特許第5750409号(P5750409)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5750409
(24)【登録日】2015年5月22日
(45)【発行日】2015年7月22日
(54)【発明の名称】放射性セシウム量の推定方法
(51)【国際特許分類】
   G01T 1/167 20060101AFI20150702BHJP
   G21F 9/04 20060101ALI20150702BHJP
   G21F 9/06 20060101ALI20150702BHJP
   G21F 9/12 20060101ALI20150702BHJP
   G01N 33/18 20060101ALI20150702BHJP
【FI】
   G01T1/167 C
   G21F9/04 D
   G21F9/04 Z
   G21F9/06 521A
   G21F9/12 501J
   G01N33/18 Z
【請求項の数】7
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2012-160012(P2012-160012)
(22)【出願日】2012年7月18日
(65)【公開番号】特開2014-20935(P2014-20935A)
(43)【公開日】2014年2月3日
【審査請求日】2014年3月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000192590
【氏名又は名称】株式会社神鋼環境ソリューション
(74)【代理人】
【識別番号】100074332
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100114432
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 寛昭
(72)【発明者】
【氏名】谷田 克義
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 正男
(72)【発明者】
【氏名】前背戸 智晴
(72)【発明者】
【氏名】大迫 政浩
(72)【発明者】
【氏名】蛯江 美孝
【審査官】 藤本 加代子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−022090(JP,A)
【文献】 特表平10−503284(JP,A)
【文献】 特開昭56−079999(JP,A)
【文献】 特開平10−087539(JP,A)
【文献】 特開2005−338019(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01T 1/167
G21F 9/04
G21F 9/06
G21F 9/12
G01N 33/18
JSTPlus(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セシウムとして少なくとも放射性セシウムを含む原水からセシウムを分離する水処理によって得られ前記原水よりセシウム濃度が低減した低濃度水における放射性セシウム量を推定する放射性セシウム量の推定方法であって、
前記原水中のセシウム量に対する前記放射性セシウム量の割合を決定する割合決定工程と、前記低濃度水のセシウム量を測定する低濃度水セシウム量測定工程と、該低濃度水セシウム量測定工程で測定した前記低濃度水のセシウム量に前記割合決定工程で決定した前記放射性セシウムの割合を乗じることにより前記低濃度水の放射性セシウム量を算出する低濃度水算出工程とを実施することを特徴とする放射性セシウム量の推定方法。
【請求項2】
前記水処理にて、前記原水を吸着材と接触させセシウムを吸着材に吸着させることにより原水からセシウムを分離し、前記低濃度水として原水中のセシウムを前記吸着材に吸着させた後の浄化水を得る請求項1記載の放射性セシウム量の推定方法。
【請求項3】
前記水処理にて、前記原水を濾過膜によって膜分離することにより前記原水からセシウムを分離し、前記低濃度水として前記濾過膜を透過した透過水を得る請求項1記載の放射性セシウム量の推定方法。
【請求項4】
セシウムとして少なくとも放射性セシウムを含む原水を濃縮する水処理によって得られ前記原水よりセシウム濃度が増大した高濃度水における放射性セシウム量を推定する放射性セシウム量の推定方法であって、
前記原水中のセシウム量に対する前記放射性セシウム量の割合を決定する割合決定工程と、前記高濃度水のセシウム量を測定する高濃度水セシウム量測定工程と、該高濃度水セシウム量測定工程で測定した前記高濃度水のセシウム量に前記割合決定工程で決定した前記放射性セシウムの割合を乗じることにより前記高濃度水の放射性セシウム量を算出する高濃度水算出工程とを実施することを特徴とする放射性セシウム量の推定方法。
【請求項5】
前記水処理にて、前記原水を濾過膜によって膜分離することにより濃縮し、前記高濃度水として前記濾過膜を透過しない濃縮水を得る請求項4記載の放射性セシウム量の推定方法。
【請求項6】
