(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来、高圧のガスが収容される圧力容器として、その内部を二室に区画する隔壁を備えるものが知られている。例えば、特許文献1には、高圧のガスを収容する容器本体と、この容器本体内を第一室と第二室とに二等分するように当該容器本体内に形成された隔壁とを有する圧力容器が開示されている。前記容器本体は、一方向に長い形状を有する。前記隔壁は、前記容器本体の長手方向と平行な方向に沿って伸びる平板状を呈し、前記容器本体の上部と下部とに接続されている。
【0003】
前記容器本体の各室に高圧のガスが収容されると、当該容器本体のうち各室を取り囲む部位、すなわち、当該容器本体の上部、下部及び側部には、各部位が外側に膨張しようとする荷重が加わる。そして、前記隔壁は、前記容器本体の上部と下部とに接続されていることから、外側に膨張しようとする容器本体の上部及び下部によって上下方向(前記長手方向及び前記隔壁の厚さ方向のそれぞれに直交する方向)に引っ張られることになる。これにより、前記隔壁には、前記上下方向の引張荷重が作用する。なお、この隔壁には、前記厚さ方向に隣接する両室からは等しい圧力が加わるので、各室に高圧のガスが収容された状態であっても、当該隔壁には曲げモーメントはほとんど作用しない。
【0004】
また、圧力容器には、主な強度上の設計要件として、所定値以上の耐圧破壊強度を確保することが要求される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一般に、圧力容器としては、要求される設計要件を満足しつつ、できる限り軽量化を図りたいというニーズがある。しかしながら、上記特許文献1に記載のような圧力容器では、隔壁として、前記引張荷重に耐えるために十分に大きな厚さを有するものが要求されるので、圧力容器の軽量化を図ることが困難であった。
【0007】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、要求される設計要件を満足しつつ、軽量化を図ることができる圧力容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するため、本発明者らは、圧力容器の隔壁には、容器本体に収容される高圧ガスの内圧が作用することによって生じる引張荷重の分布に、不均一が発生していることに着目した。すなわち、一定厚さの隔壁には、相対的に小さな引張荷重しか作用していない部分があり、これらの部分は過剰に補強された構造となっていることに着目した。よって、前記隔壁に発生している引張荷重の分布の不均一を解消するように当該隔壁のうち過剰に補強されている部分を削ることによって、材料が削減されて圧力容器全体として軽量化を図ることができることに想到した。
【0009】
本発明はこのような観点からなされたものであり、高圧のガスを収容する容器本体と、この容器本体内を第一室と第二室とに二等分するように当該容器本体内に形成された隔壁とを有する圧力容器であって、前記容器本体は、前記隔壁の上端と接続される上壁と、この上壁と対向するとともに前記隔壁の下端と接続される底壁と、前記上壁の周縁と前記底壁の周縁とを接続する周壁とを有し、前記隔壁は、一方向に長い形状を有し、当該隔壁の長手方向の中央を含む領域に位置する第一壁の厚さよりも、前記長手方向の一端側に位置する第二壁の厚さ及び前記長手方向の他端側に位置する第三壁の厚さの方が小さい圧力容器を提供する。
【0010】
この発明の圧力容器では、前記隔壁のうち相対的に小さな引張荷重しか作用していない部分の肉厚を小さくしたので、圧力容器全体として、要求される設計要件を満足しつつ、材料の削減による軽量化を図ることができる。具体的に、本発明の圧力容器では、前記隔壁のうち当該隔壁の長手方向の中央を含む領域に位置する第一壁に比べ、当該隔壁のうち前記周壁により近い部位、すなわち、当該隔壁の前記長手方向の一端側に位置する第二壁及び他端側に位置する第三壁には、小さな引張荷重しか作用しない。よって、これら第二壁及び第三壁のそれぞれの厚さを、当該圧力容器に要求される設計要件を満足する範囲内において、前記第一壁の厚さよりも小さくすることができる。これにより、材料が削減されて圧力容器が軽量化される。
【0011】
