(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
モバイル機器やスマートフォン等の電子機器の表示部において、透光型の静電容量式入力装置が用いられている。特許文献1には、外部から侵入する電磁波ノイズの影響を受けにくくした静電容量式入力装置について開示されている。
【0003】
図12は、特許文献1に記載されている従来例の静電容量式入力装置について部分拡大断面図を示す。
図12に示すように、従来例の静電容量式入力装置110は、透光性の基材121と、基材121に形成された複数の第1の電極122及び複数の第2の電極(
図12では複数の第2の電極同士を接続する接続部128のみ示す)を有して構成される。また、第1の電極122及び複数の第2の電極に接続された配線129が非入力領域116に形成されている。
【0004】
図12に示すように、間隔を設けて隣り合う第1の電極122の間には接続部128が配置され、第1の電極122、第2の電極(接続部128)、及び配線129の上に絶縁層154が設けられている。隣り合う第1の電極122同士は、絶縁層154に設けられたスルーホールを介して、ブリッジ部127により接続される。このように、第1の電極122と第2の電極との間で静電容量を形成するように、第1の電極122と第2の電極とが入力領域115に配置されている。操作者の指などの被検出体が静電容量式入力装置110の入力領域115に接触または近づいたときに、第1の電極122と第2の電極の間の静電容量が変化して、これに基づいて入力位置情報を検出することができる。
【0005】
検出された入力位置情報は、配線129を通して外部回路へと引き出されるため、外部から電磁波ノイズが侵入して配線129に重畳すると、入力位置情報と混同して誤検出が発生する。
図12に示すように、従来例の静電容量式入力装置110において、絶縁層154上の配線129に重なる位置に導体層155が形成されている。これにより、入力操作側の外部から侵入する電磁波ノイズを遮蔽することができる。したがって、誤検出を防止して、精度良く入力位置情報を検出可能である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
近年、多様な入力操作を実現するために入力領域115における検出感度を高めることが要求されており、例えば被検出体が静電容量式入力装置110の表面に接触せずに近づいた状態で入力操作可能となるように検出感度を向上させることが検討されている。しかしながら、従来例の静電容量式入力装置110において、配線129に重なる位置に導体層155を設けることにより、配線129と導体層155との間に静電容量が形成される。この静電容量は、入力位置情報の検出に寄与しない寄生容量であり、この寄生容量は、第1の電極122と第2の電極との間に形成される静電容量と容量結合して、静電容量式入力装置110全体の静電容量が増大する。そのため、被検出体が接近したときの静電容量の変化が相対的に小さくなり、寄生容量によって入力領域115における検出感度が低下するという課題が生じる。
【0008】
また、導体層155を設けない場合には、入力操作の際に被検出体が入力領域115に近づいたときに、非入力領域116における配線129と被検出体との間にも静電容量が形成される。入力領域115の検出感度を向上させると、非入力領域116における配線129と被検出体との間に発生する静電容量についても感度が向上して、配線129と被検出体との間の静電容量変化を入力操作による信号として検出してしまい、誤検出が発生しやすくなる。
【0009】
本発明は、上記課題を解決して、導体層を設けて誤検出を防止するとともに、入力領域の検出感度を向上させることが可能な静電容量式入力装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の静電容量式入力装置は、基材と、複数の電極と、前記電極に接続された配線と、導体層と、を有し、前記基材において、入力操作を行う入力領域と、前記入力領域の外側の非入力領域とが設定されており、複数の前記電極は前記基材の前記入力領域に形成されるとともに、前記配線は前記基材の非入力領域に形成されており、前記導体層は、前記配線に対して重なる位置に配置されて、前記導体層と前記配線との間に配線部絶縁層と嵩上げ層とが積層されて
おり、前記嵩上げ層の厚さは、前記配線部絶縁層の厚さよりも厚いことを特徴とする。
【0011】