セシウムとして少なくとも放射性セシウムを含む固体状の被処理物中のセシウムを溶出させた原水からセシウムを分離する水処理によって得られ前記原水よりセシウム濃度が低減した低濃度水における放射性セシウム量を推定する放射性セシウム量の推定方法であって、
前記被処理物中のセシウム量に対する前記放射性セシウム量の割合を確認する割合確認工程と、前記低濃度水のセシウム量を測定する低濃度水セシウム量測定工程と、該低濃度水セシウム量測定工程で測定した前記低濃度水のセシウム量に前記割合確認工程で確認した前記放射性セシウムの割合を乗じることにより前記低濃度水の放射性セシウム量を算出する低濃度水算出工程とを実施することを特徴とする放射性セシウム量の推定方法。
【請求項7】
セシウムとして少なくとも放射性セシウムを含む固体状の被処理物中のセシウムを溶出させた原水を濃縮する水処理によって得られ前記原水よりセシウム濃度が増大した高濃度水における放射性セシウム量を推定する放射性セシウム量の推定方法であって、
前記被処理物中のセシウム量に対する前記放射性セシウム量の割合を確認する割合確認工程と、前記高濃度水のセシウム量を測定する高濃度水セシウム量測定工程と、該高濃度水セシウム量測定工程で測定した前記高濃度水のセシウム量に前記割合確認工程で確認した前記放射性セシウムの割合を乗じることにより前記高濃度水の放射性セシウム量を算出する高濃度水算出工程とを実施することを特徴とする放射性セシウム量の推定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射性セシウム量の推定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
セシウムは、アルカリ金属元素の1種であり、セシウムとしては、放射能を有する放射性セシウムと、放射能を有さない非放射性セシウムとが知られている。
【0003】
従来、放射性セシウムを含む原水から放射性セシウムを分離する水処理が知られており、該水処理においては、放射性セシウムを分離することにより、原水より放射性セシウム濃度が低減した水が、少なくとも水処理後の水として生成する。
【0004】
上記の水処理においては、除去すべき放射性セシウムが原水にどれだけ存在するかを知るために、水処理前の原水に含まれる放射性セシウム量を把握する必要があり、また、例えば水処理後の水の放射性セシウムがどれだけ低減したかを知るために、水処理後の水に含まれる放射性セシウム量を把握する必要がある。このように、上記の水処理においては、原水に含まれる放射性セシウム量と、水処理後の水に含まれる放射性セシウム量とを把握する必要があるため、原水中の放射性セシウム量を測定するだけでなく、水処理後の水に含まれる放射性セシウム量をも測定している。
【0005】
なお、水処理において、原水及び水処理後の水の両方における放射性セシウム量を把握する方法の具体例としては、例えば、原水における放射性セシウム量と、該原水中の放射性セシウムをゼオライトに吸着させる水処理を行った後の水における放射性セシウム量とを、放射線測定器による測定によって把握するものが知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特公昭62−043519号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記の水処理においては、水処理の前後における放射性セシウム量を把握するために、原水だけでなく、水処理後の水においても放射性セシウム量の測定を行う必要がある。放射性セシウム量の測定では、放射線の検出に比較的長い時間がかかるなど煩雑であるため、上記の水処理においては、原水及び水処理後の水の両方における放射性セシウム量を測定する分、原水又は水処理後の水のいずれか一方のみの放射性セシウム量を測定するよりも長い時間を必要とすること等から、放射性セシウム量を把握することが必ずしも簡便に行えないという問題がある。
【0008】
そこで、より短い時間で水処理の前後における放射性セシウム量を把握するために、水処理後の水における放射性セシウム量を放射線の検出によらなくとも比較的簡便に推定する方法が要望されている。
【0009】
本発明は、上記の問題点、要望点等に鑑み、放射性セシウムを含む原水を水処理した後における放射性セシウム量を比較的簡便に推定できる放射性セシウム量の推定方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決すべく、本発明に係る放射性セシウム量の推定方法は、セシウムとして少なくとも放射性セシウムを含む原水からセシウムを分離する水処理によって得られ前記原水よりセシウム濃度が低減した低濃度水における放射性セシウム量を推定する放射性セシウム量の推定方法であって、
前記原水中のセシウム量に対する前記放射性セシウム量の割合を決定する割合決定工程と、前記低濃度水のセシウム量を測定する低濃度水セシウム量測定工程と、該低濃度水セシウム量測定工程で測定した前記低濃度水のセシウム量に前記割合決定工程で決定した前記放射性セシウムの割合を乗じることにより前記低濃度水の放射性セシウム量を算出する低濃度水算出工程とを実施することを特徴とする。
【0011】
