特許第5750414号(P5750414)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5750414
(24)【登録日】2015年5月22日
(45)【発行日】2015年7月22日
(54)【発明の名称】インクジェットヘッド駆動装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/015 20060101AFI20150702BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20150702BHJP
【FI】
   B41J2/015 101
   B41J2/01 401
【請求項の数】9
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2012-186373(P2012-186373)
(22)【出願日】2012年8月27日
(65)【公開番号】特開2014-43041(P2014-43041A)
(43)【公開日】2014年3月13日
【審査請求日】2013年5月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003562
【氏名又は名称】東芝テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100109830
【弁理士】
【氏名又は名称】福原 淑弘
(74)【代理人】
【識別番号】100088683
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100075672
【弁理士】
【氏名又は名称】峰 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140176
【弁理士】
【氏名又は名称】砂川 克
(74)【代理人】
【識別番号】100158805
【弁理士】
【氏名又は名称】井関 守三
(74)【代理人】
【識別番号】100172580
【弁理士】
【氏名又は名称】赤穂 隆雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100124394
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 立志
(74)【代理人】
【識別番号】100112807
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 貴志
(74)【代理人】
【識別番号】100111073
【弁理士】
【氏名又は名称】堀内 美保子
(72)【発明者】
【氏名】仁田 昇
(72)【発明者】
【氏名】日吉 光幸
(72)【発明者】
【氏名】木村 守
(72)【発明者】
【氏名】吉丸 朝久
【審査官】 小澤 尚由
(56)【参考文献】
【文献】 特開平03−221459(JP,A)
【文献】 特開平06−023989(JP,A)
【文献】 特開平06−031919(JP,A)
【文献】 特開2011−079294(JP,A)
【文献】 特開2012−066414(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01−2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の吐出チャネルを有するインクジェットヘッドの駆動装置において、
前記複数の吐出チャネルに対応して設けられ、印刷データと補正データとをそれぞれ入力し、この入力された印刷データを基に前記吐出チャネルの駆動信号を生成し、この駆動信号の波形を前記入力された補正データで補正した後、対応する前記吐出チャネルに出力する複数の駆動波形発生部と、
乱数を発生する乱数発生部と、
前記乱数発生部から発生される乱数が、前記駆動波形発生部毎に独立した値の補正データとして前記各駆動波形発生部に供給されるように前記乱数発生部と前記各駆動波形発生部とを接続する接続手段と、を具備したことを特徴とするインクジェットヘッド駆動装置。
【請求項2】
前記乱数発生部は、複数ビットからなる乱数を発生するものであり、
前記接続手段は、前記各駆動波形発生部における補正データ入力の同じ重みのビットに、前記乱数の同じビットが重複しないように前記乱数発生部と前記各駆動波形発生部とを接続することを特徴とする請求項1記載のインクジェットヘッド駆動装置。
【請求項3】
前記乱数発生部は、前記各駆動波形発生部における補正データ入力のビット総数よりも少ない数の複数ビットからなる乱数を生成するものであり、
前記接続手段は、前記乱数の同じビットが、少なくとも2つの前記駆動波形発生部における補正データ入力の異なる重みのビットに供給されるように前記乱数発生部と前記各駆動波形発生部とを接続することを特徴とする請求項2記載のインクジェットヘッド駆動装置。
【請求項4】
前記乱数発生部は、前記各駆動波形発生部における補正データ入力のビット総数以上の複数ビットからなる乱数を生成するものであり、
前記接続手段は、前記各駆動波形発生部における全ての補正データ入力に対し、前記乱数の異なるビットがそれぞれ供給されるように前記乱数発生部と前記各駆動波形発生部とを接続することを特徴とする請求項2記載のインクジェットヘッド駆動装置。
【請求項5】
前記乱数発生部は、複数ビットからなる乱数を発生する乱数発生回路を前記各駆動波形発生部に対応させて複数備え、
前記接続手段は、前記各乱数生成回路と当該回路に対応する前記駆動波形発生部との間を、前記乱数生成回路で生成される乱数の複数ビットが前記駆動波形発生部の補正データ入力に供給されるように接続することを特徴とする請求項2記載のインクジェットヘッド駆動装置。
【請求項6】
前記乱数発生部は、M系列パルスを生成する線形帰還レジスタであることを特徴とする請求項2記載のインクジェットヘッド駆動装置。
【請求項7】
前記線形帰還レジスタによって生成されるM系列パルスのmビット乱数のうち上位k(0<k<m)ビットが全てゼロになると検出信号を出力するゼロ検出部と、
前記検出信号を受信したことに応じて前記線形帰還レジスタを前記kビット以上シフトさせるシフト制御部と、
をさらに具備したことを特徴とする請求項6記載のインクジェットヘッド駆動装置。
【請求項8】
インクジェットヘッドが有する複数の吐出チャネルを2以上のグループに分割し、同じグループに属する前記吐出チャネルを同時に駆動するインクジェットヘッド駆動装置において、
前記複数の吐出チャネルのうちいずれか1つのグループに属する複数の吐出チャネルに対応して設けられ、印刷データと補正データとをそれぞれ入力し、この入力された印刷データを基に前記吐出チャネルの駆動信号を生成し、この駆動信号の波形を前記入力された補正データで補正した後、対応する前記吐出チャネル及び当該吐出チャネルに隣接する他グループの吐出チャネルに出力する複数の駆動波形発生部と、
乱数を発生する乱数発生部と、
前記乱数発生部から発生される乱数の値が、前記駆動波形発生部毎に独立した値の補正データとして前記各駆動波形発生部に供給されるように前記乱数発生部と前記各駆動波形発生部とを接続する接続手段と、
同時に駆動する前記吐出チャネルのグループが切り替わる毎に、前記乱数発生部で発生される乱数を更新する乱数更新手段と、を具備したことを特徴とするインクジェットヘッド駆動装置。
【請求項9】
前記各駆動波形発生部にそれぞれ対応して設けられ、前記乱数発生部から前記各駆動波形発生部にそれぞれ供給される補正データに、前記吐出チャネルに関わる第2の補正データを加算する複数の加算手段、をさらに具備し、
前記各加算手段により加算された補正データ加算値を、それぞれ対応する前記各駆動波形発生部の補正データとして供給することを特徴とする請求項1記載のインクジェットヘッド駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、インクジェット記録装置等に用いられるインクジェットヘッドの駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複数のノズルを有し、各ノズルからインクを吐出してドットを形成するインクジェットヘッドにおいて、各ノズルから吐出されるインクの量は、均一であることが求められている。しかしながら、複数のノズル間で吐出されるインクの量にばらつきを生じることがある。また、同じノズルでも直前に吐出したインクと次に吐出するインクとの間でインク量にばらつきを生じることがある。