これによれば、導体層と配線との間を絶縁する配線部絶縁層に加えて嵩上げ層が積層されているため、導体層と配線との距離を大きくして、導体層と配線との間に形成される静電容量を小さくすることができる。よって、非入力領域における寄生容量を低減させることにより、非入力領域における寄生容量と、入力領域における静電容量との容量結合を低減できるため、入力領域における検出感度を向上させることが可能である。また、導体層と配線との距離を大きくした場合であっても、外部からの電磁波ノイズの侵入や、被検出体と配線との間に静電容量が形成されることを抑制して、誤検出の発生を防止することができる。
【0012】
したがって、本発明の静電容量式入力装置によれば、導体層を設けて誤検出を防止するとともに、入力領域の検出感度を向上させることが可能である。
【0013】
本発明の静電容量式入力装置において、前記配線の上に前記配線部絶縁層が形成されて、前記配線部絶縁層の上に前記嵩上げ層が形成されており、前記導体層は前記嵩上げ層を覆うように形成されていることが好適である。これによれば、水分などが外部から嵩上げ層に侵入することを導体層によって遮蔽することができ、導体層に覆われた嵩上げ層の耐環境性(耐湿性、耐皮脂性)を向上させることができる。また、嵩上げ層の材料選択性が拡がるため、嵩上げ層を厚く形成することが容易であり、製造コストの低減も可能である。
【0014】
本発明の静電容量式入力装置において、前記配線の上に前記嵩上げ層が形成されて、前記嵩上げ層の上に前記配線部絶縁層が形成されており、前記配線部絶縁層は前記嵩上げ層を覆うように形成されていることが好ましい。これによれば、外部から水分などが嵩上げ層に侵入することを配線部絶縁層によって遮蔽することができ、配線部絶縁層に覆われた嵩上げ層の耐環境性(耐湿性、耐皮脂性等)を向上させることができる。また、嵩上げ層の材料選択性が拡がるため、嵩上げ層を厚く形成することが容易であり、製造コストの低減も可能である。
【0015】
本発明の静電容量式入力装置において、前記複数の電極は、透光性の複数の第1の電極及び複数の第2の電極を有して構成され、前記第1の電極は、前記基材面内の第1の方向において間隔を設けて配置されるとともに、隣り合う前記第1の電極同士はブリッジ部によって接続されており、前記第2の電極は、前記第1の方向に交差する第2の方向において間隔を設けて配置されるとともに、隣り合う前記第2の電極同士は接続部によって接続されており、前記接続部を覆うように交差部絶縁層が形成されて、前記ブリッジ部は、前記接続部に対して平面視で交差するように前記接続部及び前記交差部絶縁層を跨がって形成されており、前記導体層と前記配線との距離は、前記ブリッジ部と前記接続部との距離よりも大きいことを特徴とする。
【0016】
これによれば、配線部絶縁層と嵩上げ層との合計厚さを厚くして配線と導体層との間に形成される寄生容量を低減した場合であっても、入力領域における交差部絶縁層は厚く形成する必要がないため、交差部絶縁層が外部から視認されることを防止して良好な不可視特性を確保することができる。
【0017】
本発明の静電容量式入力装置において、前記交差部絶縁層と前記配線部絶縁層とは同じ材料により形成されていることが好ましい。これによれば、交差部絶縁層と配線部絶縁層とを同一の工程で形成することができるため、製造工程を削減して製造コストを低減することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の静電容量式入力装置によれば、導体層を設けて誤検出を防止するとともに、入力領域の検出感度を向上させることが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の静電容量式入力装置の具体的な実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、各図面の寸法は適宜変更して示している。
【0022】
<第1の実施形態>
図1は、第1の実施形態の静電容量式入力装置を示す分解斜視図である。
図1に示すように本実施形態の静電容量式入力装置10は、入力位置情報を検出する静電容量式センサ部20と、表面パネル31とを有して構成される。表面パネル31は、静電容量式センサ部20に対して入力操作側(
図1のZ1方向)に配置されており、静電容量式センサ部20と表面パネル31とは粘着層32を介して貼り合わされる。
【0023】
表面パネル31は、透光性のガラス材料又は樹脂材料を用いて平板状に形成されている。