上記構成からなる放射性セシウム量の推定方法においては、水処理において、セシウムとしての放射性セシウム及び非放射性セシウムが、同じように挙動する。即ち、原水においても水処理後の低濃度水においてもセシウムにおける放射性セシウムの割合が同じとなる。従って、前記低濃度水算出工程において、前記低濃度水セシウム量測定工程で測定した前記低濃度水のセシウム量に前記割合決定工程で決定した前記放射性セシウムの割合を乗じることにより前記低濃度水の放射性セシウム量を算出できる。これにより、放射性セシウムを含む原水を水処理した後における前記低濃度水の放射性セシウム量を比較的簡便に推定することができる。
詳しくは、前記割合決定工程において行う原水中の放射性セシウム量の測定が、放射線の検出を必要とするため比較的煩雑であるものの、前記低濃度水セシウム量測定工程において行うセシウムの量の測定が、放射線の検出を必要とせず、簡便に行うことができる。そして、放射線の検出を原水に対して行いさえすれば、さらなる放射線の検出をしなくとも、水処理によって得られた低濃度水における放射性セシウム量を算出することができる。
従って、前記放射性セシウム量の推定方法によれば、放射性セシウムを含む原水を水処理した後における放射性セシウム量を比較的簡便に推定できる。
【0012】
斯かる放射性セシウム量の推定方法においては、前記水処理にて、前記原水を吸着材と接触させセシウムを吸着材に吸着させることにより原水からセシウムを分離し、前記低濃度水として原水中のセシウムを前記吸着材に吸着させた後の浄化水を得ることが好ましい。
また、前記水処理にて、前記原水を濾過膜によって膜分離することにより前記原水からセシウムを分離し、前記低濃度水として前記濾過膜を透過した透過水を得ることが好ましい。
【0013】
また、本発明に係る放射性セシウム量の推定方法は、セシウムとして少なくとも放射性セシウムを含む原水を濃縮する水処理によって得られ前記原水よりセシウム濃度が増大した高濃度水における放射性セシウム量を推定する放射性セシウム量の推定方法であって、
前記原水中のセシウム量に対する前記放射性セシウム量の割合を決定する割合決定工程と、前記高濃度水のセシウム量を測定する高濃度水セシウム量測定工程と、該高濃度水セシウム量測定工程で測定した前記高濃度水のセシウム量に前記割合決定工程で決定した前記放射性セシウムの割合を乗じることにより前記高濃度水の放射性セシウム量を算出する高濃度水算出工程とを実施することを特徴とする。
【0014】
斯かる構成からなる放射性セシウム量の推定方法によれば、上記のごとく前記低濃度水の放射性セシウム量を算出した場合と同様に、前記高濃度水における放射性セシウム量を算出することができる。従って、同様の理由により、放射性セシウムを含む原水を水処理した後における放射性セシウム量を比較的簡便に推定できる。
【0015】
前記放射性セシウム量の推定方法においては、前記水処理にて、前記原水を濾過膜によって膜分離することにより濃縮し、前記高濃度水として前記濾過膜を透過しない濃縮水を得ることが好ましい。
【0016】
本発明に係る放射性セシウム量の推定方法は、セシウムとして少なくとも放射性セシウムを含む固体状の被処理物中のセシウムを溶出させた原水からセシウムを分離する水処理によって得られ前記原水よりセシウム濃度が低減した低濃度水における放射性セシウム量を推定する放射性セシウム量の推定方法であって、
前記被処理物中のセシウム量に対する前記放射性セシウム量の割合を確認する割合確認工程と、前記低濃度水のセシウム量を測定する低濃度水セシウム量測定工程と、該低濃度水セシウム量測定工程で測定した前記低濃度水のセシウム量に前記割合確認工程で確認した前記放射性セシウムの割合を乗じることにより前記低濃度水の放射性セシウム量を算出する低濃度水算出工程とを実施することを特徴とする。
【0017】
本発明に係る放射性セシウム量の推定方法は、セシウムとして少なくとも放射性セシウムを含む固体状の被処理物中のセシウムを溶出させた原水を濃縮する水処理によって得られ前記原水よりセシウム濃度が増大した高濃度水における放射性セシウム量を推定する放射性セシウム量の推定方法であって、
前記被処理物中のセシウム量に対する前記放射性セシウム量の割合を確認する割合確認工程と、前記高濃度水のセシウム量を測定する高濃度水セシウム量測定工程と、該高濃度水セシウム量測定工程で測定した前記高濃度水のセシウム量に前記割合確認工程で確認した前記放射性セシウムの割合を乗じることにより前記高濃度水の放射性セシウム量を算出する高濃度水算出工程とを実施することを特徴とする
【発明の効果】
【0018】
上述の通り、本発明の放射性セシウム量の推定方法は、放射性セシウムを含む原水を水処理した後における放射性セシウム量を比較的簡便に推定できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】水処理において用いる装置の概略を表した概略図。
図2】実施例における水処理にて用いた装置の概略を表した概略図。
図3】水処理において用いる装置の一例を表した概略図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係る放射性セシウム量の推定方法の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。図1は、第一実施形態の放射性セシウム量の推定方法において、水処理にて用いる装置類の概略図である。