【0003】
たとえ僅かであってもノズルから吐出されるインク量にばらつきがあると、一様な色であるべき部分に濃度ムラや色ムラができる。ムラの目立たない印刷結果を得るためには、ドット形成に関わるノズルの各要素が極めて均一である必要がある。しかしそのためには、非常に高い加工精度が要求されるため、製品コストが上昇する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−254412号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、コストを抑えつつノズルから吐出されるインク量のばらつきに起因する印刷のムラを目立たなくして、品質に対するユーザの満足度を高め得るインクジェットヘッド駆動装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一実施形態において、複数の吐出チャネルを有するインクジェットヘッドの駆動装置は、複数の吐出チャネルに対応して設けられる複数の駆動波形発生部と、乱数を発生する乱数発生部と、接続手段とを備える。各駆動波形発生部は、印刷データと補正データとをそれぞれ入力し、この入力された印刷データを基に吐出チャネルの駆動信号を生成し、この駆動信号の波形を入力された補正データで補正した後、対応する吐出チャネルに出力する。出力手段は、乱数発生部から発生される乱数が、駆動波形発生部毎に独立した値の補正データとして各駆動波形発生部に供給されるように乱数発生部と各駆動波形発生部とを接続する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1の実施形態のインクジェットヘッド駆動装置を含むインクジェット記録装置のハードウェア構成を示すブロック図。
図2】同実施形態のインクジェット駆動装置が備える駆動波形発生回路の一例を示す図。
図3】同実施形態のインクジェット駆動装置が備える駆動波形発生回路の他の例を示す図。
図4】同実施形態のインクジェット駆動装置が備える乱数発生部の一例を示す図。
図5】同乱数発生部を構成する線形帰還シフトレジスタの回路構成図。
図6】同実施形態のインクジェット駆動装置が備えるパラメータ格納部の要部構成図。
図7】3つのインクジェットヘッドを使用するインクジェット記録装置のヘッド配置パターンの一例を示す模式図。
図8】2つのインクジェットヘッドを使用するインクジェット記録装置のヘッド配置パターンの一例を示す模式図。
図9】2つのインクジェットヘッドを使用するインクジェット記録装置のヘッド配置パターンの他の例を示す模式図。
図10】4つのインクジェットヘッドを使用するインクジェット記録装置のヘッド配置パターンの一例を示す模式図。
図11】インクジェットヘッドの一部を分解して示す斜視図。
図12】同インクジェットヘッドの前方部における横断面図。
図13】同インクジェットヘッドの前方部における縦断面図。
図14】同インクジェットヘッドの動作原理説明に用いる模式図。
図15】同インクジェットヘッドのインク吐出ノズルに印加される駆動パルス信号の通電波形図。
図16】第2の実施形態の要部構成図。
図17】第3の実施形態の要部構成図。
図18】第4の実施形態の要部構成図。
図19】第5の実施形態の要部構成図。
図20】第6の実施形態の要部構成図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、インクジェットヘッド駆動装置の実施形態について、図面を用いて説明する。なお、この実施形態は、複数のインクジェットヘッドを備えたインクジェット記録装置に適用した場合である。
【0009】
(第1の実施形態)
[インクジェットヘッドについて]
はじめに、この種のインクジェット記録装置で使用されるインクジェットヘッドについて、図7図15を用いて説明する。
図7図10は、インクジェット記録装置が有する複数のインクジェットヘッド1の配置パターン例であり、図7は、3つのインクジェットヘッド1a,1b,1cを使用する例、図8及び図9は、2つのインクジェットヘッド1d,1eを使用する例、図10は、4つのインクジェットヘッド1f,1g,1h,1iを使用する例である。各インクジェットヘッド1a〜1iは、長さ、ノズル数及びノズルピッチが全て同一である。
【0010】
図7は、印刷用紙2の幅に対してインクジェットヘッド1a,1b.1cの長さが短いときの配置パターン例である。この例では、印刷用紙2の送り方向Aと直交する用紙幅方向にノズルの配列方向を一致させた3つのインクジェットヘッド1a,1b.1cを、用紙幅方向に連なるように配置している。
【0011】
図7に示すように、左側に位置する第1のインクジェットヘッド1aの末端部(右端)と中央に位置する第2のインクジェットヘッド1bの先端部(左端)とはオーバーラップしている。同様に、第2のインクジェットヘッド1bの末端部と右側に位置する第3のインクジェットヘッド1cの先端部とはオーバーラップしている。このように各インクジェットヘッド1a,1b.1cの端部をオーバーラップさせることによって、一方のヘッドの末端側に位置するノズルと他方のヘッドの先端側に位置するノズルとの間隔を、インクジェットヘッド1a,1b.1cのノズルピッチと一致させている。このような配置パターンを採用することにより、インクジェットヘッド1a,1b.1cの長さよりも長い幅の印刷用紙2に対してライン印刷を行うことができる。
【0012】
図8及び図9は、印刷用紙2の幅に対してインクジェットヘッド1d,1eの長さが略等しいときの配置パターン例である。図8及び図9の例では、いずれも印刷用紙2の送り方向Aと直交する用紙幅方向にノズルの配列方向を一致させた2つのインクジェットヘッド1d,1eを、前記送り方向Aに所定の間隔をあけて配置している。
【0013】
そして図8の例では、前記送り方向Aの後方に位置する一方のインクジェットヘッド1dに対し、前方に位置する他方のインクジェットヘッド1eを、ノズルピッチの半分の長さだけノズル配列方向にずらしている。このような配置パターンを採用することにより、ひとつのインクジェットヘッド1d,1eの2倍の解像度で印刷を行うことができる。
【0014】
これに対し、図9の例では、2つのインクジェットヘッド1d,1eの前記送り方向に対する各ノズルの位置を一致させている。このような配置パターンを採用することにより、ひとつのインクジェットヘッド1d,1eの2倍の濃度で印刷を行うことができる。若しくは、ひとつのインクジェットヘッド1d,1eと同じ濃度であれば2倍の速度で印刷を行うことができる。
【0015】
図10は、印刷用紙2の幅と略等しい長さの4つのインクジェットヘッド1f,1g,1h,1iで異なる色(シアン、マゼンタ、イエロー、ブラック)のインクを吐出させて、カラー印刷を行うときの配置パターン例である。図10の例では、印刷用紙2の送り方向Aと直交する用紙幅方向にノズルの配列方向を一致させた4つのインクジェットヘッド1f,1g,1h,1iを、ノズルの配列方向に対して直交する方向に所定の間隔をあけて配置している。前記送り方向Aに対する各インクジェットヘッド1f,1g,1h,1iの各ノズルの位置は一致している。このような配置パターンを採用することにより、同一の場所にシアン、マゼンタ、イエロー及びブラックの各色のドットが印刷され混ぜ合わされて、カラー印刷を行うことができる。
【0016】
図11図13は、ひとつのインクジェットヘッド1(1a〜1i)の要部構造図であり、図11は、インクジェットヘッド1の一部を分解して示す斜視図、図12は、同ヘッド1の前方部における横断面図、図13は、同ヘッド1の前方部における縦断面図である。
【0017】