図1に示すように、表面パネル31の裏面側(
図1のZ2方向の面)には着色された加飾層38が設けられており、加飾層38は、表面パネル31の外周部において枠状に設けられている。加飾層38によって区分けされて加飾層38に囲まれた領域が、入力操作を行う入力領域15である。また、入力領域15の外側の加飾層38と重なる領域が非入力領域16である。
【0024】
なお、表面パネル31は
図1に示すような平板状に限定されず、曲面を有する立体的な表面形状を有するものや、電子機器の筐体の一部を表面パネル31としても良い。また、加飾層38は、表面パネル31に直接形成される構成のほか、加飾層38が設けられた加飾フィルムを別に用意して、これを表面パネル31に貼り合わせる構成であっても良い。
【0025】
図1に示すように、静電容量式センサ部20の入力領域15には複数の第1の電極22および複数の第2の電極24が配列されている。また、静電容量式センサ部20の非入力領域16には、入力領域15を囲むように導体層55(
図1に斜線を付けて示す)が形成されている。導体層55は、外部から電磁波ノイズが侵入した場合に、または外部の物体等が近づいたときに誤検出が生じることを防止するためのシールド機能を有する。
【0026】
図2は、本実施形態の静電容量式入力装置を構成する静電容量センサ部の平面図であり、基材、及び基材に形成された各電極、配線を示す平面図である。
図3は、
図1に示す静電容量式入力装置を組み立てたときに、
図1のIII−III線の位置で切断して矢印方向から見たときの静電容量式入力装置の断面図を示す。
【0027】
図2に示すように、静電容量式センサ部20は、基材21と、基材21に形成された複数の第1の電極22、複数の第2の電極24、及び複数の配線29を有して構成される。なお、
図2は、図面を見やすくするために導体層55を省略して示している。
図2に示すように、第1の電極22及び第2の電極24は入力領域15に形成されており、いずれも菱形のパッド状の電極である。第1の電極22は、X1−X2方向に間隔を設けて配置されており、X1−X2方向に隣り合う第1の電極22同士はブリッジ部27によって接続される。接続された複数の第1の電極22は、X1−X2方向において延在するとともに、Y1−Y2方向において間隔を設けて複数本配列されている。また、第2の電極24はY1−Y2方向において間隔を設けて配列されており、Y1−Y2方向に隣り合う第2の電極24同士は幅細の接続部28によって接続されている。接続された複数の第2の電極24は、Y1−Y2方向において延在するとともに、X1−X2方向において間隔を設けて複数本配列されている。
【0028】
図2に示すように、接続された複数の第1の電極22と、接続された複数の第2の電極24とは、互いに交差して形成されている。
図3に示すように、接続部28とブリッジ部27とが交差する部分において、接続部28を覆うように交差部絶縁層54が設けられており、接続部28及び交差部絶縁層54を跨がってブリッジ部27が形成されている。
図3に示すように、接続部28をX1−X2方向に挟むように配置された第1の電極22同士はブリッジ部27によって接続されている。このように、第1の電極22と第2の電極24とは、互いに絶縁された状態で形成される。
【0029】
また、
図2に示すように第1の電極22及び第2の電極24に接続された複数の配線29は、基材21の非入力領域16に形成されている。複数の配線29は、基材21の非入力領域16を引き回されて、外部回路と接続するための端子部30に接続される。
【0030】
本実施形態において、基材21は、フィルム状の樹脂材料を用いて形成されており、ポリカーボネート樹脂(PC)、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)、ポリエチレンナフタレート樹脂(PEN)、環状ポリオレフィン(COP)、ポリメタクリル酸メチル樹脂(PMMA)等の透光性樹脂材料が用いられる。第1の電極22、第2の電極24、及び接続部28は、ITO(Indium Tin Oxide)、SnO
2、ZnO等の透明導電材料を用いて形成されており、スパッタや蒸着等の薄膜法により形成される。また、ブリッジ部27、Cu、Ag、Au等の金属材料やCuNi、AgPd等の合金、ITO等の導電性酸化物材料を用いることができる。配線29及び端子部30には、Cu、Ag、Au等の金属材料やITO等の導電性酸化物材料を用いることができる。