【0021】
<第一実施形態>
第一実施形態の放射性セシウム量の推定方法は、セシウムとして少なくとも放射性セシウムを含む原水Aからセシウムを分離する水処理によって得られ前記原水Aよりセシウム濃度が低減した低濃度水Bにおける放射性セシウム量を推定する放射性セシウム量の推定方法であって、
前記原水A中のセシウム量に対する前記放射性セシウム量の割合を決定する割合決定工程と、前記低濃度水Bのセシウム量を測定する低濃度水セシウム量測定工程と、該低濃度水セシウム量測定工程で測定した前記低濃度水Bのセシウム量に前記割合決定工程で決定した前記放射性セシウムの割合を乗じることにより前記低濃度水Bの放射性セシウム量を算出する低濃度水算出工程とを実施するものである。
【0022】
具体的には、斯かる放射性セシウム量の推定方法の水処理においては、例えば図1(a)に示すように、前記原水Aを貯める原水槽3と、吸着材を有する吸着部1とを用い、原水槽3から供給される原水Aを吸着部1の吸着材と接触させることにより、吸着部1の吸着材にセシウムを吸着させ、セシウムを分離する。そして、原水A中のセシウムを吸着材に吸着させた後の浄化水Xを前記低濃度水Bとして得る。
即ち、前記原水Aからセシウムを分離する水処理においては、セシウムを含む原水Aを吸着材と接触させて吸着材にセシウムを吸着させることにより前記原水Aからセシウムを分離し、前記原水Aよりセシウム濃度が低減した低濃度水Bとして、原水A中のセシウムが吸着材に吸着した後の浄化水Xを得る。
【0023】
又は、第一実施形態の放射性セシウム量の推定方法の水処理においては、例えば図1(b)に示すように、前記原水Aを貯める原水槽3と、濾過膜を有する膜分離部2とを用い、原水Aを膜分離部2の濾過膜により膜分離することによって、濾過膜を透過した透過水Yを前記低濃度水Bとして得る。
即ち、前記原水Aからセシウムを分離する水処理においては、原水槽3から供給される原水Aを膜分離部2の濾過膜により膜分離することによって前記原水Aからセシウムを分離し、低濃度水Bとして濾過膜を透過した透過水Yを得る。
【0024】
なお、膜分離部2を用いた水処理においては、濾過膜を透過した透過水Yを前記低濃度水Bとして得つつ、原水槽3から供給される原水Aを膜分離部2の濾過膜によって膜分離することにより濃縮し、濾過膜を透過しない濃縮水Zを高濃度水Cとして得ることができる。
【0025】
前記原水Aは、少なくとも放射性セシウムを含むものであれば、特に限定されるものではなく、放射性セシウムとしては、例えば、放射性セシウム134Cs、放射性セシウム137Cs等が挙げられる。
前記原水Aは、放射性セシウム134Cs又は放射性セシウム137Csのいずれか一方のみを含んでいてもよく、放射性セシウム134Cs及び放射性セシウム137Csの両方を含んでいてもよい。
なお、前記原水Aは、通常、セシウム133Csなどの非放射性セシウムをさらに含んでいる。
本明細書において、単に「セシウム」と表される用語は、セシウム133Csなどの非放射性セシウム、及び、セシウム134Csやセシウム137Csなどの放射性セシウムを包含するセシウム元素の全てを示している。
【0026】
前記原水Aとしては、具体的には例えば、原子力発電所において核分裂によって発生した放射性セシウムが水に溶解したものなどが挙げられる。また、例えば、放射性セシウムが付着した焼却灰や土壌(後述する被処理物)を水に分散させ、少なくとも放射性セシウムを水に溶出させたものなどが挙げられる。
【0027】
なお、前記水処理においては、必要に応じて、セシウムを含まない水によって原水Aを所定希釈倍率に希釈することができる。
【0028】
前記吸着部1は、前記原水Aを吸着材に接触させることにより吸着材にセシウムを吸着させ、原水A中のセシウムを吸着材に吸着させた後の浄化水Xを得るように構成されている。
【0029】
前記吸着部1における吸着材は、少なくともセシウムを吸着するものである。なお、該吸着材には、放射性セシウム及び非放射性セシウムの両方が吸着する。
該吸着材としては、具体的には例えば、陽イオンを吸着するイオン交換樹脂、ゼオライトなどの天然鉱物を含む多孔質材料、又は、フェロシアン化金属化合物などが挙げられる。
【0030】
なお、前記吸着部1としては、具体的には例えば、吸着材としてのイオン交換樹脂を有するイオン交換装置を備えたもの、吸着材としてのイオン交換膜に電圧をかけることにより原水Aからセシウムを分離するように構成された電気透析装置を備えたものなどを採用することができる。
【0031】
前記膜分離部2は、前記原水Aを濾過膜によって膜分離することにより、セシウムの濃度が原水Aより低減した透過水Yと、セシウムの濃度が原水Aより高まった濃縮水Zとを得るように構成されている。
前記濾過膜としては、より確実にセシウムを濃縮できるという点で、逆浸透膜(RO膜)が好ましい。
前記濾過膜の材質としては、酢酸セルロース、芳香族ポリアミド、ポリビニールアルコール、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレンなどを採用することができる。
