(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5750479
(24)【登録日】2015年5月22日
(45)【発行日】2015年7月22日
(54)【発明の名称】アーク加熱による水中昇温装置
(51)【国際特許分類】
F24H 1/10 20060101AFI20150702BHJP
F27B 3/08 20060101ALI20150702BHJP
F27D 11/08 20060101ALI20150702BHJP
【FI】
F24H1/10 L
F27B3/08
F27D11/08 A
【請求項の数】1
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-181449(P2013-181449)
(22)【出願日】2013年9月2日
(65)【公開番号】特開2015-48997(P2015-48997A)
(43)【公開日】2015年3月16日
【審査請求日】2013年9月5日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】596170608
【氏名又は名称】佐々木 万八
(73)【特許権者】
【識別番号】513221259
【氏名又は名称】柿迫 法和
(74)【代理人】
【識別番号】100074055
【弁理士】
【氏名又は名称】三原 靖雄
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 万八
【審査官】
大山 広人
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭59−075650(JP,U)
【文献】
実開昭53−141546(JP,U)
【文献】
特開平05−060375(JP,A)
【文献】
特開昭49−129236(JP,A)
【文献】
特開2011−185466(JP,A)
【文献】
特開2004−012057(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24H 1/10
F27B 3/08
F27D 11/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状のアーク発生タンクを設け、該タンクの下部であって、該タンク内部の外周接線方向に向けて流入口を設け、該タンクの上部には流出口を設け、タンク内の底部あるいは天板部にアーク発生装置を設け、該装置のアーク加熱によりタンク内の水を昇温させるアーク加熱による水中昇温装置において、
前記アーク発生タンク内に設けたアーク発生装置は、該タンク本体の中央底部の凹部に200V三相用の各接続端子版をそれぞれ設け、
これらの各接続端子版には、複数の電極棒を植設し、
各接続端子版はそれぞれ上部か、下部の電極棒がそれぞれ接触しない空隙部を形成し、 これらの接続端子版の位置する凹部は、絶縁体素材で密封する
ことを特徴とするアーク加熱による水中昇温装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、アーク加熱による水中昇温装置であり、特に、熱源に高温アークを用いる水中昇温装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、水を昇温させる手段としては、薪釜、ボイラー、シーズヒーター等を用い、容器の外部に位置する熱源で内部の水を間接的に暖めて昇温している。
【0003】
また、その熱源として、木、ガス、灯油、重油を燃料に用いており、木材や化石燃料等を燃焼することにより二酸化炭素を発生させ地球温暖化の問題となるものであり、さらには天然資源の枯渇となるという問題もあった。
【0004】
そこで、この本願発明者は、アーク放電の熱を利用して水の昇温を図ることを発明したものである。
【0005】
このアーク放電の熱を利用する技術は、宇宙往還機の熱防護材の研究開発や大気圏再突入の状態を模擬した試験をするアーク加熱風洞において使用されている。
【0006】
また、アーク式の取鍋加熱装置は存在する。即ち,取鍋とは、耐火容器を用いて溶けた金属を運搬し、鋳型に溶けた金属を流し込む注湯の工程を経て製品を取り出すという鋳造工場においては使用されていた。
【0007】