この場合において、前記周壁は、前記隔壁の長手方向と平行な方向に伸びる形状を有して前記隔壁と対向する隔壁対向部を有し、前記第二壁の前記長手方向の寸法は、前記隔壁と前記隔壁対向部との間の寸法の2分の1以下であり、前記第三壁の前記長手方向の寸法は、前記隔壁と前記隔壁対向部との間の寸法の2分の1以下であることが好ましい。
【0012】
このようにすれば、前記隔壁のうち相対的に大きな引張荷重が作用する第一壁の前記長手方向の寸法を十分に確保することによって前記設計要件を満足しながら、前記第二壁及び前記第三壁のそれぞれの厚さを前記第一壁の厚さよりも小さくすることにより、圧力容器の軽量化を図ることができる。
【0013】
また、本発明において、前記第一壁の表面と前記第二壁の表面とは滑らかにつながっており、前記第一壁の表面と前記第三壁の表面とは滑らかにつながっていることが好ましい。
【0014】
このようにすれば、前記第一壁と前記第二壁との境界近傍、及び前記第一壁と前記第三壁との境界近傍に発生する応力集中を緩和することができる。
【0015】
また、本発明において、前記容器本体内に前記高圧のガスが収容されたときに前記第一壁に前記長手方向及び前記隔壁の厚さ方向のそれぞれに直交する短手方向の引張荷重が作用することによって当該第一壁に生じる応力が当該第一壁内で均一に分布するようにこの第一壁の厚さが設定され、前記容器本体内に前記高圧のガスが収容されたときに前記第二壁に前記短手方向の引張荷重が作用することによって当該第二壁に生じる応力が当該第二壁内で均一に分布するようにこの第二壁の厚さが設定され、前記容器本体内に前記高圧のガスが収容されたときに前記第三壁に前記短手方向の引張荷重が作用することによって当該第三壁に生じる応力が当該第三壁内で均一に分布するようにこの第三壁の厚さが設定されたことが好ましい。
【0016】
このようにすれば、前記第一壁、前記第二壁及び前記第三壁のそれぞれに作用する引張荷重の分布に対応するように各壁の厚さが変化する、すなわち、各壁の厚さが最適化されるので、材料に無駄がなくなり、圧力容器が一層軽量化される。
【0017】
また、本発明において、前記上壁は、前記周壁の上端及び前記隔壁の上端に接続される上壁本体と、この上壁本体のうち前記第一室側の外面に立設された上壁第一室側リブと、前記上壁本体のうち前記第二室側の外面に立設された上壁第二室側リブとを有し、前記底壁は、前記周壁の下端及び前記隔壁の下端に接続される底壁本体と、この底壁本体のうち前記第一室側の外面に立設された底壁第一室側リブと、前記底壁本体のうち前記第二室側の外面に立設された底壁第二室側リブとを有し、前記上壁第一室側リブ及び前記上壁第二室側リブは、前記上壁本体の外面のうち前記第一壁の厚さ方向において当該第一壁と隣接する第一領域に立設された部位の高さ寸法よりも、前記上壁本体の外面のうち前記第一領域以外の第二領域に立設された部位の高さ寸法の方が小さな形状を有し、前記底壁第一室側リブ及び前記底壁第二室側リブは、前記底壁本体の外面のうち前記第一壁の厚さ方向において当該第一壁と隣接する第三領域に立設された部位の高さ寸法よりも、前記底壁本体の外面のうち前記第三領域以外の第四領域に立設された部位の高さ寸法の方が小さな形状を有することが好ましい。
【0018】
このように、前記上壁本体のうち相対的に小さな応力しか生じない部位、すなわち、前記上壁本体のうち前記第一壁の厚さ方向において当該第一壁と隣接する第一領域以外の第二領域に立設されたリブの高さ寸法を、前記上壁本体のうち相対的に大きな応力が生じる前記第一領域に立設されたリブの高さ寸法よりも小さくすることにより、大幅な重量増を回避しながら、前記上壁本体の強度を向上させることができる。このことは、底壁側についても同様である。
【発明の効果】
【0019】
以上のように、本発明によれば、要求される設計要件を満足しつつ、材料を削減して軽量化を図ることができる圧力容器を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の好ましい実施形態について、
図1ないし
図9を参照しながら説明する。
【0022】