インクジェットヘッド1は、ベース基板11の前方側の上面に第1の圧電部材12を接合し、この第1の圧電部材12の上に第2の圧電部材13を接合する。第1の圧電部材12と第2の圧電部材13とは、図12の矢印で示すように、板厚方向に沿って互いに相反する方向に分極して接合される。
【0018】
インクジェットヘッド1は、接合された圧電部材12,13の先端側から後端側に向けて多数の長尺な溝18を設ける。各溝18は、間隔が一定でありかつ平行である。また各溝18は、先端が開口し、後端が上方に斜傾する。
【0019】
インクジェットヘッド1は、各溝18の隔壁及び底面に電極19を設ける。さらにインクジェットヘッド1は、各溝18の後端から第2の圧電部材13の後部上面に向けて、電極19から延出された引出し電極20を設ける。
【0020】
インクジェットヘッド1は、各溝18の上部を天板14で塞ぎ、各溝18の先端をオリフィスプレート15で塞ぐ。天板14は、その内側後方に共通インク室21を備える。
【0021】
インクジェットヘッド1は、天板14とオリフィスプレート15とで囲まれた各溝18によって、インクの吐出を行うノズル22を形成する。ノズル22は、インク室とも称される。インクジェットヘッド1は、オリフィスプレート15の各溝18と対向する位置にインク吐出口23を開ける。
【0022】
インクジェットヘッド1は、ベース基板11の後方側の上面に、導電パターン24が形成されたプリント基板25を接合し、このプリント基板25の上に、後述するインクジェットヘッド駆動装置30(図1を参照)を実装したドライブIC26を搭載する。ドライブIC26は、導電パターン24に接続する。導電パターン24は、各引出し電極20とワイヤボンディングにより導線27で結合する。
【0023】
図14及び図15は、インクジェットヘッド1の動作原理説明図である。
図14の(a)は、中央のノズル22aとこのノズル22aに隣接する両隣のノズル22b,72cとの各電極19が、いずれも接地電位の状態を示す。この状態では、ノズル22aとノズル22b及びノズル22aとノズル22cとで挟まれた圧電部材12,13からなる隔壁(アクチュエータ)28a,28bは、何ら歪み作用を受けない。
【0024】
図14の(b)は、中央のノズル22aの電極19に負電圧(−Vs)が印加された状態を示す。なお、両隣のノズル22b,22cの電極19はいずれも接地電位である。この状態では、各隔壁28a,28bに、圧電部材12,13の分極方向と直交する方向に電界が作用する。この作用により、各隔壁28a,28bは、ノズル22aの容積を拡大するようにそれぞれ外側に変形する。
【0025】
図14の(c)は、中央のノズル22aの電極19に正電圧(+Vs)が印加された状態を示す。なお、両隣のノズル22b,22cの電極19はいずれも接地電位である。この状態では、各隔壁28a,28bに、圧電部材12,13の分極方向と直交する方向で図14(b)のときとは逆の方向に電界が作用する。この作用により、各隔壁28a,28bは、ノズル22aの容積を収縮するようにそれぞれ内側に変形する。
【0026】
図15は、中央のノズル22aからインク液滴を吐出するために、ノズル22aの電極19に印加される駆動パルス信号DPの通電波形を示す。時間Ttによって示される区間は、インク液滴(1ドロップ)の吐出に必要な時間であり、この時間(1ドロップ周期と称する)Ttは、準備区間の時間T1、吐出区間の時間T2及び後処理区間の時間T3に区分される。さらに、準備時間T1は、定常区間の時間Taと拡大区間の時間(T1−Ta)とに細分化され、吐出区間の時間T2は、維持区間の時間Tbと復元区間の時間(T2−Tb)とに細分化される。準備時間T1、吐出時間T2及び後処理時間T3は、使用するインクや温度等の条件により、適切な値に設定される。
【0027】
図15に示すように、インクジェットヘッド駆動装置30は、先ず、時点t0において、ノズル22a,22b,22cに対応した各電極19にそれぞれ0ボルトの電圧を印加する。そして、定常時間Taが経過するのを待機する。この間、各ノズル22a,22b,22cは、図14の(a)の状態となる。
【0028】
定常時間Taが経過して時点t1になると、インクジェットヘッド駆動装置30は、ノズル22aに対応した電極19に所定の負電圧(−Vs)を印加する。そして、準備時間T1が経過するのを待機する。負電圧(−Vs)が印加されると、ノズル22aの両側の隔壁28a,28bが、ノズル22aの容積を拡大するようにそれぞれ外側に変形して、図14の(b)の状態となる。この変形により、ノズル22a内の圧力が低下する。このため、共通インク室21からノズル22a内にインクが流れ込む。
【0029】
準備時間T1が経過して時点t2になると、インクジェットヘッド駆動装置30は、さらに維持時間Tbが経過するまで、ノズル22aに対応した電極19に負電圧(−Vs)を印加し続ける。この間、各ノズル22a,22b,22cは、図14の(b)の状態を維持する。
【0030】
維持時間Tbが経過して時点t3になると、インクジェットヘッド駆動装置30は、ノズル22aに対応した電極19に印加する電圧を0ボルトに戻す。そして、吐出時間T2が経過するのを待機する。印加電圧が0ボルトになると、ノズル22aの両側の隔壁28a,28bが定常状態に復元されて、図14の(a)の状態に戻る。この復元により、ノズル22a内の圧力が増大する。このため、ノズル22aに対応したインク吐出口23からインク液滴が吐出する。
【0031】
吐出時間T2が経過して時点t4になると、インクジェットヘッド駆動装置30は、ノズル22aに対応した電極19に所定の正電圧(+Vs)を印加する。そして、後処理時間T3が経過するのを待機する。正電圧(+Vs)が印加されると、ノズル22aの両側の隔壁28a,28bが、ノズル22aの容積を収縮するようにそれぞれ内側に変形して、図14の(c)の状態となる。この変形により、ノズル22a内の圧力がさらに増大する。このため、インク液滴の吐出によりノズル22a内に生じる急激な圧力低下が緩和される。
【0032】
後処理時間T3が経過して時点t5になると、インクジェットヘッド駆動装置30は、ノズル22aに対応した電極19に印加する電圧を再度0ボルトに戻す。印加電圧が0ボルトに戻されたことに応じて、ノズル22aの両側の隔壁28a,28bが定常状態に復元される。すなわち、各ノズル22a,22b,22cは、図14の(a)の状態に戻る。
【0033】
インクジェットヘッド駆動装置30は、図15に示した通電波形の駆動パルス信号DPを、中央のノズル22aの電極19に供給する。そうすると、このノズル22aに対応したインク吐出口23から1ドロップのインク液滴が吐出される。
【0034】
[インクジェットヘッド駆動装置の全体について]
次に、インクジェットヘッド駆動装置30の構成について、図1図6を用いて説明する。
図1は、インクジェットヘッド駆動装置30を含むインクジェット記録装置のハードウェア構成を示すブロック図である。インクジェット記録装置は、複数のインクジェットヘッド1(1a,1b,…)と、各インクジェットヘッド1に1対1で対応して設けられた複数のインクジェットヘッド駆動装置30(30a,30b,…)と、各インクジェットヘッド駆動装置30を一元的に制御する印刷制御部40とを備える。
【0035】
インクジェットヘッド1において、ch.1,ch.2,…,ch.Nは、吐出チャネルを示す。各吐出チャネルch.1,ch.2,…,ch.Nは、インクジェットヘッド1が有する各ノズル22に1対1で対応する。
【0036】
印刷制御部40は、各インクジェットヘッド駆動装置30と信号線41によってそれぞれ結ばれる。印刷制御部40は、信号線41を介して、各インクジェットヘッド駆動装置30に印刷データD1〜DNと制御パラメータCPとを送信する。印刷データD1〜DNと制御パラメータCPは、一本の物理配線に時分割多重化して送信してもよいし、複数の物理配線を利用して同時に送信してもよい。
【0037】
