特許第5750450号(P5750450)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5750450
(24)【登録日】2015年5月22日
(45)【発行日】2015年7月22日
(54)【発明の名称】乗物用シート
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/16 20060101AFI20150702BHJP
【FI】
   B60N2/16
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-538582(P2012-538582)
(86)(22)【出願日】2011年4月1日
(86)【国際出願番号】JP2011058424
(87)【国際公開番号】WO2012049871
(87)【国際公開日】20120419
【審査請求日】2014年1月6日
(31)【優先権主張番号】PCT/JP2010/067856
(32)【優先日】2010年10月12日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】PCT/JP2010/067855
(32)【優先日】2010年10月12日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000220066
【氏名又は名称】テイ・エス テック株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000143639
【氏名又は名称】株式会社今仙電機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100116034
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 啓輔
(74)【代理人】
【識別番号】100144624
【弁理士】
【氏名又は名称】稲垣 達也
(72)【発明者】
【氏名】星 正之
(72)【発明者】
【氏名】古田 将也
(72)【発明者】
【氏名】西岡 充宜
(72)【発明者】
【氏名】江崎 琢人
【審査官】 永安 真
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭58−139234(JP,U)
【文献】 実開平02−090149(JP,U)
【文献】 特開2008−265365(JP,A)
【文献】 特開2006−199049(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
着座部の高さを調整可能な乗物用シートであって、
前記着座部の左右のフレームを構成する一対のサイドフレームと、
前記各サイドフレームの後部に回動可能に連結された左右のリアリンクと、
前記リアリンクの前方で前記各サイドフレームに対して回動可能に連結された左右のフロントリンクと、
前記サイドフレームの下方に設けられ、前記リアリンクおよび前記フロントリンクを回動可能に支持することで、前記サイドフレーム、前記リアリンクおよび前記フロントリンクとともに4節リンク機構を構成するリンク支持部材と、
回動させることで前記4節リンク機構を駆動させ、前記着座部の高さを調整する操作部材を有する操作ユニットと、を備え、
前記操作ユニットは、前記操作部材が前記一対のサイドフレームのうちの一方に設けられ、当該操作部材と同軸で回動する出力ギヤを有し、
前記フロントリンクは、前記出力ギヤと噛み合って、前記出力ギヤの回動により前記フロントリンクを回動させる入力ギヤを有し、
前記サイドフレームは、左右方向内側に向けて凹み、かつ、内部に前記出力ギヤが配置される凹形状部を有し、
前記凹形状部は、前方が開口した略半円カップ状であり、底壁が前記出力ギヤを回動可能に支持するギヤ支持壁となっていることを特徴とする乗物用シート。
【請求項2】
前記ギヤ支持壁は、前側の中央が前方に向けて突出するような形状となっていることを特徴とする請求項1に記載の乗物用シート。
【請求項3】
前記ギヤ支持壁の前方に突出した部分は、左右方向内側から見て前記出力ギヤと前記入力ギヤとが噛み合う部分を覆っていることを特徴とする請求項2に記載の乗物用シート。
【請求項4】
前記左右のフロントリンクは、それぞれ前記入力ギヤを有し、
前記操作ユニットは、前記入力ギヤとそれぞれ噛み合う左右一対の前記出力ギヤと、左右方向に延び、前記一対の出力ギヤを連結して一体に回動可能とする連結部材とを有し、