前記濾過膜の形状としては、従来公知のものが挙げられ、例えば、直径数mmの中空糸状に形成されたいわゆる中空糸膜状、又は、板状の平膜状、スパイラル膜などが挙げられる。
【0032】
前記膜分離部2は、濾過膜による前記原水Aの膜分離によって、濾過膜を透過し原水Aに比べてセシウムの濃度が低減された前記低濃度水Bとしての透過水Yと、濾過膜を透過せず原水Aに比べてセシウムの濃度が高まった高濃度水Cとしての濃縮水Zとを得るように構成されている。
【0033】
以上のように、吸着材や濾過膜によって原水Aからセシウムを分離すると、それに伴って、原水Aよりセシウム濃度が低減した前記低濃度水B(浄化水X又は透過水Y)が生成することとなる。
【0034】
第一実施形態の放射性セシウム量の推定方法においては、上記のようにして得られた低濃度水Bとしての少なくとも浄化水X又は透過水Yのいずれか一方の放射性セシウム量を推定する。
【0035】
前記割合決定工程においては、下記に示す方法等によって、原水A中のセシウム量を測定し、且つ、原水A中の放射性セシウム量を測定する。そして、その結果から、原水A中のセシウム量に対する放射性セシウム量の割合を決定する。
【0036】
前記割合決定工程においては、原水A中のセシウム量を一般的な方法によって測定することができる。具体的には、例えば、誘導結合プラズマ質量分析装置(ICP−MS)によって測定することができる。
なお、斯かる方法によって求められるセシウムの量は、非放射性セシウム及び放射性セシウムを含むセシウムの量である。
【0037】
前記割合決定工程においては、原水A中の放射性セシウム量を一般的な方法によって測定することができる。具体的には、例えば、市販されているゲルマニウム半導体検出器、NaI(TI)シンチレーション検出器、GM計数管などによって測定することができる。
放射性セシウム量の測定においては、通常、比較的長い時間を要する。また、例えば、放射線の検出精度を高めるために、放射線を遮蔽する材料で被験物を覆うこと等を必要とする。また、放射性セシウム量の少ない被験物の放射性セシウム量の測定には、比較的大量の被験物を要する。このように、放射性セシウム量の測定は、比較的煩雑なものである。
【0038】
前記割合決定工程においては、上記のごとく測定した原水A中のセシウム量に対する、原水A中の放射性セシウム量の割合を計算し、該割合を決定する。
【0039】
前記低濃度水セシウム量測定工程においては、一般的な方法によって、前記水処理によって得た前記低濃度水Bのセシウム量を測定することができる。
【0040】
前記低濃度水セシウム量測定工程においてセシウム量を測定する方法としては、上述した割合決定工程においてセシウムを測定するために採用する方法と同様の方法を採用することができる。例えば、上述した誘導結合プラズマ質量分析装置(ICP−MS)を用いた方法等を採用することができる。
【0041】
前記低濃度水セシウム量測定工程においては、例えば、前記水処理によって原水Aが吸着材と接触した後に生じた浄化水X(低濃度水B)におけるセシウムの量を測定する。又は、例えば、前記水処理によって原水Aが濾過膜により膜分離され濾過膜を透過した透過水Y(低濃度水B)におけるセシウムの量を測定する。
【0042】
第一実施形態の放射性セシウム量の推定方法においては、前記低濃度水算出工程において、低濃度水セシウム量測定工程で測定した前記低濃度水Bのセシウム量に前記割合決定工程で決定した前記放射性セシウムの割合を乗じることにより前記低濃度水Bの放射性セシウム量を算出する。
即ち、前記低濃度水算出工程では、前記低濃度水Bとしての浄化水X又は透過水Yの放射性セシウム量を算出する。
【0043】
前記放射性セシウム量の推定方法によれば、前記割合決定工程において行う原水A中の放射性セシウム量の測定が、上述したように比較的煩雑であるものの、前記低濃度水セシウム量測定工程において行うセシウムの量の測定が、放射線の検出を必要としないため、簡便に行われる。即ち、放射線の検出を原水Aに対して行いさえすれば、さらなる放射線の検出をしなくとも、水処理によって得られた低濃度水Bにおける放射性セシウム量を算出することができる。
従って、前記放射性セシウム量の推定方法によれば、放射性セシウムを含む原水Aを水処理した後の低濃度水Bにおける放射性セシウム量を比較的簡便且つ比較的短時間に推定できる。
【0044】
なお、前記放射性セシウム量の推定方法を行うことによって、水処理において吸着材によって原水Aからセシウムを分離した場合、吸着材に吸着した放射性セシウム量を推定することができる。
即ち、まず、水処理において吸着材に原水Aを接触させた後に生じる浄化水X(低濃度水B)について、上述のようにして放射性セシウム量を算出する。さらに、この浄化水X(低濃度水B)の放射性セシウム量と、前記割合決定工程で測定した原水Aの放射性セシウム量との差を算出する。そして、斯かる差の量を吸着材に吸着した放射性セシウムの量として算出する。
このようにして、前記放射性セシウム量の推定方法を行うことにより、吸着材に吸着した放射性セシウム量を推定することができる。
【0045】