図1に示すように、本実施形態の圧力容器は、高圧のガスを収容する略直方体形状の容器本体と、この容器本体内を第一室と第二室とに二等分する隔壁40とを有する。前記第一室及び前記第二室には、熱交換器や配管等が収容されるが、これらは図示を省略している。容器本体は、隔壁40の上端と接続される上壁10と、この上壁10と対向するとともに隔壁40の下端と接続される底壁20と、上壁10の周縁と底壁20の周縁とを接続する周壁30とを有する。また、以下の説明では、上壁10と底壁20との並び方向をZ軸方向とし、第一室と第二室との並び方向をY軸方向とし、Z軸方向及びY軸方向に直交する方向をX軸方向とする。
【0023】
図1に示すように、上壁10は、平板状の上壁本体11と、この上壁本体11の表面から外側に向かって突出する形状の上壁突出部12と、上壁本体11の外面のうち前記第一室側に立設された上壁第一室側リブ13aと、上壁本体11の外面のうち前記第二室側に立設された上壁第二室側リブ13bとを有する。
【0024】
上壁本体11は、周壁30の上端を塞ぐ形状を有し、この周壁30の上端とつながっているとともに隔壁40の上端とつながっている。
図4に示すように、この上壁本体11と周壁30との境界は、外側に向かって凸となった湾曲面となっている。本実施形態では、この上壁本体11は、一方向(Y軸方向)に長い略矩形状としている。
【0025】
図4に示すように、上壁突出部12は、上壁本体11の外面のうち当該上壁本体11の内面と隔壁40の上端との接続部の裏側に位置する部位を含むように形成される。この上壁突出部12は、上壁本体11の長手方向の略中央を当該上壁本体11の短手方向(X軸方向)に沿って伸びる形状を有する。本実施形態では、上壁突出部12の上壁本体11の外面からの突出量を、当該上壁突出部12の長手方向の全域にわたって一定としている。この上壁突出部12の短手方向(Y軸方向)の寸法は、上壁本体11の内面と隔壁40の上端との接続部の寸法よりも大きくなるように設定されている。
【0026】
上壁第一室側リブ13aは、上壁本体11のうち前記第一室側の部位を補強する。この上壁第一室側リブ13aは、上壁本体11の短手方向と平行な方向に沿って伸びる形状の短手方向リブ14aと、上壁本体11の長手方向と平行な方向、すなわち、上壁突出部12と交差する方向に沿って伸びる形状の長手方向リブ15aとを有する。これら短手方向リブ14aと長手方向リブ15aとは、それぞれ同じ高さを有し、その高さは上壁突出部12よりも高く設定されている。長手方向リブ15aは、上壁突出部12の側面及び上面とつながる形状を有する。本実施形態では、短手方向リブ14aを3本、長手方向リブ15aを6本としている。また、この上壁第一側リブ13aは、上壁本体11の隅角部には形成されない。すなわち、短手方向リブ14aのうち最も外側に立設されたものの長さは、そのすぐ内側に立設されたものの長さよりも短く、また、長手方向リブ15aのうち最も外側に立設されたものの長さは、そのすぐ内側に立設されたものの長さよりも短くなっている。
【0027】
上壁第二室側リブ13bは、上壁本体11のうち前記第二室側の部位を補強する。この上壁第二室側リブ13bは、上壁本体11の短手方向と平行な方向に沿って伸びる形状の短手方向リブ14bと、上壁本体11の長手方向と平行な方向、すなわち、上壁突出部12と交差する方向に沿って伸びる形状の長手方向リブ15bとを有する。これら短手方向リブ14bと長手方向リブ15bとは、それぞれ同じ高さを有し、その高さは上壁突出部12よりも高く設定されている。長手方向リブ15bは、上壁突出部12の側面及び上面とつながる形状を有する。また、上壁第一室側リブ13aの長手方向リブ15aと上壁第二室側リブ13bの長手方向リブ15bとは、上壁突出部12の上面で互いにつながる形状を有する。すなわち、各長手方向リブ15a,15bは、上壁突出部12と接触しつつ当該上壁突出部12の上側を跨ぐように上壁本体11の長手方向に沿って伸びる形状を有する。本実施形態では、短手方向リブ14bを3本、長手方向リブ15bを6本としている。また、この上壁第二側リブ13bは、上壁本体11の隅角部には形成されない。すなわち、短手方向リブ14bのうち最も外側に立設されたものの長さは、そのすぐ内側に立設されたものの長さよりも短く、また、長手方向リブ15bのうち最も外側に立設されたものの長さは、そのすぐ内側に立設されたものの長さよりも短くなっている。
【0028】
