縮性部材である結束材424に挿入し、熱を付与して熱収縮性部材を収縮させるが、間隙423を完全に無くすことはできない。
【0045】
複数の塗布液チューブ328と気体供給チューブ421を結束する構造により、チューブ群42では変形に対する剛性が極めて大きくなり、塗布ヘッド30が高速に移動した場合でも、十分な剛性を保つことができる。
【0046】
図6は、接続容器40を説明するための概要図である。接続容器40は、内部に密閉された空間を有する矩形状の容器(直方体)であり、塗布液供給部32から塗布液を供給する分岐管327、気体供給チューブ421に不活性ガスを供給するためのガス供給管331、塗布液および不活性ガスをノズル31およびスライダ52に供給するためのチューブ群42が接続されている。
【0047】
接続容器40を構成する一の壁面には、ガス供給管331を連結するための開口部が形成されている。当該開口部とガス供給管331は連結部材44を介して連結される。連結部材44はシール構造を有しており、接続容器40の内部を密閉状態に保ったままガス供給管331を接続容器40に連通接続する可能となる。接続容器40にガス供給管331が連通接続されることで、ガス供給管331の他方側に連通接続されたガス供給部33から供給された不活性ガスが、一方側のガス供給口332から接続容器40内に供給される。
【0048】
また、ガス供給管331が連結された接続容器40の壁面には、分岐管327を連結するための開口部が分岐管327と同数だけ形成されている。
図6は図示の都合上、複数の分岐管327を4本のみ図示しているが、本実施形態では8本ずつ、2列に連結されている。なお、接続容器40と分岐管327との連結はこれに限定されるものではなく、接続容器40の異なる壁面でもよく、また連結は1列でも複数列でも適宜採用することができる。
【0049】
また、ガス供給管331および分岐管327が連結される接続容器40の壁面とは異なる壁面に、チューブ群42を連結するための開口部が形成されている。当該開口部とチューブ群42の塗布ヘッド30とは反対側の端部が連結部材41を介して連結される。連結部材41はシール構造を有しており、接続容器40の内部を密閉状態に保ったままチューブ群42を接続容器40に挿通可能となる。
【0050】
チューブ群42の端部は接続容器40内に挿通されており、その端部から塗布液チューブ328が延出されており、連結部材43を介してそれぞれの分岐管327と、それぞれの塗布液チューブ328が連結され連通接続される。このようにして、分岐管327を介して供給された塗布液をそれぞれの塗布液チューブ328に供給することが可能となる。特に、分岐管327と塗布液チューブ328の連結は接続容器40内で行われる。接続容器40内とは、接続容器40に配設された連結部材43中で分岐管327と塗布液チューブ328が連結される状態、および、分岐管327が連結部材43を介して接続容器40内に挿通され、接続容器40内で、既知の連結手段により分岐管327と塗布液チューブ328とを連結する状態を含むものである。
【0051】
また、接続容器40内に挿通されたチューブ群42を構成する気体供給チューブ421の端部は接続容器40内で開口している。あわせて、気体供給チューブ421と複数の塗布液チューブ328とが結束材424によって結束されることで形成された間隙423も、接続容器40内で開口している。したがって、ガス供給部33からガス供給管331を介して接続容器40内に供給された不活性ガスは、気体供給チューブ421および間隙423に供給される。この時、ガス供給部33から供給される不活性ガスの供給圧は大気圧よりも高い圧力であることが好ましい。なぜなら、大気圧よりも高い圧力で不活性ガスを供給することで、確実に間隙423に不活性ガスを供給することができるからである。
【0052】
気体供給チューブ421を介してスライダ52に不活性ガスを供給することで、スライダ52はガイド部51に非接触状態にて係合しつつ主走査方向に移動可能に支持される。また、間隙423に不活性ガスが供給されることで、チューブ群42を構成する複数の塗布液チューブ328の周囲に不活性ガスの層が形成される。
【0053】
このように、テフロン(登録商標)系材料で生成された塗布液チューブ328の周囲に不活性ガスの層を形成することで、塗布液チューブ328内部に酸素が透過することを防ぎ、塗布液の酸素曝露による寿命低下を防ぐことができる。