印刷データD1〜DNは、1ドロップ周期毎の各吐出チャネルch.1〜cn.Nからのドットの有無またはドットの濃度を表わすデータであり、インクジェットヘッド1の各吐出チャネルch.1〜cn.Nに対応する。すなわち印刷データD1〜DNは、吐出チャネルch.1〜cn.N毎に独立した情報であり、各吐出チャネルch.1〜cn.Nの並び方向(空間方向と称する)に沿う向きの各ドットの情報と、上記空間方向と直交する方向(時間方向と称する)に沿う向きの各ドットの情報とを有する。
【0038】
制御パラメータCPは、印刷を行うために必要な設定情報であり、例えば前記駆動パルス信号の通電波形に関する情報(基本駆動波形設定値SE)や、インク吐出のタイミングを与えるトリガ、例えばファイア信号またはイネーブル信号等と呼ばれる起動信号STを含む。また、インクジェットヘッド1の動作に必要な各種のパラメータP1〜Pxや、後述する乱数初期値データRDを含む。制御パラメータCPは、一般には、複数の吐出チャネルch.1〜cn.Nに共通の情報である。
【0039】
インクジェットヘッド駆動装置30は、対応するインクジェットヘッド1の各吐出チャネルch.1〜ch.Nに1対1で対応して設けられるN個の駆動波形発生回路31-1〜31-Nと、データ受信部32と、パラメータ格納部33と、乱数発生部34Aとを含む。
【0040】
データ受信部32は、印刷制御部40から送信されるデータを受信し、印刷データD1〜DNと制御パラメータCPとに分けて処理する。印刷データD1〜DNは、対応する吐出チャネルの駆動波形発生回路31-1〜31-Nにパラレルに出力される。制御パラメータCPは、起動信号STを除き、パラメータ格納部CPにまとめて出力される。起動信号STは、各駆動波形発生回路31-1〜31-Nと乱数発生部34Aとに出力される。
【0041】
[インクジェットヘッド駆動装置の駆動波形発生回路について]
各駆動波形発生回路31-1〜31-Nは、それぞれ図2に示すように、印刷データD1〜DNと、基本駆動波形設定値SEと、起動信号STと、補正データR1〜RNとを入力する。印刷データD1〜DNと起動信号STとは、データ受信部32から与えられる。基本駆動波形設定値SEは、パラメータ格納部33から与えられる。補正データR1〜RNは、乱数発生部34Aから与えられる。
【0042】
基本駆動波形設定値SEは、各駆動波形発生回路31-1〜31-Nからそれぞれ対応する吐出チャネルch.1〜cn.Nに供給される駆動パルス信号DP1〜DPNの各種時間(Ta,T1−Ta,Tb,T2−Tb,T3)を定める情報である。さらに、吐出チャネルch.1〜cn.Nに対してアクチュエータとなる各隔壁28a,28bの変形量や変形速度を定める情報を含んでいてもよい。
【0043】
印刷データD1〜DNは、各駆動波形発生回路31-1〜31-Nからそれぞれ対応する吐出チャネルch.1〜ch.Nに対して、駆動パルス信号DP1〜DPNを連続して何回出力するかを定める情報である。出力回数は、合体してひとつのドットを形成するサブドロップのインク滴数を意味する。このため、駆動パルス信号DP1〜DPNの出力回数が、ドットの濃度に対応する。出力回数が“0”のときには、ドットが形成されない。因みに、ひとつひとつのドットが階調を持たない場合には、印刷データD1〜DNは、“1”と“0”だけでよい。
【0044】
補正データR1〜RNは、駆動波形発生回路31毎に独立した値であり、駆動パルス信号DP1〜DPNにおけるインク充填時間(T1−Ta)の補正値として各駆動波形発生回路31-1〜31-Nにそれぞれ与えられる。この補正データR1〜RNによりインク充填時間(T1−Ta)が補正されることで、サブドロップの大きさが可変する。
【0045】
なお、インク充填時間(T1−Ta)を補正する代わりに、駆動パルス信号DP1〜DPNの振幅を補正してもよい。駆動パルス信号DP1〜DPNの振幅を補正しても、サブドロップの大きさが可変する。
【0046】
各駆動波形発生回路31-1〜31-Nは、起動信号STをトリガとして、基本駆動波形設定値SEを基に駆動パルス信号DP1〜DPNの基本駆動波形を生成する。そして各駆動波形発生回路31-1〜31-Nは、印刷データD1〜DN及び補正データR1〜RNにしたがって上記基本駆動波形を変化させて、対応する吐出チャネルch.1〜ch.Nへの駆動パルス信号DP1〜DPNを生成する。生成された駆動パルス信号DP1〜DPNは、各駆動波形発生回路31-1〜31-Nから吐出チャネルch.1〜ch.Nの電極19に与えられる。これにより、各吐出チャネルch.1〜ch.Nにそれぞれ対応したアクチュエータが選択的に作動して、任意の吐出チャネルch.1〜ch.Nからインク滴が吐出され、印刷が行われる。
【0047】
なお、図2では、各駆動波形発生回路31-1〜31-Nが各吐出チャネルch.1〜cn.N毎に独立して設ける場合を例示した。各駆動波形発生回路31-1〜31-Nは、図3に示すように、吐出チャネルch.1〜cn.N毎の個別駆動波形発生回路311-1〜311-Nと、各個別駆動波形発生回路311-1〜311-Nに対して共通の基本駆動波形発生回路312とに分けて構成することもできる。
【0048】
基本駆動波形発生回路312は、起動信号STと基本駆動波形設定値SEとを入力する。基本駆動波形発生回路312は、起動信号STが入力されると、基本駆動波形設定値SEを基に駆動パルス信号DP1〜DPNの基本駆動波形を生成する。そして基本駆動波形発生回路312は、この基本駆動波形の信号を基本駆動波形信号BDWとして各個別駆動波形発生回路311-1〜311-Nに出力する。
【0049】
各個別駆動波形発生回路311-1〜311-Nは、基本駆動波形信号BDWの他に、起動信号STと、印刷データD1〜DNと、補正データR1〜RNとを入力する。各個別駆動波形発生回路311-1〜311-Nは、起動信号STが入力されると、印刷データD1〜DNと補正データR1〜RNとにしたがって基本駆動波形信号BDWの波形を変化させて、対応する吐出チャネルch.1〜ch.Nへの駆動パルス信号DP1〜DPNを生成する。生成された駆動パルス信号DP1〜DPNは、各個別駆動波形発生回路311-1〜311-Nから対応する各吐出チャネルch.1〜cn.Nの電極19に与えられる。
【0050】
基本駆動波形発生回路312と各個別駆動波形発生回路311-1〜311-Nとは同期をとる必要がある。このため、図3に示した構成では、基本駆動波形発生回路312と各個別駆動波形発生回路311-1〜311-Nとの双方に起動信号STが入力される。
【0051】
図2に示した構成では、各駆動波形発生回路31-1〜31-Nがそれぞれ基本駆動波形発生回路312に相当する回路を実装する。これに対し、図3に示した構成では、各個別駆動波形発生回路311-1〜311-Nが基本駆動波形発生回路312に相当する回路を実装する必要がない。すなわち、図3に示した構成であれば、基本駆動波形発生回路312の個数が削減されるので、回路規模を節約できる。この効果は、インクジェットヘッド1のチャネル数が増加すればするほど顕著となる。
【0052】
[インクジェットヘッド駆動装置の乱数発生部について]
乱数発生部34Aは、各駆動波形発生回路31-1〜31-Nにおける補正データ入力のビット総数よりも少ない数の複数ビットからなる乱数を生成する。すなわち乱数発生部34Aは、図4に示すように、複数(図4では3つ)の独立した線形帰還シフトレジスタ(LFSR:Linear Feedback Shift Register)341,342,343で構成される。各線形帰還シフトレジスタ341,342,343は、乱数発生回路の一種であり、それぞれ起動信号STと乱数初期化信号RRとを共通に入力し、初期値データRD1,RD2,RD3を個々に入力する。起動信号STは、データ受信部32から与えられる。乱数初期化信号RRと初期値データRD1,RD2,RD3とは、パラメータ格納部33から与えられる。各線形帰還シフトレジスタ341,342,343は、起動信号ST、乱数初期化信号RR及び初期値データRD1,RD2,RD3を基に、それぞれM系列パルスと呼ばれる「m+1」ビットの擬似乱数を発生する。
【0053】