【0031】
本実施形態の静電容量式センサ部20は、第1の電極22と第2の電極24との間で静電容量を形成するように配置されている。操作者が入力操作を行う際に、表面パネル31表面の入力領域15に指などの被検出体を接触させて、または接触させずに近づけた場合に、第1の電極22と第2の電極24との間の静電容量と、各電極と被検出体との間に形成される静電容量とが結合する。この静電容量変化に基づいて入力位置情報が検出される。
【0032】
近年、皮脂による汚れを入力表面に付着させない、又は付け爪があっても入力操作をより快適に行うため、指などを表面パネル31表面に接触させずに近づけた状態で多様な入力操作方法を実現することが望まれている。そのため、入力領域15における検出感度の向上が要求されている。この場合、入力領域15の検出感度だけではなく、配線29においても検出感度が向上してしまう。そして、第1の電極22と第2の電極24との間の静電容量変化により検出された入力位置情報は、配線29を介して外部回路へと出力される。導体層55を設けていない場合において、配線29を伝播する信号に外部からの電磁波ノイズが重畳したり、被検出体と配線29との間に静電容量が形成された場合には、誤検出が生じる可能性がある。本実施形態の静電容量式入力装置10において、
図1、
図3に示すように非入力領域16において配線29に重なる位置に導体層55が設けられている。これにより、配線29への電磁波ノイズの侵入や被検出体と配線29との間の静電容量変化を抑制して誤検出が防止される。なお、導体層55は少なくとも配線29と重なる位置に設けられていればよく、より好ましくは、入力領域15を囲むように設けられていれば、効果的に誤検出が防止される。
【0033】
図4は、本実施形態の静電容量式入力装置の部分拡大断面図を示し、特に配線の近傍における部分拡大断面図を示す。
図4に示すように、導体層55は、配線29に対して重なる位置に形成されており、導体層55と配線29との間に配線部絶縁層51と嵩上げ層52とが積層されている。
図4に示すように、基材21の非入力領域16において、配線29の上に配線部絶縁層51が形成されて、配線部絶縁層51の上に嵩上げ層52が形成されており、導体層55は嵩上げ層52を覆うように形成されている。
【0034】
本実施形態において、導体層55は、ブリッジ部27と同じ材料を用いて形成することができ、導体層55とブリッジ部27とを同一工程で形成することができる。導体層55は、例えばCu、Ag、Au等の金属材料やCuNi、AgPd等の合金、ITO等の透明導電性材料が用いられて、スパッタや蒸着等の薄膜法や、スクリーン印刷やインクジェット印刷などの印刷法により形成される。
【0035】
配線部絶縁層51は、配線29と導体層55との間の電気的絶縁を確保するために設けられており、
図4に示すように、配線29を覆うように配線部絶縁層51が形成されている。配線部絶縁層51には、絶縁劣化が生じないように耐環境性(耐湿性、耐熱性、耐皮脂性)を有する材料を用いることが好ましい。本実施形態において、例えばノボラック樹脂とアクリル樹脂等の耐環境性樹脂とを混合したものが用いられる。また、嵩上げ層52は、配線29と導体層55との距離を大きくするために設けられており、高い耐環境性は要求されない。嵩上げ層52には、通常のレジスト材料やノボラック樹脂等を用いることができ、フォトリソグラフィ技術により形成される。あるいは、スクリーン印刷やインクジェット印刷などの印刷法により形成することも可能である。本実施形態において、配線部絶縁層51は1μm〜2μm程度の厚さに形成され、嵩上げ層52は、2μm〜5μm程度の厚さに形成される。
【0036】
このように、導体層55と配線29との間を絶縁する配線部絶縁層51に加えて、嵩上げ層52が積層されているため、配線部絶縁層51のみを形成した場合に比べて導体層55と配線29との間の距離を大きくして、導体層55と配線29との間に形成される静電容量を小さくすることができる。よって、非入力領域16における寄生容量を低減させることにより、非入力領域16における寄生容量と、入力領域15における静電容量との容量結合を低減できるため、入力領域15における検出感度を向上させることが可能である。また、導体層55と配線29との距離を大きくした場合であっても、外部からの電磁波ノイズの侵入や、被検出体と配線29との間に形成される静電容量に起因する誤検出を防止することができる。
【0037】