前記放射性セシウム量の推定方法においては、原水Aを吸着材と接触させた後に生じる浄化水Xを連続的に得るように水処理を実施し、低濃度水セシウム量測定工程において浄化水Xのセシウム量を連続的に測定することによって、浄化水Xにおける放射性セシウム量を連続的に算出できる。これにより、水処理後における浄化水Xの放射性セシウム量を連続的に推定することができる。
具体的には、前記放射性セシウム量の推定方法においては、例えば図3(a)に示すように、低濃度水B(吸着部1を経た浄化水X又は膜分離部2の分離膜を透過した透過水Y)のごく一部を連続的に取り出し、取り出した低濃度水Bのセシウム量をセシウム量測定装置4によって常時測定することにより、低濃度水セシウム量測定工程を実施することができる。
【0046】
また、前記放射性セシウム量の推定方法においては、例えば図3(b)に示すように、自動弁5などを利用して、低濃度水B(吸着部1を経た浄化水X又は膜分離部2の分離膜を透過した透過水Y)の一部を一定時間毎に取り出し、取り出した低濃度水Bのセシウム量を一定時間毎に測定することにより、低濃度水セシウム量測定工程を実施することができる。
【0047】
なお、前記放射性セシウム量の推定方法においては、図3に示すように、セシウム量測定装置4等においてセシウム量を測定した後の低濃度水Bを原水槽3における原水に戻すことができる。
【0048】
<第二実施形態>
次に、本発明に係る放射性セシウム量の推定方法の第二実施形態について、図面を参照しつつ説明する。図1(b)は、第二実施形態の放射性セシウム量の推定方法において、水処理にて用いる装置類の概略図である。
【0049】
第二実施形態の放射性セシウム量の推定方法は、セシウムとして少なくとも放射性セシウムを含む原水Aを濃縮する水処理によって得られ前記原水Aよりセシウム濃度が増大した高濃度水Cにおける放射性セシウム量を推定する放射性セシウム量の推定方法であって、
前記原水A中のセシウム量に対する前記放射性セシウム量の割合を決定する割合決定工程と、前記高濃度水Cのセシウム量を測定する高濃度水セシウム量測定工程と、該高濃度水セシウム量測定工程で測定した前記高濃度水Cのセシウム量に前記割合決定工程で決定した前記放射性セシウムの割合を乗じることにより前記高濃度水Cの放射性セシウム量を算出する高濃度水算出工程とを実施するものである。
【0050】
具体的には、第二実施形態の放射性セシウム量の推定方法の水処理においては、例えば図1(b)に示すように、前記原水Aを貯める原水槽3と、濾過膜を有する膜分離部2とを用い、原水槽3から供給される原水Aを膜分離部2の濾過膜により膜分離することによって濃縮し、濾過膜を透過しない濃縮水Zを前記高濃度水Cとして得る。
即ち、前記原水Aを濃縮する水処理においては、濾過膜を有する膜分離部2を用いて、原水Aを濾過膜によって膜分離することにより原水Aを濃縮し、前記原水Aよりセシウム濃度が増大した高濃度水Cとして、濾過膜を透過しない濃縮水Zを得る。
【0051】
前記濾過膜を用いて水処理を実施することにより、膜分離によって原水Aを濃縮して前記濃縮水Zを得つつ、膜分離によって原水Aからセシウムを分離し、濾過膜を透過した透過水Yを前記低濃度水Bとして得ることができる。
【0052】
第二実施形態の放射性セシウム量の推定方法の水処理においては、上述した原水槽3、膜分離部2を、第一実施形態における水処理と同様に用いることができる。
【0053】
第二実施形態の放射性セシウム量の推定方法においては、上記のようにして得られた高濃度水Cとしての濃縮水Zの放射性セシウム量を推定する。
【0054】
第二実施形態の放射性セシウム量の推定方法においては、第一実施形態の放射性セシウム量の推定方法と同様にして、割合決定工程を実施する。
即ち、該割合決定工程においては、原水A中のセシウム量を測定し、且つ、原水A中の放射性セシウム量を測定する。そして、その結果から、原水A中のセシウム量に対する放射性セシウム量の割合を決定する。
【0055】
前記高濃度水セシウム量測定工程においては、第一実施形態における低濃度水セシウム量測定工程における方法と同様な一般的な方法によって、前記水処理によって得た前記高濃度水Cのセシウム量を測定する。
即ち、前記高濃度水セシウム量測定工程においてセシウム量を測定する方法としては、上述した割合決定工程においてセシウムを測定するために採用する方法と同様の方法(例えば、上述した誘導結合プラズマ質量分析装置(ICP−MS)を用いた測定方法)を採用する。
【0056】
前記高濃度水セシウム量測定工程においては、例えば、前記水処理によって原水Aが濾過膜により膜分離され濾過膜を透過しない濃縮水Z(高濃度水C)におけるセシウムの量を測定する。
【0057】
第二実施形態の放射性セシウム量の推定方法においては、高濃度水算出工程において、高濃度水セシウム量測定工程で測定した前記高濃度水Cのセシウム量に前記割合決定工程で決定した前記放射性セシウムの割合を乗じることにより前記高濃度水Cの放射性セシウム量を算出する。
即ち、前記高濃度水算出工程では、前記高濃度水Cとしての前記濃縮水Zの放射性セシウム量を算出する。
【0058】