【0054】
また、上述したように金属配管で形成された分岐管327と、テフロン(登録商標)系材料で生成された塗布液チューブ328とを不活性ガスが充満した接続容器40内で連結させるとともに、チューブ群42の間隙423に不活性ガスを供給することで、塗布液チューブ328がいずれの区間においても酸素に触れることを防ぐことができる。
【0055】
次に、
図7を参照しつつ塗布装置1における具体的な塗布動作について説明する。
図7は塗布装置1における塗布液の塗布の流れを示す図である。基板9がステージ10にて保持されると、撮像部11がアライメントマークを撮像し撮像部11からの出力に基づいてステージ移動機構20が駆動されて基板9が移動および回転し塗布開始位置に移動する(ステップS1)。上述のように、基板9の主面上には互いに平行な複数の隔壁が配列形成され、主面上の隔壁間の領域数の線状領域が主走査方向に垂直な副走査方向に一定の領域ピッチにて主面上に配列された状態で、処理対象の基板9が準備されることとなる。このとき、塗布ヘッド30は、副走査方向に関して基板9の(+Y)側の端部近傍であり、主走査方向において、待機位置である受液部12の上方に予め配置されている。
【0056】
続いて、複数のノズル31から塗布液の吐出が開始され(ステップS12)、さらに、ヘッド移動機構50が制御されて塗布ヘッド30の主走査方向の移動(すなわち、
図1中の(−X)側から(+X)側への主走査)が開始される。これにより、複数のノズル31のそれぞれから基板9の主面に向けて塗布液を一定の流量にて連続的に(途切れることなく)吐出しつつ、塗布ヘッド30が主走査方向に連続的に一定の速度にて移動し、基板9の塗布領域91の16個の線状領域に塗布液がストライプ状に塗布される(ステップS13)。
【0057】
そして、塗布ヘッド30が待機位置である受液部12の上方まで移動することにより、塗布液によるストライプ状のパターンが形成される。なお、
図1中における塗布領域91の(−X)側および(+X)側の非塗布領域(並びに、必要に応じて(+Y)側および(−Y)側の非塗布領域)は図示省略のマスクにより覆われているため塗布液は基板9上に直接には塗布されない。
【0058】
塗布ヘッド30が待機位置まで移動すると、ステージ移動機構20が駆動され、基板9がステージ10と共に(+Y)方向(すなわち、副走査方向)に領域ピッチ の48倍に等しい距離だけ移動する(ステップS14)。このとき、塗布ヘッド30では、複数のノズル31から受液部12に向けて塗布液が連続的に吐出されている。
【0059】
副走査方向における基板9の移動が終了すると、基板9およびステージ10が塗布終了位置まで移動したか否かが制御部2により確認される(ステップS15)。そして、塗布終了位置まで移動していない場合には、ステップS13に戻って塗布ヘッド30が複数のノズル31から塗布液を吐出しつつ基板9の(+X)側から(−X)方向(すなわち、主走査方向)に移動することにより、基板9上の線状領域に塗布液が塗布される(ステップS13)。その後、基板9が副走査方向に移動し、塗布終了位置まで移動したか否かの確認が行われる(ステップS14,S15)。
【0060】
塗布装置1では、ステージ10および基板9が塗布終了位置に位置するまで、塗布ヘッド30の主走査方向への移動が完了する毎に、基板9が副走査方向に相対的に移動され(すなわち、塗布ヘッド30の主走査方向における移動、および、基板9の(+Y)側へのステップ移動が繰り返され)、これにより、基板9の塗布領域91において、塗布液が領域ピッチの3倍に等しいピッチにて配列されたストライプ状に塗布される(ステップS13〜S15)。塗布装置1では、副走査方向に関し、基板9上において塗布液の塗布が進行する方向(すなわち、塗布ヘッド14の基板9に対する相対移動方向)は、ステージ移動機構20による基板9の移動方向とは反対向きとなっている。
【0061】
実際には、塗布装置1では塗布ヘッド30の主走査方向への移動、および、基板9の副走査方向への移動が高速に繰り返されるが(すなわち、塗布ヘッド30の主走査方向への往復移動が高速に繰り返される。)、チューブ群42の変形に対する剛性が高いことにより、基板9上への塗布液の塗布時においてチューブ群42はほとんど変形しない。したがって、チューブ群42がほぼ一定の形状を維持したままで(いわゆる剛体モードにて)塗布ヘッド30が振動運動する。