なお、本明細書において、配線29と導体層55との距離とは、嵩上げ層52の上面52aに形成された導体層55と配線29との間の垂直方向(Z1−Z2方向)の距離を示す。
【0038】
以上のように、本発明の静電容量式入力装置10によれば、導体層55を設けて誤検出を防止するとともに、非入力領域16における配線29と導体層55との間の寄生容量を低減して、入力領域15の検出感度を向上させることが可能である。
【0039】
また、
図4に示すように、嵩上げ層52の厚さは、配線部絶縁層51の厚さよりも厚く形成することが好ましい。こうすれば、配線29と導体層55との距離をより大きくすることができるため、配線29と導体層55との間に形成される寄生容量を効果的に低減させることができる。
【0040】
図4に示すように、配線部絶縁層51及び嵩上げ層52は、配線部絶縁層51の幅寸法(配線29が延在する方向に対して直交するX1−X2方向の寸法)に対して、嵩上げ層52の幅寸法が小さくなるように形成されている。そして、嵩上げ層52の上面52a及び側面52bを覆うように導体層55が形成されている。
【0041】
このように導体層55を設けることにより、外部から嵩上げ層52の内部に水分などが侵入することを導体層55によって遮蔽することができ、導体層55に覆われた嵩上げ層52の耐環境性(耐湿性、耐皮脂性)を向上させることができる。さらに、嵩上げ層52として吸水性を有する樹脂材料等を用いることが可能となり材料選択性が拡がるため、所定の厚さに形成可能な材料を選択して嵩上げ層52を形成することにより、嵩上げ層52を厚く形成することが容易になる。また、製造コストの低減にもつながる。
【0042】
図12に示す従来例の静電容量式入力装置110において、絶縁層154を厚く形成することにより、配線129と導体層155との間の距離を大きくして寄生容量を小さくすることができる。しかし、従来例の静電容量式入力装置110では、配線129の上だけではなく、入力領域115の第1の電極122及び第2の電極の上にも絶縁層154が形成されるため、絶縁層154を厚く形成するとブリッジ部127と配線129との間の絶縁層154も厚くなる。絶縁層154には透明な材料が用いられるが、絶縁層154が厚く形成されると、絶縁層154が形成された領域と、形成されていないの領域とのコントラスト差が目立ち、外部から絶縁層154の境界が視認されてしまう。
【0043】
本実施形態の静電容量式入力装置10は、
図4に示すように、導体層55と配線29との距離は、ブリッジ部27と接続部28との距離よりも大きく形成されている。つまり、配線部絶縁層51と嵩上げ層52との合計厚さは、交差部絶縁層54の厚さよりも厚くなるように形成されている。これにより、非入力領域16において配線部絶縁層51と嵩上げ層52とを設けて寄生容量を低減した場合においても、入力領域15における交差部絶縁層54は厚く形成する必要がないため、交差部絶縁層54が外部から視認されることを防止して、良好な不可視特性が確保される。また、配線部絶縁層51の上に嵩上げ層52を設けても、非入力領域16には加飾層38が設けられているため、導体層55や嵩上げ層52などが外部から視認されることはない。
【0044】
交差部絶縁層54と配線部絶縁層51とは同じ材料を用いて形成することが好適である。こうすれば、交差部絶縁層54と配線部絶縁層51とを同一の工程で形成することができるため、静電式入力装置10の製造工程を削減して製造コストの低減が可能である。
【0045】
図5は、第1の実施形態の静電容量式入力装置における第1の変形例を示す、部分拡大断面図である。
図5に示すように、第1の変形例の静電容量式入力装置10において、導体層55の構成が異なっている。本変形例において、導体層55は嵩上げ層52の上面52aに形成されており、側面52bには形成されていない。このような態様であっても、配線29と導体層55との間の寄生容量を低減させて、入力領域15における検出感度を向上させることができる。
【0046】
第1の変形例における導体層55及び嵩上げ層52の構造は、
図4に示す構造よりも比較的単純であるため、導体層55及び嵩上げ層52をスクリーン印刷法により形成することが好適である。スクリーン印刷法などの印刷法で形成することにより安価に製造することができ、また、嵩上げ層52を厚く形成することが容易に実現される。
【0047】
図6は、第1の実施形態の静電容量式入力装置における第2の変形例を示す、部分拡大断面図である。