第二実施形態の放射性セシウム量の推定方法においては、上述した第一実施形態における方法(図3参照)と同様に、濾過膜による膜分離によって、濾過膜を透過しない濃縮水Zを連続的に得るように水処理を実施し、高濃度水セシウム量測定工程において濃縮水Zのセシウム量を連続的に測定することによって、濃縮水Zにおける放射性セシウム量を連続的に算出できる。これにより、水処理後における濃縮水Zの放射性セシウム量を連続的に推定することができる。
【0059】
なお、第二実施形態の放射性セシウム量の推定方法においては、前記原水Aを濃縮する水処理において、原水Aから水分を揮発させることによっても、原水Aを濃縮することができる。
【0060】
<第三実施形態>
第三実施形態の放射性セシウム量の推定方法は、セシウムとして少なくとも放射性セシウムを含む被処理物中のセシウムを溶出させた原水からセシウムを分離する水処理によって得られ前記原水よりセシウム濃度が低減した低濃度水における放射性セシウム量を推定する放射性セシウム量の推定方法であって、
前記被処理物中のセシウム量に対する前記放射性セシウム量の割合を確認する割合確認工程と、前記低濃度水のセシウム量を測定する低濃度水セシウム量測定工程と、該低濃度水セシウム量測定工程で測定した前記低濃度水のセシウム量に前記割合確認工程で確認した前記放射性セシウムの割合を乗じることにより前記低濃度水の放射性セシウム量を算出する低濃度水算出工程とを実施するものである。
【0061】
第三実施形態の放射性セシウム量の推定方法においては、前記割合確認工程を、前記被処理物中の放射性セシウム量を測定し、且つ、前記被処理物中のセシウム量を測定し、それらの測定結果から、被処理物中のセシウム量に対する放射性セシウム量の割合を確認することにより実施する。
【0062】
前記被処理物は放射性セシウムを含んだ固体状のものである。前記被処理物としては、具体的には、例えば、土壌や灰などが挙げられる。
【0063】
前記割合確認工程においては、被処理物中の放射性セシウム量を、例えば、上述したゲルマニウム半導体検出器、又は、NaI(TI)シンチレーション検出器を用いることにより直接的に測定する。即ち、前記割合確認工程においては、例えば、被処理物から放射される放射線の検出を上記のような検出器を用いて行う。
また、前記割合確認工程においては、被処理物中のセシウム量を、例えば、以下の方法によって測定する。即ち、前記割合確認工程においては、被処理物中のセシウムを水(酸性水等)に溶出させることにより原水Aを調製し、該原水A中のセシウム量を、上述した誘導結合プラズマ質量分析装置(ICP−MS)などによって測定する。
このように、前記割合確認工程においては、例えば、被処理物中の放射性セシウム量を測定し、且つ、被処理物中のセシウムを水、又は酸性水に溶解させた原水Aのセシウム量を測定する。そして、両者の測定結果から、被処理物中のセシウム量に対する放射性セシウム量の割合を確認することができる。
【0064】
第三実施形態の放射性セシウム量の推定方法においては、第一実施形態の放射性セシウム量の推定方法と同様にして、水処理を行い、また、前記低濃度水セシウム量測定工程と、前記低濃度水算出工程とを実施する。
【0065】
<第四実施形態>
第四実施形態の放射性セシウム量の推定方法は、セシウムとして少なくとも放射性セシウムを含む被処理物中のセシウムを溶出させた原水を濃縮する水処理によって得られ前記原水よりセシウム濃度が増大した高濃度水における放射性セシウム量を推定する放射性セシウム量の推定方法であって、
前記被処理物中のセシウム量に対する前記放射性セシウム量の割合を確認する割合確認工程と、前記高濃度水のセシウム量を測定する高濃度水セシウム量測定工程と、該高濃度水セシウム量測定工程で測定した前記高濃度水のセシウム量に前記割合確認工程で確認した前記放射性セシウムの割合を乗じることにより前記高濃度水の放射性セシウム量を算出する高濃度水算出工程とを実施するものである。
【0066】
第四実施形態の放射性セシウム量の推定方法においては、第三実施形態の放射性セシウム量の推定方法における割合確認工程と同様にして、割合確認工程を実施する。
また、第四実施形態の放射性セシウム量の推定方法においては、第二実施形態の放射性セシウム量の推定方法と同様にして、水処理を行い、前記高濃度水セシウム量測定工程と、前記高濃度水算出工程とを実施する。
【0067】
上述した実施形態の放射性セシウム量の推定方法は、上記例示の通りであるが、本発明は、上記例示の放射性セシウム量の推定方法に限定されるものではない。
また、一般の放射性セシウム量の推定方法において用いられる種々の態様を、本発明の効果を損ねない範囲において、採用することができる。
【実施例】
【0068】
次に実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0069】
下記に示すようにして、放射性セシウムを含む原水を水処理し、水処理することによりセシウム濃度が増大した高濃度又は低減した低濃度水の少なくとも一方を得て、斯かる水における放射性セシウム量を推定した。
【0070】
(試験例1)
表1に示す成分を含有する原水を用意し、下記のようにして放射性セシウム量の推定方法を実施した。
[原水]
原水1:関東地方の一般廃棄物最終処分場の浸出水
[吸着材]
ゼオライト(新東北化学工業社製)0.6kg 粒子状
[全セシウム量の測定方法]