【0062】
そして、基板9が塗布終了位置まで移動すると、複数のノズル31からの塗布液の吐出が停止され(ステップS15,S16)、塗布装置1による基板9に対する塗布液の塗布が終了する。塗布装置1による塗布が終了した基板9は、他の塗布装置等へと搬送され、塗布装置1により塗布された塗布液以外の他の2色の塗布液が塗布される。そして、基板9に対して所定の工程が行われた後、他の部品と組み合わされて有機EL表示装置が製造される。なお、塗布装置1では、実際には複数の基板9に対して連続的に塗布液の塗布が行われる。
【0063】
以上、説明したように本発明の塗布装置1では、塗布ヘッド30を高速に移動しつつ基板9上に塗布液を均一に塗布するため、塗布ヘッド30に塗布液および不活性ガスを供給するための塗布液チューブ328および気体供給チューブ421に可撓性を有する材料を採用する。その際、接続容器40内で分岐管327と塗布液チューブ328とを連結し、接続容器40内に供給された不活性ガスを気体供給チューブ421およびチューブ群42内の間隙423に供給することで、塗布液チューブ328内に酸素が透過せず、塗布液の寿命低下を防ぐことができる。同時に塗布ヘッド30の高速移動による塗布を行うことができる。
【0064】
次に、この発明の他の実施形態について説明する。
図8は、この発明の第2実施形態に係る接続容器40を説明するための概要図である。第2実施形態は、気体供給チューブ421に気体を供給するためのエア供給部34と、エア供給部34から接続容器40まで気体を供給するためのエア供給管341とを備える点で、上述した第1実施形態と異なる。なお、
図6に示す第1実施形態と同一の部材については同一の符号を付与して詳細な説明を省略する。
【0065】
エア供給部34は、ヘッド移動機構50に気体を供給するための機構であり、接続容器40にエア供給管341を介して接続されている。エア供給部34は少なくとも塗布処理が行われている間は気体を供給している。なお、処理が停止している間も気体を供給していてもよい。また、エア供給部34が供給する気体としては、空気(エア)や不活性ガス(例えば、窒素等)等でよく、その他の気体であってもよい。本実施形態では、以降の説明においてエアを供給する例を説明する。
【0066】
エア供給管341はエア供給部34と接続容器40を連結しており、エア供給部34から供給されたエアを接続容器40に導く。接続容器40には、エア供給管341と連結するための開口部が形成されており、当該開口部に連結部材45を介してエア供給管341が連結される。なお、連結部材45はシール構造を有している。また、チューブ群42の端部は接続容器40内に挿通されており、その端部から塗布液チューブ328と、気体供給チューブ421が延出されており、連結部材43を介してそれぞれの分岐管327と、それぞれの塗布液チューブ328が連結され連通接続される。同様に、連結部材45を介してエア供給管341と気体供給チューブ421が連結され連通接続される。
【0067】
このようにして、分岐管327を介して供給された塗布液をそれぞれの塗布液チューブ328に供給することが可能となる。同様に、エア供給部34から供給されるエアを気体供給チューブ421に供給することが可能となる。
【0068】
以上、説明したように第2実施形態の塗布装置では、塗布ヘッド30を高速に移動しつつ基板9上に塗布液を均一に塗布するため、塗布ヘッド30に塗布液およびエアを供給するための塗布液チューブ328および気体供給チューブ421に可撓性を有する材料を採用する。その際、接続容器40内で分岐管327と塗布液チューブ328とを連結するとともに、ガス供給部33から接続容器40内に供給された不活性ガスをチューブ群42内の間隙423に供給する。また、エア供給部34から供給されたエアを気体供給チューブ421に供給する。このように、塗布ヘッド30を高速に移動させるためのエア供給部34を設けることで、間隙423に供給する不活性ガスの供給圧力を低くすることができるとともに、間隙423に不活性ガスを供給することで塗布液チューブ328内に酸素が透過せず、塗布液の寿命低下を防ぐことができる。同時に塗布ヘッド30の高速移動による塗布を行うことができる。
【0069】