前記連結部材は、パイプ状の部材であり、両端には断面視略半円形状の凹部が形成され、
前記出力ギヤの回転軸は、前記凹部に係合した状態で溶接されていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の乗物用シート。
【請求項5】
前記凹部は、前記パイプ状の部材の両端部を潰すことで形成されていることを特徴とする請求項4に記載の乗物用シート。
【請求項6】
前記サイドフレームに左右方向内側に向けて凹むように形成される部分の底壁で、前記フロントリンクを回動可能に支持することを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の乗物用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、着座部の高さを調整可能な乗物用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、着座部の高さを調整可能な自動車用シートなどの乗物用シートが知られている。特許文献1には、サイドフレームと、車体フロアに固定されるスライドレールと、サイドフレームおよびスライドレールに対して回動可能に連結される前後のリンクとによって4節リンク機構が構成され、一方のサイドフレームに配設された操作ノブを回転操作することで着座部の高さが調整可能な自動車用シートが開示されている。
【0003】
より詳細に、特許文献1の自動車用シートでは、操作ノブを回転すると、操作ノブの回転軸に装着されたピニオンギヤが回動して、サイドフレームと前部リンクとの間に配置されたセクタギヤを回動させる。そして、セクタギヤの回動により、セクタギヤに設けられたピンが、前部リンクを立ち上がり方向または倒れ方向に揺動させるとともに、リンクロッドを介して後部リンクを立ち上がり方向または倒れ方向に揺動させることで、サイドフレーム(着座部)の高さを調整できるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−308050号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、従来の高さ調整機構は、前後のリンクを連結するリンクロッドや、サイドフレームと前部リンクとの間に配置されたセクタギヤなどを備えていたので、部品点数が多くなっていた。
【0006】
そこで、本発明は、着座部の高さを調整可能な乗物用シートにおいて部品点数を削減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記した目的を達成するための本発明は、着座部の高さを調整可能な乗物用シートであって、前記着座部の左右のフレームを構成する一対のサイドフレームと、前記各サイドフレームの後部に回動可能に連結された左右のリアリンクと、前記リアリンクの前方で前記各サイドフレームに対して回動可能に連結された左右のフロントリンクと、前記サイドフレームの下方に設けられ、前記リアリンクおよび前記フロントリンクを回動可能に支持することで、前記サイドフレーム、前記リアリンクおよび前記フロントリンクとともに4節リンク機構を構成するリンク支持部材と、回動させることで前記4節リンク機構を駆動させ、前記着座部の高さを調整する操作部材を有する操作ユニットと、を備え、前記操作ユニットは、前記操作部材が前記一対のサイドフレームのうちの一方に設けられ、当該操作部材と同軸で回動する出力ギヤを有し、前記フロントリンクは、前記出力ギヤと噛み合って、前記出力ギヤの回動により前記フロントリンクを回動させる入力ギヤを有し、前記サイドフレームは、左右方向内側に向けて凹み、かつ、内部に前記出力ギヤが配置される凹形状部を有し、前記凹形状部は、前方が開口した略半円カップ状であり、底壁が前記出力ギヤを回動可能に支持するギヤ支持壁となっていることを特徴とする。
【0008】
このような構成によれば、フロントリンクが、操作ユニットの出力ギヤと噛み合って、出力ギヤの回動によりフロントリンクを回動させる入力ギヤを有する、言い換えると、フロントリンクに4節リンク機構を駆動させるためのギヤが設けられているので、別部品としてのセクタギヤを省略することができ、部品点数を削減することができる。また、操作部材の回動によって、直接フロントリンクが立ち上がり方向または倒れ方向に回動することで、4節リンク機構が作動して着座部の高さを調整できるので、前後のリンクを連結するリンクロッドを省略することができ、部品点数を削減することができる。そして、このように部品点数を削減できることで、従来よりもコスト(部品コストや組み立て時の手間など)やシート重量を低減することが可能となる。