乱数発生部34Aの各線形帰還シフトレジスタ341,342,343と、各駆動波形発生回路31-1〜31-Nとは、接続手段としての配線51で接続される。配線51は、各線形帰還シフトレジスタ341,342,343からそれぞれ発生される擬似乱数の各ビットb0〜bmを、各駆動波形発生回路31-1〜31-Nに補正データR1〜RNとして与えるように、乱数発生部34Aと各駆動波形発生回路31-1〜31-Nとの間を接続する。このとき、「補正データ入力の同じ重みのビットには擬似乱数の同じ出力ビットが重複しない」という論理で、各補正データR1〜RNが各駆動波形発生回路31-1〜31-Nに割り当てられるように、配線51は接続される。
【0054】
図4では、各駆動波形発生回路31-1〜31-Nは、b0,b1,b2,b3の4ビットからなる補正データR1〜RNを入力する。補正データR1〜RNが4ビットからなると、各駆動波形発生回路31-1〜31-Nは、サブドロップの大きさを無変化も含めて16段階に補正できる。ここで、各駆動波形発生回路31-1〜31-Nにおける補正データのビットb0に対しては、各線形帰還シフトレジスタ341,342,343の擬似乱数出力ビットb0〜bmのうちいずれか1つが割当てられる。そして、この擬似乱数出力ビットが、他の駆動波形発生回路31-1〜31-Nにおける補正データのビットb0に割当てられることはない。
【0055】
例えば図4において、吐出チャネルch.1に対応した駆動波形発生回路31-1における補正データのビットb0には、第1の線形帰還シフトレジスタ341の擬似乱数出力ビットb0が割当てられている。この擬似乱数出力ビットb0は、他に吐出チャネルch.2に対応した駆動波形発生回路31-2における補正データのビットb3と、吐出チャネルch.3に対応した駆動波形発生回路31-3における補正データのビットb2とにも割当てられている。しかしこの擬似乱数出力ビットb0は、駆動波形発生回路31-1以外の駆動波形発生回路31-2〜31-Nにおける補正データのビットb0には決して割り当てられない。他のビットb1,b2,b3についても同様である。
【0056】
このように、各駆動波形発生回路31-1〜31-Nに与えられる補正データR1〜RNを、補正データ入力の同じ重みのビットには擬似乱数の同じ出力ビットが重複しないようにすることにより、各駆動波形発生回路31-1〜31-Nでは、駆動パルス信号DP1〜DPNに対してランダムな補正が行われる。その結果、各吐出チャネルch.1〜ch.Nの間では、補正量の規則性がなくなる。また、各線形帰還シフトレジスタ341,342,343が発生する擬似乱数の値は、起動信号STが入力される毎に更新される。これにより、各ドットの補正量は時間方向にもランダムとなる。
【0057】
図5は、線形帰還シフトレジスタ341の回路構成図である。他の線形帰還シフトレジスタ342,343も線形帰還シフトレジスタ341と構成が同一なので、ここでの説明は省略する。
【0058】
線形帰還シフトレジスタ341は、シフトレジスタ部3411と、ゼロ検出部3412と、シフト制御部3413とを含む。シフトレジスタ部3411は、“0”から“m”(m>0)までの「m+1」段のシフトレジスタからなり、「m+1」段目のレジスタrmの出力bmは、初段のレジスタr0に帰還する。また、「m+1」段目のレジスタrmの出力bmは、初段以外のいくつかの段のレジスタri,rjに、排他的論理和をとって帰還する。この排他的論理和をとって帰還する先をどの段にするかによって、シフトレジスタ部3411の出力Rout(b0〜bm)を、ほぼ規則性のないM系列と呼ばれる擬似乱数とすることができる。このような線形帰還シフトレジスタ341には、フィナボッチLFSR、ガロアLFSR、最長LFSR等がある。
【0059】
起動信号STは、線形帰還シフトレジスタ341のシフト制御部3413に与えられる。シフト制御部3413は、起動信号STが入力される毎に、シフトレジスタ部3411を1ビットずつシフトする。このシフトによって、シフトレジスタ部3411の出力Routが更新される。
【0060】
乱数初期化信号RRは、シフトレジスタ部3411とシフト制御部3413とに与えられる。シフトレジスタ部3411の各段のレジスタr0〜rmには、それぞれ乱数の初期値データRDが与えられており、乱数初期化信号RRが入力されると、シフトレジスタ部3411は、各段のレジスタr0〜rmに初期値データRDを書き込む。シフト制御部3413は、乱数初期化信号RRが入力されるとリセットする。
【0061】
ゼロ検出部3412は、シフトレジスタ部3411の上位k(0<k<m)個のレジスタから出力されるビットb(m−k+1)〜bmを監視し、この上位kビットにゼロが並ぶと、シフト制御部3413に対してゼロ検出信号ZDを出力する。シフト制御部3413は、上記ゼロ検出信号ZDが入力されると、起動信号STがない間に、シフトレジスタ部3411を制御して、kビットだけシフトする。なお、シフトレジスタ部3411のシフト数はkビットに限定されるものではない。kビット以上でmビット未満の所定ビット数であればよい。
【0062】
一般に、線形帰還シフトレジスタは、上位のビットにゼロが並んでしまうと排他的論理和が成立しなくなり、乱数が停滞してしまう。本実施形態では、上位のkビットにゼロが並ぶと、ゼロ検出部3412とシフト制御部3413との作用により、シフトレジスタ部3411のシフトがkビット以上進む。したがって、上位のビットにゼロが並ばなくなるので、乱数が停止してしまうことはない。
【0063】
各線形帰還シフトレジスタ341,342,343にそれぞれ与えられる初期値データRD1,RD2,RD3は、各線形帰還シフトレジスタ341,342,343が発生する乱数の相互間に規則性を生じさせないための値であり、かつゼロでない値が予め選出される。そして初期値データRD1,RD2,RD3は、印刷制御部40から制御パラメータCPに組み込まれてインクジェットヘッド駆動装置30に送出され、パラメータ格納部33に格納される。
【0064】
[インクジェットヘッド駆動装置のパラメータ格納部について]
図6は、パラメータ格納部33の要部構成図であり、パラメータ格納部33は、メモリ部331と、書込制御回路332と、不一致検出回路333と、アンドゲート334とを備える。メモリ部331は、制御パラメータCPに含まれる乱数の初期値データRD(RD1〜RD3)を記憶するエリア331Aと、基本駆動波形設定値SEを記憶するエリア331Bと、その他のインクジェットヘッド1の動作に必要なパラメータPA1〜PAxを記憶するエリア331C,331Dとを備える。
【0065】
メモリ部331は、装置の電源立ち上げの際に、図示しないハードウェアリセットによってリセットされる。このリセットにより、各エリア331A〜331Dは、クリアされる。
【0066】
書込制御回路332は、制御パラメータCPに含まれる駆動波形発生回路31-1〜31-Nの初期化信号RSが入力される毎に、メモリ部331の各エリア331A〜331Dへのデータ書込みを制御する。すなわち、エリア331Aに対しては同制御パラメータCPに含まれる乱数初期値データRD1〜RD3の書込みを制御し、エリア331Bに対しては同制御パラメータCPに含まれる基本駆動波形設定値SEの書込みを制御する。また、書込制御回路332は、初期化信号RSが入力されると、この信号を乱数初期化信号RRとしてアンドゲート334の一方の入力端子に出力する。初期化信号RSは、駆動波形発生回路31-1〜31-Nにも与えられ、駆動波形発生回路31-1〜31-Nをリセットする。
【0067】
不一致検出回路333は、エリア331Aに格納されている前回の乱数初期値データRDと、書込制御回路332の制御によりエリア331Aに書き込まれる今回の乱数初期値データRDとを比較する。そして、両乱数初期値データRDの不一致を検出すると、アンドゲート334の他方の入力端子に所定パルス時間の通電信号を出力する。
【0068】
アンドゲート334は、他方の入力端子に不一致検出回路333から通電信号が供給されている間、書込制御回路332から一方の入力端子に供給される乱数初期化信号RRを、乱数発生部34Aに送出する。乱数発生部34Aは、乱数初期化信号RRを受信すると、初期化される。