図2に示すように、底壁20は、上壁本体11と同形状の底壁本体21と、この底壁本体21の表面から外側に向かって突出する形状の底壁突出部22と、底壁本体21の外面のうち前記第一室側に立設された底壁第一室側リブ23aと、上壁本体11の外面のうち前記第二室側に立設された底壁第二室側リブ23bとを有する。
【0029】
底壁本体21は、周壁30の下端を塞ぐ形状を有し、この周壁30の下端とつながっているとともに隔壁40の下端とつながっている。
図4に示すように、この底壁本体21と周壁30との境界は、外側に向かって凸となった湾曲面となっている。
【0030】
図4に示すように、底壁突出部22は、底壁本体21の外面のうち当該底壁本体21の内面と隔壁40の下端との接続部の裏側に位置する部位を含むように形成される。この底壁突出部22は、底壁本体21の長手方向の略中央を当該底壁本体21の短手方向(X軸方向)に沿って伸びる形状を有する。本実施形態では、底壁突出部22の底壁本体21の外面からの突出量を、当該底壁突出部22の長手方向の全域にわたって一定としている。この底壁突出部22の短手方向(Y軸方向)の寸法は、底壁本体21の内面と隔壁40の下端との接続部の寸法よりも大きくなるように設定されている。また、底壁本体21のうち底壁突出部22とつながった部位は、底壁本体21のその他の部位よりも外側(
図4では下側)に突出する形状を有する。
【0031】
底壁第一室側リブ23aは、底壁本体21のうち前記第一室側の部位を補強する。この底壁第一室側リブ23aは、底壁本体21の短手方向と平行な方向に沿って伸びる形状の短手方向リブ24aと、底壁本体21の長手方向と平行な方向、すなわち、底壁突出部22と交差する方向に沿って伸びる形状の長手方向リブ25aとを有する。これら短手方向リブ24aと長手方向リブ25aとは、それぞれ同じ高さを有し、その高さは底壁突出部22よりも低く設定されている。長手方向リブ25aは、この底壁突出部22の側面とつながる形状を有する。本実施形態では、短手方向リブ24aを2本、長手方向リブ25aを4本としている。
【0032】
底壁第二室側リブ23bは、底壁本体21のうち前記第二室側の部位を補強する。この底壁第二室側リブ23bは、底壁本体21の短手方向と平行な方向に沿って伸びる形状の短手方向リブ24bと、底壁本体21の長手方向と平行な方向、すなわち、底壁突出部22と交差する方向に沿って伸びる形状の長手方向リブ25bとを有する。これら短手方向リブ24aと長手方向リブ25aとは、それぞれ同じ高さを有し、その高さは底壁突出部22よりも低く設定されている。長手方向リブ25bは、この底壁突出部22の側面とつながる形状を有する。本実施形態では、短手方向リブ24bを2本、長手方向リブ25bを4本としている。
【0033】
周壁30は、上壁本体11の周縁と底壁本体21の周縁とを接続する。本実施形態では、この周壁30は、全周にわたって一定の厚さを有する略四角筒状としている。そして、周壁30のうち隔壁40と対向する隔壁対向部30aは、隔壁40の長手方向と平行な方向に伸びる形状としている。この周壁30は、隔壁40と交差する部位に形成された第一側壁31及び第二側壁32を有する。第一側壁31は、前記第一室内と容器本体外とを連通する第一開口部31aと、前記第二室内と容器本体外とを連通する第二開口部31bとを有する。同様に、第二側壁32は、前記第一室内と容器本体外とを連通する第一開口部32aと、前記第二室と容器本体外とを連通する第二開口部32bとを有する。第一室及び第二室への熱交換器や配管等の収容後、各開口部は、それぞれ当該開口部を覆う形状の蓋により塞がれる。なお、各図では、前記蓋の図示は省略している。
【0034】
この圧力容器に高圧ガスが封入されると、上壁10、底壁20及び周壁30には、これら各壁がそれぞれ外側に膨張する方向の荷重が作用する。このとき、隔壁40は、外側に膨張する上壁10と底壁20とにより、当該上壁10と底壁20とを結ぶ上下方向(Z軸方向)に引っ張られるので、当該隔壁40には前記上下方向の引張荷重が作用する。この引張荷重は、隔壁40の全域にわたって均等に分布していない。つまり、この隔壁40には、相対的に大きな引張荷重が作用する部位と小さな引張荷重が作用する部位とが存在する。具体的には、上壁本体11及び底壁本体21は、その中央部での変形量が最も大きくなり、当該中央部から周壁30との接続部に向かうにしたがってその変形量が小さくなるので、隔壁40に作用する引張荷重も、当該隔壁40の中央部で最大となり、当該中央部から隔壁40の両端部に向かうにしたがって小さくなる。本実施形態の圧力容器は、隔壁40の厚さを当該隔壁40に作用する前記引張荷重の分布に略対応させるものである。すなわち、基本的には、前記引張荷重が相対的に大きくなる部位の肉厚を大きくするとともに、前記引張荷重が相対的に小さくなる部位の肉厚を小さくするものである。