【0009】
前記した乗物用シートにおいて、前記ギヤ支持壁は、前側の中央が前方に向けて突出するような形状となっていてもよい。
また、前記ギヤ支持壁の前方に突出した部分は、左右方向内側から見て前記出力ギヤと前記入力ギヤとが噛み合う部分を覆っていてもよい。
このような構成によれば、出力ギヤと入力ギヤとが噛み合う部分が、左右方向内側から見てギヤ支持壁に覆われていることで、ギヤの噛み合い外れを規制することができる。また、ギヤ支持壁がサイドフレームに設けられていることで、ギヤの噛み合い外れを規制する部材を別に設ける必要がなくなるので、部品点数を削減することができる。
前記した乗物用シートにおいて、前記左右のフロントリンクは、それぞれ前記入力ギヤを有し、前記操作ユニットは、前記入力ギヤとそれぞれ噛み合う左右一対の前記出力ギヤと、左右方向に延び、前記一対の出力ギヤを連結して一体に回動可能とする連結部材とを有し、前記連結部材は、パイプ状の部材であり、両端には断面視略半円形状の凹部が形成され、前記出力ギヤの回転軸は、前記凹部に係合した状態で溶接されている構成とすることができる。
【0010】
このような構成によれば、操作部材の回動によって、左右のフロントリンクを同時に立ち上がり方向または倒れ方向に回動させることができるので、着座部の高さを安定して調整することができる。また、高さ調整を行った後は、出力ギヤと入力ギヤの噛み合いにより、左右のフロントリンクの回動が規制され、左右のサイドフレーム30が各フロントリンクにより左右両方で支持されることになるので、着座部の高さ位置を安定させることができる。
【0011】
前記した各乗物用シートにおいて、前記凹部は、前記パイプ状の部材の両端部を潰すことで形成されていてもよい。
【0012】
また、前記した各乗物用シートにおいて、前記サイドフレームに左右方向内側に向けて凹むように形成される部分の底壁で、前記フロントリンクを回動可能に支持してもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、フロントリンクが、操作ユニットの出力ギヤと噛み合って、出力ギヤの回動によりフロントリンクを回動させる入力ギヤを有することで、部品点数を削減することができる。これにより、従来よりもコストやシート重量を低減することができる。
【0014】
また、本発明によれば、操作ユニットが、左右のフロントリンクの各入力ギヤとそれぞれ噛み合う一対の出力ギヤと、一対の出力ギヤを連結して一体に回動可能とする連結部材とを有する構成とすることで、着座部の高さを安定して調整することができるとともに、着座部の高さ位置を安定させることができる。
【0015】
また、本発明によれば、出力ギヤと入力ギヤとが噛み合う部分が、左右方向内側から見てギヤ支持壁に覆われている構成とすることで、ギヤの噛み合い外れを規制することができるとともに、部品点数を削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態に係る乗物用シートの側面図である。
図2】操作ユニットとその周辺の構成を示す図である。
図3】サイドフレームのギヤ支持壁付近を内側から見た図である。
図4】サイドフレーム、フロントリンクおよび操作ユニットの斜視図(a)と、連結部材の拡大斜視図(b)である。
図5】高さ調整の説明図であり、着座部を低くしたときを示す図(a)と、着座部を高くしたときを示す図(b)である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、本発明の一実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本発明において、前後、左右、上下は、シートに座る乗員を基準とする。
【0018】
図1に示すように、乗物用シートの一例としての車両用シート1は、乗員が座る着座部の高さを調整可能に構成されており、シートバックフレーム2と、着座部のフレームを構成する着座部フレーム3と、リンク支持部材の一例としてのスライドレール4と、フロントリンク5と、リアリンク6と、操作ユニット7とを主に備えている。
【0019】
この車両用シート1は、シートバックフレーム2および着座部フレーム3の外側に、ウレタンフォームなどからなるシートクッション(図示省略)を被せることで構成されている。
【0020】
着座部フレーム3は、着座部の左右のフレームを構成する略板状の一対のサイドフレーム30(一方のみ図示)を備えている。各サイドフレーム30は、金属板をプレス加工するなどして形成されており、それぞれ、フロントリンク支持壁31と、リアリンク支持壁32と、ギヤ支持壁33(図2,3参照)とを有している。