以上、本発明の実施の形態について説明してきたが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、様々な変形が可能である。
【0070】
チューブ群42では、気体供給チューブ421および複数の塗布液チューブ328が挿入される管状の収縮性部材を収縮させて結束材424を形成することにより、気体供給チューブ421および複数の塗布液チューブ328を強固にかつ容易に結束することが可能となり、チューブ群42を容易に作製することができるが、例えば、気体供給チューブ421の周囲に配置される複数の塗布液チューブ328の全体の外周から粘着テープを隙間なく巻き付けることにより、結束材が形成されてもよい。この場合でも、気体供給チューブ421と塗布液チューブ328との間に形成された間隙423に接続容器40を介して不活性ガスを供給することができるため、塗布液への酸素曝露を防ぐことができる。
【0071】
塗布装置では、例えば、塗布ヘッド30においてY方向に関して3α本(αは正の整数)のノズル31が配列されるとともに、赤色(R)、緑色(G)、青色(B)の3種類の有機EL材料をそれぞれ含む3種類の塗布液の供給源が設けられ、最も(+Y)側のノズル31から2つ置きに存在するノズル31にRの塗布液が供給され、Rの塗布液が供給されるノズル31の(−Y)側に隣接するノズル31にGの塗布液が供給され、残りのノズル31にBの塗布液が供給されることにより、塗布ヘッド30の一度の主走査により基板9上に3種類の塗布液が同時に塗布されてもよい。
【0072】
また、塗布ヘッド30では、塗布液を吐出するノズル31が2本以上とされるのであるならばいかなる本数とされてもよいが、複数の塗布液チューブ328を気体供給チューブ421の外周上に等間隔に配置してチューブ群42の変形に対する剛性をチューブ群42が伸びる方向に垂直な全ての方向に関してほぼ均等に増大するという観点では、ノズル31が3本以上とされて塗布液チューブ328が3本以上とされることが好ましい。この場合に、気体供給チューブ421の周囲を複数の塗布液チューブ328が捻られつつ(螺旋状に)巻かれることにより、チューブ群の剛性がさらに高められてもよい。また、塗布液チューブ328の数によっては、気体供給チューブ421の周囲に塗布液チューブ328が多層に配置されてもよい(すなわち、気体供給チューブ421上の塗布液チューブ328に重ねて塗布液チューブ328が配置される。)。このように塗布液チューブ328が気体供給チューブ421の周りに配置されたとしても、接続容器40を介してチューブ群42の間隙423に不活性ガスを供給することができるため、塗布液チューブ328に酸素が透過することを防ぐことができ、塗布液の劣化を防ぐことができる。
【0073】
また、接続容器40は直方体としたがこれに限定されるものではない。接続容器40としては、分岐管327やガス供給管331、チューブ群42等が連結しやすい構造であればよく、例えば多面体構造でもよい。
【0074】
また、上記の実施形態では、発光材料を含む塗布液を用いて基板9上に発光材料のパターンを形成することが実現されるが、揮発性の溶媒(例えば、水)に加えて正孔輸送材料を含む塗布液が基板9に塗布されてもよい。この場合も、塗布装置では、正孔輸送材料を含む塗布液を酸素に晒すことなく、基板9上に均一に塗布することができる。なお、正孔輸送材料とは、有機EL表示装置の正孔輸送層を形成する材料であり、正孔輸送層とは、有機EL材料により形成された有機EL層へと正孔を輸送する狭義の正孔輸送層のみを意味するものではなく、正孔の注入を行う正孔注入層も含む。
【0075】
また、塗布装置1は、塗布ヘッド30の主走査方向への移動をエアまたは不活性ガスを利用したヘッド移動機構50(スライダおよびガイド)を採用し、塗布ヘッド30の最大移動速を毎秒1m以上10m以下である場合に特に適していると言える。なぜなら、塗布ヘッド30が高速に移動するため、該塗布ヘッドに塗布液およびエアまたは不活性ガスを供給するための塗布液チューブ328および気体供給チューブ421が可撓性を有することが好ましい。この場合、塗布液チューブ328に酸素が透過するおそれがある。そのため、接続容器40を介して塗布液チューブ328の外周に不活性ガスを充填するとともに、ヘッド移動機構50にエアまたは不活性ガスを供給することで、塗布ヘッド30の高速移動と、塗布液への酸素曝露の防止を同時に実現することができる。