【0069】
通常、制御パラメータCPは、印刷データD1〜DNとともに印刷制御部40から各インクジェットヘッド駆動装置30に送られてくる。仮に、制御パラメータCPを入力する都度、乱数発生部34Aが初期化されてしまうと、制御パラメータCPが更新される毎に乱数発生部34Aから同一パターンの補正データR1〜RNが発生することになる。つまり、補正データR1〜RNに規則性が生じてしまうことになる。
【0070】
このような規則性をなくすために、本実施形態では、乱数初期化信号RRに限っては、乱数の初期値データRDが前回の値と今回の値とで異なった場合に限り、乱数初期化信号RRを出力して、乱数発生部34Aを初期化する。換言すれば、乱数の初期値データRDが変更されない間は乱数発生部34Aが初期化されないので、補正データR1〜RNに規則性が生じることはない。
【0071】
[本実施形態のまとめ]
本実施形態のインクジェットヘッド駆動装置30においては、各駆動波形発生回路31-1〜31-Nに対し、インクジェットヘッド1における各吐出チャネルch.1〜cn.Nの並び方向(空間方向)にも、また、上記空間方向と直交する方向(時間方向)にもランダムな補正データR1〜RNが乱数発生部34Aから与えられる。この補正データR1〜RNにより、各駆動波形発生回路31-1〜31-Nでは、駆動パルス信号DP1〜DPNの例えばインク充填時間(T1−Ta)がランダムに補正される。その結果、この補正された駆動パルス信号DP1〜DPNによって駆動されるインクジェットヘッド1の各チャネルch.1〜ch.Nに対応するノズルから吐出されるインク滴の量は、上記空間方向にもかつ時間方向にもランダムな微小変化を生じる。すなわち、印刷濃度に微弱な変化をランダムに与える。
【0072】
一般に、人の視覚は、規則性のある濃度ムラを知覚し易い。インクジェットヘッド製造時に生じるノズルやアクチュエータのばらつきに起因する濃度誤差やクロストーク等の印字パターンに依存して発生する濃度誤差は、空間的にもまた時間的にも規則性がある。このため、印刷のムラが目立ちやすい。
【0073】
ところが、本実施形態のインクジェットヘッド駆動装置30は、印刷濃度に微弱な変化をランダムに与えることができる。このような印刷濃度のランダムな微弱変化は、規則性がないため、人の視覚では知覚し難い。したがって、本実施形態によれば、たとえインクジェットヘッド1のノズルやアクチュエータのばらつきに起因する濃度誤差やクロストーク等の印字パターンに依存して発生する濃度誤差があったとしても、このような印刷のムラを目立たなくすることができる。
【0074】
(第2の実施形態)
前記第1の実施形態では、乱数発生部34Aが複数の線形帰還シフトレジスタ341,342,343で構成され、各駆動波形発生回目31-1〜31-1における補正データ入力のビット総数よりも少ない数の複数ビットからなる乱数を生成する。そして、各線形帰還シフトレジスタ341,342,343からそれぞれ発生される擬似乱数の各ビットb0〜bmは、「補正データ入力の同じ重みのビットには擬似乱数の同じ出力ビットが重複しない」という論理で、各駆動波形発生回路31-1〜31-Nに割り当てられる。このため、各駆動波形発生回路31-1〜31-Nの補正データ入力の総数と、1つの線形帰還シフトレジスタから発生される擬似乱数のビット長とから、最低限必要な線形帰還シフトレジスタの数を算出して、乱数発生部34Aを構成することになる。第1の実施形態では、線形帰還シフトレジスタの数が3個の場合を示した。線形帰還シフトレジスタの数は3個に限定されるものではない。仮に、最低限必要な線形帰還シフトレジスタの数が1個の場合、つまり各駆動波形発生回路31-1〜31-Nにおける補正データ入力のビット総数以上の複数ビットからなる乱数を生成する線形帰還シフトレジスタがあれば、この1つの線形帰還シフトレジスタで乱数発生部を構成することができる。
【0075】
図16は、1つの線形帰還シフトレジスタで乱数発生部34Bを構成したときの一例を示す図であり、第2の実施形態とする。なお、第1の実施形態で説明した図4と共通する部分には同一の符号を付し詳しい説明は省略する。
【0076】
図16に示すように、第2の実施形態では、乱数発生部34Bは、1つの線形帰還シフトレジスタ344で構成される。線形帰還シフトレジスタ344は、起動信号STと乱数初期化信号RRと初期値データRDとを入力する。起動信号STは、データ受信部32から与えられる。乱数初期化信号RRと初期値データRDとは、パラメータ格納部33から与えられる。線形帰還シフトレジスタ344は、起動信号ST、乱数初期化信号RR及び初期値データRDを基に、M系列パルスと呼ばれる「m+1」ビットの擬似乱数を発生する。
【0077】
線形帰還シフトレジスタ344から発生される擬似乱数の各ビットb0〜bmは、接続部としての配線52を介して各駆動波形発生回路31-1〜31-Nに補正データR1〜RNとして与えられる。各補正データR1〜RNは、「補正データ入力の同じ重みのビットには擬似乱数の同じ出力ビットが重複しない」という論理で、各駆動波形発生回路31-1〜31-Nに割り当てられる。
【0078】
第2の実施形態によれば、乱数発生部34Bを構成する線形帰還シフトレジスタ344の数を1つに節約しつつ、第1の実施形態と同様な作用効果を奏することができる。
【0079】
(第3の実施形態)
前記第2の実施形態では、乱数発生部34Bが1つの線形帰還シフトレジスタ344で構成される。乱数発生部は、前記第1または第2の構成に限定されるものではない。
図17は、他の構成の乱数発生部34Cを示しており、第3の実施形態とする。なお、図4と共通する部分には同一の符号を付し詳しい説明は省略する。
【0080】
図17に示すように、乱数発生部34Cは、インクジェットヘッド1の吐出チャネルch.1〜ch.Nの数に等しいN個の線形帰還シフトレジスタ340-1〜340-Nで構成される。各線形帰還シフトレジスタ340-1〜340-Nは、吐出チャネルch.1〜ch.Nに対応して設けられた各駆動波形発生回路31-1〜31-Nに1対1で対応する。
【0081】
各線形帰還シフトレジスタ340-1〜340-Nは、それぞれ起動信号STと乱数初期化信号RRとを共通に入力し、初期値データRD1,RD2,RD3,…,RDJ,…,RDNを個々に入力する。起動信号STは、データ受信部32から与えられる。乱数初期化信号RRと初期値データRD1,RD2,RD3,…,RDJ,…,RDNとは、パラメータ格納部33から与えられる。各線形帰還シフトレジスタ340-1〜340-Nは、起動信号ST、乱数初期化信号RR及び初期値データRD1,RD2,RD3,…,RDJ,…,RDNを基に、それぞれM系列パルスと呼ばれる「m+1」ビットの擬似乱数を発生する。
【0082】
各線形帰還シフトレジスタ340-1〜340-Nからそれぞれ発生される擬似乱数の各ビットb0〜bmのうち、例えばビットb0〜b3は、接続部としての配線53を介してそれぞれ対応する駆動波形発生回路31-1〜31-Nに補正データR1〜RNとして与えられる。
【0083】
第3の実施形態によれば、各補正データR1〜RNは、「補正データ入力の同じ重みのビットには擬似乱数の同じ出力ビットが重複しない」という論理で、各線形帰還シフトレジスタ340-1〜340-Nからそれぞれ発生される擬似乱数の各ビットb0〜bmを各駆動波形発生回路31-1〜31-Nに割り当てることなく、第1の実施形態と同様な作用効果を奏することができる。
【0084】
(第4の実施形態)
前記第1〜第3の実施形態では、インクジェットヘッド1の各吐出チャネルch.1〜ch.Nに対して、駆動波形発生回路31-1〜31-Nに1対1で対応させたので、各吐出チャネルch.1〜ch.Nが個々に独立して駆動可能である。しかし、インクジェットヘッド1は、複数の吐出チャネルch.1〜ch.Nを複数のグループに区分し、グループ毎に同時に駆動させることも可能である。
【0085】
そこで次に、複数の吐出チャネルch.1〜ch.Nを2つのグループに区分し、グループ毎に同時に駆動させる実施形態を第4の実施形態として説明する。