誘導結合プラズマ質量分析装置(ICP−MS)(Agilent Tec.Inc.社製 製品名「Agilent7500ce」)を用いて測定した。
[放射性セシウム量の測定方法]
ゲルマニウム半導体検出器(セイコー・イージーアンドジー社製 製品名「SEG−EMS」)を用いて測定した。測定には、2500秒を要した。
[割合決定工程]
原水における全セシウム量と、放射性セシウム量とをそれぞれ上記の機器を用いて測定し、表1に示すように、原水における全セシウム量に対する放射性セシウム量の割合を決定した。なお、表1におけるBqは、ベクレルを表す。
[水処理]
原水を上記の吸着材と接触させるべく、2.6L/hの通水条件下で原水を吸着材に通水した。そして、原水中のセシウムを吸着材に吸着させつつ、セシウムを吸着させた後の浄化水(低濃度水)を回収した。この水処理を3.5日間継続した。
[低濃度水セシウム量測定工程]
セシウムを吸着させた後の浄化水におけるセシウム量を上記の測定機器を用いて測定した。
[放射性セシウム量の算出(低濃度水算出工程)]
上記の低濃度水セシウム量測定工程で測定したセシウム量に、表1に示した放射性セシウムの割合を乗じて、セシウムを吸着させた後の浄化水における放射性セシウム量を算出した。
【0071】
【表1】
【0072】
表1に示すように、全セシウム量に対する放射性セシウム量の割合は、実測値において、原水及び浄化水(低濃度水)ともにほぼ同じであった。原水における全Cs濃度が0.40であるのに対し、浄化水における全Cs濃度が半分の0.2になっていることから、浄化水における放射性Cs濃度は、原水における放射性Cs濃度(28.2Bq/L)の半分の14.1Bq/Lになると予測できる。浄化水における放射性Cs濃度の実測値は、15.1Bq/Lであることから、推定値と実測値とがほぼ同じであることが把握できる。
【0073】
(試験例2)
表2に示す成分を含有する原水を用意し、図2に示す装置を用いて、下記のようにして放射性セシウム量の推定方法を実施した。
[原水]
原水2:関東地方の一般廃棄物最終処分場浸出水
[濾過膜(膜分離部)]
第1膜分離部:DTモジュール(日本ポール社製)内部に逆浸透膜を有する
第2膜分離部:DTモジュール(日本ポール社製)内部に逆浸透膜を有する
[全セシウム量の測定方法]
誘導結合プラズマ質量分析装置(ICP−MS)(Agilent Tec.Inc.社製 製品名「Agilent7500ce」)を用いて測定した。
[放射性セシウム量の測定方法]
ゲルマニウム半導体検出器(セイコー・イージーアンドジー社製 製品名「SEG−EMS」)を用いて測定した。測定には、2500秒を要した。
[割合決定工程]
原水における全セシウム量と、放射性セシウム量とをそれぞれ上記の機器を用いて測定し、表2に示すように、原水における全セシウム量に対する放射性セシウム量の割合を決定した。なお、表2におけるBqは、ベクレルを表す。
[水処理]
図2に示すように原水を水処理するための装置類を配置し、原水を第1膜分離部2’及び第2膜分離部2”によって膜分離した。原水は、約15日の間隔をあけて、4回にわたって供給した。
なお、回収率は、 第1膜分離部2’において80%であり、第2膜分離部2”において、90%であり、全体で72%であった。
[高濃度水セシウム量測定工程]
第1膜分離部2’及び第2膜分離部2”における、それぞれの濃縮水(Z’,Z”)のセシウム量を上記の測定機器を用いて測定した。透過水(Y’,Y”)については、低濃度水セシウム量測定工程を実施してセシウム量を測定したが、セシウム量が検出限界以下であった。
[放射性セシウム量の算出(高濃度水算出工程)]
上記のセシウム量測定工程で測定したセシウム量に、表2に示した放射性セシウムの割合を乗じて、第1膜分離部2’の濃縮水及び第2膜分離部2”の濃縮水における放射性セシウム量を算出した。
【0074】
【表2】
【0075】
第1膜分離部及び第2膜分離部それぞれの濃縮水について、上記のようにして推定した放射性セシウム量を表3に示す。なお、第1膜分離部及び第2膜分離部の透過水については、セシウム量が検出限界以下であったため、推定結果を記載していない。また、比較のために、各濃縮水における放射性セシウム量を測定した結果(測定値)も示す。
【0076】
【表3】
【0077】
表3から把握できるように、濃縮水における放射性Cs濃度の推定値は、全て、濃縮水における放射性Cs濃度の実測値の±10%程度の範囲内であった。
【0078】
表3から把握できるように、本発明の放射性セシウム量の推定方法によれば、濾過膜によって膜分離した後の水における放射性セシウムの量を正確且つ簡便に推定することができる。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明の放射性セシウム量の推定方法は、例えば、人体に悪影響を及ぼしうる放射性セシウムを含有する水から放射性セシウムを取り除くための水処理において、水処理後における放射性セシウムの量を管理及び制御するために、好適に使用される。
【符号の説明】
【0080】
1:吸着部
2:膜分離部、
3:原水槽、
A:原水、
B:低濃度水(X:浄化水、Y:透過水)、
C:高濃度水(Z:濃縮水)。
図1
図2
図3