しかしながら、水中で直接電極棒から発生させたアーク発生により水の分子が互いにぶつかり合い熱を発生させて水を昇温させる,即ち,水中でアーク加熱により昇温させる方法および装置は存在していなかった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこでこの発明は、水の昇温の熱源にアーク放電の熱を利用し、水を直接、暖めることにより、安価で地球に優しいアーク加熱による水中昇温装置を開発・提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そして、この発明は、アーク発生タンク内に水を入れて、水中に設けたアーク発生装置によりアーク放電を利用する電気加熱して、水中にて直接、熱源を発生させる、天蓋部、あるいは底面部に設ける三相交流電源を用いて、複数の炭素棒からなるアーク発生装置を設け、該装置のアーク放電の熱を利用する電気加熱であり、水中にて直接に熱源を発生させ、そもそも、アーク加熱は、2本の炭素棒の端を接触させることにより強い電流を通しながら少し離すと陽極は約3500°C、陰極では2800°Cに熱せられるものであり、このアーク発生装置のアーク加熱による水中昇温装置を開発・提供しようとするものである。
【発明の効果】
【0010】
この発明によると、アーク発生タンク内で、水中に設けたアーク発生装置によりアーク加熱して直接水温を昇温させることにより、極めて有益なる効果を奏する。
【0011】
また、アーク発生タンクの底部付近に設けた流入口は、該タンクの中心軸に向けた軸線より外れた角度に形成されることにより、水は円筒状のタンクの内周に沿って流入され、また、該タンクの上部付近に流出口(3)に向け旋回して上昇するため、ムラなく昇温が可能となるとの効果を奏する。
【0012】
さらに、容器本体を加圧構造とすることにより、昇温時間を早めることが出来る等の効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図5】この発明に使用するアーク発生装置の接続端子版r−rの拡大断面図である。
【
図6】この発明に使用するアーク発生装置の接続端子版s−sの拡大断面図である。
【
図7】この発明に使用するアーク発生装置の接続端子版t−tの拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、この発明の好適な実施の形態として詳細に説明する。尚、この発明においては、以下の記述に限定されるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲においては適宜変更可能である。
【実施例】
【0015】
先ず、この発明のうち、方法の発明の一実施例を図面に基づいて説明すると、アーク発生タンク(1)を設け、該タンク(1)内に水を入れると共に、該タンク(1)内にアーク発生装置(5)を設け、該装置(5)を発熱させることにより、アーク加熱によりタンク(1)内の水(X)を昇温させることを特徴とするアーク加熱による水中昇温方法から構成されるものである。
【0016】
次に、この発明のうち、装置の発明の一実施例を図面に基づいて説明すると、円筒状のアーク発生タンク(1)を設け、該タンクの下部であって、該タンク内部の外周接線方向に向けて流入口(2)を設け、該タンク(1)の上部には流出口(3)を設け、タンク(1)内の底部(4)あるいは天板部(1a)にアーク発生装置(5)を設け、該装置のアーク加熱によりタンク内の水(X)を昇温させることを特徴とするアーク加熱による水中昇温装置から構成されるものである。
【0017】
尚、この実施例に示すアーク発生タンク(1)は、開放型タンクとし、有底の円筒状体でありタンク内のアーク発生装置(5)への供給水は、ラインポンプ(図示しない)若しくは水中ポンプ(図示しない)を用いて送水するが、加圧はしないものである。
【0018】
さらに、この発明のうち、装置の発明の他の実施例を図面に基づいて説明すると、円筒状のアーク発生タンク(1)を設け、該タンク内を密閉構造とし、該タンク(1)内部の下部であって、該タンク(1)の外周接線方向に向けてに流入口(2)を設け、該タンクの上部には、前面に自動的に開閉装置を有する流出口(3)を設けると共に、該タンク(1)には圧力計(6)、安全弁(7)、温度計(8)を設け、且つ、タンク(1)内には、アーク発生装置(5)を設け、該装置(5)のアーク加熱によりタンク内の水(X)を昇温させることを特徴とするアーク加熱による水中昇温装置から構成されるものである。