【0021】
フロントリンク支持壁31は、各サイドフレーム30の前部(リアリンク6の前方)に設けられた内側に向けて凹む部分の底壁(図2も参照)であり、ピン91を介してフロントリンク5を回動可能に支持している。
【0022】
リアリンク支持壁32は、各サイドフレーム30の後部に設けられた内側に向けて凹む部分の底壁であり、ピン93を介してリアリンク6を回動可能に支持している。なお、各サイドフレーム30が上記のような凹む部分を有することで、サイドフレーム30は全体として凹凸を有する形状となり、サイドフレーム30(着座部フレーム3)の剛性を高めることができる。
【0023】
図2,3に示すように、ギヤ支持壁33は、前後方向におけるフロントリンク支持壁31の後側に設けられた内側に向けて凹む略半円カップ状の部分の底壁である。より詳細に、ギヤ支持壁33は、フロントリンク支持壁31に対し左右方向内側にずれた位置で、フロントリンク支持壁31に対して略平行となるように設けられている。
【0024】
このギヤ支持壁33は、操作ユニット7の後述する操作ノブ組立体71(固定部71A)またはブラケット72との間でピニオンギヤ73(出力ギヤ)を回動(回転)可能に支持している。また、ギヤ支持壁33は、左右方向内側から見て、ピニオンギヤ73を覆い隠すように、前側の中央が略前方に向けて突出するような形状をなしている。
【0025】
図1に戻り、スライドレール4は、着座部フレーム3(着座部)を前後に移動させるための構成であり、サイドフレーム30(着座部フレーム3)の下方に設けられている。このスライドレール4は、ロアレール41と、アッパーレール42とから主に構成されている。
【0026】
ロアレール41は、前後に長く延びた形状を有しており、左右に所定の間隔をあけて2つ設けられている(一方のみ図示)。各ロアレール41は、車両(乗物)の床に固定される。
【0027】
アッパーレール42は、前後に長く延びた形状を有し、ロアレール41に対して前後にスライド移動可能に係合している。このアッパーレール42には、フロントリンク5およびリアリンク6を回動可能に支持するリンク支持部43が設けられている。アッパーレール42は、フロントリンク5およびリアリンク6を介して着座部フレーム3と接続されており、これにより、着座部をロアレール41が固定される車両の床に対して前後にスライド移動させることができるようになっている。
【0028】
フロントリンク5およびリアリンク6は、それぞれ、上端がサイドフレーム30に対して回動可能に接続され、下端がアッパーレール42(スライドレール4)に対して回動可能に接続されることで、サイドフレーム30およびスライドレール4とともに4節リンク機構を構成している。このような構成により、サイドフレーム30(着座部)をスライドレール4に対して上下動させることができるようになっている。
【0029】
より詳細に、フロントリンク5は、左右に1つずつ設けられ(一方のみ図示)、それぞれ、上端がピン91により、サイドフレーム30の前部に節点を形成するようにフロントリンク支持壁31の内側に連結されている。ピン91は、フロントリンク5を回転可能に軸支しており、これにより、フロントリンク5がサイドフレーム30に対して回動可能となっている。
【0030】
また、フロントリンク5の下端は、ピン92によりアッパーレール42のリンク支持部43の前部に節点を形成するように連結されている。ピン92は、フロントリンク5を回転可能に軸支しており、これにより、フロントリンク5がスライドレール4に対して回動可能となっている。
【0031】
図3に示すように、左右のフロントリンク5(一方のみ図示)は、それぞれ、操作ユニット7のピニオンギヤ73と噛み合って、ピニオンギヤ73の回動によりフロントリンク5を回動させる入力ギヤの一例としてのセクタギヤ部51を有している。セクタギヤ部51は、各フロントリンク5の上端(ピン91)側の後部において、ピン91を中心とする円弧上に配置されている。
【0032】
なお、左右のフロントリンク5は、左右に架け渡されるパイプ状の部材などによって互いに連結されていてもよい。
【0033】
図1に示すように、リアリンク6は、左右に1つずつ設けられ(一方のみ図示)、それぞれ、上端がピン93により、サイドフレーム30の後部に節点を形成するようにリアリンク支持壁32の内側に連結されている。ピン93は、リアリンク6を回転可能に軸支しており、これにより、リアリンク6がサイドフレーム30に対して回動可能となっている。
【0034】