【0035】
具体的に、隔壁40は、
図3及び
図4に示すように、上壁本体11との接続部と底壁本体21との接続部とを結ぶ方向(Z軸方向)及び当該各壁40の厚さ方向(Y軸方向)のそれぞれに直交する方向(X軸方向)に長い矩形の平板状を呈する。なお、
図3は、
図1のIII−III線での断面図であるが、このIII−III線は、
図1の上壁突出部12と当該上壁突出部12のすぐ隣に隣接する短手方向リブ14bとの間を通る。この隔壁40は、当該隔壁40の長手方向の中央を含む領域に位置する第一壁41と、前記長手方向の一端側に位置する第二壁42と、前記長手方向の他端側に位置する第三壁43とを有する。これらの各壁は、前記長手方向の一端側から他端側に向かって第二壁42、第一壁41及び第三壁43の順につながっている。なお、本実施形態では、隔壁40が、Y軸方向からみて一方向に長い矩形である例について示すが、この隔壁40は、同方向からみて正方形であってもよく、以下、いずれの場合であっても、X軸方向を当該隔壁40の長手方向として説明する。
【0036】
第一壁41、第二壁42及び第三壁43は、すべて一方向(X軸方向)に長い矩形の平板状を呈する。第一壁41は、その上端が上壁本体11とつながっており、その下端が底壁本体21とつながっている。第二壁42及び第三壁43は、その上端が上壁本体11とつながっており、その下端が底壁本体21とつながっており、そして、その第一壁41とつながった側と反対側の端部が周壁30とつながっている。
図5(a)に示すように、第二壁42は、その厚さが第一壁41の厚さよりもの方が小さな形状を有し、かつ、第三壁43は、その厚さが第一壁41の厚さよりも小さな形状を有する。本実施形態では、これら第一壁41、第二壁42及び第三壁43は、それぞれその長手方向の全域にわたって一様な厚さとしており、かつ、それぞれの厚さ方向の中心軸が一致する配置としている。ただし、
図5(b)に示すように、第一壁41の表面と第二壁42の表面とは滑らかにつながっており、第一壁41の表面と第三壁43の表面とは滑らかにつながっていることが好ましい。このようにすれば、第一壁41と第二壁42との境界近傍、及び第一壁41と第三壁43との境界近傍に発生する応力集中を緩和することができる。
【0037】
そして、第二壁42の長手方向の寸法L1及び第三壁43の長手方向の寸法L2は、それぞれ周壁30のうち隔壁40と対向する隔壁対向部30aと隔壁40との間の寸法B(
図1を参照)の2分の1以下とされることが好ましい。これは、
図6に示すように、前記寸法L1が前記寸法Bの2分の1以下となる範囲では、第二壁42に発生する応力が第一壁41に発生する応力の2分の1以下となるという理由による。そのため、前記寸法L1を前記寸法Bの2分の1以下とすることにより、第二壁42の厚さを第一壁41の厚さの2分の1以下に設定することが可能となる。このことは、第三壁43についても同様である。本実施形態では、第二壁42の長手方向の寸法L1と第三壁43の長手方向の寸法L2とを同一としている。
【0038】
さらに、容器本体内に高圧のガスが収容されて第一壁41に上下方向の引張荷重が作用することによって当該第一壁41に生じる応力が、第一壁41内で均一に分布するようにこの第一壁41の厚さが設定されてもよい。第二壁42及び第三壁43についても同様である。このようにすれば、各壁の厚さが最適化されて材料に無駄がなくなり、圧力容器が一層軽量化される。
【0039】
また、これまで説明してきた容器本体に高圧ガスが封入されたとき、相対的に高応力となる部位は、上壁本体11と周壁30の隔壁対向部30aとの境界及び底壁本体21と隔壁対向部30aとの境界であるので、当該容器本体は、この境界近傍を補強する補強部をさらに有することが好ましい。本実施形態では、高応力となる部位が上壁10側及び底壁20側で同様であるので、上壁10側を例にとって説明する。具体的には、