図18は、第4の実施形態における要部構成図であり、図4と共通する部分には同一の符号を付し詳しい説明は省略する。
【0086】
図18に示すように、インクジェットヘッド1の各吐出チャネルch.1〜ch.2Nは、その並び方向において1つおきに第1グループと第2グループとに区分される。すなわち、吐出チャネルch.1,ch.3,ch.5,…,ch.2J−1,…,ch.2N−1は第1グループに属し、吐出チャネルch.2,ch.4,ch.6,…,ch.2J,…,ch.2Nは第2グループに属する。
【0087】
各駆動波形発生回路31-1〜31-Nは、第1グループに属する吐出チャネルch.1,ch.3,ch.5,…,ch.2J−1,…,ch.2N−1にそれぞれ対応して設けられる。そして、各駆動波形発生回路31-1〜31-Nから出力される駆動パルス信号DP1〜DPNは、対応する吐出チャネルch.1,ch.3,ch.5,…,ch.2J−1,…,ch.2N−1と、この吐出チャネルch.1,ch.3,ch.5,…,ch.2J−1,…,ch.2N−1に対して一方向に隣接する第2グループの吐出チャネルch.2,ch.4,ch.6,…,ch.2J,…,ch.2Nとに共通に供給される。
【0088】
各吐出チャネルch.1〜cn.2Nのうち、第1グループに属する吐出チャネルch.1,ch.3,ch.5,…,ch.2J−1,…,ch.2N−1に対しては、グループ選択信号GSが供給される。第2グループに属する吐出チャネルch.2,ch.4,ch.6,…,ch.2J,…,ch.2Nに対しては、グループ選択信号GSをインバータ35で反転させた反転グループ選択信号/GSが供給される。グループ選択信号GSは制御パラメータCPに含まれ、データ受信部32を経てインクジェットヘッド1に与えられる。
【0089】
各吐出チャネルch.1〜cn.2Nは、グループ選択信号GSまたは反転グループ選択信号/GSが入力されている間、駆動パルス信号DP1〜DPNを取り込み、この駆動パルス信号DP1〜DPNにしたがってインク滴を吐出する。すなわち、第1グループに属する吐出チャネルch.1,ch.3,ch.5,…,ch.2J−1,…,ch.2N−1は同時に駆動し、その間、第2グループに属する吐出チャネルch.2,ch.4,ch.6,…,ch.2J,…,ch.2Nは駆動しない。逆に、第2グループに属する吐出チャネルch.2,ch.4,ch.6,…,ch.2J,…,ch.2Nは同時に駆動し、その間、第1グループに属する吐出チャネルch.1,ch.3,ch.5,…,ch.2J−1,…,ch.2N−1は駆動しない。
【0090】
乱数発生部34Dは、第1の実施形態と同様に、複数(図18では3つ)の独立した線形帰還シフトレジスタ341,342,343で構成される。各線形帰還シフトレジスタ341,342,343は、それぞれ切替検出信号SSと乱数初期化信号RRとを共通に入力し、初期値データRD1,RD2,RD3を個々に入力する。
【0091】
乱数初期化信号RRと初期値データRD1,RD2,RD3とは、パラメータ格納部33から与えられる。切替検出信号SSは、切替検出回路36から与えられる。切替検出回路36は、前記グループ選択信号GSを入力とし、このグループ選択信号GSを検出する毎に切替検出信号SSを出力する。
【0092】
各線形帰還シフトレジスタ341,342,343は、切替検出信号SSが入力されると、乱数初期化信号RR及び初期値データRD1,RD2,RD3を基に、それぞれM系列パルスと呼ばれる「m+1」ビットの擬似乱数を発生する。すなわち各線形帰還シフトレジスタ341,342,343が発生する擬似乱数の値は、切替検出信号SSが入力される毎に更新される(乱数更新手段)。したがって、各吐出チャネルch.1〜cn.2Nをグループ毎に駆動する毎に、擬似乱数の値は更新される。
【0093】
各線形帰還シフトレジスタ341,342,343からそれぞれ発生される擬似乱数の各ビットb0〜bmは、各駆動波形発生回路31-1〜31-Nに補正データR1〜RNとして与えられる。各補正データR1〜RNは、「補正データ入力の同じ重みのビットには擬似乱数の同じ出力ビットが重複しない」という論理で、各駆動波形発生回路31-1〜31-Nに割り当てられる。
【0094】
第4の実施形態によれば、吐出チャネルch.1〜cn.2Nの数に対して、駆動波形発生回路31-1〜31-Nの数を1/2に削減しつつ、第1の実施形態と同様な作用効果を奏することができる。
【0095】
なお、第4の実施形態では、乱数発生部34Dとして第1の実施形態の乱数発生部34Aを適用したが、これに限定されるものではない。第2の実施形態の乱数発生部34B若しくは第3の実施形態の乱数発生部34Cを用いても、同様に適用できるのはいうまでもないことである。
【0096】
(第5の実施形態)
前記第4の実施形態では、吐出チャネルch.1〜cn.Nが2つのグループに分割されて、グループ毎に同時に駆動される。吐出チャネルch.1〜cn.Nのグループ数は,2つに限定されるものではない。
【0097】
そこで次に、複数の吐出チャネルch.1〜ch.Nを3つのグループに区分し、グループ毎に同時に駆動させる実施形態を第5の実施形態として説明する。
図19は、第5の実施形態における要部構成図であり、第1の実施形態で説明した図4と共通する部分には同一の符号を付し詳しい説明は省略する。
【0098】
図19に示すように、インクジェットヘッド1の各吐出チャネルch.1〜ch.3Nは、その並び方向において2つおきに第1グループと第2グループと第3グループとに区分される。すなわち、吐出チャネルch.1,ch.4,ch.7,…,ch.3J−2,…,ch.3N−2は第1グループに属し、吐出チャネルch.2,ch.5,ch.8,…,ch.3J−1,…,ch.3N−1は第2グループに属し、吐出チャネルch.3,ch.6,ch.9,…,ch.3J,…,ch.3Nは第3グループに属する。
【0099】
各駆動波形発生回路31-1〜31-Nは、第1グループに属する吐出チャネルch.1,ch.4,ch.7,…,ch.3J−2,…,ch.3N−2にそれぞれ対応して設けられる。そして、各駆動波形発生回路31-1〜31-Nから出力される駆動パルス信号DP1〜DPNは、対応する第1グループの吐出チャネルch.1,ch.4,ch.7,…,ch.3J−2,…,ch.3N−2と、この吐出チャネルch.1,ch.4,ch.7,…,ch.3J−2,…,ch.3N−2に対して一方向に隣接する第2グループの吐出チャネルch.2,ch.5,ch.8,…,ch.3J−1,…,ch.3N−1と、さらに同一方向に隣接する第3グループの吐出チャネルch.3,ch.6,ch.9,…,ch.3J,…,ch.3Nとに共通に供給される。
【0100】
各吐出チャネルch.1〜cn.3Nのうち、第1グループに属する吐出チャネルch.1,ch.4,ch.7,…,ch.3J−2,…,ch.3N−2に対しては、第1グループ選択信号GS1が供給される。第2グループに属する吐出チャネルch.2,ch.5,ch.8,…,ch.3J−1,…,ch.3N−1に対しては、第2グループ選択信号GS2が供給される。第3グループの吐出チャネルch.3,ch.6,ch.9,…,ch.3J,…,ch.3Nに対しては、第3グループ選択信号GS3が供給される。各グループ選択信号GS1,GS2,GS3は、グループ切替カウンタ37から出力される。
【0101】
グループ切替カウンタ37は、制御パラメータCPに含まれて供給されるグループ選択信号GSを入力とし、この信号GSを入力する毎にカウントアップする。そして、そして、カウントアップする毎に、第1グループ選択信号GS1、第2グループ選択信号GS2、第3グループ選択信号G3を順に出力し、次のカウントアップで第1グループ選択信号GS1に戻る。また、グループ切替カウンタ37は、グループ選択信号GSを後述する乱数発生部34Eの各線形帰還シフトレジスタ341,342,343に出力する。
【0102】