また、リアリンク6の下端は、ピン94によりアッパーレール42のリンク支持部43の後部に節点を形成するように連結されている。ピン94は、リアリンク6を回転可能に軸支しており、これにより、リアリンク6がスライドレール4に対して回動可能となっている。
【0035】
なお、左右のリアリンク6も、左右に架け渡されるパイプ状の部材などによって互いに連結されていてもよい。
【0036】
操作ユニット7は、乗員の操作によって4節リンク機構を駆動させ、着座部の高さを調整するため構成であり、図2,4(a)に示すように、操作ノブ組立体71と、ブラケット72と、出力ギヤの一例としてのピニオンギヤ73と、連結部材74とを主に有して構成されている。
【0037】
操作ノブ組立体71は、一対のサイドフレーム30のうちの一方である左側のサイドフレーム30に設けられており、サイドフレーム30に固定される固定部71Aと、固定部71Aに対して回転可能な操作部材の一例としての操作ノブ71Bとを有している。
【0038】
固定部71Aは、左側のサイドフレーム30のギヤ支持壁33が形成された部位に外側から取り付けられており、ギヤ支持壁33とともに左側のピニオンギヤ73を回動可能に支持している。操作ノブ71Bの回転中心には、左側のピニオンギヤ73の回転軸73Aの左端が固定されている。これにより、操作ノブ71Bを回動させることで、左側のピニオンギヤ73が、操作ノブ71Bと同軸で一体に回動するようになっている。
【0039】
なお、図示は省略するが、操作ノブ71Bは、公知の構成によって、固定部71A(またはサイドフレーム30)に対してフリクションを持って回転するようになっている。また、本発明において、操作ノブ71Bの形状は、特に限定されず、例えば、ダイヤル型であってもよいし、レバー型であってもよい。
【0040】
ブラケット72は、右側のサイドフレーム30のギヤ支持壁33が形成された部位に外側から取り付けられた略カップ状の部材であり、カップ状の部分の底部72Aがギヤ支持壁33とともに右側のピニオンギヤ73を回動可能に支持している。
【0041】
ピニオンギヤ73は、左右に1つずつ設けられており、フロントリンク5のセクタギヤ部51とそれぞれ噛み合っている。ここで、図2,3に示すように、ピニオンギヤ73とセクタギヤ部51とが噛み合う部分は、ピニオンギヤ73を支持するギヤ支持壁33に隣接しており、さらに、左右方向から見てギヤ支持壁33によって覆われている。このような構成により、ピニオンギヤ73とセクタギヤ部51との噛み合い外れを規制することができるようになっている。
【0042】
連結部材74は、左右方向に延びるパイプ状の部材であり、ギヤ支持壁33から内側に向けて飛び出す一対のピニオンギヤ73の回転軸73Aを連結して、一対のピニオンギヤ73を一体に回動可能としている。なお、図2,4(b)に示すように、連結部材74の左右両端には、ピニオンギヤ73の回転軸73Aと係合可能な断面視略半円形状の凹部74Aが形成されており、ピニオンギヤ73は、回転軸73Aがこの凹部74Aに係合した状態で溶接されることで、連結部材74に固定されている。
【0043】
以上のように構成された車両用シート1について、高さ調整を行うときの動作について説明する。
【0044】
図5(a)に示す状態から、操作ノブ71Bを図の時計回り方向に回動させると、連結部材74によって連結された左右のピニオンギヤ73(一方のみ図示)が図の時計回り方向に回動し、噛み合うフロントリンク5のセクタギヤ部51を、ピン91を中心として図の反時計回り方向に回動させる。これにより、左右のフロントリンク5が前方に向けて立ち上がることとなる。
【0045】
そして、これ連動して、フロントリンク5、スライドレール4およびサイドフレーム30とともに4節リンク機構を構成するリアリンク6も前方に向けて立ち上がるので、図5(b)に示すように、サイドフレーム30が上方へ移動することとなる。その結果、着座部の位置を高くすることができる。
【0046】
また、図5(b)に示す状態から、操作ノブ71Bを図の反時計回り方向に回動させると、左右のピニオンギヤ73が図の反時計回り方向に回動し、噛み合うフロントリンク5のセクタギヤ部51を、ピン91を中心として図の時計回り方向に回動させる。これにより、フロントリンク5とリアリンク6が後方に向けて倒れるので、図5(a)に示すように、サイドフレーム30が下方へ移動することとなる。その結果、着座部の位置を低くすることができる。
【0047】
以上によれば、本実施形態において以下のような作用効果を得ることができる。