図8及び
図9に示すように、上側補強部51,52を設けることが好ましい。
図8に示す上側補強部51は、隔壁対向部30aの内面と上壁本体11の内面との境界から内側に向かって膨出するとともに当該境界に沿って伸びる形状を有する。
図9に示す上側補強部52は、隔壁対向部30aの内面と上壁本体11の内面との境界を跨ぐように当該隔壁対向部30aの内面と上壁本体11の内面とに接続される形状を有する。なお、これら上側補強部51,52は、容器本体の内面ではなく外面に設けられてもよい。
【0040】
以上説明したように、本実施形態の圧力容器では、隔壁40のうち相対的に小さな引張荷重しか作用していない部分の肉厚を小さくしたので、圧力容器全体として、要求される設計要件を満足しつつ、材料の削減による軽量化を図ることができる。具体的には、第二壁42及び第三壁43のそれぞれの厚さを、当該圧力容器に要求される設計要件を満足する範囲内において、第一壁41の厚さよりも小さくしたので、材料が削減されて圧力容器が軽量化される。
【0041】
また、本実施形態では、第二壁42及び第三壁43のそれぞれの長手方向の寸法L1を隔壁40と隔壁対向部30aとの間の寸法Bの2分の1以下としたので、隔壁40のうち相対的に大きな引張荷重が作用する第一壁41の長手方向の寸法が十分に確保されて前記設計要件の満足が容易となるとともに、第二壁42及び第三壁43のそれぞれの厚さを第一壁41の厚さよりも小さくすることにより、圧力容器の軽量化を図ることができる。
【0042】
また、本実施形態では、上壁本体11と隔壁40との接続部は上壁突出部12により補強されるので、この部分への応力集中の発生が抑制される。そして、上壁本体11は、上壁第一室側リブ13a及び上壁第二室側リブ13bにより補強されているので、この上壁本体11の変形が抑制される。さらに、これら上壁第一室側リブ13a及び上壁第二室側リブ13bは、上壁突出部12とつながる形状を有するので、上壁本体11のうち前記接続部近傍の変形が一層抑制され、これにより前記接続部近傍への応力集中の発生が抑制される。このことは、底壁側についても同様である。
【0043】
ここで、本実施形態の変形例について、
図7を参照しながら説明する。先に説明したように、容器本体の第一室及び第二室に高圧ガスが封入されたときの上壁本体11の変形量は、その中央部に比べ、周壁30との接続部に近い部位の方が小さくなる。具体的には、上壁本体11のうち第一壁41の厚さ方向(Y軸方向)において当該第一壁41と隣接する第一領域の変形量よりも、この第一領域以外の第二領域(上壁本体11のうち第二壁42の厚さ方向において当該第二壁42と隣接する領域、及び上壁本体11のうち第三壁43の厚さ方向において当該第三壁43と隣接する領域)の変形量の方が小さくなる。そのため、上壁第一室側リブ13a及び上壁第二室側リブ13bは、前記第一領域に立設された部位の高さ寸法よりも、前記第二領域に立設された部位の高さ寸法を小さくすることができる。このように、上壁本体11のうち相対的に小さな応力しか生じない前記第二領域に立設されたリブの高さ寸法を、上壁本体11のうち相対的に大きな応力が生じる前記第一領域に立設されたリブの高さ寸法よりも小さくすることにより、大幅な重量増を回避しながら、上壁本体11の強度を向上させることができる。このことは、底壁20側についても同様である。
【0044】
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0045】
例えば、上記実施形態では、容器本体がY軸方向に長い直方体形状である例について示したが、X軸方向に長い直方体形状であってもよい。
【0046】
また、上記実施形態では、周壁30の隔壁対向部30aは、隔壁40の長手方向と平行な方向に伸びる形状を有する例について示したが、この隔壁対向部30aは、容器本体の外側に向かって凸となった湾曲面であってもよい。
【0047】
また、上記実施形態では、上壁本体10が上壁突出部12、上壁第一室側リブ13a及び上壁第二室側リブ13bを有する例について示したが、これらは省略が可能である。同様に、底壁突出部22、底壁第一室側リブ23a及び底壁第二室側リブ23bも省略が可能である。