各吐出チャネルch.1〜cn.3Nは、グループ選択信号G1,G2またはG3が入力されている間、駆動パルス信号DP1〜DPNを取り込み、この駆動パルス信号DP1〜DPNにしたがってインク滴を吐出する。すなわち、第1グループに属する吐出チャネルch.1,ch.4,ch.7,…,ch.3J−2,…,ch.3N−2は同時に駆動し、その間、他のグループに属する吐出チャネルch.2,cn.3,ch.5,ch6,ch.8,…,ch.3J−1,ch.3J,…,ch.3N−1,ch.3Nは駆動しない。第2グループ、第3グループについても同様である。
【0103】
乱数発生部34Eは、第1の実施形態と同様に、複数(図18では3つ)の独立した線形帰還シフトレジスタ341,342,343で構成される。各線形帰還シフトレジスタ341,342,343は、それぞれグループ選択信号GSと乱数初期化信号RRとを共通に入力し、初期値データRD1,RD2,RD3を個々に入力する。
【0104】
乱数初期化信号RRと初期値データRD1,RD2,RD3とは、パラメータ格納部33から与えられる。グループ選択信号GSは、グループ切替カウンタ37から与えられる。
【0105】
各線形帰還シフトレジスタ341,342,343は、グループ選択信号GSが入力されると、乱数初期化信号RR及び初期値データRD1,RD2,RD3を基に、それぞれM系列パルスと呼ばれる「m+1」ビットの擬似乱数を発生する。すなわち各線形帰還シフトレジスタ341,342,343が発生する擬似乱数の値は、グループ選択信号GSが入力される毎に更新される(乱数更新手段)。したがって、各吐出チャネルch.1〜cn.3Nをグループ毎に駆動する毎に、擬似乱数の値は更新される。
【0106】
各線形帰還シフトレジスタ341,342,343からそれぞれ発生される擬似乱数の各ビットb0〜bmは、各駆動波形発生回路31-1〜31-Nに補正データR1〜RNとして与えられる。各補正データR1〜RNは、「補正データ入力の同じ重みのビットには擬似乱数の同じ出力ビットが重複しない」という論理で、各駆動波形発生回路31-1〜31-Nに割り当てられる。
【0107】
第5の実施形態によれば、吐出チャネルch.1〜cn.3Nの数に対して、駆動波形発生回路31-1〜31-Nの数を1/3に削減しつつ、第1の実施形態と同様な作用効果を奏することができる。
【0108】
なお、第5の実施形態では、乱数発生部34Eとして第1の実施形態の乱数発生部34Aを適用したが、これに限定されるものではない。第2の実施形態の乱数発生部34B若しくは第3の実施形態の乱数発生部34Cを用いても、同様に適用できるのはいうまでもないことである。
【0109】
(第6の実施形態)
前記第1〜第5の各実施形態では、乱数発生部34A〜34Eから発生される擬似乱数の値を補正データR1〜RNとして各駆動波形発生回路31-1〜31-Nに直接与える。各駆動波形発生回路31-1〜31-Nは、駆動パルス信号DP1〜DPNの基本駆動波形を印刷データD1〜DN及び補正データR1〜RNにしたがって変化させて、対応する吐出チャネルch.1〜ch.Nへの駆動パルス信号DP1〜DPNを生成する。
【0110】
制御パラメータCPには、インクジェットヘッド1の動作に必要なパラメータPA1〜PAxとして、例えば各吐出チャネルch.1〜ch.Nに対応するアクチュエータの効率に対する第2の補正データH1〜HNが含まれる。第2の補正データH1〜HNは、アクチュエータの効率に起因する濃度ムラを補正する値であり、吐出チャネルch.1〜ch.N毎に生成される。第2の補正データH1〜HNでアクチュエータの効率に起因する濃度ムラを補正し、さらに、乱数発生部34A〜34Eから発生される擬似乱数の値である第1の補正データR1〜RNで印刷濃度に微弱な変化をランダムに与えれば、濃度ムラをより一層目立たなくすることができる。この場合の実施形態を第6の実施形態として、図20を用いて説明する。
【0111】
図20において、乱数発生部34Fは、第1〜第3の実施形態で用いた乱数発生部34A〜34Cのいずれの構成のものを採用してもよい。あるいは、インクジェットヘッド1の吐出チャネルch.1〜ch.Nを2以上のグループに分割し、グループ毎に同時に駆動する場合には、第4または第5の実施形態で用いた乱数発生部34D,34Eを採用することができる。
【0112】
乱数発生部34Fからは、各吐出チャネルch.1〜ch.Nに対応した各駆動波形発生回路31-1〜31-Nに対して、擬似乱数の値からなる第1の補正データR1〜RNが出力される。第1の補正データR1〜RNは、各駆動波形発生回路31-1〜31-Nにそれぞれ対応して設けられる加算手段としての各加算器38-1〜38-Nの第1入力に与えられる。各加算器38-1〜38-Nの第2入力には、各吐出チャネルch.1〜ch.Nに対応するアクチュエータの効率に対する第2の補正データH1〜HNが、パラメータ格納部33から与えられる。
【0113】
各加算器38-1〜38-Nは、第1入力に与えられる第1の補正データR1〜RNと第2入力に与えられる第2の補正データH1〜HNとを合成する。そして、この合成出力を補正データX1〜XNとして、対応する各駆動波形発生回路31-1〜31-Nにそれぞれ出力する。
【0114】
各駆動波形発生回路31-1〜31-Nは、駆動パルス信号DP1〜DPNの基本駆動波形を印刷データD1〜DN及び補正データX1〜XNにしたがって変化させて、対応する吐出チャネルch.1〜ch.Nへの駆動パルス信号DP1〜DPNを生成する。各吐出チャネルch.1〜cn.Nは、それぞれ駆動パルス信号DP1〜DPNを取り込み、この駆動パルス信号DP1〜DPNにしたがってインク滴を吐出する。
【0115】
第6の実施形態によれば、アクチュエータの効率に起因する濃度ムラが補正されるだけでなく、印刷濃度に微弱な変化がランダムに与えられるので、濃度ムラをより一層目立たなくすることができる。
【0116】
なお、第6の実施形態では、第2の補正データH1〜HNをアクチュエータの効率に起因する濃度ムラを補正する値としたが、第2の補正データH1〜HNはこれに限定されるものではない。例えばクロストーク等の印字パターンに依存して発生する濃度誤差を補正する値を第2の補正データH1〜HNとし、この第2の補正データH1〜HNに、乱数発生部34Fから発生される第1の補正データR1〜RNを合計して、各駆動波形発生回路31-1〜31-Nに対する補正データX1〜XNとすることも可能である。
【0117】
さらには、第2の補正データH1〜HNを、アクチュエータの効率に起因する濃度ムラを補正する値とクロストーク等の印字パターンに依存して発生する濃度誤差を補正する値とを加算した値とし、この第2の補正データH1〜HNに第1の補正データR1〜RNを合計して、各駆動波形発生回路31-1〜31-Nに対する補正データX1〜XNとしてもよい。
【0118】
(他の実施形態)
前記各実施形態では、乱数発生部34A〜34Fをインクジェットヘッド駆動装置30側に備えたが、乱数発生部34A〜34Fを印刷制御部40側に設けることも可能である。そうすることにより、インクジェットヘッド駆動装置30の構成を簡略化できる。ただし、印刷制御部40とインクジェットヘッド駆動装置30とを接続する回線を搬送される情報量が増加する問題がある。乱数発生部34A〜34Fをインクジェットヘッド駆動装置30側に備えることによって、このような問題は生じ得ない。
【0119】
この他、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0120】
1…インクジェットヘッド、30…インクジェットヘッド駆動装置、31-1〜31-N…駆動波形発生回路、32…データ受信部、33…パラメータ格納部、34A,34B,34C,34D,34E,34F…乱数発生部、40…印刷制御部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
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図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20