図6に示すように、表面パネル31の裏面において第1の透明充填層35が設けられるとともに、基材21の入力操作側の面において第2の透明充填層36が設けられている。第1の透明充填層35は、加飾層38の厚さと同等の厚さで形成されており、表面パネル31と加飾層38とで形成される段差(以下、「加飾段差39」という。)を埋めるように、表面パネル31の入力領域15に形成されている。また、第2の透明充填層36は、配線部絶縁層51、嵩上げ層52及び導体層55の合計厚さと同等の厚さで形成されている。そして、第2の透明充填層36は、配線部絶縁層51、嵩上げ層52及び導体層55等の積層構造体と基材21とで形成される段差(以下、「配線部段差53」という)を埋めるように、基材21の入力領域15に形成されている。
【0048】
第1の透明充填層35及び第2の透明充填層36には、例えばアクリル樹脂等の透光性の樹脂材料を用いることができ、インクジェット印刷やスクリーン印刷により形成可能である。
【0049】
本変形例において、第1の透明充填層35及び第2の透明充填層36を設けることにより、粘着層32によって貼り合わされる表面パネル31側の段差及び基材21側の段差を小さくすることができる。これにより、粘着層32を介して貼り合わされる厚さ方向の距離のばらつき及び局所的な変化が解消されるため、粘着層32の柔軟性によって隙間無く表面パネル31と基材21とが貼り合わされる。したがって、加飾段差39や配線部段差53における気泡の発生を防止できる。
【0050】
特に、本実施形態の静電容量式入力装置10のように嵩上げ層52が形成されている構成において、透明充填層を設けない場合には、粘着層32の柔軟性によって吸収しなければいけない段差の高さが大きくなる。そのため、加飾段差39と粘着層32との間や配線部段差53と粘着層32との間に気泡が発生しやすくなる。よって、本実施形態において、第1の透明充填層35及び第2の透明充填層36を設けることは、気泡の発生の防止に効果的である。
【0051】
図7は、第1の実施形態の静電容量式入力装置における第3の変形例を示す、部分拡大断面図である。本変形例において、表面パネル31の裏面に第1の透明充填層35が設けられており、基材21側には透明充填層は設けられていない。本変形例において、第1の透明充填層35は、加飾層38の下面38bの一部に乗り上げて形成されており、加飾層38よりも厚くなるように形成されている。つまり、
図7に示すように、第1の透明充填層35は加飾層38の下面38bよりも基材21方向に向かう凸形状を有する。
【0052】
図7に示すように、第1の透明充填層35を凸形状に形成することにより、配線部段差53を第1の透明充填層35の凸形状により吸収することができる。このような態様であっても、粘着層32を介して貼り合わされる厚さ方向の距離のばらつきや局所的な変化が抑えられるため、気泡の混入を防止して表面パネル31と基材21とが貼り合わされる。
【0053】
<第2の実施形態>
図8は、第2の実施形態の静電容量式入力装置を示す、部分拡大断面図である。第2の実施形態の静電容量式入力装置11は、
図8に示すように、配線29の上に設けられた配線部絶縁層51と嵩上げ層52の構成が異なっており、入力領域15における第1の電極22、第2の電極24(
図8には接続部28のみ示す)等のパターンは、
図2に示す第1の実施形態と同様である。
【0054】
図8に示すように、本実施形態の静電容量式入力装置11において、配線29の上に嵩上げ層52が形成されて、嵩上げ層52の上に配線部絶縁層51が形成されている。そして、導体層55は配線部絶縁層51の上面51aに形成される。また、配線部絶縁層51は嵩上げ層52を覆うように形成されており、嵩上げ層52の上面52a及び側面52bにわたって形成されている。
【0055】
本実施形態においても、配線部絶縁層51に加えて嵩上げ層52が形成されているため、配線29と導体層55との距離を大きくすることができる。これにより、導体層55と配線29との間に形成される静電容量を小さくすることができ、非入力領域16における寄生容量が低減する。よって、非入力領域16における寄生容量と、入力領域15における静電容量との容量結合を低減できるため、入力領域15における検出感度を向上させることが可能である。また、本実施形態においても導体層55を設けることにより、外部からの電磁波ノイズの侵入や、被検出体と配線29との間に形成される静電容量に起因する誤検出の発生が防止される。
【0056】