本実施形態によれば、フロントリンク5が、操作ノブ71B(ピニオンギヤ73)の回動によりフロントリンク5を回動させるセクタギヤ部51を有するので、従来技術のような別部品としてのセクタギヤを省略することができ、部品点数を削減することができる。
【0048】
また、操作ノブ71Bの回動によって、直接フロントリンク5が立ち上がり方向または倒れ方向に回動することで、4節リンク機構が作動して着座部の高さを調整できるので、フロントリンク5とリアリンク6を連結する部材を省略することができ、部品点数を削減することができる。
【0049】
そして、以上のように部品点数を削減できることで、従来よりもコストの低減、具体的には、部品コストの低減や、組み立て時の手間が減ることによる製造コストの低減などを図ることが可能となる。また、部品点数を削減できることで、車両用シート1全体の重量を低減することができる。
【0050】
また、本実施形態によれば、操作ユニット7が、左右一対のピニオンギヤ73と、一対のピニオンギヤ73を連結して一体に回動可能とする連結部材74とを有するので、操作ノブ71Bの回動によって、左右のフロントリンク5を同時に立ち上がり方向または倒れ方向に回動させることができる。これにより、左右のサイドフレーム30の高さを同時に調整することができるので、左右のサイドフレーム30がねじれることがないため、着座部の高さを安定して調整することができる。
【0051】
さらに、高さ調整を行った後は、各セクタギヤ部51とフリクションを持つ各ピニオンギヤ73との噛み合いにより、左右のフロントリンク5の回動が規制(ロック)されることとなるので、左右のサイドフレーム30が、各フロントリンク5により左右両方で支持されることとなる。これにより、一方のサイドフレーム30が他方のサイドフレーム30に対して低くなるなどしてねじれるようなことがないため、着座部の高さ位置を安定させることができる。
【0052】
また、本実施形態によれば、ピニオンギヤ73とセクタギヤ部51とが噛み合う部分が、ギヤ支持壁33に隣接し、左右方向から見てギヤ支持壁33に覆われているので、ギヤの噛み合い外れを規制することができる。また、このようなギヤ支持壁33がサイドフレーム30に設けられていることで、ギヤの噛み合い外れを規制する部材を別に設ける必要がなくなるので、部品点数を削減することができ、コストやシート重量を低減することができる。
【0053】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではない。具体的な構成については、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。
【0054】
前記実施形態では、リンク支持部材として、着座部を前後に移動可能とするスライドレール4を示したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、リンク支持部材は、乗物の床に固定されるリンクを支持するための金具であってもよいし、リンクを支持するための部位が形成された乗物の床であってもよい。
【0055】
前記実施形態では、フロントリンク5およびリアリンク6の上端がサイドフレーム30の内側に接続されていたが、本発明はこれに限定されず、例えば、フロントリンクおよびリアリンクの少なくとも一方が、サイドフレームの外側に接続されていてもよい。この場合、フロントリンクに設けられる入力ギヤと噛み合う操作ユニットの出力ギヤは、サイドフレームの外側に配置してもよい。
【0056】
前記実施形態では、操作ノブ71Bが左側のサイドフレーム30に設けられていたが、本発明はこれに限定されず、右側のサイドフレームに設けられていてもよい。
【0057】
前記実施形態では、ギヤ支持壁33が、ピニオンギヤ73(出力ギヤ)とセクタギヤ部51(入力ギヤ)とが噛み合う部分を覆うように形成されていたが、本発明はこれに限定されず、例えば、ギヤ支持壁が、出力ギヤと入力ギヤとが噛み合う部分を覆っていなくてもよい。
【0058】
前記実施形態では、セクタギヤ部51(入力ギヤ)が左右のフロントリンク5にそれぞれ形成されていたが、本発明はこれに限定されず、入力ギヤは左右のフロントリンクのうちの一方だけに形成されていてもよい。この場合、出力ギヤは、入力ギヤが形成された側だけに設けられていれば足り、連結部材を省略することができる。
【0059】
前記実施形態では、乗物用シートの適用例として、自動車などの車両用シートを示したが、本発明はこれに限定されず、その他の乗物用シート、例えば、船舶用や航空機用のシートに適用することもできる。
図1
図2
図3
図4
図5