【0019】
尚、この実施例に示すアーク発生タンク(1)は、加圧型タンク構造とし、該タンク(1)本体が耐圧加工されたものであり、供給水(X)を加圧ポンプ(図示しない)で送水し加圧昇温させて電動油圧ジャッキ(15)にて開放弁(11)を開き送水する。一連の動作は温度と圧力を自動制御して定期的に送水するものであり、省エネタイプの機種である。
【0020】
尚、開放弁(11)は、アーク発生タンク(1)と流出口(3)との途中に設けており、その構造は、
図1に示すようにT字管(12)の一方にスプリング(13)で加圧されたものであり、該T字管(12)の先端付近の管内壁はテーパ状に形成され、該テーパ状の管となっており、開放弁(11)の先端部は該管(14)に適合した截頭円錐状に形成されている。
【0021】
そして、T字管(12)の先端テーパ部と開放弁(11)の先端部とは、常時、密着しており、アーク発生タンク(1)方向にのみ移動可能となっている。
【0022】
また、開放時には、開放弁(11)の軸(11a)に当接して設けた電動油圧ジャッキ(15)を作動させ、前記開放弁(11)をアーク発生タンク(1)方向に押圧することにより、水を流出口(3)に流出させるものである。そして、一連の動作は、温度と圧力を自動制御して定期的に送水するよう構成された省エネタイプである。
【0023】
さらに、前記アーク発生タンク(1)内に設けたアーク発生装置(5)は、該タンク(1)本体の中央底面部(4)に凹部(Y)を形成し、該凹部(Y)に200V三相用に接続する各接続端子版(R,S,T)をそれぞれ3枚設け、これらの各接続端子版には、複数の電極棒(9)を植設し、各接続端子版はそれぞれ、上部か、下部の電極棒(9)がそれぞれ接触しない空隙部(Z,Z′Z″)を形成し、これらの接続端子版の位置する凹部(Y)はシリコン等の絶縁体素材(10)で密封するよう構成されている。さらに、接続端子版(R,S,T)の端部には、それぞれ電線との接続用の各端子穴(C)も一体に形成している。
【0024】
また、アーク発生タンク(1)内に設けたアーク発生装置(5)は、実施例では該タンクの底部に設けたものを示したが、これに限ることなく、アーク発生タンク(1)の天板(1a)に形成してもよいものである。
【0025】
さらに、前記電極棒(9)は、無垢の炭素棒、ステンレス棒、あるいは、穴(9b)を有するステンレスパイプ
等の筒体(9a)内に収納された電極棒(9′)から選ばれたものであるアーク加熱による水中昇温装置である。
【0026】
また、前記アーク発生タンク(1)の底部付近に設けた流入口(2)は、タンク(1)の中心軸(A)に向けた軸線(B)より外れた角度(α)に形成されることにより、水(X)は円筒状のタンクの内周に沿って流入され、また、該タンク(1)の上部付近に流出口(3)を設けており旋回して上昇するため、ムラなく昇温が可能となるものである。
【0027】
下記の表1に示すように、水温16°Cの水(X)をアーク発生タンク(1)に78リットル流入してアーク発生装置(5)を稼働させたところ、1時間後には水温55°Cとなった。また、貯湯槽に水温18°Cの水(X)をアーク発生タンク(1)に1,000リットル流入してアーク発生装置(5)を稼働させたところ、1時間後には上部で水温52°C、下部で49°Cとなった。
【0028】
【表1】
【0029】
また、電力積算計の目盛りは、1107.0(Kwh)を示し、電流は104.00アンペアを示し、使用電気量は、27Kwhであり、平均単価は356.4円であった。
【産業上の利用可能性】
【0030】
この発明によると、アーク加熱による水中昇温装置の技術を確立し、これに基づいて大量に製造・販売することにより産業上の利用可能性がある。
【符号の説明】
【0031】
1 アーク発生タンク
2 流入口
3 流出口
4 底部
5 アーク発生装置
6 圧力計
7 安全弁
8 温度計
9 電極棒
9a 筒体
9b 穴
10 絶縁体素材
11 開放弁
11a 軸
12 T字管
13 スプリング
14 先端部
15 電動油圧ジャッキ
A 中心軸
B 中心軸に向けた軸線
C 端子穴
R,S,T 接続端子板
X 水
Y 凹部
Z 空隙部
α 角度