また、配線部絶縁層51が嵩上げ層52を覆うように形成されているため、外部から嵩上げ層52に水分などが侵入することを配線部絶縁層51により遮蔽することができ、配線部絶縁層51で覆われた嵩上げ層52の耐環境性(耐湿性、耐皮脂性等)を向上させることができる。すなわち、嵩上げ層52として吸水性のある樹脂材料を用いた場合であっても絶縁劣化を防止可能であり、嵩上げ層52の材料選択性が拡がるため、製造コストの低減につながり、また、嵩上げ層52を厚く形成することが容易になる。なお、
図8では導体層55を配線部絶縁層51の上面51aに形成しているが、配線部絶縁層51の上面51aから側面51bにわたって、配線部絶縁層51の一部を覆うように導体層55を形成することも可能である。
【0057】
<第3の実施形態>
図9は、第3の実施形態の静電容量式入力装置における、基材、及び基材に形成された各電極、配線を示す平面図である。
図10は、
図9に示す基材を表面パネルに貼り合わせて静電容量式入力装置としたときに、
図9のX−X線の位置で切断して矢印方向から見たときの部分拡大断面図である。
【0058】
図9に示すように、本実施形態の静電容量式入力装置12は、入力領域15における各電極の構造が異なっている。
図9に示すように、第1の電極23は、Y1−Y2方向の幅寸法がX2方向に向かうにしたがって徐々に小さくなるように形成されている。また、第2の電極25は、Y1−Y2方向の幅寸法がX1方向に向かうにしたがって徐々に小さくなるように形成されている。この第1の電極23と第2の電極25とが1組として間隔を設けて配置されており、1組の第1の電極23及び第2の電極25が、Y1−Y2方向において複数配置されている。そして、配線29は、第1の電極23及び第2の電極25のそれぞれに接続されるとともに、非入力領域16を引き回されている。
【0059】
このようなパターンであっても、入力操作時において指などの被検出体が近づいたときに、第1の電極23と第2の電極25との間の静電容量と、各電極と被検出体との間に形成される静電容量とが結合する。この静電容量変化に基づいて入力位置情報が検出される。
【0060】
図9に示すように、入力位置情報を検出する第1の電極23及び第2の電極25のパターンが異なる場合においても、本発明を適用可能である。
図10に示すように、本実施形態においても、配線29と重なる位置に導電層55を設けて、配線29と導電層55との間に配線部絶縁層51と嵩上げ層52とを形成することができる。本実施形態においても、非入力領域16における寄生容量を低減して、入力領域15における検出感度を向上させることができる。
【0061】
図10に示す導電層55、配線部絶縁層51、及び嵩上げ層52の構成や材料等は、
図4に示す第1の実施形態と同様に形成することができる。また、他の変形例、第2の実施形態に示した構成を適用することも可能である。
【0062】
また、
図11は第3の実施形態の静電容量式入力装置12の変形例を示し、基材、及び基材に形成された各電極、配線を示す平面図である。
図11に示すように、複数の矩形状の電極26が入力領域15に配列されており、配線29は電極26のそれぞれに接続されて非入力領域16に引き出される。なお、
図11では配線29を一部省略して示しているが、配線29のそれぞれは、外部回路と接続するための端子部30に接続される。本変形例の静電容量式入力装置12は、複数の電極26のそれぞれについて被検出体との間の静電容量変化を検出して入力位置情報を検出することができる。
【0063】
このようなパターンにおいて、配線29の本数や配線29の全体の面積が増大するため寄生容量が大きくなり、入力領域15の検出感度を向上させたときに、寄生容量の影響が増大する。本変形例において、
図10と同様に、導電層55、配線部絶縁層51、及び嵩上げ層52を設けることにより、誤検出を抑制するとともに、配線29と導電層55との間の寄生容量を効果的に低減させて入力領域15の検出感度を向上させることができる。
【0064】
第1の実施形態から第3の実施形態の静電容量式入力装置10、11、12では、いずれも基材21の片面において、各電極及び配線を設けた構成を示したが、これに限定されない。基材21の一方の面に第1の電極を形成し、基材21の他方の面に第2の電極を形成するような構成や、第1の電極を形成した第1の基材と、第2の電極を形成した第2の基材とを用意して、第1の基材と第2の基材とを貼り合わせた多層構造等であっても、本発明を適用することができる。